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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-23
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】送気装置及び送気装置の作動方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/94 20060101AFI20220111BHJP
【FI】
A61B17/94
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019565696
(86)(22)【出願日】2018-08-02
(86)【国際出願番号】 JP2018029098
(87)【国際公開番号】W WO2019142381
(87)【国際公開日】2019-07-25
【審査請求日】2020-06-11
(31)【優先権主張番号】P 2018005661
(32)【優先日】2018-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】特許業務法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平賀 都敏
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 真也
(72)【発明者】
【氏名】山岡 弘治
(72)【発明者】
【氏名】糟谷 侑磨
(72)【発明者】
【氏名】上杉 武文
(72)【発明者】
【氏名】木村 敬太
【審査官】菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0253205(US,A1)
【文献】特開2016-185227(JP,A)
【文献】特開2005-245772(JP,A)
【文献】特開平11-178787(JP,A)
【文献】特開平05-256704(JP,A)
【文献】特開2004-159687(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/94
A61B 1/00
A61B 1/015
A61M 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内部に配置された雰囲気の温度を測定する第1の温度センサと、
前記筐体内部に配置された雰囲気の温度を測定する第2の温度センサと、
前記第1の温度センサ及び前記第2の温度センサに隣接するように配置されたパネル部と、
前記パネル部から前方に突出する突起物と、
前記第1の温度センサの近傍に設けられ、前記パネル部に配置された第1の開口部と、
前記第2の温度センサの近傍に設けられ、前記パネル部に配置された第2の開口部と、
前記第1の温度センサにより測定された第1の測定結果と、前記第2の温度センサにより測定された第2の測定結果との温度差を算出し、温度差が所定値以上あるか否かを検出し、温度差が所定値以上でないことを検出した場合、室温を正しく測定できていると判定する制御部と、
を備え、
前記第1の温度センサと前記第2の温度センサは、水平方向に所定の距離離間し、前記突起物の下側に配置されることを特徴とする送気装置。
【請求項2】
前記第1の開口部及び前記第2の開口部は、前記突起物の下側に配置されることを特徴とする請求項1に記載の送気装置。
【請求項3】
前記第1の温度センサが測定した温度と、前記第2の温度センサが測定した温度との温度差が所定値以上であることを検知した場合、送気を停止するように制御する制御部を有することを特徴とする請求項1に記載の送気装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記温度差が前記所定値以上であることを検知した場合、異常を報知することを特徴とする請求項に記載の送気装置。
【請求項5】
前記突起物は、ピンチバルブ、送気チューブコネクタ、及び、電気コネクタのいずれか1つであることを特徴とする請求項1に記載の送気装置。
【請求項6】
前記第1及び前記第2の温度センサは、リアパネルの内側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の送気装置。
【請求項7】
筐体内部に配置された雰囲気の温度を測定する第1の温度センサと、
前記筐体内部に配置された雰囲気の温度を測定する第2の温度センサと、
前記第1の温度センサ及び前記第2の温度センサに隣接するように配置されたパネル部と、
前記第1の温度センサにより測定された第1の測定結果と、前記第2の温度センサにより測定された第2の測定結果とから室温の測定を判定する制御部とを有する送気装置の作動方法であって、
前記第1の温度センサは、該第1の温度センサの近傍に設けられ、パネル部に配置された第1の開口部を介して室温を測定し、第1の測定結果を制御部に出力し、
前記第2の温度センサは、該第2の温度センサの近傍に設けられ、前記パネル部に配置された第2の開口部を介して室温を測定し、第2の測定結果を前記制御部に出力し、
前記制御部は、前記第1の温度センサにより測定された前記第1の測定結果と、前記第 2の温度センサにより測定された前記第2の測定結果との温度差を算出し、温度差が所定値以上か否かを判定し、温度差が所定値以上でないことを判定した場合、室温を正しく測定できていると判定することを特徴とする送気装置の作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体腔内に炭酸ガス等の送気ガスを供給する送気装置及び送気装置の作動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検体の内部の被写体を撮像する内視鏡、及び、内視鏡により撮像された被写体の観察画像を生成する画像処理装置等を具備する内視鏡システムが、医療分野及び工業分野等において広く用いられている。例えば、医療分野では、患者への侵襲を小さくする目的として、開腹することなく、治療処置を行う腹腔鏡下外科手術が行われている。
【0003】
腹腔鏡下外科手術では、内視鏡の視野と処置具の操作スペースを確保するために、炭酸ガス等の送気ガスを腹腔内に供給する送気装置が使用される。この送気装置は、減圧弁や流量調整弁を制御し、送気ガスを安全な圧力と流量に調整して送気チューブを介して腹腔内に供給するように構成されている(例えば、日本国特開平11-178787号公報参照)。
【0004】
通常、送気ガスは、手術室の温度(例えば25℃)と同じ温度で送気チューブに供給されるが、この温度は体温(例えば37℃)と比較する10℃程度低い温度である。そのため、手術室の温度と同じ温度の送気ガスを送気チューブを介して体腔内に供給すると、手術中の患者に負担をかけ、低体温症を誘発する可能性がある。
【0005】
そこで、送気チューブ内にヒータを格納し、送気チューブ内で送気ガスを体温近傍の一定の温度帯(例えば35~39℃)に加温し、体腔内に供給するようになっている。送気ガスを一定の温度帯に制御するために、送気チューブ内に温度センサを配置し、送気装置は、送気チューブ内の温度の測定結果を用いてヒータに流す電流値を決定する。
【0006】
このような構成では、送気チューブ内に温度センサを配置する必要があるため、送気チューブ全体のコストが上昇してしまう。また、送気チューブ内に温度センサやヒータが配置されていると、送気チューブを洗浄することができないため、送気チューブをディスポーザブルタイプにする必要がある。この場合、手技毎に新しい送気チューブが必要となり、送気チューブのコストの上昇が手技のコストの上昇に直結してしまう。
【0007】
送気チューブのコスト及び手技のコストの上昇を防ぐために、温度センサを送気チューブ内ではなく、送気装置の表面(前面)に配置することが考えられる。そして、送気装置は、送気チューブ内の送気ガスの温度ではなく、送気チューブが置かれている環境温度(室温)を測定し、この測定結果を用いてヒータに流す電流値を決定する。このように、温度センサを送気装置に組み込むことで、ディスポーザブルタイプの送気チューブのコストの上昇を抑制できるため、手技のコストも抑制することができる。
【0008】
一方、手術環境では様々な外乱により、送気装置の近傍の温度が変化する可能性がある。外乱としては、手術室に配置されたエアコンが存在する。例えば、送気装置がエアコンの真下に配置されている場合、冷房による冷たい風が装置にかかり、実際の室温より低い温度を測定することが考えられる。この場合、送気装置は、25℃の室温を20℃と誤測定し、ヒータに流す電流値を上昇させ、必要以上に加温(加熱)した送気ガス(例えば40℃)を体腔内に送気し、患者を火傷させる可能性がある。
【0009】
また、外乱としては、内視鏡の挿入部の先端面に配置されたレンズ面を洗浄するための温水(例えば40℃)が存在する。例えば、温水が気腹装置の近傍に置かれると、実際の室温より高い温度を測定することが考えられる。この場合、送気装置は、25℃の室温を40℃と誤測定し、ヒータに流す電流値を抑制し、送気ガスを加温(加熱)しないことが考えられる。この結果、送気装置は、患者の体温(例えば37℃)よりも低い、常温の送気ガス(例えば25℃)を体腔内に送気し、患者を低体温症にさせる可能性がある。
【0010】
そこで、本発明は、装置に配置した温度センサが外乱の影響によって室温を誤測定するのを防ぐことができる送気装置及び送気装置の作動方法を提供することを目的とする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様の送気装置は、筐体内部に配置された雰囲気の温度を測定する第1の温度センサと、前記筐体内部に配置された雰囲気の温度を測定する第2の温度センサと、前記第1の温度センサ及び前記第2の温度センサに隣接するように配置されたパネル部と、前記パネル部から前方に突出する突起物と、前記第1の温度センサの近傍に設けられ、前記パネル部に配置された第1の開口部と、前記第2の温度センサの近傍に設けられ、前記パネル部に配置された第2の開口部と、前記第1の温度センサにより測定された第1の測定結果と、前記第2の温度センサにより測定された第2の測定結果との温度差を算出し、温度差が所定値以上あるか否かを検出し、温度差が所定値以上でないことを検出した場合、室温を正しく測定できていると判定する制御部と、を備え、前記第1の温度センサと前記第2の温度センサは、水平方向に所定の距離離間し、前記突起物の下側に配置される。
また、本発明の一態様の送気装置の作動方法は、 筐体内部に配置された雰囲気の温度を測定する第1の温度センサと、前記筐体内部に配置された雰囲気の温度を測定する第2の温度センサと、前記第1の温度センサ及び前記第2の温度センサに隣接するように配置されたパネル部と、前記第1の温度センサにより測定された第1の測定結果と、前記第2の温度センサにより測定された第2の測定結果とから室温の測定を判定する制御部とを有する送気装置の作動方法であって、前記第1の温度センサは、該第1の温度センサの近傍に設けられ、パネル部に配置された第1の開口部を介して室温を測定し、第1の測定結果を制御部に出力し、前記第2の温度センサは、該第2の温度センサの近傍に設けられ、前記パネル部に配置された第2の開口部を介して室温を測定し、第2の測定結果を前記制御部に出力し、前記制御部は、前記第1の温度センサにより測定された前記第1の測定結果と、前記第 2の温度センサにより測定された前記第2の測定結果との温度差を算出し、温度差が所定値以上か否かを判定し、温度差が所定値以上でないことを判定した場合、室温を正しく測定できていると判定する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係わる送気装置を含む手術システムの全体構成の一例を説明する図である。
図2】送気装置の外観の一例を示す斜視図である。
図3】開口部15aの詳細な構成の一例を示す断面図である。
図4】送気装置の構成の一例を示すブロック図である。
図5】送気装置の近傍に熱源が置かれた一例を示す図である。
図6】熱源からの距離と、検知される温度との関係の一例を示す図である。
図7】送気装置の近傍に熱源が置かれた他の例を示す図である。
図8】異常状態の検知処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図9】第2の実施形態の送気装置の構成を示す図である。
図10】第3の実施形態の送気装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係わる送気装置を含む手術システムの全体構成の一例を説明する図である。図1に示すように、本実施形態の手術システムは、内視鏡7の観察下、炭酸ガス等を送気することにより拡張された患者10の腹腔内の患部を、電気メス8等の処置具を用いて処置する手術に用いられる。
【0015】
図1に示すように、患者10の腹壁には、第1のトラカール9aと、第2のトラカール9bとが穿刺されている。第1のトラカール9aは、内視鏡7を腹腔内に導くトラカールである。また、第1のトラカール9aには、後述する送気チューブ6が接続され、送気装置1から供給される、炭酸ガス等の送気ガスを腹腔内に導くように構成されている。第2のトラカール9bは、組織の切除や処置を行う電気メス8等の処置具を腹腔内に導くトラカールである。
【0016】
内視鏡7には、光源装置3とプロセッサ4とが接続されている。また、プロセッサ4には、モニタ5が接続されている。光源装置3は、半導体光源から出射された光を導光部材によって導光し、導光部材の先端に設けられた光変換部材により色や光度分布などを変換して、内視鏡7に照明光を供給する。プロセッサ4は、内視鏡7に電源電圧を供給するとともに、内視鏡7によって撮像された撮像信号に所定の映像信号処理を施し、モニタ5に映像信号を出力する。これにより、モニタ5には、内視鏡7により得られた内視鏡画像(外科画像)が表示される。
【0017】
電気メス8には、電気メス出力装置2が接続されている。電気メス出力装置2は、高周波電気エネルギーを発生させる高周波電流を電気メス8に出力する。電気メス8の先端の電極を患者10の患部組織に当接させることにより、電気メス出力装置2から出力された高周波電流を患部組織に集中的に流してジュール熱を発生させ、その熱によって患部組織の切開や出血部位の止血凝固等を行う。
【0018】
送気ガスを送気する送気装置1には、炭酸ガス(CO2ガス)が充填された図示しないボンベが接続されている。また、送気装置1には、送気チューブ6の一端が接続されている。送気チューブ6の他端は、患者10の腹壁に穿刺された第1のトラカール9aに接続されている。すなわち、送気装置1は、送気チューブ6と第1のトラカール9aとを介して、患者10の腹腔内に炭酸ガス等の送気ガスを送気できるように構成されている。
【0019】
上述した送気装置1、電気メス出力装置2、光源装置3、プロセッサ4及びモニタ5は、例えば、移動可能なトロリー装置に搭載されている。また、手術システムの構成は、図1の構成に限定されるものではなく、例えば、循環排煙装置を有する構成であってもよい。循環排煙装置は、電気メス8の使用により発生した煙等を含む炭酸ガスを患者10の腹腔内から吸引し、吸引した炭酸ガスから煙やミストを除去した後に、炭酸ガスを腹腔内に戻すように構成されている。
【0020】
次に、図2から図4を用いて、本実施形態の送気装置1の構成について説明する。
【0021】
図2は、送気装置の外観の一例を示す斜視図であり、図3は、開口部15aの詳細な構成の一例を示す断面図であり、図4は、送気装置の構成の一例を示すブロック図である。
【0022】
図2に示すように、送気装置1の前面には、フロントパネルとしてのパネル部11と、表示部12とを有して構成されている。パネル部11は、送気装置1の内部(筐体内部)に配置された雰囲気の温度を測定する後述する第1及び第2の温度センサ21a及び21bに隣接するように配置されている。また、パネル部11には、ピンチバルブ13と、送気用コネクタ受け部14と、2つの開口部15a及び15bとが設けられている。
【0023】
2つの開口部15a及び15bは、水平方向に所定の距離離間し、送気用コネクタ受け部14の下側に設けられている。なお、送気装置1は、2つの開口部15a及び15b及び2つの温度センサ21a及び21bを備えて構成されているが、これに限定されることなく、3つ以上の開口部及び3つ以上の温度センサを備える構成であってもよい。
【0024】
また、送気用コネクタ受け部14には、後述する送気チューブ6の基端部に設けられた送気チューブコネクタ6a(図4参照)が接続される。なお、図2において、送気チューブ6は、図示を省略している。
【0025】
開口部15a及び15bの周りには、開口部15a及び15bと、後述する第1及び第2の温度センサ21a及び21bとに液体がかかり難くするために、開口部15a及び15bの周りに突起形状の傘部16a及び16bが設けられている。また、開口部15a及び16bの下面部から周囲に配置された傘部16a及び16bに向けて、スリット17a及び17bが設けられている。スリット17a及び17bは、開口部15a及び15bに液膜が生じた場合、液膜を外部に導くためのスリットである。
【0026】
図3に示すように、開口部15aは、パネル部11に対して、斜め上方に所定の角度を有して設けられている。さらに、開口部15aは、上側(温度センサ21aが設けられている基端側)から下側(パネル部11が設けられている先端側)に向かって末広がりとなるテーパー形状を有している。なお、図3では、開口部15aを例に説明するが、開口部15bも同様の構成となっている。
【0027】
開口部(第1の開口部)15aの基端側には、第1の温度センサ21aが設けられている。また、開口部(第2の開口部)15bの基端側には、図4に示すように、第2の温度センサ21bが設けられている。なお、図4では、説明を簡単にするために、垂直方向に開口部15a及び15bが配置されているが、図2に示すように、開口部15a及び15bは、水平方向に配置されているものとする。
【0028】
第1の温度センサ21a及び第2の温度センサ21bは、開口部15a及び開口部15bを介して大気と接し、室温を測定するように構成されている。第1の温度センサ21a及び第2の温度センサ21bによって測定された測定結果は、送気装置1に設けられた後述する制御部22に出力される。
【0029】
このように、第1の温度センサ21a及び第2の温度センサ21bは、それぞれ開口部15a及び15bの基端側に設けられている。上述したように、開口部15a及び15bは、水平方向に所定の距離離間し、送気用コネクタ受け部14の下側に設けられているため、第1の温度センサ21a及び21bも、水平方向に所定の距離離間し、送気用コネクタ受け部14の下側に配置されることになる。
【0030】
図4に示すように、送気装置1は、上述したパネル部11、送気用コネクタ受け部14、開口部15a、15b、及び、第1の温度センサ21a、第2の温度センサ21b等に加え、制御部22を有して構成されている。
【0031】
送気チューブ6の基端部には、送気チューブコネクタ6aが設けられている。送気チューブコネクタ6aは、送気装置1の送気用コネクタ受け部14に接続される。
【0032】
また、送気チューブ6の内部の先端側には、送気ガスを加温するためのヒータ6bが配置されている。ヒータ6bは、送気チューブ6に挿通されたケーブル6cに接続されている。ケーブル6cは、送気装置1に送気チューブ6が接続された際に、制御部22に接続されるように構成されている。
【0033】
第1の温度センサ21aは、開口部15aを介して室温を測定し、第1の測定結果を制御部22に出力する。また、第2の温度センサ21bは、開口部15bを介して室温を測定し、第2の測定結果を制御部22に出力する。
【0034】
制御部22は、第1の温度センサ21aにより測定された第1の測定結果と、第2の温度センサ21bにより測定された第2の測定結果との温度差を算出し、温度差が所定値以上あるか否かを検出する。この所定値は、第1の温度センサ21a及び第2の温度センサ21bのそれぞれの誤差(例えば、製造時のバラツキや測定の誤差)を考慮し、例えば1℃とする。
【0035】
制御部22は、温度差が所定値以上でないことを検出した場合、室温を正しく測定できていると判定する。そして、制御部22は、第1及び第2の温度センサ21a及び21bによって測定された第1及び第2の測定結果(室温)に基づいて、ヒータ6bの加熱量、すなわち、ヒータ6bに流す電流値を調整する。具体的には、制御部22は、第1及び第2の測定結果の平均値に基づいて、ヒータ6bに流す電流値を調整する。制御部22は、送気チューブ6内のヒータ6bを加熱することで、送気チューブ6内を流れる送気ガスを加温し、患者10の腹腔内に患者10の体温と略同じ温度の送気ガスを供給するように構成されている。
【0036】
一方、制御部22は、温度差が所定値以上であることを検出した場合、室温を正しく測定できていないと判定する。そして、制御部22は、室温を正しく測定できていない、すなわち、異常があったことを検知した場合、送気ガスの加温を停止し、患者10の腹腔内への送気ガスの供給を停止する。
【0037】
また、制御部22は、異常があったことを検知した場合、異常があったことをユーザに報知する。制御部22は、例えば、表示部12に異常を検知したことを表示することで、ユーザに異常を報知する。なお、異常の報知は、表示部12に異常を検知したことを表示することに限定されず、例えば、図示しないLED等を点灯させる、あるいは、図示しないスピーカから警告音を発声させるようにしてもよい。
【0038】
図5は、送気装置の近傍に熱源が置かれた一例を示す図であり、図6は、熱源からの距離と、検知される温度との関係の一例を示す図である。
【0039】
図5に示すように、送気装置1の近傍には、外乱となる熱源30が置かれることがある。熱源30は、例えば、内視鏡7の挿入部の先端面に設けられたレンズ面を洗浄するための温水等である。
【0040】
パネル部11に設けられた送気用コネクタ受け部14には、送気チューブコネクタ6aが接続されて突起物を構成する。パネル部11上に突起物が存在する場合、熱源30は、突起物を避けて置かれるため、突起物の左側または右側に置かれることになる。なお、図5の例では、熱源30は、図5に向かって突起物の右側に置かれている。
【0041】
この場合、熱源30と、開口部15aの基端側に配置された第1の温度センサ21aとの距離Aは、例えば50mm(>35mm)になる。
【0042】
図6に示すように、熱源30からの距離が35mm以上の場合、測定される温度は略一定であり、熱源30の影響を受けない。そのため、第1の温度センサ21aは、熱源30の影響を受けずに室温を正しく測定することができる。
【0043】
また、第1の温度センサ21aと第2の温度センサ21bとの距離Bは、例えば28mm(>25mm)になっている。図6に示すように、熱源30からの距離が10mmと35mmのように、2つの測定地点が25mm以上離れている場合、熱源30の影響を受けて、測定され得る温度は2℃以上大きくなる。
【0044】
第2の温度センサ21bは、第1の温度センサ21aよりも25mm以上離れて配置されているため、熱源30の影響を受けて、第1の温度センサ21aの測定結果よりも2℃以上高い温度を測定することになる。そのため、第2の温度センサ21bは、熱源30の影響により室温を正確に測定できないことになる。
【0045】
この結果、制御部22は、第1の温度センサ21aの第1の測定結果と、第2の温度センサ21bの第2の測定結果との温度差が所定値以上であることを認識し、熱源30の影響により室温を正確に測定できない異常状態を検知することができる。
【0046】
なお、図5の例では、熱源30が突起物の右側に置かれる例について説明したが、これに限定されることはなく、例えば、突起物の正面に置かれてもよい。図7は、送気装置の近傍に熱源が置かれた他の例を示す図である。
【0047】
図7に示すように、突起物である送気チューブコネクタ6aの突起長は、熱源30と、温度測定用の開口部15a及び15bとの距離Cが所定の距離(35mm)以上となる長さを有している。そのため、突起物の正面、より具体的には、開口部15a及び15bの正面に熱源30が置かれた場合でも、開口部15a及び15bは、熱源30からの距離が35mm以上となる。この結果、第1の温度センサ21a及び第2の温度センサ21bは、熱源30の影響を受けずに室温を正しく測定することができる。
【0048】
図8は、異常状態の検知処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0049】
制御部22は、第1の温度センサ21aによって測定された第1の測定結果を取得し(S1)、第2の温度センサ21bによって測定された第2の測定結果を取得する(S2)。次に、制御部22は、第1の測定結果と第2の測定結果の温度差を算出し(S3)、温度差が所定値以上か否かを判定する(S4)。ここでは、制御部22は、温度差が1℃以上か否かを判定する。
【0050】
制御部22は、温度差が所定値以上でないと判定した場合(S4:NO)、第1の測定結果及び第2の測定結果に応じてヒータ6bを加熱し(S5)、S1の処理に戻る。一方、制御部22は、温度差が所定値以上であると判定した場合(S4:YES)、ヒータ6bの加熱及び送気を停止する(S6)。最後に、制御部22は、異常を報知し(S7)、処理を終了する。制御部22は、例えば、表示部12に異常を検知したことを表示することで、ユーザに異常を報知する。
【0051】
以上のように、送気装置1は、前面のパネル部11の大気に接する2つの開口部15a及び15bを設け、開口部15a及び15bの基端側に2つの温度センサ(第1及び第2の温度センサ21a及び21b)を設けるようにした。これにより、送気装置1は、エアコン等の外乱の影響によって室温を誤測定しないようにしている。
【0052】
また、送気装置1は、パネル部11の突起物の下側に、水平方向に所定の距離離間し、第1の温度センサ21a及び第2の温度センサ21bを配置するようにした。これにより、送気装置1は、突起物を避けて熱源30が置かれた場合、第1の温度センサ21aが測定する温度と、第2の温度センサ21bが測定する温度とに温度差が生じ、熱源30等の外乱の影響による異常状態を検知することができる。
【0053】
よって、本実施形態の送気装置1によれば、装置に配置した温度センサが外乱の影響によって室温を誤測定するのを防ぐことができる。
【0054】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
【0055】
図9は、第2の実施形態の送気装置の構成を示す図である。なお、図9において、図2と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0056】
上述した第1の実施形態では、パネル部11上に設けられた突起物として送気チューブコネクタ6aを一例をとして説明したが、これに限定されるものではない。
【0057】
図9に示すように、第2の実施形態の送気装置1aは、パネル部11上に設けられたピンチバルブ13の下側に、水平方向に所定の距離離間した開口部15a及び15bを備える。本実施形態では、パネル部11上の設けられたピンチバルブ13が突起物を構成する。
【0058】
開口部15a及び15bの基端側には、第1の実施形態と同様に、それぞれ第1の温度センサ21a及び第2の温度センサ21bが配置されている。その他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0059】
以上により、第2の実施形態の送気装置1aは、第1の実施形態と同様に、装置に配置した温度センサが外乱の影響によって室温を誤測定するのを防ぐことができる。
【0060】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。
【0061】
図10は、第3の実施形態の送気装置の構成を示す図である。
【0062】
図10に示すように、第3の実施形態の送気装置1bの後面には、リアパネル40が設けられている。リアパネル40には、電源コネクタ41、複数の電気コネクタ42、43及び44が配置されている。
【0063】
本実施形態の送気装置1bは、リアパネル40上に設けられた電気コネクタ42及び43の下側に、水平方向に所定の距離離間した開口部15a及び15bを備える。本実施形態では、電気コネクタ42及び43が突起物を構成する。
【0064】
開口部15a及び15bの基端側には、第1の実施形態と同様に、それぞれ第1の温度センサ21a及び第2の温度センサ21bが配置されている。その他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0065】
以上により、第3の実施形態の送気装置1bは、第1の実施形態と同様に、装置に配置した温度センサが外乱の影響によって室温を誤測定するのを防ぐことができる。
【0066】
なお、開口部15a及び15bの配置は、図10の配置に限定されるものではない。送気装置1bは、例えば、開口部15a及び15bを垂直方向に所定の距離、離間して配置してよい。すなわち、送気装置1bは、電気コネクタ44の下側に開口部15aを配置し、電気コネクタ43の下側に開口部15bを配置する構成であってもよい。
【0067】
また、送気装置1bは、例えば、開口部15a及び15bを斜め方向に所定の距離、離間して配置してよい。すなわち、送気装置1bは、電気コネクタ42の下側に開口部15aを配置し、電気コネクタ44の下側に開口部15bを配置する構成であってもよい。
【0068】
なお、本明細書におけるフローチャート中の各ステップは、その性質に反しない限り、実行順序を変更し、複数同時に実行し、あるいは実行毎に異なった順序で実行してもよい。
【0069】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変えない範囲において、種々の変更、改変等が可能である。
【0070】
本出願は、2018年1月17日に日本国に出願された特願2018-5661号を優先権主張の基礎として出願するものであり、上記の開示内容は、本願明細書、請求の範囲に引用されるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10