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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-23
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】改良されたがんの処置
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/00 20060101AFI20220111BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220111BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220111BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220111BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220111BHJP
   C07K 7/06 20060101ALI20220111BHJP
   C07K 7/08 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
A61K39/00 H ZMD
A61K39/395 U
A61K45/00
A61P35/00
A61P43/00 121
C07K7/06 ZNA
C07K7/08
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020528928
(86)(22)【出願日】2017-11-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 EP2017080543
(87)【国際公開番号】W WO2019101347
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2020-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】517118478
【氏名又は名称】オーエスイー・イミュノセラピューティクス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク・コスタンティーニ
【審査官】小川 知宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/000983(WO,A1)
【文献】Cytokine & Growth Factor Reviews,2017年06月,36,5-15
【文献】Study of OSE2101 Versus Standard Treatment as 2nd or 3rd Line in HLA-A2 Positive Patients With Advanced NSCLC After Failure of Immune Checkpoint Inhibitor (ATALANTE 1),ClinicalTrials.gov archive,version 1-16,https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02654587
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00 - 39/44
A61K 45/00
A61P 35/00 - 35/04
A61P 43/00
C07K 7/00 - 7/66
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
HLA-A2(ヒト白血球抗原A2)陽性患者のがんの処置における使用のためのペプチド組成物であって、
前記患者が、単独で又は別のがん療法と組み合わせて、最後の処置として免疫チェックポイント阻害剤を受けており、前記最後の処置後にがんの進行を有し;
前記ペプチド組成物が、以下のペプチドaKXVAAWTLKAAa(配列番号10、X及びaが、それぞれシクロヘキシルアラニン及びd-アラニンを示す)、RLLQETELV(配列番号1)、YLQLVFGIEV(配列番号2)、LLTFWNPPV(配列番号3)、KVFGSLAFV(配列番号4)、KLBPVQLWV(配列番号5、Bは、α-アミノイソ酪酸を示す)、SMPPPGTRV(配列番号6)、IMIGHLVGV(配列番号7)、KVAEIVHFL(配列番号8)及びYLSGADLNL(配列番号9)を含み、
前記ペプチド組成物が、前記最後の処置の後における前記がんの進行後に投与され
前記免疫チェックポイント阻害剤が、PD-1又はPD-L1阻害剤である、ペプチド組成物。
【請求項2】
前記がんが、NSCLC(非小細胞肺がん)及び小細胞肺がん、黒色腫、尿路上皮がん、中皮腫、乳がん、原発性脳がん、卵巣がん、子宮癌腫、頭頸部がん、結腸直腸がん、膵臓がん、胃及び食道がん、腎臓がん、肝細胞癌腫、肉腫、胚細胞腫瘍、白血病、リンパ腫、皮膚がん、精巣がん並びに膀胱がんからなる群から選択されるがんである、請求項1に記載のペプチド組成物。
【請求項3】
前記がんが、NSCLC、黒色腫、尿路上皮がん、腎臓がん、頭頸部がん、結腸直腸がん、膵臓がん、胃及び食道がん、乳がん、卵巣がん、脳がん並びにリンパ腫からなる群から選択されるがんである、請求項1に記載のペプチド組成物。
【請求項4】
前記がんが、NSCLCである、請求項1に記載のペプチド組成物。
【請求項5】
前記患者が、進行性がんを有する、請求項1から4のいずれか一項に記載のペプチド組成物。
【請求項6】
前記患者が、前記最後の処置の前記免疫チェックポイント阻害剤に対する二次抵抗性を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載のペプチド組成物。
【請求項7】
前記患者が、前記最後の処置の前記免疫チェックポイント阻害剤に対する一次抵抗性を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載のペプチド組成物。
【請求項8】
前記患者が、前記ペプチド組成物による投与の前に、1つ又はいくつかの選択の処置を受けた、請求項1から6のいずれか一項に記載のペプチド組成物。
【請求項9】
前記ペプチド組成物が、1~4週間毎に投与される、請求項1から8のいずれか一項に記載のペプチド組成物。
【請求項10】
前記ペプチド組成物が、少なくとも2回投与される、請求項1から9のいずれか一項に記載のペプチド組成物。
【請求項11】
前記ペプチド組成物が、単独で又は別のがん療法と組み合わせた、前記免疫チェックポイント阻害剤による前記最後の処置に伴うがんの進行後1週間~3ヵ月間の期間投与される、請求項1から10のいずれか一項に記載のペプチド組成物。
【請求項12】
HLA-A2陽性患者のがんの処置における使用のための連続投与によるペプチド組成物及び免疫チェックポイント阻害剤を含む組成物であって、
前記患者が、単独で又は別のがん療法と組み合わせて、最後の処置として免疫チェックポイント阻害剤を受けており;
前記ペプチド組成物が、前記免疫チェックポイント阻害剤による前記最後の処置後に投与され;
前記ペプチド組成物による前記処置の後にがんの進行が起こる場合、前記免疫チェックポイント阻害剤を含む組成物が投与され;
前記ペプチド組成物が、ペプチドaKXVAAWTLKAAa(配列番号10、X及びaが、それぞれシクロヘキシルアラニン及びd-アラニンを示す)並びにペプチドRLLQETELV(配列番号1)、YLQLVFGIEV(配列番号2)、LLTFWNPPV(配列番号3)、KVFGSLAFV(配列番号4)、KLBPVQLWV(配列番号5、Bは、α-アミノイソ酪酸を示す)、SMPPPGTRV(配列番号6)、IMIGHLVGV(配列番号7)、KVAEIVHFL(配列番号8)及びYLSGADLNL(配列番号9)をみ、
前記免疫チェックポイント阻害剤が、PD-1又はPD-L1阻害剤である、ペプチド組成物及び免疫チェックポイント阻害剤を含む組成物。
【請求項13】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、BMS936559、MEDI4736、AMP-224、AMP-514、MEDI0680、MPDL3280A、アベルマブ、アテゾリズマブ、及びデュルバルマブからなる群内で選択され得る、請求項1から11のいずれか一項に記載のペプチド組成物、又は請求項12に記載の連続投与によるペプチド組成物及び免疫チェックポイント阻害剤を含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医学、特に腫瘍学の分野に関し、本発明は特にがんの処置に関する。
【背景技術】
【0002】
ICIは、様々な型のがんにおいて標準的な治療になっている:
細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4、例えば、イピリムマブ、トレメリムマブ)、プログラム細胞死-1(PD-1、例えば、ニボルマブ、ペムブロリズマブ)及びPD-1リガンド(PD-L1、例えば、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、アベルマブ)を標的する免疫チェックポイント阻害剤(ICI又はCKI)は、臨床的がん処置において現在広く利用されており、様々な進行性(advanced)又は転移性がんにおける標準的な療法として登録されている(ICIのFDA歴史的承認)。今日これら承認済みの適用には、黒色腫、NSCLC(非小細胞肺がん)、尿路上皮がん、腎臓がん、頭頸部がん、ホジキンリンパ腫、胃及び食道がん、結腸直腸がんサブタイプ、肝細胞癌腫、転移性メルケル細胞癌腫がある。これらのICI適用は、第1選択の失敗後(第1の処置が、第1選択において使用した化学療法として機能しない場合)であり得、又はICIバイオマーカーの発現と関係する若しくはしない第1選択において直接示され得る。乳がん、卵巣がん、膠芽細胞腫等他のがんも、ICIクラスにより臨床的に調査される。CTLA-4及びPD-1は、T細胞応答を遮断し、その活性化及びエフェクター機能を抑制するエフェクターT細胞の表面上で発現されるブレーキである。これらのブレーキ(CTLA-4、PD-1及びPD-L1)を遮断する免疫療法であるICIは、細胞傷害性T細胞応答を回復及び増大し、潜在的に強力な応答を導き、容認可能な毒性プロファイルを伴って総生存率(OS)を延長し得る。
【0003】
第1選択又は第2選択処置として確立されたICI:
ICIは、PD-L1リガンドが過剰発現する場合に第1選択において単独で使用され(FDA承認のペムブロリズマブ)、又はその腫瘍がタンパク質PD-L1を発現するかどうかにかかわらず、第1選択において化学療法と組み合わせて使用され(例えば、第1選択におけるFDAによる他の条件付き承認のペムブロリズマブは、これまで無処置の進行性非扁平上皮NSCLC患者に対してペメトレキセド及びカルボプラチンと一緒に使用される) (Langer C.J.ら、Lancet Oncol. 2016年、17(11): 1497~1508頁)、第1選択処置に使用される化学療法と対比して、組み合わせの優位性を実証する。ICIは、放射線療法若しくは化学放射線療法後(第1選択の結果の維持として)又は化学療法の第1選択失敗後にも使用される(第2選択)
【0004】
ICI臨床試験において使用される対照薬は、第1又は第2選択選択肢を考慮して異なる:化学療法又は化学放射線療法後に研究されるニボルマブ(即ち、Scott J. A.ら、2016年、N Engl J Med; 377: 1919~1929頁)は、化学放射線療法後のがんのそのような特異的維持又は安定化の継続時間、及び侵襲性の低いがんにおける進行時間の減少においてプラセボに対する優位性を実証している。進行性又は局所進行性がんに対する第2選択(がん型によって定義される特定の標準的化学療法の第1選択後)における有効性を実証する臨床的ICI試験が、第2選択において標準的な処置として使用される別の化学療法と比較され、総生存率における第2選択化学療法に対する優位性を確立する(Brahmer Jら、N Engl J Med. 2015年;373(2): 123~35頁)。
【0005】
ICI試験は、多くの組み合わせ試験を含んでいる:
組み合わせの目的は、ICI単独に対する、又は特定のがんの標準的な治療として組み合わせに使用される対照薬に対する優位性を実証することである。ICIは、他の治療戦略(抗血管新生化合物、様々な化学療法、標的療法及び他のICI)との様々な組み合わせで使用される。
【0006】
単剤療法と比較して、異なるT細胞標的に作用する他のICIとの併用も抗CTLA4 +抗PD-1として有効性を実証している(Larkin Jら; N Engl J Med 2015年; 373:23~34頁)。ICIの他の臨床的組み合わせは、放射線療法、化学放射線療法である。
【0007】
リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)、T細胞免疫グロブリンムチン3(TIM-3)及びT細胞活性化のVドメイン免疫グロブリンサプレッサー(VISTA)を含めた他のいくつかの免疫チェックポイント分子も、単独で又は抗PD-L1/抗PD-1/抗CTLA4と組み合わせて臨床的に調査される。有望な研究であるにもかかわらず、他の異なる免疫チェックポイントと免疫チェックポイント遮断との併用療法は、これまでのところ臨床的有効性をわずかに増強させたが、有害作用を増幅させた。
【0008】
ICIとがんワクチンの併用:
この特異的がんワクチン/ICI併用において、目的は、ICI作用と並行して抗原放出及び提示を促進することである。がんワクチンは、調節性T細胞又はMSDCの輸送を阻害し、腫瘍内T細胞浸潤を刺激し、T細胞によるがん認識を増大させ、腫瘍死滅を刺激するT細胞活性化を更に増幅する。ペプチド(gp100、MART-1、NY-ESO-1)とICIの併用は、高リスクの切除された黒色腫における有望な生存率を伴う免疫学的活性を実証し、更なる研究を正当化する(Gibney GTら、Clin Canser Res、2015年、21(4): 712~20頁)。
【0009】
抗-PD-L1(デュルバルマブ)と組み合わせてヒトパピローマウイルス(HPV) 16腫瘍タンパク質E7をコードしている生弱毒化リステリア属株(ADXS11-001)を含むワクチンが、子宮頸がん又はHPV陽性頭頸部がん患者において第I/II相試験において研究される。更に、抗PD-1(ペムブロリズマブ)と組み合わせて前立腺特異的抗原レベル(PSA)をコードしている生弱毒化リステリア属株(ADXS31-142)が、前立腺がん患者において第I/II相試験において研究される。免疫チェックポイント遮断との様々な組み合わせ手法が、前臨床モデル及び臨床研究において研究されており、そのようなICI/がんワクチン併用分野を研究する臨床試験の数は、膨大である。現在まで、臨床的有効性及び毒性データは、依然として限られている。
【0010】
ICI失敗後の治療戦略:
現在のところICI後の救援療法が確認されていないので、ICIの失敗後の新たな療法について明瞭な必要性が今なお存在する。
【0011】
ICI処置の初期の成功にもかかわらず、依然として少数の患者しか応答を呈さない。免疫チェックポイント遮断療法に対する一次及び二次抵抗性は、患者が永続的な応答及び長期生存率を達成することを妨げる。
【0012】
低い免疫原性、ICIに応答できない「超疲弊」T細胞、腫瘍特異的T細胞の不十分な生成若しくは漸増、脊髄抑制性細胞、腫瘍関連マクロファージ(TAM)若しくはTregによる免疫抑制、間質細胞(がん関連線維芽細胞-CAF-、内皮細胞)による局所的抑制から免疫逃避をもたらす獲得遺伝子改変に及ぶあり余る程の機序が、ICI抵抗性の根底にある(Dammeijer F.ら; 2017年、Cytokine & Growth Factor Reviews 36、5~15頁)。ICIの処置応答の異質性は、抗原性及び免疫原性の喪失並びに免疫抑制性微環境を確立する能力によって免疫圧力に適合する腫瘍の能力を反映する場合がある(Beatty G.L.ら; Cancer Immunotherapy 2015年、Clinical Cancer ResearchのImmune Escape Mechanisms as a Guide)。
【0013】
一次抵抗性は、ネオ抗原の低い発現、低い変異負荷、抗原輸送及び提示できない樹状細胞、腫瘍特異的T細胞の低い漸増並びに腫瘍微環境TMEにおける阻害性免疫細胞集団による免疫阻害により免疫原性が不十分な腫瘍に対する機能的な免疫応答の不足の結果生じ得る。
【0014】
二次抵抗性は、獲得抵抗性の発症をもたらし得る連続的な治療的圧力と関係する。機序には、他の共阻害性分子の上方調節及び腫瘍(ネオ)抗原発現の喪失がある。
【0015】
腫瘍ワクチンに関する文献において、刊行物は、このクラスが、チェックポイント遮断との直接併用とどのように相乗し得るかだけに焦点を定めている。Dammejierのメタ分析において、彼らは、NSCLCにおける組み合わせ免疫療法を調査する研究のために肺がん(NSCLC)における腫瘍ワクチン接種の有効性を評価した(Dammeijer Fら、J Clin Oncol. 2016年;34 (26):3204~12頁)。
【0016】
今日、腫瘍学者は、腫瘍応答を見ながら進行後に化学療法を使用する、ICI失敗を越えたサルベージ療法を提唱できた(Szabados B.ら、Eur Urol. 2017年9月13日、S0302~2838頁)。
【0017】
近年、進行性NSCLC処置に関する概念は、プラチナ併用の失敗後の第2選択療法用として承認されている3つの免疫チェックポイント阻害剤(ICI)により完全に変化しており、そのうちの1つは第1選択用として承認されている。いくつかの組み合わせも、開発中である。第2選択に対する参照療法は、現在のところICIであり、化学療法に対する優位性を実証する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【文献】欧州特許第735893号
【文献】米国特許出願公開第2014/01474790号
【文献】欧州特許第1620456号
【文献】W02004/094454
【文献】WO2009/143843
【文献】WO2013/079174
【非特許文献】
【0019】
【文献】Langer C.J.ら、Lancet Oncol. 2016年、17(11): 1497~1508頁
【文献】Scott J. A.ら、2016年、N Engl J Med; 377: 1919~1929頁
【文献】Brahmer Jら、N Engl J Med. 2015年;373(2): 123~35頁
【文献】Larkin Jら; N Engl J Med 2015年; 373:23~34頁
【文献】Gibney GTら、Clin Canser Res、2015年、21(4) : 712~20頁
【文献】Dammeijer F.ら; 2017年、Cytokine & Growth Factor Reviews 36、5~15頁
【文献】Beatty G.L.ら; Cancer Immunotherapy 2015年、Clinical Cancer ResearchのImmune Escape Mechanisms as a Guide
【文献】Dammeijer Fら、J Clin Oncol. 2016年;34 (26):3204~12頁
【文献】Szabados B.ら、Eur Urol. 2017年9月13日、S0302~2838頁
【文献】Stites、ら、IMMUNOLOGY、第8版、Lang Publishing、Los Altos、CA (1994年)
【文献】tumor, node, metastasis (TNM) in Lung Cancer第7版
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、現在のところICI後の救援療法が確認されていないので、ICIの失敗後の新たな療法について明白で重要な医学的必要性が今なお存在する。それゆえ、ICIの失敗後の新たな療法が、明確に必要である。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、免疫チェックポイント阻害剤に対する過去の(previous)応答が何であれ、免疫チェックポイント阻害剤による処置を失敗した後のHLA A2陽性患者のCTLペプチドの組成物による処置に関する。実際に、本発明者らは、免疫チェックポイント阻害剤による処置に失敗した後にCTLペプチドの組成物によって処置された患者が、免疫チェックポイント阻害剤によってこれまでに処置されていない患者より良好な治療応答、例えばより低い死亡の発生を呈することを意外にも観察した。加えて、本発明者らは、ペプチド組成物による処置後の進行後の免疫チェックポイント阻害剤による更なる処置に対してより良好な応答を観察した。
【0022】
したがって、本発明は、HLA- A2(ヒト白血球抗原A2)陽性患者のがんの処置に使用するペプチド組成物に関し、
患者は、単独で又は別のがん療法と組み合わせて、最後の(last)処置として免疫チェックポイント阻害剤を受けており;
ペプチド組成物は、ペプチドaKXVAAWTLKAAa(配列番号10、X及びaは、それぞれシクロヘキシルアラニン及びd-アラニンを示す)並びにRLLQETELV(配列番号1)、YLQLVFGIEV(配列番号2)、LLTFWNPPV(配列番号3)、KVFGSLAFV(配列番号4)、KLBPVQLWV(配列番号5、Bは、α-アミノイソ酪酸を示す)、SMPPPGTRV(配列番号6)、IMIGHLVGV(配列番号7)、KVAEIVHFL(配列番号8)及びYLSGADLNL(配列番号9)からなる群から選択される少なくとも4、5、6、7、8又は9個のペプチドを含む。
【0023】
好ましくは、ペプチド組成物は、以下のペプチドaKXVAAWTLKAAa(配列番号10、X及びaは、それぞれシクロヘキシルアラニン及びd-アラニンを示す)、RLLQETELV(配列番号1)、YLQLVFGIEV(配列番号2)、LLTFWNPPV(配列番号3)、KVFGSLAFV(配列番号4)、KLBPVQLWV(配列番号5、Bは、α-アミノイソ酪酸を示す)、SMPPPGTRV(配列番号6)、IMIGHLVGV(配列番号7)、KVAEIVHFL(配列番号8)及びYLSGADLNL(配列番号9)を含む。
【0024】
がんは、NSCLC(非小細胞肺がん)及び小細胞肺がん、黒色腫、尿路上皮がん、中皮腫、乳がん、膠芽細胞腫等の原発性脳がん、卵巣、子宮癌腫、特に子宮体部及び/又は子宮頸癌腫、頭頸部がん、結腸直腸がん、胃及び食道がん、腎臓がん、肝細胞癌腫、肉腫、胚細胞腫、白血病、ホジキンリンパ腫等のリンパ腫、メルケル細胞癌腫等の皮膚がん、精巣がん並びに膀胱がんからなる群から選択されるがん、好ましくはNSCLC、黒色腫、尿路上皮がん、腎臓がん、頭頸部がん、結腸直腸がん、膵臓がん、胃及び食道がん、乳がん、卵巣がん、脳がん並びにリンパ腫、より好ましくはNSCLCであり得る。
【0025】
好ましくは、患者は進行性がんであり、例えば、ステージIIIA、IIIB、IIIc又はIV、好ましくはステージIIIB、IIIc又はIVを含めたステージIIIで好ましくは転移がある。
【0026】
患者は、最後の処置の免疫チェックポイント阻害剤に対する応答者である又はないこともあり得る。
【0027】
一態様において、患者は、ペプチド組成物による投与前に、1つ又はいくつかの選択の処置、好ましくは1、2、3又は4つの選択の処置、より好ましくは1、2又は3つの選択の処置、特に1つ又は2つの選択の処置を受けた。例えば、ペプチド組成物は、1~4週間毎、好ましくは2~3週間毎、より好ましくは3週間毎に投与される。任意選択で、ペプチド組成物は、少なくとも2回、好ましくは少なくとも3回投与される。
【0028】
好ましくは、ペプチド組成物は、単独で又は別のがん療法と組み合わせて、免疫チェックポイント阻害剤による最後の処置に伴うがんの進行後1週間~3ヵ月間の期間、好ましくは2週間~2ヵ月間の期間投与される。
【0029】
本発明は、上で定義した患者のがんの処置に使用する免疫チェックポイント阻害剤にも関し、患者は、ペプチド組成物の投与後にがんの進行がある。
【0030】
本発明は、HLA-A2陽性患者のがんの処置に使用する連続投与による上で定義したペプチド組成物及び免疫チェックポイント阻害剤に更に関し、
患者は、単独で又は別のがん療法と組み合わせて、最後の処置として免疫チェックポイント阻害剤を受けており;
ペプチド組成物は、免疫チェックポイント阻害剤による最後の処置後に投与され;
ペプチド組成物による処置でがんの進行が起こる場合、免疫チェックポイント阻害剤が投与され;
任意選択で免疫チェックポイント阻害剤による処置でがんの進行が起こる場合、ペプチド組成物が更に投与され、がんの進行がペプチド組成物による処置で起こる場合、免疫チェックポイント阻害剤が更に投与される。
【0031】
免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA-4阻害剤及び/又はPD-1若しくはPD-L1阻害剤; IDO阻害剤(インドールアミンピロール2,3-ジオキシゲナーゼ、即ちインドキシモド(indoximod))であり得る。例えば、免疫チェックポイント阻害剤は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、BMS936559、MEDI4736、AMP-224、AMP-514、MEDI0680、MPDL3280A、アベルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、トレメリムマブ及びイピリムマブからなる群内で選択され得る。
【発明を実施するための形態】
【0032】
第1の態様において、本発明は、HLA-A2(ヒト白血球抗原A2)陽性患者のがんの処置に使用する本明細書に定義されるペプチド組成物に関し、患者は、単独で又は別のがん療法と組み合わせて、最後の処置として免疫チェックポイント阻害剤を受けている。本発明は、HLA-A2(ヒト白血球抗原A2)陽性患者のがんを処置する薬物を製造するための本明細書に定義されるペプチド組成物の使用にも関し、患者は、単独で又は別のがん療法と組み合わせて、最後の処置として免疫チェックポイント阻害剤を受けている。本発明は、HLA-A2(ヒト白血球抗原A2)陽性患者のがんを処置する方法に更に関し、患者は、単独で又は別のがん療法と組み合わせて、最後の処置として免疫チェックポイント阻害剤を受けており、本方法は、本明細書において定義されるペプチド組成物の治療有効量を投与する工程を含む。
【0033】
第2の及び追加の態様において、本発明は、上で定義した患者のがんの処置に使用する免疫チェックポイント阻害剤に関し、患者は、本明細書において定義されるペプチド組成物の投与後にがんの進行がある。本発明は、HLA-A2(ヒト白血球抗原A2)陽性患者のがんを処置する薬物を製造するための免疫チェックポイント阻害剤の使用にも関し、患者は、本明細書において定義されるペプチド組成物の投与後にがんの進行がある。本発明は、HLA-A2(ヒト白血球抗原A2)陽性患者のがんを処置する方法に関し、患者は、単独で又は別のがん療法と組み合わせて、最後の処置として免疫チェックポイント阻害剤を、その後ペプチド組成物を受け、患者は、ペプチド組成物の投与後にがんの進行があり、本方法は、免疫チェックポイント阻害剤の治療有効量を投与する工程を含む。
【0034】
この患者は、免疫チェックポイント阻害剤による過去の処置に伴う進行又は失敗後にペプチド組成物による処置を受けた。次いで、しばらくして、患者はがんが進行する場合がある。次いで、ペプチド組成物による処置は中止され、この患者は免疫チェックポイント阻害剤により処置される。本発明者らは、この患者が、免疫チェックポイント阻害剤に良好な治療応答を有することを実証した。免疫チェックポイント阻害剤は、過去の処置に使用した免疫チェックポイント阻害剤と同じであることができ、又は異なることができる。
【0035】
第3の及び追加の態様において、本発明は、HLA-A2陽性患者のがんの処置に使用する連続投与による上で定義したペプチド組成物及び免疫チェックポイント阻害剤に関し、
患者は、単独で又は別のがん療法と組み合わせて、最後の処置として免疫チェックポイント阻害剤を受けており;
ペプチド組成物は、免疫チェックポイント阻害剤による最後の処置後に投与され;
ペプチド組成物による処置でがんの進行が起こる場合、免疫チェックポイント阻害剤が投与され;
任意選択で免疫チェックポイント阻害剤による処置でがんの進行が起こる場合、ペプチド組成物が更に投与され、がんの進行がペプチド組成物による処置で起こる場合、免疫チェックポイント阻害剤が更に投与される。
【0036】
本発明は、HLA-A2(ヒト白血球抗原A2)陽性患者を処置する方法にも関し、患者は、単独で又は別のがん療法と組み合わせて、最後の処置として免疫チェックポイント阻害剤を受けており、本発明は、
a)本明細書において定義されるペプチド組成物の治療有効量を投与する工程と;
b)がんの進行がペプチド組成物による処置で起こる場合に、免疫チェックポイント阻害剤の治療有効量を投与する工程と;
c)任意選択で本明細書において定義されるペプチド組成物の治療有効量を投与する工程とを含み;
工程a)、b)及びc)は逐次的であり、患者が逐次的な処置の治療的恩恵を有する限り、工程b)及びc)は繰り返され得る。
【0037】
定義
「エピトープ」は、免疫グロブリン、T細胞受容体又はHLA分子によって認識される部位を共に形成する1次、2次及び3次ペプチド構造並びに電荷等、分子の総体的な特徴である。或いは、エピトープは、特定の免疫グロブリンによる認識に関係する、又はT細胞の文脈では、T細胞受容体タンパク質及び/若しく主要組織適合複合体(MHC)受容体による認識に必要な一組のアミノ酸残基と定義され得る。エピトープは天然に存在し、ヒトにより単離、精製、又は別途調製若しくは得ることができる。例えば、エピトープは、天然の供給源からの単離によって調製することができ、又は当業者にとって標準的な手順により合成することができる。この開示の全体を通じて、エピトープは、一部の場合においてペプチド又はペプチドエピトープと称される場合がある。
【0038】
「ヒト白血球抗原」又は「HLA」は、ヒトクラスI又はクラスII主要組織適合複合体(MHC)タンパク質である(例えば、Stites、ら、IMMUNOLOGY、第8版、Lang Publishing、Los Altos、CA (1994年)を参照のこと。HLA分子は、共有されるペプチド結合特異性に基づいて分類される。例えば、HLA-A2は、特定のアミノ酸モチーフを有するペプチドに対して類似の結合親和性を共有するHLA分子の特定の型である。患者においてHLA-A2状況を決定する方法は、当業者に周知であり、容易に得られる(即ち;血清学的サンプル)。
【0039】
「ペプチドエピトープ」は、ペプチドが、HLA分子を結合し、CTL及び/又はHTL応答を誘導することになるような対立遺伝子特異的モチーフ若しくはスーパーモチーフを含むペプチドである。したがって、本発明のペプチドエピトープは、適当なHLA-A2分子に結合し、その後そのペプチドに対して細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答又はヘルパーTリンパ球(HTL)応答を誘導する能力がある。
【0040】
「PanDRペプチド」又は「PADRE(登録商標)」ペプチドは、2つ以上のHLAクラスII分子を結合する分子のファミリーメンバーである。分子のPADRE(登録商標)ファミリーを定義する様式は、HLAクラスIIスーパーモチーフと呼ばれ得る。PADRE(登録商標)分子は、HLAクラスII分子に結合し、in vitro及びin vivoでヒトHTL応答を刺激する。PADREペプチドについては、欧州特許第735893号に記載されている。
【0041】
「CTL及び/又はHTL応答」は、病原性抗原(例えば、感染因子由来抗原又は腫瘍抗原)から得られる抗原に対して保護的又は治療的な免疫応答であり、何らかの方法で症候、副作用若しくは進行を防止する又は少なくとも部分的に停止させる。免疫応答は、ヘルパーT細胞の刺激によって助長される抗体応答も含み得る。
【0042】
「治療的選択(Therapeutic line)」とは、疾患の処置のことを指す。いくつかの治療的選択が、確立され得る。例えば、第1の治療的選択は、化学療法と放射線療法の組み合わせ又は化学療法単独であり得、手術、即ち、腫瘍切除を伴う又は伴わない。第1の治療的選択は、導入療法、1次療法、及び1次処置と或いは呼ぶことができる。第1の治療的選択が、疾患を治癒しない又は重度の副作用を引き起こす場合、他の処置が、追加されても又は代わりに使用されてもよい。次いで、第2の治療的選択は、例えば、免疫チェックポイント阻害剤を、単独又は別のがん療法と組み合わせて含むことができる。
【0043】
「進行」とは、がんが進行する、例えば転移発症、新たな転移発症、又は腫瘍成長する状況のことを指す。
【0044】
「応答者」とは、処置による治療的恩恵を有する患者のことを指す。「不応答者」とは、処置による治療的恩恵がない患者のことを指す。患者は、処置に対する抵抗性(即ち1次抵抗性)を有する。
【0045】
ペプチド組成物
本発明のペプチド組成物は、免疫系が持続性の、腫瘍特異的効果を有し得る免疫記憶を発達させることを助けることができる。
【0046】
有効なペプチドT特異的がん免疫療法は、幅広いCTL特異性の誘導を必要とする。これは、少なくとも5つの腫瘍抗原を標的し、エピトープの組み合わせに基づく複数エピトープの合剤として複数の腫瘍関連抗原(TAA)を標的する最適化されたエピトープにより最もよく達成され得る。好ましくは、少なくとも5つの腫瘍抗原は、HER2/neu、CEA、MAGE2、MAGE3及びp53を含む又はこの中から選択される。
【0047】
ペプチド組成物は、野生型エピトープ及び修飾エピトープ(ヘテロクリティックエピトープ及び固定アンカーエピトープ)であり得るエピトープの組み合わせを含む。好ましくは、ペプチド組成物は、少なくとも5つのエピトープを含む。好ましい実施形態において、ペプチド組成物は、米国特許出願公開第2014/01474790号(参照により本明細書に組み込む)の表6に開示されているものの中から選択されるエピトープを少なくとも5つ含む。より好ましくは、ペプチド組成物は、以下の5つの腫瘍抗原: HER2/neu、CEA、MAGE2、MAGE3及びp53の組み合わせを標的することができる少なくとも5つのエピトープを含む。例えば、ペプチド組成物は、米国特許出願公開第2014/01474790号の表6に開示されているものの中から選択されるエピトープを少なくとも5、6、7、8又は9個含んでもよい。
【0048】
ここで使用される元の組み合わせ(OSE-2101)は、野生型エピトープ及び修飾エピトープ(ヘテロクリティックエピトープ及び固定アンカーエピトープ)で作られる。ヘテロクリティックエピトープ及び固定アンカーエピトープに関するより詳細な情報は、例えば欧州特許第1620456号に見ることができる。
【0049】
OSE-2101は、10個の合成ペプチドで構成される複数エピトープT特異的がん免疫療法である。ペプチドのうち9個は、TAAに対するCTL応答を誘導するように設計されている。特に、本発明のペプチド組成物は、癌胎児性抗原(CEA)、p53、ヒト表皮性受容体-2/神経性(HER-2/neu)並びに黒色腫抗原2及び3(MAGE-2/3)に対して作られるCTLを誘導するために患者へ投与するように設計される。これらTAAは、大腸がん、卵巣がん、乳がん及びNSCLC等様々な進行性がんにおいて頻繁に過剰発現されるので、それらは、疫学に基づいて選択された。各CTLエピトープは、主要組織適合複合体クラスI分子のHLA-A2スーパーファミリーによって制限され、それにより母集団のおよそ45%のカバレッジを得られる。第10の合成ペプチドは、pan-DRエピトープ(PADRE)であり、CTL応答の大きさを増大させるためだけに含まれる合理的に設計されたヘルパーTリンパ球(HTL)エピトープである。
【0050】
本発明のペプチド組成物、特にOSE-2101組成物は、以下のペプチド:
RLLQETELV 配列番号1
YLQLVFGIEV 配列番号2
LLTFWNPPV 配列番号3
KVFGSLAFV 配列番号4
KLBPVQLWV 配列番号5、Bは、α-アミノイソ酪酸を示す
SMPPPGTRV 配列番号6
IMIGHLVGV 配列番号7
KVAEIVHFL 配列番号8
YLSGADLNL 配列番号9
aKXVAAWTLKAAa 配列番号10、X及びaは、シクロヘキシルアラニン及びd-アラニンをそれぞれ示す、
を含む又はからなる。
【0051】
したがって、本発明の組成物は、ペプチドaKXVAAWTLKAAa(配列番号10、X及びaは、それぞれシクロヘキシルアラニン及びd-アラニンを示す)並びにRLLQETELV(配列番号1)、YLQLVFGIEV(配列番号2)、LLTFWNPPV(配列番号3)、KVFGSLAFV(配列番号4)、KLBPVQLWV(配列番号5、Bは、α-アミノイソ酪酸を示す)、SMPPPGTRV(配列番号6)、IMIGHLVGV(配列番号7)、KVAEIVHFL(配列番号8)及びYLSGADLNL(配列番号9)からなる群から選択される少なくとも4、5、6、7、8又は9個のペプチドを含む。
【0052】
ペプチドは、適当な樹脂から始める固相ペプチド合成の標準的なBoc又はFmoc化学を使用して合成され、標準的な方法によって精製され得る。別法として、ペプチドは、組換え細胞を用いる遺伝子工学によって又はRNAによって、例えばin vitro翻訳システムによって産生されてもよい。
【0053】
本発明のペプチド組成物は、薬学的に許容可能な担体又は賦形剤を含んでもよい。より好ましくは、薬学的に許容可能な担体は、水溶性担体、特に緩衝液である。特に、それは1つ又はいくつかのアジュバントを含んでもよい。例えば、アジュバントは、不完全フロイントアジュバント、鉱油アジュバント、水酸化アルミニウム又はミョウバン、GM-CSFであり得る。他の適切なアジュバントは、当業者に周知である。
【0054】
一実施形態において、本発明のペプチド組成物は、樹状細胞等、ペプチドをパルスされた抗原提示細胞を含み得る。
【0055】
好ましくは、本発明のペプチド組成物において、ペプチドは、不完全フロイントアジュバント又は同種のものの中に乳化される。好ましい実施形態において、アジュバントは、Seppic 社、Paris、FRANCEによって製造及び供給されている不完全フロイントアジュバントと類似の、鉱油アジュバントである。最も好ましい実施形態において、アジュバントは、モンタニド(登録商標) ISA 51である。組成物の各ペプチドは、濃度0.1mg/mL~1mg/mL、好ましくは0.5mg/mLで存在し得る。好ましくは、全てのペプチドが、同じ濃度で組成物中に存在する。
【0056】
好ましくは、本発明のペプチド組成物は、無菌で、防腐剤含まないそれぞれ濃度0.5mg/mLの10個のペプチドの乳剤であり、比1:1(質量:質量)比でモンタニド(登録商標) ISA 51アジュバント中に製剤化され、ゴム栓付きガラスバイアルに充填され、2℃~8℃で冷蔵された。
【0057】
OSE-2101は、無菌条件下で製造される。ペプチドは、異なる3つの溶媒に溶解され、無菌濾過され、プールされ、次いで制御された条件下での均質化によってアジュバントに乳化される。製品リリース検査は、外観、エンドトキシン、無菌性、粘性、粒子サイズ、各ペプチドのペプチド濃度、容積、pH及び効力を含んだ。OSE-2101組成物の調製品は、W02004/094454、図3A及び105~106頁に詳述され、その開示を参照により本明細書に組み込む。
【0058】
任意選択で、OSE-2101の10個のペプチドに加えて、本発明のペプチド組成物は、追加のペプチド、特に細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答を誘導し、TAAを標的化するために使用されるペプチドエピトープを更に含んでもよい。例えば、本発明のペプチド組成物は、WO2009/143843(その開示を参照により本明細書に組み込む)に開示されているペプチド、特にIDO5(配列番号11)を更に含んでもよい。
【0059】
過去の選択の処置
特に、患者は、最後の治療的選択において免疫チェックポイント阻害剤を受けた。免疫チェックポイント阻害剤は、単独で又は別の薬物、特に別のがん療法と組み合わせて投与された。次いで、患者はがんの進行があった。がんの進行は、この処置に対する応答の失敗(一次抵抗性)又は治療効率の喪失(二次抵抗性)いずれかのためであり得る。
【0060】
特定の態様において、最後の処置は、免疫チェックポイント阻害剤又は免疫チェックポイント阻害剤と別のがん療法との組み合わせを含む。
【0061】
免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせるがん療法は、化学療法、特にカルボプラチン等プラチナベースの化学療法若しくは標的療法との組み合わせ、別の免疫チェックポイント阻害剤との組み合わせ又は化学放射線療法と同時若しくは後での免疫チェックポイント阻害剤との組み合わせであり得る。
【0062】
患者は、ペプチド組成物による投与前に、1つ又はいくつかの選択の処置、好ましくは1、2、3又は4つの選択の処置、より好ましくは1、2又は3つの選択の処置、特に1又は2つの選択の処置を受けた。特に、患者は、免疫チェックポイント阻害剤による最後の処置前に他の治療的選択を受けていてもよい。好ましい実施形態において、この/これらの過去の治療的選択は、いかなる免疫チェックポイント阻害剤も含まない。例えば、この/これらの過去の治療的選択は、化学療法を単独で又は放射線療法及び/若しくは手術と組み合わせて含み得る。
【0063】
化学療法薬は、トポイソメラーゼI又はII阻害剤、DNA架橋剤、DNAアルキル化剤、抗代謝剤及び紡錘体阻害剤等のDNA損傷抗腫瘍薬であり得る。例えば、化学療法は、シスプラチン、カルボプラチン、シクロホスファミド、エトポシド、テニポシド、マイトマイシン、イリノテカン、ビノレルビン、エトポシド、イホスファミド、テモゾロマイド、フルオロウラシル(5FU)、ドセタキセル、ペメトレキセド、ナベルビンの中から選択され得る。
【0064】
標的療法とは、VEGF、EGFR又はALK等のチロシンキナーゼを標的化する療法、例えばベバシズマブ、ラムシルマブ等の腫瘍血管の成長(VEGF)を標的する薬物;ニンデタミド(nindetamid)、ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブ等のEGFRを標的するチロシンキナーゼ阻害剤;クリゾチニブ等のALK阻害剤;セリチニブ及びその任意の組み合わせ;トラメチニブ等のMEK阻害剤;ダブラフェニブ等のBRAF阻害剤; PIK3CA阻害剤; CDK4、6阻害剤; Auroraキナーゼ阻害剤; PI3K/mTOR阻害剤; PBKα阻害剤のことを指す。
【0065】
本明細書において定義されるペプチド組成物の投与は、免疫チェックポイント阻害剤による処置の終了後に実行される。2つの処置の間に重複はない。それらは逐次的である。好ましくは、ペプチド組成物は、免疫チェックポイント阻害剤による最後の処置に伴うがんの進行後1週間~3ヵ月間の期間、好ましくは2週間~2ヵ月間の期間投与される。好ましくは、ペプチド組成物は、免疫チェックポイント阻害剤による最後の処置の終了後1週間~3ヵ月の期間、好ましくは2週間~2ヵ月の期間投与される。
【0066】
がん
本発明の好ましい態様によると、患者は、NSCLC(非小細胞肺がん)及び小細胞肺がん等の肺がん、黒色腫、尿路上皮がん、中皮腫、乳がん、膠芽細胞腫等の原発性脳がん、卵巣、子宮癌腫、特に子宮体部及び/又は子宮頸部癌腫、頭頸部がん、結腸直腸がん、胃及び食道がん、腎臓がん、肝細胞癌腫、肉腫、胚細胞腫、白血病、ホジキンリンパ腫等のリンパ腫、メルケル細胞癌腫等の皮膚がん、精巣がん並びに膀胱がん、膵臓がんからなる群から好ましくは選択されるがん、好ましくはNSCLC、黒色腫、尿路上皮がん、腎臓がん、頭頸部がん、結腸直腸がん、胃及び食道がん、乳がん、卵巣がん、脳がん並びにリンパ腫、膵臓がん、より好ましくはNSCLCを有する。
【0067】
別の好ましい実施形態において、患者は進行性がんである。用語「進行性がん」とは、発達の進行性段階にあるがん、即ち手術の見込みがない侵襲的ながん又は体内で拡散した(転移)がんのことを指す。例えば、患者は、ステージIIIA、IIIB、IIIc又はIVを含めたステージIII、好ましくはステージIIIB、IIIc又はIVのがんである。
【0068】
ペプチド組成物の投与レジメン:
例えば、ペプチド組成物は、1~4週間毎、好ましくは2~3週間毎、より好ましくは3週間毎に投与される。
【0069】
任意選択で、ペプチド組成物は、少なくとも1回、少なくとも2回、又は少なくとも3回投与される。
【0070】
ペプチド組成物の投与レジメンは、初回抗原刺激期間及び任意選択で追加免疫期間を含む。
【0071】
用語「初回抗原刺激期間(priming period)」とは、セントラルメモリーT細胞応答が、治療的ペプチドT特異的免疫療法の1つ又はいくつかのペプチドに対して誘導されるワクチン接種工程の期間のことを指す。
【0072】
用語「追加免疫期間(boosting period)」は、初回抗原刺激期間後のワクチン接種工程の期間のことを指し、その間同じ治療的ペプチドT特異的免疫療法が投与され、Tメモリー免疫応答が、持続又は増強される。
【0073】
本発明の好ましい態様によると、治療的ペプチドT特異的免疫療法による処置の下では、対象の初回抗原刺激期間は、治療的ペプチドT特異的免疫療法又はワクチンを1~3回投与する。
【0074】
更により好ましい実施形態において、初回抗原刺激期間は、治療的ペプチドT特異的免疫療法又はワクチンを3回投与する。
【0075】
この初回抗原刺激期間の間、ペプチド組成物は、少なくとも1回及び1~4週間毎、好ましくは2~3週間毎、より好ましくは3週間毎に最高7又は8回、なおより好ましくは2~3週間毎に2~6回投与される。
【0076】
初回抗原刺激期間後の任意の追加免疫期間の間、ペプチド組成物の1回又は数回の投与が、実行される。この追加免疫期間の間、ペプチド組成物の投与は、ペプチド組成物による処置の開始から1又は2年間を通じて2~8ヵ月毎、好ましくは2~3ヵ月毎、例えば2ヵ月毎、その後3ヵ月毎に生じる。
【0077】
別の実施形態において、初回抗原刺激期間後に追加免疫期間はない。
【0078】
初回抗原刺激期間及び追加免疫期間は、ペプチド組成物のいかなる投与も含まない停止期間によって区切られ得る。この停止期間は、4~12週間存続し得る。
【0079】
ペプチド組成物による処置は、患者の状態が安定である、即ち疾患の進行がない限り継続する。特に、進行がないとは、腫瘍の成長及び/又はがんの拡散、即ち転移がないことを意味する。
【0080】
免疫チェックポイント阻害剤
免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA-4阻害剤及び/又はPD-1若しくはPD-L1阻害剤; IDO阻害剤(インドールアミンピロール2,3-ジオキシゲナーゼ)であり得る。
【0081】
いくつかのPD-1/PD-L1阻害剤が、すでに利用可能である又は臨床的開発下にある。例えば、PD-1/PD-L1阻害剤は、ペムブロリズマブ(Merk社)、ニボルマブ(Bristol Myers Squibb社)、抗PD-L1であるBMS936559(Bristol Myers Squibb社)、MEDI4736又はデュルバルマブ(Astra Zeneca社)、抗PD-1融合タンパク質であるAMP-224(Astra Zeneca社)、抗PD-1であるAMP-514又はMEDI0680(Astra Zeneca社)、 抗PD-L1であるMPDL328OA、アテゾリズマブ(Roche社)、アベルマブ(別名MSB0010718C、Merck KgA Serono社/Pfizer社製)を含む網羅的ではないリストの中から選択され得る。例えば、PD-1/PD-L1阻害剤は、WO2013/079174に開示されているものの中から選択され得る。
【0082】
例えば、CTLA-4阻害剤は、トレメリムマブ(Medimmune社/Astra Zeneca社)及びイピリムマブ(BMS)を含む網羅的でないリストの中から選択され得る。
【0083】
したがって、免疫チェックポイント阻害剤は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、BMS936559、MEDI4736、AMP-224、AMP-514、MPDL328OA、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、トレメリムマブ及びイピリムマブからなる群内で選択される。
【0084】
薬量
本発明の文脈の中で、用語「処置」又は「処置する」は、治癒的、症候的、及び予防的処置を意味する。本発明の医薬組成物及び調製品は、既存のがん又は腫瘍、好ましくはがんの進行の後期段階のヒトにおいて使用され得る。本発明の医薬組成物及び調製品は、がんを有する患者を必ずしも治癒させるものではないが、疾患の進行を遅延若しくは減速させる又は更なる進行を防止することになり、それによって患者の状態を改善する。特に、本発明の医薬組成物及び調製品は、腫瘍の発達を減少させ、並びに/又は転移の発生若しくは発達及びがんの再発を防止する。がんの処置において、本発明の医薬組成物は、治療有効量で投与される。
【0085】
「有効量」によって、脳転移の悪影響を防止、除去、又は減少させる本発明の医薬組成物の量が意味される。投与される用量は、患者、病理学、投与様式、等にしたがって当業技術者によって適合され得ると理解される。薬量及びレジメンは、処置される疾患の段階及び重症度、患者の体重及び一般的な健康状態並びに処方する医師の判断によって決まる。特に、「ペプチド組成物の治療的に効果的な量」によって、患者の総生存率を増大させるのに十分な量が、意図される。
【0086】
過去のがん試験は、注射用量当たりペプチド0.1~10mgの範囲で不完全フロイントアジュバント中に乳化されたペプチドの漸増用量について検査した。検査した全ての用量において、ペプチド/不完全フロイントアジュバント処置は、報告されている重度の用量依存的全身的毒性なしに安全で、良い寛容性を示すと考えられた。
【0087】
本発明のペプチド組成物は、あらゆる適当な経路、特に皮下、真皮内若しくは筋肉内経路等の非経口経路又はエアロゾル、経粘膜、胸膜内若しくはくも膜下腔内経路によって投与され得る。最も好ましい実施形態において、ペプチド組成物は、皮下投与される。好ましくは、ペプチド組成物は、皮下注射用として設計される。
【0088】
好ましくは、各ペプチドの用量は、注射用量当たりペプチド0.1~10mgである。好ましい実施形態において、各注射又は投与に対する総ペプチド用量は、5.0mg(各ペプチド0.5mgを含有する製剤1mL)になる。
【実施例
【0089】
進行性がんにおいてチェックポイント阻害剤失敗後に投与されるT細胞ネオエピトープカクテル(OSE2101)の有効性
局所進行性(IIIB)の放射線療法に不向きな又は転移性(IV)の非小細胞肺がんのHLA-A2陽性患者において、主に第2又は第3選択としてOSE2101の無作為化並行群第III相試験を、標準的な処置(ドセタキセル又はペメトレキセド)と比較して実施した。(OSE2101C301)
【0090】
主要な目的
臨床試験の目的は、OSE2101(Arm A)が、局所進行性(IIIB)若しくは転移性(IV) NSCLCのHLA-A2陽性患者の総生存率(OS)の延長において事前の(prior)プラチナベース化学療法の失敗後、或いは単独又はプラチナ若しくは放射化学療法と組み合わせて使用されるチェックポイント阻害剤レジメンの失敗又は維持処置として使用される放射化学療法チェックポイント後のチェックポイント阻害剤失敗後における第2若しくは第3選択療法として、第2選択に使用される標準的な化学療法であるペメトレキセド若しくはドセタキセル(Arm B)より優れていることを実証することであった:
【0091】
個々の対象に対する総研究継続時間は、対象の生存率によって決まり、ランダム化時間は、OS(総生存率)算出のベースラインである。
【0092】
臨床試験
処置:
OSE2101(Arm A);
OSE-2101ペプチド組成物は、以下のペプチド:
RLLQETELV 配列番号1
YLQLVFGIEV 配列番号2
LLTFWNPPV 配列番号3
KVFGSLAFV 配列番号4
KLBPVQLWV 配列番号5、Bは、α-アミノイソ酪酸を示す
SMPPPGTRV 配列番号6
IMIGHLVGV 配列番号7
KVAEIVHFL 配列番号8
YLSGADLNL 配列番号9
aKXVAAWTLKAAa 配列番号10、X及びaは、シクロヘキシルアラニン及びd-アラニンをそれぞれ示す、
からなる。
【0093】
OSE2101を、3週間毎の1日目に6サイクル、次いで1年目の残りを2ヵ月毎、最終的に試験の終了まで3ヵ月毎に1mL皮下注射として投与した。OSE2101用量は、ペプチド5mg(各ペプチド0.5mg)であった。
【0094】
ドセタキセル又はペメトレキセド(Arm B)
ドセタキセル又はペメトレキセドを、3週間毎に投与した。
【0095】
ドセタキセルを、21日間サイクルの1日目に1時間にわたって静脈注入によって75mg/m2で投与した。
【0096】
ペメトレキセドを、21日間サイクルの1日目に、500mg/m2で静脈注入によって10分間にわたって投与した。
【0097】
処置サイクルを、治験責任医師によって決定される疾患の進行(RECIST)が容認できない毒性になる、又は同意が撤回されるまで繰り返した。この場合、治験責任医師は、患者に新たな化学療法、免疫チェックポイント阻害剤を含めた救援療法(治験責任医師の最良の選択後)若しくはサルベージ療法又は患者の承認/状況に応じて処置しない提案を自由に提案した。
【0098】
処置の終了:腫瘍判定のために過去4週間又は6週間から判定を得るために最後の処置投与の4週間後。
【0099】
追跡:処置後生存率状況について処置中断後2ヵ月毎。
【0100】
選択基準
がんの診断及び処置
1- 国際対がん連合及び対がん米国合同委員会から公開されているtumor, node, metastasis (TNM) in Lung Cancer第7版にしたがって局所進行性(ステージIIIB)の放射線療法に不向きな若しくは転移性(ステージIV)である肺がん(NSCLC)を組織又は細胞学的に証明した診断。
【0101】
2- 疾患の再発又は進行がある対象
a. 患者は、1回の事前の化学療法レジメン後に進行疾患(progressive disease)を有していなければならない:
i. 疾患初期の外科的切除後に補助治療において事前のプラチナベース化学療法を1回受け、その疾患が、事前の化学療法完了の12ヵ月以内に再発した患者を含む
ii. ステージIIIの局所限局疾患に対して放射線療法と組み合わせて事前のプラチナベース化学療法を1回受け、その疾患が、事前の化学療法完了の12ヵ月以内に再発した患者を含む
iii. 局所進行性疾患に対して第1のレジメンがアジュバント療法として与えられた又は放射線療法と組み合わせて与えられた場合に事前のプラチナベース化学療法レジメンを2回受けた患者を含む
又は免疫チェックポイント阻害剤及びプラチナベース化学療法による療法(第1選択化学療法に続いて第2選択チェックポイント阻害剤を単独で使用するか、チェックポイント阻害剤と化学療法を組み合わせる第1選択かいずれか)又は放射化学療法後のチェックポイント阻害剤失敗(チェックポイントを維持処置として使用した)後に患者が、進行疾患を有した3- 測定可能な又は測定不能な病変がある対象。
【0102】
4- 対象は、血清学的に評価されるHLA-A2表現型を発現しなければならない。
【0103】
5- 対象は、ペメトレキセド又はドセタキセルいずれかの単剤による化学療法に適していると見なされなければならない。
【0104】
6- 脳転移がある対象は、処置済みである(脳全体の放射線療法、定位放射線療法、手術)、割当られた処置の開始前に少なくとも2週間症候がない(中枢神経系療法と関係する徴候及び症候を除く)及びいかなる禁止治療薬の投与も受けていない場合、適格である。
【0105】
7- いかなる事前の化学療法、免疫療法、放射線療法又は手術も、研究治療薬開始の少なくとも3週間前に完了していなければならない。
【0106】
8- 事前の治療からのいかなる毒性も、悪性度1(脱毛症以外)≧に回復していなければならない。ECOG成績状況0~1及び十分な器官機能も、必要とされた。
【0107】
除外基準
がんの診断及び処置
1. 小細胞成分を含む小細胞肺がん/混合NSCLC又は他の神経内分泌系肺がん(典型的な及び異型のカルチノイド、大細胞神経内分泌癌)。大細胞癌。
【0108】
2. 主に扁平上皮癌であり、患者が、事前の化学療法の一環としてドセタキセルを有したNSCLC。
【0109】
3. 別の治療的臨床試験における治験療法による現在の又は過去の処置が、研究処置開始の4週間未満前に中断された。
【0110】
4. 腫瘍が、腫瘍をTKI(EGERエクソン18~21)又はALK再編成に対して感受性にするEGLR遺伝子変異を保有する患者。
【0111】
5. 免疫療法(チェックポイント阻害、抗原免疫療法)を進行中である。
【0112】
6. 脊髄圧迫(良好な疼痛管理及び安定な又は回復した神経機能を実現した患者による処置を除く)、脳軟膜転移癌、又は軟髄膜疾患
【0113】
7. ペメトレキセドによってこれまでに処置された扁平上皮細胞組織構造若しくは非扁平上皮細胞組織構造がある、及び神経障害悪性度2≦でドセタキセルの禁忌である、又はポリソルベート80と製剤化した治療薬に対する超過敏反応がある患者、それら患者は、Arm Bに無作為に割り当てられ得る。
【0114】
病歴及び臨床的状況
副腎皮質ステロイド又は他の免疫抑制性治療薬のいずれかによる全身的処置を必要とする状態の患者、免疫不全症又はウイルス感染症、HIV活性、B型若しくはC型肝炎の患者。
【0115】
患者を、比1/1で無作為に割付けた。研究処置と参照療法の投与経路が異なり、OSE2101(ステロイド)に対して許可されなくなる付随療法が必要であり、安全性プロファイルが、割り当てられた処置を容易に認識するのに役立つことになるので、本研究は、予め定義した層により無作為化されたが、盲検化はされなかった。したがって、本研究は、オープンラベルであった(盲検ではない)。
【0116】
ランダム化を、
- 組織(扁平上皮対非扁平上皮)、
- 第1選択処置に対する初期応答(客観的応答:完全又は部分的応答、対非客観的応答:安定化又は進行疾患)、及び
- 免疫チェックポイント阻害剤ICIによる過去の処置(有り対無し)
により層化した。
【0117】
結果
本研究は、2016年第1四半期に9ヵ国で開始され、化学療法後又はチェックポイント阻害剤失敗後に進行中の進行性及び転移性NSCLC患者を募集した。2017年6月に、臨床試験は、実験的処置の新たなリスク/便益バランスのため、独立データモニタリング委員会(IDMC)の勧告にしたがって患者の増加を一時的に休止された。
【0118】
化学療法後又はチェックポイント阻害剤後に疾患再発又は進行があった131名の対象が、試験に参加した。arm A及びBと関係する死亡事象に関する正確な情報が、機関(所管監督官庁)によって非盲検で要請され、これらの死亡事象の百分率結果を以下で示す。
【0119】
患者の集団
Arm A OSE2101: 患者65名
Arm B化学療法(組織状況に応じてペメトレキセド又はドセタキセル):患者66名
層NS-NO- NP、NS-O- NPを除いて、2つの処置arm間で層全体の分布に激しい不均衡は存在しなかった。
【0120】
【表1】
【0121】
組織: NS:非扁平上皮、s:扁平上皮
第1選択処置に対する初期応答 NO:非客観的応答(安定化又は進行疾患)、O:客観的応答(完全又は部分的応答)
免疫チェックポイント阻害剤による過去の処置 NP: CKIによる過去の処置なし(事前のプラチナベース化学療法後)、P:最後の免疫チェックポイント阻害剤の前の処置の過去の選択の数がいくつであれCKIによる過去の処置あり。
【0122】
比較可能性
2つの群は、無作為化(年齢、性別、喫煙の有無、選択及び除外因子、NSCLCのステージ IIIb局所的侵襲性の患者並びにステージIV転移)において全般的に同等だった。
【0123】
arm A又はBに参加する前の過去の治療的選択回数:
過去の治療的選択回数は、均衡を保った。
【0124】
【表2】
【0125】
第3選択のためにチェックポイント失敗後に参加した患者は、第2選択の処置においてニボルマブを受けていた。第2選択に参加した患者は、第1選択においてアテゾリズマブ+化学療法又は維持でデュルバルマブ+放射化学療法又は第1選択においてニボルマブ+化学療法を受けていた。第4選択に参加した患者は、第3選択においてニボルマブを受けていた。
【0126】
生存率結果
主要な項目に関する結果を、死亡事象の百分率を定義可能にする死亡事象の数と共に群A又はBによって示す。生存率曲線を比較するカプランマイヤー曲線分析は、試験終了時にのみ計画する。
【0127】
主要な2つの層、化学療法後(過去のCKI処置なし)及びチェックポイント阻害剤後(過去のCKI処置あり)による死亡事象の概説: A: 31/65、B: 29/66
【0128】
【表3】
【0129】
過去のCKI処置がない(処置A又はBの前に化学療法を受けている)患者において、群Aは、死亡事象数の不均衡を示す。
【0130】
チェックポイント阻害剤後の層において、arm A及びBにおけるチェックポイント阻害剤前に受けた過去の処置の回数が不均衡であったにもかかわらず、化学療法を受けた群Bで集団の50%が死亡した9/18(*無作為化前に中止した患者2名)のに対してこの群では集団の16.6%しか死亡しない(3例の死亡事象/18)(83.4%がまだ生存中)ので、本研究は、群Aに有利な強力であり、予想外の差異を示す。
【0131】
より具体的には、第3選択の処置の臨床試験に参加している患者の場合、その結果は以下の通りである。
【0132】
【表4】
【0133】
群Aにおいてこの集団の7%が死亡し(93%がまだ生存中)(1例の死亡事象/14)、8例の死亡事象/14がある群Bにおいては43%しか生存していない(この集団の57%が死亡)(*無作為化前に中止した患者1名)ので、これら第1の結果を、CKI後の第3選択(第2選択においてCKI投与した)に参加した患者のサブグループにおいて次いで確認する。
【0134】
CKIに対する過去の応答とは独立してArm Aにおいて観察された有効性データ
過去のCKI処置に対する応答は、Yes(CR-PR-SD)対No(PD)に分類される。
【0135】
【表5】
【0136】
CKI処置に対する初期の応答がどうであれ、arm Aの患者は、arm Bの患者より良好な生存率を示した。この生存率効果は、CKI処置に対する応答がない患者においてより著しい。
【0137】
ペプチド組成物OSE2101は、CKI処置に応答して進行する患者(二次抵抗性)又はCKI処置に応答しない患者(一次抵抗性)に対してもCKI失敗後に免疫系を活性化させ得る。
【0138】
救援として使用したCKI処置前の免疫学的処置arm A:化学療法arm?と比較した死亡事象に対する影響
患者が処置A又はBのもとで進行していた場合、プロトコールは、治験責任医師の選択にしたがって救援処置を提案できるようにした(化学療法後の患者の大多数)。CKI処置が、群A又はBにおいて進行後に提案された場合、ペプチド組成物OSE2101とそれに続くCKI処置による初期の処置は、化学療法とそれに続くCKI処置と比較して死亡事象の数を減少させる。
【0139】
arm A又はBいずれかによる処置後にCKI処置を受けた患者における死亡事象
A: 5/18; 27.8%
B: 18/35 ; 51.4%
したがって、ペプチド組成物OSE2101による処置後にチェックポイント阻害剤を受けている患者の死亡事象数は、arm Bのそれと比較して、arm Aにおいてはあまり重要でない。
【0140】
安全性-重度有害事象及び死亡事象
arm Aにおける死亡事象の全てが、進行と関係があった。arm Bにおいて、2つの重度有害事象(1つは好中球減少、1つは脳卒中事象)を除いて、死亡事象はまた、進行疾患による死亡事象であった。
【0141】
arm AにおいてOSE2101に関連する重度有害事象は、これまでに記載されている重度 有害事象と異なっておらず、化学療法armより全般的にあまり重度でなかった。治療的選択肢が極めて限られている場合、この要素は、特にCKI処置後のリスク便益判定に重要である。
【配列表】
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