(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-23
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】3-置換2-ビニルフェニルスルホネート類を製造する方法
(51)【国際特許分類】
C07C 303/28 20060101AFI20220128BHJP
C07C 309/66 20060101ALI20220128BHJP
C07D 319/08 20060101ALI20220128BHJP
C07D 327/10 20060101ALI20220128BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20220128BHJP
【FI】
C07C303/28
C07C309/66
C07D319/08 CSP
C07D327/10
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2019529865
(86)(22)【出願日】2017-11-28
(86)【国際出願番号】 EP2017080624
(87)【国際公開番号】W WO2018104105
(87)【国際公開日】2018-06-14
【審査請求日】2020-11-25
(32)【優先日】2016-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507203353
【氏名又は名称】バイエル・クロップサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【氏名又は名称】今藤 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ガレンカンプ,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】フォード,マルク・ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】ブローム,ディルク
(72)【発明者】
【氏名】エルバー,フロリアン
【審査官】高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/139161(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/189114(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/181189(WO,A1)
【文献】特表2007-504191(JP,A)
【文献】特開2002-179622(JP,A)
【文献】特表2019-524799(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 303/28
C07C 309/66
C07D 319/08
C07D 327/10
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
〔式中、
R
1は、C
1-C
6-アルキル、フェニル、4-メチルフェニル又はベンジルであり;
及び、
R
2は、ハロゲン又はメチルである〕
で表されるビニルフェニルスルホネートを調製する方法であって、
(a) 式(II)
【化2】
で表される化合物を、塩基の存在下で、活性化剤と反応させて、式(III)
【化3】
で表される化合物を生成させ、ここで、活性化剤として、塩化チオニル、ホスゲン、ジホ
スゲン、トリホスゲン、チオホスゲン及びクロロギ酸エステル類からなる群から選択され
る1種類以上の化合物を使用し;及び、
(b) 式(III)で表される化合物を、塩基の存在下で、式(IV)
【化4】
〔式中、R
3は、F、Cl、Br又はOSO
2R
1であり、及び、R
1は、式(I)にお
いて定義されているとおりである〕
で表される化合物と反応させて、式(I)で表されるビニルフェニルスルホネートを生成
させる;
ことを特徴とする前記方法。
【請求項2】
段階(a)及び段階(b)をワンポットプロセスで実施することを特徴とする、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
段階(a)及び段階(b)において、トリアルキルアミン類、ピリジル塩基、アルコキ
シド塩基及びアミジン塩基からなる群から選択される1種類以上の塩基を使用することを
特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
使用する塩基がトリブチルアミンであることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
段階(a)及び段階(b)において、石油エーテル、n-ヘキサン、n-ヘプタン、シ
クロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キ
シレン、デカリン、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、クロ
ロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジエチルエーテル
、ジイソプロピルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、メチルtert-アミル
エーテル、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、
1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、ジグリム、アニソール、アセト
ニトリル、プロピオニトリル、n-ブチロニトリル、イソブチロニトリル、ベンゾニトリ
ル、酢酸エチル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメ
チルスルホキシドからなる群から選択される1種類以上の溶媒を使用することを特徴とす
る、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
使用する溶媒がトルエン又はメチルtert-ブチルエーテルであることを特徴とする
、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
R
1は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、フェニル、4-
メチルフェニル又はベンジルであり;
R
2は、Cl、F、Br、I又はメチルであり;及び、
R
3は、F、Cl又はOSO
2R
1である;
ことを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
式(II)で表される化合物が、式(VI)
【化5】
で表される化合物又は式(VI)で表される化合物のアルカリ金属塩若しくはアルカリ土
類金属塩を、溶媒の存在下で、式(VII)
【化6】
で表される少なくとも1種類の化合物と反応させることによって得られ、ここで、Qは、
Li、Na、K、MgCl、MgBr又はMgIである;
ことを特徴とする、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
脱プロトン化剤を最初に
式(VI)で表される化合物に添加した後、それを式(VII)で表される化合物と反応させ、ここで、該脱プロトン化剤は、式(VII)で表される化合物ではない;
ことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
式(V)
【化8】
〔式中、
R
2は、ハロゲン又はメチルであり;
Xは、C又はSであり、Yは、S又はOであり、及び、XとYは両方ともSであること
はできない〕
で表される化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3-置換されている2-ビニルフェニルスルホネート類を調製する方法、特に、3-クロロ-2-ビニルフェニルスルホネート類を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3-置換2-ビニルフェニルスルホネート類は、農薬活性化合物を調製するための重要な中間体である(例えば、以下のものを参照されたい:WO2011/076699、又は、WO2014/206896)。
【0003】
該3-置換2-ビニルフェニルスルホネート類は、典型的には、対応する3-置換2-ビニルフェノール類をアリールスルホニルクロリド又はアルキルスルホニルクロリドと反応させることによって、調製される。例えば、中間体としてテトラクロロシクロヘキサノン及びトリクロロ-1,3,3-ビニル-2-オキサ-7-ビシクロ-[4.1.0]ヘプタンを経由した3-クロロ-2-ビニルフェノールの調製は、EP0511036B1から知られている。この方法の不利点は、全収率が低いこと及びアトムエコノミーが低いことである。
【0004】
WO2016/139161には、2-クロロ-6-ヒドロキシベンズアルデヒドをMeMgBrと反応させて3-クロロ-2-(1-ヒドロキシエチル)フェノールを生成させ、次いで、水を除去することによる、2段階プロセスでの3-クロロ-2-ビニルフェノールの調製が記載されている。該2-クロロ-6-ヒドロキシベンズアルデヒドは、3-クロロ-2-(ジクロロメチル)フェニルトリクロロ酢酸塩から調製する。しかしながら、アトムエコノミーに関して、この方法は依然として改良する価値がある。2-クロロ-6-ヒドロキシベンズアルデヒドを調製するための代替え的な方法は、WO2012/087229から知られている。使用する試薬(例えば、工業的な使用には適していない溶媒としてのDMSO)及び低い収率に起因して、この方法も改良する価値がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】WO2011/076699
【文献】WO2014/206896
【文献】EP0511036B1
【文献】WO2016/139161
【文献】WO2012/087229
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、3-置換2-ビニルフェニルスルホネート類を調製するための改善された方法を提供することであった。該方法は、少ない段階及び少ない精製ステップ並びに最大のアトムエコノミーで、所望の生成物を高い収率で調製することを可能にすべきである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
【0008】
〔式中、
R
1は、C
1-C
6-アルキル、フェニル、4-メチルフェニル又はベンジルであり;及び、
R
2は、ハロゲン又はメチルである〕
で表される3-置換2-ビニルフェニルスルホネートを調製する方法であって、
(a) 式(II)
【化2】
【0009】
で表される化合物を、塩基の存在下で、塩化チオニル、ホスゲン、ジホスゲン、トリホスゲン、チオホスゲン及びクロロギ酸エステル類からなる群から選択される活性化剤と反応させて、式(III)
【化3】
【0010】
で表される化合物を生成させ;及び、
(b) 式(III)で表される化合物を、塩基の存在下で、式(IV)
【化4】
【0011】
〔式中、R3は、F、Cl、Br又はOSO2R1であり、及び、R1は、式(I)において定義されているとおりである〕
で表される化合物と反応させて、式(I)で表される3-置換2-ビニルフェニルスルホネートを生成させる;
ことを特徴とする前記方法によって達成された。
【0012】
驚くべきことに、3-置換2-ビニルフェニルスルホネート類を、対応する3-置換2-(1-ヒドロキシエチル)フェノール類から、活性化剤(例えば、ホスゲン又は塩化チオニル)を用いて、高収率で且つ中間体を単離する必要なく、調製することができるということが見いだされた。
【0013】
WO2016/139161から知られている方法と比較して、本発明による方法は、(i)使用しなければならない式(IV)で表される化合物の量が少なく、及び、塩化チオニル又はホスゲンは式(IV)で表される化合物と比較して極めて安価である、(ii)段階(a)における廃棄物として、1当量のメタンスルホン酸の代わりに、僅かに1当量のガス状物質(SO2、CO2)が形成される、及び、(iii)向上した収率が達成される、という有利点を有している。本発明による方法の好ましい変形態様では、上記塩基は再利用することも可能である。これらの有利点により、本発明の方法は、工業的規模で使用するのに特に適している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明による方法は、好ましくは、ワンポットプロセスとして実施する。本発明によれば、このことは、段階(a)と段階(b)を中間体(III)を単離することなく実施するということを意味する。
【0015】
本発明による方法は、スキーム1に示されている。
【0016】
【0017】
該活性化剤及び該塩基の存在下における式(II)で表される化合物の変換が環状中間体(V)を経由して進行して式(III)で表される化合物を生成するということが分かった。次いで、その環状中間体(V)からO=X=Yを除去することによって、式(III)で表される化合物が形成される。
【0018】
本発明によれば、式(III)で表される化合物を、次いで、塩基の存在下で式(IV)で表され得る化合物と反応させて、式(I)で表される3-置換2-ビニルフェニルスルホネートが得られる。式(IV)で表される化合物は、市販されている。
【0019】
本発明による方法において、好ましくは、R1~R3は、以下のように定義される:
R1は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、フェニル、4-メチルフェニル又はベンジルであり;
R2は、Cl、F、Br、I又はメチルであり;及び、
R3は、F、Cl又はOSO2R1である。
【0020】
本発明による方法において、特に好ましくは、R1~R3は、以下のように定義される:
R1は、メチル、エチル、n-プロピル、フェニル又は4-メチルフェニルであり;
R2は、Cl又はBrであり;及び、
R3は、F、Cl又はOSO2R1である。
【0021】
本発明による方法において、極めて特に好ましくは、R1~R3は、以下のように定義される:
R1は、メチル又は4-メチルフェニルであり、特に、メチルであり;
R2は、Cl又はBrであり、特に、Clであり;
R3は、F、Cl又はOSO2R1である。
【0022】
本発明による方法の段階(a)及び段階(b)のそれぞれにおいて、少なくとも1種類の塩基を使用する。段階(a)及び段階(b)において使用する塩基は、同一であっても又は異なっていてもよい。好ましくは、段階(a)及び段階(b)において同じ塩基を使用する。
【0023】
特に好ましくは、本発明による方法は、ワンポットプロセスとして実施し、そこでは、段階(a)及び段階(b)において同じ塩基を使用する。この場合に使用する塩基は、ここで、少なくとも部分的に(好ましくは、完全に)、段階(a)において添加する。
【0024】
段階(a)及び段階(b)において使用する塩基の総量は、いずれの場合にも1当量の式(II)で表される化合物に基づいて、好ましくは、0.9~10当量であり、特に好ましくは、1.5~6.0当量であり、とりわけ好ましくは、3.0~5.0当量である。
【0025】
適切な塩基は、以下のものからなる群から選択される1種類以上の有機塩基である:トリアルキルアミン類、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、トリ-n-プロピルアミン及びトリ-n-ブチルアミン;アルコキシド塩基、例えば、カリウムtert-ブトキシド;ピリジル塩基、例えば、ピリジン、2,6-ルチジン、2-ピコリン、3-ピコリン及び4-ピコリン;並びに、アミジン塩基、例えば、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)。特に好ましいのは、トリ-n-ブチルアミンである。
【0026】
一般的な定義
ハロゲンは、F、Cl、Br又はIであり、好ましくは、Cl、Br又はIであり、及び、特に好ましくは、Cl又はBrである。
【0027】
C
1
-C
6
-アルキルは、1~6個(好ましくは、1~3個)の炭素原子を有する飽和の分枝鎖又は非分枝鎖の炭化水素ラジカル、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル(1-メチルエチル)、n-ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、n-ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、ヘキシル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1-エチル-1-メチルプロピル及び1-エチル-2-メチルプロピルなどである。
【0028】
段階(a)
段階(a)において、式(II)で表される化合物を、塩基の存在下で活性化剤と反応させて、式(III)で表される化合物を生成させる。
【0029】
本発明に従って使用する活性化剤は、塩化チオニル、ホスゲン、ジホスゲン、トリホスゲン、チオホスゲン及びクロロギ酸エステル類からなる群から選択される1種類以上の化合物である。適切なクロロギ酸エステルは、クロロギ酸C1-C6-アルキル、例えば、クロロギ酸エチル及びクロロギ酸メチルである。特に好ましい活性化剤は、塩化チオニル及びホスゲンであり、極めて特に好ましいのは、塩化チオニルである。
【0030】
使用する活性化剤の量は、いずれの場合にも1当量の式(II)で表される化合物に基づいて、好ましくは、0.8~2.5当量であり、特に好ましくは、0.9~2.0当量であり、及び、とりわけ好ましくは、0.9~1.5当量である。
【0031】
該反応は、塩基及び溶媒の存在下で実施する。
【0032】
適切な塩基は、有機塩基であり、好ましくは、以下のものからなる群から選択される有機塩基である:トリアルキルアミン類、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、トリ-n-プロピルアミン又はトリ-n-ブチルアミン;アルコキシド塩基、例えば、カリウムtert-ブトキシド;ピリジル塩基、例えば、ピリジン、2,6-ルチジン、2-ピコリン、3-ピコリン又は4-ピコリン;及び、アミジン塩基、例えば、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)。特に好ましいのは、トリ-n-ブチルアミンである。
【0033】
使用する塩基の総量は、いずれの場合にも1当量の式(II)で表される化合物に基づいて、好ましくは、0.9~5当量であり、特に好ましくは、2.0~3.5当量であり、とりわけ好ましくは、3.1当量である。
【0034】
適切な溶媒は、以下のものである:脂肪族、脂環式又は芳香族の炭化水素類、例えば、石油エーテル、n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン若しくはデカリン;ハロゲン化炭化水素類、例えば、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロエタン若しくはトリクロロエタン;エーテル類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、メチルtert-アミルエーテル、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン(2-Me-THF)、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、ジグリム若しくはアニソール;ニトリル類、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、n-ブチロニトリル、イソブチロニトリル若しくはベンゾニトリル;エステル系溶媒、例えば、酢酸エチル;アミド系溶媒、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)若しくはN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc);双極性非プロトン溶媒、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO);又は、これら溶媒の混合物。特に好ましい溶媒は、トルエン、アセトニトリル、MTBE、THF及び2-Me-THF、及び、それらの混合物である。極めて特に好ましいのは、トルエン及びMTBEである。
【0035】
段階(a)における反応は、好ましくは、標準圧下で実施するが、減圧下又は高圧下で実施することも可能である。
【0036】
好ましくは、式(II)で表される化合物を含んでいる溶液、該塩基及び該溶媒を最初に装入し、そして、冷却しながら、好ましくは、-20℃~+10℃(好ましくは、0℃~5℃)で、該活性化剤を添加する。ここで、中間体(V)が形成される。
【0037】
O=X=Yを除去して式(III)で表される化合物を生成させるための、中間体(V)のその後の変換は、好ましくは、0℃以上の温度で実施する。
【0038】
ピリジル塩基(例えば、3-ピコリン)を活性化剤としての塩化チオニルと組み合わせて使用する場合、又は、活性化剤としてチオホスゲンを使用する場合は、上記除去を実施するための反応温度は、好ましくは、60℃以上であり、特に好ましくは、80℃~120℃である。
【0039】
トリアルキルアミン塩基(例えば、トリブチルアミン)を活性化剤としての塩化チオニル又はホスゲンと組み合わせて使用する場合、該反応温度は、好ましくは、0℃~+25℃である。従って、この実施形態が特に有利である。
【0040】
結果として得られた、式(III)で表される化合物を含んでいる反応混合物は、好ましくは、後処理に付すことなく、段階(b)において使用する。
【0041】
段階(b)
段階(b)において、式(III)で表される化合物を、塩基の存在下で、式(IV)で表される化合物と反応させて、式(I)で表される3-置換2-ビニルフェニルスルホネートを生成させる。
【0042】
使用する式(IV)で表される化合物の量は、いずれの場合にも1当量の式(III)で表される化合物に基づいて、好ましくは、0.8~2.5当量であり、特に好ましくは、0.9~1.8当量であり、とりわけ好ましくは、1.0~1.5当量である。
【0043】
該反応は、塩基及び溶媒の存在下で実施する。
【0044】
適しているのは、段階(a)に関して既に定義した塩基及び溶媒である。該反応は、好ましくは、段階(a)で使用した塩基の存在下、及び、段階(a)で使用した溶媒の存在下で、実施する。
【0045】
段階(b)に関して使用する塩基の量は、好ましくは、上記で記載したように、段階(a)において既に添加しており、そして、いずれの場合にも1当量の式(II)で表される化合物に基づいて、好ましくは、0.9~3.0当量であり、特に好ましくは、1.0~2.0当量であり、とりわけ好ましくは、1.1~1.5当量である。
【0046】
段階(b)における反応は、好ましくは、標準圧下で実施するが、減圧下又は高圧下で実施することも可能である。
【0047】
該反応温度は、好ましくは、-20℃~+100℃であり、特に好ましくは、-10℃~+60℃であり、とりわけ好ましくは、0℃~+30℃である。
【0048】
該反応の終わりに、その粗製生成物を、好ましくは、最初に水性酸で洗浄し、及び、抽出し、その有機相を合して分離し、溶媒を減圧下で除去する。その生成物は、再結晶によって、例えば、エタノールからの再結晶によって、精製することができる。
【0049】
塩基としてトリ-n-ブチルアミンを使用する、本発明による方法の特に有利な実施形態では、該トリ-n-ブチルアミンを再利用する。この目的のために、合した水相を、好ましくは、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを添加することによってアルカリ性とし、及び、分離する有機相を除去することによって、トリ-n-ブチルアミンを回収する。そのトリ-n-ブチルアミンは、蒸留することによって精製することができる。
【0050】
式(V)で表される中間体
本発明による方法は、活性化剤と塩基の存在下における式(II)で表される化合物の変換が環状中間体(V)を経由して進行して、式(III)で表される化合物が生成されるということを特徴とする。
【0051】
【0052】
〔式中、Xは、C又はSであり、Yは、S又はOであり、及び、XとYは両方ともSであることはできず(即ち、X≠Y);及び、R2は、式(II)において定義されているとおりである〕
で表される化合物も提供する。
【0053】
特に好ましいのは、式(V)〔式中、Xは、Cであり、及び、Yは、S又はOである〕で表される化合物である。極めて特に好ましいのは、式(V)〔式中、Xは、Sであり、及び、Yは、Oである〕で表される化合物である。
【0054】
式(II)で表される化合物の調製
式(II)で表される化合物は、式(VI)
【化7】
【0055】
で表される化合物又は式(VI)で表される化合物のアルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩を、溶媒の存在下で、式(VII)
【化8】
【0056】
で表される少なくとも1種類の化合物と反応させることによって得ることができ、ここで、Qは、Li、Na、K、MgCl、MgBr又はMgIであり、及び、Meは、メチルである。
【0057】
好ましくは、Qは、Li、MgCl、MgBr又はMgIであり、及び、特に好ましくは、MgCl又はMgBrである。
【0058】
式(VI)で表される化合物を式(VII)で表される有機金属化合物と反応させる場合、式(VI)で表される化合物が既にフェノラートアニオンとして、例えば、アルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩の形態で、存在していなければ、式(VI)で表される化合物は、式(VII)で表される化合物によって脱プロトン化され且つ求核付加反応を受ける。
【0059】
好ましいアルカリ金属塩は、ナトリウム塩及びカリウム塩である。好ましいアルカリ土類金属塩は、マグネシウム塩又はカルシウム塩である。
【0060】
式(VII)で表される化合物は、脱プロトン化剤として、及び、付加反応に関する求核試薬として、機能し得る。
【0061】
変形態様(i)
脱プロトン化剤及び求核試薬の両方として式(VII)で表される1種類以上の化合物を使用する場合、使用する式(VII)で表される化合物の総量は、いずれの場合にも1当量の式(VI)で表される化合物に基づいて、好ましくは、1.8~4.0当量であり、特に好ましくは、2.0~2.5当量である。
【0062】
変形態様(ii)
しかしながら、好ましくは、式(VII)で表される化合物ではない脱プロトン化剤を使用する。この実施形態では、式(VI)で表される化合物を、最初に、溶媒の存在下で脱プロトン化剤で処理し、その後、式(VII)で表される化合物と反応させる。
【0063】
適切な脱プロトン化剤は、アルカリ金属アルコキシド及びアルカリ金属水酸化物であり、好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド、カリウムメトキシド及びカリウムtert-ブトキシドからなる群から選択されるアルカリ金属アルコキシド及びアルカリ金属水酸化物である。
【0064】
脱プロトン化剤を使用する場合、これは、好ましくは、0℃~+100℃の反応温度で添加し、特に好ましくは、20℃~+80℃の反応温度で添加し、及び、とりわけ好ましくは、40℃~+80℃の反応温度で添加する。
【0065】
脱プロトン化に関する溶媒として適しているのは、エーテル類(例えば、THF、Me-THF、ジオキサン、MTBE又はアニソール)、アルコール類(例えば、メタノール又はエタノール)及び芳香族炭化水素類(例えば、トルエン、キシレン、クロロベンゼン又は1,2-ジクロロベンゼン)である。特に好ましいのは、メタノール中のナトリウムメトキシドの溶液と組み合わせたTHF、MTBE又はトルエンである。
【0066】
水及びプロトン性溶媒(例えば、アルコール類)は、式(VI)で表される脱プロトン化された化合物を式(VII)で表される有機金属化合物と反応させる前に除去しなければならない。水の場合、これは、好ましくは、共沸蒸留によって、例えば、トルエンとの共沸蒸留によって、除去する。アルコール類(例えば、メタノール又はエタノール)の場合、その除去は、高沸点溶媒(例えば、トルエン)の存在下で蒸留することによって実施する。
【0067】
脱プロトン化剤を使用することによって、使用する式(VII)で表される化合物の量を低減させることができる。例えば、脱プロトン化剤を使用する場合、いずれの場合にも1当量の式(VI)で表される化合物に基づいて、好ましくは、1.8当量以下の式(VII)で表される化合物を使用し、特に好ましくは、1.5当量以下の式(VII)で表される化合物を使用し、及び、とりわけ好ましくは、0.9~1.2当量の式(VII)で表される化合物を使用する。
【0068】
有機金属試薬(VII)を添加するための溶媒として適しているのは、以下のものである:脂肪族、脂環式又は芳香族の炭化水素類、例えば、石油エーテル、n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン又はデカリン;エーテル類、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、メチルtert-アミルエーテル、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン(2-Me-THF)、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン又はアニソール;及び、これら溶媒の混合物。特に好ましい溶媒は、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、MTBE、THF又は2-Me-THF、及び、それらの混合物である。極めて特に好ましいのは、THF、2-Me-THF、MTBE、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン及びそれらの混合物である。
【0069】
式(VI)で表される化合物の調製
式(VI)〔式中、R
2はClである〕で表される化合物は、式(VIII)
【化9】
【0070】
〔式中、R2はClである〕
で表される化合物を溶媒の存在下で水酸化物塩基と反応させることによって、得ることができる。
【0071】
式(VI)で表される化合物のこの合成は、WO2012/087229から原則として知られている。該反応は、WO2012/087229においては、溶媒としてのDMSOの中でKOHを使用することが記載されている。しかしながら、DMSOは、工業的な使用に関しては不適切な溶媒であり、及び、記載されている収率も中程度である。
【0072】
本発明による方法における水酸化物塩基として適しているのは、アルカリ金属水酸化物、特に、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムである。特に好ましいのは、アルカリ金属水酸化物水溶液、特に、水酸化カリウム溶液及び水酸化ナトリウム水溶液である。
【0073】
適切な溶媒は、以下のものである:アミド系溶媒、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)及びN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc);ジグリム;これら溶媒の混合物、及び、さらに、アミド系溶媒又はジグリムと芳香族系溶媒(例えば、トルエン、キシレン(o-キシレン、p-キシレン及び/又はm-キシレン)、クロロベンゼン及び1,2-ジクロロベンゼン)又はエーテル系溶媒(例えば、THF、Me-THF及びジオキサン)の溶媒混合物である。
【0074】
好ましくは、ジグリムを使用するか、又は、DMF及びDMAcから選択されるアミド系溶媒を使用する。
【0075】
特に好ましくは、DMAcを使用する。
【0076】
極めて特に好ましくは、水酸化物塩基としての水酸化カリウム水溶液と溶媒としてのN,N-ジメチルアセトアミドの組み合わせを使用する。
【0077】
式(VIII)で表される化合物から出発して、式(VI)で表される化合物を経由する、本発明による式(II)で表される化合物の好ましい合成は、スキーム2に示されており、ここで、R2は、いずれの場合にもClである。
【0078】
【実施例】
【0079】
以下の実施例によって、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はそれら実施例に限定されるものではない。
【0080】
実施例1
2-クロロ-6-ヒドロキシベンズアルデヒド(VI;R
2
=Cl)
【化11】
【0081】
500mL容四つ口フラスコの中に、50.0g(0.31mol、1.0eq)の2-クロロ-6-フルオロベンズアルデヒドを150mLのN,N-ジメチルアセトアミドに溶解させた溶液を、窒素下23℃で最初に装入する。87.6g(0.78mol、2.5eq)の50%KOH水溶液を、20-30℃で3時間かけて計量添加する。当該反応は僅かに発熱性であり、そして、黄色の懸濁液が得られる。添加が終了した後、その反応混合物を23℃でさらに1時間撹拌する。GCは、99%を超える変換を示す。10-30℃で冷却しながら、10-20分間かけて、200mLの水、及び、その後、80.0gの37%HClを計量添加する(pH=1-2)。ベージュ色の固体が沈澱する。
【0082】
場合により、この固体を濾過によって単離することができる。20mbar/23℃で乾燥させた後、43.0gのベージュ色の固体が得られる(収率88%)。
【0083】
代替え的に、150mLのトルエンを添加し、その混合物を23℃で10分間撹拌する。その水相を分離し、150mLのトルエンで再度抽出する。その有機相を合して150mLの10%HClで洗浄し、ロータリーエバポレーターで40℃/50mbarで濃縮して、約250gとする。その生成物の溶液は、そのまま、次の段階で使用する(定量的NMRを用いて測定された含有量によって計算して収率:90%)。
【0084】
1H-NMR(CDCl3,400MHz) δ(ppm)=11.91(s,1H),10.42(s,1H),7.42(t,J=8.3Hz,1H),6.96(dd,J=8.0Hz,1.0Hz,1H),6.90(d,J=8.4Hz,1H)。
【0085】
実施例2
3-クロロ-2-(1-ヒドロキシエチル)フェノール(II;R
2
=Cl)
【化12】
【0086】
1L容四つ口フラスコの中に、トルエン中の43.8g(0.28mol、1.0eq)の2-クロロ-6-ヒドロキシベンズアルデヒド(確認された収率90%)からなる実施例1からの生成物の溶液を窒素下で最初に装入し、60℃まで加熱する。50.3g(0.28mol、1.0eq)の30%ナトリウムメトキシドメタノール溶液を、60℃で1時間かけて計量添加し、添加が完了した後、その混合物を60℃で2時間さらに撹拌する。その黄色の懸濁液を23℃まで冷却し、300mLのトルエンを添加し、その混合物をロータリーエバポレーターで40℃/50mbarで濃縮して、残留重量を約250gとする。105.4g(0.31mol、1.1eq)の22%塩化メチルマグネシウムTHF溶液を、20-30℃で3時間かけて計量添加し、その混合物を、23℃で1時間さらに撹拌する。HPLCは、完全な変換を示す。10-20℃で冷却しながら、250mLの10%HCl(pH=1-2)を30分間かけて計量添加する。その水相を分離し、200mLのトルエンで抽出する。その有機相を合して100mLの10%NaHCO3溶液で洗浄する。その有機相を分離し、100mLの水で洗浄し、ロータリーエバポレーターで40℃/50mbarで濃縮して、残留重量約200gとする。その生成物の溶液は、次の段階で使用する(定量的NMRを用いて測定された含有量によって計算して収率:98%)。
【0087】
1H-NMR(CDCl3,400MHz) δ(ppm)=8.84(s,1H),7.07(t,J=8.0Hz,1H),6.85(dd,J=8.0Hz,1.2Hz,1H),6.78(dd,J=8.3Hz,1.1Hz,1H),5.60(qd,J=6.5Hz,3.1Hz,1H),2.65(m,1H),1.57(d,J=6.5Hz,3H)。
【0088】
実施例3-6
式(II)〔式中、R2=Cl〕で表される化合物の調製に関する実施例2に記載されている方法と同様にして、下記実施例3-6の式(II)で表される化合物を得ることができる。
【0089】
実施例3: 3-フルオロ-2-(1-ヒドロキシエチル)フェノール(II;R
2
=F)
1H-NMR(CDCl3,400MHz) δ(ppm)=8.59(br s,1H),7.08(dt,J=8.3Hz,6.5Hz,1H),6.65(d,J=8.3Hz,1H),6.58-6.51(m,1H),5.48(q,J=6.5Hz,1H),2.69(br s,1H),1.58(d,J=6.7Hz,3H)。
【0090】
実施例4: 2-(1-ヒドロキシエチル)-3-ヨードフェノール(II;R
2
=I)
1H-NMR(CDCl3,400MHz) δ(ppm)=8.88(br s,1H),7.33(dd,J=7.5Hz,1.6Hz,1H),6.88-6.80(m,2H),5.38(q,J=6.7Hz,1H),2.80(br s,1H),1.54(d,J=6.7Hz,3H)。
【0091】
実施例5: 3-ブロモ-2-(1-ヒドロキシエチル)フェノール(II;R
2
=Br)
1H-NMR(CDCl3,400MHz) δ(ppm)=9.02(br s,1H),7.04(dd,J=8.0Hz,1.1Hz,1H),6.99(t,J=8.0Hz,1H),6.82(dd,J=8.0Hz,1.3Hz,1H),5.53(q,J=6.7Hz,1H),3.25(br s,1H),1.56(d,J=6.7Hz,3H)。
【0092】
実施例6: 2-(1-ヒドロキシエチル)-3-メチルフェノール(II;R
2
=Me)
1H-NMR(CDCl3,400MHz) δ(ppm)=8.61(br s,1H),7.04(t,J=8.0Hz,1H),6.73(d,J=8.0Hz,1H),6.65(d,J=7.5Hz,1H),5.33(q,J=6.7Hz,1H),2.92(br s,1H),2.22(s,3H),1.54(d,J=6.7Hz,3H)。
【0093】
実施例7
3-クロロ-2-ビニルフェニルメタンスルホネート(I;R
1
=Me、R
2
=Cl)
【化13】
【0094】
段階(a) 3-クロロ-2-ビニルフェノール(III;R
2
=Cl)
【化14】
【0095】
1L容四つ口フラスコの中に、トルエン中の46.6g(0.27mol、1.0eq)の3-クロロ-2-(1-ヒドロキシエチル)フェノール(確認された収率98%)からなる実施例2からの生成物の溶液及び222.3g(1.2mol、4.5eq)のトリブチルアミンを窒素下で最初に装入し、30mLのトルエンの中の35.7g(0.30mol、1.1eq)の塩化チオニルからなる溶液を0-5℃で2時間かけて計量添加する。添加が終了した後、その反応混合物を23℃で1時間撹拌する。HPLCは、スチレンへの98%を超える変換を示す。3-クロロ-2-ビニルフェノール(III;R2=Cl)に関する分析データは、以下の通りである:1H-NMR(CDCl3,400MHz) δ(ppm)=7.08(dd,J=8.0,8.0Hz,1H),6.96(d,J=8.0Hz,1H),6.84(d,J=8.0Hz,1H),6.79(dd,J=12.0Hz,12.0Hz,1H),5.74(d,J=12.0Hz,1H),5.73(s,1H),5.68(d,J=12.0Hz,1H)。
【0096】
該環状中間体である5-クロロ-4-メチル-4H-1,3,2-ベンゾジオキサチイン2-オキシド(V;R2=Cl、X=S、Y=O)は、単離することができないか、又は、さまざまな分析方法で検出することができない。該加水分解された誘導体である1-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)エチル亜硫酸水素塩(水によって開環されている)は、LC-MSによる反応に際して、極めて少量(<5%)で検出することが可能である。1-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)エチル亜硫酸水素塩に関する分析データは、以下のとおりである:ESI neg. m/z=235[M-H]+; 保持時間:1.18分(HPLCカラム:Phenomenex Kinetex C18、100mm×2.1mm×1.7μL、溶離液A:0.1%ギ酸/水、溶離液B:アセトニトリル、勾配:90/10(0分)→18/82(2.4分)→0/100(2.6分)→0/100(3.59分)、流量:0.8mL/分、オーブン:40℃、注入量:1.0μL)。
【0097】
段階(b) 3-クロロ-2-ビニルフェニルメタンスルホネート(I;R
1
=Me、R
2
=Cl)
【化15】
【0098】
次いで、0-5℃で、36.6g(0.32mol、1.2eq)のメタンスルホニルクロリドを2時間かけて計量添加する。添加が完了した後、その反応混合物を23℃で1時間撹拌する。HPLCは、当該メタンスルホネートへの98%を超える変換を示す。その反応混合物を、350mLの10%HClの中に、0-10℃で1時間かけて計量添加し、次いで、その水相を毎回200mLのトルエンで2回抽出する。その有機相を合して150mLの10%HClで洗浄し、ロータリーエバポレーターで40℃/50mbarで濃縮する。その油性残渣を取って50mLのDMAcの中に入れ、そして、15-25℃で1時間かけて、125mLの37%HClと500mLの水の混合物の中に計量添加する。そのベージュ色の固体を吸引濾過し、200mLの水で洗浄する。35℃/20mbarで乾燥させた後、63.7gのベージュ色の固体が得られる(収率88%;全段階を通した収率78%;定量的HPLCによる純度88%)。
【0099】
30gのエタノールから再結晶させて、51.2gの無色の結晶が得られる(収率80%;全段階を通した収率70%;定量的HPLCによる純度>98%)。
【0100】
1H-NMR(CDCl3,400MHz) δ(ppm)=7.36(dd,J=8.0,1.2Hz,1H),7.34(dd,J=8.0,1.2Hz,1H),7.23(t,J=8.0Hz,1H),6.76(dd,J=18.0Hz,11.7Hz,1H),5.91(dd,J=18.0,1.6Hz,1H),5.73(dd,J=11.8,1.4Hz,1H),3.11(s,3H)。
【0101】
実施例8
3-クロロ-2-ビニルフェニルメタンスルホネート(I;R
1
=Me、R
2
=Cl): 最後の2つの段階を通した単離された収率及びトリ-n-ブチルアミンの再利用を有する変形態様
段階(a) 3-クロロ-2-ビニルフェノール(III;R
2
=Cl)
250mL容四つ口フラスコに、10.0g(57.9mmol、1.0eq)の3-クロロ-2-(1-ヒドロキシエチル)フェノールと48.3gのトリ-n-ブチルアミン(260.7mmol、4.5eq)を50mLのメチルtert-ブチルエーテルに溶解させた溶液を窒素下で最初に装入し、そして、7.6g(63.7mmol、1.1eq)の塩化チオニルを、0-5℃で1時間かけて計量添加する。添加が完了した後、その反応混合物を23℃で1時間撹拌する。HPLCは、該スチレンへの98%を超える変換を示す。3-クロロ-2-ビニルフェノール(III;R2=Cl)に関する分析データは、以下のとおりである:1H-NMR(CDCl3,400MHz) δ(ppm)=7.08(dd,J=8.0,8.0Hz,1H),6.96(d,J=8.0Hz,1H),6.84(d,J=8.0Hz,1H),6.79(dd,J=12.0Hz,12.0Hz,1H),5.74(d,J=12.0Hz,1H),5.73(s,1H),5.68(d,J=12.0Hz,1H)。
【0102】
段階(b) 3-クロロ-2-ビニルフェニル メタンスルホネート(I;R
1
=Me、R
2
=Cl)
次いで、0-5℃で、8.0g(69.5mmol、1.2eq)のメタンスルホニルクロリドを1時間かけて計量添加する。添加が完了した後、その反応混合物を23℃で1時間撹拌する。HPLCは、該メタンスルホネートへの98%を超える変換を示す。その反応混合物に、100mLの10%HClを10-15℃で計量添加し、次いで、相を分離する。その水相を毎回100mLのメチルtert-ブチルエーテルで2回抽出する。その有機相を合して毎回50mLの10%HClで2回洗浄し、MgSO4で脱水し、ロータリーエバポレーターで40℃/10mbarで濃縮する(13.9g;定量的HPLCによる純度:83%;収率86%)。そのようにして得られた物質をエタノール/n-ヘプタンから再結晶させる(10.8g;定量的HPLCによる純度:99%;収率80%)。
【0103】
その水相を、50%NaOHを添加することによって、pH11-12にする。分離した有機相を分離し、そして、ロータリーエバポレーターで90℃/10mbarで蒸留する。無色の液体が得られる。この液体は、文献におけるデータ(1H-NMR)と比較することによって、トリ-n-ブチルアミンであると確認することができる(43.6g;回収率90%)。
【0104】
実施例9-13
実施例7及び実施例8に記載されている方法と同様にして、式(III)又は式(I)で表される以下の特定の化合物を得ることができる。
【0105】
実施例9: 3-ブロモ-2-ビニルフェノール(III;R
2
=Br):
1H-NMR(CDCl3,400MHz) δ(ppm)=7.13(dd,J=7.8,1.3Hz,1H),7.00(t,J=7.8Hz,1H),6.94(dd,J=8.0,1.3Hz,1H),6.74(dd,J=18.1Hz,11.4Hz,1H),5.72(dd,J=18.1,1.6Hz,1H),5.70(dd,J=11.4,1.6Hz,1H)。
【0106】
実施例10: 3-ブロモ-2-ビニルフェニルメタンスルホネート(I;R
1
=Me、R
2
=Br)
1H-NMR(CDCl3,600MHz) δ(ppm)=7.56(dd,J=8.1,1.1Hz,1H),7.38(d,J=8.2Hz,1H),7.16(t,J=8.1Hz,1H),6.72(dd,J=17.9Hz,11.7Hz,1H),5.84(dd,J=17.9,1.3Hz,1H),5.71(dd,J=11.7,1.3Hz,1H),3.11(s,3H)。
【0107】
実施例11: 3-フルオロ-2-ビニルフェニルメタンスルホネート(I;R
1
=Me、R
2
=F)
1H-NMR(CDCl3,400MHz) δ(ppm)=7.27-7.24(m,1H),7.23-7.19(m,1H),7.10-7.04(m,1H),6.75(dd,J=18.0Hz,11.9Hz,1H),6.06(dd,J=18.0,1.3Hz,1H),5.68(dd,J=11.9,1.6Hz,1H),3.15(s,3H)。
【0108】
実施例12: 3-ヨード-2-ビニルフェニルメタンスルホネート(I;R
1
=Me、R
2
=I)
1H-NMR(CDCl3,400MHz) δ(ppm)=7.84(dd,J=8.1Hz,1.1Hz,1H),7.41(dd,J=8.1Hz,1.1Hz,1H),7.00(t,J=8.0Hz,1H),6.60(dd,J=17.8Hz,11.6Hz,1H),5.72(dd,J=17.8,1.4Hz,1H),5.67(dd,J=11.6,1.4Hz,1H),3.11(s,3H)。
【0109】
実施例13: 3-メチル-2-ビニルフェニルメタンスルホネート(I;R
1
=Me、R
2
=Me)
1H-NMR(CDCl3,400MHz) δ(ppm)=7.24(dd,J=8.0,1.8Hz,1H),7.19(t,J=7.8Hz,1H),7.15(dd,J=7.5,1.3Hz,1H),6.71(dd,J=17.8Hz,11.8Hz,1H),5.66(dd,J=11.8,1.8Hz,1H),5.63(dd,J=17.8,1.8Hz,1H),3.09(s,3H),2.37(s,3H)。
【0110】
実施例14
3-クロロ-2-ビニルフェノール(III;R
2
=Cl)を3-クロロ-2-(1-ヒドロキシエチル)フェノール(II;R
2
=Cl)から調製するための代替え的な条件:
(a) 塩基としての3-ピコリン
9mLのDMAcに、1.0gの3-クロロ-2-(1-ヒドロキシエチル)フェノール(5.8mmol、1.0eq)を最初に装入し、2.43gの3-ピコリン(26.1mmol、4.5eq)を添加する。0.76gの塩化チオニル(6.4mmol、1.1eq)を0-5℃で1時間かけて計量添加し、次いで、その混合物を23℃で1時間撹拌する。HPLCは、3-クロロ-2-[1-(3-メチルピリジニウム-1-イル)エチル]フェノラートへの95%を超える変換を示す。3-クロロ-2-[1-(3-メチルピリジニウム-1-イル)エチル]フェノラートに関する分析データは、以下のとおりである:ESI pos. m/z=248[M+H]+; 1H-NMR(CDCl3,400MHz) δ(ppm)=8.88(d,J=6.2Hz,1H),8.73(s,1H),8.25(d,J=8.0Hz,1H),7.95(t,J=6.2Hz,1H),7.59(dd,J=8.4Hz,1.0Hz,1H),7.14(t,J=8.3Hz,1H),6.89(dd,J=8.0Hz,1.1Hz,1H),6.46(q,J=7.0Hz,1H),2.59(s,3H),2.22(d,J=7.0Hz,3H)。
【0111】
次いで、その反応混合物を120℃まで加熱し、その温度で2時間撹拌する。HPLCは、85%を超える3-クロロ-2-ビニルフェノールを示す(III;R2=Cl、分析データ:実施例7及び実施例8の段階(a)を参照されたい)。
【0112】
(b) 活性化剤としてのホスゲン(中間体(V)の110℃における化合物(III)への変換)
50mLのトルエンに、5.0gの3-クロロ-2-(1-ヒドロキシエチル)フェノール(29.0mmol、1.0eq)を最初に装入し、21.5gのトリブチルアミン(115.9mmol、4.0eq)を添加する。0-5℃で、5.8gのホスゲン(58.0mmol、2.0eq)を1時間かけて添加し、次いで、その混合物を23℃で1時間撹拌する。HPLC-MSは、中間体として、80%を超える5-クロロ-4-メチル-4H-1,3-ベンゾジオキシン-2-オン(V;R2=Cl、X=C、Y=O)を示す。5-クロロ-4-メチル-4H-1,3-ベンゾジオキシン-2-オン(V;R2=Cl、X=C、Y=O)に関する分析データは、以下のとおりである:ESI pos. m/z=199[M+H]+; 保持時間:1.02分(HPLCカラム:Zorbax Eclipse Plus C18、50mm×2.1mm×1.8μL; 溶離液A:0.1%ギ酸/アセトニトリル; 溶離液B:0.1%ギ酸/水; 勾配:10/90 47%/分→95/5(0.7分); 流量:1mL/分; オーブン:55℃; 注入量:0.8μL)。
【0113】
次いで、その反応混合物を110℃まで加熱し、その温度で12時間撹拌する。HPLCは、90%を超える3-クロロ-2-ビニルフェノール(III;R2=Cl、分析データに関しては、実施例7及び実施例8の段階(a)を参照されたい)を示す。
【0114】
(b) 活性化剤としてのホスゲン(中間体(V)の室温における化合物(III)への変換)
50mLのトルエンに、10.0gの3-クロロ-2-(1-ヒドロキシエチル)フェノール(57.9mmol、1.0eq)を最初に装入し、43gのトリブチルアミン(231mmol、4.0eq)を添加する。0-6℃で、8.6gのホスゲン(86.9mmol、1.5eq)を30分間かけて添加し、次いで、その混合物を0℃で1時間撹拌する。HPLC-MSは、中間体として、80%の5-クロロ-4-メチル-4H-1,3-ベンゾジオキシン-2-オン(V;R2=Cl、X=C、Y=O)を示す。5-クロロ-4-メチル-4H-1,3-ベンゾジオキシン-2-オン(V;R2=Cl、X=C、Y=O)に関する分析データは、以下のとおりである:ESI pos. m/z=199[M+H]+; 保持時間:1.02分(HPLCカラム:Zorbax Eclipse Plus C18、50mm×2.1mm×1.8μL; 溶離席A:0.1%ギ酸/アセトニトリル; 溶離液B:0.1%ギ酸/水; 勾配:10/90 47%/分→95/5(0.7分); 流量:1mL/分; オーブン:55℃; 注入量:0.8μL)。
【0115】
次いで、その混合物を室温とし、そして、アルゴンガス流を導入することによって過剰なホスゲン除去する。次いで、50mLのメタノールを室温で添加し、その混合物を1時間撹拌する。LCMSは、80%を超える3-クロロ-2-ビニルフェノールを示す。その混合物を、希NaOHを用いてpH10-11とし、相を分離し、その有機相を再度希NaOHで2回抽出する。その水相を合し、希HClを用いてpH2とし、酢酸エチルで3回抽出する。その有機相を合して硫酸ナトリウムで脱水し、ロータリーエバポレーターで濃縮する。これによって、7.9gの3-クロロ-2-ビニルフェノール(III;R2=Cl;分析データに関しては、実施例7及び実施例8の段階(a)を参照されたい)が、黄色の油状物として、純度87%(収率:理論値の76.7%)で得られる。
【0116】
(d) 活性化剤としてのチオホスゲン(中間体(V)の単離及び特徴付け)
5mLのMTBEに、1.0gの3-クロロ-2-(1-ヒドロキシエチル)フェノール(5.8mmol、1.0eq)を最初に装入し、2.15gのトリ-n-ブチルアミン(11.6mmol、2.0eq)を添加する。0.76gのチオホスゲン(6.4mmol、1.1eq)を0-5℃で1時間かけて計量添加し、次いで、その混合物を23℃で1時間撹拌する。HPLCは、中間体として、80%を超える5-クロロ-4-メチル-4H-1,3-ベンゾジオキシン-2-チオン(V;R2=Cl、X=C、Y=S)を示す。約1mLの当該溶液を取り出し、そして、10%HClで洗浄することによって、小規模での後処理に付す。次いで、その有機相をロータリーエバポレーターで濃縮する。5-クロロ-4-メチル-4H-1,3-ベンゾジオキシン-2-チオン(V;R2=Cl、X=C、Y=S)に関する分析データは、以下のとおりである:CI m/z=215[M+H]+; 1H-NMR(CDCl3,400MHz) δ(ppm)=7.35(t,J=8.3Hz,1H),7.27(dd,J=8.0Hz,1.1Hz,1H),7.11(dd,J=8.3Hz,0.8Hz,1H),5.75(q,J=6.7Hz,3.1Hz,1H),1.72(d,J=6.7Hz,3H)。
【0117】
残留している当該反応混合物に1.61gのトリ-n-ブチルアミン(8.7mmol、1.5eq)を添加し、次いで、80℃まで加熱する。HPLCは、3-クロロ-2-ビニルフェノール(III;R2=Cl、分析データに関しては、実施例7及び実施例8の段階(a)を参照されたい)への80%を超える変換を示す。