(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-23
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】水耕栽培ユニット、及びこの水耕栽培ユニットを含む水耕栽培システム
(51)【国際特許分類】
A01G 31/00 20180101AFI20220111BHJP
【FI】
A01G31/00 611Z
(21)【出願番号】P 2019510212
(86)(22)【出願日】2018-03-29
(86)【国際出願番号】 JP2018013515
(87)【国際公開番号】W WO2018181848
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2020-11-12
(31)【優先権主張番号】P 2017070782
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390003193
【氏名又は名称】東洋鋼鈑株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】510029542
【氏名又は名称】鋼鈑商事株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】特許業務法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西 麻里
(72)【発明者】
【氏名】三坂 博文
(72)【発明者】
【氏名】吉村 一人
(72)【発明者】
【氏名】村井 邦大
(72)【発明者】
【氏名】村元 勝広
(72)【発明者】
【氏名】大石 覚
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第4389813(US,A)
【文献】米国特許第5555676(US,A)
【文献】実開昭63-155339(JP,U)
【文献】登録実用新案第3034243(JP,U)
【文献】実開昭59-26955(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 31/00 - 31/06
A01G 9/00 - 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に着脱可能な複数の筒状分割体から構成されて、その側面に少なくとも1つの開口部を有する栽培筒と、
植物が配置される一端開口と、前記栽培筒の開口部と着脱可能な他端開口と、を具備する植付部材と、
を含
み、
前記栽培筒の内面に、少なくとも一部の内径が変化する傾斜面が形成されている、
ことを特徴とする水耕栽培ユニット。
【請求項2】
相互に着脱可能な複数の筒状分割体から構成されて、その側面に少なくとも1つの開口部を有する栽培筒と、
植物が配置される一端開口と、前記栽培筒の開口部と着脱可能な他端開口と、を具備する植付部材と、
前記栽培筒と一端が着脱可能に接続されるとともに、他端が前記水耕栽培ユニットを吊り下げ支持する吊り下げ支持機構に対して着脱可能に接続され、且つ、側面に水受け開口を有する水受け連結部材と、
前記水受け開口と着脱可能に接続されて液体供給系から液体の供給を受ける水受け部材と、
を含むことを特徴とする水耕栽培ユニット。
【請求項3】
相互に着脱可能な複数の筒状分割体から構成されて、その側面に少なくとも1つの開口部を有する栽培筒と、
植物が配置される一端開口と、前記栽培筒の開口部と着脱可能な他端開口と、を具備する植付部材と、を含み、
前記栽培筒における内周面のうちの少なくとも前記開口部の上部には、前記植付部材の側へ液体を導くための溝が形成されてなる、
ことを特徴とする水耕栽培ユニット。
【請求項4】
相互に着脱可能な複数の筒状分割体から構成されて、その側面に少なくとも1つの開口部を有する栽培筒と、
植物が配置される一端開口と、前記栽培筒の開口部と着脱可能な他端開口と、を具備する植付部材と、を含み、
前記植付部材の一端開口と他端開口の間には、前記植物が抜けてしまうことを抑制する抜け防止部が形成されている、
ことを特徴とする水耕栽培ユニット。
【請求項5】
相互に着脱可能な複数の筒状分割体から構成されて、その側面に少なくとも1つの開口部を有する栽培筒と、
植物が配置される一端開口と、前記栽培筒の開口部と着脱可能な他端開口と、を具備する植付部材と、を含み、
前記植付部材の一端開口には、刃物を挿入可能な切り欠き部が形成されている、
ことを特徴とする水耕栽培ユニット。
【請求項6】
前記開口部と前記他端開口とは、回転して嵌合されてなる請求項1
~5のいずれか一項に記載の水耕栽培ユニット。
【請求項7】
前記栽培筒の下端に着脱可能に接続され、前記栽培筒の内側を流通する液体をガイドするガイド筒を更に有する請求項
2に記載の水耕栽培ユニット。
【請求項8】
前記栽培筒と接続したときに前記他端開口の一部が前記栽培筒の内側に張り出して水受けが形成されるように、前記植付部材の他端開口は斜めに切り欠かれてなる請求項1~
7のいずれか一項に記載の水耕栽培ユニット。
【請求項9】
前記植付部材が前記筒状分割体と接続するための接続部を有し、
前記植付部材の一端開口が、前記接続部の最上部を通る水平面以上の高さに位置付けられる請求項1~
8のいずれか一項に記載の水耕栽培ユニット。
【請求項10】
前記植付部材が、前記一端開口の少なくとも一部をなす舌部を有する請求項1~
9のいずれか一項に記載の水耕栽培ユニット。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれか一項に記載の水耕栽培ユニットと、
前記水耕栽培ユニットを支持する吊り下げ支持機構と、
前記水耕栽培ユニットに植えられた植物に対して必要な液体を供給する液体供給系と、
を含むことを特徴とする水耕栽培システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物を栽培するための水耕栽培技術に関し、より詳細には当該植物を植える水耕栽培ユニットとこの水耕栽培ユニットを含む水耕栽培システムに関する。
【背景技術】
【0002】
オランダや日本をはじめとした先進諸国では、従来型の農業に対してエレクトロニクスを導入することで、農作物の生産効率を飛躍的に向上させる開発が進展している。例えば近年では、ビニールハウスや工場建屋内などの屋内環境下において、プランターなどによって区画された領域内で計画的な植物栽培育成が行われている。
【0003】
かような屋内環境下での植物栽培の手法は、例えば大別して2つの形態に分類できる。
まず1つ目の形態としては、例えば特許文献1や特許文献2に例示されるような、植物を水平に並置して栽培育成を行う堪液水耕(DTF)もしくは薄膜水耕(NFT)と呼ばれる手法である。この手法の特徴としては、水平方向に延びる形で植物が並ぶため、比較的大規模な面積を有する建屋が必要となることなどが挙げられる。
【0004】
一方、他の2つ目の形態としては、例えば特許文献3や特許文献4に例示されるような、植物を重力方向すなわち垂直方向に並置して栽培育成を行う垂直水耕と呼ばれる手法である。この手法の特徴としては、ロッドや板材などを介して植物が垂直方向(斜め方向の場合もある)に並ぶため、比較的面積が小さい建屋も利用できることなどが挙げられる。
【0005】
これら2つの形態はそれぞれ一長一短があるものの、特に垂直水耕方式は、垂直方向の空間も有効利用できる点で単位面積当たりの生産効率が良い。したがって、現在では上記した特許文献の他にも、様々な部材や構造を有する垂直水耕システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-62386号公報
【文献】特開2017-12066号公報
【文献】特開2004-329060号公報
【文献】特開2011-24543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記した特許文献を含む既存の技術では市場のニーズを十分に満たしておらず、少なくとも下記の点において改善の余地は未だにあると言える。
【0008】
すなわち、上記した垂直水耕方式は単位面積当たりの生産効率がよいというメリットがあることから、植物が垂直方向に沿って並置される。この考えを延長すれば、植物を植える器材は必然的に垂直方向の高さが高くなる傾向となり、植物の植え付けや収穫などの作業性が良いことも必要となる。
【0009】
また、植物の育成には水分や養分を含む液体が必須であり、かような液体を植物に対して必要時に供給する必要があることから器材の洗浄対策が必要となる。上記したとおり垂直水耕方式は生産効率の高さがメリットであることから、器材の形状が複雑となり、器材の洗浄に手間がかかっていては本末転倒となってしまう。
【0010】
このように垂直水耕方式は得られるメリットが大きいが、上記した特許文献を含む従来技術では、栽培歩留まりを向上させ、且つ低コストで高い作業性や洗浄性をも両立させた構造は未だに提案されていない。
【0011】
本発明は、かような課題を解決することを一例に鑑みてなされたものであり、栽培歩留まりを向上させ、且つ低コストで高い作業性や洗浄性をも両立させた水耕栽培ユニット及び水耕栽培システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の一実施形態にかかる水耕栽培ユニットは、(1)相互に着脱可能な複数の筒状分割体から構成されて、その側面に少なくとも1つの開口部を有する栽培筒と、植物が配置される一端開口と、前記栽培筒の開口部と着脱可能な他端開口と、を具備する植付部材と、を含み、前記栽培筒の内面に、少なくとも一部の内径が変化する傾斜面が形成されている、ことを特徴とする。
【0013】
また、上記課題を解決するため、本発明の一実施形態にかかる水耕栽培ユニットは、(2)相互に着脱可能な複数の筒状分割体から構成されて、その側面に少なくとも1つの開口部を有する栽培筒と、植物が配置される一端開口と、前記栽培筒の開口部と着脱可能な他端開口と、を具備する植付部材と、前記栽培筒と一端が着脱可能に接続されるとともに、他端が前記水耕栽培ユニットを吊り下げ支持する吊り下げ支持機構に対して着脱可能に接続され、且つ、側面に水受け開口を有する水受け連結部材と、前記水受け開口と着脱可能に接続されて液体供給系から液体の供給を受ける水受け部材と、を含むことを特徴とする。
【0014】
また、上記課題を解決するため、本発明の一実施形態にかかる水耕栽培ユニットは、(3)相互に着脱可能な複数の筒状分割体から構成されて、その側面に少なくとも1つの開口部を有する栽培筒と、植物が配置される一端開口と、前記栽培筒の開口部と着脱可能な他端開口と、を具備する植付部材と、を含み、前記栽培筒における内周面のうちの少なくとも前記開口部の上部には、前記植付部材の側へ液体を導くための溝が形成されてなる、ことを特徴とする。
【0015】
また、上記課題を解決するため、本発明の一実施形態にかかる水耕栽培ユニットは、(4)相互に着脱可能な複数の筒状分割体から構成されて、その側面に少なくとも1つの開口部を有する栽培筒と、植物が配置される一端開口と、前記栽培筒の開口部と着脱可能な他端開口と、を具備する植付部材と、を含み、前記植付部材の一端開口と他端開口の間には、前記植物が抜けてしまうことを抑制する抜け防止部が形成されている、ことを特徴とする。
【0016】
また、上記課題を解決するため、本発明の一実施形態にかかる水耕栽培ユニットは、(5)相互に着脱可能な複数の筒状分割体から構成されて、その側面に少なくとも1つの開口部を有する栽培筒と、植物が配置される一端開口と、前記栽培筒の開口部と着脱可能な他端開口と、を具備する植付部材と、を含み、前記植付部材の一端開口には、刃物を挿入可能な切り欠き部が形成されている、ことを特徴とする。
【0017】
また、上記した(1)~(5)のいずれかに記載の水耕栽培ユニットにおいては、(6)前記開口部と前記他端開口とは、回転して嵌合されてなることが好ましい。
【0018】
また、上記した(2)に記載の水耕栽培ユニットにおいては、(7)前記栽培筒の下端に着脱可能に接続され、前記栽培筒の内側を流通する液体をガイドするガイド筒を更に有することが好ましい。
【0019】
また、(1)~(7)のいずれかに記載の水耕栽培ユニットにおいては、(8)前記栽培筒と接続したときに前記他端開口の一部が前記栽培筒の内側に張り出して水受けが形成されるように、前記植付部材の他端開口は斜めに切り欠かれてなることが好ましい。
【0020】
また、(1)~(8)のいずれかに記載の水耕栽培ユニットにおいては、(9)前記植付部材が前記筒状分割体と接続するための接続部を有し、前記植付部材の一端開口が、前記接続部の最上部を通る水平面以上の高さに位置付けられることが好ましい。
また、(1)~(9)のいずれかに記載の水耕栽培ユニットにおいては、(10)前記植付部材が、前記一端開口の少なくとも一部をなす舌部を有することが好ましい。
【0021】
さらに、上記課題を解決するため、本発明の一実施形態にかかる水耕栽培システムは、上記した(1)~(10)のいずれかに記載の水耕栽培ユニットと、前記水耕栽培ユニットを支持する吊り下げ支持機構と、前記水耕栽培ユニットに植えられた植物に対して必要な液体を供給する液体供給系と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、互いに着脱が可能な筒状分割体を垂直方向などに連ねて複数の植物を高密度で栽培するので栽培歩留まりを向上させることができる。さらに、筒状分割体や植付部材は建屋に合わせて任意の数だけ設置すればよく、洗浄時にも個別に洗浄することができることから、低コストで高い作業性や洗浄性をも両立させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態に係る水耕栽培システム100の外観を示す模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る水耕栽培ユニット20の外観を示す模式図である。
【
図3】水耕栽培ユニット20のうちの栽培筒21を示す模式図である。
【
図4】水耕栽培ユニット20のうちの植付部材22を示す模式図である。
【
図5】水耕栽培ユニット20のうちの水受け連結部材23を示す模式図である。
【
図6】水耕栽培ユニット20のうちの水受け部材24を示す模式図である。
【
図7】水耕栽培ユニット20のうちのガイド筒25を示す模式図である。
【
図8】筒状分割体21a同士の接続形態、および栽培筒21と植付部材22との接続形態を示す部分拡大図である。
【
図9】変形例1に係る栽培筒21を示す模式図である。
【
図10】変形例1の他の例に係る栽培筒21を示す模式図である。
【
図11】変形例2に係る植付部材22を示す模式図である。
【
図12】変形例3に係る植付部材22を示す模式図である。
【
図13】変形例4に係る植付部材22を示す模式図である。
【
図14】変形例5に係る植付部材22を示す模式図である。
【
図15】変形例6に係る植付部材22を示す模式図である。
【
図16】変形例7に係る植付部材22を示す模式図である。
【
図17】変形例8に係る植付部材22を示す模式図である。
【
図18】変形例9に係る植付部材22を示す模式図である。
【
図19】変形例10に係る栽培筒21を示す模式図である。
【
図20】変形例11に係る水受け連結部材23と水受け部材24を示す模式図(その1)である。
【
図21】変形例11に係る水受け連結部材23と水受け部材24を示す模式図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を適宜用いて本発明を好適に実施するための実施形態について説明する。なお、各図中において、水耕栽培ユニット20が水耕栽培システム100内で吊り下げられる重力方向をZ方向、この水耕栽培ユニット20が並ぶ方向をX方向、このZ方向とX方向とに直交する方向をYと便宜的に定義した。しかしながらこれら方向付けは、説明の便宜上であって、本発明の技術的範囲を何ら制限するものではない。
また、以下で詳細に説明する以外の構成については、例えば特願2016-120846号に記載された水耕栽培システムを適宜参照してもよい。
【0025】
[水耕栽培システム100]
図1は、本実施形態に係る水耕栽培システム100の外観を模式的に示した図である。同図に示すように、水耕栽培システム100は、フレーム10、水耕栽培ユニット20、吊り下げ支持機構30、液体供給系40、及び液体受けベッド50を含んで構成されている。
【0026】
本実施形態の水耕栽培システム100は、種々の植物の栽培に好適であるが、例えばレタス、グリーンリーフ、サラダ菜、水菜、ほうれん草、ハーブ類などの葉物野菜、トマト、ナス、ピーマン等の果菜類、あるいはイチゴ、メロン、スイカなどの果物類の栽培が特に適している。
【0027】
水耕栽培システム100は、植物の育成に必要な光を照射する光源60をさらに備えていてもよい。かような光源60としては、公知の種々の光源を適用してもよいが、例えば所望の波長を有する光を生成可能なLEDなどが好適である。
【0028】
また、照射する光の波長としても、植物の育成に必要な公知の波長が適用でき、例えば防虫用途としてUV-B光や、成長促進用途としてUV-A光などが例示できる。なお、上記の光源に代えて又は加えて、自然光を任意の個所に誘導する光ダクトや天窓を備えていてもよい。
【0029】
フレーム10は、後述する吊り下げ支持機構30を天面で支持するとともに、その内部に形成された収容空間で水耕栽培ユニット20、液体供給系40および液体受けベッド50などを収容する機能を有している。
【0030】
このフレーム10の材質に特に制限はないが、例えば公知の鋼材や硬質樹脂などが例示できる。また、フレーム10としては、棒状の鋼材で枠組みしてもよいし、平面状の板材などで上記した収容空間などを構築してもよい。
【0031】
水耕栽培ユニット20は、上記したフレーム10の収容空間内において、後述する吊り下げ支持機構30によって吊り下げ支持される。後述するとおり、この水耕栽培ユニット20における植付部材22には、栽培対象の上記した植物の苗Pが移植される。換言すれば、植付部材22の内部は中空形状となっており、この内部の空間が苗Pの苗床となっている。なお、植付部材22に移植される苗Pには、例えば後述するスポンジSが苗床の一部として具備される形態であってもよい。
【0032】
なお本実施形態においては、フレーム10内において複数の水耕栽培ユニット20が吊り下げられているが、特にこの態様に限定されずに少なくとも1つの水耕栽培ユニット20があればよい。
本実施形態の水耕栽培ユニット20における具体的な構造については、後に別途図面を用いて詳述する。
【0033】
吊り下げ支持機構30は、少なくとも1つの水耕栽培ユニット20を吊り下げ支持する機能を備えている。この吊り下げ支持機構30は、ボルトなど公知の固定部材を介してフレーム10の天面に固定されている。
そして本実施形態では、水耕栽培ユニット20がX方向に並んで複数配置されているため、これにあわせてX方向に延びるようにフレーム10の天面に設置されている。
【0034】
吊り下げ支持機構30の具体的な機構については、水耕栽培ユニット20を吊り下げ支持可能な限りにおいて特に制限はない。本実施形態では、かような機構として、例えば後述する水受け連結部材23の他端23bに挿入可能な係合ピンと係合ロッドが採用されている。しかしながらこの形態に限られず、例えば他端23bにフックを設け、吊り下げ支持機構30には当該フックに対応する留め具などを備える形態であってもよい。
【0035】
また、本実施形態の吊り下げ支持機構30は、吊り下げた水耕栽培ユニット20がX方向に移動可能なように構成されていてもよい。より具体的には、水受け連結部材23の他端23bと連結する上記の部材がスライドレールやガイドレール上に載置されるとともに、当該部材が公知のボールねじ機構と連結することでX方向に移動可能となっていてもよい。なお、X方向への移動機構に関しては、例えば特願2016-120846号に開示された搬送機構3や摺動機構を適宜組み入れてもよい。
【0036】
また、後述するとおり、液体供給系40が場所ごとに異なる液体を供給可能なように構成してもよい。この場合、水耕栽培ユニット20がX方向に移動可能とするとともに供給場所ごとに異なる養液を液体供給系40が供給可能することで、例えば植物の成長にあわせて成分や濃度の異なる養液を供給することができる。
【0037】
さらにこの場合において、例えば上記したボールねじのピッチを搬送方向(X方向)で異ならせてもよい。例えば
図1における吊り下げ支持機構30の左端を植付側として右端を収穫側とした場合、植付側から収穫側に向けてピッチが大きくなるようにボールねじのねじ溝が切ってあってもよい。
【0038】
液体供給系40は、水耕栽培ユニット20に植えられた植物Pの育成に必要な水分や養分などの液体を供給する機能を有し、送液管41、バルブ42、供給部43、ポンプ44、及び排液管45などを含んで構成されている。また、上記したとおり、供給部43から供給される液体の種類や量がX方向で異なるようにしてもよい。
【0039】
この場合、例えばX方向に沿って並ぶ複数の供給部43は、植付側から収穫側にかけて数個のゾーンに分かれており、各ゾーンで供給部43から成分や濃度の互いに異なる液体が供給されてもよい。この場合においては、送液管41、バルブ42あるいは液体受けベッド50も、上記ゾーンに対応して分割されていてもよい。
【0040】
液体受けベッド50は、各々の水耕栽培ユニット20を流れた後の余剰液体を受け入れる容器である。この液体受けベッド50は、上記した送液管41と排液管45とが接続されている。この液体受けベッド50には所定容量の上記した液体が貯留されているが、必要に応じてバルブ42bと排液管45を介して不必要な液体を排出してもよい。
【0041】
したがって、植物の育成に必要な液体は、バルブ42aとポンプ44を介して送液管41を流通し、各供給部43から後述する水受け部材24へと供給される。そして水受け部24を介して水耕栽培ユニット20に供給された液体は、その後に液体受けベッド50へと還流される。
【0042】
このように、本実施形態の水耕栽培システム100では、液体が液体供給系40を介して循環する構成となっており、無駄なく効率的に植物Pに液体を供給することが可能となっている。なお本実施形態では液体受けベッド50を用いて液体が循環する形態としたが、この態様に限られず、液体を循環させずにかけ流しする形態であってもよい。
【0043】
[水耕栽培ユニット20の詳細な構造]
次に、
図2~
図8を用いて水耕栽培ユニット20の詳細な構造について説明する。
まず
図2に示されるとおり、本実施形態における水耕栽培ユニット20は、栽培筒21と植付部材22を少なくとも有し、水受け連結部材23、水受け部材24、及びガイド筒25をさらに含んで構成されている。
【0044】
これらの各部材の材質に特に制限はないが、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ABS樹脂、あるいはポリ塩化ビニルなどが適用可能である。そして各部材の成形方法も特に制限はないが、例えば公知の射出成形によって所望の形状へ成形されることがコスト低減の観点では望ましい。また、各部材は、反射率向上の観点から白色など白系の色で着色されていることが好ましいが、特に着色すべき色に制限はなく無着色であってもよい。
【0045】
なお
図2から明らかなとおり、植付部材22は、水耕栽培ユニット20の長手方向(Z方向)に向かって栽培筒21における横側面(Y方向側)の対向する位置に互い違いとなるように配置されている。さらに、水耕栽培ユニット20がX方向に複数並ぶ場合、手前の栽培筒21の植付部材22と奥の栽培筒21の植付部材22とが前側面(X方向側)に関して高さが重複しないように、互い違いの配置となっていてもよい。そして上記した互い違いの配置にする場合には、水受け連結部材23を180°反転して嵌合させることが可能なように、
図2(b)のごとく水受け部材24が片側のみに配置された形態とすることもできる。もちろん、本実施形態は片側のみに水受け部材24が配置された形態に限らず、
図2(a)のごとく両側に水受け部材24を付けた構造としても良い。
【0046】
栽培筒21は、相互に着脱可能な複数の筒状分割体21aから構成されて、その側面に少なくとも1つの開口部21bを有する。なお本実施形態では複数の筒状分割体21aが組み合わされて栽培筒21となっているが、この形態に限られず1つの筒状分割体21aで栽培筒21が構成されていてもよい。
この複数の筒状分割体21aから構成された栽培筒21は、その内部が中空形状となっており、液体供給系40から供給された液体が内部を流通することが可能となっている。
【0047】
図3に筒状分割体21aの詳細な構造を示す。
図示されるとおり、筒状分割体21aは、主軸方向(Z方向)の端部にそれぞれ第1端部21f
1と第2端部21f
2を有している。また、
図8に示すとおり、この第1端部21f
1と第2端部21f
2は、互いに回転して嵌合することで接続が可能となっている。なお、第1端部21f
1と第2端部21f
2とが回転して嵌合した際に、摩擦式やフック式やねじ式など公知の構造でこれらがロックされるようになっていてもよい。
【0048】
なお、第1端部21f1と第2端部21f2との回転角度に特に制限はないが、1回転未満、例えば45°回転して嵌合される態様が作業性向上の観点から好ましい。これにより、一方の筒状分割体21aにおける第1端部21f1と、他方の筒状分割体21aにおける第2端部21f2とが効率的に接続でき、Z方向に任意の数や高さの分だけ連ねることが可能となる。
【0049】
また、筒状分割体21aの側面には、側方へ分岐した管を含む開口部21bが形成されている。本実施形態では、1つの筒状分割体21aに対して、4つの開口部21bが形成されている。しかしながらこの形態に限られず、スペース的に問題ない限りにおいて、1つの筒状分割体21aに対して2つや他の任意の数だけ開口部21bが設けられていてもよい。
【0050】
また、本実施形態では、筒状分割体21aを合計5つ直列(Z方向)に連ねることで、栽培筒21として総計20個の開口部21bを具備しているが、5つ以外の任意の数だけ連ねてもよい。
なお、筒状分割体21aの内径は、水耕栽培システム100の大きさによっても任意に設定できるが、例えばφ20~100mm程度であってもよい。
【0051】
本実施形態では、少量の液体(水など)でも栽培ユニット20内面に液体(水など)がつたいやすいように、筒状分割体21aの内径はなるべく細い方が好ましい。
かような観点からは、筒状分割体21aの内径は、例えばφ24~45mm程度が更に好ましい。なお、筒状分割体21aの内径はなるべく細い方が好ましいが、φ20mmを下回ってしまうと、構造的な強度がなくなったり、植物Pの根が詰まったりするので好ましくない。
【0052】
植付部材22は、
図4に示すとおり、植物P(苗など)が配置(移植)される一端開口22aと、上記した栽培筒21の開口部21bと着脱可能な他端開口22bと、を具備する。この植付部材22も、筒状分割体21aなどと同様に、その内部が中空形状となっている。
同図に示すとおり、本実施形態における一端開口22aは、末広がり状(「ラッパ状」とも称する)の開口となっており、これにより植物Pを簡易で迅速に移植することが可能となっている。
【0053】
なお一端開口22aの形状は、本実施形態では末広がりの円状であったが、これに限られず例えば末広がりでない円筒状でもよく、さらには末広がりの角筒状や末広がりでない角筒状であってもよい。
また
図4(b)に示すように、一端開口22aの下端LEは、筒状分割体21aの開口部21bと植付部材22の他端開口22bとが嵌合される内面の最上部を通る水平面HP以上の高さに位置づけられることが好ましい。このような形状とすることにより、一端開口22aから液体が溢れることを抑制でき、設備の洗浄やコストの面において利点がある。
【0054】
また、植付部材22の内径は、移植される植物Pによって任意に設定できるが、例えば葉物のレタスの場合などはφ20~95mm程度が好ましい。また、植付部材22の内径は、筒状分割体21aの内径よりも小径であることが好ましい。
さらに、植付部材22の厚み(筒の肉厚)としては、例えば1~5mm範囲が好適であり、より好ましくは2~4mmである。この肉厚が1mm以下では、強度が低下して耐久性に劣るので好ましくない。一方で肉厚が5mmを超えるような場合には、植付部材22が重たくなってしまい作業性が低下し、さらにはコスト増となるため不適となるからである。
【0055】
また、YZ平面において植付部材22と栽培筒21とが成す角度は、植付部材22と栽培筒21の接続箇所付近の部分が約90度となっている。また、栽培筒21と接続した植付部材22は、栽培筒21からY方向に沿って延伸し、そこから約45度の角度で屈曲形成されて一端開口22aへと繋がっている。すなわち、植物Pの植付角度は、本実施形態では約45度となっている。
【0056】
しかしながら上記は一例であって、植物Pが抜け落ちない限りにおいて他の角度で設定してもよい。例えば、植付部材22は、栽培筒21の接続箇所から90°となるように水平(Y方向)に延伸していたが、Z方向上向き(栽培筒21から時計回りに90度未満)の角度で栽培筒21からY方向に延伸していてもよいし、その逆でZ方向下向き(栽培筒21から時計回りに90度超)の角度で栽培筒21からY方向へ延伸していてもよい。
【0057】
また、本実施形態における他端開口22bは、上記した筒状分割体21aの開口部21bと対応した形状となっている。より具体的には、
図8に示すとおり、筒状分割体21aの開口部21bと植付部材22の他端開口22bとは、回転して嵌合されるように構成されている。なお、筒状分割体21aに植付部材22が回転して嵌合されたときに、摩擦式やフック式やねじ式など公知の構造でこれらがロックされるようになっていてもよい。
【0058】
よって、筒状分割体21aに植付部材22を取り付ける際には、例えば植付部材22を10~45°程度回転させて開口部21bと他端開口22bとを嵌め合わせればよい。このように、本実施形態では、植付部材22を1回転未満だけ回転させて筒状分割体21aに嵌合させているため、作業の効率が非常に高くなっている。
【0059】
なお
図8に示すように、互いに嵌め合わせた開口部21bと他端開口22bとで抜き勾配を持たせるようにしてもよい。これにより、開口部21bと他端開口22bとの接続箇所が着脱可能になるとともに強固に接続され、いったんこれらを接続すれば当該接続箇所からの液体漏れなどは効果的に抑制することができる。
また、同図に示すように、他端開口22bの爪
22gは、開口部21bとの接続作業が容易となるように任意の位置に設けることができる。さらには、前記爪22gの長さや幅についても、特に制限されるものではなく任意とすることができる。その際、爪22gの幅は、例えば嵌合部分の円周の1/8~1/6程度にすることがより好ましい。筒状分割体21aに植付部材22が回転して嵌合されたときに、爪22gの開口部21bに対する接触面積を確保することで当該接触部分の摩擦力によってこれらの接続を強固にすることができ、結果的に接続箇所からの液体漏れを抑制することができるからである。
【0060】
また、本実施形態における開口部21bと他端開口22bの接続形態は回転嵌合によるものであったが、この形態に限られずネジ式としてもよい。
また、筒状分割体21aにおける開口部21bの設置個所は側面ならいずれであっても良く、例えば筒状分割体21aの肉厚がある程度大きい場合には、栽培筒21を構成する最下部の筒状分割体21aにおける底(第2端部21f2)も開口部21bとして用いてもよい。
【0061】
水受け連結部材23は、
図5に示すとおり、Y方向とZ方向に延びるト字状(
図5(b))もしくは十字状(
図5(a))の筒体であり、その端部にそれぞれ一端23a、他端23b、及び水受け開口23cを含んで構成されている。この水受け連結部材23も、筒状分割体21aなどと同様に、その内部が中空形状となっている。なお、ト字状の水受け連結部材23にするか十字状の水受け連結部材23にするかは任意に選択が可能であり、この選択に合わせて液体供給系40における供給部43の構造も変更すればよい。
【0062】
このうち、Z方向に延びる一方の端部である一端23aは、例えば上記した栽培筒21の第1端部21f2と着脱可能に接続される機能を有している。なお、一端23aは、栽培筒21の第2端部21f1と同様の形状となっていてもよい。したがって、本実施形態の一端23aと第1端部21f2とは、回転して嵌合される。なお、一端23aと第1端部21f2とが回転して嵌合したときに、摩擦式やフック式やねじ式など公知の構造でこれらがロックされるようになっていてもよい。
【0063】
また、他端23bは、水耕栽培ユニット20を吊り下げ支持する吊り下げ支持機構30に対して移動可能に接続される機能を有している。
図5に示すとおり、本実施形態の他端23bには係合孔23b
1が形成されており、上記した吊り下げ支持機構30に設けられた係合ロッドおよび係合ピン(不図示)が挿入可能となっている。これにより、他端23bを介して水耕栽培ユニット20が吊り下げ支持機構30に着脱可能に吊り下げ支持される。
【0064】
一方、水受け連結部材23の側面には、Y方向に延びる分岐して延びる管と水受け開口23cが形成されている。この水受け開口23cには、後述する水受け部材24の接続開口24aが着脱可能に接続される。
【0065】
水受け部材24は、
図6に示すとおり、水受け開口23cと着脱可能に接続される接続開口24aと、液体供給系40から液体の供給を受ける水受け部24bとを含んで構成されている。この水受け部材24も、筒状分割体21aなどと同様に、その内部が中空形状となっている。
【0066】
なお、この水受け部材24は、洗浄性向上などを目的として、それぞれの隅(角部)が曲面状やR状となっていることが好ましい。
また、
図6に示す接続開口24aでは、接続の爪が2つ備わっているが、かような爪の数に制限はなく2つ以外の任意の個数でもよい。ただし、例えば3つ以下など爪の数が比較的少ない方が、成形性や洗浄性の面で好都合である。
【0067】
このうち、接続開口24aは、
図2にも示すとおり、上記した水受け開口23cと回転して嵌合される。なお、接続開口24aと水受け開口23cとが回転して嵌合したとき、摩擦式やフック式やねじ式など公知の構造でこれらがロックされるようになっていてもよい。これにより、接続開口24aと水受け開口23cとの接続箇所が自由に着脱できるとともに強固に接続されることとなる。したがって、いったんこれらが接続されれば、当該接続箇所からの液体漏れなどは抑制される。
【0068】
また、水受け部24bは、上記した液体供給系40の供給部43と対向するように配置される。なお本実施形態の水受け部24bは、その外形が四角形の枡型であるが、供給部43からの液体を漏れなく受けることが可能であれば、例えばお椀状など他の形状であってもよい。
なお、水受け部24bに、図示しない公知の液体検出センサーを配置し、上記した供給部43からの液体が供給されているか否かを検出するようにしてもよい。
【0069】
ガイド筒25は、
図7に示すとおり、栽培筒21の下端に着脱可能に接続され、この栽培筒21の内側を流通する液体をガイドする機能を有している。より具体的には、
図1及び
図2に示されるように、本実施形態のガイド筒25は、液体受けベッド50と栽培筒21の下端との間に介在している。このガイド筒25も、筒状分割体21aなどと同様に、その内部が中空形状となっている。
また、
図7に示すように、本実施形態のガイド筒25は、例えば液体受けベッド50などから飛散した液体などが外に出ないように規制する飛び跳ね防止板25aを備えた構造を有していてもよい。
【0070】
これにより、栽培筒21から外へ排出された液体が、液体受けベッド50に着液したときに飛び跳ねてしまうことが抑制される。また、ガイド筒25が栽培筒21の下端に着脱可能に装着されることで、例えば水耕栽培ユニット20が吊り下げ支持機構30を介してX方向へ移動する場合などには、移動中に水耕栽培ユニット20が揺動してしまうことなども抑制することができる。
なお、飛び跳ね防止板25aの形状は任意の形状でよく、例えば本実施形態のごとく矩形の板材でもよいし、円板状でもよい。さらに飛び跳ね防止板25aの外径についても、他の水耕栽培ユニット20と干渉しない限りにおいて任意の大きさを設定してもよい。
【0071】
以上説明した本実施形態によれば、次に述べる効果を少なくとも1つ享受することが可能となっている。
(a)栽培筒21と植付部材22とは着脱可能に接続するので、任意の数だけ組立可能であり作業性や拡張性が非常に高く、それでいて個別に洗浄ができるなど洗浄性も従来構造に比して格段に向上している。
(b)植付部材21が回転して栽培筒21に嵌合しているので、収穫時に作業者が快適な角度に植付部材22を回転することもできる。これにより収穫時には、植物Pを傷付けずに植付部材22から引き抜くことができる。
(c)植付部材21が回転して栽培筒21に嵌合しているので、差し込んで嵌合するタイプに比してクリアランスを厳密に管理する必要はなくなる。
【0072】
なお、上記で説明した実施形態は一例であって、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変形が可能である。
以下に、本実施形態に好適な変形例を示す。
【0073】
<変形例1>
図9及び
図10に変形例1に係る水耕栽培ユニット20を示す。
上記した実施形態では、栽培筒21の内径は基本的に変化せず一様であった。しかしながら本発明は上記に限られず、栽培筒21の内径が主軸方向に沿って漸次変化する傾斜面(内径絞り部)を有していてもよい。
【0074】
換言すれば、本変形例1では、栽培筒21の内面に、少なくとも一部の内径が変化する傾斜面が形成されていることが主とした特徴となっている。
以下の説明では、実施形態と同じ機能を有する部材については同一の番号を付して適宜その説明は省略する(他の変形例においても同様)。
【0075】
まず
図9に示すように、変形例1の栽培筒21は、上記した傾斜面としての内径絞り部21dを有している。より具体的には、筒状分割体21aのうち、植付部材22との接続箇所より下流側(-Z方向)には内径絞り部21dが形成されている。
【0076】
すなわち、変形例1の筒状分割体21aは、内径がφD1の部位と、φD3の部位を有している。この筒状分割体21aは、植付部材22よりも下流の位置において、次第に内径が小さくなってφD1からφD3へと漸次変化(このような傾斜を「上がり勾配」とも称する)し、その後に再び内径が増加してφD3からφD1へと漸次変化(このような傾斜を「下がり勾配」とも称する)している。
【0077】
なお、
図9における筒の厚み(肉厚)や径の大小関係は、例えば次のとおりとなっている。
φD
0>φD
1>φD
2>φD
3
(φD
0-φD
1)≒(φD
2-φD
3)
しかしながら上記は一例であり、絞り度合いが弱く例えばφD
2>φD
1であってもよい。
【0078】
また、筒状分割体21aにおける内径絞り部21dの形成位置は、特に制限はない。例えば射出成形により成形される場合を考慮すると、筒状分割体21aの主軸(Z方向)における中央(中心)であることが好ましい。これにより、射出成形型の抜き方向に沿って容易に筒状分割体21aの内径を漸次変化させることができる。
【0079】
なお、
図9における内径絞り部21dは、筒状分割体21aの内面におけるZ軸周り(θz)全周に渡って形成されていた。しかしながら上記形態には限定されず、
図10に示すごとき形態の内径絞り部21dであってもよい。
【0080】
具体的に、
図10(a)における内径絞り部21dは、Z方向上流側から見た場合、内径が漸次増加する過程で植付部材22が接続されている。また、その断面図からも明らかなとおり、植付部材22の直下と直上に位置するように周方向の一部にだけ内径絞り部21dが設けている。
これにより、上流(+Z方向)から流れてきた液体は、内径絞り部21dをつたって途中にある植付部材22の他端開口22bへと効率的に流入することが可能となっている。
【0081】
一方で他の例として、
図10(b)における内径絞り部21dは、Z方向上流側から見た場合、植付部材22との接続箇所を超えた後で内径が漸次減少する形態となっている。また、その断面図からも明らかなとおり、植付部材22の直下に位置するように周方向の一部にだけ内径絞り部21dが設けている。
この形態によっても、上流(+Z方向)から流れてきた液体は、内径絞り部21dの内面をつたいやすくなり、植付部材22の他端開口22bへと効率的に流入することが可能となっている。
【0082】
また、他の例として
図10(c)に示す内径絞り部21dの形態も適用できる。この例では、筒状分割体21aのY方向の両側で互いに対向するように、植付部材22が筒状分割体21aに接続されている。
そして筒状分割体21aにおいて、Z方向上流側から見た場合、それぞれの植付部材22との接続箇所を超えた後で内径が漸次減少する形態となっている。
【0083】
また、その断面図からも明らかなとおり、植付部材22の直下に位置するように周方向(θz)の全周に渡って内径絞り部21dが設けている。
この形態によっても、上流(+Z方向)から流れてきた液体は、それぞれの植付部材22の他端開口22bへと効率的に流入することが可能となっている。
【0084】
以上説明した変形例1によれば、筒状分割体21aの内面に傾斜(内径絞り部)をつけることで、液体の流れをスムーズにすることが可能となっている。なお、傾斜の勾配や向きについては成形可能である限りにおいて特に制限はなく、任意の位置に上がり勾配や下がり勾配を設けてもよい。
【0085】
<変形例2>
次に
図11を用いて変形例2に係る水耕栽培ユニット20を示す。
図11(a)に示すとおり、変形例2の水耕栽培ユニット20は、栽培筒21の内側で水を受けやすいように突出部22cを含んで構成されている。
【0086】
また、突出部22cの突出量(筒状分割体21aの内壁から中央へ突出する量)T22は、筒状分割体21aの内径に対して1/10~1/3の大きさであることが好ましい。
これにより、栽培筒21の上流から流れた液体Lのうちの一部が、効率的に突出部22cを介して植付部材22側へ分岐して流入することが可能となる。
【0087】
なお、突出部22cの突出形状は、植付部材22に対して下側(下流側)が突出した形状であればよく、植付部材22の他端開口22bが斜めに切り欠かれた形状でもよいし、その他の形状でもよい。
より具体的には、例えば
図11(c)では、筒状分割体21aの下側に突出部22cが設けられている。このとき、突出部22cの幅(図中におけるX方向の大きさ)は管内に収まる限り任意の値でもよく、例えばX方向の幅は液体L(水など)が受けやすいように、ある程度の幅を有する方がよい。例えば上記したX方向の幅は、管の内径に対して、1/3~1/2程度の幅であることが好ましい。
【0088】
一方で、
図11(b)では、植付部材22の他端開口22bを斜めに切り欠くことで突出部22cが形成されている。この場合、植付部材22が筒状分割体21aに接続された際に、他端開口22bの下側が筒状分割体21aの内側へ突出するとともに、他端開口22bの上側は筒状分割体21aの内側へ突出しないことが好ましい。
このように突出部22cの形成方法は特に限定されず、植付部材22側に形成されていてもよいし、筒状分割体21a側に設けてもよい。
【0089】
<変形例3>
次に
図12を用いて変形例3に係る水耕栽培ユニット20を示す。
同図に示すとおり、変形例3の植付部材22においては、当該植付部材22の一端開口22aと他端開口22bの間には、植物P(苗)が抜けてしまうことを抑制する抜け防止部22dが形成されている。
【0090】
より具体的に、本変形例3における抜け防止部22dは、植付部材22のうち他端開口22bからY方向に延びた後に一端開口22aに向かって屈曲する部位に設けられている。
この抜け防止部22dとしては、例えば
図12(a)及び(b)に示すような、上記した屈曲する部位に設けられる突起であってもよい。
【0091】
なお、植物Pを一端開口22aに移植する際には、培地Sなどに苗が植えられた状態で行われることもある。この場合において、一端開口22aは末広がりのラッパ状であるため、意図せず移植した植物Pが培地Sとともに抜け落ちてしまう可能性もある。
これに対して本変形例3によれば、抜け防止部22dに培地Sが引っ掛かることができるので、意図しない植物Pの落下などが抑制される。
【0092】
なお、抜け防止部22dは、培地Sを引っかける機能を有していればよいので、種々の変形が可能である。例えば、
図12(c)及び(d)に示すように、他端開口22bから屈曲する部位まで、Y方向に向けて徐々に内径が小さくなるような植付部材22の構造を採用することができる。
【0093】
すると、本変形例の植付部材22は上記した屈曲する部位で最も内径が小さい状態となり、この屈曲する部位で培地Sが引っ掛かることが可能となる。すなわち、本変形例3における抜け防止部22dは、上記した突起を設ける例に代えて、屈曲した部位で引っかけるごとき構造であってもよい。
【0094】
さらには、培地Sが引っ掛かる程度において、この屈曲した部位でバリなどが生じるように意図的に加工して抜け防止部22dを形成してもよい。以上のことを考慮すれば、抜け防止部22dは、植付部材22の内面に形成されて培地Sを引っ掛ける機能を有する構造であればよい。
なお、培地Sの材質に特に制限はなく、スポンジ、ウレタンフォーム、植物繊維や無機繊維からなる成形品など公知の材料を適用することができる。
【0095】
<変形例4>
次に
図13を用いて変形例4に係る水耕栽培ユニット20を示す。
同図に示すとおり、変形例4の植付部材22においては、当該植付部材22の一端開口22aと他端開口22bの間には、液体Lを貯留可能な液体貯留部22eが形成されている。
【0096】
なお、図示された液体貯留部22eは、上記屈曲した部位から一端開口22a側に設けられているが、この形態に限定されるものではない。例えば、他端開口22bからY方向且つ-Z方向(図中では右下方向)に延伸するように傾斜をつけることで、液体貯留部22eを上記屈曲した部位から他端開口22b側に設けるようにしてもよい。
【0097】
これにより、植付部材22に移植された植物Pは、液体貯留部22eから液体を吸収することが可能となり、良好な栄養状態を長期間において維持することが可能となる。また、植付部材22を他端開口22bから-Z方向に向けて傾斜させることで、収穫時に植付部材22を栽培筒21から取り外した際にも、液体が不用意に流出せずに液体貯留部22eに留めておくことが可能となる。
【0098】
<変形例5>
次に
図14を用いて変形例5に係る水耕栽培ユニット20を示す。
同図に示すとおり、変形例5の植付部材22においては、当該植付部材22の一端開口22aには、カッターやハサミなどの刃物を挿入可能な切り欠き部22fが形成されている。
【0099】
栽培する植物Pの種類によっては、植付部材22の内部にまで植物Pの根が深く進入することもあり得る。かような場合には、収穫時に植物Pを少し強く引かなければならないが、切り欠き部22fがあれば引かずに刃物を入れることが可能となる。
【0100】
この点、従来構造は接着剤などで一体的に固定されているため、一端開口22a付近で刃物を使った場合には植物Pの残部が植付部材22から取れなくなってしまう。
これに対して本形態では、植付部材22は栽培筒21に対して着脱可能に接続されているため、万が一の場合にもこれらを分解することで植物Pの残部を容易に除去できる。
【0101】
さらには、切り欠き部22fがあるので植物Pに傷をつけず自由に刃物などを入れることができる。
また、切り欠き部22fがあることで、当該切り欠き部22fが植物Pの根に対する監視窓としても機能し、上記した培地Sを一端開口22aから差し込むときの深さの目安にしてもよい。
【0102】
なお、一端開口22aにおける切り欠き部22fの位置や個数に特に制限はない。例えば複数の水耕栽培ユニット20がX方向に並ぶ水耕栽培システム100の場合には、一端開口22aのうちこの水耕栽培ユニット20が並ぶ方向の両側(図ではX方向における両側)に切り欠き部22fがあってもよい。
【0103】
また、図示された切り欠き部22fは一端開口22aに形成されていたが、一端開口22a側にあればよく、例えば屈曲する部位と一端開口22aの間におけるいずれかの位置に設けられていてもよい。
【0104】
<変形例6>
次に
図15を用いて変形例6に係る水耕栽培ユニット20を示す。
同図に示すとおり、変形例6の植付部材22においては、主に植物Pが載置される部分において
図4に示す実施形態と相違するので、当該相違点を中心として図を用いて以下に説明する。
変形例6の植付部材22は、植物Pが配置される円筒部22hと、筒状分割体21aの開口部21bと接続するための接続部22jと、前記円筒部22hと前記接続部22jとの間に形成される折曲部22iと、を有してなる。
【0105】
変形例6における円筒部22hは、
図15に示されるように、折曲部22iとの接続部の直径L1及び一端開口22aにおける直径L2が各々等しいパイプ形状を有している。そして、前記円筒部22hと前記接続部22jとの中心軸同士がなす角αは約40°~50°であることが好ましい。換言すれば、円筒部22hと接続部22jとは、その中心軸同士が約40°~50°の角度となるように折曲部22iを介して配置されている。上記角度とすることにより、植物Pが大きく成長した場合であっても、植付箇所となる円筒部22hの植え込み深さを充分に確保できることから、円筒部22hから抜け落ちることなく安定して円筒部22h内に載置される。
【0106】
そして、一端開口22aは、接続部22jと開口部21bとが接続されたときの内径最上部を通る水平面HP以上の高さに位置づけられることが好ましい。すなわち、
図15に示すように、一端開口22aの最も下端LEが前記水平面HPと重なる、あるいは下端LEが水平面HPよりも上となる形状であることが好ましい。このような形状とすることにより、一端開口22aから液体が溢れることを抑制でき、設備の洗浄やコストの面において利点がある。
【0107】
さらに、変形例6において、一端開口22aの下端LE及び上端UEを含む面と水平面HPとがなす角度βは、15°~40°であることが好ましい。この角度とすることにより、植物Pが円筒部22hに差し込みやすく、また一端開口22aから液体が溢れることを抑制できる。
【0108】
なお、上述の直径L1と直径L2との間の長さL3は特に制限されるものではない。しかしながら上述したように、一端開口22aが水平面HPよりも上であり、且つ角度βが上記範囲内の形状とすることが、植物Pが円筒部22hに保持されて抜けにくい点からは好ましい。また、このような円筒部22hがストレートとなる形状とすることにより、植物Pを円筒部22hに植付ける際に差し込みやすく、植付け作業が容易となり植付け時間の短縮にも繋がるという利点がある。さらには、一端開口22aから液体が溢れることを抑制できるため好ましい。
【0109】
<変形例7>
次に
図16を用いて変形例7に係る水耕栽培ユニット20を示す。
同図に示すとおり、変形例7の植付部材22においては、主に一端開口22aの周辺部分の形状において
図15に示す変形例6と相違するので、当該相違点を中心として以下に説明する。
すなわち変形例7の植付部材22は、植物Pが配置される円筒部22hの、接続部22jとは反対側の端部に、舌部22kが設けられていることを特徴とする。この場合、舌部22kが一端開口22aの少なくとも一部をなすものとする。
【0110】
図16においては、舌部22kはテーパー状の管の一部を切り欠いたような形状である。また、一端開口22aの下端LEと一端開口22aの上端UEとを含む面と、水平面HPとがなす角度βが15°~40°となるように、円筒部22hと一端開口22aとの間に舌部22kが設けられている。
このように舌部22kが植え付け誘導形状として設けられることにより、植物Pを円筒部22hに植付ける際に差し込みやすく、植付け作業が容易となるという利点がある。また、植物Pの成長の早期段階においては、舌部22kによる光の反射効果により、植物Pの生育に効果的である。さらに植物Pの成長の後期段階においては、大きくなった植物Pが舌部22kによって支持されるので、植付箇所となる植え込み深さが確保されたストレート状の円筒部22h内に植物Pが安定して配置されることとなり好ましい。
【0111】
なお、舌部22kの形状としては、
図16に示すような形状に限られるものではない。上記のような効果を得られるのであれば、例えば湾曲した半円形状の板や楕円形状の板であっても差し支えない。すなわち、円筒部22hの一部にのみ舌部22kが設けられていてもよい。
【0112】
<変形例8>
次に
図17を用いて変形例8に係る水耕栽培ユニット20を示す。
同図に示すとおり、変形例8の植付部材22においては、円筒部22hの側面に側面突出部22mが設けられ、その内面に窪み部が形成されている点を特徴とする。窪み部内に植物Pが植えられた培地Sの一部分を突出させることにより、培地Sが円筒部22h内から抜け落ちることを抑制することができる。
【0113】
なお、
図17においては使用される培地Sの形状が四角柱であるため、側面突出部22mの数を4個として四角柱の培地Sの4箇所の角を受け入れるようにしている。しかしながら、側面突出部22mの設置箇所、設置個数、大きさ(長さ及び幅)は
図17に示されるものに限定されるものではなく、使用される培地Sの形状等に応じて適宜変更可能である。また、培地Sが円筒部22h内から抜け落ちることを抑制するという効果を得られる限りであれば、側面突出部22mは複数設ける必要はなく、円筒部22hのいずれかの箇所に一箇所だけ設けられていてもよい。
【0114】
<変形例9>
次に
図18を用いて変形例9に係る水耕栽培ユニット20を示す。
同図に示すとおり、変形例9の植付部材22においては、培地Sを所定の位置に保持し、且つ植物Pの根が逆の方向に生長することを抑制するためのストッパー22nが設けられている。このように、ストッパー22nにより培地Sを所定の位置に保持することにより、培地Sが養液等の液体に浸漬する領域を調整することができ、培地Sが養液等の液体に必要以上に浸漬することを抑制することができる。
【0115】
これは、以下のような問題に鑑みたものである。すなわち、植物Pの成長に伴って、培地Sが養液に浸漬する領域には根が巻き付くことが想定できる。またその結果、植物Pの根が培地Sを押し上げて円筒部22hから押し出してしまったり、或いは植物Pの根が一端開口22a方向に成長してしまうことでイレギュラーに液体が一端開口22aから溢れたりする可能性も想定できる。このような問題を抑制するため、ストッパー22nを設け、培地Sが養液等の液体に浸漬する領域を調整し、同時に植物Pの根が伸びる方向をコントロールすることが有効である。
【0116】
ストッパー22nの設けられる位置としては、円筒部22h内の、折曲部22iと接続する位置に設けられることが、培地Sを円筒部22h内において安定して保持する観点からは好ましい。
また、ストッパー22nの形状としては、培地Sを所定の位置に保持し、かつ植物Pの根の成長を折曲部22iや接続部22jの方向に伸びるように誘導する形状であればよい。折曲部22iや接続部22jの方向に根を伸ばすことで、植物Pの根を一端開口22a方向に伸ばさないという効果も見込めるためである。例えば、
図18(a)に示すように折曲部22iの一部を内側に突出させる形状であってもよい。また、
図18(b)や
図18(c)に示すように、円筒部22h内の折曲部22iとの接続位置において、開口を有する円板を設けてもよい。また、
図18(a)~(c)に示す形状の一部を切り欠いた円弧形状や、円筒部22hの内壁から中心方向への突出部材を有する形状であってもよい。
【0117】
ストッパー22nにより、培地Sの一端開口22aに近い領域は養液に浸漬しない状態を保つことができる。その結果植物Pの根は接続部22jや筒状分割体21aの方向に伸びていくことが想定でき、液体の一端開口22aからの溢れ等の問題が抑制できると考えられる。
なお、
図17に示す側面突出部22mのような形状であっても、培地Sの位置を固定したり培地Sが養液等の液体に浸漬する領域を調整することが可能となるため、同様の効果が得られる。
【0118】
<変形例10>
次に
図19を用いて変形例10に係る水耕栽培ユニット20を示す。
同図に示すとおり、変形例10の筒状分割体21aにおいては、その内面において、主軸(Z軸)回りのうち、開口部21bの上部に付近の周方向で凹凸21cが形成されている。なお、
図19(a)では、筒状分割体21aの筒内(内周面)で全周に渡って凹凸21cが形成されてはいないが、全周に渡って凹凸21cが形成されていてもよい。また、内周面にらせんを描くように凹凸21cが形成されていてもよい。
また、凹凸21cの形状としては特に制限されるものではなく、例えば
図19(a)に示すように台形状の断面でもよいし、
図19(b)に示すように三角形状の断面であってもよい。この際、
図19(b)に示すように断面が三角形状であることが、筒状分割体21aの内部を通過する液体を導く機能、及び筒状分割体21aの内部の洗浄のしやすさを両立させることができ、特に好ましい。
また、筒状分割体21aの内面に設けられる凹凸21cの数についても特に制限されるものではなく、任意の一箇所(この場合は実質的に凸部だけとなる)に設けられていてもよい。
図19(a)に示すように対向する上下に5箇所ずつ設けられていてもよい。また、
図19(b)に示すような三角形状の断面の凹凸21cが、内面の対向する二箇所に設けられていてもよい。なお、図は例示であって、凹凸21cの数が図に示すものに制限されないことは言うまでもない。
また、
図19(a)では、内周面から凸方向に凹凸21cが形成されているが、
図19(d)に示すように内周面の厚み方向Thに対して凹方向の形状であってもよい。
【0119】
このように変形例10の水耕栽培ユニット20では、栽培筒21における内周面のうちの少なくとも開口部21bの上部に、植付部材22の側へ液体を導くための溝(凹凸21c)が形成されている。
これにより、筒状分割体21aの内面を流れる液体Lが溝に沿って流れることで、効率的に開口部21bへ流入し、ひいては植付部材22の方へ分岐して流入することが可能となる。
【0120】
<変形例11>
次に
図20~
図21を用いて変形例11に係る水耕栽培ユニット20を示す。
同図に示すとおり、変形例11の水耕栽培ユニット20は、水受け連結部23や栽培筒21の内部に、流れる液体の量、速度、方向等を調節するための流路調整部材が設けられている。
流路調整部材としては、具体的には、
図20(a)~(d)に示されるような突起部Ztや、
図20(a)に示される架橋部Lk、
図20(b)に示される穴あき板Dk、
図21(c)に示される溝部Mz、等を例示することができる。
【0121】
まず、
図20(a)~(d)に示されるような突起部Ztについて図を用いて説明する。突起部Ztは、水受け部材24と水受け連結部23が接続した箇所に設けられ、水受け連結部23の内側に張り出す形状を有している。
この突起部Ztの突起形状(水受け連結部材23aの内壁から中央へ突出する形状)は、液体が下方(下流側)へ流れる形状であれば特に制限はないが、流入する液体の量や速度によって適宜調整するとよい。
この時、突起部Ztの水受け連結部材23aの内壁から中央へ突出する長さT
24は、流入した水が対面の内壁に突き当たる程度の長さが好ましく、水受け連結部材23aの内径と同程度か内径の1~1/3程度の大きさであることが好ましい。
【0122】
また、突起部Ztの幅W24は、突起部Ztの両側から水が流出する必要があるため、水受け連結部材23の内径よりも小さければよい。また、突起部Ztの長さT24と幅W24を例示したが、突起部Ztの外形は四角形である必要はなく、曲線で囲まれた形状であってもよいし、水受け連結部材23aの内壁から中央へ向けて先鋭となる三角形状でもよい。
【0123】
これにより、水受け部24の上流から流れた液体Lが、水受け連結部材23の内面へ効率的に突起部Ztを介して水受け連結部材23の内壁へ当たることで、この内壁から効率的に下方(下流側)の植付部材22に液体を供給することが可能となる。
【0124】
なお、
図20(c)では、水受け部材24が水受け連結部材23cに接続された際に、接続開口24aの下側が水受け連結部材23aの内側(筒内)へ突出するとともに、接続開口24aの上側は水受け連結部材23aの内側(管内)へ突出しないことが好ましい。
【0125】
また、突起部Ztにおける突出形状は、上記した下側が管内へ突出した形状であれば特に制限はない。このように突起部Ztの形態における一例としては、例えば、小さい棒状のごとき部材となっていてもよい。さらには、かような下側が突出した突起部Ztを形成可能であれば、突起部Ztは、
図20(c)に示すごとく水受け部材24側に形成されてもよいし、
図20(d)に示すごとく水受け連結部材23aの下側に設けられても良い。さらに、かような突起部Ztは、植付部材22に形成されていてもよい。
【0126】
次に
図21(a)に示される架橋部Lkについて説明する。変形例11に係る水耕栽培ユニット20において、流路調整部材としては、水受け連結部23や栽培筒21の内部に、ある内壁と対向する内壁とを連結する架橋部Lkであってもよい。
図21(a)に示される架橋部Lkの形状は棒状の部材であるが、これに限られるものではない。水受け連結部23や栽培筒21の内壁同士を連結させることができ、且つ流れる液体の量、速度、方向等を調節可能であれば、例えば、架橋部Lkの断面は、丸形、楕円型、U字型、V字型、W字型等の任意の形状としてよい。
図21(a)に示される架橋部Lkの設けられる位置についても特に制限されるものではなく、液体の勢いがある部分や、流れる方向が変化する位置等、任意の箇所に設けることが可能である。
【0127】
次に
図21(b)に示される穴あき板Dkについて説明する。変形例11に係る水耕栽培ユニット20において、流路調整部材としては、水受け連結部23や栽培筒21の内部に、ある内壁と対向する内壁とを連結する穴あき板Dkであってもよい。
穴あき板Dkの設けられる位置や、穴あき板Dkの具体的な形状としては、特に
図21(b)のように制限されるものではない。例えば、
図21(b)の穴あき板Dkとしては、水受け連結部23や栽培筒21の内壁に垂直に、3箇所の孔を有する円板が設けられている。しかしながら、孔の個数は3箇所でなくともよいし、穴あき板Dkが栽培筒21の内壁に対して垂直に設けられていなくともよい。
【0128】
次に
図21(c)に示される溝部Mzについて説明する。変形例11に係る水耕栽培ユニット20において、流路調整部材としては、水受け連結部23や栽培筒21の内部に、流れる液体の量、速度、方向等を調節可能な溝部Mz(筒内の周方向に沿って並ぶ凹凸)であってもよい。なお溝部Mzとしては、上述した変形例10に示した形状(すなわち凹凸の数に制限はなく凸1つでもよく凹凸が周方向に2つ以上並んでいてもよい)であってもよい。また、水受け連結部23や栽培筒21の長軸方向と平行に溝部Mzが設けられていなくともよく、内壁にらせんを描くように溝部Mzが形成されていてもよい。
また、溝部Mzは
図19(a)のように内壁の厚みに対して凸であってもよいし、
図19(d)のように内壁の厚みThに対して凹であってもよい。
【0129】
また、上記した実施形態及び変形例1~11の各特徴を適宜組み合わせて新たな水耕栽培ユニットや水耕栽培システムを構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明の水耕栽培ユニットおよび水耕栽培システムは、植物の種類を問わず植物栽培分野で広く適用が可能である。
【符号の説明】
【0131】
P 植物
S 培地
100 水耕栽培システム
10 フレーム
20 水耕栽培ユニット
30 吊り下げ支持機構
40 液体供給系
50 液体受けベッド
60 光源