(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-23
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】磁性ドラムサスペンション装置
(51)【国際特許分類】
G10D 13/10 20200101AFI20220111BHJP
G10G 5/00 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
G10D13/10 140
G10G5/00
(21)【出願番号】P 2019558995
(86)(22)【出願日】2018-01-12
(86)【国際出願番号】 US2018013566
(87)【国際公開番号】W WO2018132706
(87)【国際公開日】2018-07-19
【審査請求日】2021-01-12
(32)【優先日】2017-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519255159
【氏名又は名称】ランダル メイ インターナショナル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100084375
【氏名又は名称】板谷 康夫
(74)【代理人】
【識別番号】100125221
【氏名又は名称】水田 愼一
(74)【代理人】
【識別番号】100142077
【氏名又は名称】板谷 真之
(72)【発明者】
【氏名】メイ,ランダル,エル.
【審査官】渡部 幸和
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-173417(JP,A)
【文献】特表平11-502640(JP,A)
【文献】特開2007-256625(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10D 13/00-13/24
G10G 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
演奏位置にある打楽器を支持するベースと、
前記打楽器に接続されると共にジョイントを介して前記ベースにも接続され、前記打楽器への演奏インパクトに応じて前記ジョイントを支点として平衡位置から回転するスイングアームと、
前記平衡位置に前記スイングアームを戻すように前記スイングアームに対して復元力を与える演奏インパクトエネルギ吸収装置と、を備えたことを特徴とする打楽器マウント。
【請求項2】
前記演奏インパクトエネルギ吸収装置は、磁場抵抗によりスイングを漸減的に減衰させることを特徴とする請求項1に記載の打楽器マウント。
【請求項3】
前記磁場抵抗は、調整可能であることを特徴とする請求項2に記載の打楽器マウント。
【請求項4】
前記演奏インパクトエネルギ吸収装置は、前記スイングアームに取り付けられた少なくとも1つの第1の磁石と前記ベースに取り付けられた少なくとも1つの第2の磁石を含んだ少なくとも1つの磁石対を有し、前記磁石対は、前記平衡位置を定義して前記復元力を与える磁場を発生させることを特徴とする請求項1に記載の打楽器マウント。
【請求項5】
前記少なくとも1つの第1の磁石と前記少なくとも1つの第2の磁石との間の平衡距離は、調整可能であることを特徴とする請求項4に記載の打楽器マウント。
【請求項6】
前記少なくとも1つの第2の磁石は、前記ベースにネジ固定され、前記平衡距離は、前記ベース内で前記少なくとも1つの第2の磁石をねじ込むことで調整可能となっていることを特徴とする請求項5に記載の打楽器マウント。
【請求項7】
前記ジョイントは、前記スイングアームの回転に対して摩擦抵抗を与える摩擦体を有することを特徴とする請求項1に記載の打楽器マウント。
【請求項8】
前記摩擦体は、
前記ジョイントの回転軸に近接して前記ジョイントに対して少なくとも部分的に係合すると共に、摩擦抵抗に応じて変形度が変化する変形可能シースと、
制御された様式で前記変形可能シースを変形させるために前記変形可能シースに圧力を付与すると共に、前記変形可能シースの変形を回復させるために前記変形可能シースへの圧力を解放するようにユーザにより調整可能となった圧力付与装置と、を有することを特徴とする請求項7に記載の打楽器マウント。
【請求項9】
前記ジョイントは、前記ジョイントを支点として前記スイングアームが2次元面に回転可能となるヒンジジョイントであることを特徴とする請求項7に記載の打楽器マウント。
【請求項10】
前記演奏インパクトエネルギ吸収装置は、
中間ヒンジ点を支点として回転可能となった減衰アームと、
前記スイングアームにおいて前記ジョイントから遠い箇所に前記減衰アームの遠位端をデュアルヒンジ様式で接続するデュアルヒンジ連結器と、
前記スイングアームの近位端に接続され、前記平衡位置を定義すると共に前記復元力を与える磁場を発生させるために前記ベース中の少なくとも1つの第2の磁石と相互作用する少なくとも1つの第1の磁石を有する磁性ブロックと、を有し、
前記ジョイントを支点とした前記スイングアームの回転は前記減衰アームに伝達され、前記減衰アームは前記中間ヒンジ点を支点として回転し、前記第1の磁石と前記第2の磁石との間の平衡距離が変化して前記復元力を与えることを特徴とする請求項1に記載の打楽器マウント。
【請求項11】
前記少なくとも1つの第1の磁石と前記少なくとも1つの第2の磁石との間の前記平衡距離は、調整可能であることを特徴とする請求項10に記載の打楽器マウント。
【請求項12】
前記少なくとも1つの第2の磁石は、前記ベースにネジ固定され、前記平衡距離は、前記ベース内で前記少なくとも1つの第2の磁石をねじ込むことで調整可能となっていることを特徴とする請求項11に記載の打楽器マウント。
【請求項13】
前記減衰アームは、前記中間ヒンジ点と接続された細長い開口を有し、前記開口における前記中間ヒンジ点の長手方向位置は、前記ベースに対して複数の固定位置で調整可能となっていることを特徴とする請求項10に記載の打楽器マウント。
【請求項14】
前記中間ヒンジ点の位置調整は、前記復元力を変化させることを特徴とする請求項13に記載の打楽器マウント。
【請求項15】
前記デュアルヒンジ連結器は、前記スイングアーム上における前記デュアルヒンジ連結器の接続位置をスライド調整するためのスイングアームスリーブを有することを特徴とする請求項10に記載の打楽器マウント。
【請求項16】
前記スイングアーム上における前記デュアルヒンジ連結器の接続位置の調整は、前記平衡距離を変化させることを特徴とする請求項15に記載の打楽器マウント。
【請求項17】
前記スイングアームに前記打楽器を接続するためのマウンティングハードウェアを更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の打楽器マウント。
【請求項18】
前記マウンティングハードウェアは、前記スイングアームの長軸に直交する軸を支点として前記打楽器を回転可能とすることを特徴とする請求項17に記載の打楽器マウント。
【請求項19】
前記打楽器は、電子打楽器であることを特徴とする請求項1に記載の打楽器マウント。
【請求項20】
前記演奏インパクトエネルギ吸収装置は、非磁場による復元力として前記復元力を与えることを特徴とする請求項1に記載の打楽器マウント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、本出願人による出願番号62/536,402(2017年7月24日出願)及び出願番号62/446,207(2017年1月13日出願)の優先権を主張し、これら出願の全内容は、本明細書で参照として明確に組み込まれる。
【0002】
本発明は、打楽器をマウントするためのハードウェア、具体的には、アコースティック及び/又は電子ドラムサスペンションハードウェアに関する。
【背景技術】
【0003】
電子打楽器は、アコースティックドラム又は他の打楽器の代替物として知られている。電子打楽器は、典型的には種々のセンサを有するトリガーパッドを備え、これらセンサは、トリガーパッド上への演奏インパクト特性(例えば、位置や強度等)を感知するように設計されている。これらセンサは、対応する電気信号をワイヤ経由で音モジュールに送信し、音モジュールは、その電気信号に基づいて合成又は抽出された打楽器音を作り出し、この音は、音モジュールに接続されたスピーカを通して再生される。
【0004】
このような電子打楽器は、対応するアコースティック楽器と同様に演奏できるように、支持構造、例えば、スタンド又はキットフレーム上へ機械的にマウントされる。しかしながら、このような従来のマウント構造には問題がある。第1に、演奏/実演エネルギからの残留振動が、従来の硬質なマウンティングハードウェアを通じて支持構造に伝動され得る。このような残留振動は、伝達される電気信号を妨害し、同信号による演奏インパクト特性の不正確な反映を引き起こし得る。これにより、シンセサイザにより作製された音が影響を受ける。第2に、硬質なマウント構造を有する電子トリガーパッドからの感覚及びスティック応答は、サスペンションシステムにマウントされたアコースティックドラムのものとはかなり異なる。ドラムヘッド製造者は、アコースティックドラムの感覚及びスティック応答をより良く模倣することができるように、メッシュヘッド材料を改良してきた。しかしながら、このような材料は、上述した感覚特性を改善はするものの、依然としてアコースティックドラムの感覚特性には及ばず、また、望ましくないトランポリンのようなスティック応答を引き起こす。
【0005】
また、問題は、支持構造へのアコースティック楽器の昔ながらのマウンティングにも起因する。支持構造に伝動された残留振動は、アコースティック楽器の音特性に負の影響を与え得る。更に、昔ながらのマウンティングでは、その固定性及び比較的高い静剛性により、アコースティック境界条件が数学的に純粋な境界条件とはかなり異なるので、音質は更に負の影響を受ける。説明として、ドラムから最も純粋な音質を得るには、いかなる支持構造も無く本質的に空中に浮いたドラムが必要となる。支持構造の存在は、支持構造が無い領域とは異なるアコースティック境界条件を有する領域を生み出す。これは、ドラムのアコースティック特性に影響し、且つ等しく決められているので(調整不可)、ドラムの感覚及び/又は音特性を損なう。
【0006】
そのため、上述したシステムよりも優位性を与え、且つ楽器の感覚、スティック応答及び音特性を制御可能とすることが望まれる。本発明の他の特性及び優位性は、ここに記載する実施形態の原理を例示している添付の図も参考にして、以下のより詳細な記載から明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】少なくとも1つの実施形態に係る電子打楽器マウントの側面図。
【0008】
【
図2】少なくとも1つの実施形態に係る電子打楽器マウントの更なる側面図。
【0009】
【
図3】少なくとも1つの実施形態に係る電子打楽器マウントの頂面図。
【0010】
【
図4】少なくとも1つの実施形態に係る支持構造にマウントされた電子打楽器マウントの斜視図。
【0011】
【
図5】少なくとも1つの実施形態に係る支持構造にマウントされたアコースティック打楽器マウントの斜視図。
【0012】
【
図6】少なくとも1つの実施形態に係る支持構造にマウントされた打楽器マウントの斜視図。
【0013】
【
図7】少なくとも1つの実施形態に係る支持構造にマウントされた打楽器マウントの斜視図。
【0014】
【
図8】少なくとも1つの他の実施形態に係る打楽器マウントの斜視図。
【0015】
【
図9】少なくとも1つの他の実施形態に係る打楽器マウントの部分分解斜視図。
【0016】
【
図10】少なくとも1つの他の実施形態に係る打楽器マウントの完全分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
上述した図面は、少なくとも1つの好ましい最適実施形態として本発明を開示するものであり、以下の記載で更に詳細に定義される。当業者であれば、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、ここに記載されているものを変形及び修飾することができるであろう。本発明は、多くの異なる形の実施形態を許容することができるが、本発明による開示を理解するための少なくとも1つの好ましい実施形態について図面に示すものや以下で詳細に記載するものは、本発明の原理を例示するものであって、示した実施形態に本発明の広い権利範囲を限定するものではないと考えられる。従って、以下に示すものは、単に例示目的で示されるものであって、本発明の開示範囲を限定するものではないことを理解すべきである。
【0018】
図1-10は、開示発明の一様である打楽器マウントの例を示している。
【0019】
打楽器マウント10は、ジョイント300を介してスイングアーム200に接続されたベース100を備える。スイングアーム200は、楽器取付機構400を介してスイングアーム200に接続された打楽器20上への演奏インパクトに応じて、ジョイント300を支点として回転する。演奏インパクトエネルギ吸収装置500は、スイングアーム200の回転を吸収する。ベース100は、好ましくは、例えば、グラウンドやステージのような演奏場面において、打楽器マウント10を介して打楽器20を支持するように構成された楽器スタンド又はキットフレームのような支持構造600に接続される。
【0020】
演奏インパクトエネルギ吸収装置500は、好ましくは、磁場抵抗によりスイングを漸減的に減衰させることで演奏インパクトを吸収する。特に、打楽器マウント10に設けられている1つ又は複数の磁石の強さ及び位置は、スイングアーム200の平衡位置を定義する磁場を決定する。平衡位置から離れるようなスイングアーム200の動き(例えば、演奏インパクトによるもの)は、スイングアーム200を平衡位置に戻すように働く復元力を与える磁場の抵抗を受ける。また、演奏インパクトエネルギを消散させるために、例えば、回転位置の種々の場所に機械抵抗又は摩擦抵抗を設けてもよい。このようにして、ドラムからベース100に伝動された演奏インパクトエネルギは、完全には除去されないものの顕著に低減される。
【0021】
図1-4を参照して、電子打楽器マウント10の態様を少なくとも1つの実施形態として記載する。
【0022】
ベース100は、互いに対向して固定された第1のベース部120及び第2のベース部140を有する。特に、第1のベース部120及び第2のベース部140は、第1のベース部120及び第2のベース部140を支持構造600及び/又は中間支持構造620に固定するための1つ又は複数のグリップ部162をそれぞれ有する。
【0023】
支持構造600及び/又は中間支持構造620は、好ましくは、少なくとも1つの縦溝642を持つ少なくとも1つのロッド640を有し、対応するグリップ部162を受けてスライドジョイント160を形成する。第1のベース部120及び第2のベース部140は、ロッド640に対する相対位置及び互いの相対位置を調整するために、スライドジョイント160を介してロッド640に沿って縦方向にスライドする。更に、少なくともいくつかの実施形態では、第1のベース部120及び第2のベース部140は、スライドジョイント160を介してロッド640に着脱可能となっている。換言すると、第1のベース部120及び第2のベース部140は、各々のグリップ部162と縦溝642とを係合させることで、ロッド640に対してスライド着脱される。いくつかの実施形態では、縦溝642及びグリップ部162は、共に準ダブテールスライドジョイントを形成するが、本発明の範囲から逸脱することなく他のスライドジョイントを利用してもよい。
【0024】
第1のベース部120及び第2のベース部140の各々は、好ましくは、互いに対向した固定位置において、第1のベース部120及び第2のベース部140を支持構造600及び/又は中間支持構造620に固定する1つ又は複数の固定具を有する。このような固定具は、例えば、ネジ式固定具により構成され、ネジを締めたり弛めたりすることで支持構造600及び/又は中間支持構造620の壁への接触が強められたり弱められ、これにより摩擦保持力が供給又は除去される。
【0025】
いくつかの実施形態では、ベース100は、支持構造600及び/又は中間支持構造620にベース100を同様に固定して少なくとも1つの対応するグリップ部を有する単一のベース(不図示)から成る。
【0026】
スイングアーム200は、第1のアーム部220と、第2のアーム部240と、これら第1のアーム部220及び第2のアーム部240を一体に接続する第3のアーム部260と、を有する硬質な実質一体構造となっている。
【0027】
第1のアーム部220は、ジョイント300を介して第1のベース部120に接続され、打楽器20上への演奏インパクトに応じてジョイント300を支点としてスイング又は回転する。
【0028】
図1-4に示すように、ジョイント300は、好ましくは、スルーホール340を介して第1のベース部120に第1のアーム部220を接続するヒンジボルト320を有するヒンジジョイントである。このヒンジジョイントは、演奏インパクトエネルギを消散させるために機械的抵抗を与え得る。
【0029】
ヒンジボルト320には、ヒンジボルト320の外表面と第1のアーム部220におけるスルーホール340の内表面との間に位置する変形可能シース360を更に設けてもよい。例えば、ボールソケットジョイントのような別のジョイント構造が利用される場合には、変形可能シース360は、ジョイント300の適切な回転軸に係合し得る。
【0030】
圧力付与装置380は、スルーホール340に対して実質的に直交した状態で第1のアーム部220を通って伸長し、シース360に接触してシース360上に圧力を付与する。これによりシース360が変形し、ヒンジボルト320の回転に対する摩擦抵抗が調節される。圧力付与装置380は、付与する圧力(すなわち、摩擦抵抗)を制御することができるように、好ましくはネジ式装置(例えば、アレンファスナ等)である。
【0031】
第3のアーム部260は、スイングアーム200に打楽器20を取り付けるための楽器取付機構400を含む。
図1-3に示すように、楽器取付機構400は、第3のアーム部260に形成されたスロット420を有し、スロット420を通って固定具440が、支持された打楽器20を受けるマウンティングハードウェア460を固定している。好ましくは、固定具440は、スロット420内でのマウンティングハードウェア460のスライドを許容するように弛めたり閉めたりでき、これによりスイングアーム200に対するマウンティングハードウェア460の再配置や、マウントされた打楽器20の角度調整を行うことができる。
【0032】
第2のアーム部240は、第1のアーム部220から離れるように伸長し、少なくとも部分的に演奏インパクトエネルギ吸収装置500を形成している。
図1-3に示すように、演奏インパクトエネルギ吸収装置500は、少なくとも1つの磁石ペア520を有し、各々の磁石ペア520は、スイングアーム磁石522及びベース磁石524を有する。少なくとも1つの磁石ペア520は、前述した磁性復元力を与えるように構成され、スイングアーム200が平衡位置から移動した場合には、スイングアーム200を平衡位置に戻そうとする。少なくとも1つの実施形態では、少なくとも1つの磁石ペア520が2つの磁石ペアを含む。
【0033】
磁性復元力は、斥力及び/又は引力である。磁石ペア520において互いに同極が向かい合う磁石の配置は、斥力的な磁性復元力を与える。操作では、打楽器20の重みによって、スイングアーム磁石522とベース磁石524とが平衡位置よりも互いに近づくように、スイングアーム200が移動する。そして、磁石の斥力が、平衡位置にスイングアーム200を再配置する。磁石ペア520において互いに異極が向かい合う磁石の配置は、引力的な磁性復元力を与える。操作では、打楽器20の重みによって、スイングアーム磁石522とベース磁石524とが平衡位置よりも互いに離れるように、スイングアーム200が移動する。そして、磁石の引力が、平衡位置にスイングアーム200を再配置する。このようにして、平衡位置から離れるようなスイングアーム200の動き(例えば、演奏インパクトによるもの)は、少なくとも1つの磁石ペア520によって引き起こされる磁場による抵抗を受けることで、平衡位置にスイングアーム200を戻すような復元力を与える。
【0034】
少なくとも1つの実施形態では、平衡にある磁石ペア520における個々の磁石522、524間の相対距離は、斥力/引力及び/又は平衡位置を変化させるために調整可能となっている。例えば、ベース磁石524は、ベース100の磁性開口に設けられた内ネジに螺合する外ネジと、この磁性開口からベース磁石524を伸長又は後退させることで磁場(例えば、ワークフォース値)を変化させるためのネジ回し動作を容易にするターンキー部と、を有していてもよい。
【0035】
例えば、
図4-7に示すように、支持構造は、少なくとも1つの縦溝642を持つ少なくとも1つのロッド640を有する。いくつかの実施形態では、グリップ部162が、支持構造に対してベース100(又は中間支持構造620)を接続している。少なくとも1つの実施形態では、マウントされた打楽器20の演奏位置を調整するために、ベース100が縦軸(すなわち、鉛直z軸)回りに回転可能となるようにして、グリップ部162がベース100に接続されている。
【0036】
少なくとも1つのロッド640は、好ましくは、打楽器マウント10(及び打楽器20)がマウントされるフレームを形成している。複数のロッド640を種々のジョイントにより互いに接続してもよく、このようなジョイントは、複数のロッド640が各々の長軸回りに互いに回転可能となるように構成されている。ジョイントは、各ロッド640の回転位置を固定するように構成されていてもよい。いくつかの実施形態では、摩擦装置(例えば、ネジ)が、各ロッド640の回転位置を固定するジョイントにおいて利用される。この様式では、マウントされた打楽器20の演奏位置が、更に調節され得る。
【0037】
図5-10には、少なくとも1つの他の実施形態の態様が示されている。同様の機能を持つ構造要素には、
図1-4に示した実施形態に対応する参照符号が付されており、簡潔にするため以下では機能的差異について記載する。
【0038】
図5-10に示すように、ベース100は、支持構造に接続されている。例えば、少なくともいくつかの実施形態では、ベース100は、支持構造600及び/又は中間支持構造620に堅固に接続されている。
【0039】
ベース100は、ジョイント300を介してスイングアーム200に更に接続され、ジョイント300は、好ましくは、スイングアーム200に接続された打楽器20への演奏インパクトに応じてスイングアーム200をスイング又はジョイント300に対して回転させる1つ又は複数のヒンジジョイントから成る。このようなヒンジジョイントは、演奏インパクトエネルギを消散させるために機械的抵抗を与え得る。
【0040】
スイングアーム200は、スイングアーム200に打楽器20を取り付けるための楽器取付機構400を更に有する。
図5-10に示すように、例えば、楽器取付機構400は、打楽器マウント10上において打楽器20を支持可能とするマウンティングハードウェア460を堅固に受けるように構成されている。
【0041】
いくつかの実施形態(不図示)では、楽器取付機構400は、直接又は中間部材を介してスイングアーム200にスライド接続され、スイングアーム200に対する縦方向(すなわち、z軸)位置が調整される。対応するグリップ部は、この機能を発揮するために上記と同様の様式で利用され得る。また、楽器取付機構400は、演奏角度の調整及び/又は楽器取付機構400から打楽器20を取り外すことなく打楽器20の反対側ドラムヘッドのチューニングに際して180度ドラムを回転/反転させるために、x軸及び/又はy軸に関して回転調整を許可してもよい。このような調整は、直接接続又は関節接続のいずれでも機械的に可能である。いくつかの実施形態では、中間部材が、スイングアーム200に楽器取付機構400を接続すると共に、上記のような調整を可能としている。
【0042】
演奏インパクトエネルギ吸収装置500は、中間ヒンジ点562回りに回転可能となった減衰アーム560と、減衰アーム560とスイングアーム200とを各々の末端ヒンジ点566、564で接続するスイングアーム連結器570と、磁性復元力を与えるための磁性ブロック580と、を有する。
【0043】
図5-10に示すように、スイングアーム連結器570は、好ましくは、減衰アーム560の末端ヒンジ点566を定義する第1のヒンジ構造572を有する。第1のヒンジ構造572は、好ましくは、減衰アーム560の末端ヒンジ点566を中間アーム574に接続する。中間アーム574は、次いで、スイングアーム200の末端ヒンジ点564を定義している第2のヒンジ構造578を介してスイングアームスリーブ576に接続されている。
【0044】
スイングアームスリーブ576は、好ましくは、スイングアームスリーブ576がスイングアーム200の長さ方向の少なくとも一部に沿って再配置されるように、スイングアーム200を受ける窪みを定義する。少なくともいくつかの実施形態では、スイングアーム200及びスイングアームスリーブ576は、スライドジョイント構成を採用している。スイングアーム200上でのスイングアームスリーブ576の位置は、固定具(例えば、ネジ)を介して固定可能であることが更に好ましい。この様式により、減衰アーム560のバイアスが調節されて、マウントされた楽器の音質が改善される。
【0045】
図5-10に示すように、減衰アーム560は、中間ヒンジ点562を定義している第3のヒンジ構造568を受ける細長い開口564を更に有する。第3のヒンジ構造568は、好ましくは、中間ヒンジ点562を調節可能とするために細長い開口564内で再配置可能とされることで、種々の打楽器20の異なるシェル構造/重量音響特性を補償する。第3のヒンジ構造568は、好ましくは、減衰アームスリーブ570を介して支持構造及び/又は中間支持構造に減衰アーム560を接続している。減衰アームスリーブ570は、支持構造及び/又は中間支持構造に第3のヒンジ構造568を接続している点を除いて、スイングアームスリーブ576と構造的に類似している。また、可変の第3のヒンジ構造568は、磁場に伝達される影響力(力)を制御して、平衡安定位置に影響する。
【0046】
図5-10に示すように、減衰アーム560は、スイングアーム連結器570とは反対側の端部において磁性ブロック580と更に接続されている。磁性ブロック580は、好ましくは、少なくとも1つの磁石対の一方を形成する少なくとも1つの磁性ブロック磁石582を収容している。ベース100は、磁性ブロック磁石582に対向する少なくとも1つのベース磁石を収容し、ベース磁石は、少なくとも1つの磁石対の他方を形成する。少なくとも1つの磁石対の磁力は、磁性ブロック580(及び結果としてスイングアーム200)に対して平衡位置を定義する。少なくとも1つの磁石対は、上述した磁性復元力を与え、スイングアーム200が平衡位置から移動したときに、減衰アーム560/スイングアーム200を平衡位置に戻らせる。少なくとも1つの実施形態では、少なくとも1つの磁石対が2つの磁石対を含む。上述した磁石対については、個々の磁石間の平衡距離は調整可能となっている。
【0047】
動作中、演奏インパクトは、ジョイント300を支点としてスイングアーム200の回転を引き起こす。そして、スイングアーム200の回転は、スイングアーム連結器570を介して減衰アーム560に伝達され、減衰アーム560は、第3のヒンジ構造568により定義された中間ヒンジ点562を支点として回転する。減衰アーム560の回転により、磁性ブロック580が平衡位置から移動すると、磁石対が磁性ブロック580に磁性復元力を与える。磁性復元力は、減衰アーム560及びスイングアーム200の逆回転へと変換される。ジョイント300及び付随的な1つ又は複数のヒンジ構造は、演奏エネルギを更に消散させるために機械的及び/又は摩擦抵抗を与える。
【0048】
図8-10に示すように、演奏インパクトエネルギ吸収装置500は、互いに対向した減衰アーム560がスイングアーム200の両側に配置されたシステムを有する。対向した減衰アーム560は、それぞれ磁性ブロック580、中間ヒンジ及びスイングアーム200に上述した様式で接続されている。
【0049】
図9-10に示すように、少なくともいくつかの実施形態では、マウンティングハードウェア460が、スイングアーム200の回転面に直交した面で回転する。マウンティングハードウェア460は、支持のために楽器を受ける楽器支持部材462を有する。楽器支持部材462は、例えば、ドラム外面に実質的にぴったりフィットするように形成された頂面及び内面と、この頂面を通って形成されてドラムのハードウェア構成を受けることで楽器支持部材462にドラムを固定するように配置されたマウンティング開口と、を有する。楽器支持部材462は、更に、スイングアーム200の回転面に直交して回転するようにしてスイングアーム200に楽器支持部材462を接続している回転部材464に固定されている。
【0050】
示した実施形態は、第2のアーム部240による回転運動範囲が弧を描く平面でのスイングアーム200のスイングを可能とするヒンジ構造を示しているが、ここに記載した発明概念は、例えば、ボールやヒンジジョイントに直交したソケットジョイント又は複合体を介してスイングアーム200が球面を描くようなスイングアーム200の他の運動範囲を許可する別のジョイント構造を包含してもよい。このような構成は、平衡位置を設定すると共に磁性復元力を与えるため、適切に配置された磁石対を利用するであろう。このような構成にまで拡張された発明の態様は、明確に考察されている。
【0051】
更に、ここでは磁性復元力の使用が記載されているが、他の復元力(例えば、スプリング力、弾性力又は異なる機械力の組み合わせ)や対応する構造は、本発明の範囲から逸脱することなく利用することができる。
【0052】
上で詳細に記載した可能な特性は、従来技術の記録を見ても新規で、本発明の少なくとも1つの態様の操作及び本発明の目的の達成に重要な意味を持つと考慮される。例示実施形態を記載するために本明細書で使用された語彙は、一般に定義された意味で理解されるだけでなく、すべての開示内容に適用するため、構造、材料又は作用に関して当業者が理解することができる如何なる特別な定義も含み得る。
【0053】
ここに記載された語彙又は図示構成の定義は、文字通り説明された構成の組み合わせだけでなく、実質的に同一の結果を得るために実質的に同一の方法で実質的に同一の機能を発揮するためのすべての等価な構造、材料又は作用を意味する。この意味では、2つ又はそれ以上の構成の等価置換を、記載された構成及びその種々の実施形態の如何なる1つに対して行ってもよいし、本発明の範囲から逸脱することなくクレーム中の2つ又はそれ以上の構成を1つの構成で置換してもよいと考えられる。
【0054】
当業者から見たときのクレームされた主題からの変更は、現在既知のもの又は後に改良されるものも含めて、本発明の範囲及びその種々の実施形態と等価であると明確に考察される。そのため、当業者により現在又は後に行われる明らかな置換は、ここで定義された構成の範囲に含まれると定義される。従って、この開示は、上記で特異的に図示及び記載されたもの、概念的に等価なもの、明らかに置換可能なもの、そして本発明の本質的な考え方を取り入れたものを含むと理解されるべきである。
【0055】
この記載の範囲は、添付のクレームと併せて解釈されるべきである。