IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダニエリ アンド シー.オフィス メカニケ エスピーエーの特許一覧

<>
  • 特許-金属材料を押し出すためのプレス機 図1
  • 特許-金属材料を押し出すためのプレス機 図2
  • 特許-金属材料を押し出すためのプレス機 図3
  • 特許-金属材料を押し出すためのプレス機 図4
  • 特許-金属材料を押し出すためのプレス機 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-23
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】金属材料を押し出すためのプレス機
(51)【国際特許分類】
   B30B 15/16 20060101AFI20220111BHJP
   F15B 11/08 20060101ALI20220111BHJP
   F15B 11/02 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
B30B15/16 D
F15B11/08 A
F15B11/02 F
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020528024
(86)(22)【出願日】2018-11-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 IB2018059256
(87)【国際公開番号】W WO2019102410
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2020-07-20
(31)【優先権主張番号】102017000135085
(32)【優先日】2017-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】510152666
【氏名又は名称】ダニエリ アンド シー.オフィス メカニケ エスピーエー
【氏名又は名称原語表記】DANIELI&C.OFFICINE MECCANICHE SPA
【住所又は居所原語表記】Via Nazionale,41-33042 Buttrio(UD),Italy
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 正夫
(72)【発明者】
【氏名】ガッリ アレッサンドロ マリオ
(72)【発明者】
【氏名】チェ ミケーレ
(72)【発明者】
【氏名】メルリーニ マッティア
【審査官】山本 裕太
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-206899(JP,A)
【文献】特開昭62-238017(JP,A)
【文献】特開2004-301189(JP,A)
【文献】特開昭51-119477(JP,A)
【文献】特表2013-515936(JP,A)
【文献】米国特許第05494075(US,A)
【文献】特開平11-090699(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 15/16
F15B 11/08
F15B 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料を押し出すためのプレス機であって、前記プレス機は、前記材料を押し出すためにピストン(3)が移動可能である少なくとも1つのシリンダ(2)を含み、前記ピストン(3)は、油圧回路(10)によって制御され、前記油圧回路(10)は、
-油を循環させるための少なくとも1つの固定容量ポンプ(11)であって、前記ポンプ(11)は、メイン供給ライン(20)によって前記シリンダ(2)に接続され、可変の回転速度を有する電気モータ(12)によって動作される、固定容量ポンプ(11)と、
-分岐点(A)で前記メインライン(20)に油圧接続された分岐ライン(30)であって、前記分岐ライン(30)に沿って遮断要素(25)が配置され、前記遮断要素(25)は、前記分岐ライン(30)の第1の開放位置と閉鎖位置との間で移動可能である、分岐ライン(30)と、
-前記遮断要素(25)に作用して、前記開放位置と前記閉鎖位置との間でその動きを制御する油圧制御ユニット(50)であって、前記油圧ユニット(50)は、前記メインライン(20)および前記分岐ライン(30)から独立したパイロットライン(60)と、前記パイロットライン(60)に沿って動作可能に配置されるパイロットバルブ(65)であって、前記パイロットバルブ(65)は、前記メインライン(20)と連通する、前記パイロットライン(60)の初期ストレッチ(60C)、および前記パイロットライン(60)の第2の排出セグメント(60D)を識別する、パイロットバルブ(65)と、を含み、前記パイロットバルブ(65)は、作動構成において、前記第2の排出セグメント(60D)を閉鎖し、前記遮断要素(25)の動きは、前記分岐ライン(30)の圧力(P1)と前記パイロットライン(60)の前記初期ストレッチ(60C)の圧力(P2)との間に存在する差(ΔP)によって決定される、油圧制御ユニット(50)と、
-前記パイロットライン(60)の少なくとも前記初期ストレッチ(60C)に接続された制御要素(51A、51B)であって、前記制御要素(51A、51B)は、作動状態で、前記パイロットバルブ(65)の作動後に、前記パイロットライン(60)の前記初期ストレッチセグメント(60C)における圧力の漸進的な増加、および前記遮断要素(25)の対応する漸進的な閉鎖運動を決定し、前記制御要素(51A)は、前記パイロットライン(60)の前記初期ストレッチ(60C)に接続された複数のタンク(52A、52B)を含み、各タンク(52A、52B)のために、前記制御要素(51A)は、前記タンク(52A、52B)が前記パイロットライン(60)の前記初期ストレッチ(60C)と連通しない非作動状態と、前記タンク(52A、52B)が代わりに前記パイロットライン(60)の前記初期ストレッチ(60C)と連通する作動状態との間で切り替え可能な少なくとも1つの対応するバルブ(54A、54B)を含む、制御要素(51A、51B)と、
を含む、プレス機。
【請求項2】
前記制御要素(51A)の前記タンク(52A、52B)は、異なる容積を有する、請求項1に記載のプレス機。
【請求項3】
前記制御要素(51B)は、入口(53A)での圧力が所定の設定値を超えるときに油が入口(53A)と出口(53B)との間を通過できるようにする圧力バルブ(511)を含み、前記入口(53A)は、前記パイロットライン(60)の前記初期ストレッチ(60C)から分岐して接続され、前記圧力設定値は、最小値(P)から最大値(Pmax)まで経時的に変化する、請求項1に記載のプレス機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼、アルミニウム、銅、鉛、鉄または非鉄合金であってよい金属材料を押し出すためのプレス機に関する。特に、本発明によるプレス機は、非同期電気モータによって駆動される少なくとも1つの固定容量循環ポンプによって供給される。
【背景技術】
【0002】
典型的には、押し出しプレス機は、複数のシリンダを含み、各々のシリンダ内でピストンが動き、プラスチック状態の金属材料に作用し、押し出されたプロファイルの断面をその形状で構成するダイを通して押す。
【0003】
押出速度、つまりシリンダ内のピストンの速度は、押し出される材料の種類やダイの複雑さなどのさまざまなパラメータに基づいて設定される。この点に関して、ピストンの動きは、モータによって駆動される油圧ポンプの使用を含む油圧回路によって制御される。ピストンの速度は、ポンプによってシリンダに送られる油の流れに直接依存する。
【0004】
第1の既知の実施形態では、油圧回路は、毎分一定の回転数で回転する電気モータによって動作される可変容量ポンプを備える。したがって、ピストンの速度は、ポンプ自体に組み込まれた流量調整手段によって想定される構成に応じて、ポンプによって送られる油量に応じて変化する。この実施形態の主な欠点は、主として定速モータの使用にあり、これは、プレス機が稼働していない期間中も、一定の作動を維持しなければならない。別の欠点は、可変容量ポンプのコストとその複雑さであり、コンポーネントの故障の可能性を抑えるために、頻繁で正確なメンテナンス介入が必要である。
【0005】
これらの欠点を少なくとも部分的に克服するために、固定容量ポンプが提供され、ポンプを駆動するモータの毎分回転数を変化させることによって、シリンダに送られる油の流量が調整される油圧回路が提案されて、使用された。特に、毎分回転数の変化は、電気モータの供給周波数に介入することによって得られる。回転速度を急速に変化させることができるモータは、高速応答時間、つまり回路の高速応答を保証するために使用される。特に、慣性モーメントの小さい電気モータが使用される。
【0006】
エネルギー節約の観点から、油圧回路のこの第2の実施形態は、上述の第1の実施形態よりも有利である。実際、定回転速度モータに関しては、可変周波数モータは、実際に必要な場合にのみ作動させることができる。さらに、固定容量ポンプの使用は、それらが可変容量ポンプよりも費用がかからず、複雑でなく、管理が容易であるので、より有利に見える。
【0007】
この第2の実施形態では、主な欠点は、慣性モーメントが低い電気モータの使用および管理において遭遇する。実際、非常に高価であることに加えて、このタイプのモータは、その動作および必要な信頼性を可能にするためにさまざまな補助システムを必要とする。たとえば、これらのモータは、管理が特に複雑な液体冷却システムを必要とする。
【0008】
これらの考慮事項を考慮して、本発明の主要な課題は、上記の欠点および限界を克服することを可能にする、金属および/または金属合金を押し出すためのプレス機を提供することである。この課題の範囲において、本発明の第1の目的は、押出シリンダを制御することに関与する油圧回路が比較的安価で複雑でない要素を含むプレス機を提供することである。別の目的は、前記油圧回路が、押出シリンダに含まれるピストンの制御された加速を可能にするように構成されるプレス機を提供することである。本発明のさらに他の目的は、油圧回路が信頼性があり、競争力のあるコストで容易に製造されるプレス機を提供することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明は、金属材料を押し出すためのピストンが可動である少なくとも1つのシリンダを備える、金属材料を押し出すためのプレス機に関する。このようなピストンは、以下を含む油圧回路によって制御される。
-油を循環させるための少なくとも1つの固定容量ポンプであって、前記ポンプは、メイン供給ラインによってシリンダに接続され、可変の回転速度を有する電気モータによって動作される、固定容量ポンプと、
-分岐点でメインラインに油圧接続された分岐ラインであって、分岐ラインに沿って遮断要素が配置され、遮断要素は、分岐ラインの第1の開放位置と閉鎖位置との間で移動可能である、分岐ラインと、
-前記遮断要素に作用して、前記開放位置と前記閉鎖位置との間でその動きを制御する油圧制御ユニットであって、前記油圧ユニットは、前記メインラインおよび前記分岐ラインから独立したパイロットラインと、前記パイロットラインに沿って動作可能に配置されるパイロットバルブであって、パイロットバルブは、前記遮断要素の上流の前記メインラインと連通する、前記パイロットラインの第1のセグメント、および前記パイロットラインの排出セグメントを識別する、パイロットバルブと、を含み、パイロットバルブは、作動構成において、前記パイロットラインの前記排出セグメントを閉鎖し、前記遮断要素の動きは、前記分岐ラインの圧力と前記パイロットラインの前記初期ストレッチの圧力との間に存在する差によって決定される、油圧制御ユニットと、
-前記パイロットラインの前記第1のセグメントに接続された制御要素であって、制御要素は、作動状態で、パイロットバルブの作動後に、パイロットラインの初期ストレッチにおける圧力の漸進的な増加、および遮断要素の対応する漸進的な閉鎖運動を決定する、制御要素。
【0010】
有利には、制御要素は、少なくとも最初のステップにおいて、ピストンの加速を電気モータの加速から解放することを可能にする。実際、このようなステップの間、ピストンの動きは、制御要素によって引き起こされる圧力の漸進的な増加によって決定されるが、電気モータは、1秒のオーダーの時間、すなわち、ピストンの動きが始まる前の、従来の三相電気モータの慣性と一致する時間で加速することができる。したがって、慣性モーメントの小さいモータの使用を回避できる。
【0011】
本発明の第1の実施形態によれば、油圧要素は、パイロットラインの初期ストレッチに油圧接続された少なくとも1つのタンクを含む。そのような油圧要素は、前記タンクが前記パイロットラインの前記初期ストレッチと連通しない非作動状態と、前記タンクが代わりに前記パイロットラインの前記初期ストレッチと油圧連通する作動状態との間で切り替え可能な少なくとも1つのバルブを備える。
【0012】
好ましくは、この第1の実施形態では、油圧要素は、各々対応するパイロットバルブの上流のパイロットラインの初期ストレッチに接続されている複数のタンクを含み、各タンクのために、前記油圧要素は、前記タンクがパイロットラインの前記初期ストレッチと連通しない非作動状態と、前記タンクが代わりに前記パイロットラインの前記初期ストレッチと油圧連通する作動状態との間で切り替え可能な少なくとも1つの対応するバルブを含む。
【0013】
別の態様によれば、前記タンクは、異なる容積を有する。
【0014】
第2の実施形態によれば、上記の第1の実施形態の代替として、制御要素は、入口の圧力が所定の設定値を超えたときに油が入口と出口との間を通過できるようにする比例圧力バルブを備え、前記入口は、前記パイロットラインの前記初期ストレッチに接続されており、前記圧力設定値は、最小値から最大値まで時間とともに可変である。
【0015】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付図面を参照して、非限定的な例として示される、いくつかの好ましいが限定的ではない実施形態の以下の詳細な説明を検討することによって、より明らかになるであろう。図中の同じ参照番号および文字は、同じ要素またはコンポーネントを指す。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明によるプレス機の油圧回路の第1の実施形態を図式的に示す。
図2図2は、本発明によるプレス機の油圧回路の第1の実施形態を図式的に示す。
図3図3は、本発明によるプレス機の油圧回路の第1の実施形態を図式的に示す。
図4図4は、本発明によるプレス機のピストンの可能な加速曲線を示す図である。
図5図5は、本発明によるプレス機の油圧回路の第2の実施形態を図式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
したがって、本発明は、鋼、アルミニウム、銅、鉛、金属合金、鉄または非鉄合金でありえる金属材料を押し出すためのプレス機に関する。本発明によるプレス機は、ピストン3が可動であるチャンバ2Aを含む少なくとも1つのシリンダ2を備える。それ自体が既知の原理によれば、ピストン3は、押し出された金属プロファイルを得るために、ダイを通して金属材料を押す機能を有する。
【0018】
プレス機は、ピストン3の動きを制御するための油圧回路10を備える。より正確には、油圧回路10は、作動流体として油を提供する流体力学的タイプのものである。油圧回路10は、電気モータ12によって駆動される油を循環させるためのポンプ11を備える。特に、ポンプ11は固定容量ポンプであり、電気モータは従来型の三相非同期モータである。
【0019】
油圧回路10は、ポンプ11の供給側をシリンダ2のチャンバ2Aに接続するメインライン20を備える。このシリンダ2は、当業者にそれ自体知られている動作構成による単動または複動であり得る。メインライン20は、分岐点Aを備え、そこから油圧ブランチ30が延び、それに沿って流れ遮断要素25が設けられる。油圧ブランチ30は、メインライン20を排出タンク35と連通させる。メインライン20の分岐点Aと遮断要素25との間に含まれるセグメントでは、油圧は同じであり、前記分岐点Aでの油圧に正確に対応する。
【0020】
遮断要素25は、第1の基準位置と第2の基準位置との間で移動可能である。第1の基準位置は、油圧ブランチ30の完全な開放状態の特徴であり、第2の基準位置は、完全な閉鎖状態の特徴である。より正確には、遮断要素25が第1の基準位置を占めるとき、ポンプ11によって供給される全流体の流れは、油圧ブランチ30を横切り、タンク35に排出(discharge)される。逆に、遮断要素25が第2の基準位置を占めるとき、油圧ブランチ30を通る流れは停止され、したがって、油はメインライン20だけに流れる。
【0021】
油圧回路10は、作動構成を想定することができる油圧制御ユニット50を備え、その結果として、前記遮断要素25の閉鎖運動が作動する。「閉鎖運動」という表現は、前記第1の基準位置から前記第2の基準位置への前記遮断要素25の運動を示す。
【0022】
上記目的のために、油圧制御ユニット50は、メインライン20から独立したパイロットライン60(破線)を備え、分岐ライン30またはメインライン20のいずれかに接続された入口60Aが設けられる。これは、前記入口60Aで、前記パイロットライン60が前記メインライン20または前記バイパスライン30から分岐し、したがってそこから独立して延びることを意味する。
【0023】
前記パイロットライン60は、油を、好ましくはタンク35に排出することを可能にする出口60Bをさらに備える。油圧ユニット50はまた、前記パイロットライン60に沿って動作可能に配置されたパイロットバルブ65を備える。後者は、前記メインライン20と前記パイロットバルブ65との間に含まれるパイロットライン60の初期ストレッチ60C(または第1のセグメント60C)、および前記パイロットバルブと前記出口60Bとの間に含まれる排出セグメント60D(または第2のセグメント60D)を識別する。非作動状態(deactivation condition)では、パイロットバルブ65は、入口60Aと出口60Bとを連通させ、それにより油への排出を正確に可能にする。換言すれば、非作動状態では、バルブ65は、パイロットライン60の2つのセグメント60C、60Dを連通させる。逆に、作動状態(activation condition)では、パイロットバルブ65は出口60Bに向かう油の流れを停止し、それにより、前記パイロットライン60の初期ストレッチ60Cに圧力増加を引き起こす。好ましくは、排他的ではないが、パイロットバルブ65は、4方2位置ソレノイドバルブである。
【0024】
上記から、遮断要素25が第1の基準位置(開口)を占めるとき、油は、分岐ライン30を通って排出されることができ、それが無効にされるとき、パイロットバルブ65を通って排出されることができる。特に、分岐ライン30は、パイロットライン60のアンロード部分60Dから独立している。換言すれば、分岐ライン30は、いかなる点においても、前記排出セグメント60Dと連通していない。
【0025】
上記の2つの基準位置間の遮断要素25の動きが、前記遮断要素25の上流(圧力P1)(前記分岐点Aでの圧力)とパイロットライン60の前記初期ストレッチ60C(圧力P2)との、メインライン20に存在する圧力差ΔPによって決定されるように、遮断要素25と油圧制御ユニット50とは相互作用する。
【0026】
本発明によれば、油圧制御ユニット50は、前記パイロットライン60の前記初期ストレッチ60Cに接続された少なくとも1つの制御要素51A、51Bを備える。その作動状態において、および前記パイロットバルブ65の作動の結果として、前記制御要素51A、51Bは、パイロットライン60の前記初期ストレッチ60Cにおける圧力の段階的な増加を決定し、したがって、遮断要素25の漸進的な閉鎖運動を決定する。本発明の目的のために、遮断要素25の「段階的運動」または「漸進的運動」という表現は、10分の1秒のオーダーで完了する運動を意味し、したがって、オン-オフタイプの運動、すなわち、この定義からの遮断要素25の実質的に瞬間的な閉鎖(ミリ秒のオーダー)を除外する。
【0027】
遮断要素25の段階的な閉鎖運動は、排出に向かう油量の対応する段階的な減少、および油圧回路10のメインライン20を通してシリンダ2のチャンバ2Aに向かって送られる油量の対応する段階的な増加をもたらす。したがって、油圧制御ユニット50内の圧力P2の増加は、ピストン3への圧力の増加を最終的に決定し、その動きを活性化する。
【0028】
有利には、ピストン3への圧力の漸進的な増加を制御することにより、電気モータ12の加速からピストンを解放するピストン自体の加速時間を制御することが可能である。実際、電気モータ12は、パイロットバルブ65の作動前の最適回転速度にあり、秒のオーダーの時間で実行される加速で前記速度にされてもよい。加速時間を増加させることにより、電気モータ12は、ピストン3が電気モータのみによって加速される従来の解決策において通常必要とされる電流に対して、低電流を吸収することができる。同時に、電気モータ12に所与のより長い加速時間が与えられると、電気モータ12は、従来の構成、すなわち必ずしも低い慣性モーメントを有するタイプではない構成を想定してもよい。
【0029】
第1の実施形態では、制御要素51Aは、油圧制御ユニット50のパイロットライン60の第1のセグメント60Cから分岐して接続された少なくとも1つのタンク52A、52Bを備える。「分岐して接続された」という表現は、タンクがさらなる油圧ブランチ53を通して初期ストレッチ60Cに接続されている状態を示すことを意味する。制御要素51Aは、タンク52A、52Bが前記第1のセグメント60Cに接続されていない非作動状態と、タンク52A、52Bが前記セグメント60Cに接続されている作動状態との間で切り替え可能な少なくとも1つのバルブ54A、54Bを備える。。タンク52A、52Bは、通常、油で満たされている。
【0030】
図1から図3を参照すると、制御要素51Aは、好ましくは同じ油圧ブランチ53を通して、パイロットライン60の前記第1のセグメント60Cに接続された複数のタンク52A、52Bを好ましくは備える。対応するバルブ54A、54Bは、上で説明されたものにより作動状態と非作動状態との間で切り替え可能である各タンク52A、52Bに対して提供される。好ましくは、2つのバルブ54A、54Bは、4方2位置ソレノイドバルブである。好ましくは、2つのタンク52A、52Bは、異なる容積を有する。制御要素51Aはまた、対応するバルブが作動停止されたときにタンク52A、52Bの圧力の排出を可能にする排出ライン53Bを備える。
【0031】
図1は、休止状態、すなわち、モータ12による循環ポンプ11の作動前の油圧回路を示す。図1に示される状態では、パイロットバルブ65は非作動であり、遮断要素25は、分岐ライン30の全開放に対応する第1の基準位置を占める。
【0032】
電気モータ12が作動するとすぐに、ポンプ11は、分岐ライン30を横断する固定した油の流れを送る。この状態では、図2に概略的に示されているように、油は、油圧制御ユニット50のパイロットライン60(図2では破線で示されている)も通過する。分岐ライン30の圧力P1の値は、パイロットライン60の圧力P2の値に対応し(P1=P2)、したがって、遮断要素25は、上記で定義された第1の基準位置を安定に維持する。図2において、二重の矢印は、油圧制御ユニット50内の油の経路を示し、一方、単一の矢印は、分岐ライン30に沿った油の流れを示す。図2の排出状態では、制御要素51Aは、そのバルブ54A、54Bが非作動であるので介入しないことに注意されたい。
【0033】
図3を参照すると、パイロットバルブ65が作動すると、パイロットライン60の流れが停止し、第1のセグメント60Cで油の圧力P2が増加する。制御要素51Aのバルブ54A、54Bのどちらも作動しない場合、パイロットバルブ65の閉鎖は、遮断要素25の非常に速い閉鎖運動(1000分の1秒のオーダー)を決定するであろう。この仮説では、ピストン3の加速は、必然的に電気モータ51の作用に委ねられる。動きを緩やかに(好ましくは10分の1秒のオーダーで)行うため、したがってピストン3の圧力を徐々に上げるために、制御バルブ65の作動前に、制御エレメント51Aの少なくとも1つのバルブ54A、54Bが作動する。
【0034】
これにより、制御バルブ65の閉鎖の結果として、および油圧ブランチ53の効果に起因して、油は、その中の圧力を増加させることによってタンク52Aに到達する。この圧力増加は、分岐ライン53およびパイロットライン60の初期ストレッチ60Cにおいて伝達される。図3では、第1のセグメント60Cは、二重線、1つの破線および1つの実線で示されている。圧力P2の漸進的な増加は、遮断要素25の漸進的な閉鎖およびピストン3に送られる油の量の対応する増加を決定する。
【0035】
したがって、制御要素51Aは、油の圧縮性を使用して、油圧制御ユニット50の内部の圧力P2の値を徐々に増加させ、最終的にメインライン20の内部の圧力、すなわちピストン3の加速を増加させる。したがって、制御要素51のどのバルブ54A、54Bが作動するか、またはいくつ作動するかに応じて、遮断要素25の閉鎖またはピストン3の加速に関して、油圧制御ユニット50の応答を変化させることが可能である。。実際、制御要素51Aは、電気モータ12にいかなる方法でも介入することなく、ピストン3の加速時間を設定することを可能にする。遮断要素25の閉鎖が完了するとき、すなわち、ポンプ11によって処理された全量の油がシリンダ2に送られるとき(分岐ライン30が閉鎖されているとき)、電気モータ12は、すでにピストン3の推力を一定に維持する速度にある。したがって、操作が開始されたとき、モータはすでに回転速度にある。
【0036】
モータの加速は10分の1秒ではなく1秒で達成できるので、この状態により、開始ステップでモータが吸収する電流を有利に封じ込めることができる。
【0037】
図4のチャートは、本発明によるプレス機の油圧回路10を通して得られるいくつかの加速曲線(C1、C2、C3、C4、C5)(経時的な速度値)を示す。特に、これらの曲線C1、C2、C3、C4、C5は、ピストンの速度をゼロ値から基準値Vにするのに必要な時間を表す。
【0038】
曲線C1は、制御要素51が非作動状態のままである場合、すなわち、制御バルブ65の閉鎖に続いて油圧制御ユニット50の油圧回路にタンク52A、52Bのいずれも挿入されない場合に発生する望ましくない動作状態を表す。この仮説では、ピストンの加速C1は瞬間的であり、つまり、1000分の1秒のオーダーの範囲で実行される。この加速曲線をサポートするために、モータ12によって吸収されるピーク電流は非常に高くなり、システムへの機械的損傷のリスクがある。
【0039】
曲線C2およびC3は、それぞれ、第1のバルブ54Aまたは第2のバルブ54Bがそれぞれ作動し、第1のバルブ54Aと呼ばれる第1のタンク52Aが、第2のバルブ54Aと呼ばれる第2のタンク52Bよりも容積が小さい場合の油圧回路10の挙動を示す。代わりに、曲線C4は、両方のバルブ54A、54Bが同時に作動する場合、すなわち、両方のタンク52A、52Bが油圧制御ユニット50のパイロットライン60の第1のセグメント60Cと連通する場合の挙動を示す。
【0040】
曲線C2、C3およびC4を比較することにより、油圧制御ユニット50の油圧回路の容積の増加は、ピストン3の加速時間の増加を決定する、すなわちこの加速をより緩やかにすることが分かる。「油圧制御ユニット50の油圧容積」という表現は、初期ストレッチ60Cの容積、分岐ライン53の容積、およびタンク52A、52Bの容積の合計によって与えられる総容積を示す。
【0041】
好都合なことに、曲線C2、C3、およびC4については、10分の1秒のオーダーの加速時間を達成することができる。例えばプレス機のサイクルのステップによって決定されるプレス機の動作条件によれば、曲線C1、C2、C3、C4、C5のうちの1つは、他のものよりも適切であり得る。したがって、特定の用途に最も適していると考えられる曲線の応答に対応する応答を得るために、制御要素51、すなわちバルブ54A、54Bに作用することが可能である。この可能性は、プレス機操作の多様性を有利に増大させる。
【0042】
再び図4を参照すると、曲線C5は、1秒のオーダーの加速を提供する。この加速時間は、非同期電気モータで達成できる加速時間と互換性があることに注意されたい。したがって、動作条件がそのような長い加速時間を許容する場合、制御要素51は非作動のままでありえて、ピストン3の加速は、電気モータ12の動作に専ら任される。
【0043】
したがって、上記に基づいて、制御要素51Aは、タンクのみ、2つのタンク(図1図3に図式的に示されるように)または2つより多い数のタンクを備えてもよい。実質的に、制御要素51Aの構成は、用途に応じて、および/またはプレス機に付与したいピストンの制御可能性に応じて変化してもよい。
【0044】
図5に示される本発明の代替実施形態では、制御要素(参照番号51Bで示される)は、比例圧力バルブ511を備える。この比例圧力バルブ511は、油圧ユニット50のパイロットライン60の第1のセグメント60Cとの分岐部(分岐ライン530または分岐530)に接続された入口530Aと、パイロットライン60の第2の排出セグメント60D、すなわち回収タンク35に排出される制御バルブ65の下流に接続された出口530Bと、を備える。
【0045】
比例圧力バルブ511は、入口530Aでの圧力が所定の設定値を超えるときに、油が入口から出口まで流れることを可能にする。これに関して、入口530Aにおける圧力は、遮断要素25に介入する圧力P2に対応する。
【0046】
圧力P2を徐々に増加させるため、すなわちピストン3の加速時間を制御するために、比例圧力バルブ511は、ヌル値Pから最大値Pmaxまで、設定値が時間とともに、好ましくは連続的に可変であるように構成される。設定値がヌル値Pである場合、バルブ511は開放され、分岐530は排出する。設定値の増加に伴い、バルブ511を横切る油の量は減少し、したがって、バルブ自体の入口530aでの圧力、または油圧ユニット50のパイロットライン60の第1のセグメント60Cの圧力P2は、増加する。
【0047】
実質的に静止した構成(図5に示される)では、パイロットバルブ65は非作動であり、遮断要素25は、第1の基準位置(完全に開放する)を占める。したがって、電気モータ12の作動の結果として、循環ポンプ11によって処理された油の流れは、タンク35に向かって分岐ライン530を横切る。
【0048】
制御バルブ65の作動に続いて、油圧制御ユニット50のパイロットライン60を通る油の流れが防止され、したがって、油は、圧力設定値が最初はゼロである圧力比例バルブ511に向かって分岐530に自然に向けられる。前記設定値が増加すると、バルブ自体を横切る油の流れが減少し、したがって、パイロットライン60の初期ストレッチ60Cにおいて圧力P2の値が増加する。この状態は、遮断要素25の漸進的な動きをもたらし、最終的に、ピストン3およびポンプ11内の圧力を徐々に増大させる。
【0049】
したがって、この実施形態では、加速時間は、比例バルブ511の圧力設定値の経時変化に依存する。したがって、圧力設定値が変化する速度をそれぞれ減少させるかまたは増加させることにより、加速時間を増加させるかまたは減少させることができる。
【0050】
したがって、上記のバルブ511は、図1図3にコメントするときに、上記の制御要素51Aによって達成できる同じ技術的効果を得ることができる。実際、上述の2つの実施形態を通して、ピストン3は、最初は油圧制御ユニット50によって決定された範囲内の圧力変動によって加速され、したがって、電気モータ12の動作に完全に無関係である。これにより、電気モータ12は、エネルギーを有利に節約しながら徐々に加速することができる。

図1
図2
図3
図4
図5