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特許6998897ブロック装置を有する注入装置駆動ユニット
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  • 特許-ブロック装置を有する注入装置駆動ユニット 図1a
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-23
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】ブロック装置を有する注入装置駆動ユニット
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/142 20060101AFI20220111BHJP
   A61M 5/145 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
A61M5/142 520
A61M5/145 500
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018566280
(86)(22)【出願日】2017-07-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-07-11
(86)【国際出願番号】 EP2017066585
(87)【国際公開番号】W WO2018007361
(87)【国際公開日】2018-01-11
【審査請求日】2020-06-17
(31)【優先権主張番号】16178003.6
(32)【優先日】2016-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501205108
【氏名又は名称】エフ ホフマン-ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リスト、ハンス
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-358047(JP,A)
【文献】特開2005-287944(JP,A)
【文献】特表2005-508233(JP,A)
【文献】国際公開第2013/010561(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/142
A61M 5/145
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注入装置駆動ユニット(1)であって、前記注入装置駆動ユニット(1)が、
投与ユニット(2)の操作を制御するために、前記投与ユニット(2)に動作可能に機械的に連結するように構成されたポンプ駆動装置と、
少なくとも1つのブロック部材(110)を含むブロック装置(11)とを含み、
前記投与ユニット(2)が、
投与シリンダ(20)、および、前記投与シリンダ(20)内に配置されてスライドし、シールするピストン(21)を備え、
前記ポンプ駆動装置は、プランジャロッド(10)を含み、前記プランジャロッド(10)は、変位軸(X)に沿って変位可能に案内され、前記プランジャロッド(10)は、前記投与ユニット(2)のピストン(21)と動作可能に機械的に連結するように構成され、
前記少なくとも1つのブロック部材(110)は、ブロック状態と許容状態との間で動作可能であって、
前記少なくとも1つのブロック部材(110)は、前記少なくとも1つのブロック部材(110)と前記投与シリンダ(20)との間の機械的な相互作用によって、
前記許容状態において、前記ポンプ駆動装置と前記投与ユニット(2)との間の動作可能な機械的な連結の確立および/または解除を可能にし、
前記ブロック状態において、前記ポンプ駆動装置と前記投与ユニット(2)との間の動作可能な機械的な連結の確立および/または解除を防止し、
前記注入装置駆動ユニット(1)は、前記プランジャロッド(10)が前記変位軸(X)に沿って所定の位置に位置する少なくとも1つの所定状態にある場合、許容状態となるように、および、前記プランジャロッド(10)が所定状態とは異なる配置にある場合、ブロック状態となるように、ブロック部材(110)を制御するように構成されている、注入装置駆動ユニット(1)。
【請求項2】
前記プランジャロッド(10)の最も後退した位置が、単一の所定の位置である請求項1に記載の注入装置駆動ユニット(1)。
【請求項3】
前記プランジャロッド(10)が制御部材(112)を備え、前記制御部材(112)が前記少なくとも1つのブロック部材(110)と相互作用するように配置され、それによって、前記少なくとも1つのブロック部材(110)の前記ブロック状態と前記許容状態との間での動作を制御する請求項1または2に記載の注入装置駆動ユニット(1)。
【請求項4】
最も後退した位置と最も進んだ位置との間の前記変位軸(X)に沿った前記プランジャロッド(10)の移動範囲が40mm以下である請求項のいずれか1項に記載の注入装置駆動ユニット(1)。
【請求項5】
前記ポンプ駆動装置がバルブ制御器を備え、前記バルブ制御器が、前記投与シリンダの液体開口を液体薬剤タンクまたは注入ラインと選択的に流体接続する、前記投与ユニット(2)の制御バルブと動作可能に、機械的に連結され、前記制御バルブの状態を制御するように構成される請求項1~のいずれか1項に記載の注入装置駆動ユニット(1)。
【請求項6】
前記注入装置駆動ユニット(1)が、前記バルブ制御器の状態に応じて、前記許容状態と前記ブロック状態との間で前記少なくとも1つのブロック部材(110)の動作を制御するように構成される請求項5に記載の注入装置駆動ユニット(1)。
【請求項7】
前記少なくとも1つのブロック部材(110)が、前記ブロック状態と前記許容状態との間を旋回動作によって移動するように配置される請求項1~のいずれか1項に記載の注入装置駆動ユニット(1)。
【請求項8】
前記ブロック装置(11)が少なくとも2つのブロック部材(110)を備え、前記少なくとも2つのブロック部材(110)は組み合わされて、グリッパ構造、挟み構造および/またはクランプ構造を構築する、請求項1~のいずれか1項に記載の注入装置駆動ユニット(1)。
【請求項9】
前記ブロック装置(11)が、少なくとも1つのバネ要素(111)を備え、前記少なくとも1つのバネ要素(111)が前記少なくとも1つのブロック部材(110)を前記ブロック状態に向けて付勢するように配置される、請求項1~のいずれか1項に記載の注入装置駆動ユニット(1)。
【請求項10】
前記少なくとも1つのブロック部材(110)が、前記ブロック状態において、前記注入装置駆動ユニット(1)に対する所定の動作位置を維持するために、前記投与ユニット(2)をクランプするように配置される請求項1~のいずれか1項に記載の注入装置駆動ユニット(1)。
【請求項11】
携帯型注入装置であって、前記携帯型注入装置は、長期間ユーザによって持ち運ばれ、見えないように隠されるように構成され、請求項1~10のいずれか1項に記載の注入装置駆動ユニット(1)を備え、電子制御ユニットをさらに備え、前記電子制御ユニットが前記ポンプ駆動装置に動作可能に電気的に連結され、および前記ポンプ駆動装置の操作を制御するように構成されることを特徴とする携帯型注入装置。
【請求項12】
記投与ユニット(2)が
記ブロック状態における前記少なくとも1つのブロック部材(110)と係合し、前記許容状態における前記少なくとも1つのブロック部材(110)と係合しないように配置されるブロック部材係合構造(23、24
備える、請求項1~10のいずれか1項に記載の注入装置駆動ユニット(1)
【請求項13】
前記投与ユニット(2)が、
前記ブロック状態における前記少なくとも1つのブロック部材(110)と係合し、前記許容状態における前記少なくとも1つのブロック部材(110)と係合しないように配置されるブロック部材係合構造(23、24)
を備える、請求項11に記載の携帯型注入装置。
【請求項14】
投与シリンダ(20)および前記投与シリンダ(20)内に配置されてスライドし、シールするピストン(21)を備えた投与ユニット(2)を請求項1~10および12のうちのいずれか1項に記載の注入装置駆動ユニット(1)に動作可能に連結するための、注入装置駆動ユニット(1)の作動方法であって、前記作動方法が、
a)前記注入装置駆動ユニット(1)に、前記ブロック状態にある前記少なくとも1つのブロック部材(110)を提供し、
)前記プランジャロッド(10)が所定状態となるように前記変位軸に沿って移動することにより、前記少なくとも1つのブロック部材(110)前記ブロック状態から前記許容状態へと動作し、
c)前記プランジャロッド(10)と前記ピストン(21)とが連結された後、前記プランジャロッド(10)が前記所定状態とは異なる配置となり、前記ブロック部材(110)がブロック状態となることによって、前記投与シリンダ(20)が前記ブロック部材(110)と係合する
ことを含む作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、注入装置、特には注入装置駆動ユニットの分野に属する。本開示は、さらに、携帯型注入装置、投与ユニット、および投与ユニットを注入装置駆動ユニットに連結する方法の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
携帯型注入装置は、疼痛治療や癌治療と同様に、たとえば、持続皮下インシュリン注入(CSII)による真性糖尿病の治療における液状薬剤の投与の技術の分野において周知である。携帯型注入装置は、ロッシュ ダイアビティズ ケア社(独国)またはメドトロニック ミニメッド社(米国、カリフォルニア州)などの多数の供給者から入手可能である。
【0003】
典型的な充分に確立された設計によると、これらの携帯型注入装置またはシステムは、一般的にはシリンジドライバ型である。これらのシステムの投与精度は、シリンジ状の薬剤カートリッジのピストンと、携帯型注入装置の駆動ユニットの一部であるプランジャとの間の明確に画定された連結関係に大きく依存している。明確に画定された連結関係とは、特に、プランジャロッドとピストンの明確に画定された相対位置を含む。
【発明の概要】
【0004】
携帯型注入装置にカートリッジを挿入するときに、ピストンとプランジャロッド、特にはプランジャロッドのピストン連結部材の相対位置が、プランジャロッドとの連結の際にピストンの変位が生じないようなものであれば、明確に画定された連結が与えられる。反対に、プランジャロッドが、ピストンに対してより前進した位置にある場合、ピストンが前に押されて、意図しない薬剤の送出をもたらす。もし、プランジャロッドが、ピストンに対してより後退した位置にある場合、ピストンは連結時に後退し、カートリッジ内の望ましくない低圧力となるか、および/または連結による係合が適切に確立されずに、対応したピストン変位を生じない、駆動動作が続いて起こる。これらのシナリオのいずれかは、非常に不利益であり、投与ユニットまたは薬剤カートリッジが注入カニューレを介して患者の体内に流体結合される状況において、重大な合併症という結果にさえなり得る。
【0005】
シリンジドライバシステムの使用は、充分に確立されているが、代替のシステム構造は、たとえば、欧州特許出願公開第1970677号明細書において近年提案されている。これらの代替の構造は多くの利点を示しているが、上記の問題がかかるシステムにも存在し、より危機的でさえある。たとえば、欧州特許出願公開第1970677号明細書に開示されたシステムでは、明確に画定されたピストンの変位のみならず制御バルブの明確に画定されたスイッチングをも要求される。さらに、制御バルブを有するかかる投与ユニットの態様および実施形態は、たとえば、欧州特許出願公開第1970677号明細書、欧州特許第2510962号明細書、欧州特許第2510960号明細書、欧州特許第2696915号明細書、欧州特許第2457602号明細書、国際公開第2012/069308号、国際公開第2013/029999号、欧州特許第2753380号明細書、欧州特許第2163273号明細書、欧州特許第2361646号明細書に開示されている。本明細書では、投与シリンダおよび制御バルブを有する投与ユニットを参照しているが、投与ユニットは、特には、具体的に参照される1つまたは多数のこれらの先行文献に従って構成され得る。
【0006】
携帯型注入システムにおける駆動ユニットおよび投与ユニットの接続や接続解除に関する最新の技術を改良することが全体的な目的である。本発明の特定の目的は、上記の問題を部分的にまたは全面的に取り除くことである。全体的な目的は独立請求項の主題によって達成される。特定の好ましい実施形態は従属請求項および本明細書の全体的な開示によって定義される。
【0007】
投与ユニットは、液体薬剤が注入され、すなわち明確に画定され、計量された投与量で分注される、作動注入システムの機能的なおよび/または構造的なユニットである。投与ユニットは、特には、投与ユニットの投与シリンダを薬剤入口または出口に選択的に流体接続する小型化されたピストンポンプおよび制御バルブを備える投与ユニットであってもよい。かかる投与ユニットは、たとえば、欧州特許出願公開第1970677号明細書に従って構成されてもよく、本明細書においてその開示が参照される。代替的に、投与ユニットは、円筒状のカートリッジ本体およびスライドする変位可能なピストンを有するシリンジ型薬剤カートリッジにより実現されてもよく、または、それを備えるものであってもよく、カートリッジは1~4mlの範囲の通常の最高注入量を有する。これは、上記の最新式のシリンジドライバシステムに通常用いられるカートリッジのタイプである。
【0008】
一態様において、全体的な目的は、注入装置駆動ユニットを提供することにより達成される。かかる注入装置駆動ユニットは、一般的には携帯型注入装置の組立グループを形成する。注入装置駆動ユニットは、ポンプ駆動装置を含む。ポンプ駆動装置は、投与ユニットの操作を制御するために、投与ユニットに動作可能に機械的に連結するように構成される。
【0009】
注入装置駆動ユニットは、ブロック装置をさらに備える。ブロック装置は、少なくとも1つのブロック部材を含む。少なくとも1つのブロック部材は、ブロック状態と許容状態との間で動作可能である。少なくとも1つのブロック部材は、許容状態においてポンプ駆動装置と投与ユニットとの間の動作可能な機械的な連結の確立および/または解除を可能にする。少なくとも1つのブロック部材は、ブロック状態においてポンプ駆動装置と投与ユニットとの間の動作可能な機械的な連結の確立および/または解除を防止する。
【0010】
注入装置駆動ユニットは、さらに、ポンプ駆動装置が少なくとも1つの所定状態にある場合に、許容状態となるように、少なくとも1つのブロック部材を制御するように構成される。注入装置駆動ユニットは、さらに、ポンプ駆動装置が所定状態とは異なる状態にある場合に、ブロック状態となるように、少なくとも1つのブロック部材を制御するように構成される。
【0011】
ブロック部材は、それぞれ機械的にブロックする少なくとも1つの構造的要素を備え、機械的な相互作用により、ブロック状態におけるポンプ駆動装置と投与ユニットとの間の動作可能な機械的な連結を防止する。
【0012】
少なくとも1つの所定状態は、ピストンドライバとピストンとの連結および/または連結解除が制御される方法で達成され得る駆動ユニットの状態である。好ましくは、前述されたようなピストンの変位無しに明確に画定された連結が、かかる所定状態で、確率され得るか、および/または解除され得る。
【0013】
いくつかの実施形態において、ブロック装置の配置および投与ユニットとの相互作用は、投与ユニットが、許容状態において注入装置の投与ユニット区画へ挿入され、または注入装置の投与ユニット区画から取り出されることのみが可能であり、一方投与ユニット区画への挿入または投与ユニット区画からの取り出しは、ブロック状態においてブロック装置によって機械的にブロックされるということである。
【0014】
いくつかの実施形態において、ポンプ駆動装置はプランジャロッドを備える。プランジャロッドは、変位軸に沿って変位可能にガイドされる。プランジャロッドは、さらに、投与ユニットのピストンと動作可能に、機械的に連結するように構成される。かかる実施形態において、許容状態において可能であり、ブロック状態においてブロックされる、投与ユニットとポンプ駆動装置との間の動作可能で、機械的な連結は、プランジャロッドとピストンとの機械的な係合であるか、またはそのような係合を含む。
【0015】
プランジャロッドを有するいくつかの実施形態において、所定状態は、プランジャロッドがその変位軸に沿って所定の位置にある場合の状態である。これらのいくつかの実施形態において、プランジャロッドの最も後退した位置が、所定の位置、好ましくは単一の所定の位置である。
【0016】
プランジャロッドを含むいくつかの実施形態において、プランジャロッドは制御部材を備える。制御部材は少なくとも1つのブロック部材と相互作用するように配置される。それによって、制御部材は、ブロック状態と許容状態との間での少なくとも1つのブロック部材の動作を制御する。ブロック部材の状態は、従って、その変位軸に沿ったプランジャロッドの位置によって決定される。
【0017】
プランジャロッドを含むいくつかの実施形態において、最も後退した位置と最も進んだ位置との間の変位軸に沿ったプランジャロッドの移動範囲が40mm以下である。
【0018】
いくつかの実施形態において、ポンプ駆動装置はバルブ制御器を備える。バルブ制御器は、投与ユニットの制御バルブと動作可能に機械的に連結され、制御バルブの状態を制御するように構成される。
【0019】
バルブ制御器を有するいくつかの実施形態において、注入装置駆動ユニットは、バルブ制御器の状態に応じて、許容状態とブロック状態との間で少なくとも1つのブロック部材の動作を制御するように構成される。
【0020】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのブロック部材は、ブロック状態と許容状態との間で旋回動作によって移動するように配置される。
【0021】
いくつかの実施形態において、ブロック装置は、少なくとも2つのブロック部材を備える。少なくとも2つのブロック部材は、グリッパ構造、挟み構造および/またはクランプ構造が組み合わされて構築される。
【0022】
いくつかの実施形態において、ブロック装置は、少なくとも1つのバネ要素を備える。少なくとも1つのバネ要素は、少なくとも1つのブロック部材をブロック状態に向けて付勢するように配置される。
【0023】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのブロック部材は、ブロック状態において、注入装置駆動ユニットに対する所定の操作位置を維持するために、投与ユニットをクランプするように配置される。
【0024】
さらなる態様において、全体的な目的は、携帯型注入装置を提供することにより達成される。好ましくは、携帯型注入装置は、長期間ユーザによって持ち運ばれ、見えないように隠されるように構成される。携帯型注入装置は、注入装置駆動ユニットを備え、これは、たとえば、前記のおよび/または例示的な実施形態に関連して以下にさらに記載される注入装置駆動ユニットである。通常は、携帯型注入装置は、電子制御ユニットをさらに備え、電子制御ユニットがポンプ駆動装置、特には前記ポンプ駆動装置のアクチュエータに動作可能に、電気的に接続される。電子制御ユニットは、ポンプ駆動装置の動作を制御するように構成される。しかしながら、本開示は、また、電子制御の無いシステムに関連して、たとえば、この技術において公知の機械的スプリング駆動装置を有するシステムにおいて使用されてもよい。
【0025】
いくつかの実施形態において、携帯型注入装置は、基礎レート(basal rate)の液体薬剤の投与、好ましくは、電子制御ユニットの制御下での経時変動する基礎投与スケジュールに従って投与するように構成される。携帯型注入装置は、専用のユーザコマンドに応じて要求される液体薬剤のボーラス投与用として構成されてもよい。
【0026】
さらなる態様において、全体的な目的は、注入装置駆動ユニットおよび/または携帯型注入装置と組み合わせて使用される投与ユニットを提供することにより達成される。注入装置および/または注入装置駆動ユニットは、たとえば、前記のようにおよび/または例示的な実施形態に関連して以下にさらに記載されるように実施されてもよい。
【0027】
本開示に係る投与ユニットは、ブロック部材係合構造をさらに備える。ブロック部材係合構造は、ブロック状態における少なくとも1つのブロック部材と係合し、許容状態における少なくとも1つのブロック部材と係合しないように配置される。
【0028】
さらなる態様によれば、全体的な目的は、投与ユニットを注入装置駆動ユニットに動作可能に連結する方法を提供することにより達成される。投与ユニットおよび注入装置駆動ユニットは、たとえば、例示的な実施形態に関連して以下にさらに記載されるのと同様に、前記されたようなものであってもよい。方法は、
a)注入装置駆動ユニットに、ブロック状態にある少なくとも1つのブロック部材を提供し、
b)所定状態となるようにポンプ駆動装置を制御し、
c)ポンプ駆動装置が所定状態となると、少なくとも1つのブロック部材をブロック状態から、ブロック部材を解除する所定状態に移動する
ことを含む。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1a】例示的実施形態に係るブロック装置およびブロック状態と許容状態のそれぞれにおける関連する構成要素を示す。
図1b】例示的実施形態に係るブロック装置およびブロック状態と許容状態のそれぞれにおける関連する構成要素を示す。
図2a】さらなる例示的実施形態に係るブロック装置およびブロック状態と許容状態のそれぞれにおける関連する構成要素を示す。
図2b】さらなる例示的実施形態に係るブロック装置およびブロック状態と許容状態のそれぞれにおける関連する構成要素を示す。
図3】携帯型注入装置の概略機能図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
例示的な実施形態が、図をさらに参照してより詳細に以下に記載される。
【0031】
本明細書において、「左」、「右」、「上」、「下」などの方向的な用語およびフレーズは、一般的には図面に関連して使用され、読み手の理解をサポートすることのみを意図するものである。これらは、操作における任意の特定の方向を意味するものではない。
【0032】
関連する場合には、プランジャロッドの前進を指す方向および後退を指す方向のそれぞれは「A」および「R」で示される。
【0033】
より明確にするために、いくつかの図面において、同様の、または略同様の方法で示される構成要素は、一般的には一度参照されるだけである。
【0034】
以下において、最初に、以下に説明される2つの代替の構成における投与ユニット2の一部と共に注入装置駆動ユニット1の一部を示す図1a、図1bが参照される。
【0035】
例示として、投与ユニット2は、開口した後端を有する略円筒状の投与シリンダ20を含んでいる。投与シリンダ20の内部には、ピストン21が、長手軸Xに沿ってシールし、スライドするように配置される。前端において、投与シリンダ20は、液体開口22を備えている。ピストンを前進方向に移動することにより、ピストン21と前面との間の投与シリンダ20の内部の液体は、液体開口22を経由し投与シリンダ20から押し出される。同様にピストン21を後退方向に移動させることにより、液体は液体開口22を経由して投与シリンダ20に吸入されることになる。
【0036】
この実施形態では、液体開口22は、液体開口22を液体薬剤タンクまたは注入ラインのそれぞれと代替的におよび選択的に流体接続するために、投与ユニット2の制御バルブ(図示せず)と動作可能に流体接続される。制御バルブは、たとえば、回転変位するまたは線形に変位するカプラー、ステップスイッチ機構などを経由して、注入装置駆動ユニットのバルブアクチュエータおよびバルブアクチュエーション機構と動作可能に、機械的におよび解除可能に接続されるように構成される。代替的に、制御バルブは、投与シリンダ20および投与ユニット2の静止部材(図示せず)によって組み合わせて実現され、投与シリンダ20は、たとえば、欧州特許第2163273号明細書において開示されているように、バルブ切り換え用の静止部材に対して移動可能、たとえば、旋回可能である。
【0037】
さらなる実施形態において、投与ユニット2は、制御バルブを備えずに、液体薬剤が、公知のシリンジドライバ装置の場合のように、投与シリンダ20から注入ラインに直接分注される。かかる実施形態の投与シリンダ20は、典型的には数日分、たとえば1~4mlの液体薬剤の間断の無い治療用の液体薬剤の量を保管するカートリッジとして実現される。かかる実施形態の液体開口22は注入ラインカプラー、たとえば公知のルアーカプラーに流体連結されるか、または一体化されるか、または注入ラインおよび/または注入カニューラに直接接続される。
【0038】
投与シリンダ20は、その後端において、断面形状が拡大した外周突起部23をさらに備える。突起部23は、ブロック部材係合構造を形成し、以下にさらに説明されるようにブロック装置のブロック部材と相互作用するように構成される。
【0039】
ここで、および以下において、投与ユニット2は、携帯型注入装置の投与ユニット区画(図示せず)に取り外し可能に配置されると想定される。さらに、明確に画定された固定位置が維持されるように、投与ユニット2は、投与ユニット区画の壁により、停止部などにより、投与ユニット区画内に固定されると想定される。投与ユニット2および投与ユニット区画は、留め具、ラッチ、プリズムガイドなどの対応する機械的係合構造を備えていてもよい。
【0040】
さらに、投与ユニット2が、後退方向における軸方向の移動によって投与ユニット区画に挿入され、前進方向への軸方向の移動によって投与ユニット区画から取り除かれることが、例示的に想定される。
【0041】
例示的な注入装置駆動ユニット1は、ポンプ駆動装置の一部であり、最も前進した位置と最も後退した位置のそれぞれの間の直線的な変位動作を行うように制御されるプランジャロッド10を備える。図1aは、最も後退した位置にあるプランジャロッド10を例示的に示す。プランジャロッド10は、概略的に示すように、直線的にガイドされる。
【0042】
ポンプ駆動装置は、一般的には電気モータの形式の少なくとも1つのアクチュエータを備え、任意にさらなる中間構成要素、特には減速ギヤ(図示せず)をさらに備える。
【0043】
プランジャロッド10は、変位軸Xと同軸で、変位軸Xに沿って延びる、細長いプランジャロッド本体100を備える。プランジャロッド10は、その前端において、ピストン21(概略的に図示されている)に着脱可能で、動作可能に機械的な接続を構築するためのピストンカプラー101をさらに備える。ピストンカプラー101とプランジャ21との間の機械的な接続は、前進方向と後退方向のそれぞれ両方における力の伝達を可能にするプッシュプル接続である。ピストン21は、従って、プランジャロッド10の対応する変位量によって、前進および後退方向に動かされる。かかる接続に関しては、多くのデザインが、たとえば、ピストン21の対応する空洞に係合する、ねじ連結、バヨネット式連結、磁気または電磁気的連結、または、ピストンカプラー101のブラシまたはペンチ状のブレーシング構造を介した連結が、この技術において公知である。
【0044】
プランジャロッド10は、制御部材を形成し、以下により詳細に説明される、外周制御突起部102を備える。
【0045】
注入装置駆動ユニット1は、本開示に従ってブロック装置11をさらに備える。ブロック装置11は、グリッパアーム110として例示的に実施される2つのブロック部材を例示的に備える。グリッパアーム110は、プランジャロッド10から径方向に離間して、プランジャロッド10と略平行に設けられる。これらの前端において、グリッパアーム110は、各々、すぐに内側に突出するグリッパ突起部112を備える。グリッパアーム110は、投与シリンダの突起部23と相互作用し、係合するように構成される。グリッパアーム110は、それらの後端近傍の、対応する旋回軸P1、P2の回りを旋回するように配置される。ブロック装置11は、湾曲したスプリングワイヤ111の長さにより例示的に実施されるバネ要素をさらに備える。スプリングワイヤ111は、グリッパアーム110の対応する穴に係合し、グリッパアーム110を径方向内側に向かって付勢する。各グリッパアーム110は、プランジャロッド10に向かって径方向内側に向き、制御突起部102と相互作用し、係合するように構成される。
【0046】
下記に、例示的なブロック装置11および関連する構成要素の動作がより詳細に説明される。図1aは、許容状態におけるブロック装置11および所定の位置のプランジャロッド10を示す。図1aの許容状態において、制御突起部102の外周外部表面は、制御カム113と係合し、それによって、スプリングワイヤ111によって加わる内向きの力に抗してグリッパアーム110を外側に旋回させる。この状態において、グリッパ突起部112間のすきまは、投与ユニット2の軸方向の動作を可能にするのに充分である。より具体的には、グリッパ突起部112間のすきまは、突起部23の径よりも大きい。
【0047】
この具体的な例において、所定の位置は、所定の位置としては最も後退した位置である。これは、設計によって機械的に明確に画定された位置である。同様に、投与ユニット2のピストン21の最も後退した位置は、明確に画定されている。ピストン21およびプランジャロッド10の両方がそれらのそれぞれの最も後退した位置にある場合、機械的な連結、たとえば、ねじ連結、バヨネット連結が、投与シリンダ20内におけるピストン21の変位無しにピストンカプラー101とピストン21との間で確立され、解除され得る。
【0048】
図1aに示される状態から始まって、プランジャロッド10および係合したピストン21を前進方向に動かすと、制御カム113の内側端部が、制御突起部102の後部制御表面103上をスライドする。制御表面103のスロープに従って、グリッパアーム110が内側に旋回し、スプリングワイヤ111によって加えられた付勢力により駆動される。したがって、グリッパ突起部112間のすきまが減少する。ある時点で、グリッパ突起部112間のすきまが、その間を投与ユニットの突起部23が通ることができないほど小さくなる。
【0049】
図1bは、グリッパアーム110の許容状態からブロック状態への動作が完了した状態を示す。このブロッキング位置において、グリッパアーム110は、プランジャロッド10に向かって内側へ移動させられている。制御カム113は、もはや制御突起部112に接触せず、係合しない。投与ユニット2の突起部23は、グリッパ突起部112の後ろで、軸方向に配置されており、したがって、前進方向における、投与ユニット2の軸方向の取り外し動作が機械的に防止される。
【0050】
図1bから始まって、プランジャロッド10および結合されたピストン21が、さらに前進させられると、グリッパアーム110は、ブロック状態に留まる。
【0051】
しかしながら、プランジャロッド10が再度後退させられると、上記工程が逆方向に行われ、グリッパアーム110は、したがって、ブロック状態から許容状態へと旋回し、投与ユニット2はフリーになって、携帯型注入デバイスの投与ユニット区画から軸方向に取り外される。
【0052】
図1a、図1bに示される実施形態は、多くの方法で変更されるか、および/または修正され得る。たとえば、ブロック状態と、ブロック状態および許容状態の間の遷移状態は、プランジャロッド本体100の制御突起部102の軸方向の位置によって画定されることが分かる。制御突起部102を軸方向に移動することにより、プランジャロッド10の任意のその他の所望の位置が所定の位置として選択され得る。
【0053】
プランジャロッド本体100の長さに沿って複数の制御突起部を設けることにより、複数の所定の位置を前もって知ることができる。たとえば、示された構成は、最も後退した軸方向のプランジャロッド位置および最も前進した軸方向のプランジャロッド位置の両方が所定の位置であるように修正されてもよい。
【0054】
さらに、グリッパアーム110の数および特定の配置が修正されてもよい。図1a、図1bに示された例において、2つのグリッパアーム110が、例示的に、プランジャロッド10の正反対の側に対称的に配置される。代わりに、1つのグリッパアームのみがあってもよく、または3つ以上のグリッパアームが、たとえば、3つのグリッパアームが120度の角度で存在してもよい。同様に、ブロック部材が、軸方向とは異なる方向において、選択的に、投与ユニット2の移動を可能にするか、または防止するために配置されてもよい。
【0055】
スプリングワイヤ111に代わって、他のタイプのバネ要素が使用されてもよい。たとえば、スプリングワイヤ111は、各々がグリッパアーム110の1つに作用する、2つの個別のスプリングで置き換えられてもよい。さらなる変形例では、バネ要素は存在しないが、ブロック部材が、たとえば、グリッパアーム110が、プランジャロッド10の軸方向の位置に応じて、拘束されて案内される。
【0056】
以下において、図2a、図2bがそれぞれ追加的に参照され、本開示に従ってさらなる実施形態を示す。
【0057】
図2a、図2bは、携帯型注入デバイスのカートリッジ区画30に配置された投与ユニット2を概略的に示す。ブロック部材としては、2つのブロックピン110aが設けられ、対応する矢印によって示される軸に沿って変位させることが可能なように配置される。ブロックピン110aは、ブロック状態(図2b)において、投与ユニット2の切欠などの対応する凹部24と係合する。許容状態(図2a)においては、ブロックピン110aは、投与ユニット2と係合しない。図1a、図1bの上記された実施形態と異なり、ブロックピン110aの移動は、プランジャロッドの移動を介して機械的に制御されるものではない。代わりに、専用のブロックアクチュエータ114、たとえば、電磁アクチュエータが、ブロックピン110aと動作可能に機械的に接続されて設けられる。ブロックアクチュエータ114は、携帯型注入装置の制御回路31から制御される。
【0058】
この例では、ブロックピン110aの動作は電子制御されるので、ポンプ駆動装置の任意の所望の状態が、所定の状態として選択されてもよい。プランジャロッドの位置を決定するために、変位エンコーダー、ポジションスイッチなどの1つまたは複数の位置検出デバイスが、任意に設けられてもよい。図1a、図1bの実施形態においては、対照的に、機械的な設計によって1つまたは複数の許容状態が与えられる。
【0059】
図2a、図2bと同様に図1a、図1bのそれぞれの例示的な実施形態において、ブロック状態と許容状態との間のブロック部材の動作が、プランジャロッドの位置に応じて主として説明されている。携帯型注入デバイスが、上述した制御バルブを有する投与ユニットと組み合わせて使用されるように構成される場合、概略で同じ種類の配置が、プランジャロッドの位置に代わって、または追加的に、バルブアクチュエーション機構の状態に依存して、ブロック状態と許容状態との間で移動するために使用されてもよい。
【0060】
以下において、図3がさらに参照される。図3は、携帯型注入デバイスを、概略的な機能図で示す。携帯型注入デバイスは、特には、図1a、図1bおよび/または図2a、図2bと関連して上述した携帯型注入デバイスであってもよく、上述した構造的なおよび/または機能的な特徴を有していてもよい。
【0061】
携帯型注入デバイス1は、対応するファームウエアコードで動作する1つまたは複数のマイクロコントローラおよび/またはマイクロコンピュータ、および/または、ASICSおよび従来の能動回路および/または受動回路など、プログラム可能な追加の構成要素を備え得る電子制御ユニットまたは制御回路31を備える。電子制御ユニット31は、ユーザインタフェースおよび/または1つまたは複数の通信インタフェースをさらに備える。
【0062】
携帯型注入デバイスは、上述した任意実施形態に従って構成され得る注入デバイス駆動ユニット1をさらに備える。注入デバイス駆動ユニット1は、制御されるポンプ駆動装置32をさらに備える。ポンプ駆動装置32は、標準DCモータ、ブラシレスDCモータまたはステップモータのようなモータなどのアクチュエータを備え、減速ギヤをさらに備え得る。ポンプ駆動装置32は、図1a、図1bおよび図2a、図2bに関連して上述したような移動をするように、アクチュエータにより制御されるプランジャロッド10をさらに備える。任意には、注入デバイス駆動ユニット1は、上述したように、投与ユニット2の制御バルブを切り換えるためのバルブアクチュエータ33を有する専用のバルブコントローラをさらに備える。注入デバイス駆動ユニット1は、上述した任意の実施形態によるブロック装置11をさらに備える。
【0063】
任意には、携帯型注入デバイスは、1つまたは複数のセンサ34を含む。1つまたは複数のセンサ34は、特には、位置、特にはプランジャロッド10の所定のプランジャロッド位置を検出するように構成され、配置され得る。
【0064】
携帯型注入デバイスは、薬剤カートリッジ区画および/または投与ユニット区画であってもよい少なくとも1つの区画30をさらに備える。
【0065】
携帯型注入デバイスは、好ましくは、動作状態において、密閉、特には、防水または水密構造を確保するように構成されるハウジング39をさらに備える。ハウジングおよび携帯型注入デバイスは、全体として、好ましくは、携帯型注入デバイスを、略連続して、長期にわたる期間、一般的には何日も、たとえば何週間までもユーザによって持ち運ぶことができ、かつ、見られないように隠し得るような形状である。代替的にまたは追加で、注入デバイスは、ユーザの皮膚に直接、特には吸着パッドにより貼り付けられるように構成されてもよい。
図1a
図1b
図2a
図2b
図3