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特許6998926制御装置、制御方法及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-23
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】制御装置、制御方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04L 45/302 20220101AFI20220111BHJP
   H04L 45/121 20220101ALI20220111BHJP
   H04L 67/1008 20220101ALI20220111BHJP
   H04L 67/101 20220101ALI20220111BHJP
   H04W 24/02 20090101ALI20220111BHJP
   H04W 88/18 20090101ALI20220111BHJP
【FI】
H04L45/302
H04L45/121
H04L67/1008
H04L67/101
H04W24/02
H04W88/18
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019200908
(22)【出願日】2019-11-05
(65)【公開番号】P2021077938
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2021-08-17
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和元年度、総務省、「革新的AIネットワーク統合基盤技術の研究開発(技術課題III「データ連携によるネットワーク機能動的制御技術」)」委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】城 哲
(72)【発明者】
【氏名】毛利 元一
【審査官】平井 嗣人
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-173916(JP,A)
【文献】国際公開第2018/163556(WO,A1)
【文献】城哲 ほか,サービスの要求遅延を満たすアプリケーション配置のためのMECアーキテクチャ拡張に関する一検討,電子情報通信学会 2020年総合大会講演論文集 通信2,2020年03月03日,p. 258
【文献】VONDRA, M. et al.,QoS-ensuring Distribution of Computation Load among Cloud-enabled Small Cells,Proceedings of the 3rd IEEE International Conference on Cloud Networking (IEEE CloudNet 2014),2014年,pp. 197-203
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/725-12/733
G06F 13/00
H04W 24/02
H04W 88/18
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信ネットワークを介して接続される複数の情報処理装置を制御する制御装置において、
デバイスにおける無線品質を示す無線品質情報に基づいて、前記デバイスにおける無線区間処理遅延時間を算出する無線区間処理遅延算出部と、
前記無線区間処理遅延時間と、前記デバイスが接続する無線基地局から各前記情報処理装置までの間の伝送遅延時間と、各前記情報処理装置における処理遅延時間とに基づいて、前記デバイスが要求するサービスが要求するエンドツウエンド処理遅延時間を満足する前記情報処理装置の中から、前記サービスを実現するためのアプリケーションを実行する情報処理装置を決定するアプリケーション配置算出部と、
を備える制御装置。
【請求項2】
前記アプリケーションが起動されている期間において前記デバイスにおける無線区間の実効スループット情報を取得するネットワーク情報収集部をさらに備え、
前記無線区間処理遅延算出部は、前記実効スループット情報に基づいて前記無線区間処理遅延時間を更新し、
前記アプリケーション配置算出部は、更新後の前記無線区間処理遅延時間に基づいて、前記アプリケーションを実行する情報処理装置を再決定する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
過去の前記実効スループット情報に基づいた前記無線区間処理遅延時間の統計情報を格納する無線区間処理遅延時間統計情報格納部をさらに備え、
前記無線区間処理遅延算出部は、前記無線区間処理遅延時間の統計情報をさらに使用して前記無線区間処理遅延時間を算出する、
請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
通信ネットワークを介して接続される複数の情報処理装置を制御する制御方法であって、
制御装置が、デバイスにおける無線品質を示す無線品質情報に基づいて、前記デバイスにおける無線区間処理遅延時間を算出する無線区間処理遅延算出ステップと、
前記制御装置が、前記無線区間処理遅延時間と、前記デバイスが接続する無線基地局から各前記情報処理装置までの間の伝送遅延時間と、各前記情報処理装置における処理遅延時間とに基づいて、前記デバイスが要求するサービスが要求するエンドツウエンド処理遅延時間を満足する前記情報処理装置の中から、前記サービスを実現するためのアプリケーションを実行する情報処理装置を決定するアプリケーション配置算出ステップと、
を含む制御方法。
【請求項5】
通信ネットワークを介して接続される複数の情報処理装置を制御する制御装置のコンピュータに、
デバイスにおける無線品質を示す無線品質情報に基づいて、前記デバイスにおける無線区間処理遅延時間を算出する無線区間処理遅延算出ステップと、
前記無線区間処理遅延時間と、前記デバイスが接続する無線基地局から各前記情報処理装置までの間の伝送遅延時間と、各前記情報処理装置における処理遅延時間とに基づいて、前記デバイスが要求するサービスが要求するエンドツウエンド処理遅延時間を満足する前記情報処理装置の中から、前記サービスを実現するためのアプリケーションを実行する情報処理装置を決定するアプリケーション配置算出ステップと、
を実行させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、制御方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動通信網(Mobile Network)において、ユーザ端末により近い場所でアプリケーションによるサービスをユーザ端末に提供するためのMEC(Multi-access Edge Computing)技術が知られている(例えば、非特許文献1参照)。非特許文献1には、エッジデータセンターとコアデータセンターとからなる分散クラウド上に各種のVF(Virtual Function)が分散配置されており、サービスの処理順序に従ったVFの組み合わせ(ルーティング)のうち、総合的な処理遅延時間が最小となるVFの組み合わせを算出している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Barbara Martini, 他、“Latency-aware Composition of Virtual Functions in 5G”、IEEE、2015年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した非特許文献1に記載される従来技術では、ユーザ端末が移動通信網に接続する無線区間における処理遅延時間がVFの組み合わせの算出に反映されないので、個々のユーザ端末のエンドツウエンド(end-to-end:E2E)における処理遅延時間には適応することができない。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、端末装置(デバイス)とサーバ(情報処理装置)間におけるエンドツウエンドの処理遅延時間を反映させてサーバの配置を決定することを図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一態様は、通信ネットワークを介して接続される複数の情報処理装置を制御する制御装置において、デバイスにおける無線品質を示す無線品質情報に基づいて、前記デバイスにおける無線区間処理遅延時間を算出する無線区間処理遅延算出部と、前記無線区間処理遅延時間と、前記デバイスが接続する無線基地局から各前記情報処理装置までの間の伝送遅延時間と、各前記情報処理装置における処理遅延時間とに基づいて、前記デバイスが要求するサービスが要求するエンドツウエンド処理遅延時間を満足する前記情報処理装置の中から、前記サービスを実現するためのアプリケーションを実行する情報処理装置を決定するアプリケーション配置算出部と、を備える制御装置である。
(2)本発明の一態様は、前記アプリケーションが起動されている期間において前記デバイスにおける無線区間の実効スループット情報を取得するネットワーク情報収集部をさらに備え、前記無線区間処理遅延算出部は、前記実効スループット情報に基づいて前記無線区間処理遅延時間を更新し、前記アプリケーション配置算出部は、更新後の前記無線区間処理遅延時間に基づいて、前記アプリケーションを実行する情報処理装置を再決定する、上記(1)の制御装置である。
(3)本発明の一態様は、過去の前記実効スループット情報に基づいた前記無線区間処理遅延時間の統計情報を格納する無線区間処理遅延時間統計情報格納部をさらに備え、前記無線区間処理遅延算出部は、前記無線区間処理遅延時間の統計情報をさらに使用して前記無線区間処理遅延時間を算出する、上記(2)の制御装置である。
【0007】
(4)本発明の一態様は、通信ネットワークを介して接続される複数の情報処理装置を制御する制御方法であって、制御装置が、デバイスにおける無線品質を示す無線品質情報に基づいて、前記デバイスにおける無線区間処理遅延時間を算出する無線区間処理遅延算出ステップと、前記制御装置が、前記無線区間処理遅延時間と、前記デバイスが接続する無線基地局から各前記情報処理装置までの間の伝送遅延時間と、各前記情報処理装置における処理遅延時間とに基づいて、前記デバイスが要求するサービスが要求するエンドツウエンド処理遅延時間を満足する前記情報処理装置の中から、前記サービスを実現するためのアプリケーションを実行する情報処理装置を決定するアプリケーション配置算出ステップと、を含む制御方法である。
【0008】
(5)本発明の一態様は、通信ネットワークを介して接続される複数の情報処理装置を制御する制御装置のコンピュータに、デバイスにおける無線品質を示す無線品質情報に基づいて、前記デバイスにおける無線区間処理遅延時間を算出する無線区間処理遅延算出ステップと、前記無線区間処理遅延時間と、前記デバイスが接続する無線基地局から各前記情報処理装置までの間の伝送遅延時間と、各前記情報処理装置における処理遅延時間とに基づいて、前記デバイスが要求するサービスが要求するエンドツウエンド処理遅延時間を満足する前記情報処理装置の中から、前記サービスを実現するためのアプリケーションを実行する情報処理装置を決定するアプリケーション配置算出ステップと、を実行させるためのコンピュータプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、端末装置(デバイス)とサーバ(情報処理装置)間におけるエンドツウエンドの処理遅延時間を反映させてサーバの配置を決定することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係るネットワークシステムの構成例を示すブロック図である。
図2】一実施形態に係るアプリケーションの構成例を示す説明図である。
図3】一実施形態に係るサービスの要求概要の例を示す図表である。
図4】一実施形態に係る分散クラウド環境の階層構造の例を示すネットワーク構成図である。
図5】一実施形態に係る処理遅延時間を説明するための説明図である。
図6】一実施形態に係るE2Eコントローラーの構成例を示すブロック図である。
図7】一実施形態に係る制御方法におけるサービス登録段階の手順の例を示すシーケンス図である。
図8】一実施形態に係る制御方法における新規サービス起動段階の手順の例を示すシーケンス図である。
図9】一実施形態に係る制御方法における通常段階の手順の例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
図1は、一実施形態に係るネットワークシステムの構成例を示すブロック図である。図1に示すネットワークシステム1は、エンドツウエンド(E2E)コントローラー(制御装置)10と、データセンタークラウドシステム(Data Center cloud system)100と、MEC(Multi-access Edge Computing)システム110(110-1,110-2)とを備える。
【0012】
データセンタークラウドシステム100及びMECシステム110は、クラウドコンピューティングにより実現される情報処理システムである。データセンタークラウドシステム100は、複数のホスト102(情報処理装置)を備える。ホスト102は、アプリケーション(App)を実行するための計算資源を備える。計算資源は、情報処理に使用される例えばCPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)やメモリ等の情報処理装置の構成要素である。オーケストレーター(Orchestratior)101は、複数のホスト102を制御する。データセンタークラウドシステム100は、移動通信網の外部に設けられるインターネット等の通信ネットワークNWaに接続される。
【0013】
MECシステム110は、複数のホスト112(情報処理装置)を備える。ホスト112は、アプリケーションを実行するための計算資源を備える。オーケストレーター111は、複数のホスト112を制御する。MECシステム110は、移動通信網においてバックボーンネットワーク(Backbone network)NWbやバックホールネットワーク(Backhaul network)NWc(NWc-1,NWc-2)に接続される。バックボーンネットワークNWbは、通信ネットワークNWaに接続される。
【0014】
デバイスUEは、移動通信網の基地局BSに無線により接続して通信を行う。デバイスUEは、基地局BSを介して、MECシステム110やデータセンタークラウドシステム100と通信を行う。デバイスUEは、例えば、モノのインターネット(Internet of Things:IoT)を実現するためのセンサ等のデバイス、スマートフォン等の携帯通信端末装置、AR(Augmented Reality)やVR(Virtual Reality)技術が適用されるヘッドマウントディスプレー、自動車に搭載された映像再生装置などの種々のデバイスである。
【0015】
E2Eコントローラー10は、MECシステム110及びデータセンタークラウドシステム100を制御する。E2Eコントローラー10は、例えばバックボーンネットワークNWbに接続され、バックボーンネットワークNWbを介してMECシステム110及びデータセンタークラウドシステム100と通信を行う。なお、コントローラー10は、通信ネットワークNWa,バックボーンネットワークNWb,バックホールネットワークNWcのいずれに接続されてもよい。
【0016】
E2Eコントローラー10は、MECシステム110及びデータセンタークラウドシステム100に対して、デバイスUEに提供するサービスを実現するためのアプリケーションの配置を指示するApp配置指示Aを送信する。MECシステム110及びデータセンタークラウドシステム100は、App配置指示Aに従って、アプリケーションの配置換えを行う。
【0017】
図2は、本実施形態に係るアプリケーションの構成例を示す説明図である。アプリケーションは、コンテナ化されている。例えばサービスSa1を実現するためのアプリケーションは、2つのコンテナC11,C12から構成される。MECシステム110やデータセンタークラウドシステム100からなる分散クラウド環境によって提供されるサービスは、アプリケーションを構成するコンテナにより実現される。アプリケーションを構成する各コンテナは、ユーザー(デバイスUE)からの要求に応じて、仮想化基盤上で動的かつ迅速にインスタンスの起動や停止や削除が可能である。各サービスを実現するためのアプリケーションは、サービスを利用するユーザー単位で専用のコンテナが割り当てられる。図2の例では、サービスSa1についてはA人のユーザーに対してそれぞれ専用のコンテナが割り当てられており、サービスSa2についてはB人のユーザーに対してそれぞれ専用のコンテナが割り当てられており、サービスSa3についてはC人のユーザーに対してそれぞれ専用のコンテナが割り当てられている。
【0018】
図3は、本実施形態に係るサービスの要求概要の例を示す図表である。各サービスには、E2Eの遅延要求、アプリケーションを構成する各コンテナの名称、各コンテナにおける遅延考慮の有り(Yes)無し(No)、各コンテナの計算資源(CPUやメモリ)の要求量のレベル、各コンテナのデータ量などが設定される。各サービスの設定内容は、サービス事業者によってE2Eコントローラー10に登録される。
【0019】
図4は、本実施形態に係る分散クラウド環境の階層構造の例を示すネットワーク構成図である。図4に示される分散クラウド環境は、3つの階層1,2,3から構成される。階層1,2には、MECシステム110が設けられる。階層1,2のMECシステム110は、移動通信網における無線通信区域「リージョン1」,「リージョン2」,「リージョン3」の別に、それぞれ設けられる。また、各無線通信区域「リージョン1」,「リージョン2」,「リージョン3」において、無線通信エリアarea11,area12,area13毎に、階層1のMECシステム110が設けられる。図4の例では、ユーザープレーン機能(UPF)を介して、デバイスUEと階層1のMECシステム110とが接続される。各無線通信区域「リージョン1」,「リージョン2」,「リージョン3」において、階層1のMECシステム110と階層2のMECシステム110とはバックホールネットワークNWcを介して接続される。各無線通信区域「リージョン1」,「リージョン2」,「リージョン3」の階層2のMECシステム110は、バックボーンネットワークNWbを介して、通信ネットワークNWaに接続されるデータセンタークラウドシステム100に接続される。
【0020】
図4に示される分散クラウド環境の階層構造によれば、同一階層間の処理分散が可能であると共に、複数の階層間の処理分散が可能である。さらに、複数のリージョン間の処理分散が可能である。
【0021】
なお、一般的に上位階層に設けられる情報処理システムほど、計算資源が豊富である一方、デバイスUEからの通信上の距離が長くなる。具体的には、データセンタークラウドシステム100は、図4において最も計算資源が豊富な情報処理システムである。一方、データセンタークラウドシステム100は、デバイスUEからの通信上の距離が最も長い情報処理システムである。階層2のMECシステム110は、図4においてデータセンタークラウドシステム100の次に計算資源が豊富な情報処理システムである。また、階層2のMECシステム110は、デバイスUEからの通信上の距離がデータセンタークラウドシステム100よりは短い情報処理システムである。階層1のMECシステム110は、図4において最も計算資源が少ない情報処理システムである。一方、階層1のMECシステム110は、デバイスUEからの通信上の距離が最も短い情報処理システムである。
【0022】
図5は、本実施形態に係る処理遅延時間を説明するための説明図である。本実施形態において、E2Eの処理遅延時間Lは次式(1)で表される。
L=lr+lt+lp ・・・(1)
式(1)において、lrは、デバイスUEの無線区間における処理遅延時間(無線区間処理遅延時間)である。ltは、デバイスUEは無線により接続する基地局BSから、アプリケーションを実行する情報処理装置(図5の例では、MECシステム110のホスト112(MECサーバー))までの間の伝送遅延時間である。lpは、アプリケーションを実行する情報処理装置における処理遅延時間である。
【0023】
図6は、本実施形態に係るE2Eコントローラーの構成例を示すブロック図である。図6において、E2Eコントローラー10は、ネットワーク情報収集部11と、無線区間処理遅延算出部12と、アプリケーション配置算出部(App配置算出部)13と、アプリケーション配置司令部(App配置司令部)14と、データベース15とを備える。
【0024】
ネットワーク情報収集部11は、MECシステム110やデータセンタークラウドシステム100や移動通信網などから各種の情報Cを取得する。ネットワーク情報収集部11は、アプリケーションが起動されている期間においてデバイスUEにおける無線区間の実効スループットを示す実効スループット情報を、移動通信網から取得する。また、ネットワーク情報収集部11は、MECシステム110及びデータセンタークラウドシステム100の各情報処理システムにおける計算資源の状況を示す計算資源状況統計情報を、各情報処理システムから収集する。計算資源状況統計情報は、例えばCPU使用率やメモリ使用率や処理遅延時間などである。また、ネットワーク情報収集部11は、各基地局BSと各情報処理装置(ホスト102、ホスト112)との間の伝送遅延時間を移動通信網から収集する。なお、各基地局BSと各情報処理装置(ホスト102、ホスト112)との間の伝送遅延時間は、各基地局BSと各情報処理システム(MECシステム110、データセンタークラウドシステム100)との間の伝送遅延時間で代用してもよい。
【0025】
無線区間処理遅延算出部12は、デバイスUEから無線環境情報Bを取得する。無線環境情報Bは、デバイスUEの位置を示すデバイス位置情報と、デバイスUEにおける無線品質を示す無線品質情報とを含む情報である。無線品質情報は、例えばCQI(Channel Quality Indicator)である。無線区間処理遅延算出部12は、デバイスUEの無線品質情報に基づいて、当該デバイスUEにおける無線区間処理遅延時間を算出する。例えば、無線区間処理遅延算出部12は、デバイスUEのCQIに基づいて当該デバイスUEにおけるスループットを推定し、推定したスループットに基づいて無線区間処理遅延時間を算出する。また、無線区間処理遅延算出部12は、デバイスUEのデバイス位置情報に基づいて、当該デバイスUEからの通信上の距離が最も短い情報処理システム(以下、最短距離システムと称する)を判断する。
【0026】
また、無線区間処理遅延算出部12は、各デバイスUEについて無線区間処理遅延時間の統計情報(例えば、平均値や標準偏差など)を管理する。無線区間処理遅延算出部12は、ネットワーク情報収集部11により収集されたデバイスUEの実効スループット情報に基づいて当該デバイスUEの無線区間処理遅延時間を算出し、算出した無線区間処理遅延時間に基づいて当該デバイスUEの無線区間処理遅延時間の統計情報を更新する。
【0027】
App配置算出部13は、無線区間処理遅延算出部12が算出したデバイスUEの無線区間処理遅延時間と、当該デバイスUEが接続する基地局BSから各情報処理装置までの間の伝送遅延時間と、各情報処理装置における処理遅延時間とに基づいて、当該デバイスUEが要求するサービスが要求するE2Eの処理遅延時間を満足する情報処理装置の中から、当該サービスを実現するためのアプリケーションを実行する情報処理装置を決定する(App配置算出に対応)。なお、App配置算出により決定される情報処理装置は、MECシステム110やデータセンタークラウドシステム100等の情報処理システム単位であってもよい。
【0028】
App配置算出部13は、起動中アプリケーションリファレンステーブル131を備える。起動中アプリケーションリファレンステーブル131は、起動中の全アプリケーションの配置先を示すApp配置情報などを格納する。
【0029】
App配置司令部14は、App配置算出部13によるApp配置算出の結果に基づいて、MECシステム110及びデータセンタークラウドシステム100の各情報処理システムへApp配置指示Aを送信する。各情報処理システムは、App配置指示Aに従って、アプリケーションの配置換えを行う。
【0030】
データベース15は、リファレンステーブル151を格納する。リファレンステーブル151は、図3に例示される各サービスの設定内容の情報を有する。リファレンステーブル151に格納される各サービスの設定内容の情報は、サービス事業者200によってE2Eコントローラー10に登録される。
【0031】
データベース15は、ユーザーエージェントを備える。ユーザーエージェントは、自己のデバイスUEのデバイス位置情報及び無線品質情報をE2Eコントローラー10へ通知する。デバイス位置情報は、例えばGPS:Global Positioning System)を利用して取得されるデバイスUEの位置を示す位置情報である。
【0032】
次に本実施形態に係る制御方法を説明する。
【0033】
[サービス登録段階]
図7を参照して、本実施形態に係る制御方法におけるサービス登録段階を説明する。図7は、本実施形態に係る制御方法におけるサービス登録段階の手順の例を示すシーケンス図である。
【0034】
(ステップS1) サービス事業者200は、図3に例示される各サービスの設定内容の情報をE2Eコントローラー10へ登録する。E2Eコントローラー10は、当該登録情報をデータベース(DB)15のリファレンステーブル151に格納する。
【0035】
(ステップS2) E2Eコントローラー10は、サービスの登録完了をサービス事業者200へ通知する。
【0036】
[新規サービス起動段階]
図8を参照して、本実施形態に係る制御方法における新規サービス起動段階を説明する。図8は、本実施形態に係る制御方法における新規サービス起動段階の手順の例を示すシーケンス図である。
【0037】
(ステップS11) デバイスUE(以下、要求元デバイスUEと称する)は、あるサービス(以下、起動対象サービスと称する)を起動することを要求するサービス起動要求をE2Eコントローラー10へ送信する。サービス起動要求は、起動対象サービスを識別するサービス識別情報と、要求元デバイスUEのデバイス位置情報及び無線品質情報とを有する情報である。
【0038】
(ステップS12) E2Eコントローラー10の無線区間処理遅延算出部12は、要求元デバイスUEからのサービス起動要求に応じて、要求元デバイスUEの無線区間処理遅延時間を算出するための処理を開始する。まず無線区間処理遅延算出部12は、データベース15のリファレンステーブル151を参照し、起動対象サービスの設定内容の情報を取得する。
【0039】
(ステップS13) 無線区間処理遅延算出部12は、要求元デバイスUEの無線区間処理遅延時間の統計情報を確認する。この確認の結果、該当する無線区間処理遅延時間の統計情報が有る場合には、当該無線区間処理遅延時間の統計情報が取得される。一方、該当する無線区間処理遅延時間の統計情報が無い場合には、無線区間処理遅延時間の統計情報は取得されない。
【0040】
(ステップS14) 無線区間処理遅延算出部12は、要求元デバイスUEの無線区間処理遅延時間を算出する。例えば、無線区間処理遅延算出部12は、要求元デバイスUEの無線品質情報であるCQIに基づいて要求元デバイスUEにおけるスループットを推定し、推定したスループットに基づいて無線区間処理遅延時間を算出する。また、無線区間処理遅延算出部12は、要求元デバイスUEのデバイス位置情報に基づいて最短距離システムを判断する。
【0041】
なお、ステップS13で要求元デバイスUEの無線区間処理遅延時間の統計情報(過去の実効スループット情報に基づいた無線区間処理遅延時間の統計情報)が取得された場合には、無線区間処理遅延算出部12は、当該無線区間処理遅延時間の統計情報をさらに使用して要求元デバイスUEの無線区間処理遅延時間を算出する。例えば、無線区間処理遅延算出部12は、上記の推定したスループットに基づいて算出された無線区間処理遅延時間(以下、推定無線区間処理遅延時間と称する)を、無線区間処理遅延時間の統計情報に基づいて補正する。例えば、推定無線区間処理遅延時間と無線区間処理遅延時間の統計情報である平均値とを所定の重み付けにより総合する。
【0042】
(ステップS15) 無線区間処理遅延算出部12は、App配置算出部13に対して、起動要求を送信する。起動要求は、起動対象サービスのサービス識別情報と、要求元デバイスUEの無線区間処理遅延時間と、最短距離システムを示す情報とを有する情報である。
【0043】
App配置算出部13は、無線区間処理遅延算出部12からの起動要求に応じて、App配置算出を実行する。まずApp配置算出部13は、起動要求に関する新規のエントリを起動中アプリケーションリファレンステーブル131に作成し、要求元デバイスUE(User)や要求元デバイスUEの位置(Area)や要求元デバイスUEの無線区間処理遅延時間などの情報を格納する。なお、この時点では、アプリケーションの配置先は未定(新規)である。
【0044】
(ステップS16) App配置算出部13は、データベース15のリファレンステーブル151を参照し、起動対象サービスの設定内容の情報を取得する。
【0045】
(ステップS17) App配置算出部13は、ネットワーク情報収集部11から、MECシステム110及びデータセンタークラウドシステム100の各情報処理システムの計算資源状況統計情報を取得する。また、App配置算出部13は、ネットワーク情報収集部11から、各基地局BSと各情報処理装置(ホスト102、ホスト112)との間の伝送遅延時間を取得する。
【0046】
(ステップS18) App配置算出部13は、要求元デバイスUEの無線区間処理遅延時間と、要求元デバイスUEが接続する基地局BSから各情報処理装置(ホスト102、ホスト112)までの間の伝送遅延時間と、各情報処理装置(ホスト102、ホスト112)における処理遅延時間とに基づいて、起動対象サービスが要求するE2Eの処理遅延時間を満足する情報処理装置(ホスト102、ホスト112)の中から、起動対象サービスを実現するためのアプリケーションを実行する情報処理装置(ホスト102、ホスト112)を決定する(App配置算出に対応)。なお、App配置算出により決定される情報処理装置は、MECシステム110やデータセンタークラウドシステム100等の情報処理システム単位であってもよい。また、App配置算出部13は、最短距離システムを考慮して、起動対象サービスを実現するためのアプリケーションを実行する情報処理装置(ホスト102、ホスト112)を決定してもよい。
【0047】
(ステップS19) App配置算出部13は、ステップS18のApp配置算出の結果をApp配置司令部14へ通知する。
【0048】
(ステップS20) App配置司令部14は、App配置算出部13によるApp配置算出の結果に基づいて、MECシステム110及びデータセンタークラウドシステム100の各情報処理システムへApp配置指示Aを送信する。各情報処理システムは、App配置指示Aに従って、アプリケーションの配置換えを行う。
【0049】
[通常段階]
図9を参照して、本実施形態に係る制御方法における通常段階を説明する。図9は、本実施形態に係る制御方法における通常段階の手順の例を示すシーケンス図である。
【0050】
(ステップS30) E2Eコントローラー10のネットワーク情報収集部11は、MECシステム110及びデータセンタークラウドシステム100の各情報処理システムから計算資源状況統計情報を一定の間隔で収集する。また、ネットワーク情報収集部11は、アプリケーションが起動されている期間においてデバイスUEにおける無線区間の実効スループット情報を移動通信網から一定の間隔で収集する。また、ネットワーク情報収集部11は、各基地局BSと各情報処理装置(ホスト102、ホスト112)との間の伝送遅延時間を移動通信網から収集する。この伝送遅延時間については、あまり変動しないと考えられるので、定期的に収集しなくてもよい。ネットワーク情報収集部11は、収集した情報を保持する。
【0051】
(ステップS31) 無線区間処理遅延算出部12は、定期的に、無線区間処理遅延時間を更新するための処理を開始する。まず無線区間処理遅延算出部12は、ネットワーク情報収集部11から、要求元デバイスUEにおける無線区間の実効スループット情報を取得する。
【0052】
(ステップS32) 無線区間処理遅延算出部12は、ネットワーク情報収集部11から取得した要求元デバイスUEの実効スループット情報に基づいて、要求元デバイスUEの無線区間処理遅延時間を算出し、算出した無線区間処理遅延時間に基づいて要求元デバイスUEの無線区間処理遅延時間の統計情報を更新する。
【0053】
(ステップS33) 無線区間処理遅延算出部12は、ネットワーク情報収集部11から取得した要求元デバイスUEの実効スループット情報に基づいて、要求元デバイスUEの無線区間処理遅延時間を算出する。なお、無線区間処理遅延算出部12は、ステップS32で更新した要求元デバイスUEの無線区間処理遅延時間の統計情報に基づいて、要求元デバイスUEの無線区間処理遅延時間を算出してもよい。
【0054】
(ステップS34) 無線区間処理遅延算出部12は、App配置算出部13に対して、無線区間処理遅延時間の更新を送信する。無線区間処理遅延時間の更新は、更新後の要求元デバイスUEの無線区間処理遅延時間を有する情報である。
【0055】
(ステップS35) App配置算出部13は、無線区間処理遅延算出部12からの無線区間処理遅延時間の更新に応じて、起動中アプリケーションリファレンステーブル131における要求元デバイスUEの無線区間処理遅延時間を更新後の要求元デバイスUEの無線区間処理遅延時間に書き換える。
【0056】
(ステップS36) App配置算出部13は、データベース15のリファレンステーブル151を参照し、起動対象サービスの設定内容の情報を取得する。
【0057】
(ステップS37) App配置算出部13は、ネットワーク情報収集部11から、MECシステム110及びデータセンタークラウドシステム100の各情報処理システムの計算資源状況統計情報を取得する。また、App配置算出部13は、ネットワーク情報収集部11から、各基地局BSと各情報処理装置(ホスト102、ホスト112)との間の伝送遅延時間を取得する。
【0058】
(ステップS38) App配置算出部13は、要求元デバイスUEの無線区間処理遅延時間と、要求元デバイスUEが接続する基地局BSから各情報処理装置(ホスト102、ホスト112)までの間の伝送遅延時間と、各情報処理装置(ホスト102、ホスト112)における処理遅延時間とに基づいて、起動対象サービスが要求するE2Eの処理遅延時間を満足する情報処理装置(ホスト102、ホスト112)の中から、起動対象サービスを実現するためのアプリケーションを実行する情報処理装置(ホスト102、ホスト112)を再決定する(App配置の再算出に対応)。なお、App配置の再算出により決定される情報処理装置は、MECシステム110やデータセンタークラウドシステム100等の情報処理システム単位であってもよい。また、App配置算出部13は、最短距離システムを考慮して、起動対象サービスを実現するためのアプリケーションを実行する情報処理装置(ホスト102、ホスト112)を再決定してもよい。
【0059】
(ステップS39) App配置算出部13は、ステップS38のApp配置の再算出の結果をApp配置司令部14へ通知する。
【0060】
(ステップS40) App配置司令部14は、App配置算出部13によるApp配置の再算出の結果に基づいて、MECシステム110及びデータセンタークラウドシステム100の各情報処理システムへApp配置指示Aを送信する。各情報処理システムは、App配置指示Aに従って、アプリケーションの配置換えを行う。
【0061】
以上が本実施形態に係る制御方法を説明である。
【0062】
本実施形態によれば、デバイスUEの無線区間処理遅延時間に基づいたApp配置算出が実行されるので、デバイスUEと情報処理装置(ホスト102、ホスト112))間におけるエンドツウエンドの処理遅延時間を反映させて、サービスを実現するためのアプリケーションを実行する情報処理装置(ホスト102、ホスト112)の配置を決定することができる。これにより、他のデバイスUEよりも無線品質が悪いデバイスUEに対して最短距離システムを割り当てるなど、デバイスUEの無線品質や無線区間の混雑状況に応じてMECシステム110及びデータセンタークラウドシステム100の各情報処理システムを割り当てることができる。このことは、サービス品質を一定水準に維持しつつ効果的な処理の分散を行うことに寄与するという効果を奏する。
【0063】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0064】
また、上述した各装置の機能を実現するためのコンピュータプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行するようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、DVD(Digital Versatile Disc)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0065】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0066】
1…ネットワークシステム、10…エンドツウエンド(E2E)コントローラー(制御装置)、11…ネットワーク情報収集部、12…無線区間処理遅延算出部、13…アプリケーション配置算出部(App配置算出部)、14…アプリケーション配置司令部(App配置司令部)、15…データベース、131…起動中アプリケーションリファレンステーブル、151…リファレンステーブル、100…データセンタークラウドシステム、102,112…ホスト、110…MECシステム、UE…デバイス、BS…基地局
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9