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  • 特許-半導体記憶装置 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-23
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】半導体記憶装置
(51)【国際特許分類】
   G11C 5/14 20060101AFI20220111BHJP
   G11C 16/30 20060101ALI20220111BHJP
   G06F 12/00 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
G11C5/14 370
G11C5/14 400
G11C5/14 550
G11C16/30
G06F12/00 550E
G06F12/00 597U
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020035985
(22)【出願日】2020-03-03
(65)【公開番号】P2021140841
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2020-03-03
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511062254
【氏名又は名称】ウィンボンド エレクトロニクス コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(72)【発明者】
【氏名】須藤 直昭
【審査官】後藤 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-055419(JP,A)
【文献】特開2007-164880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11C 5/14
G11C 16/30
G06F 12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラッシュメモリの動作方法であって、
電力供給源から内部回路への電力供給を遮断するディープパワーダウンモードに移行するステップと、
読出し、プログラムまたは消去を含む標準コマンドが入力されたとき、当該標準コマンドのデコード結果に応答して前記ディープパワーダウンモードを解除するステップと、
前記ディープパワーダウンモードの解除後に前記標準コマンドを実行するステップとを含み、
前記解除するステップは、前記電力供給源から前記内部回路の少なくとも第1の回路部分と第2の回路部分のそれぞれに別々に電力を供給し、前記解除するステップはさらに、前記第1の回路部分に当該第1の回路部分を動作可能にするための第1のイネーブル信号を供給し、当該第1のイネーブル信号の供給後に前記第2の回路部分に当該第2の回路部分を動作可能にするための第2のイネーブル信号を供給する、動作方法。
【請求項2】
前記実行するステップは、第1の処理シーケンスにおいて前記第1の回路部分を用い、前記第1の処理シーケンス後の第2の処理シーケンスにおいて前記第2の回路部分を用いる、請求項に記載の動作方法。
【請求項3】
前記第1のイネーブル信号を供給するまでの第1の復帰時間および前記第2のイネーブル信号を供給するまでの第2の復帰時間は、前記内部回路の全体を動作可能な状態にするための復帰時間よりも短い、請求項1または2に記載の動作方法。
【請求項4】
前記第1の回路部分の負荷容量は、前記第2の回路部分の負荷容量よりも小さい、請求項1ないしいずれか1つに記載の動作方法。
【請求項5】
前記第1の回路部分は、チャージポンプ回路を含み、前記第2の回路部分は、メモリセルアレイの周辺回路を含み、
前記チャージポンプが昇圧した電圧を生成するために要する時間は、前記第2の復帰時間と前記第1の復帰時間の差分よりも短い、請求項に記載の動作方法。
【請求項6】
前記ディープパワーダウンモードは、スタンバイモードが一定時間継続したとき、前記スタンバイモードから移行する、請求項1に記載の動作方法。
【請求項7】
メモリセルアレイと、
少なくとも第1の回路部分および第2の回路部分を含む内部回路と、
電力供給源から前記第1および第2の回路部分への電力供給を遮断するディープパワーダウンモードに移行する移行手段と、
読出し、プログラムまたは消去を含む標準コマンドが入力されたとき、当該標準コマンドのデコード結果に応答して前記ディープパワーダウンモードを解除する解除手段と、
前記ディープパワーダウンモードの解除後に前記標準コマンドを実行する実行手段とを含み、
前記解除手段は、前記電力供給源から前記第1の回路部分へ電力を供給する第1の電流経路と、前記電力供給源から前記第2の回路部分へ電力を供給する第2の電流経路とを含み、前記解除手段は、前記第1の回路部分に当該第1の回路部分を動作可能にするための第1のイネーブル信号を供給する第1の供給手段と、当該第1のイネーブル信号の供給後に前記第2の回路部分に当該第2の回路を動作可能にするための第2のイネーブル信号を供給する第2の供給手段とを含む、半導体記憶装置。
【請求項8】
前記実行手段は、第1の処理シーケンスにおいて前記第1の回路部分を用い、前記第1の処理シーケンス後の第2の処理シーケンスにおいて前記第2の回路部分を用いる、請求項に記載の半導体記憶装置。
【請求項9】
前記第1のイネーブル信号を供給するまでの第1の復帰時間および第2のイネーブル信号を供給するまでの第2の復帰時間は、前記第1および第2の回路部分を動作可能な状態にするための復帰時間よりも短い、請求項に記載の半導体記憶装置。
【請求項10】
前記第1の回路部分の負荷容量は、前記第2の回路部分の負荷容量よりも小さい、請求項7ないし9いずれか1つに記載の半導体記憶装置。
【請求項11】
前記第1の回路部分は、チャージポンプ回路を含み、前記第2の回路部分は、メモリセルアレイの周辺回路を含み、
前記チャージポンプが昇圧した電圧を生成するために要する時間は、前記第2の復帰時間と前記第1の復帰時間の差分よりも短い、請求項に記載の半導体記憶装置。
【請求項12】
前記解除手段は、前記第1および第2の電流経路に第1および第2のトランジスタとを含み、前記解除手段は、前記第1および第2のトランジスタの導通または非導通を制御する、請求項に記載の半導体記憶装置。
【請求項13】
前記半導体記憶装置は、フラッシュメモリである、請求項ないし12いずれか1つに記載の半導体記憶装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラッシュメモリ等の半導体記憶装置に関し、特にスタンバイモードまたはディープパワーダウンモードの動作に関する。
【背景技術】
【0002】
NAND型フラッシュメモリは、ページ単位で読出しやプログラムを行い、またブロック単位で消去を行うことが可能である。特許文献1に示すフラッシュメモリは、スタンバイモードとノーマル動作モードで異なる電源電圧をページバッファ/センス回路に供給することでスタンバイモードの消費電力を減少させる技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-252748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フラッシュメモリでは、ユーザーからのコマンドに応答して読出し、プログラム、消去等を行うアクティブモードと、ユーザーからのコマンドを受け付け可能なスタンバイモードとがある。スタンバイモードでは、消費電力が一定以下となるように内部回路の動作が制限されるが、ユーザーからコマンドが入力された場合には、それに即座に応答しなければならない。このため、スタンバイモードと言えども、ロジック回路やレジスタ等の揮発性回路にはオフリーク電流が発生し、オフリーク電流はデバイスサイズのシュリンクに伴い増加し、また内部電源電圧を使用する場合は内部電源電圧検出回路を動作させなければならず、ある程度の電力が消費されてしまう。つまり、スタンバイモードでの消費電流を削減することが難しくなっている。
【0005】
スタンバイモードでの消費電力をさらに削減するため、フラッシュメモリによってはディープパワーダウンモード(以下、DPDモードという)が搭載されているものがある。DPDモードでは、スタンバイモードのための一部のアクティブな内部回路への内部供給電源をカットオフし、オフリーク電流を削減する。DPDモードは、例えば、DPD開始コマンドにより当該モードに突入し、DPD解除コマンドにより当該モードから復帰する。DPDモードからの復帰は、カットオフした回路を正常に動作させるために一定の時間を要するが、その代わりに、消費電力を大幅に低減できるメリットがある。
【0006】
図1Aに、SPI機能を搭載したNAND型フラッシュメモリのDPDモードへ移行するときの動作波形の一例を示す。スタンバイモード時、チップセレクト信号/CSをローレベルにすることでフラッシュメモリが選択され、その間にクロック信号に同期してDPDDPDコマンド(B9h)がデータ入力端子DIから入力される。フラッシュメモリは、DPDコマンドの入力から一定期間tDPが経過した時刻TDPDで、DPDモードに移行し、特定の内部回路への内部供給電圧を遮断する。時刻TDPDの前の期間では、スタンバイモードの電流が消費され、時刻TDPDの後の期間では、DPDモードの電流が消費される。
【0007】
また、図1Bに、DPDモードから復帰するときの動作波形の一例を示す。スタンバイモード時、チップセレクト信号/CSをローレベルにすることでフラッシュメモリが選択され、その間にクロック信号に同期してDPSモードを解除するDPD解除コマンド(ABh)がデータ入力端子DIから入力される。フラッシュメモリは、DPD解除コマンドの入力からtRESの期間中にカットオフした内部回路に電力を供給し、時刻TSTで内部回路が正常な動作を行える状態に復帰する。時刻TSTの前では、DPDモードの電流が消費され、時刻TSTの後では、スタンバイモードの電流が消費される。
【0008】
図2は、DPDモードをサポートするNAND型フラッシュメモリの内部ブロック図である。フラッシュメモリ10は、DPDコントローラ20、メモリセルアレイ30、行デコーダ40、ページバッファ/センス回路50、周辺回路60、高電圧回路70等を含む。フラッシュメモリ10には、外部電源電圧(例えば、3.3V)VCCが供給され、DPDコントローラ20は、外部電源電圧VCCを直接用いて動作する。外部電源電圧VCCと内部回路との間には、PMOSトランジスタPが接続され、トランジスタPのゲートには、DPDイネーブル信号DPDENが印加される。アクティブモードおよびモードスタンバイモードのとき、DPDコントローラ10は、LレベルのDPDイネーブル信号DPDENを生成し、トランジスタPを導通させる。これにより、各内部回路には電圧供給ノードINTVDDを介して内部電圧VDDが供給される。DPDモードのとき、DPDコントローラ10は、HレベルのDPDイネーブル信号DPDENを生成、トランジスタPを非導通にする。これにより、外部電源電圧VCCの供給がカットオフされ、内部回路の動作が停止される。
【0009】
DPDモードを解除する場合、ユーザーは、図1に示したように、外部からDPD解除コマンド(ABh)を入力する。DPDコントローラ10は、DPD解除コマンドの入力に応答して、DPDイネーブ信号DPDENをLレベルに遷移し、トランジスタPを導通させ、外部電源電圧VCCから内部回路への電力供給を開始させる。これにより、内部回路は、期間tRES後に動作可能な状態に復帰する。
【0010】
このように従来のフラッシュメモリでは、DPDモードを使用するには、ユーザーは、DPDコマンドだけでなく、DPD解除コマンドを入力しなければならず、DPDコマンド及びDPD解除コマンドをサポートしていないフラッシュメモリコントローラーではDPDモードを使用することができない。さらに、DPDモードを解除して外部電源電圧VCCからの電力を電圧供給ノードINTVDDへ供給するとき、内部回路の負荷容量が大きいと、電圧供給ノードINTVDDが、内部回路が動作可能な電圧に到達するまでの時間tRESが長くなってしまうという。
【0011】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、ディープパワーダウンモードを解除するための専用のコマンドを必要とすることなくディープパワーダウンモードからの復帰時間を短縮することができる半導体記憶装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るフラッシュメモリの動作方法は、電力供給源から内部回路への電力供給を遮断するディープパワーダウンモードに移行するステップと、読出し、プログラムまたは消去を含む標準コマンドが入力されたとき、前記ディープパワーダウンモードを解除するステップと、前記ディープパワーダウンモードの解除後に前記標準コマンドを実行するステップとを含み、前記解除するステップは、前記電力供給源から前記内部回路の少なくとも第1の回路部分と第2の回路部分のそれぞれに別々に電力を供給する。
【0013】
ある実施態様では、前記解除するステップはさらに、前記第1の回路部分に当該第1の回路部分を動作可能にするための第1のイネーブル信号を供給し、当該第1のイネーブル信号の供給後に前記第2の回路部分に当該第2の回路部分を動作可能にするための第2のイネーブル信号を供給する。ある実施態様では、前記実行するステップは、第1の処理シーケンスにおいて前記第1の回路部分を用い、前記第1の処理シーケンス後の第2の処理シーケンスにおいて前記第2の回路部分を用いる。ある実施態様では、前記第1のイネーブル信号を供給するまでの第1の復帰時間および前記第2のイネーブル信号を供給するまでの第2の復帰時間は、前記内部回路の全体を動作可能な状態にするための復帰時間よりも短い。ある実施態様では、前記第1の回路部分の負荷容量は、前記第2の回路部分の負荷容量よりも小さい。ある実施態様では、前記第1の回路部分は、チャージポンプ回路を含み、前記第2の回路部分は、メモリセルアレイの周辺回路を含み、前記チャージポンプが昇圧した電圧を生成するために要する時間は、前記第2の復帰時間と前記第1の復帰時間の差分よりも短い。ある実施態様では、前記ディープパワーダウンモードは、スタンバイモードが一定時間継続したとき、前記スタンバイモードから移行する。
【0014】
本発明に係る半導体記憶装置は、メモリセルアレイと、少なくとも第1の回路部分および第2の回路部分を含む内部回路と、電力供給源から前記第1および第2の回路部分への電力供給を遮断するディープパワーダウンモードに移行する移行手段と、読出し、プログラムまたは消去を含む標準コマンドが入力されたとき、前記ディープパワーダウンモードを解除する解除手段と、前記ディープパワーダウンモードの解除後に前記標準コマンドを実行する実行手段とを含み、前記解除手段は、前記電力供給源から前記第1の回路部分へ電力を供給する第1の電流経路と、前記電力供給源から前記第2の回路部分へ電力を供給する第2の電流経路とを含む。
【0015】
ある実施態様では、前記解除手段は、前記第1の回路部分に当該第1の回路部分を動作可能にするための第1のイネーブル信号を供給する第1の供給手段と、当該第1のイネーブル信号の供給後に前記第2の回路部分に当該第2の回路を動作可能にするための第2のイネーブル信号を供給する第2の供給手段とを含む。ある実施態様では、前記実行手段は、第1の処理シーケンスにおいて前記第1の回路部分を用い、前記第1の処理シーケンス後の第2の処理シーケンスにおいて前記第2の回路部分を用いる。ある実施態様では、前記第1のイネーブル信号を供給するまでの第1の復帰時間および第2のイネーブル信号を供給するまでの第2の復帰時間は、前記第1および第2の回路部分を動作可能な状態にするための復帰時間よりも短い。ある実施態様では、前記第1の回路部分の負荷容量は、前記第2の回路部分の負荷容量よりも小さい。ある実施態様では、前記第1の回路部分は、チャージポンプ回路を含み、前記第2の回路部分は、メモリセルアレイの周辺回路を含み、前記チャージポンプが昇圧した電圧を生成するために要する時間は、前記第2の復帰時間と前記第1の復帰時間の差分よりも短い。ある実施態様では、前記解除手段は、前記第1および第2の電流経路に第1および第2のトランジスタとを含み、前記解除手段は、前記第1および第2のトランジスタの導通または非導通を制御する。ある実施態様では、前記半導体記憶装置は、フラッシュメモリである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ディープパワーダウンモードを解除するための専用のコマンドを必要とすることなく標準コマンドの入力に応答してディープパワーダウンモードを解除することができる。さらに、ディープパワーダウンモードを解除するにあたって、電力供給源から第1の回路部分と第2の回路部分に別々に電力を供給するようにしたので、第1の回路部分と第2の回路部分に共通に電力を供給する場合と比較して、第1の回路部分または第2の回路部分を動作可能な状態にする時間を短くすることができ、結果的にディープパワーダウンモードからの復帰時間の最小化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A】従来のフラッシュメモリのDPDモードへ移行するときの動作波形の一例を示す図である。
図1B】従来のフラッシュメモリのDPDモードを解除するときの動作波形の一例を示す図である。
図2】従来のフラッシュメモリの内部構成を示す図である。
図3】本発明の実施例に係るフラッシュメモリの内部構成を示す図である。
図4】本発明の実施例に係るDPDモードを解除するときの各部の動作波形を示す図である。を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の半導体記憶装置は、特に限定をされないが、例えば、NAND型やNOR型のフラッシュメモリ等において実施される。
【実施例
【0019】
次に、本発明の実施例について図面を参照して詳細に説明する。図3は、本発明の実施例に係るNAND型フラッシュメモリの概略内部構成を示す図である。フラッシュメモリ100は、標準コマンドを受け取る標準コマンドI/F(インターフェイス)回路110、DPDモードへの移行およびDPDモードの解除等を制御するDPDコントローラ120、メモリセルアレイ130、行デコーダ140、ページバッファ/センス回路150、周辺回路160、高電圧回路170、チャージポンプ回路180等の内部回路を含んで構成される。
【0020】
本実施例のフラッシュメモリ100は、複数の電力消費モードで動作可能である。アクティブモードは、消費電力の制約なしにフルスペックで標準コマンド(例えば、読出し、プログラム、消去)等の動作を実行する。スタンバイモードは、アクティブモードでないとき、決められた消費電力の要求に従い内部回路を動作させつつ標準コマンド等の入力への応答できるように動作を実行する。スタンバイモードでは、例えば、高電圧回路のチャージポンプを停止したり、内部供給電圧を低下させたりする。DPDモードは、スタンバイモードの消費電力をさらに低減するためスタンバイモード時に特定の回路への電力供給を遮断する。
【0021】
標準コマンドI/F回路110およびDPDコントローラ120は、外部電源電圧VCC(例えば、3.3V)を直接用いて動作され、つまり、スタンバイモードおよびDPDモード時に動作可能である。標準コマンドI/F回路110は、フラッシュメモリの標準動作のために予め用意された標準コマンドを外部から受け取るためのインターフェイス回路である。標準コマンドは、例えば、読出し、プログラム、消去等のためのコマンドである。標準コマンドI/F回路110は、入力された標準コマンドをデコードするためのCMOSロジックを含み、そのデコード結果DECは、DPDコントローラ120および周辺回路160(標準コマンドの動作を制御するためのコントローラまたはステートマシン等を含む)に提供される。
【0022】
DPDコントローラ120は、スタンバイモードからDPDモードへの移行およびDPDモードの解除を制御する。外部電源電圧VCCと電圧供給ノードINTVDDとの間の第1の電流経路には、PMOSトランジスタP1が接続され、外部電源電圧VCCと電圧供給ノードINTVDDCPとの間の第2の電流経路には、PMOSトランジスタP2が接続される。電圧供給ノードINTVDDには、行デコーダ140、ページバッファ-/センス回路150、周辺回路160、高電圧回路170が接続され、電圧供給ノードINTVDDCPには、チャージポンプ回路180が接続される。
【0023】
トランジスタP1、P2のゲートには、DPDコントローラ120からのDPDイネーブル信号DPDENが共通に印加される。DPDコントローラ120は、アクティブモードおよびスタンバイモードのとき、LレベルのDPDイネーブル信号DPDENを生成し、トランジスタP1、P2を導通させ、これにより、外部電源電圧VCCから第1の電流経路を介して電圧供給ノードINTVDDに電力が供給され、また第2の電流経路を介して電圧供給ノードINTVDDCPに電力が供給される。また、DPDコントローラ120は、DPDモードのとき、DPDイネーブル信号DPDENをHレベルに遷移させ、第1および第2の電流経路のトランジスタP1、P2を非導通にし、電圧供給ノードINTVDD、INTVDDCPへの外部電源電圧VCCからの電力供給を遮断する。
【0024】
スタンバイモードからDPDモードへの移行の方法は、特に限定されないが、ある態様では、DPDコントローラ120は、ユーザーからのDPDモードへの移行のためのコマンドの入力なしに、周辺回路160(フラッシュメモリの動作を制御するコントローラ等を含む)からの信号に応答して自動的にDPDモードに移行する。例えば、周辺回路160からスタンバイモードへの移行を表す信号がDPDコントローラ120へ提供されると、DPDコントローラ120は、スタンバイモードへの移行を表す時点から時間を計測し、スタンバイモードの継続時間が一定時間を超えるとDPDモードに移行し、DPDイネーブル信号DPDENをHレベルに遷移し、外部電源電圧VCCからの電力供給を遮断する。また、別の態様では、DPDコントローラ120は、ユーザーからのDPDモードへの移行のためのコマンドの入力に応答してDPDモードに移行させるようにしてもよい。
【0025】
DPDモードを解除する方法は、従来のフラッシュメモリでは、DPDモードを解除するための専用のコマンドを外部から入力する必要があったが、本実施例では、そのような専用コマンドを入力することなくDPDモードを自動で解除する機能を備える。DPDコントローラ120は、DPDモード中に、標準コマンドI/F回路110が標準コマンドを入力すると、この標準コマンドの入力に応答してDPDモードを解除する。入力された標準コマンドは、DPDモードからの復帰に要する時間経過後にシームレスに実行される。
【0026】
DPDコントローラ120はさらに、DPDモードを解除したとき、すなわち外部電源電圧VCCから第1および第2の電流経路を介して電圧供給ノードINTVDD、INTVDDCPのそれぞれに個別に電力を供給したとき、これに引き続きチャージポンプ回路180をイネーブルするためのポンプイネーブル信号PUMPENおよび周辺回路160のコントローラに含まれるCPUをイネーブルするためのCPUイネーブル信号CPUENをそれぞれ生成する。ポンプイネーブル信号PUMPENは、チャージポンプ回路180に供給され、CPUイネーブル信号CPUENは、周辺回路160に供給される。これらの動作の詳細は後述するが、DPDコントローラ120は、DPDモードが解除された時点から電圧供給ノードINTVDDCPがターゲット電圧に到達したときに、ポンプイネーブル信号PUMPENをHレベルに遷移させ、チャージポンプ回路180を動作可能にし、次いで、電圧供給ノードINTVDDがターゲット電圧に到達したときに、CPUイネーブル信号CPUENをHレベルに遷移させ、周辺回路160のコントローラを動作可能にする。
【0027】
本実施例のDPDコントローラ120は、ハードウエアおよび/またはソフトウェアを用いて構成することができ、例えば、マイクロコンピュータ、ステートマシン、ロジック等を含むことができる。
【0028】
メモリセルアレイ130は、複数のブロックを含み、各ブロック内に複数のNANDストリングを含んで構成される。NANDストリングは、基板上に2次元的に形成されるものであっても良いし、基板の主面から垂直方向に3次元的に形成されるものであってもよい。また、メモリセルは、2値データまたは多値データを記憶することが可能である。
【0029】
周辺回路160は、例えば、標準コマンドI/F回路110で受け取られた標準コマンド等に基づきフラッシュメモリ100の動作を制御するコントローラまたはステートマシンや、データの誤り検出・訂正を行うECC回路、列選択回路等を含む。高電圧回路170は、チャージポンプ回路180で昇圧された電圧を受け取り、読出し、プログラム、消去動作において必要な高電圧(例えば、プログラムパルス電圧、消去パルス電圧、読出しパス電圧等)を生成する。また、フラッシュメモリ100は、SPI(Serial Peripheral Interface)を搭載することができ、SPIでは、制御信号(アドレスラッチイネーブル、コマンドラッチイネーブル等)の代わりにシリアルクロック信号に同期して、入力されたコマンド、アドレス、データを識別する。
【0030】
次に、本実施例に係るフラッシュメモリのDPDモードの解除動作について説明する。図4は、DPDモードを解除するときの各部の動作波形を示す図である。フラッシュメモリ100がDPDモードにあるとき、DPDイネーブル信号DPDENはHレベルであり、外部電源電圧VCCからの電力供給は遮断され、電圧供給ノードINTVDD、INTVDDCPはGNDレベルである。DPDモード中、標準コマンドI/F回路110およびDPDコントローラ120には、外部電源電圧VCCからの電力により動作可能な状態にある。
【0031】
標準コマンドI/F回路110に標準コマンドが入力されると、標準コマンドI/F回路110は、標準コマンドのデコード結果DECをDPDコントローラ120および周辺回路160へ提供する。但し、この時点で周辺回路160は動作可能な状態にはない。
【0032】
DPDコントローラ120は、DPDモード中に、標準コマンドI/Fコマンド110からデコード結果DECを受け取ると、DPDモードを自動的に解除する。すなわち、DPDコントローラ120は、時刻t1で、DPDイネーブル信号DPDENをHレベルからLレベルに遷移し、トランジスタP1、P2を導通状態にする。これにより、電圧供給ノードINTVDDには、外部電源電圧VCCから第1の電流経路を介して電力が供給され、電圧供給ノードINTVDDCPには、外部電源電圧VCCから第2の電流経路を介して電力が供給される。つまり、電圧供給ノードINTVDDと電圧供給ノードINTVDCPは、それぞれ別個に外部電源電圧VCCからの電力で充電される。
【0033】
電圧供給ノードINTVDDには、行デコーダ140、ページバッファ/センス回路150、周辺回路160および高電圧回路170が接続され、電圧供給ノードINTVDDCPには、チャージポンプ回路180が接続される。電圧供給ノードINTVDDに接続される周辺回路グループ140~170は、電圧供給ノードINTVDDCPに接続されるチャージポンプ回路180と比較して、トランジスタの数、配線容量が大きいため(負荷容量が大きいため)、電圧供給ノードINTVDDがターゲット電圧に立ち上がる速度は、電圧供給ノードINTVDDCPよりも遅くなる。それ故、電圧供給ノードINTVDDCPのターゲット電圧への充電時間は、電圧供給ノードINTVDDよりも早くなり、図4に示すように、電圧供給ノードINTVDDCPは、時刻t1からtRESCP後の時刻t2でターゲット電圧に到達するが、電圧供給ノードINTVDDは、時刻t1からtRESVDD後の時刻t3でターゲット電圧に到達する(tRESCP<tRESVDD)。なお、電圧供給ノードINTVDDCPのターゲット電圧は、チャージポンプ回路180が動作可能な状態となる電圧であり、電圧供給ノードINTVDDのターゲット電圧は、周辺回路160のCPUが動作可能な状態となる電圧である。
【0034】
DPDコントローラ120は、チャージポンプ回路180が動作可能な状態になる時刻t2で、ポンプイネーブル信号PUMPENをLレベルからHレベルに遷移させる。チャージポンプ回路180は、ポンプイネーブル信号PUMPENに応答して時刻t2でポンプ動作を開始し、時刻t2からtPUMP後の時刻t2Aで所望のポンプ電圧VWWPUMPを生成する。本実施例では、チャージポンプ回路180は、電圧供給ノードINTVDDCPがターゲット電圧に到達した後に動作可能となり、電圧供給ノードINTVDDがターゲット電圧に到達するのを待つ必要がない。
【0035】
また、DPDコントローラ120は、周辺回路160が動作可能な状態になる時刻t3で、CPUイネーブル信号CPUENをLレベルからHレベルに遷移させる。周辺回路160のコントローラ(CPU)は、CPUイネーブル信号CPUENに応答して時刻t3で標準コマンドの動作を開始する。2つの電圧供給ノードINTVDD、INTVDDCPがターゲット電圧に到達した時刻t3でDPDモードからの復帰時間tRESが終了する。もし、tPUMP<tRESVDD-tRESCPの関係であれば、標準コマンドの動作を開始する時点で既にポンプ電圧VWWPUMPが生成されているため、高電圧生成回路170は、即座に動作に必要な高電圧をページバッファ/センス回路150や行デコーダ140等に供給することができる。仮に、tPUMP>tRESVDD-tRESCPの関係であったとしても、チャージポンプ回路180の動作を前倒ししない場合とよりは、ポンプ電圧VWWPUMPを速く供給することができる。
【0036】
DPDコントローラ120による時間t2、t3の制御方法は、特に限定されないが、例えば、DPDコントローラ120は、内蔵したタイマーにより時刻t1からの時間を計測し、tRESCP、tRESVDDに到達したとき、イネーブル信号PUMPEN、CPUENをHレベルに遷移させるようにしてもよい。また、他の態様では、電圧供給ノードINTVDDCP、INTVDDの電圧を検出する検出回路を設け、当該検出回路によりそれぞれの電圧供給ノードのターゲット電圧が検出されたとき、DPDコントローラ120がイネーブル信号PUMPEN、CPUENをHレベルに遷移させるようにしてもよい。
【0037】
具体的な動作例として、DPDモード中に、読出し、プログラムまたは消去コマンドが標準コマンドI/F回路110に入力されると、DPDコントローラ120は、DPDイネーブル信号DPDENをLレベルに遷移させ、トランジスタP1、P2を導通させ、外部電源電圧VCCからの電力供給を開始させ、DPDモードを解除する。DPDコントローラ120は、電圧供給ノードINTVDD、INTVDDCPの電圧が復帰するまでの間、時刻t1からtRESCP後の時刻t2でチャージポンプ回路180を動作させ、時刻t1からtRESVDD後の時刻t3までの間に、チャージポンプ回路180によるポンプ電圧VWWPUMPを生成し、時刻t3で周辺回路160のコントローラは、コマンドの実行を開始する。コマンド実行後に、読出し、プログラムまたは消去に必要な昇圧電圧を即座に利用することができる。
【0038】
このように本実施例によれば、標準コマンドが入力されたことに応答してDPDモードを自動的に解除するようにしたので、DPDモードを解除する専用のコマンドの入力が不要となり、DPDモードの解除コマンドをサポートしていないフラッシュメモリでもDPDモードを解除することができる。
【0039】
さらに、DPDモードからシャットダウンされた内部回路を復帰させるにあたって、従来の図2に示すように内部回路の全体に接続された電圧供給ノードINTVDDに電力を供給するのではなく、周辺回路グループ140~170に接続された電圧供給ノードINTVDDとチャージポンプ回路180に接続された電圧供給ノードINTVDDCPとに別々に分割して電力を供給し、チャージポンプ回路180の動作を前倒しするようにしたので、従来よりも内部回路を動作可能な状態に復帰させる時間tRES(図1)を短縮させることができる。
【0040】
なお、上記実施例では、DPDモードによって電力供給が遮断された内部回路を、周辺回路グループ140~170とチャージポンプ回路180に分けてDPDモードからの復帰させる例を示したが、本発明は、必ずしもこのような態様での分割に限定されるものではない。DPDモードから復帰させる際に、動作を前倒しさせる内部回路は、必ずしもチャージポンプ回路を含む必要はなく、他の回路であってもよい。さらに内部回路から復帰させる回路を3つ以上の回路部分に分割し、それぞれを異なる電流経路を介して電力供給をするようにしてもよい。
【0041】
ある態様では、DPDモードから第1の回路部分と第2の回路部分とを復帰させる場合、第1の回路部分と第2の回路部分の選択は、標準コマンドを実行するときの処理シーケンスに対応させることができる。つまり、標準コマンドを実行するときの第1の処理シーケンスが第1の回路部分を使用し、第2の処理シーケンスが第2の回路部分を使用し、第1の回路部分を第2の回路部分よりも先に動作可能な状態にする。第1の回路部分の負荷容量が第2の回路部分の負荷容量よりも小さいとき、第1の回路部分は第2の回路部分の復帰中に動作を開始し、復帰時間の短縮がより効果的に行われる。例えば、プログラム動作がプログラムベリファイとプログラムとの2つの動作を含み、プログラムベリファイが先に動作される場合、電圧供給ノードINTVDDxに接続されたベリファイに関連する回路部分だけが先にイネーブルされ、ベリファイ動作中に、プログラムに使用される回路部分に接続された電圧供給ノードINTVDDyがターゲット電圧に到達される。
【0042】
また上記実施例では、標準コマンドとして読出し、プログラムおよび消去を例示したが、標準コマンドは、これら以外にも、ステータスリード(Status Read)やIDリードなどを含むことができる。ステータスリードは、フラッシュメモリがレディ状態か否か、書込み保護モードか否か、プログラム/消去動作中か否かを読み出すコマンドであり、IDリードは、製造メーカや製品識別を読み出すコマンドである。
【0043】
また上記実施例では、外部電源電圧VCCから電圧供給ノードINTVDD、INTVDDCPに電力を供給する例を示したが、これは一例であり、電圧供給ノードINTVDD、INTVDDCPには、外部電源電圧VCCから直接ではなく、他の内部電源電圧から電力が供給されるようにしてもよい。
【0044】
本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0045】
100:フラッシュメモリ
110:標準コマンドI/F回路
120:DPDコントローラ
130:メモリセルアレイ
140:行デコーダ
150:ページバッファ/センス回路
160:周辺回路
170:高電圧回路
180:チャージポンプ回路
図1A
図1B
図2
図3
図4