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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-23
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】光ケーブルの異常区間判定装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 11/00 20060101AFI20220111BHJP
【FI】
G01M11/00 R
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020060587
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021162304
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2020-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】399040405
【氏名又は名称】東日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】久慈 優斗
(72)【発明者】
【氏名】高橋 央
(72)【発明者】
【氏名】佐尾 政春
(72)【発明者】
【氏名】海住 卓生
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-189502(JP,A)
【文献】特開平02-130448(JP,A)
【文献】特開平05-281087(JP,A)
【文献】特開2004-354104(JP,A)
【文献】特開2015-127654(JP,A)
【文献】特開2019-152630(JP,A)
【文献】国際公開第2016/105066(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 11/00-11/08
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ケーブルに入射する光の波長を波長順に、第1波長、第2波長、第3波長とした場合に、前記第2波長は、前記第1波長及び前記第3波長のどちらよりも伝送損失が小さい前記光を発光する発光部と、
前記光ケーブルで反射する反射光の遅延時間で前記光ケーブルの敷設区間を特定する区間特定部と、
前記敷設区間毎に前記反射光の伝送損失から前記光ケーブルの異常を判定する異常区間判定部と
表示部と
備え
前記異常区間判定部は、
前記反射光に含まれる前記第1波長、前記第2波長、及び前記第3波長のそれぞれの伝送損失の大小関係に基づいて前記光ケーブルの異常を判定し、
前記表示部は、前記敷設区間毎の伝送損失を、区間をx座標、伝送損失をy座標の二次元で表示し、伝送損失の大きさを色相又は模様の濃淡で表記す
ことを特徴とする光ケーブルの異常区間判定装置。
【請求項2】
前記異常区間判定部は、
前記光ケーブルの異常を、前記第1波長、前記第2波長、及び前記第3波長のそれぞれの伝送損失を短波長側から並べた場合の傾向と、損失が閾値よりも大きな箇所の分布状態の、一方又は両方に基づいて分別して判定する
ことを特徴とする請求項に記載の光ケーブルの異常区間判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバケーブル(以降、光ケーブル)の異常を判定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光ケーブルの異常は、OTDR(Optical Time Domain Reflectometer:光パルス試験器)を用いて検出していた。OTDRについては、例えば非特許文献1に開示されている。
【0003】
光ケーブルの区間ごとに1550nmの波長の光でOTDR測定し、伝送損失が例えば0.25dB/km以上になっている区間を異常と判定していた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】OTDR 測定のための基礎知識、〔令和2年3月10日検索〕、インターネット(URL:https://www.nttrec.co.jp/faq/faq-product/faq-hikarisokutei/faq-hikarisokutei05)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、伝送損失が0.25dB/km以上にならない軽度な異常は判定することが難しい。よって、故障して初めて異常を知ることになる。また、光ケーブルの施工に起因した異常であるのか、光ケーブルに起因する異常であるのかを区別することが困難である。このように、伝送損失を用いた光ケーブルの異常検出では、光ケーブルの適切な保守管理が行えないという課題がある。
【0006】
本発明は、この課題に鑑みてなされたものであり、光ケーブルの保守管理が適切に行える光ケーブルの異常区間判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る光ケーブルの異常区間判定装置は、光ケーブルに入射する光の波長を波長順に、第1波長、第2波長、第3波長とした場合に、前記第2波長は、前記第1波長及び前記第3波長のどちらよりも伝送損失が小さい前記光を発光する発光部と、前記光ケーブルで反射する反射光の遅延時間で前記光ケーブルの敷設区間を特定する区間特定部と、前記敷設区間毎に前記反射光の伝送損失から前記光ケーブルの異常を判定する異常区間判定部と、表示部とを備え、前記異常区間判定部は、前記反射光に含まれる前記第1波長、前記第2波長、及び前記第3波長のそれぞれの伝送損失の大小関係に基づいて前記光ケーブルの異常を判定し、前記表示部は、前記敷設区間毎の伝送損失を、区間をx座標、伝送損失をy座標の二次元で表示し、伝送損失の大きさを色相又は模様の濃淡で表記することを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、適切な保守管理が行える光ケーブルの異常区間判定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る光ケーブルの異常区間判定装置の機能構成例を模式的に示す図である。
図2】光ケーブルの伝送損失の特性例を模式的に示す図である。
図3図1に示す発光部が光ケーブルに入射する光の波長と伝送損失の関係を模式的に示す図である。
図4図1に示す光ケーブルの異常区間判定装置を光ケーブルに接続した場合のケーブルの距離とレイリー後方散乱光の関係を模式的に示す図である。
図5図1に示す異常区間判定部で求めた伝送損失を表形式で表示する例を示す図である。
図6図1に示す異常区間判定部で求めた伝送損失の他の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。複数の図面中同一のものには同じ参照符号を付し、説明は繰り返さない。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る光ケーブルの異常区間判定装置の機能構成例を模式的に示す図である。図1に示す光ケーブルの異常区間判定装置100は、光ケーブルの片端に接続させてパルス光を入射し、入射側に戻ってくる後方散乱光の遅延時間を距離に換算する。そして、距離毎に後方散乱光のパワーから伝送損失を算出し、伝送損失に基づいて光ケーブルの異常区間を判定するものである。以降、光ケーブルの異常区間判定装置100は異常区間判定装置100と略す。
【0012】
異常区間判定装置100は、発光部10、受光部20、区間特定部30、異常区間判定部40、表示部50、光サーキュレータ60、及び制御部70を備える。光サーキュレータ60と表示部50は一般的なものである。また、制御部70は、異常区間判定装置100として動作するように各機能構成部の動作を制御するものである。
【0013】
異常区間判定装置100は、光コネクタ110を介して光ケーブル200に接続される。光コネクタ110と反対側の端は、図示しない光コネクタが接続され、光ケーブルが更に延長される場合もある。異常区間判定装置100は、一般的な光パルス試験器(OTDR)の機能を備え、光ケーブル200の距離、損失、及びレイリー後方散乱光の測定が可能である。
【0014】
発光部10は、レーザーダイオード11,12,13と光スイッチ14を備える。光ケーブル200に入射する光の波長を波長順に、第1波長λ、第2波長λ、第3波長λとした場合に、レーザーダイオード11は第1波長λの光パルスを発する。レーザーダイオード12は第2波長λの光パルスを発する。レーザーダイオード13は第3波長λの光パルスを発する。第2波長λは、第1波長λ及び第3波長λのどちらよりも光ケーブル200の伝送損失が小さい波長である。伝送損失は、光ケーブル200の距離当たりの損失であり単位はdB/kmである。
【0015】
なお、発光部10は、3つ以上の波長を含む光を発光しても構わない。以降、レーザーダイオードはLDと表記する。
【0016】
LD11、LD12、及びLD13は、同時に光パルスを発してもよいし、光パルスを選択的に発してもよい。図1は、制御部70の制御によって選択的に発光する例を示す。選択的に発光することを光スイッチ14で表している。LD11が光パルスを発する場合は、光スイッチ14はLD11を選択する。LD12が光パルスを発する場合は、光スイッチ14はLD12を選択する。LD13が光パルスを発する場合は、光スイッチ14はLD13を選択する。
【0017】
なお、LD11~LD13は同時に発光させてもよい。その場合、LD11~LD13の各出力は、光スイッチ14に替えてそれぞれの光を合波する合波カプラ(図示せず)に接続される。
【0018】
光スイッチ14(又は合波カプラ)によって、1つの信号線に重畳された第1波長λと第2波長λと第3波長λのそれぞれの光パルスは、光サーキュレータ60に接続される。光サーキュレータ60は、発光部10が発する光を光コネクタ110で接続される光ケーブル200に入射し、光ケーブル200内で散乱して戻ってくる反射光(後方散乱光)を受光部20に出力する。
【0019】
受光部20は、反射光を光電流に変換する。受光部20は、例えばフォトダイオードで構成される。フォトダイオードが出力する光電流の大きさは、受光した反射光の強さに比例する。受光部20は、光電流を電圧に変換して出力する。
【0020】
区間特定部30は、反射光の遅延時間で光ケーブル200の敷設区間を特定する。反射光の遅延時間で光ケーブル200の位置を特定することは従来から行われている。本実施形態では、例えば500mよりも長い区間の単位で光ケーブル200の位置(敷設区間)を特定する。
【0021】
異常区間判定部40は、光ケーブル200の敷設区間毎に反射光の伝送損失から光ケーブル200の異常を判定する。伝送損失は、第1波長λ~第3波長λのそれぞれの反射光のパワーから波長毎に算出することができる。
【0022】
異常区間判定部40は、反射光に含まれる第1波長λ、第2波長λ、及び第3波長λのそれぞれの伝送損失の大小関係に基づいて光ケーブル200の異常を判定する。異常判定の具体的な方法については後述する。
【0023】
その前に光ケーブル200の伝送損失特性について説明する。
【0024】
(光ケーブルの伝送損失特性)
図2は、光ケーブル200の伝送損失特性を模式的に示す図である。図2の横軸は光の波長(μm)、縦軸は光の伝送損失(dB/km)である。
【0025】
図2に示すように、光ケーブル200の伝送損失特性は、波長が大きくなるにしたがって減少し、最小値を持つ特性である。伝送損失が最小値を示す約1.5μmの直前の波長で、伝送損失が少し大きくなるピークを示す。
【0026】
可視光領域(0.4μm~0.7μm)から1.3μmの範囲は、波長の増加に伴って伝送損失が低下する特性を示す。この波長範囲の特性は、光がその波長に比べて十分に小さな粒子にぶつかったときに散乱するレイリー散乱現象に依存する。よって、波長が長いほど伝送損失は小さくなる。
【0027】
レイリー散乱による伝送損失が低下した後の約1.4μmの波長に、伝送損失が大きくなるピークが見られる。このピークは、光ケーブル200内の水酸基による光の吸収によって生じる。
【0028】
そのピークの後、約1.5μmの波長で伝送損失は最小になる。以降、波長の増加に伴い赤外吸収損失によって伝送損失が増加する特性を示す。
【0029】
本実施形態は、この伝送損失特性の形を評価することで光ケーブル200の異常を判定する。伝送損失特性の形を評価するのに第1波長λ、第2波長λ、及び第3波長λの3つの光を用いる。
【0030】
(伝送損失の大小関係)
図3は、第1波長λ、第2波長λ、及び第3波長λの各波長と伝送損失の関係を模式的に示す図である。本実施形態では、光ケーブル200に入射する光の波長を波長順に、例えば、第1波長λ=1310nm、第2波長λ=1550nm、第3波長λ=1650nmとする。
【0031】
光ケーブル200が正常な場合、第2波長λの伝送損失Lは、第1波長λの伝送損失L及び第3波長λの伝送損失Lのどちらよりも小さい(L>L、L<L)。この関係を、図3中の◆で表す。
【0032】
一方、光ケーブル200に異常があると、各波長の伝送損失の大きさの関係が上記の関係と異なる。例えば、伝送損失Lが伝送損失Lよりも小さくなる(L<L)場合がある。この関係を図3中の太い×で表す。
【0033】
また、光ケーブル200に異常があると、伝送損失Lが伝送損失Lよりも小さくなる(L<L)場合もある。この関係を図3中の▲で表す。
【0034】
なお、第2波長λの伝送損失Lが最小であっても、第1波長λの伝送損失L及び第3波長λの伝送損失Lのどちらか又は両方が伝送損失Lよりも大き過ぎる場合も異常である(L≫L、L≫L)。
【0035】
例えば、第1波長λの伝送損失Lが第2波長λの伝送損失Lよりも大き過ぎる場合は、光ケーブル200の異常が疑われる。例えば、光ケーブル200の「軸ずれ」等の施工に起因した異常が疑われる。
【0036】
また、光ケーブル200に屈曲部分があると長波長側の伝送損失が大きくなる傾向がある。第3波長λの伝送損失Lが第2波長λの伝送損失Lよりも大き過ぎる場合は、光ケーブル200の「曲がり」等の施工に起因した異常が疑われる。
【0037】
このように、伝送損失特性の形から光ケーブル200の異常を判定することができる。
つまり、第1波長λ~第3波長λのそれぞれの波長の伝送損失L~Lの大小関係に基づいて光ケーブル200の異常を判定することができる。
【0038】
(異常区間判定部)
図4は、複数の区間で構成される光ケーブル200に本実施形態の異常区間判定装置100を接続した様子を模式的に示す図である。図4に示すように、光ケーブル200は、ファイバーエンド120までが例えば4つの区間A、B、C、Dで構成され、区間Aと異常区間判定装置100が光コネクタ110で接続されている。
【0039】
区間A、B、C、Dの下に示す図は、異常区間判定装置100で測定した光ケーブル200のレイリー後方散乱光と距離の関係を模式的に示す図である。図の横軸は距離(km)、縦軸はレイリー後方散乱光(-dB)である。
【0040】
図4に示すようにレイリー後方散乱光は、一定の傾きで減衰する特性を示す。光コネクタ110の接続点ではフレネル反射と称される立ち上がり波形が発生し、この立ち上がり波形の回数で区間を識別してもよい。最大のフレネル反射の後、一定の傾きの減衰が見られなくなる点が光ケーブル200の終端を表す。
【0041】
異常区間判定部40は、光ケーブル200の敷設区間毎に反射光の伝送損失を求め、区間毎に光ケーブル200の異常を判定する。これにより、光コネクタ110で延伸された光ケーブル200で有っても区間毎に異常を判定することが可能である。
【0042】
なお、図4は、光ケーブル200の区間を光コネクタ110の間としたが、区間は更に細かく区分することが可能である。例えば一つの伝送損失の値毎に異常を判定することも可能である。伝送損失の値を例えば500mの分解能で求める場合を想定すると、500m毎に光ケーブル200の異常を判定することができる。
【0043】
また、異常区間判定部40は、光ケーブルの異常を、原因別に分別して判定することも可能である。光ケーブル200の異常の分別は、大きく分けて、例えば、(1)敷設当初からの光ケーブルの異常、(2)施工時に曲げ等が加わってしまったことによる光ケーブルの異常、(3)所定期間経過後の劣化による光ケーブルの異常の3つに分別できる。
【0044】
異常は、3つの伝送損失L,L,Lを短波長側から並べた場合の傾向と、損失の大きな箇所が光ケーブル200の一点で生じているのか又は分布的に生じているのかに基づいて分別する。ここで一点とは一つの損失の値を意味する(局所的)。また、分布的とは光ケーブル200の一定の範囲にわたって損失が生じていることを意味し、単位はdB/km(伝送損失)で表される。
【0045】
(1)敷設当初からの光ケーブルの異常の場合は、伝送損失L,L,Lを短波長側から並べた場合の傾向はV字型を示し、0.5dB/km以上の損失があり、損失が生じる範囲が分布的である。
【0046】
(2)施工時に曲げ等が加わってしまったことによる光ケーブルの異常の場合は、伝送損失L,L,Lを短波長側から並べた場合の傾向は右肩上がりを示し、損失は一点で生じることが多い。損失の大きさは0.5dB以上である。なお、まれに分布的に生じる場合がある。単位がdBで表される損失は光ケーブル200の一点(局所)で生じる損失である。
【0047】
(3)所定期間経過後の劣化による光ケーブルの異常の場合は、伝送損失L,L,Lを短波長側から並べた場合の傾向は右肩上がりを示し、損失は分布的に生じる。損失の大きさは0.5dB/km以下の場合もある。(2)との切り分けは、伝送損失が分布的に生じるか否かで行う。
【0048】
また、(1)~(3)に含まれない軸ずれによる異常の場合は、伝送損失L,L,Lを短波長側から並べた場合の傾向は右肩下がりを示し、0.5dB以上の損失が一点で生じる。なお、軸ずれによる異常は、敷設時から所定期間経過後であっても地震等を原因として生じる場合も考えられる。
【0049】
以上説明したように異常区間判定部40は、光ケーブル200の異常を、第1波長、第2波長、及び第3波長のそれぞれの伝送損失を短波長側から並べた場合の傾向と、損失が閾値よりも大きな箇所の分布状態の、一方又は両方に基づいて分別して判定してもよい。これにより、光ケーブル200の異常を分別して判定することができる。
【0050】
損失が閾値よりも大きな箇所の分布状態とは、上記の損失の大きな箇所が局所的に生じているか(分布していない)、又は光ケーブル200の一定の範囲にわたって分布しているかの、損失の発生態様の違いを意味する。先の説明では、分かり易いように一つの損失の値を局所的な損失であると説明したが、例えば複数の比較的大きな損失が光ケーブル200の一か所に集中していれば局所的な損失である。また。分布的な損失も光ケーブル200の一つの範囲に限られない。閾値は、例えば上記の0.5dB/km,0.5dB等の値である。
【0051】
(表示部)
表示部50は、異常区間判定部40で求めた伝送損失を表示する。図5は、異常区間判定部40で求めた伝送損失を表形式で表示する例を示す図である。
【0052】
図5に示すように、左から1列目は光ケーブル200の区間、2列目は第1波長λの伝送損失L、3列目は第2波長λの伝送損失L、4列目は第3波長λの伝送損失Lを示す。区間A、C、Dの各波長のそれぞれの伝送損失L,L,Lは同じ値を示している。
【0053】
区間Bの伝送損失は、第1波長λの伝送損失L=0.7dB/km、第2波長λの伝送損失L2=0.9dB/kmと、他の区間よりも大きな値を示している。このように、伝送損失Lが最小値を示さずL,L,Lの順で伝送損失が増加する特性は、正常な伝送損失特性(図2)と比較して異常である。
【0054】
なお、表示部50は、異常が検出された区間に、正常・異常を表す〇,×マークを付けて表示してもよい。その場合、4列目の伝送損失Lの右の列に、区間Aの行から順に〇、×、〇、〇を表示(図示せず)する。また、異常区間判定部40が判定した上記の分別した結果を表示するようにしてもよい。
【0055】
また、伝送損失を表形式以外で表示する方法も考えられる。例えば、図6に示すような表示形式も考えられる。
【0056】
図6は、伝送損失の他の表示例を示す図である。横軸は距離(km)、縦軸は波長(nm)である。横軸と縦軸は所定の幅を持つ。横軸の幅は区間A,B,C,Dの各距離に対応している。図6中に示す数値は伝送損失の値であるが、数値は表示しなくてもよい。
【0057】
区間Aと区間Cと区間Dの縦方向のパターン(模様)は同じである。区間Bの縦方向のパターンは他と異なっている。
【0058】
伝送損失が大きくなるにしたがって例えばパターンが濃くなるようにしておけば、伝送損失が異なる区間を見分けるのが容易になる。区間Bの伝送損失が他の区間と同じであれば、横方向のパターンは一定である。しかし、区間Bの伝送損失が他の区間と異なっていれば図6に示すように容易に見分けることができる。
【0059】
このように、表示部50は、区間毎の伝送損失を、区間をx座標、伝送損失をy座標の二次元で表示し、伝送損失の大きさは色相又は模様の濃淡で表記するようにしてもよい。つまり、グラデーションの変化で異常を表記する。これにより、伝送損失が異なる区間を容易に見分けることができる。
【0060】
以上説明したように本発明の実施形態に係る光ケーブルの異常区間判定装置100は、光ケーブル200に入射する光の波長を波長順に、第1波長λ、第2波長λ、第3波長λとした場合に、第2波長λは、第1波長λ及び第3波長λのどちらよりも伝送損失が小さい光を発光する発光部10と、光ケーブル200で反射する反射光の遅延時間で光ケーブル200の敷設区間を特定する区間特定部30と、敷設区間毎に反射光の伝送損失から光ケーブル200の異常を判定する異常区間判定部40とを備える。これにより、光ケーブル200の異常を判定することができる。
【0061】
異常区間判定部40は、反射光に含まれる第1波長λ、第2波長λ、及び第3波長λのそれぞれの伝送損失の大小関係に基づいて光ケーブル200の異常を判定する。これにより、伝送損失特性の形を評価することができ、光ケーブル200の異常を判定することができる。
【0062】
また、異常区間判定部40は、光ケーブル200の異常を、第1波長、第2波長、及び第3波長のそれぞれの伝送損失L,L,Lを短波長側から並べた場合の傾向と、損失が閾値よりも大きな箇所の分布状態の、一方又は両方に基づいて分別して判定する。これにより、光ケーブル200の保守作業の見通し(段取り作業)を容易にすることができる。
【0063】
このように本実施形態に係る異常区間判定装置100によれば、光ケーブル200の保守管理が適切に行える光ケーブルの異常区間判定装置100を提供することができる。
【0064】
また、異常区間判定装置100は表示部50を備え、表示部50は、敷設区間毎の伝送損失を、区間をx座標、伝送損失をy座標の二次元で表示し、伝送損失の大きさを色相又は模様の濃淡で表記する。これにより、異常のある区間の見分けを容易にすることができる。
【0065】
なお、上記の実施例は、3つの波長を用いて伝送損失特性を評価する例を説明したが、本発明はこの例に限定されない。用いる波長の種類は3つ以上の多種類にしてもよい。波長の種類を増やすことで伝送損失特性の形をより正確に評価することができる。
【0066】
また、第1波長λ=1310nm、第2波長λ=1550nm、第3波長λ=1650nmの例で説明したが、これらの波長に限定されない。発光部10が光ケーブル200に入射する光に含まれる第2波長λは、第1波長λ及び第3波長λのどちらよりも伝送損失が小さい波長であればよい。つまりその関係が満たされれば、各波長はどのような長さであっても構わない。
【0067】
このように本発明は、ここでは記載していない様々な実施形態等を含む。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0068】
10:発光部
11:レーザーダイオード(第1波長λ
12:レーザーダイオード(第2波長λ
13:レーザーダイオード(第3波長λ
14:光スイッチ
20:受光部
30:区間特定部
40:異常区間判定部
50:表示部
100:光ケーブルの異常区間判定装置
110:光コネクタ
200:光ケーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6