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特許6998909静電塗布装置、監視装置及び静電塗布方法
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  • 特許-静電塗布装置、監視装置及び静電塗布方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-23
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】静電塗布装置、監視装置及び静電塗布方法
(51)【国際特許分類】
   B05B 5/025 20060101AFI20220111BHJP
   B05D 1/04 20060101ALI20220111BHJP
   G01R 31/00 20060101ALI20220111BHJP
   G01R 31/12 20200101ALI20220111BHJP
【FI】
B05B5/025 F
B05B5/025 A
B05D1/04 A
G01R31/00
G01R31/12 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019041450
(22)【出願日】2019-03-07
(65)【公開番号】P2020142204
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2020-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】390000011
【氏名又は名称】JFEアドバンテック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591274059
【氏名又は名称】CFTランズバーグ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】小田 将広
(72)【発明者】
【氏名】櫛田 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】小林 俊也
(72)【発明者】
【氏名】山崎 勇
(72)【発明者】
【氏名】横溝 義治
(72)【発明者】
【氏名】吉田 治
【審査官】塩屋 雅弘
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-024374(JP,A)
【文献】特開昭59-098753(JP,A)
【文献】特開平05-269408(JP,A)
【文献】特開平07-015306(JP,A)
【文献】特開2012-071224(JP,A)
【文献】特開昭60-220158(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 5/00-5/16
12/00-12/14
13/00-13/06
B05D 1/00-7/26
G01R31/00
31/12-31/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗物を支持する支持部と、
前記被塗物に比べて高電位を有し、前記被塗物に対して帯電した塗料微粒子を噴出させる塗布部と、
前記被塗物に接触又は前記被塗物の近傍に位置し、接地された接地端子と、
前記被塗物と前記接地端子との間の部分放電を検出する部分放電検出部と、
前記被塗物から接地に流れる電流を測定する第1電流測定部又は前記塗布部から接地に流れる電流を検出する第2電流測定部と、
記第1電流測定部又は前記第2電流測定部での測定結果基づいて、前記被塗物が静電塗布可能な状態であるか否かを判定し、静電塗布可能な状態でないと判定した場合であってもさらに、前記部分放電検出部での測定結果に基づいて前記被塗物が静電塗布可能な状態であるか否かを判定する判定部と、
を備える、静電塗布装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記第1電流測定部での測定結果に基づいて静電塗布可能な状態でないと判定した場合、前記部分放電検出部での測定結果に基づく判定の前に、前記第2電流測定部での測定結果に基づいて前記被塗物が静電塗布可能な状態であるか否かを判定する、請求項1に記載の静電塗布装置。
【請求項3】
前記部分放電検出部は、設定時間内の部分放電により検出される部分放電パルス信号の振幅、発生間隔、単位時間当たりの発生回数の少なくともいずれか1つに基づいて、部分放電が発生しているか否かを判断する、請求項1又は2に記載の静電塗布装置。
【請求項4】
前記部分放電検出部は、高周波CTセンサ、TEVセンサ、音響センサ、電磁波受信アンテナのいずれかである、請求項1から3のいずれか1項に記載の静電塗布装置。
【請求項5】
前記被塗物は非導電性材料からなり、
前記被塗物に、導電性プライマーが塗布されていない状態で取り付けられ、前記接地端子が接触又は接近して配置される導電片を備える、請求項1から4のいずれか1項に記載の静電塗布装置。
【請求項6】
前記微粒子は塗料であり、
前記塗布部は前記塗料を噴霧する塗装ガンである、請求項1から5のいずれか1項に記載の静電塗布装置。
【請求項7】
被塗物を支持する支持部と、
前記被塗物に比べて高電位を有し、前記被塗物に対して帯電した塗料微粒子を噴出させる塗布部と、
前記被塗物に接触又は前記被塗物の近傍に位置し、接地された接地端子と、
前記被塗物と前記接地端子との間の部分放電を検出する部分放電検出部と、
前記被塗物から接地に流れる電流を測定する第1電流測定部と、
記第1電流測定部での測定結果基づいて、前記被塗物が静電塗布可能な状態であるか否かを判定し、静電塗布可能な状態でないと判定した場合であってもさらに、前記部分放電検出部での測定結果に基づいて前記被塗物が静電塗布可能な状態であるか否かを判定する判定部と、
を備える、監視装置。
【請求項8】
前記塗布部から接地に流れる電流を測定する第2電流測定部をさらに備え、
前記判定部は、部分放電検出部での検出結果、及び、前記第1電流測定部での測定結果に加えて、前記第2電流測定部での測定結果に基づいて、前記被塗物が静電塗布可能な状態であるか否かを判定する、請求項7に記載の監視装置。
【請求項9】
被塗物を支持し、
接地線に接続された接地端子を前記被塗物に接触又は前記被塗物の近傍に配置し、
前記被塗物に比べて高電位を有する塗布部を前記被塗物に接近させ、
前記被塗物と前記接地端子との間の部分放電を検出し、
前記塗布部から接地に流れる接地電流を測定し、
記接地電流に基づいて、前記被塗物が静電塗布可能な状態であるか否かを判定し、静電塗布可能な状態でないと判定した場合であってもさらに、前記部分放電に基づいて前記被塗物が静電塗布可能な状態であるか否かを判定する、静電塗布方法。
【請求項10】
前記被塗物から前記塗布部に流れる被塗物電流をさらに測定し、前記接地電流に基づいて静電塗布可能な状態でないと判定した場合、前記部分放電に基づく判定の前に、前記被塗物電流に基づいて、前記被塗物が静電塗布可能な状態であるか否かを判定する、請求項9に記載の静電塗布方法。
【請求項11】
前記被塗物が非導電性材料である場合、前記被塗物に導電片を取り付け、
前記接地端子を前記導電片に接触又は近傍に配置し、
前記導電片の近傍から塗布を開始する、請求項9又は10に記載の静電塗布方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子を帯電させて被塗物に塗布する静電塗布装置、監視装置及び静電塗布方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
静電塗布の一種である静電塗装では、対象となる被塗物が接地され、それに対して高電位差を持つ塗装ガンから噴出する帯電した塗料微粒子が被塗物に付着して塗装がなされる。静電塗装は接地された部位から塗布を開始し,形成した塗膜を介して接地領域を拡大させながら被塗物に塗装を施す。ここで、被塗物が確実に接地されていないと、帯電した塗料微粒子の付着に伴い被塗物に電荷が蓄積される。この結果、塗装ガンに対する相対的な電位差が小さくなって塗料微粒子が適切に被塗物に付着しなくなり、塗装ムラや膜厚不足という品質不良が起こる。さらに、被塗物に電荷が溜まった状態であるため、周囲に配置された治具等との間でスパークが生じたり、作業者が被塗物を外す際に放電が生じて災害が発生したりする危険もある。そのため、被塗物の接地状態が良好であるかを塗装前に検査することが行われる。
【0003】
従来、被塗物における接地状態の検査手法としては、塗装前に、静電塗装を行う際に用いられる塗装ガンにより被塗物を帯電させた後、塗装ガンを被塗物に接近させ、被塗物から塗装ガンに生じる放電電流を測定して接地状態の良否を判定する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この方法では、塗装前に被塗物の接地状態が良好と判定されれば、それ以降は被塗物の接地状態は良好であるものと見なされ、静電塗装が実施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-71224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
被塗物を設置する冶具と被塗物との間に隙間があり、接地状態が良好でない場合でも、その空隙が狭く、部分放電が発生して被塗物に蓄積される電荷が除電されていれば、静電塗装を正常に行うことができる。しかし、前述の技術では、接地状態が良好であるか否かの判定を行うだけである。このため、接地状態が良好でなくても静電塗装が可能な状態を判定することはできず、被塗物の管理幅が狭い。
【0006】
また、放電電流を測定するために塗装ガンを被塗物に対し規定の場所に移動させる測定専用動作をさせる必要があるため、作業効率が悪い。
【0007】
さらに、塗装前の接地状態の良否判定はできたとしても、塗装中に同方法を使うことはできず、塗装中に、接地状態が良好か否かあるいは静電塗装するのに適した状態か否かを判定できない。
【0008】
本発明は、被塗物設置の管理基準が広く、塗装中の監視により品質不良の発生と事故の発生を防止できる静電塗布装置及び静電塗布方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、
被塗物を支持する支持部と、
前記被塗物に比べて高電位を有し、前記被塗物に対して帯電した塗料微粒子を噴出させる塗布部と、
前記被塗物に接触又は前記被塗物の近傍に位置し、接地された接地端子と、
前記被塗物と前記接地端子との間の部分放電を検出する部分放電検出部と、
前記被塗物から接地に流れる電流を測定する第1電流測定部又は前記塗布部から接地に流れる電流を検出する第2電流測定部と、
前記部分放電検出部での検出結果と、前記第1電流測定部又は前記第2電流測定部での測定結果とに基づいて、前記被塗物が静電塗布可能な状態であるか否かを判定する判定部と、
を備える、静電塗布装置を提供する。
【0010】
この構成により、第1電流測定部又は第2電流測定部の測定結果からでは静電塗布できないと判断された場合であっても、部分放電検出部による検出結果に基づいて静電塗布できるか否かを的確に判断できる。
【0011】
前記判定部は、被塗物が静電塗布可能な状態であるか否かを継続的に監視するのが好ましい。
【0012】
この構成により、静電塗布中に振動等が原因で発生する可能性のある、被塗物と接地端子との間の導電状態をも把握することができる。
【0013】
前記部分放電検出部は、設定時間内の部分放電により検出される部分放電パルス信号の振幅、発生間隔、単位時間当たりの発生回数の少なくともいずれか1つに基づいて、部分放電が発生しているか否かを判断すればよい。
【0014】
前記部分放電検出部は、高周波CTセンサ、TEVセンサ、音響センサ、電磁波受信アンテナのいずれかであればよい。
【0015】
前記被塗物は非導電性材料からなり、
前記被塗物に、導電性プライマーが塗布されていない状態で取り付けられ、前記接地端子が接触又は接近して配置される導電片を備えるのが好ましい。
【0016】
この構成により、被塗物が非導電性材料であっても接地状態を形成して静電塗布することが可能となる。
【0017】
前記微粒子は塗料であり、
前記塗布部は前記塗料を噴霧する塗装ガンであればよい。
【0018】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、
被塗物を支持する支持部と、
前記被塗物に接触又は前記被塗物の近傍に位置し、接地された接地端子と、
前記被塗物と前記接地端子との間の部分放電を検出する部分放電検出部と、
前記被塗物から接地に流れる電流を測定する第1電流測定部と、
前記部分放電検出部での検出結果と、前記第1電流測定部での測定結果とに基づいて、前記被塗物が静電塗布可能な状態であるか否かを判定する判定部と、
を備える、監視装置を提供する。
【0019】
前記塗布部から接地に流れる電流を測定する第2電流測定部をさらに備え、
前記判定部は、部分放電検出部での検出結果、及び、前記第1電流測定部での測定結果に加えて、前記第2電流測定部での測定結果に基づいて、前記被塗物が静電塗布可能な状態であるか否かを判定するのが好ましい。
【0020】
この構成により、より一層高精度に静電塗布できるか否かを的確に判断できる。
【0021】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、
被塗物を支持し、
接地線に接続された接地端子を前記被塗物に接触又は前記被塗物の近傍に配置し、
前記被塗物に比べて高電位を有する塗布部を前記被塗物に接近させ、
前記被塗物と前記塗布部との間の部分放電を検出し、
前記塗布部から接地に流れる接地電流を検出し、
前記部分放電及び前記接地電流に基づいて、前記被塗物が静電塗布可能な状態であるか否かを判定する、静電塗布方法を提供する。
【0022】
前記被塗物から前記塗布部に流れる被塗物電流をさらに測定し、前記部分放電及び前記接地電流に加えて、前記被塗物電流に基づいて、前記被塗物が静電塗布可能な状態であるか否かを判定するのが好ましい。
【0023】
前記被塗物が非導電性材料である場合、前記被塗物に導電片を取り付け、
前記接地端子を前記導電片に接触又は近傍に配置し、
前記導電片の近傍から塗布を開始するのが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、接地が良好でなくとも静電塗装に適した除電であるか否かを判定できるので、塗布前の確認で、従来よりも被塗物設置の管理基準が広くなる。また、塗装中にも監視できるので、塗装ムラ、膜厚不足などの品質不良の発生を防ぐと共に、冶具へのスパーク、作業者の感電といった事故を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本実施形態に係る静電塗布装置の概略図である。
図2図1に示す制御装置で実行する静電塗布処理の内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは相違している。
【0027】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る静電塗布装置を示す。この静電塗布装置は、支持部1、塗布部2、接地端子3、第1電流測定部4、第2電流測定部5、部分放電検出部6及び判定部7を備える。
【0028】
支持部1は、基台8から突出する支軸9の先端に治具10を設けたものである。支軸9の中間部分には不導体18が設けられている。治具10は、被塗物11(ここでは樹脂製バンパー)を支持する。支持部1すなわち、その治具10に支持された被塗物11はコンベア12により搬送される。被塗物11には、導電片13が取り付けられている。被塗物11を支持部1に載置したとき、導電片13が接地端子3に接触するように構成されている。なお、被塗物11が導電材料で構成されている場合には、導電片13は不要となる。
【0029】
塗布部2には、被塗物11に対して塗料を噴霧する塗布ガン14が使用されている。塗布ガン14は、先端部分にベルカップ15を備える。ベルカップ15は、図示しないエアモータ等により回転する。ベルカップ15の内面には流体塗料が展延され、ベルカップ15の回転により微粒化されて塗布微粒子となる。また、塗布部2には高電圧発生装置16(カスケード)が設けられている。高電圧発生装置16は、塗布部2に負極性の静電高電圧を印加し、ベルカップ15で得られた塗布微粒子を負極側に帯電させる。また高電圧発生装置16には、高電圧コントローラ17が電気的に接続されている。高電圧コントローラ17により、高電圧発生装置16から出力する電圧が任意の値(-90~-30kV)に設定される。このように、前記塗布部2によれば、高電圧を印加したベルカップ15と、接地した被塗物11との間に電界が形成され、ベルカップ15で得られた塗料微粒子が帯電し、被塗物11に向かってクーロン力が作用する。このため、被塗物11には塗布微粒子が効率良く塗布される。なお、塗布部2は、図示しないロボットアームによって被塗物11に対するベルカップ15の位置を変更可能となっている。
【0030】
接地端子3は、被塗物11が支持部1に対して適切な位置に載置された状態で、被塗物11に接触するように配置されている。接地端子3から支持部1を通って接地線lが延びている。これにより、被塗物11は支持部1に載置されると、接地端子3から接地線lを介して接地された状態となる。
【0031】
第1電流測定部4は、被塗物11に接触する接地端子3から延びる接地線lの途中に設けられている。第1電流測定部4で測定された電流値は判定部7に入力される。
【0032】
第2電流測定部5は、高電圧発生装置16と高電圧コントローラ17との間に設けられている。第2電流測定部5は、塗布部2から接地に流れる電流を測定する。第2電流測定部5での測定結果は判定部7に入力される。なお、第2電流測定部5は高電圧コントローラ17に収納できる。
【0033】
部分放電検出部6は、被塗物11と接地端子3との接触部分の近傍又は接地線lに配置されている。部分放電検出部6は、被塗物11と接地端子3との接触が適切に行われていない場合、両者の間で発生する部分放電を検出する。部分放電検出部6での検出結果(検出値)は判定部7に入力される。なお、部分放電検出部6は、高周波CTセンサ、TEV(Transient Earth Voltage)センサ、音響センサ、電磁波受信アンテナ等で構成できる(図1では、高周波CTセンサを使用した例を示している。)。
【0034】
判定部7は、第1電流測定部4、第2電流測定部5及び部分放電検出部6から入力される検出信号に基づいて、被塗物11が静電塗布可能な状態であるか否かを判定する。そして、第1電流測定部4、第2電流測定部5、部分放電検出部6及び判定部7により本発明に係る監視装置を構成している。
【0035】
次に、前記構成からなる静電塗布装置の動作について図2のフローチャートに従って説明する。
【0036】
基台8から突出する治具10に被塗物11を取り付ける。このとき、被塗物11に予め取り付けた導電片13が接地端子3に接触する。但し、治具10に被塗物11を取り付ける際、被塗物11は必ずしも正確に配置できる訳ではなく、導電片13と接地端子3とが非接触状態となることもあり得る。
【0037】
そこでまず、第1電流測定部4で測定される第1測定電流値i1を読み込む(ステップS1)。そして、読み込んだ第1測定電流値i1が予め設定してある第1設定電流値Is1よりも大きいか否かを判断する(ステップS2)。第1測定電流値i1が第1設定電流値Is1よりも大きければ、被塗物11がその導電片13から接地端子3を介して接地されていると判断し、塗布部2による静電塗布処理を開始する(ステップS3)。
【0038】
ところで、第1測定電流値i1は、塗装機側でのリーク電流、気中放電等の影響を受ける。このため、第1測定電流値i1が第1設定電流値Is1以下である場合であっても、被塗物11に静電塗布できる可能性がある。そこで、第1測定電流値i1が第1設定電流値Is1以下であれば(ステップS2:NO)、第2電流測定部5で測定される第2測定電流値i2を読み込む(ステップS4)。そして、読み込んだ第2測定電流値i2が第2設定電流値Is2よりも大きいか否かを判断する(ステップS5)。第2測定電流値i2が第2設定電流値Is2よりも大きければ、被塗物11の導電片13に対する接地端子3の接触状態が適切であると判断し、塗布部2による静電塗布処理を開始する(ステップS3)。
【0039】
一方、第2測定電流値i2が第2設定電流値Is2以下であれば(ステップS5:NO)、部分放電検出部6で検出される検出信号を読み込む(ステップS6)。検出信号の指標としては、部分放電により測定されるパルス波形(部分放電パルス信号)の最大値、平均値、発生間隔、発生周波数の平均値等が挙げられる。最大値を指標とする場合、予め設定した時間幅でパルス波形の振幅の最も大きい値を使用する。平均値を指標とする場合、予め設定した時間幅(設定時間)でパルス波形の振幅を平均した値を使用する。発生間隔を指標とする場合、パルス波形が予め設定した閾値を超えてからそれ以下となった後、再び閾値を超えるまでの時間(発生間隔)を測定し、予め設定した時間内に測定される発生間隔を平均した値を使用する。発生周波数の平均値を指標とする場合、発生間隔の逆数を発生周期として、予め設定した時間内での発生周期を平均した値を使用する。
【0040】
そして、部分放電検出部6での検出値xが予め設定した基準設定値Sを超えているか否かを判断する(ステップS7)。検出値xが基準設定値Sを超えていれば(検出値xが発生間隔の場合、基準設定値Sを下回っていれば)、たとえ第1電流測定部4及び第2電流測定部5での測定電流v1及びv2がそれぞれ設定電流値Vs1及びVs2以下であったとしても、被塗物11に静電塗布可能な状態であると判断し、静電塗布を開始する(ステップS3)。
【0041】
一方、検出値xが基準設定値S以下(検出値xが発生間隔の場合、基準設定値S以上)であれば(ステップS7:NO)、被塗物11に静電塗布可能な状態ではないと判断し、ユーザに報知する(ステップS8)。ユーザは被塗物11を治具10に装着し直して、被塗物11の導電片13に対する接地端子3の接触状態を良好なものとした後、再度、前記ステップS1に戻って同様な処理を実行すればよい。
【0042】
また、静電塗布中も、第1電流測定部4、第2電流測定部5及び部分放電検出部6による検出を継続する。これは、静電塗布が開始された後であっても、導電片13と接地端子3との接触状態が変化する恐れがあるためである。例えば、コンベア12や塗布部2等の駆動による振動で、被塗物11が治具10から位置ずれした場合が該当する。また、導電片13に静電塗布されてしまうと、やはり接地端子3との導通状態が悪化することがある。
【0043】
静電塗布中に被塗物11に静電塗布可能な状態ではないと判断された場合、塗布を中断させた後、ユーザに報知する。ユーザは、その被塗物11を確認して塗布状態の良否を判断する。被塗物11が良品であると判断すれば次の工程に回し、不良品であると判断すれば破棄する。
【0044】
このように、前記実施形態によれば、部分放電を検出することにより、静電塗布できるか否かを判断するようにしている。これにより、従来の手法では静電塗布できないと判断されていた場合であっても、実際には静電塗布できる場合にはそのことを適切に判断することができる。
【0045】
なお、本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0046】
前記実施形態では、第1電流測定部4と第2電流測定部5を設けるようにしたが、いずれか一方のみの構成としてもよい。この場合、第1電流測定部4のみとするのが好ましい。
【0047】
前記実施形態では、特に触れなかったが、支持部1の支軸9の不導体18の代わりに半導体を使用してもよい。半導体により、たとえ第2電流測定部5が故障により接地不良を起こした場合であっても、被塗物11と治具10とが電気的に浮いた状態となって帯電してしまうのを防止することができる。
【0048】
前記実施形態では、部分放電検出部6として高周波CTセンサ等、導電片13と接地端子3との間に隙間があるときに発生する部分放電から得られる信号を検出するものについて説明したが、導電片13と接地端子3とを撮像することにより得られた画像から検出することもできる。すなわち、カメラを使用して部分放電を撮像し、その撮像結果を解析することにより、被塗物11に静電塗布可能な状態であるか否かを判断するようにしてもよい。
【0049】
前記実施形態では、静電塗布の被塗物11が樹脂製バンパーである場合について説明したが、被塗物11としては、例えば、ロッカーモール、樹脂製ドア、樹脂製フェンダー、樹脂製フード等が挙げられる。
【0050】
前記実施形態では、被塗物11の導電片13と接地端子3とを1組のみで構成したが、2組とすることもできる。これによれば、治具10に被塗物11を載置した際、接地できる確率が高まる。いずれか一方のみで導通して被塗物11が接地されていれば、正常に静電塗布できる。
【符号の説明】
【0051】
1…支持部
2…塗布部
3…接地端子
4…第1電流測定部
5…第2電流測定部
6…部分放電検出部
7…判定部
8…基台
9…支軸
10…治具
11…被塗物
12…コンベア
13…導電片
14…塗布ガン
15…ベルカップ
16…高電圧発生装置
17…高電圧コントローラ
18…不導体
図1
図2