(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-23
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】容量制御弁
(51)【国際特許分類】
F04B 27/18 20060101AFI20220111BHJP
F04B 49/02 20060101ALI20220111BHJP
F16K 31/06 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
F04B27/18 A
F04B49/02 331B
F04B27/18 B
F16K31/06 305L
(21)【出願番号】P 2019527709
(86)(22)【出願日】2018-07-03
(86)【国際出願番号】 JP2018025121
(87)【国際公開番号】W WO2019009264
(87)【国際公開日】2019-01-10
【審査請求日】2021-01-19
(31)【優先権主張番号】P 2017132151
(32)【優先日】2017-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100201259
【氏名又は名称】天坂 康種
(74)【代理人】
【識別番号】100116506
【氏名又は名称】櫻井 義宏
(72)【発明者】
【氏名】栗原 大千
(72)【発明者】
【氏名】福留 康平
(72)【発明者】
【氏名】白藤 啓吾
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/119380(WO,A1)
【文献】特開2005-307817(JP,A)
【文献】特開2004-353451(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 27/18
F04B 49/02
F16K 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブ部の開弁度に応じて容量可変型圧縮機の流量又は圧力を制御する容量制御弁において、
第1圧力の流体を通す第1連通路と連通する第1弁室、第3圧力の流体を通す第3連通路に連通する第3弁室、並びに、前記第1連通路と前記第3連通路との間に配設され第2圧力の流体を通す第2連通路に連通するとともに前記第3弁室と連通する弁孔及び該弁孔に配設される第2弁座を有する第2弁室を有するバルブ本体と、
前記第3弁室内に配置され
周囲の圧力によって伸縮する感圧体と、
前記第1弁室と前記第3弁室とを連通する中間連通路、前記第1弁室に配設される第1弁部、前記第2弁座と離接し前記弁孔を開閉する第2弁部、及び、前記第3弁室に配設される弁体端部を有する弁体と、
前記第3弁室内に配設され前記第3弁室と前記中間連通路とに連通する第3連通孔と、
電磁コイル部、第1プランジャ、固定子鉄心、及び
、前記弁体と前記第1プランジャを接続するロッドを有するソレノイドと
、
前記固定子鉄心と前記弁体との間に
配設される第2プランジャ、とを備え
、
前記第2プランジャは、前記第1弁部と並列して前記第1弁室と前記中間連通路とを連通する補助連通孔を備える容量制御弁。
【請求項2】
前記第2プランジャは、前記第1弁部と離接して前記第1弁室と前記中間連通路との連通を開閉する補助弁座を備える請求項1に記載の容量制御弁。
【請求項3】
前記補助連通孔は前記第3連通孔より小さい開口面積を備え、前記第3連通孔は前記第1弁部と前記第2プランジャ
との間の開口面積より小さい開口面積を備える請求項
2に記載の容量制御弁。
【請求項4】
前記補助連通孔は、前記中間連通路の流路断面積より小さい開口面積を備える請求項
2又は
3に記載の容量制御弁。
【請求項5】
前記第2プランジャは前記ロッドに対し相対移動可能となる嵌合隙間を有する請求項1ないし
4のいずれかに記載の容量制御弁。
【請求項6】
前記弁体の前記弁体端部は、前記感圧体と離接して前記中間連通路と前記第3弁室との連通を開閉する第3弁部をさらに備える請求項1ないし
5のいずれかに記載の容量制御弁。
【請求項7】
前記第1圧力は前記容量可変型圧縮機の
吸入圧力、前記第2圧力は前記容量可変型圧縮機の吐出圧力、前記第3圧力は前記容量可変型圧縮機のクランク室の圧力である請求項1ないし
6のいずれかに記載の容量制御弁。
【請求項8】
前記第1圧力は前記容量可変型圧縮機のクランク室の圧力、前記第2圧力は前記容量可変型圧縮機の吐出圧力、前記第3圧力は前記容量可変型圧縮機の
吸入圧力である請求項1ないし
6のいずれかに記載の容量制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容量可変型圧縮機の流量又は圧力を制御する容量制御弁に関し、特に、自動車等の空調システムに用いられる容量可変型圧縮機等の吐出量を圧力負荷に応じて制御する容量制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の空調システムに用いられる斜板式容量可変型圧縮機は、エンジンの回転力により回転駆動される回転軸、回転軸に対して傾斜角度を可変に連結された斜板、斜板に連結された圧縮用のピストン等を備え、斜板の傾斜角度を変化させることにより、ピストンのストロークを変化させて冷媒の吐出量を制御するものである。
【0003】
この斜板の傾斜角度は、冷媒を吸入する吸入室の吸入圧力、ピストンにより加圧した冷媒を吐出する吐出室の吐出圧力、斜板を収容した制御室(クランク室)の制御室圧力を利用しつつ、電磁力により開閉駆動される容量制御弁を用いて、制御室内の圧力を適宜制御し、ピストンの両面に作用する圧力のバランス状態を調整することで連続的に変化させ得るようになっている。
【0004】
このような容量制御弁160としては、
図11に示すように、吐出室と第2連通路173を介して連通する第2弁室182、吸入室と第1連通路171を介して連通する第1弁室183、制御室と第3連通路174を介して連通する第3弁室184を有するバルブ部170と、第3弁室内に配置されて周囲の圧力によって伸縮するとともに伸縮方向の自由端に設けられた弁座体180を有する感圧体178と、第2弁室182と第3弁室184を連通する弁孔177を開閉する第2弁部176、第1連通路171と流通溝172を開閉する第1弁部175、及び第3弁室184にて弁座体180との係合及び離脱により第3弁室184と流通溝172を開閉する第3弁部179を有する弁体181と、弁体181に電磁駆動力を及ぼすソレノイド部190等を備えている。
【0005】
そして、この容量制御弁160では、容量可変型圧縮機にクラッチ機構を設けなくても、制御室圧力を変更する必要が生じた場合には、吐出室と制御室とを連通させて制御室内の圧力(制御室圧力)Pc、吸入室の圧力Ps(吸入圧力)を制御できるようにしたものである(以下、「従来技術」という。例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術において、斜板式容量可変型圧縮機を停止して、長時間放置した後に起動させようとした場合、制御室(クランク室)には液冷媒(放置中に冷却されて冷媒が液化したもの)が溜まるため、この液冷媒を排出しない限り冷媒を圧縮して設定とおりの吐出量を確保することができない。このため、起動直後から所望の容量制御を行うには、制御室(クランク室)の液冷媒をできるだけ素早く排出させる必要がある。
【0008】
そこで、
図12、
図13に示すように、従来の容量制御弁160においては起動時に制御室(クランク室)の液冷媒をできるだけ素早く排出させるために液冷媒排出機能を備えている。すなわち、容量可変型圧縮機を停止して、長時間放置した後に起動させようとした場合に、制御室(クランク室)に溜まった高圧の液冷媒が、第3連通路174から第3弁室184へ流入する。すると、感圧体(ベローズ)178は収縮して第3弁部179と弁座体180との間が開弁して、第3弁室184から補助連通路185、中間連通路186及び流通溝172を通じて、液冷媒を制御室(クランク室)から吸入室を介して吐出室に排出して急速に気化させ、短時間で冷房運転状態とすることができるようになっている。
【0009】
つぎに、制御室(クランク室)の液冷媒の排出を完了すると制御室圧力Pc及び吸入圧力Psは低下して、第3弁部179と弁座体180は閉弁状態となる。同時に、ソレノイド部Sによって第2弁部176は全閉状態から制御状態となり、吐出圧力Pdの流体が第2弁室182から第3弁室184へ供給されることで、吸入圧力Psと制御室圧力Pcとの差圧が変化して、斜板の傾斜角度が変化してピストンのストローク(吐出容量)が制御される。
【0010】
しかしながら、上記の従来技術では、制御室(クランク室)の液冷媒の排出が完了し制御運転状態に移行し、第3弁部179と弁座体180の弁座面との間は閉弁状態となっても、吸入圧力Psを制御するため、制御室に通じる第3弁室184と吸入室に通じる第1弁室183とは補助連通路185及び中間連通路186を介して常時連通している。このため、制御室の圧力を制御するために吐出室から制御室へ供給された冷媒は、制御室から中間連通路を通り吸入室へ流れてしまい、容量可変型圧縮機の運転効率の悪化を招くという問題があった。
【0011】
本発明は、上記従来技術の有する問題点を解決するためになされたものであって、バルブ部の開弁度に応じて容量可変型圧縮機の流量又は圧力を制御する容量制御弁において、容量可変型圧縮機の運転効率を向上できる容量制御弁を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の容量制御弁は
バルブ部の開弁度に応じて容量可変型圧縮機の流量又は圧力を制御する容量制御弁において、
第1圧力の流体を通す第1連通路と連通する第1弁室、第3圧力の流体を通す第3連通路に連通する第3弁室、並びに、前記第1連通路と前記第3連通路との間に配設され第2圧力の流体を通す第2連通路に連通するとともに前記第3弁室と連通する弁孔及び該弁孔に配設される第2弁座を有する第2弁室を有するバルブ本体と、
前記第3弁室内に配置され周囲の圧力によって伸縮する感圧体と、
前記第1弁室と前記第3弁室とを連通する中間連通路、前記第1弁室に配設される第1弁部、前記第2弁座と離接し前記弁孔を開閉する第2弁部、及び、前記第3弁室に配設される弁体端部を有する弁体と、
前記第3弁室内に配設され前記第3弁室と前記中間連通路とに連通する第3連通孔と、
電磁コイル部、第1プランジャ、固定子鉄心、及び、前記弁体と前記第1プランジャを接続するロッドを有するソレノイドと、
前記固定子鉄心と前記弁体との間に配設される第2プランジャ、とを備え、
前記第2プランジャは、前記第1弁部と並列して前記第1弁室と前記中間連通路とを連通する補助連通孔を備える。
この構成により、固定子鉄心と弁体との間に配設される第2プランジャの補助連通孔によって、第1弁室と第3弁室とを連通する中間連通路の流れを規制するので、容量可変型圧縮機の運転効率を向上することができる。
【0013】
本発明の容量制御弁は、
前記第2プランジャは、前記第1弁部と離接して前記第1弁室と前記中間連通路との連通を開閉する補助弁座を備える。
この構成により、第1弁部と第2プランジャの補助弁座との離接によって、第3弁室から中間連通路を介して第1弁室に至る流れを調整できるので、容量可変型圧縮機の運転効率を向上することができる。
【0014】
本発明の容量制御弁は、
前記補助連通孔は前記第3連通孔より小さい開口面積を備え、前記第3連通孔は前記第1弁部と前記第2プランジャとの間の開口面積より小さい開口面積を備える。
この構成により、第1弁部が閉状態において最も小さい開口面積を有する補助連通孔によって、第3弁室から中間連通路を介して第1弁室へ流れる流体量を規制できる。また、第1弁部を開状態においては補助連通孔のボトルネックが解消して第3弁室から第1弁部への多くの流量を流すことができるとともに、第1弁部が全開となっても第3連通孔がボトルネックとなり流量を制限するので、不必要に流体が流れることがない。
【0015】
本発明の容量制御弁は、
前記補助連通孔は、前記中間連通路の流路断面積より小さい開口面積を備える。
この構成により、補助連通孔がボトルネックとなるので、第3弁室から中間連通路を介して第1弁室へ流れる流量を規制でき、第3弁室から第1弁室への流量を減少させて容量可変型圧縮機の運転効率を向上することができる。
【0016】
本発明の容量制御弁は、
前記第2プランジャは前記ロッドに対し相対移動可能となる嵌合隙間を有する。
この構成により、第2プランジャはロッドの移動と関係なく、第1弁室と第3弁室とを連通する中間連通路を絞り、第3弁室から第1弁室への流量を減少させて容量可変型圧縮機の運転効率を向上することができる。
【0017】
前記弁体の弁体端部は、前記感圧体と離接して前記中間連通路と前記第3弁室との連通を開閉する第3弁部をさらに備える。
この構成により、中間連通路と第3弁室を開閉する第3弁部によって、起動時に液冷媒を短時間で排出することができる。
【0018】
本発明の容量制御弁は、
前記第1圧力は前記容量可変型圧縮機の吸入圧力、前記第2圧力は前記容量可変型圧縮機の吐出圧力、前記第3圧力は前記容量可変型圧縮機のクランク室の圧力である。
前記第1圧力は前記容量可変型圧縮機のクランク室の圧力、前記第2圧力は前記容量可変型圧縮機の吐出圧力、前記第3圧力は前記容量可変型圧縮機の吸入圧力である。
この構成により、様々な容量可変型圧縮機に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施例1に係る容量制御弁を示す正面断面図である。
【
図2】
図1のバルブ本体、弁体及びソレノイドの一部の拡大図である。
【
図3】本発明の実施例1に係る容量制御弁を示す正面断面図で、低電流制御時の状態を示す図である。
【
図4】本発明の実施例1に係る容量制御弁を示す正面断面図で、高電流制御時の状態を示す図である。
【
図5】本発明の実施例1に係る容量制御弁を示す正面断面図で、液冷媒排出時の状態を示す図である。
【
図6】実施例1に係る容量制御弁のPc-Ps流路、Pd-Pc流路の開口面積と弁体のソレノイド電流との関係を説明する説明図である。
【
図7】本発明の実施例2に係る容量制御弁で、低電流制御の制御時の容量制御弁の状態を示す図である。
【
図8】
図7のバルブ本体、弁体及びソレノイドの一部の拡大図である。
【
図9】本発明の実施例2に係る容量制御弁を示す正面断面図で、高電流制御時の状態を示す図である。
【
図10】実施例2に係る容量制御弁のPc-Ps流路、Pd-Pc流路の開口面積とソレノイド電流との関係を説明する説明図である。
【
図11】従来の容量制御弁で、低電流制御の制御時の容量制御弁の状態を示す図である。
【
図12】従来の容量制御弁で、液冷媒排出時の容量制御弁の状態を示す図である。
【
図13】従来の容量制御弁のPc-Ps流路、Pd-Pc流路の開口面積とソレノイド電流との関係を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に図面を参照して、本発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的な位置などは、特に明示的な記載がない限り、それらのみに限定する趣旨のものではない。
【実施例1】
【0021】
図1ないし
図6を参照して、本発明の実施例1に係る容量制御弁について説明する。
図1において、1は容量制御弁である。容量制御弁1は、バルブ本体10、弁体20、感圧体24及びソレノイド30から主に構成される。以下、
図1及び
図2を参照して容量制御弁1を構成するそれぞれの構成について説明する。
【0022】
バルブ本体10は、真鍮、鉄、アルミニウム、ステンレス等の金属または合成樹脂材等で構成される。バルブ本体10は軸方向へ貫通する貫通孔を有する中空円筒状の部材で、貫通孔の区画には第1弁室14、第1弁室14に隣接する第2弁室15、第2弁室15に隣接する第3弁室16が連続して配設される。
【0023】
第2弁室15には第2連通路12が連設される。この第2連通路12は、容量可変型圧縮機の吐出室内(図示省略)に連通して吐出圧力Pdの流体が容量制御弁1の開閉によって第2弁室15から第3弁室16に流入できるように構成される。
【0024】
第3弁室16には第3連通路13が連設される。第3連通路13は、容量可変型圧縮機の制御室(図示省略)と連通しており、容量制御弁1の開閉によって第2弁室15から第3弁室16へ流入した吐出圧力Pdの流体を容量可変型圧縮機の制御室(クランク室)へ流出させたり、第3弁室16へ流入した制御室圧力Pcの流体を後述する中間連通路26を介して第1弁室14を経て容量可変型圧縮機の吸入室へ流出させる。
【0025】
さらに、第1弁室14には第1連通路11が連設される。この第1連通路11は、容量可変型圧縮機の制御室(クランク室)から第3弁室16に流入した制御室圧力Pcの流体を後述する中間連通路26を介して第1弁室14を経て吸入室へ流出させる。
【0026】
第2弁室15と第3弁室16との間にはこれらの室の径より小径の弁孔17が連設され、第2弁室15側の弁孔17の周りには第2弁座15bが形成される。また、第1弁室14と第2弁室15との間にはこれらの室の径より小径の孔部18が連設される。
【0027】
なお、第1連通路11、第2連通路12、第3連通路13は、バルブ本体10の周面に各々、例えば、2等配から6等配に貫通している。さらに、バルブ本体10の外周面にはOリング用の取付溝が軸方向に離間して3カ所に設けられる。そして、この各取付溝には、バルブ本体10と、バルブ本体10を嵌合するケーシングの装着孔(図示省略)との間をシールするOリング41、42、43が取り付けられ、第1連通路11、第2連通路12、第3連通路13の各流路は独立した流路として構成される。
【0028】
第3弁室16内には感圧体24が配設される。この感圧体24は、金属製のベローズ24aの一端部が仕切調整部3に密封状に結合される。このベローズ24aは、リン青銅、ステンレス等により製作するが、そのばね定数は所定の値に設計されている。感圧体24の内部空間は真空又は空気が内在している。そして、この感圧体24のベローズ24aの有効受圧面積に対し、感圧体24の周囲の圧力が作用して感圧体24を伸縮作動させるように構成されている。第3弁室16内の吸入圧力に応動して伸縮移動する感圧体24の自由端部側には弁座24cが配設される。
【0029】
そして、感圧体24の仕切調整部3は、バルブ本体10の第3弁室16を塞ぐように密封嵌着、固定される。なお、仕切調整部3はねじ込みにして止めねじ(図示省略)により固定すれば、ベローズ24a内に並列に配置した圧縮ばね又はベローズ24aのばね力を軸方向へ移動調整できるようになる。
【0030】
つぎに弁体20について説明する。弁体20は中空円筒状の部材からなる弁体第1部材21と弁体第2部材23(本発明に係る弁体端部)とからなる。最初に弁体第1部材21について説明する。弁体第1部材21は第1弁室14に配置される第1軸部21gと、第1軸部21gに連設され第1軸部21gより大径に形成された第2軸部21cとから主に形成される。第2軸部21cの軸方向の中間位置の外周部にはラビリンス21fが形成される。第2軸部21cはラビリンス21fを挟んで第1弁室14側と第2弁室15側に配置され、ラビリンス21fは第1弁室14側と第2弁室15側との間に形成された孔部18と摺動して第1弁室14と第2弁室15とをシールする。これにより、第1弁室14と第2弁室15とは独立した弁室として構成される。
【0031】
第2弁室15に配置される第2軸部21cの端部には第2弁部21bが形成され、第2弁部21bは第2弁座15bと離接して第2弁室15と第3弁室16とを連通する弁孔17を開閉する。また、第1弁室14に配置される第2軸部21cの端部には第1弁部21aが形成され、第1弁部21aは後述する第2プランジャと離接して、中間連通路26と第1弁室14との連通を開閉する。第1軸部21gの端部21hは後述するソレノイドロッド36と一体に結合され弁体20とソレノイドロッド36は一体に駆動する。
【0032】
さらに、弁体第1部材21は、弁体第1部材21を軸方向に貫通する第1中間連通路26aと、第1軸部21gに形成され第1中間連通路26aと第1弁室14とを連通する第1連通孔26bと、を備える。
【0033】
つぎに、弁体20を構成する弁体第2部材23について説明する。弁体第2部材23は第3弁室16に配置される第3弁部23cと、第3弁部23cより小径に形成される筒部23dとから主に構成され、筒部23dは弁体第1部材21の第2弁部21bに形成された開放端部と嵌合する。また、弁体第2部材23は、弁体第2部材23の中心部を軸方向に貫通する第2中間連通路23aと、弁体第2部材23の筒部23dを径方向に貫通する第3連通孔23bと、を備え、第3連通孔23bによって第3弁室16は第2中間連通路23aに連通する。また、第3連通孔23bに並列して、第3弁部23cは感圧体24の弁座24cと接触、離間して、第3弁室16と第2中間連通路23aとの連通を開閉する。以下、第2中間連通路23a、第1中間連通路26a及び第1連通孔26bから構成される流路を中間連通路26と記す。ここで、すなわち、第3弁室16から中間連通路26に至る経路は並列した2つの経路が存在する。すなわち、第3弁室16から第3連通孔23bを通り中間連通路26に至る第1経路と、第3弁室16から第3弁部23cを通り中間連通路26に至る第2経路がある。そして、第1経路の最小流路断面積は第3連通孔23bの開口面積S2であり、第2経路の最小流路断面積は第3弁部23cの開口面積、すなわち第3弁部23cと感圧体24の弁座24cとの間の開口面積S5であり、開口面積S5は開口面積S2より十分大きく設定されている。
【0034】
つぎに、ソレノイド30について説明する。ソレノイド30は、ソレノイドロッド36(本発明に係るロッド)、プランジャケース38、プレート34、電磁コイル31、電磁コイル31の内周部に配置されるセンターポスト32aとベース部32bとからなる固定子鉄心32、第1プランジャ35、及び第1プランジャ35とセンターポスト32aとの間に配設される付勢手段39aがソレノイドケース33に収容され構成される。弁体20と第1プランジャ35は、固定子鉄心32の貫通孔32d内に移動自在に嵌合されるソレノイドロッド36によって結合され、弁体20と第1プランジャ35は一体に駆動する。
【0035】
固定子鉄心32のセンターポスト32aと第1プランジャ35との間には、第1プランジャ35を固定子鉄心32から引き離すように付勢する付勢手段39aが配置されている。つまり、付勢手段39aは第2弁部21bを閉状態から開状態になるように付勢する。
【0036】
また、ソレノイド30の固定子鉄心32と弁体20との間には第2プランジャ37が配設されている。第1プランジャ35と第2プランジャ37は固定子鉄心32を挟んで配設される。第2プランジャ37は、ソレノイドロッド36と隙間を有して嵌合される孔部37fを有する基部37a、基部37aから軸方向に延設される筒部37b、筒部37bに形成された補助連通孔37c、及び筒部37bの端部に配設される補助弁座37dから主に構成される。第2プランジャ37の補助弁座37dは、第1弁部21aと接触、離間して中間連通路26と第1弁室14との連通を開閉する。さらに、第2プランジャ37は、第1弁部に並列して補助連通孔37cを有するので、第1弁部21aが閉状態であっても、中間連通路26と第1弁室14とは、第2プランジャ37の補助連通孔37cのみによって連通することができる。また、第2プランジャ37の補助連通孔37cの開口面積S1は、中間連通路26の開口面積よりも小さく設定されている。これにより、第1弁部21aが閉状態では、第3弁室16から中間連通路26を通り第1弁室14へ至る流路における最小面積となる補助連通孔37cによって、流路を一定に絞ることができ、並列する第1弁部を開状態にすれば補助連通孔による規制を解除して流路を大きく変化させることができる。なお、基部37aの孔部37eは、ソレノイドロッド36と隙間を有して嵌合され、第2プランジャ37はソレノイドロッド36に対して移動自在に取り付けられている。
【0037】
固定子鉄心32と第2プランジャ37との間には、第2プランジャ37を固定子鉄心32から離間するように付勢する付勢手段39bが配置されている。つまり、付勢手段39bは補助弁座37dを第1弁部21aに接触させて、開状態から閉状態になるように付勢する。
【0038】
プランジャケース38は一方が開放された有底状の中空円筒部材である。プランジャケース38の開放端は固定子鉄心32のベース部32bに密封状に固定され、プランジャケース38の底部と固定子鉄心32のセンターポスト32aとの間には第1プランジャ35が軸方向に移動自在に配置される。これにより、電磁コイル31はプランジャケース38、固定子鉄心32のベース部32b、及びソレノイドケース33によって密封され、冷媒と接触することがないので絶縁抵抗の低下を防止することができる。
【0039】
以上説明した構成を有する容量制御弁1の動作について説明する。
図1から
図6を参照しながら説明する。なお、第3弁室16から中間連通路26を通り第1弁室14へ至る流路を、以下「Pc-Ps流路」と記す。また、第2弁室15から弁孔17を通り第3弁室16へ至る流路を、以下「Pd-Pc流路」と記す。
図6は、ソレノイド電流と各流路の流路断面積の最小値の関係を示す。
図6の一点鎖線はソレノイド電流とPc-Ps流路における最小開口面積の関係を示し、
図6の実線はソレノイド電流とPd-Pc流路における最小開口面積の関係を示す。ここで、第2プランジャ37の補助連通孔37cの開口面積S1、弁体第2部材23の第3連通孔23bの開口面積S2、第1弁部21aと第2プランジャ37の補助弁座37dとの間の開口面積S3は、S3>S2>S1となるように形成される。また、中間連通路26を構成する第2中間連通路23a及び第1中間連通路26aの流路断面積並びに第1連通孔26bの開口面積は、S1、S2、S3より大きく形成されている。なお、第1弁部21aと第2プランジャ37の補助弁座37dとの間の開口面積S3は、略して、第1弁部21aの開口面積S3、また、第2弁部21bと第2弁座15bとの間の開口面積S4は、略して第2弁部21bの開口面積S4、さらに、第3弁部23cと感圧体24の弁座24cとの間の開口面積S5は、略して第3弁部23cの開口面積S5と記す場合がある。
【0040】
図1に示すように、ソレノイド30の電磁コイル31の無通電状態、すなわち
図6のソレノイド電流I=0の状態では、付勢手段39aの反発により固定子鉄心32の吸引面32cと第1プランジャ35の作動面35cの間は最大空隙となって第2弁部21bは開弁する。したがって、ソレノイド電流I=0の状態ではPd-Pc流路の第2弁部21bの開口面積S4は最大となる。一方、第2プランジャ37は、付勢手段39bの反発により補助弁座37dは第1弁部21aに接触して、第1弁部21aは閉状態となり中間連通路26と第1弁室14とは、第2プランジャ37の補助連通孔37cのみによって連通する。しかも、補助連通孔37cの開口面積S1は中間連通路26の開口面積より小さく形成されているので、ソレノイド電流I=0の状態では、補助連通孔37cの開口面積S1がPc-Ps流路における最小開口面積となっている。
【0041】
つぎに、ソレノイド30に通電が開始され、ソレノイド電流が第1電流値I1以下の状態、すなわち制御状態について
図1~
図3及び
図6を参照して説明する。制御状態は、
吸入室の圧力を設定値Psetになるように制御する状態である。ソレノイドに通電が開始されると、第1プランジャ35の作動面35cは固定子鉄心32の吸引面32cに徐々に吸引され、第2弁部21bの開口面積はソレノイド電流に反比例して徐々に絞られる。したがって、
図6に示すように、ソレノイド電流が第1電流値I1以下の状態(0<I<I1)において、第2弁部21bの開口面積S4は徐々に狭くなるので、Pd-Pc流路の面積も電流の増加に応じて徐々に小さくなる。
【0042】
一方、ソレノイド電流が第1電流値I1以下の状態(0<I<I1)において、第2プランジャ37の付勢手段39bの付勢力は、第2プランジャ37が固定子鉄心32に吸引される力よりも常に大きくなるように設定されているため、第2プランジャ37の補助弁座37dは、付勢手段39bの付勢力によって第1弁部21aと接触した状態が維持され、第1弁部21aは閉状態となり中間連通路26と第1弁室14とは、第2プランジャ37の補助連通孔37cのみによって連通する。ソレノイド電流Iが0<I<I1において、補助連通孔37cの開口面積S1がPc-Ps流路における最小開口面積となっている。
これにより、制御状態(0<I<I1)において、中間連通路26と第1弁室14との間は、最小開口面積S1となる第2プランジャ37の補助連通孔37cによって絞られるので、第3弁室16から中間連通路26を通り第1弁室14へ流れる冷媒量を低減でき、延いては制御室から吸入室へ流れる冷媒を制限して効率の低下を防止することができる。
【0043】
また、制御状態において、容量可変型圧縮機の制御応答性
を高めるために、
吸入室に制御室圧力Pcの流体を多く供給する場合を
図4及び
図6を参照して説明する。ソレノイド通電を増やして第1電流値I1以上、第2電流値I2以下の状態(I1<I<I2)となる制御を行う。ソレノイド通電を第1電流値I1以上になると、第1プランジャ35は固定子鉄心32に吸引される状態が維持され、第2弁部21bの開口面積は非常に小さく絞られ、Pd-Pc流路の開口面積も小さく絞られる。
【0044】
一方、ソレノイド通電がI1<I<I2(第2電流)の範囲では、第2プランジャ37が固定子鉄心32に吸引される力は付勢手段39bの付勢力より大きく設定されているので、第2プランジャ37は固定子鉄心32に吸引されて補助弁座37dは第1弁部21aから離脱して第1弁部21aは開弁する。ここで、第2プランジャ37の補助連通孔37cの開口面積S1、弁体第2部材23の第3連通孔23bの開口面積S2、第1弁部21aと第2プランジャ37の補助弁座37dとの間の開口面積S3は、S3>S2>S1となるように形成されている。しかも、第2プランジャ37の補助連通孔37c(開口面積S1)と第1弁部21a(開口面積S3)は並列して設けられているので、第1弁部21aが開状態では、Pc-Ps流路の最小開口面積は補助連通孔37cの開口面積S1から第3連通孔23bの開口面積S2に移行する。これにより、
図6に示すようにPc-Ps流路の開口面積は拡大し、制御室から
吸入室へ多くの冷媒を供給できるようになり、
吸入室の圧力Psを設定値Psetに迅速に収束させることができ、延いては容量可変型圧縮機の制御応答性
を高めることができる。
【0045】
さらに、容量可変型圧縮機を停止して
長時間放置した後に制御室(クランク室)に溜まった高圧の液冷媒を排出する状態を
図5及び
図6を参照して説明する。このような液冷媒排出時には、ソレノイド電流を第2電流値I2に設定して第2プランジャ37を固定子鉄心32に最大の磁気吸引力で吸引させて第1弁部21aを開く。さらに、第3弁室16には高圧の液冷媒が流入するので感圧体24は収縮して、第3弁部23cは感圧体24の弁座24cから離間して開弁する。ここで、第3弁部23cの開口面積S5は、第3弁室16と中間連通路26を連通する第3連通孔23bの開口面積S2よりはるかに大きく設定されている。これにより、第3弁室から第1弁室に至るボトルネックとなる最小開口面積S2が解消されるので、
図6に示すようにPc-Ps流路の開口面積は急拡大し、冷媒は制御室(クランク室)から
吸入室へ液冷媒
は急速に排出される。
【0046】
本発明の実施例1に係る容量制御弁1の構成は上記のとおりであり、以下のような優れた効果を奏する。
【0047】
本発明に係る容量可変型圧縮機の容量制御弁1は、ソレノイド電流が0<I<I1(第1電流)の通常制御状態においては、第2プランジャ37の磁気吸引力よりも付勢手段39bの付勢力が大きく設定される。したがって、補助弁座37dは第1弁部21aに接触して第1弁部21aは閉弁するので、Pc-Ps流路面積は、ボトルネックとなる第2プランジャ37の補助連通孔37cによって絞られ、第3弁室16から第1弁室14に流れる冷媒量を低減できる。これにより、制御室から吸入室へ流れる冷媒を制限して効率の低下を防止することができる。
【0048】
第3弁室16から第1弁室14への冷媒供給量を多くしたい場合には、ソレノイド電流をI1<I<I2(第2電流)として、付勢手段39bの付勢力よりも第2プランジャ37の磁気吸引力を大きくする。これにより、第2プランジャ37の補助弁座37dは第1弁部21aから離脱して第1弁部21aは開弁するので、
図6に示すようにPc-Ps流路の開口面積は拡大し、制御室から
吸入室へ多くの冷媒を供給できるようになる。
【0049】
さらに、容量可変型圧縮機
を停止して長時間放置した後に制御室(クランク室)に溜まった液冷媒を排出する時には、ソレノイド電流を第2電流値I2に設定して最大磁気吸引力によって第1弁部21aの開口面積を最大にすると同時に、高圧の液冷媒により感圧体24を収縮させて第3弁部23cを開弁させることで、
図6に示すようにPc-Ps流路の開口面積を急拡大させ、冷媒を制御室(クランク室)から
吸入室へ急速に排出することができる。
【0050】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0051】
上記実施例において、第2プランジャ37に中間連通路26の面積より狭い補助連通孔37cを設けることによって、中間連通路26から第1弁室14への流れを絞ったが、中間連通路26から第1弁室14への流れの絞り方はこれに限らない。たとえば、第2プランジャ37に補助連通孔37cを設けずに、ソレノイド30の電流を制御して第1弁部21aと第2プランジャ37の補助弁座37dとの間の開口面積S3を制御することにより、中間連通路26から第1弁室14への流れを絞ってもよい。また、第2プランジャ37の孔部37fとソレノイドロッド36との嵌合隙間を調整して、この嵌合隙間を利用して中間連通路26から第1弁室14への流れを絞ってもよい。
【0052】
また、実施例1において、第1弁室14の第1圧力は容量可変型圧縮機の吸入圧力Ps、第2弁室15の第2圧力は容量可変型圧縮機の吐出圧力Pd、第3弁室16の第3圧力は容量可変型圧縮機のクランク室の圧力Pcとしたが、これに限らず、第1弁室14の第1圧力は容量可変型圧縮機のクランク室の圧力Pc、第2弁室15の第2圧力は容量可変型圧縮機の吐出圧力Pd、第3弁室16の第3圧力は容量可変型圧縮機の吸入圧力Psとして、様々な容量可変型圧縮機に対応させることができる。
【0053】
上記実施例において、弁体20は中空円筒状の部材からなる弁体第1部材21と弁体第2部材23とを別個に製作して一体に組み立てていたが、弁体第1部材21と弁体第2部材23とを一体に製作してもよい。
【0054】
図6において、第2弁部の最大開口面積S4は、第1弁部21aの最大開口面積S3より大きく設定されているが、
図6は一例であり、第1弁部21aの最大開口面積S3を第2弁部の最大開口面積S4より大きくしてもよい。また、第3連通孔23bは弁体20に設けられていたが、感圧体24の弁座24c側に設けてもよい。
【実施例2】
【0055】
図7ないし
図10を参照して、本発明の実施例2に係る容量制御弁1について説明する。実施例1に係る容量制御弁1の弁体20は、第1弁部、第2弁部及び第3弁部を有し、第3弁部は、第3弁室16に配設される感圧体24と接触、離間して、第3弁室16と中間連通路26との連通を開閉していた。実施例2の容量制御弁50の弁体70は、第1弁部及び第2弁部を有するが、第3弁部はない。第3弁室16に配設される弁体70の端部は、感圧体24と常に接触して閉じた状態となっている点で主に相違するが、その他の基本構成は実施例1と同じであり、同じ部材には同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0056】
弁体70について説明する。弁体70は軸方向に貫通する第1中間連通路76aを有する中空円筒状の部材からなる。弁体70は第1弁室14に配置される第1軸部71gと、第1軸部71gに連接され第1軸部71gより大径に形成された第2軸部71cと、第2軸部71cに連接され第2軸部71cより小径に形成された第3軸部71j(本発明に係る弁体端部)から主に形成される。第2軸部71cの軸方向の中間位置の外周部にはラビリンス71fが形成される。第2軸部71cはラビリンス71fを挟んで第1弁室14側と第2弁室15側に配置され、ラビリンス71fは第1弁室14側と第2弁室15側との間に形成された孔部18と摺動して第1弁室14と第2弁室15とをシールする。これにより、第1弁室14と第2弁室15とは独立した弁室として構成される。
【0057】
第2弁室15に配置される第2軸部71cの端部には第2弁部71bが形成され、第2弁部71bは第2弁座15bと離接して第2弁室15と第3弁室16とを連通する弁孔17を開閉する。また、第1弁室14に配置される第2軸部71cの端部には第1弁部71aが形成され、第1弁部71aは第2プランジャ37の補助弁座37dと離接して第1中間連通路76aと第1弁室14との連通を開閉する。また、弁体70は、第1軸部71gに形成され第1弁室14と第1中間連通路76aを連通する第1連通孔71k、第3軸部71jには第3弁室16と第1中間連通路76aとを連通する第3連通孔71mを備える。第1軸部71gの端部71hは後述するソレノイドロッド36と一体に結合され弁体70とソレノイドロッド36は一体に駆動される。以下、第1中間連通路76a及び第1連通孔71kから構成される流路を中間連通路76と記す。なお、第2プランジャ37の補助連通孔37cの開口面積S1、第3軸部71jの第3連通孔71mの開口面積S2、第1弁部71aと第2プランジャ37の補助弁座37dとの間の開口面積S3は、S3>S2>S1となるように形成される。また、中間連通路76を構成する第1中間連通路76a及び第1連通孔71kは、S1、S2、S3より大きく形成されている。
【0058】
第3弁室16内には感圧体74が配設される。この感圧体74は、金属製のベローズ74aの一端部が仕切調整部3に密封に結合される。このベローズ74aは、リン青銅、ステンレス等により製作するが、そのばね定数は所定の値に設計されている。感圧体74の内部空間は真空又は空気が内在している。そして、この感圧体74のベローズ74aの有効受圧面積に対し、感圧体74の周囲の圧力が作用して感圧体74を伸縮作動させるように構成されている。第3弁室16内の吸入圧力に応動して伸縮移動する感圧体74の端部側には弁体70の第3軸部71jと相対移動可能に嵌合する端部74cが形成され、弁体70の第3軸部71jと感圧体74の端部74cとの隙間からの漏れはほとんど無視できる程度の隙間に形成される。なお、第3弁室16内の吸入圧力によって感圧体74が最大縮んでも、弁体70の第3軸部71jと感圧体74の端部74cとは嵌合状態を維持するように形成されている。
【0059】
ソレノイド30の電磁コイル31に無通電状態、すなわち
図10のソレノイド電流I=0の状態では、付勢手段39aの反発により固定子鉄心32の吸引面32cと第1プランジャ35の作動面35cの間は最大空隙となって第2弁部71bは開弁する。したがって、ソレノイド電流I=0の状態ではPd-Pc流路開口面積S4は最大となる。一方、第2プランジャ37は、付勢手段39bの反発により補助弁座37dは第1弁部71aに接触して、第1弁部71aは閉状態となり、中間連通路76と第1弁室14とは、第2プランジャ37の補助連通孔37cのみによって連通する。しかも、補助連通孔37cの開口面積S1は中間連通路76の開口面積より小さく形成されているので、ソレノイド電流I=0の状態では、補助連通孔37cの開口面積S1がPc-Ps流路における最小開口面積となっている。
【0060】
つぎに、ソレノイド30に通電が開始され、ソレノイド電流が第1電流値I1以下の状態、すなわち制御状態について
図7、
図8及び
図10を参照して説明する。制御状態は、
吸入室の圧力を設定値Psetになるように制御する状態である。ソレノイドに通電が開始されると、第1プランジャ35の作動面35cは固定子鉄心32の吸引面32cに徐々に吸引され、第2弁部71bの開口面積はソレノイド電流に反比例して徐々に絞られる。したがって、
図10に示すように、ソレノイド電流が第1電流値I1以下の状態(0<I<I1)において、第2弁部71bの開口面積は徐々に狭くなるので、Pd-Pc流路の面積も電流の増加に応じて徐々に小さくなる。
【0061】
一方、ソレノイド電流が第1電流値I1以下の状態(0<I<I1)において、第2プランジャ37の付勢手段39bの付勢力は、第2プランジャ37が固定子鉄心32に吸引される力よりも常に大きくなるように設定されているため、第2プランジャ37の補助弁座37dは、付勢手段39bの付勢力によって第1弁部71aと接触し、第1弁部71aは閉状態を維持する。中間連通路76と第1弁室14とは、第2プランジャ37の補助連通孔37cのみによって連通し、しかも補助連通孔37cの開口面積S1は中間連通路76の開口面積より小さく形成されている。したがって、制御状態(0<I<I1)において、Pc-Ps流路面積は、ボトルネックとなる第2プランジャ37の補助連通孔37cによって絞られ、第3弁室16から第1弁室14に流れる冷媒量を低減でき、延いては制御室から吸入室へ流れる冷媒を制限して効率の低下を防止することができる。
【0062】
また、制御状態において、容量可変型圧縮機の制御応答性
を高めるために、
吸入室に制御室圧力Pcの流体を多く供給する場合を
図8~
図10を参照して説明する。この場合ソレノイド通電を増やして第1電流値I1以上、第2電流値I2以下の状態(I1<I<I2)となる制御を行う。ソレノイド通電を第1電流値I1以上になると、第1プランジャ35は固定子鉄心32に吸引される状態が維持され、第2弁部71bの開口面積は非常に小さく絞られ、
図10に示すようにPd-Pc流路の開口面積も小さく絞られる。
【0063】
一方、ソレノイド通電がI1<I<I2(第2電流)の範囲では、第2プランジャ37が固定子鉄心32に吸引される力は付勢手段39bの付勢力より大きく設定されているので、第2プランジャ37は固定子鉄心32に吸引されて補助弁座37dは第1弁部71aから離脱して第1弁部71aは開弁する。第1弁部71aの開口面積S3は第2プランジャ37の補助連通孔37cの開口面積S1より大きく設定されているので、
図10に示すようにPc-Ps流路の開口面積は拡大し、制御室から
吸入室へ多くの冷媒を供給できるようになる。これにより、制御室から
吸入室へ多くの冷媒を供給して、容量可変型圧縮機の制御応答性
を高めることができる。
【0064】
本発明の実施例2に係る容量制御弁50は実施例1の効果に加え、以下のような優れた効果を奏する。
【0065】
実施例2の容量制御弁50の弁体70は、感圧体74と開閉する第3弁部がないため、構造を簡略化でき、製作が容易になるとともに、制御室から吸入室へ流れる冷媒を制限して効率の低下を防止することができ、容量可変型圧縮機の制御応答性を高めることができる。
【0066】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0067】
上記実施例において、第2プランジャ37に中間連通路76の面積より狭い補助連通孔37cを設けることによって、中間連通路76から第1弁室14への流れを絞ったが、中間連通路76から第1弁室14への流れの絞り方はこれに限らない。たとえば、第2プランジャ37に補助連通孔37cを設けずに、ソレノイド30の電流を制御して第1弁部71aと第2プランジャ37の補助弁座37dとの間の開口面積S3を制御することにより、中間連通路76から第1弁室14への流れを絞ってもよい。また、第2プランジャ37に補助連通孔37cを設けずに、第2プランジャ37の孔部37fとソレノイドロッド36との隙間を調整して、この隙間を利用して中間連通路76から第1弁室14への流れを絞ってもよい。
【0068】
また、実施例2において、第1弁室14の第1圧力は容量可変型圧縮機の吸入圧力Ps、第2弁室15の第2圧力は容量可変型圧縮機の吐出圧力Pd、第3弁室16の第3圧力は容量可変型圧縮機のクランク室の圧力Pcとしたが、これに限らず、第1弁室14の第1圧力は容量可変型圧縮機のクランク室の圧力Pc、第2弁室15の第2圧力は容量可変型圧縮機の吐出圧力Pd、第3弁室16の第3圧力は容量可変型圧縮機の吸入圧力Psとして、様々な容量可変型圧縮機に対応させることができる。
【符号の説明】
【0069】
1、50 容量制御弁
3 仕切調整部
10 バルブ本体
11 第1連通路
12 第2連通路
13 第3連通路
14 第1弁室
15 第2弁室
16 第3弁室
20 弁体
21 弁体第1部材
21a 第1弁部
21b 第2弁部
23 弁体第2部材
23a 第2中間連通路
23b 第3連通孔
23c 第3弁部
24 感圧体
24c 弁座
26 中間連通路
26a 第1中間連通路
26b 第1連通孔
30 ソレノイド
31 電磁コイル
32 固定鉄心
33 ソレノイドケース
35 第1プランジャ
36 ソレノイドロッド
37 第2プランジャ
37c 補助連通孔
70 弁体
71 弁体第1部材
71a 第1弁部
71b 第2弁部
74 感圧体
74c 端部
76 中間連通路
Pd 吐出圧力
Ps 吸入圧力
Pc 制御室圧力
S1 第2プランジャ37の補助連通孔37cの開口面積
S2 弁体第2部材23の第3連通孔23bの開口面積
S3 第1弁部21aと第2プランジャ37の補助弁座37dとの間の開口面積
S4 第2弁部21bと第2弁座15bとの間の開口面積
S5 第3弁部23cと感圧体24の弁座24cとの間の開口面積