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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-23
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】自己接着性防汚被膜構成物
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/18 20060101AFI20220111BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220111BHJP
   C09J 7/29 20180101ALI20220111BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20220111BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
B32B27/18 Z
B32B27/00 M
B32B27/00 L
B32B27/00 101
C09J7/29
C09J7/38
C09J201/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020124165
(22)【出願日】2020-07-21
(62)【分割の表示】P 2017557492の分割
【原出願日】2016-01-26
(65)【公開番号】P2020185800
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2020-07-21
(31)【優先権主張番号】15152553.2
(32)【優先日】2015-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514100751
【氏名又は名称】アベリー・デニソン・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】AVERY DENNISON CORPORATION
(73)【特許権者】
【識別番号】517261280
【氏名又は名称】ペーペーヘー コーティング ユーロペ ベーフェー
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100163544
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 緑
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル,ゴーティエ
(72)【発明者】
【氏名】シラウクス,ガイ
(72)【発明者】
【氏名】ペロッティ,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ファン デル コルク,キース
(72)【発明者】
【氏名】コーティン,ジャック
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-309518(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0135244(US,A1)
【文献】特開2003-025478(JP,A)
【文献】特開平06-033024(JP,A)
【文献】特開平08-281877(JP,A)
【文献】特開2013-129724(JP,A)
【文献】特開2008-265308(JP,A)
【文献】特開2006-152201(JP,A)
【文献】特開昭57-015870(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104044694(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C09J 7/00- 7/50
C09D 1/00-10/00
C09D 101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)任意の剥離可能な下地ライナーと、
(ii)前記下地ライナー一面へと適用された接着層と、
(iii)前記接着層(ii)一面へと適用された、極性の熱可塑性ポリマーを含む層と、
(iv)前記極性の熱可塑性ポリマーを含む層(iii)一面へと適用された、加硫性シリコーンを含有する中間シリコーンタイコートと、
(v)前記中間シリコーンタイコート(iv)一面へと適用された、加硫性シリコーン及びシリコーン油を含有するシリコーン防汚トップコートと、
(vi)任意に、剥離可能なポリマーフィルムと、
を含む、自己接着性多層防汚被膜構成物であって、
前記極性の熱可塑性ポリマーは、極性基、若しくは窒素、酸素及びハロゲンから選択される少なくとも1つの原子を含む基、若しくはカルボン酸あるいは酸無水物を含む基がグラフトされたポリオレフィンであるか、又は該ポリオレフィンを含むことを、特徴とする。
【請求項2】
前記層(iii)中に含まれるポリオレフィンは、カルボン酸若しくは酸無水物を含む極性基で、又は該極性基が層(iv)と接触する表面上でグラフトされている、請求項1に記載の構成物。
【請求項3】
前記ポリオレフィンが、アクリル酸でグラフトされたポリプロピレン(PP-g-AA)である、請求項1又は2に記載の構成物。
【請求項4】
前記下地ライナーが、6重量%より多くの水を含有する紙製ライナーである、請求項1~3のいずれか一項に記載の構成物。
【請求項5】
a)剥離可能な下地ライナー(i)を接着層(ii)で被覆する工程と、
b)前記接着層(ii)を、極性の熱可塑性ポリマーを含む層(iii)で被覆する工程と、
c)前記層(iii)を、加硫性シリコーンを含有するシリコーンタイコート(iv)で被覆する工程と、
d)前記タイコート(iv)を、加硫性シリコーン及びシリコーン油を含有するシリコーン防汚トップコート(v)で被覆する工程と、
e)任意に、前記シリコーン防汚トップコート(v)を、剥離可能なポリマーフィルムで被覆する工程と、
を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の自己接着性多層防汚被膜構成物の製造方法であって、
前記極性の熱可塑性ポリマーは、極性基、若しくは窒素、酸素及びハロゲンから選択される少なくとも1つの原子を含む基、若しくはカルボン酸あるいは酸無水物を含む基がグラフトされたポリオレフィンであるか、又は該ポリオレフィンを含むことを、特徴とする。
【請求項6】
被覆された構造物の製造方法であって、該構造物の外表面の少なくとも一部を、請求項1~4のいずれか一項に記載の自己接着性多層防汚被膜構成物で被覆する工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己接着性多層防汚被膜構成物、特に水棲生物によって汚損されることになり得る船体のような水中構造物に使用するための防汚被膜構成物に関する。自己接着性多層防汚構成物は、水棲生物の付着を低減することを目的とし、特に船体、港湾設備、海上油田設備、浮標等のような水中構造物に汚損が固着するのを抑制することを目的とする。この自己接着性防汚構成物は、シリコーンペイントの塗布の際の吹き付けによるシリコーンの汚染が無いようにする。また本発明は、上記構成物の製造方法、及び本発明の構成物を使用して被覆された構造物の製造方法、及びこうして被覆された構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
浸水構造物における汚損の存在は、その性能の低下、例えば静止構造物及び水中装置への損傷又は船舶での速度低下及び燃料消費の増加を引き起こし得る。浸水構造物又は水中構造物、例えば水と接触した船舶に対する汚損は、フジツボ類、イガイ類、コケムシ類、緑藻類等を原因とするものであり得る。また浸水構造物又は水中構造物に対する汚損は、操縦性の低下又は熱伝導性の低下を招くことも知られており、多くの時間を費やすため経済的な損失をもたらす洗浄作業を要することが知られている。したがって、そのような汚損の有害な効果を抑えるために、汚損防止系が使用されてきた。それ以外に、汚損防止系は、そのような汚損の有害な効果を防ぐために使用することができる。
【0003】
従来の汚損防止塗装は、主として、ペイント基材中に導入された1種以上の殺生物剤から構成される。そのような殺生物剤は、水棲生物及びヒトの健康に対して毒性がある。そのような1つの系統の船舶塗装、つまり有機スズ(TBT)ポリマーをベースとする極めて成功を収めた自己消耗型汚損防止塗装は、現在では法律によって禁止されている。したがって、船舶塗装の化学者は、現在、TBTポリマーの有効性に匹敵するように、代替となるスズ不含で自己消耗型のコポリマー、例えばシリルアクリレート又は銅アクリレートを改良することを試みている。
【0004】
殺生物性の汚損防止剤によって引き起こされる有害な環境影響を抑えるための更なる法律によってまた代替となる塗装系の開発に導かれた。全ての汚損生物の共通の特性は、基材に付着する能力であり、殺生物剤の使用を代替するのは、付着過程を妨げる物理的表面現象の利用である。シリコーンエラストマーをベースとする低表面自由エネルギー材料は、可能性のある解決策をもたらし、現在、耐汚損塗装として使用されるようになっている。特に、環境に優しくかつ殺生物剤不含の、「防汚」系と呼ぶことができる代替となる塗装系は、シリコーンベースの成分を使用することによって得られる。そのような防汚系は、表面の物理的特性により効果を奏する。表面の低表面エネルギー及び低弾性率は、水棲生物が表面に強固に付着するには適しておらず、こうして汚損は低減される。
【0005】
低表面自由エネルギー塗装は、汚損生物の付着に耐性があり、かつ洗浄が簡単である、ともすれば無毒性で無公害の塗装である。理論上、これらの非湿潤性表面は、汚損の付着を防ぐか、又はそれを制限するので、汚損は、水中で動かすといったような弱い力によって又は優しい洗浄によって取り除くことができる。従来の殺生物性の汚損防止系で起こるであろう何らかの活性物質の枯渇は起こらず、結果的により長い寿命がもたらされる可能性があり、そして環境への毒性物質の放出は起こらない。さらに、毒性の汚損防止剤は、しばしば或る特定の種類の汚損に対して特異的である一方で、低自由表面エネルギー塗装は、どのような種類の付着に対しても汎用的な保護をもたらす。
【0006】
実際に、低表面自由エネルギー塗装系は、下地防錆層に防汚シリコーントップコート(本明細書では、「FRトップコート」又は「防汚トップコート」と呼ばれる)を結合させるために、丈夫な架橋された熱可塑性エラストマー層(本明細書では、「タイコート」と呼ばれる)を使用する。機械的特性は、このタイコート層によって付与される一方で、FRトップコートが、防汚特性を提供する。防汚トップコート組成物は、一般的に、官能化シリコーンポリマー、充填剤、架橋剤、滲出液、有標添加剤及び触媒を含む。この技術を更に説明する幾つかの特許の例には、特許文献1(International Paint)、特許文献2(Courtaulds)、特許文献3(Courtaulds)及び特許文献4(Hempel)が含まれる。例えば、PPGによって販売されるSIGMAGLIDE(商標)系を含め、多くの市販の防汚塗料が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第4,025,693号
【文献】欧州特許第0521983号
【文献】米国特許第6,013,754号
【文献】国際公開第05/108499号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、これらの防汚塗料の利用は、非常に費用がかさみ、時間がかかり、かつ環境を汚染するものである。その他に、汚損は、費用のかかる洗浄作業を要することにより多大な経済的損失を招く。
【0009】
まさに、防汚塗料、とりわけそれらのタイコート及びFRトップコートは、一般的に、連続的な工程で1層ずつエアレススプレーを使用して、一般的にその途中で長い乾燥時間を挟んで適用する必要がある。さらに、多量の防汚塗料が、風により空気中にスプレー飛沫となることで浪費され、それにより更に適用の費用がかさむとともに環境の汚染が引き起こされる。
【0010】
さらに、防汚塗料のエアレススプレー適用は、シリコーンの汚染を避けるために、被覆されるべきでない表面も全て保護する必要がある。確かに、シリコーンの特性は、低表面エネルギーをもたらすも、それはまた低い溶解度パラメータをもたらすため、その他のポリマーとの不相容性が生ずる。したがって、適用の間にその他の表面塗装とのシリコーンの交差汚染の可能性を減らすことに細心の注意を払わねばならない。したがって、防汚塗装は、一般的に異なる場所にある専用の納入前のドックで適用されており、それにより更に適用の費用がかさむ。
【課題を解決するための手段】
【0011】
予想外にも、目下、FRトップコート及びタイコートを含む防汚被膜は、合成材料を使用して自己接着性の物品上に被覆することによって固定することができることが判明した。一つの事例では、FRトップコート及びタイコートを含む防汚被膜は、極性基がグラフトされたポリウレタン又はポリオレフィンから選択される極性の熱可塑性エラストマーを使用する場合に、接着層に固定することができる。言い換えると、FRトップコート及びタイコートを含む防汚被膜を吹き付けるのではなく、これらのコートは、合成材料を使用して自己接着性の物品上に被覆することができる。有利には、この自己接着性多層防汚(releasefouling)被膜構成物は、基材表面上に、特に船体上に、1回の単独工程において、該自己接着性構成物を、被覆されるべき表面上に単純に貼り付けることによって直接的に適用することができるため、吹き付けによる適用が必要とされる従来技術の防汚構成物の欠点は回避される。
【0012】
発明の概要
第1の態様において、本発明は、以下の層:
(i)任意の剥離可能な下地ライナーと、
(ii)前記任意の下地ライナーが存在する場合には、該ライナー一面へと適用された接着層と、
(iii)前記接着層(ii)一面へと適用された合成材料層と、
(iv)任意に、前記合成材料層(iii)一面へと適用された中間シリコーンタイコートと、
(v)前記合成材料層(iii)一面へと適用された、又は前記中間シリコーンタイコート(iv)が存在する場合には、該タイコート一面へと適用されたシリコーン防汚トップコートと、
(vi)任意に、前記防汚トップコート(v)一面へと適用された剥離可能なポリマーフィルムと、
を含む、自己接着性多層防汚被膜構成物を提供する。
【0013】
自己接着性多層防汚被膜構成物は、基材表面上に、例えば船体上に、1回の単独工程において、該自己接着性構成物を、被覆されるべき表面上に単純に貼り付けることによって直接的に適用することができるため、吹き付けによる適用が必要とされる従来技術の防汚構成物の欠点は回避される。
【0014】
第2の態様において、本発明は、以下の層:
(i)任意の剥離可能な下地ライナーと、
(ii)前記任意の下地ライナーが存在する場合には、該ライナー一面へと適用された接着層と、
(iii)前記接着層(ii)一面へと適用された、極性基がグラフトされた熱可塑性ポリウレタン又はポリオレフィンから選択される極性の熱可塑性ポリマーを含む層と、
(iv)前記極性の熱可塑性ポリマーを含む層(iii)一面へと適用された中間シリコーンタイコートと、
(v)前記中間シリコーンタイコート(iv)一面へと適用されたシリコーン防汚トップコートと、
(vi)任意に、剥離可能なポリマーフィルムと、
を含む、自己接着性多層防汚被膜構成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】水棲生物を抑制及び低減させるための自己接着性防汚構成物の一実施形態の概略断面図である。
図2】両方の表面上に表面エネルギーを増大させるための官能基を有する層(iii)の一実施形態の概略断面図である。
図3】水中構造物に適用された自己接着性防汚構成物の一実施形態の一部の概略断面図である。
図4】タイコート(iv)の被覆後に巻回され、剥離可能なライナー(i)とタイコート層(iv)との間の接触が可能となる、自己接着性防汚構成物の一実施形態の一部の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書で使用される場合に、表現「~一面へと適用された(applied over and to)」とは、層同士が共に結合されること、つまり互いに直に接触することを意味する。
【0017】
第1の態様において、本発明は、以下の層:
(i)任意の剥離可能な下地ライナーと、
(ii)前記任意の下地ライナーが存在する場合には、該ライナー一面へと適用された接着層と、
(iii)前記接着層(ii)一面へと適用された合成材料層と、
(iv)任意に、前記合成材料層(iii)一面へと適用された中間シリコーンタイコートと、
(v)前記合成材料層(iii)一面へと適用された、又は前記中間シリコーンタイコート(iv)が存在する場合には、該タイコート一面へと適用されたシリコーン防汚トップコートと、
(vi)任意に、前記防汚トップコート(v)一面へと適用された剥離可能なポリマーフィルムと、
を含む、自己接着性多層防汚被膜構成物を提供する。
【0018】
自己接着性多層防汚被膜構成物は、基材表面上に、例えば船体上に、1回の単独工程において、該自己接着性構成物を、被覆されるべき表面上に単純に貼り付けることによって直接的に適用することができるため、吹き付けによる適用が必要とされる従来技術の防汚構成物の欠点は回避される。本発明による自己接着性構成物は、当業者にとって自明であると見なされるべきではない。それというのも、そのような当業者であれば、むしろ防汚物品の適用を改善するために、既知の吹き付け技術を最適化することを試みるはずだからである。
【0019】
本発明の好ましい一実施形態による水棲生物の付着を抑制及び低減させるための自己接着性防汚構成物は、図1に図解されるように構成される。「適用された自己接着性防汚構成物」は、本明細書では、水中構造物のような構造物に適用された場合の自己接着性多層防汚構成物を指す。したがって、「適用された自己接着性防汚構成物」は、図3に概略的に図示されるような層状構造物を構成する:該適用された構成物は、層(ii)から層(v)までを含む。それというのも、剥離可能なライナー(i)は、該構成物を基材表面に適用する前に剥離され、かつ剥離可能なポリマーフィルム(vi)は、該構成物が被覆されるべき表面上に適用されたら剥離されるべきだからである。
【0020】
実施形態においては、本発明の自己接着性防汚構成物の厚さは、本発明で要求される特性に影響されない限りは、該構成物中の各層の厚さに依存する。好ましい実施形態においては、自己接着性防汚構成物の厚さは、50 μmから5000 μmまで、より好ましくは100 μmから2000 μmまで、更により好ましくは200μmから700 μmまでである。
【0021】
好ましい実施形態においては、本発明の適用された自己接着性防汚構成物上への水棲生物の付着の強度は、0.1N/mm2以下、より好ましくは0.01 N/mm2以下、更により好ましくは0.002 N/mm2以下である。防汚トップコートと水棲生物との間の付着強度が小さいほど、該構成物は防汚特性の点でより効果的である。低い付着強度は、低い抗力特性に有益なこともある。
【0022】
適用された自己接着性防汚構成物上への水棲生物の付着強度は、ADEMVA DM10のような動力計を用いて測定することができる。その方法は以下の通りであってよい:水棲生物に圧力をかけて、適用された自己接着性防汚構成物の防汚トップコートからその水棲生物を外す。
【0023】
好ましい実施形態においては、自己接着性防汚構成物は、10 %以上の衝撃吸収率を有する。その値が上記範囲内にある場合に、該構成物は、汚損を低減及び抑制するのに効果的な結合を有する。
【0024】
好ましい実施形態においては、自己接着性防汚構成物は、水中構造物の全ての不規則な形状に良好に合わせて覆うことを可能にするために十分に柔軟である。柔軟性は、ISO 527-3/2/300の方法に従って、10 %伸びでの該構成物の引張強度を試験することによって測定することができる。
【0025】
23℃での10 %伸びでの引張強度は、好ましくは100 N/15 mm以下、より好ましくは80 N/15 mm以下、更により好ましくは60 N/15 mm以下である。10 %伸びでの引張強度がこれらの範囲のうちの1つの範囲内にある場合に、該構成物は、水中構造物の形状に応じて適用することができる。自己接着性防汚構成物の上記範囲外の高い10 %伸びでの引張強度は、不規則な水中構造物からの幾らかの浮き上がりを生じ得るため望ましくない。
【0026】
自己接着性防汚構成物の破断点伸びは、図3に図解される各層の伸びに依存する。23℃での破断点伸びは、好ましくは15 %以上、より好ましくは50 %以上である。破断点伸びが上記範囲内にある場合に、該構成物は、水中構造物の形状に応じて適用することができ、適用の時間の間に良好な再加工性が与えられる。破断点伸びが15 %未満の伸びである場合に、その自己接着性構成物の低い伸び及び破断のため、作業効率が低下することがある。
【0027】
自己接着性防汚構成物の破断点引張強度は、図3に図解される各層の伸びに依存する。好ましい実施形態においては、23℃での破断点引張強度は、10 N/15 mm以上、より好ましくは20 N/15 mm以上である。破断点引張強度が上記範囲内でより高い場合に、該構成物は、より水中構造物の形状に応じて適用することができ、適用の時間の間に良好な再加工性が与えられる。破断点引張強度が10 N/15 mm未満である場合に、その構成物の破断が早く、したがって作業効率が低下することがあるため望ましくない。
【0028】
好ましい実施形態においては、23℃でFinat試験法FTM 1に従って測定される、自己接着性防汚構成物の300 mm/分の速度での接着層(ii)と水中構造物との間の接着の180度剥離強度は、10 N/25 mm以上、より好ましくは25 N/25 mm以上、更により好ましくは40 N/25 mm以上である。剥離強度がより高いほど、水中構造物からの自己浮き上がりを示す危険性はより低くなる。
【0029】
以下で、本発明の第一の態様の更なる実施形態は、上記自己接着性多層防汚被膜構成物の個々の層を説明することによって取り上げられることとなる。
【0030】
層(i)
本発明の第一の態様による構成物は、任意に、接着層(ii)上に適用された剥離可能なライナー(i)を含んでよく、該ライナーは該構成物を基材表面に適用する前に剥離される。好ましい一実施形態においては、剥離可能なライナー(i)は存在する。好ましい実施形態においては、剥離可能なライナー(i)は、シリコーン処理された紙又はシリコーン処理された合成層である。図3及び図4に示される実施形態のように、剥離可能なポリマーフィルム層(vi)が、本発明による自己接着性防汚構成物中に含まれていない実施形態においては、該剥離可能なライナー(i)は、2つの機能的役割:1)接着層(ii)のためのライナーの役割、及び2)自己接着性多層構成物がロールへと巻回される場合に、シリコーンタイコート(iv)又はシリコーン防汚トップコート(v)のための保護材料の役割を果たし得る。
【0031】
好ましい実施形態においては、そのような剥離可能なライナー(i)は、好ましくは付加型のシリコーン処理された系によって被覆されたクレーコートされた裏紙である。クレーコートされた紙は、好ましくは3重量%以上の、より好ましくは6重量%から10重量%までの水の湿気率を含む。紙中に含まれる湿気は、タイコート(iv)の硬化の間に形成される産物である酢酸イオン、つまりCH3COO-の加水分解に関与する。酢酸イオンは、ライナー中に含まれる湿気がこの酢酸イオンの加水分解に関与する過程の間に破壊される必要がある。クレーコートされた剥離可能なライナーのその特性は重要である。それというのも、防汚トップコート(v)を含む最終的な堆積物の動態及び後硬化は、酢酸イオンの存在によって影響されることがよく知られているからである。ここで、湿気を帯びた紙製ライナーは、タイコート(iv)における残留酢酸の量を減らすので、有利には防汚トップコート(v)の良好な硬化動態の回復を可能にすることが確認された。まさに、好ましい実施形態においては、タイコート(iv)の硬化の間に、層(i)、(ii)、(iii)、(iv)を含む構成物はロールへと巻回されるため、層(iv)は、酢酸イオンの量を減らし得る層(i)と接触する。ロールへと巻回されない場合に、防汚トップコート(v)は、酢酸の量が減らされたタイコート層(iv)上に被覆することができる。剥離可能なライナーとしてシリコーン処理された合成紙又はポリエチレン紙が使用される場合に、酢酸イオンは、図4に図解される構成物がロールへと巻回される場合には加水分解されず、それにより、そのプロセス工程後に乾燥していない防汚トップコート(v)の硬化は遅延されることとなり、かつロール中の奥深さによって防汚トップコート(v)の厚さに幾らかのばらつきが生ずることがある。
【0032】
好ましい実施形態においては、剥離可能なライナー(i)の重さは、15 g/m2以上、より好ましくは25 g/m2以上、更により好ましくは40 g/m2から165 g/m2までである。その重さが上記範囲内である場合に、剥離可能なライナーの接着層からの剥離可能性は満足のいくものであり、良好な作業効率を可能にする。その重さが15 g/m2未満である場合に、剥離可能なライナーが裂けて、幾らかのライナー部分が接着層(ii)上に留まり得るため、それを剥離することが困難になる。
【0033】
好ましい実施形態においては、剥離可能なライナーの、剥離可能なライナーと接着層との間での接着強度は、150g/25 mm以下、より好ましくは80 g/25 mm以下、更により好ましくは60 g/25 mm以下である。接着強度が上記範囲内である場合に、剥離可能なライナーの接着層からの剥離可能性は満足のいくものであり、良好な作業効率を可能にする。その接着強度が150 g/25 mmより高い場合に、剥離可能なライナーが裂けて、幾らかのライナー部分が接着層(ii)上に留まり得るため、それを剥離することが困難になる。
【0034】
層(ii)
本発明の第一の態様による構成物は、防汚構成物を所望の位置に固定することができる接着層(ii)を更に含む。慣用の接着剤には、とりわけ感圧接着剤(PSA)が含まれる。
【0035】
感圧接着剤(PSA)は、少なくとも以下の特徴、つまり(a)被覆されるべき材料、例えば船体材料及び本発明の合成材料層(iii)に少なくとも5年間にわたる持続的な接着を生ずることができる特性、(b)海洋条件に耐える特性を有する任意の感圧接着剤であってよい。
【0036】
好ましい一実施形態においては、接着層(ii)用のPSAは、本発明に最適な特性を保証するように規定される。そのような用途に使用される材料は、例えばアクリル系のPSA樹脂、エポキシ系のPSA樹脂、アミノベースのPSA樹脂、ビニルベースのPSA、シリコーンベースのPSA樹脂等であってよい。好ましい実施形態においては、PSAは、溶剤ベースのアクリル系接着剤、より好ましくは耐水性であり、かつ-10℃から60℃までの、より好ましくは3℃から30℃までの低い温度での適用が可能な溶剤ベースのアクリル系接着剤である。この特徴は、一年を通した適用を可能にするものとされる。
【0037】
アクリル酸ポリマーをベースとする、とりわけアクリル系ポリマー及び架橋剤を含むPSAは、特に適切である。そのようなアクリル系ポリマーの例は、モノマーのアクリル酸及び/又はアクリル酸エステルから形成されるポリマーである。架橋剤は、フリーラジカルを形成し、それが上記モノマーのアクリル酸及び/又はアクリル酸化合物中の二重結合を攻撃することによって重合を開始する。その重合は、抑制剤又はラジカルの再結合のいずれかによって停止される。適切な架橋剤には、イソシアネート架橋剤が含まれる。その他の実施形態においては、架橋剤には、有機金属硬化剤、イソシアネート硬化剤又はその他のものが含まれる。
【0038】
金属硬化剤の例:
【化1】
【0039】
防汚のために使用される感圧接着剤の架橋過程の例
【化2】
【0040】
接着層(ii)の外表面は、適用前に剥離される剥離可能なライナー(i)で覆われていてよい。
【0041】
好ましい実施形態においては、層(ii)は、一般的に、使用される接着剤の種類及び想定される用途に応じて、5 μmから250 μmの間の、より好ましくは60 μmから150 μmの間の厚さを有することとなる。
【0042】
層(iii)
本発明の第一の態様による構成物は、一方の側で任意のタイコート(iv)を覆い、もう一方の側で接着層(ii)を覆うことを可能にする合成材料の層(iii)又は合成材料層(iii)を更に含む。合成材料は、好ましくは不浸透性、耐水性、柔軟性及び伸長性という優れた特性を有する。好ましい実施形態においては、合成材料層のためのポリマー材料には、ポリウレタン樹脂、ポリウレタンアクリル系樹脂、塩化ビニル樹脂、ゴムベースの樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、エラストマー樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂及び/又はポリオレフィン樹脂、例えばポリプロピレン及びポリエチレンが含まれる。合成材料層(iii)のためのそのような材料は、1つの部分層中に存在していても、又は2つ以上の部分層中に存在してよい。上記部分層のそれぞれの性質及び成分は、合成材料層(iii)に対して更なる固着特性及びバリア特性をもたらし得る。
【0043】
合成材料層(iii)がエラストマーを含有する場合に、該エラストマーは、好ましくはオレフィンベースのエラストマーである。好ましい実施形態においては、オレフィンベースのエラストマーは、ポリプロピレンベースのエラストマーである。好ましい実施形態においては、上記ポリプロピレンベースのエラストマーは、非配向ポリプロピレン、二軸配向ポリプロピレン及びブローポリプロピレン又はそれらの任意の組合せ物を含む群から選択される。エラストマーは、応力下に弾性変形を受けて、該材料が永久変形することなく、その元のサイズに戻る機械的特性を有することがよく知られている。したがって、オレフィンベースのエラストマーの使用は、平坦な表面及び湾曲した表面に皺の形成をもたらさずに良好な加工性をもって適用することができる自己接着性防汚構成物を提供することができる。上記ポリプロピレンベースのエラストマーは、更に、層(ii)、任意の層(iv)、そして任意の層(iv)が存在しない場合には層(v)への良好な固着を可能にする。層の良好な固着とは、層(ii)及び(iii)、層(iii)及び(iv)、そして任意の層(iv)が存在しない場合には層(iii)及び(v)が、その期間の間に、意図される物品使用条件下で分離しないことを意味する。
【0044】
好ましい実施形態においては、上記合成材料層(iii)の固着を更に改善するために、合成材料層(iii)は、その片側又は両側で処理される。好ましい実施形態においては、上記合成材料層(iii)は、その片側又は両側で、好ましくはその両側でコロナ処理又はプラズマ処理を用いて処理され、こうしてエポキシ官能基、アクリル酸官能基、カルボン酸官能基、アミノ官能基、ウレタン官能基及び/又はシリコーン官能基が合成材料層(iii)の表面上に生ずる。その他の好ましい実施形態においては、上記合成材料層(iii)は、その片側又は両側で、好ましくはその両側でプライマー処理を用いることによって処理される。好ましい実施形態においては、合成材料層(iii)は、ポリプロピレンベースのエラストマーを含み、該層は、その片側又は両側で、好ましくはその両側でN2ガスを用いたプラズマ処理で処理され、こうして上記層(iii)の片側又は両側に、好ましくはその両側にアミド官能基、アミン官能基及びイミド官能基が設けられる。合成材料層(iii)のその両側又は両表面に、表面エネルギーの増大のために官能基が設けられる一実施形態の概略断面図は、図2に示されている。
【0045】
移行により構成物の本来の特性を変更する可能性のある任意の成分に対して合成材料層(iii)が浸透性であるならば、合成材料層(iii)の厚さを調整すること、及び/又は合成材料層(iii)中若しくはその表面にバリア層を付加することが必要となることがある。合成材料の厚さは、本発明の特性が低下されない限りは、合成材料層(iii)の性質に依存する。好ましい実施形態においては、合成材料層(iii)の厚さは、10 μmから3000 μmまで、より好ましくは30 μmから1000 μmまで、更により好ましくは50μmから300 μmまでである。その厚さが薄すぎる場合に、任意の層(iv)若しくは層(v)に由来する任意の成分又は水分子による移行は、合成材料層(iii)を通過することがあり、構成物の本来の特性を変更することがある。
【0046】
層(iv)
本発明の第一の態様による構成物は、合成材料層(iii)と防汚トップコート(v)との間の結合として使用することができる任意のタイコート層(iv)を更に含む。好ましい実施形態においては、タイコート層(iv)は、1成分シリコーン系、2成分シリコーン系又は3成分シリコーン系である。後者の2つの系は、付加型又は縮合型の硬化系によって硬化することができる。タイコート層の組成は、好ましくは、重縮合系によって硬化可能な2成分ポリシロキサン型又はシラン型のシリコーンであり、つまりは該ポリシロキサン又はシランは、硬化を可能にする反応性基を含む。好ましい実施形態においては、タイコート層は、以下の化学構造:
【化3】
(式中、nは、0、1、2である)を有する有機官能性シランである。
【0047】
OR基は、加水分解性基、例えば好ましくはメトキシ基、エトキシ基又はアセトキシ基、より好ましくはアセトキシ基である。基Xは、好ましくは有機官能性基、例えばエポキシ基、アミノ基、メタクリルオキシ基又はスルフィド基、より好ましくは酸又は有機酸が付加された有機官能基である。その酸は、好ましくはカルボン酸、特に好ましくは酢酸であってよい。酸の付加は、防汚トップコート(v)としてのシリコーンエラストマーの接着性を大幅に高める。
【0048】
好ましい実施形態においては、タイコート層の厚さは、10μmから120 μmまで、より好ましくは20 μmから80 μmまで、更により好ましくは30 μmから60 μmまでである。その値が上記範囲内にある場合に、タイコート層(iv)は、構成物の製造方法の間の加熱工程の後に、例えばそのような製造方法の間に炉から出たときに乾燥しており、合成材料層(iii)への良好な固着を示す。タイコート層上に被覆される防汚トップコート(v)の十分な固着を示すことも可能にする。その厚さが120 μmより厚い場合に、タイコート(iv)は、加熱工程の後に乾燥しておらず、図4に図解される構成物が巻回される場合に、剥離可能なライナー(i)に貼り付き、その後に防汚トップコート(v)を被覆する後続工程は行うことができないという結果を招く。その厚さが20 μm未満である場合に、タイコート層(iv)及び防汚トップコート(v)の組合せ物は、自己接着性防汚構成物から剥がれて防汚特性の損失が起こることがある。
【0049】
層(v)
本発明の第一の態様による構成物は、シリコーン防汚トップコート(v)を更に含む。好ましい実施形態においては、シリコーン防汚トップコート(v)は、シリコーン樹脂を含む。シリコーン樹脂の種類の数は、たった1種類か、又は2種類以上であってよい。そのようなシリコーン樹脂は、縮合型のシリコーン樹脂であるか、又は付加型のシリコーン樹脂であってよい。さらに、シリコーン樹脂は、単独で乾燥されるべき1成分シリコーン樹脂であるか、又は硬化剤と配合されるべき2成分シリコーン樹脂であってよい。該シリコーン樹脂は、好ましくはエラストマー型シリコーン樹脂、より好ましくは縮合型反応によって硬化剤と反応することができる反応性基を含むポリシロキサンである。この種類のシリコーン系は、良好な低表面エネルギー特性を与える。ポリシロキサンの例は、一般的に式:
【化4】
のポリジアルキルシロキサン、ポリジアリールシロキサン又はポリアルキルアリールシロキサンである。
【0050】
好ましい実施形態においては、防汚トップコート(v)は、防汚剤を含有する。防汚効果が損なわれない限りは、防汚剤としてどのような適切な防汚剤も使用することができる。そのような防汚剤の例には、制限されるものではないが、シリコーン油、流動パラフィン、界面活性剤ワックス、ペトロラタム、動物油脂及び脂肪酸が含まれる。防汚剤の異なる種類の数は、1種類、2種類又はそれより多くの種類であってよい。防汚トップコート(v)が防汚剤を含有する場合に、防汚トップコート(v)の表面エネルギーは、より低く、かつ該自己接着性防汚構成物は、長時間にわたる良好な防汚特性を維持する。この防汚剤は、マトリクスとしてのシリコーン樹脂の表面に移行し、防汚トップコート(v)の表面を防汚成分で覆うことで、表面エネルギーを低下させることによって水中構造物上の汚損を低減及び抑制する。防汚剤は、好ましくはシリコーン油、より好ましくは非加水分解性のシリコーン油であり、かつ好ましくはシリコーン樹脂との反応性を有さない。好ましい一実施形態においては、シリコーン防汚トップコート(v)は、上記防汚トップコート(v)のシリコーンと反応性を有さない非加水分解性のシリコーン油を含む。後者のトップコート(v)の組成は、それが防汚効果を長期間にわたって維持することを可能にするので特に好ましい。上記シリコーン油は、好ましくは、ホモポリマー型シロキサン油又はコポリマー型シロキサン油、例えばフェニル-メチルジメチルシロキサンコポリマー及びフェニル-メチルシロキサンホモポリマーによって構成される。
【0051】
好ましい実施形態においては、防汚層中に存在するシリコーン油の割合は、0.1 %から150 %の乾燥重量、より好ましくは1 %から100 %までの乾燥重量、更により好ましくは2 %から50 %までの乾燥重量である。その値が上記範囲内にある場合には、自己接着性防汚構成物は、水中構造物上の汚損を低減及び抑制するために良好な防汚特性を有する。その値が0.1 %未満の乾燥重量である場合に、防汚特性は達成されず、汚損の量は、水中構造物において低減又は抑制することができない。その値がより高い場合に、シリコーン油は、自己接着性防汚構成物から放出され、タイコート層(iv)又は合成材料層(iii)への防汚トップコート(v)の固着に関する問題を引き起こし得る。
【0052】
好ましい実施形態においては、防汚トップコート(v)の厚さは、80μmから800 μmまで、より好ましくは120 μmから300 μmまで、更により好ましくは180μmから250 μmまでである。その値が上記範囲内にある場合に、防汚トップコート(v)は、構成物の製造方法の間の加熱工程の後に、例えばそのような製造方法の間に炉から出たときに乾燥しており、水中構造物上の水棲生物の出現を低減及び抑制する防汚特性を有する。その厚さが80 μm未満である場合に、防汚特性は、水中構造物上の水棲生物の出現を低減及び抑制するには不十分であることがあり、それにより水の摩擦が増加し、上記水中構造物の速度及び操縦性が低下することとなる。
【0053】
層(vi)
本発明の第一の態様による構成物は、剥離可能なポリマーフィルム及び/又は保護フィルムを含んでよく、該フィルムは、防汚トップコート(v)を保護するために該トップコート一面へと適用され、かつとりわけ構成物の接着層が、被覆されるべき表面上に適用されたら剥離されるべきである。好ましい一実施形態においては、剥離可能なポリマーフィルム(vi)は、本発明の第一の態様による構成物中に存在する。
【0054】
好ましい実施形態においては、剥離可能なポリマーフィルム(vi)は、ポリエステルフィルム又はポリプロピレンフィルムである。上記フィルムは、有利には、層(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)及び(vi)を含む構成物がロールへと巻回され、層(vi)が存在しなければ層(v)が層(i)と接触することとなる場合に、接着層(ii)にまでシリコーン及び/又は滲出液が移行することを防ぐ。これは、層(ii)、(iii)、任意に(iv)、(v)及び(vi)を含む構成物がロールへと巻回される場合も同様であり、その際、層(vi)が存在しなければ層(v)が層(ii)と直に接触することとなる。その他の実施形態においては、剥離可能なポリマーフィルムは、ポリフッ化ビニリデン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル又はその他の材料を含む。
【0055】
層(vi)は、1つ以上の機能を、好ましくは2つ以上の機能を有する可能性がある。1つの機能は、操作及び適用の間の引掻き及び擦れから層(v)を保護することであり得る。自己接着性防汚構成物の層(vi)は、該構成物の接着層が、被覆されるべき表面上に適用された直後に剥離する必要がある。
【0056】
2つ目の機能は、規定の加工がなされた表面を有する剥離可能なポリマーフィルム(vi)を層(v)に転写することであり得る。好ましい一実施形態においては、剥離可能なポリマーフィルム(vi)は、完全に乾燥していない防汚トップコート(v)上に積層される。この好ましい実施形態において、引き続き後硬化を用いることで、自己接着性防汚構成物のトップコート(v)の特殊な表面が生成される。層(vi)の外観が非常に滑らかなフィルムである場合に、層(v)は極めて滑らかであることとなる。好ましい実施形態においては、剥離可能なポリマーフィルム(vi)は、ポジ型のレリーフで構造化される。剥離可能なポリマーフィルム(vi)とシリコーン防汚トップコート(v)との間の接触により、上記ポジ型のレリーフのネガ型は、防汚トップコート(v)の表面に転写され、上記トップコート(v)の加工された表面が設けられる。加工された表面の目的は、抗力抵抗及び防汚特性を改善することである。3つ目の機能は、自己接着性多層防汚被膜構成物がロールへと巻回される場合に、該構成物の本来の特性を変更し得る、層(iv)及び(v)から層(i)を通じた成分の移行を抑制することであり得る。
【0057】
好ましい一実施形態においては、本発明の第一の態様による構成物は、層(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)及び(vi)を含み、ロールへと巻回して保管することができる。
【0058】
第2の態様において、本発明は、
(i)任意の剥離可能な下地ライナーと、
(ii)任意の下地ライナーが存在する場合には、該ライナー一面へと適用された接着層と、
(iii)接着層(ii)一面へと適用された、極性基がグラフトされた熱可塑性ポリウレタン又はポリオレフィンから選択される極性の熱可塑性ポリマーを含む層と、
(iv)極性の熱可塑性ポリマーを含む層(iii)一面へと適用された中間シリコーンタイコートと、
(v)中間シリコーンタイコート(iv)一面へと適用されたシリコーン防汚トップコートと、
(vi)任意に、剥離可能なポリマーフィルムと、
を含む、自己接着性多層防汚被膜構成物を提供する。
【0059】
層(i)
本発明による構成物は、任意に、接着層(ii)上に適用された剥離可能なライナーを含んでよく、該ライナーは基材表面に適用する前に剥離される。好ましい一実施形態においては、剥離可能なライナー(i)は存在する。
【0060】
特定の一実施形態においては、その剥離可能なライナーは、湿気を帯びた紙、とりわけ4重量%より多くの、とりわけ6重量%より多くの水を含有する紙である。
【0061】
この実施形態は、加硫性シリコーンを含むタイコートが使用される場合に、特に酢酸がタイコートの硬化の間に放出される場合に特に有利である。まさに、タイコート中で生ずる酢酸は、引き続きFRトップコート硬化の動態を劇的に遅くする。ここで、湿気を帯びた紙製ライナーは、タイコート中の残留酢酸の量を減らすので、有利にはFRトップコートの良好な硬化動態を回復することを可能にすることが確認された。まさに、タイコートの硬化の間に、層(i)、(ii)、(iii)、(iv)を含む構成物はロールへと巻回されるため、層(iv)は、放出された酢酸を吸収し得る層(i)と接触する。ロールへと巻回されない場合には、その際、FRトップコート(v)は、酢酸の量が減らされたタイコート層(iv)上に適用され得る。
【0062】
層(ii)
本発明による構成物は、防汚構成物を所望の位置に固定することができる接着層(ii)を更に含む。慣用の接着剤には、とりわけ感圧接着剤(PSA)が含まれる。
【0063】
感圧接着剤(PSA)は、少なくとも以下の特徴、つまり(a)被覆されるべき材料、例えば船体材料及び本発明のポリマー層(iii)に少なくとも5年間にわたる持続的な接着を生ずることができる特性、(b)海洋条件に耐える特性を有する任意の感圧接着剤であってよい。
【0064】
アクリル酸ポリマーをベースとする、とりわけアクリル系ポリマー及び架橋剤を含むPSAは、特に適切である。そのようなPSA配合物の例には、HenkelからLoctiteDuroTak(商標)の商品名で市販されているアクリルベースのポリマーが含まれる。架橋剤には、BayerからDesmodur(商標)の商品名で市販されているイソシアネート架橋剤が含まれる。
【0065】
接着層(ii)の外表面は、利用前に剥離される剥離可能なライナーで覆われていてよい。
【0066】
層(ii)は、一般的に、使用される材料の種類及び想定される用途に応じて、40 μmから200 μmの間の、より好ましくは60 μmから100 μmの間の厚さを有することとなる。層(ii)は、一般的に、構成物の8重量%~30重量%に相当する。
【0067】
層(iii)
本発明の構成物は、極性の熱可塑性ポリマーの層(iii)を含み、こうして、一方でタイコート及びFRトップコートを含み、かつもう一方で接着層(ii)を含む防汚構成物を共に結合することが可能となる。本明細書で使用される場合に、用語「極性の熱可塑性ポリマー」とは、分子構造内に、窒素、酸素及びハロゲンから選択される少なくとも1つの原子を炭素及び水素以外に含む熱可塑性ポリマーを意味する。
【0068】
予想外にも、これらの極性の熱可塑性ポリマーは、有利にはシリコーンタイコートと接着剤との間に良好な接着性を提供することが判明した。さらに、該ポリマーは、シリコーンFRトップコート中に任意に存在する滲出液が、下地接着層を通って移行することで、その後に基材の表面へのその接着性が変更されることを防ぐ。基材表面へのこの接着性は、それらの熱可塑性特性及び基材の表面不規則性に合わせる能力により更に改善される。
【0069】
特定の一態様においては、タイコート(iv)と接触している層(iii)の表面は、極性基がグラフトされたポリウレタン又はポリオレフィンから選択される熱可塑性ポリマーを含むか、又はそれらからなる。
【0070】
本発明による極性の熱可塑性ポリマーは、極性基がグラフトされたポリウレタン又はポリオレフィンから選択される。
【0071】
ポリウレタンは、とりわけ、一般的にTPUと呼ばれる熱可塑性ポリウレタンである。
【0072】
TPUは、ハードセグメント及びソフトセグメントから構成される直鎖状のセグメント型のブロックコポリマーである。ハードセグメントは、芳香族又は脂肪族のいずれであってもよい。芳香族TPUは、メチレンジフェニル4,4'-ジイソシアネート(MDI)のようなイソシアネートを基礎とするが、その一方で脂肪族TPUは、4,4'-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12 MDIとも呼ばれる)のようなイソシアネートを基礎とする。これらのイソシアネートが短鎖ジオールと組み合わされる場合に、それらはハードブロックとなる。一般的に、ハードブロックは芳香族であるが、日光曝露における色及び透明性の保持が優先される場合には、脂肪族ハードセグメントを使用することが好ましい。
【0073】
特定の一態様においては、TPUは、とりわけPET上の49510(0.006)(Argotec)等の脂肪族ポリウレタンである。
【0074】
ポリオレフィンは、ポリエチレン(PE)又はポリプロピレン(PP)、好ましくはポリプロピレン(PP)であってよい。
【0075】
好ましい一態様においては、極性の熱可塑性ポリマーは、極性基、とりわけ窒素、酸素及びハロゲンから選択される少なくとも1つの原子を含む基、例えばカルボン酸又は酸無水物を含む基がグラフトされたポリオレフィンであるか、又は該ポリオレフィンを含む。極性基がグラフトされたポリオレフィンは、とりわけ、ポリオレフィン層の少なくとも1つの表面にプラズマ処理を行うことによって製造することができる。好ましい一実施形態においては、層(iv)と接触している層(iii)の表面に極性基がグラフトされる。
【0076】
更なる一態様においては、極性の熱可塑性ポリマーは、アクリル酸がグラフトされたポリプロピレンである(本明細書ではPP-g-AAと呼ばれる)。
【0077】
PP-g-AAは、高度に酸化可能な第三級水素を含むポリプロピレン骨格を含む。このポリマーにおいては、ポリプロピレン単位の幾らかの量は、1つ以上のアクリル酸単位のブロックでグラフトされている。この関連における「グラフトされる」とは、アクリル酸ブロックがポリプロピレン単位の炭素原子と結合を形成することを意味する。1つのアクリル酸ブロックが、1つ以上のポリプロピレン巨大分子中の1つ、2つ又はそれより多くのポリプロピレン単位にグラフトされていてよい。一実施形態においては、ポリマーのポリプロピレン単位の約5モル%未満は、アクリル酸ブロックでグラフトされている。例えばCP28UB Embossing II(Profol)を含めて、アクリル酸がグラフトされた多くの市販のポリプロピレンが存在する。
【0078】
本発明による極性の熱可塑性ポリマーを含む層(iii)は、一般的に30 μmから300 μmの間の厚さを有する。層(iii)は、一般的に、構成物の6重量%~40重量%に相当する。
【0079】
層(iv)
本発明の構成物は、中間シリコーンタイコート(iv)を更に含む。シリコーンタイコートは、当業者によく知られており、それらは、例えば米国特許第4,861,670号に開示されている。
【0080】
一態様においては、シリコーンタイコート(iii)は、加硫性シリコーンを含有する。
【0081】
市販されるタイコートの一例としては、PPGによって販売されるSIGMAGLIDE(商標)790を挙げることができる。
【0082】
層(iv)は、一般的に10 μmから100 μmの間の、好ましくは20 μmから50 μmの間の厚さを有する。層(iv)は、一般的に、構成物の12重量%~16重量%に相当する。
【0083】
層(v)
本発明の構成物は、シリコーントップコート(v)を更に含む。
【0084】
一般的に、このトップコートは、ポリジアルキルシロキサン、例えばポリジメチルシロキサンのようなポリシロキサンベースの被膜である。そのポリシロキサンベースの被膜は、2成分コート又は1成分コートであってよい。好ましくは、該被膜は、2部組成物である。該組成物は、少なくとも1種の反応性シリコーン、少なくとも1種の縮合触媒及び少なくとも1種の架橋剤を重合及び/又は硬化させた生成物を含むか、又は該生成物であってよい。
【0085】
反応性シリコーンは、好ましくは、一般的に式:
【化5】
のポリジアルキルシロキサン、ポリジアリールシロキサン又はポリアルキルアリールシロキサンの少なくとも1つであり、その式中、
それぞれのR1は、ヒドロキシル基又は、
【化6】
であり、
それぞれのR2は、独立して、炭化水素基又はフッ素化炭化水素基を表し、
それぞれのR3及びR4は、独立して、炭化水素基を表し、
aは、0又は1であり、かつ、
mは、上記化合物の周囲温度及び周囲圧力の条件下での粘度が50000センチポアズ以下であるような値である。炭化水素基の例は、C1~C20アルキル、C6~C20アリール、C6~C20アルカリール、ビニル、イソプロペニル、アリル、ブテニル及びヘキセニルである。好ましい例には、フェニル、C1~C4アルキル、特にメチルが含まれる。
【0086】
フッ素化炭化水素基の一例は、3,3,3-トリフルオロプロピルである。好ましくは、それぞれのR2、R3及びR4は、アルキルであり、より好ましくはメチルである。
【0087】
生物汚損防止被膜は、平均分子量の点で異なる2種以上の反応性シリコーンの重合により、単純な単峰性組成よりも利点を有することが知られている二峰性組成が得られる生成物を含んでよいか、又は該生成物であってよい。
【0088】
縮合触媒は、RTV(室温加硫性)材料の縮合硬化を促進するために有用であることが知られているあらゆる縮合触媒であってよい。好適な触媒としては、スズ、ジルコニウム、チタン、及びアルミニウム化合物が挙げられる。これらの例としては、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズメトキシド、ジブチルスズビス(アセチルアセトネート)、1,3-ジオキシプロパン-チタンビス(アセチルアセトネート)、ナフテン酸チタン、チタン酸テトラブチル、オクタン酸ジルコニウム、及びアルミニウムアセチルアセトネートが挙げられる。有機酸と、鉛、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、アンチモン及びビスマス等の金属との様々な塩を使用することもできる。好ましい触媒はスズ及びチタン化合物である。
【0089】
適切な架橋剤には、三官能性(T)シラン及び四官能性(Q)シランが含まれる。この関連における用語「官能性」とは、ケイ素-酸素結合が存在することを意味する。好適な架橋剤としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、2-シアノエチルトリメトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、テトラエチルシリケート及びテトラ-n-プロピルシリケートが挙げられる。Q官能性化合物、テトラアルキルシリケートを使用することが好ましい。
【0090】
その他の添加剤には、補強性充填剤及び増量性(非補強性)充填剤が含まれる。適切な補強性充填剤は、一般的に300ナノメートル(nm)を大幅に上回る平均サイズを有する比較的大きな凝集粒子の形で市販されている。好ましい充填剤は、フュームドシリカ及び沈降シリカを含むシリカ充填剤である。これらの2つの形のシリカは、それぞれ90 m2/g~325 m2/gの範囲及び8 m2/g~150 m2/gの範囲の表面積を有する。
【0091】
補強性充填剤は、それに疎水性を与えるための処理剤で前処理されていてよい。一般的な処理剤は、シクロオクタメチルテトラシロキサン等の環状シリコーン、並びにヘキサメチルジシラザン(hexamethyldisilazane)、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシラザン(tetramethyldisilazane)、ヘキサメチルシクロトリシラザン、オクタメチルシクロテトラシラザン等の非環状及び環状のオルガノシラザン、並びにそれらの混合物から選択することができる。特に好ましい処理剤はヘキサメチルジシラザンである。
【0092】
非補強性充填剤は二酸化チタン、リトポン、酸化亜鉛、ケイ酸ジルコニウム、酸化鉄、珪藻土、炭酸カルシウム、ガラス繊維又はガラス球、酸化マグネシウム、酸化クロム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、破砕石英、焼成粘土、タルク、カオリン、アスベスト、カーボン、グラファイト、コルク、綿及び合成繊維から選択することができる。
【0093】
シリコーン組成物の様々な構成成分の相対割合は、広い限界内で変動され得る。充填剤の量は、一般的に、反応性シリコーン100部当たりに、約5重量部~200重量部、より一般的には10重量部~150重量部である。触媒及び架橋剤は、反応性シリコーン及び充填剤の組合せ物に対して、それぞれ、0.001重量%~2.5重量%及び約0.25重量%~5.0重量%の量で存在してよい。
【0094】
適切な付加硬化型シリコーン被覆材料は、防汚コートのために使用することもできる。そのような付加硬化型被覆材料は、当業者に知られており、例えば欧州特許第0874032号に記載されている。
【0095】
特定の一実施形態においては、FRトップコートは、加硫性シリコーン及び滲出液を含む。シリコーンポリマーを通じて非常にゆっくりと放出される滲出液は、一般的に、不所望な生物の沈着を更に一層遅延させ、したがって加硫性シリコーンの防汚特性を更に改善することを可能にする。滲出液には、大気圧での少なくとも250℃の沸点を有する化合物が含まれる。滲出液の例は、シリコーン油、低分子量ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイソシアネート、ポリウレタン、ポリエポキシドを含む。滲出液は、とりわけシリコーン油である。シリコーン油は、一般的にポリジヒドロカルビルシロキサンからなり、そのうちヒドロカルビル基は、ヘテロ原子で置換されていてよい。ヒドロカルビル基は、アルキル基、特にメチル基であってよく、又はそれらの全て若しくは一部は、アリール基、特にフェニル基であってよい。
【0096】
シリコーンFRトップコートは、乾燥膜厚で10 μm~600 μm、より一般的には20 μm~500 μm、最も一般的には30 μm~400 μm、より好ましくは150 μm~250 μmであってよい。層(v)は、一般的に、構成物の25重量%~45重量%に相当する。市販されるシリコーントップコートの一例は、PPGによって販売されるSIGMAGLIDE(商標)890である。
【0097】
層(vi)
本発明の構成物は、剥離可能なポリマーフィルム及び/又は保護フィルムを含んでよく、該フィルムは、FRトップコート(v)を保護するために該トップコート一面へと適用され、かつとりわけ構成物の接着層が、被覆されるべき表面上に適用されたら剥離されるべきである。
【0098】
剥離可能なポリマーフィルムは、とりわけポリエステルフィルム又はポリプロピレンフィルムであってよい。このフィルムは、有利には、層(i)、(ii)、(iii)、(iv)及び(v)を含む構成物がロールへと巻回されて、層(v)が層(i)と接触する場合に、接着層(ii)にまでシリコーン及び/又は滲出液が移行することを防ぐ。
【0099】
有利には、保護フィルム(vi)は、FRトップコートの完全な硬化及び/又は乾燥の前に層(v)上に適用され、それによって、FRトップコートの表面を、とりわけ非常に滑らかな表面又はエンボスされた表面へと構造化することが可能となる。
【0100】
本発明の構成物は、好ましくは、層(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)及び(vi)を含み、ロールへと巻回して保管することができる。
【0101】
本発明の自己接着性多層防汚構成物の製造方法
本発明による構成物は、
a)剥離可能な下地ライナー(i)を接着層(ii)で被覆する工程と、
b)接着層(ii)を、極性基でグラフトされたポリウレタン又はポリオレフィンから選択される極性の熱可塑性ポリマーを含む層(iii)で被覆する工程と、
c)層(iii)を、シリコーンタイコート(iv)で被覆する工程と、
d)タイコート(iv)を、シリコーン防汚トップコート(v)で被覆する工程と、
e)任意に、シリコーン防汚トップコート(v)を、剥離可能なポリマーフィルムで被覆する工程と、
を含む、方法によって製造することができる。
【0102】
被覆された構造物の製造方法及び被覆された構造物
もう一つの態様においては、本発明はまた、構造物の外表面の少なくとも一部を、本発明による自己接着性多層防汚被膜構成物で被覆する工程を含む、被覆された構造物の製造方法に関する。
【0103】
具体的な一実施形態においては、被覆されるべき構造物の外表面は、本発明による構成物の適用前に、防錆層で事前に被覆されている。
【0104】
更なる一態様においては、更に本発明は、本発明による構成物で少なくとも部分的に被覆された構造物に関する。被覆された構造物は、とりわけ浸水構造物である。被覆された構造物の例には、とりわけ、船体、とりわけ商船又はヨット、陸上構造物、例えば発電所用の配管、養魚業で使用される構造物及び海上構造物が含まれる。
図1
図2
図3
図4