(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-23
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】レーザ加工システムおよびレーザ加工方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/082 20140101AFI20220111BHJP
B23K 26/03 20060101ALI20220111BHJP
B23K 26/044 20140101ALI20220111BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
B23K26/082
B23K26/03
B23K26/044
G01B11/00 Z
(21)【出願番号】P 2020527022
(86)(22)【出願日】2018-10-17
(86)【国際出願番号】 EP2018078430
(87)【国際公開番号】W WO2019096529
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2020-05-15
(31)【優先権主張番号】102017126867.7
(32)【優先日】2017-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516234100
【氏名又は名称】プレシテック ゲーエムベーハー ウント ツェーオー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ストレベル マチアス
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0356595(US,A1)
【文献】特開2016-107318(JP,A)
【文献】特開2016-000421(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/082
B23K 26/03
B23K 26/044
G01B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間の中の2つの方向(x、y)に加工レーザビーム(10)を偏向させるように
構成された第1偏向光学系(110)
であって、少なくとも1つのワークピース(1)上で前記加工レーザビーム(10)を2次元に振動させるように構成された第1偏向光学系(110)、と、
前記加工レーザビーム(10)から独立して、空間の中の2つの方向(x、y)に測定ビーム(15)を偏向させるように
構成された第2偏向光学系(120)と、
前記加工レーザビーム(10)
のビーム経路の中へ前記測定ビーム(15)を結合するように
構成された結合デバイス(130)
であって、前記加工レーザビーム(10)のビーム経路
において前記第1偏向光学系(110)の後方に配置されている
結合デバイス(130)と、
前記測定ビーム(15)を利用して前記少なくとも1つのワークピース(1)上の継ぎ目の連なりを決定するように構成された評価ユニットであって、光コヒーレンス干渉計を含む評価ユニットと、
前記第1偏向光学系(110)を制御して、前記加工レーザビーム(10)に前記決定された継ぎ目の連なりを追跡させるように構成された制御ユニットと、
を含むことを特徴とする、レーザ加工システム(100)。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ加工システム(100)であって、前記第1偏向光学系(110)は、2つの独立した第1偏向ミラーを含むことを特徴とする、レーザ加工システム(100)。
【請求項3】
請求項1
または2に記載のレーザ加工システム(100)であって、前記第2偏向光学系(120)は、2つの独立した第2偏向ミラーを含むことを特徴とする、レーザ加工システム(100)。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか1項に記載のレーザ加工システム(100)であって、前記第2偏向光学系(120)は、
前記少なくとも1つのワークピース(1)上で前記測定ビーム(15)
を線
形または円
形に動かすように構成されていることを特徴とする、レーザ加工システム(100)。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載のレーザ加工システム(100)であって、前記第2偏向光学系(120)は、前記加工レーザビーム(10)の前進方向(20)から独立して、
前記少なくとも1つのワークピース(1)上の前記測定ビーム(15)を偏向させるように
構成されていることを特徴とする、レーザ加工システム(100)。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項に記載のレーザ加工システム(100)であって、前記結合デバイス(130)は、ビームスプリッタであることを特徴とする、レーザ加工システム(100)。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか1項に記載のレーザ加工システム(100)であって、前記結合デバイス(130)は、前記加工レーザビーム(10)と前記測定ビーム(15)を同軸に重ね合わせるように
構成されていることを特徴とする、レーザ加工システム(100)。
【請求項8】
加工レーザビーム(10)が少なくとも1つのワークピース(1)上で2次元の運動を実施するように、第1偏向光学系(110)を用いて、空間の中の2つの方向(x、y)に前記加工レーザビーム(10)を偏向させるステップ
であって、前記加工レーザビーム(10)が前記少なくとも1つのワークピース(1)上で振動運動を実施するステップと、
前記加工レーザビーム(10)から独立して、第2偏向光学系(120)を用いて、空間の中の2つの方向(x、y)に測定ビーム(15)を偏向させるステップと、
前記加工レーザビーム(10)のビーム経路の中へ前記測定ビーム(15)を結合する
ことを、前記加工レーザビーム(10)のビーム経路において前記第1偏向光学系(110)の後方に配置された結合デバイス(130)によって行う、ステップと、
光コヒーレンス断層撮影により、前記測定ビーム(15)を利用して前記少なくとも1つのワークピース(1)上の継ぎ目の連なりを決定するステップと、
前記加工レーザビーム(10)を利用して、前記決定された継ぎ目の連なりに基づいて、前記少なくとも1つのワークピース(1)上の継ぎ目の連なりを追跡するステップと、
を含むことを特徴とする、レーザ加工方法。
【請求項9】
請求項
8に記載の方法であって、前記測定ビーム(15)は、線形運動または円形運動を実施することを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工システム、とりわけ、レーザ溶接またはレーザ切断のためのレーザ加工ヘッドなどの、レーザビームによる材料加工のためのシステムに関し、また、レーザ加工方法に関する。本発明は、とりわけ、例えば光コヒーレンス断層撮影による継ぎ目測定および継ぎ目の追跡に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ溶接またはレーザ切断などの、レーザビームによる材料加工において、レーザ光供給源、例えば光ファイバの端部によって放出されるレーザビームは、ビーム誘導および合焦光学系の支援によって、機械加工されることになるワークピース上に焦点が合わせられる。この文脈において、コリメータ光学系および合焦光学系を備えたレーザ加工ヘッドを使用することが、標準的な実務であり、レーザ光は、光ファイバを介して供給され、光ファイバは、レーザ供給源とも称される。レーザによる材料加工のためのデバイスにおいて、例えば、レーザ加工ヘッドにおいて、レーザ光は、レンズなどの複数の光学要素を通過する。
【0003】
多くの溶接プロセスにおいて、加工レーザビームの衝突のポイントは、安定したプロセスを現実化するために、接合されることになる2つの部品の継ぎ目の連なりと非常に精密に一致しなければならない。これは、溶接プロセス中の継ぎ目の位置を連続的に決定することによって実現され得、レーザがスキャナの支援によってこの継ぎ目位置に常に再調節され得るようになっている。しかし、溶接プロセス中の継ぎ目位置を決定するための最も知られている技術的な解決策は、継ぎ目の連なりに対して直交する、部材の上へのレーザ線の投影、およびカメラの支援によるこのレーザ線の評価に基づいている。
【0004】
そのような光切断方法は、加工光学系に対するレーザ線の配置が恒久的に事前定義されており、したがって、この方法は、特定のプロセスに関して事前定義された溶接方向のみに機能するという不利益を有している。換言すれば、継ぎ目の連なりの決定は、方向的に独立していない。光切断方法における1つの潜在的な解決策は、継ぎ目の連なりに追従するために、光学系全体を一体に回転させることであるが、これは、限られた程度にのみ、具体的にはロボットガイド式のプロセスにおいてのみ可能である。
【0005】
独国特許第102009057209B4は、走査光学系を備えたレーザによる材料加工のためのデバイスを説明しており、走査光学系は、誘導装置によって、機械加工されることになるワークピースに対して移動させられ得る。デバイスは、プロジェクタと画像センサとを含み、プロジェクタは、加工されることになるワークピースの上に測定構造の形態の測定光を投影するのに役立ち、画像センサは、プロジェクタによって放出される測定光の波長範囲の中で高感度になっている。プロジェクタおよび画像センサは、走査光学系に接続されており、結果的に、デバイスの動作中に走査光学系とともに移動させられる。したがって、方向的に独立した測定は可能ではない。
独国特許第102015015330A1は、OCT測定ビームを用いて振動プロセスビームにより実行された加工プロセスの監視のための装置及び方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】独国特許第102009057209号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、レーザ加工システム、とりわけ、レーザ加工ヘッドまたはレーザ溶接システムなどの、レーザビームによる材料加工のためのシステム、ならびに、対応するレーザ加工方法を利用可能にするという目的に基づいており、それによって、精密な継ぎ目の追跡が、加工方向から独立して現実化され得る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、独立請求項の対象によって得られる。有利な実施形態は、従属請求項の中に開示されている。
【0009】
本発明の実施形態は、レーザ加工システムに関する。レーザ加工システムは、空間の中の2つの方向に加工レーザビームを偏向させるように設計されている第1偏向光学系と、加工レーザビームから独立して、空間の中の2つの方向に測定ビームを偏向させるように設計されている第2偏向光学系と、加工レーザビームのビーム経路の中に配置されており、加工レーザビームのビーム経路の中へ測定ビームを結合するように設計されている結合デバイスとを含む。
【0010】
第1偏向光学系は、好ましくは、2つの独立した第1偏向ミラーを含む。第1偏向光学系は、典型的に、例えば、線に沿った運動、好ましくは、継ぎ目の連なりに対して直交する線に沿った運動、円形運動、または、「8の字」の形態の運動など、加工レーザビームの2次元の振動のために設計されている。
【0011】
第2偏向光学系は、好ましくは、2つの独立した第2偏向ミラーを含む。第2偏向光学系は、典型的に、測定ビームの線形運動および/または円形運動のために設計されている。
【0012】
第2偏向光学系は、好ましくは、加工レーザビームの前進方向から独立して、少なくとも1つのワークピース上の、とりわけ、2つのワークピースの接合領域上の測定ビームを移動させるように設計されている。
【0013】
結合デバイスは、好ましくは、ビームスプリッタである。結合デバイスは、典型的に、加工レーザビームおよび測定ビームを同軸に本質的に重ね合わせるように設計されている。
【0014】
レーザ加工システムは、好ましくは、制御ユニットを含み、制御ユニットは、加工レーザビームがワークピース上の継ぎ目の連なりを追跡するように、第1偏向デバイスを制御するように設計されている。
【0015】
レーザ加工システムは、好ましくは、評価ユニットを含み、評価ユニットは、測定ビームによって、ワークピース上のエッジ輪郭などの継ぎ目の連なり、および/または、溶接継ぎ目の連なりを測定するように設計されている。評価ユニットは、加工レーザビームの前で、接合されることになる部材のエッジ輪郭を測定することが可能であり、および/または、加工レーザビームの後ろで、溶接継ぎ目の連なりを測定することが可能である。この文脈において、評価ユニットは、とりわけ、光ショートコヒーレンス断層撮影によって継ぎ目の連なりを決定するように設計され得る。
【0016】
本発明の別の態様は、レーザ加工方法に関する。方法は、加工レーザビームが少なくとも1つのワークピース上で2次元の運動を実施するように、空間の中の2つの方向に加工レーザビームを偏向させることと、加工レーザビームから独立して、空間の中の2つの方向に測定ビームを偏向させることと、加工レーザビームのビーム経路の中へ測定ビームを結合することとを含む。
【0017】
加工レーザビームは、好ましくは、例えば、線形運動、円形運動、または、「8の字」の形態の運動の形態の振動運動(2D揺動プロセス)を実施する。
【0018】
測定ビームは、好ましくは、継ぎ目の連なりの上で、例えば、エッジ輪郭などの上で、および/または、溶接継ぎ目の連なりの上で、線形運動または円形運動を実施する。
【0019】
また、方法は、好ましくは、測定ビームによって、継ぎ目の連なり、例えば、接合されることになる2つのワークピースのエッジ輪郭を決定することと、決定された継ぎ目の連なりに基づいて、加工レーザビームによって継ぎ目の連なりを追跡することとを含む。光ショートコヒーレンス断層撮影は、好ましくは、継ぎ目の連なりを決定するために使用される。
【0020】
好適な随意的な実施形態および特別な本発明の態様は、従属請求項、図面、および本明細書から推測され得る。
【0021】
現在説明されている実施形態は、部材上の継ぎ目の連なりの方向的に独立した測定、および、決定された継ぎ目の位置上へのレーザビームの精密な位置決めを可能にする。光学的な測定ビームは、別個のアクチュエータシステムによって誘導されており、結合デバイスによってそのアクチュエータシステムの下流の加工レーザのビーム経路の中へ結合されており、それが加工レーザと重ね合わせられるようになっている。この配置は、加工プロセス中の加工レーザビームの運動から独立して、加工レーザビームの現在の位置の周りの部材の幾何学形状の準同軸の測定を可能にする。
【0022】
光切断方法における線投影と比較して、継ぎ目の検出に関して現在説明されている実施形態の別の利点は、達成可能な分解能である。現在説明されている実施形態は、とりわけ、光コヒーレンス断層撮影が使用されるときに、約1μmの測定された距離値に関する精度を提供する。隅肉溶接のエッジ高さなどの、部材上の垂直方向の構造が、この精度によって測定され得る。それとは対照的に、光切断方法における達成可能な分解能は、主に、線投影の品質によって限定される。典型的な線幅は、約20μmから100μmの範囲の中にある。したがって、カメラ画像上の線を評価することによって実施される構造的な検出の分解能は、約1桁だけ低下させられる。
【0023】
本発明の例示的な実施形態は、図に図示されており、より詳細に下記に説明されている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態によるレーザ加工システムを概略的に示す図である。
【
図2】本発明の実施形態による加工レーザビームおよび測定ビームの運動を概略的に示す図である。
【
図3】光コヒーレンス断層撮影の線走査の測定データを示す図である。
【
図4】本発明の実施形態によるレーザ加工方法のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
別段の記述がない限り、同一の要素および同一に作用する要素は、以下の説明において同じ参照符号によって識別されている。
【0026】
図1は、本発明の実施形態によるレーザ加工システム100、とりわけ、レーザ切断などの、レーザビームによる材料加工のためのシステムを示している。加工レーザのビーム経路は、
図1の左側の部分に概略的に図示されており、光学的なセンサシステムのビーム経路は、右側に図示されている。実施形態によれば、光学的なセンサシステムは、コヒーレンス干渉計であってよい。
【0027】
レーザ加工システム100は、第1偏向光学系110と、第2偏向光学系120と、結合デバイス130とを含み、第1偏向光学系110は、空間の中の2つの方向x、yに加工レーザビーム10を偏向させるように設計されており、第2偏向光学系120は、加工レーザビーム10から独立して、空間の中の2つの方向x、yに測定ビーム15(センサビーム)を偏向させるように設計されており、結合デバイス130は、加工レーザビーム10のビーム経路の中に配置されており、加工レーザビーム10のビーム経路の中へ測定ビーム15を結合するように設計されている。第2偏向光学系120は、好ましくは、加工レーザビーム10の前進方向または加工方向20から独立して、少なくとも1つのワークピース1の上の、とりわけ、2つのワークピースの接合領域の上の測定ビーム15を偏向させるように設計されている。
【0028】
本発明の実施形態によれば、継ぎ目の検出は、この継ぎ目に対して加工レーザビーム10を精密に位置決めするために、例えば、部材の溶接中に行われる。測定ビーム15は、第2偏向光学系120によって2つの方向に偏向させられ、測定ビーム15は、所与の加工プロセス、例えば、溶接プロセスの現在の前進方向から独立して、継ぎ目位置を決定することを可能にする。加工レーザビームのビーム経路の中の別個のアクチュエータシステムに起因して、2つの方向へのレーザビーム振動(「2D揺動プロセス」)が、測定ビーム経路の中の測定ビーム15の運動から独立して現実化され得る。
【0029】
実施形態によれば、レーザ加工システム100(「レーザ加工ヘッド」とも称される)は、加工レーザビームを利用可能にするための(不図示の)レーザ供給源、例えば、光ファイバを含み、また、加工レーザビーム10をコリメートさせるように設計されているコリメータ光学系140と、少なくとも1つのワークピース1または部材上に加工レーザビーム10の焦点を合わせるように設計されている合焦光学系150とを含む。
【0030】
レーザ加工システム100またはその部分、例えば、溶接ヘッドは、実施形態によれば、加工方向20に沿って移動可能であってよい。加工方向20は、ワークピース1に対するレーザ加工システム100、例えば、溶接ヘッドの溶接方向および/または移動方向であってよい。加工方向20は、とりわけ、水平方向であってよい。加工方向20は、「前進方向」または「プロセス方向」とも称され得る。
【0031】
いくつかの実施形態では、レーザ加工システム100は、溶接プロセスのために設計されている。レーザ加工システム100は、個々のワークピース上に溶接継ぎ目を作り出すことが可能であり、または、
図1による例に図示されているような2つのワークピース(「接合されることになる部材」)を一緒に溶接することが可能である。レーザ加工システム100は、測定ビーム15によって、ワークピース1の上のエッジ輪郭2などの継ぎ目の連なり、および/または、溶接継ぎ目の連なり3を測定することが可能である。接合されることになる部材のエッジ輪郭2は、とりわけ、加工レーザビーム10の前で測定され得、および/または、溶接継ぎ目の連なり3は、加工レーザビーム10の後ろで測定され得る。換言すれば、継ぎ目の連なりは、加工レーザビーム10の上流および/または下流で、測定ビーム15によって測定または決定され得る。
【0032】
レーザ加工システム100は、好ましくは、評価ユニットを含み、評価ユニットは、測定ビーム15によって、ワークピースの上のエッジ輪郭2などの継ぎ目の連なり、および/または、溶接継ぎ目の連なり3を測定するように設計されている。評価ユニットは、加工レーザビーム10の前で、接合されることになる部材のエッジ輪郭を測定もしくは決定することが可能であり、および/または、加工方向20に関して加工レーザビーム10の後ろで、溶接継ぎ目の連なりを測定もしくは決定することが可能である。評価ユニットは、例えば、光コヒーレンス断層撮影装置の中に含有され得、継ぎ目の連なりを決定するために、反射された測定ビームを評価することが可能である。
【0033】
レーザ加工システム100は、制御ユニットを含み、制御ユニットは、加工レーザビーム10がワークピースの上の継ぎ目の連なりを追跡するように、第1偏向デバイス110を制御するように設計されている。制御ユニットは、評価ユニットに接続され得、継ぎ目の連なりに関するデータを評価ユニットから受け取ることが可能である。このデータに基づいて、制御ユニットは、加工レーザビーム10がワークピースの上の継ぎ目の連なりを追跡するように、第1偏向デバイス110を制御することが可能である。
【0034】
レーザ加工システム100は、空間の中の2つの方向x、yに、加工レーザビーム10および測定ビーム15を偏向させるように設計されている。換言すれば、2自由度が、2つのビームのそれぞれに利用される。空間の中の2つの方向x、yは、デカルト座標系の方向、例えば、X方向およびY方向であることが可能である。空間の中の2つの方向は、互いに直交して延在し、平面を定義することが可能である。座標系は、ワークピースに対して定義され得、とりわけ、ワークピースに対して固定されているかまたは静止しているようにできる。代替的に、座標系は、加工方向20に移動するレーザ加工システム100のパーツ、例えば、溶接ヘッドに対して定義され得、とりわけ、溶接ヘッドに対して固定されているかまたは静止しているようにできる。
【0035】
第1偏向光学系110は、好ましくは、少なくとも1つの第1偏向ミラーを含み、とりわけ、2つの独立した第1偏向ミラーを含む。独立した第1偏向ミラーは、空間の中の2つの方向に加工レーザビーム10を偏向させるために、それぞれの回転軸線の周りに回転可能となるように装着され得る。回転軸線は、互いに直交して延在することが可能であり、2自由度を利用可能にすることが可能であり、それによって、加工レーザビーム10は、2次元に偏向され得る。
【0036】
したがって、レーザ光学系は、アクチュエータシステムを含み、アクチュエータシステムは、例えば、2つの独立した走査ミラーから構成されている走査光学系などであり、それによって、加工レーザビーム10は、部材の上で2つの方向に偏向され得る。このように、加工レーザビーム10は、溶接プロセス、例えば、隅肉溶接の間の継ぎ目の連なりを追跡するために、空間の中の2つの方向において部材上に精密に位置決めされ得る。
【0037】
実施形態によれば、第1偏向光学系110は、加工レーザビーム10の2次元の振動のために設計されている。加工レーザビーム10は、とりわけ、プロセス中に2つの方向に振動することが可能であり、部材に対する加工レーザビーム10の影響が及ぶ領域を意図的に増加させるようになっており、それによって、より安定した溶接接続を実現するようになっている。そのような2D揺動プロセスにおいて、加工レーザビーム10は、例えば、線
(図2(a))、円形(
図2(
b))、または、8の字(
図2(
c)および
図2(
d))の形態で、特定の2次元の走査図形に沿って、部材上を移動させられ得る。振動は、典型的に、約50Hzから1000Hzの範囲にある周波数によって、好ましくは、約100Hzから800Hzの範囲にある周波数によって生じる。
【0038】
2次元の図形に沿った加工レーザビーム10の高周波数運動に起因して、レーザ速度、溶接溶け込み深さ、および継ぎ目幅などの、プロセス変数が、運動の振幅および周波数によって意図的に調節され得る。例えば、レーザの影響が及ぶ領域は、レーザ振動の振幅を適合させることによって、所与の継ぎ目の幾何学形状に関して増加させられ得、それによって、強化された隙間を橋渡す能力を実現するようになっている。そのうえ、銅およびアルミニウムなどの2つの異なる材料の間の接続が作り出されるときには、溶融された分量の中の混合比が、それに従って振幅および周波数を選択することによって意図的に調節され得る。
【0039】
いくつかの実施形態では、第2偏向光学系120は、少なくとも1つの第2偏向ミラーを含み、とりわけ、2つの独立した第2偏向ミラーを含む。独立した第2偏向ミラーは、空間の中の2つの方向に測定ビーム15を偏向させるために、それぞれの回転軸線の周りに回転可能となるように装着され得る。回転軸線は、互いに直交して延在することが可能であり、2自由度を利用可能にすることが可能であり、それによって、測定ビーム15は、2次元に偏向され得る。第2偏向光学系120は、典型的に、
図2に関してより詳細に説明されているように、測定ビームの線形運動および/または円形運動のために設計されている。
【0040】
本発明の実施形態によれば、結合デバイス130は、ビームスプリッタである。結合デバイス130は、典型的に、加工レーザビーム10および測定ビーム15を同軸に本質的に重ね合わせるように設計されている。結合デバイス130は、合焦光学系150の上流に配置され得、加工レーザビーム10および測定ビーム15が両方とも合焦光学系150を通過するようになっている。
【0041】
説明されている実施形態によれば、センサシステムの測定光は、加工レーザのビーム経路の中へ結合されており、部材上の測定ビーム15の位置は、別個のアクチュエータシステムまたは走査ユニットによって移動させられ得る。距離測定に関するセンサ原理は、例えば、光ショートコヒーレンス干渉法(OCT)に基づいていることが可能である。測定ビーム15の結合は、ビームスプリッタによって現実化され得、ビームスプリッタは、加工レーザのアクチュエータシステムの下流に、ホットレーザビームのビーム経路の中に位置付けされている。この配置に起因して、測定ビーム15および加工レーザビーム10の準同軸の重ね合わせが実現され、2つのビームのそれぞれは、別個のアクチュエータシステムによって、他のビームから独立して、2つの方向に偏向させられ得る。1つの重要な利点は、加工レーザビーム10の現在の位置の周りの部材の幾何学形状が、プロセス中に、加工レーザビーム10の運動から独立して、測定ビーム15によって測定され得るという点に見られ得る。
【0042】
例えば、測定ビーム15は、最初に、溶接継ぎ目の精密な位置を検出および調節するために、溶接方向に関してレーザ位置の前に位置付けされている線に沿って繰り返して移動させられ得る。それに続いて、測定ビーム15は、継ぎ目の幾何学形状を測定するために、例えば、溶接方向に関してレーザ位置の後ろに位置付けされている線に沿って繰り返して移動させられ得る(
図1ならびに
図2(a)および
図2(b)を参照)。部材上での測定ビーム15の別の可能な運動は、円形の図形に沿って繰り返される運動であり、レーザ位置の前での継ぎ目検出、および、レーザ位置の後ろでの完成した継ぎ目の輪郭の監視が、それによって同様に現実化され得る(
図2(c)を参照)。
【0043】
接続部の継ぎ目の連なりに対するレーザビームの精密な位置決めに加えて、また、以前に決定された継ぎ目位置の周りでの振動運動、すなわち、いわゆる揺動プロセスをレーザビームが実施する場合には、溶接プロセスの品質、および、接続部の安定性に関して、有利である可能性がある。例えば、この振動運動の中心だけが、継ぎ目位置と一致することが可能であり、レーザは、高い周波数でこの中心の周りで移動させられる。部材の継ぎ目の幾何学形状および材料に応じて、この運動は、継ぎ目に対して直交する線形経路に沿って、または、また、円形もしくは8の字などの事前定義された2次元の図形に沿って行われることが可能である。したがって、現在説明されている実施形態は、2次元の走査図形に沿って高周波数レーザビーム振動を現実化することを可能にし、その位置は、コンポーネントの上でのこの継ぎ目の方向から独立して、溶接継ぎ目の連なりを非常に精密に追跡する。
【0044】
図2は、本発明の実施形態による、加工レーザビーム10および測定ビーム15の運動を概略的に示している。この図は、とりわけ、継ぎ目の検出および継ぎ目の品質監視のための測定ビーム15、ならびに、加工レーザの同時の高周波数レーザ振動(2D揺動プロセス)の種々の走査図形を示している。矢印は、湾曲した継ぎ目の連なり11に沿って、溶接プロセスの前進方向を示している。溶接継ぎ目に沿ってレーザおよび加工レーザを測定するための3つの連続的な閉じた走査図形が、この図にそれぞれ図示されている。
【0045】
走査図形に沿った高さ外形は、測定ビーム15による表面の高速走査に起因して発生させられ得る。継ぎ目の位置は、レーザビームの前の線によって取得され、完成した溶接ビードの高さ外形は、レーザビームの後ろの線を走査することによって取得される。加工レーザビーム10は、例えば、継ぎ目の連なりに対して直交して延在している線に沿って、高周波数の2次元の揺動プロセスを同時に実施することが可能である(
図2(a))。加工レーザビーム10の走査図形に関する別のオプションは、円形の図形または8の字の形状である(
図2(b)および
図2(c))。測定ビーム15の走査図形のための代替例は、円形であり、その円形は、レーザの上流および下流の2つの線と同様に、レーザの前に継ぎ目検出エリアを含有し、レーザの後ろに継ぎ目品質監視領域を含有する(
図2(d))。測定ビーム15の走査図形、および、加工ビーム10の走査図形は、当然のことながら、互いに任意に組み合わせられ得る。また、円形線または円形もしくは8の字の形態の図形以外の形状も使用され得る。
【0046】
円形の図形の1つの利点は、測定ビーム15および加工ビーム10をそれぞれ偏向させるためのアクチュエータシステムが、急激でない減速運動および加速運動しか実施する必要がなく、図形のより高い繰り返し周波数が実現され得るようになっているという点に見られ得る。8の字の形態の加工ビーム10に関する走査図形は、同じ理由のために有利である可能性がある。所与のプロセスのための特定の要件、例えば、継ぎ目の幾何学形状、精密な継ぎ目の連なり、または、さらには、前進速度は、線走査が使用されるかまたは円形走査が使用されるかに関して決定的である可能性がある。
【0047】
円形に沿って測定ビーム15をスキャンする別の利点は、継ぎ目の連なりが実際の加工の前に知られる必要がないという点に見られ得る。レーザの上流および下流の2つの線は、測定のための継ぎ目に対して常に直交するよう整合させられるべきである。この目的のために、継ぎ目の連なりについての情報は、測定ビームのアクチュエータシステムのための活性化ソフトウェアへ転送され得、線がプロセス中に現在の継ぎ目方向に対して常に直交するよう整合させられ得るようになっている。円形走査では、走査図形のそのような整合は排除される。その理由は、円形のあるセグメントが、それぞれの継ぎ目の方向に関して、すなわち、レーザの衝突のポイントの前および後ろにおいて、継ぎ目に対して常に垂直に延在しているからである。
【0048】
図3は、上流線および下流線から構成される線走査において、隅肉溶接構成に関して光ショートコヒーレンス断層撮影(OCT)システムによって記録された測定データを示している。示されているデータは、アルミニウム隅肉溶接接続部を溶接する間の溶接プロセスに関する加工光学系による、線走査のOCT測定データである。OCT測定の距離値が、マイクロメートルでY軸の上にプロットされており、部材の位置は、X軸の上に(任意の単位で)プロットされている。隅肉溶接の高さ、および、その精密な位置は、レーザの前の線に沿った測定データによって決定され得る(
図3(1)を参照)。完了した継ぎ目の外形およびその品質は、レーザの後ろの線に沿った測定データによって監視され得る(
図3(2)を参照)。
【0049】
図4は、本発明の実施形態によるレーザ加工方法のフローチャートを示している。方法は、
図1~
図3を参照して説明されている態様を含むことが可能である。
【0050】
方法は、加工レーザビームが少なくとも1つのワークピース上で2次元の運動を実施するように、空間の中の2つの方向に加工レーザビームを偏向させることと、加工レーザビームから独立して、空間の中の2つの方向に測定ビームを偏向させることと、加工レーザビームのビーム経路の中へ測定ビームを結合することとを含む。加工レーザビームは、好ましくは、振動運動(「2D揺動プロセス」)を実施する。測定ビームは、例えば、
図2に図示されているように、エッジ輪郭などの継ぎ目の連なり、および/または、溶接継ぎ目の連なりに沿って、線形運動または円形運動を実施することが可能である。また、方法は、典型的に、例えば、加工レーザビームの前で測定ビームによって継ぎ目の連なりを決定することと、決定された継ぎ目の連なりに基づいて、加工レーザビームによって継ぎ目の連なりを追跡することを含む。
【0051】
現在説明されている実施形態によれば、2つの独立した偏向光学系が、加工レーザビームおよび測定ビームを2次元にそれぞれ偏向させるために使用されている。測定ビームは、加工レーザビームのビーム経路の中へ結合され、例えば、光コヒーレンス断層撮影を実施するために、加工レーザビームと同軸に本質的に重ね合わせられる。このように、方向的に独立した継ぎ目検出が、例えば、2D揺動プロセスで実現され得る。継ぎ目検出は、とりわけ、加工レーザビームの加工方向から独立して行われることが可能である。