(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-23
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】フッ素含有フルオレンオキシムエステル系光開始剤、それを含む光硬化組成物およびその適用
(51)【国際特許分類】
C08F 2/50 20060101AFI20220128BHJP
C07C 251/66 20060101ALI20220128BHJP
C07C 225/18 20060101ALI20220128BHJP
C07C 49/83 20060101ALI20220128BHJP
C07C 49/82 20060101ALI20220128BHJP
C07C 221/00 20060101ALI20220128BHJP
C07C 45/61 20060101ALI20220128BHJP
C07D 333/16 20060101ALI20220128BHJP
C07D 303/16 20060101ALI20220128BHJP
C07D 305/06 20060101ALI20220128BHJP
C07D 295/104 20060101ALI20220128BHJP
C08F 265/04 20060101ALI20220128BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20220128BHJP
【FI】
C08F2/50
C07C251/66
C07C225/18
C07C49/83 A
C07C49/82
C07C221/00
C07C45/61
C07D333/16
C07D303/16
C07D305/06
C07D295/104
C08F265/04
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2020534205
(86)(22)【出願日】2018-12-05
(86)【国際出願番号】 CN2018119354
(87)【国際公開番号】W WO2019120081
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-07-08
(31)【優先権主張番号】201711415551.4
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201810020889.8
(32)【優先日】2018-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515324604
【氏名又は名称】常州強力先端電子材料有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHANGZHOU TRONLY ADVANCED ELECTRONIC MATERIALS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Wucheng Industrial Park, Zhenglu Town, Tianning,Changzhou, Jiangsu 213159,China
(73)【特許権者】
【識別番号】517427152
【氏名又は名称】常州強力電子新材料股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHANGZHOU TRONLY NEW ELECTRONIC MATERIALS Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】Qianjia Industrial Park, Yaoguan Town, Wujin District Changzhou city, Jiangsu 213011, China
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】銭 暁 春
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/059772(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0144809(KR,A)
【文献】国際公開第2017/101553(WO,A1)
【文献】特開2017-120379(JP,A)
【文献】特表2015-523318(JP,A)
【文献】特表2016-519675(JP,A)
【文献】国際公開第2017/023067(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/010036(WO,A1)
【文献】特開2015-61880(JP,A)
【文献】特開2018-72398(JP,A)
【文献】特表2020-517804(JP,A)
【文献】特開2019-48916(JP,A)
【文献】特開2020-60617(JP,A)
【文献】国際公開第2018/049976(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/149370(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I
)で示される構造を有することを特徴とするフッ素含有フルオレンオキシムエステル系光開始剤。
【化1】
ここにおいて、前記一般式(I)において、前記nは、1~4の整数を示す。前記mは、1~4の整数を示す。
n個の前記R
1は、それぞれ独立に、-G-(M’)
q、水素、ニトロ基、ハロゲン、又は
【化2】
から選ばれる。前記m’は、1~4の整数を示す。ここにおいて、前記Gは、ヘテロ原子又はカルボニル基から選ばれ、前記ヘテロ原子は、O、N又はSであり、前記M’は、C
1~C
20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、C
3~C
8のシクロアルキル基、C
3~C
8のシクロアルキル基で置換されたC
1~C
10のアルキル基、C
6~C
20のアリール基、C
1~C
10のアルキル基、ニトロ基で置換されたC
6~C
20のアリール基、シアノ基で置換されたC
6~C
20のアリール基、C
4~C
20のヘテロアリール基、ニトロ基で置換されたC
6~C
20のヘテロアリール基又はシアノ基で置換されたC
6~C
20のヘテロアリール基から選ばれる。前記M’における一つ又は複数の炭素原子は、前記ヘテロ原子に置換されてもよい。qが1又は2である。
前記R
2及び前記R
2’は、それぞれ独立に、重合可能基から選ばれる。
前記Z及び前記Z’は、それぞれ独立に、不存在であるか、又はカルボニル基を示す。
m個の前記R
3及びm’個の前記R
5は、それぞれ独立に、フッ素、一つ又は複数のフッ素で置換された直鎖又は分岐鎖のアルキル基、一つ又は複数のフッ素で置換された直鎖又は分岐鎖アルコキシ基から選ばれる。
前記R
4及び前記R
6は、それぞれ独立に、C
1~C
20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、C
3~C
20のシクロアルキル基、C
3~C
8のシクロアルキル基で置換されたC
1~C
10のアルキル基、C
1~C
10のアルキル基で置換されたC
3~C
8のシクロアルキル基、C
6~C
20のアリール基、C
4~C
20のヘテロアリール基又はC
2~C
20のアルケニル基から選ばれ
る。
【請求項2】
前記一般式(I)において、前記M’は、C
1~C
10の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、C
3~C
6のシクロアルキル基、C
3~C
6のシクロアルキル基で置換されたC
1~C
5のアルキル基、C
6~C
10のアリール基、C
1~C
5のアルキル基、ニトロ基で置換されたC
6~C
10アリール基、シアノ基で置換されたC
6~C
10のアリール基、C
4~C
10のヘテロアリール基、ニトロ基で置換されたC
6~C
10のヘテロアリール基又はシアノ基で置換されたC
6~C
10のヘテロアリール基から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載のフッ素含有フルオレンオキシムエステル系光開始剤。
【請求項3】
前記一般式(I)において、前記R
2及び前記R
2’は、それぞれ独立に、二重結合又はエポキシ基を含む重合可能基から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載のフッ素含有フルオレンオキシムエステル系光開始剤。
【請求項4】
前記一般式(I)において、前記R
2及び前記R
2’は、それぞれ独立に、C
2~C
12のアルケニル基から選ばれ、前記R
2及び前記R
2’中の一つ又は複数の-CH
2-は、それぞれ独立に、
【化3】
に置換されてもよ
いことを特徴とする請求項3に記載のフッ素含有フルオレンオキシムエステル系光開始剤。
【請求項5】
前記一般式(I)において、前記R
2
及び前記R
2
’は、それぞれ独立に、C
3
~C
8
のアルケニル基から選ばれ、前記R
2
及び前記R
2
’中の一つ又は複数の-CH
2
-は、それぞれ独立に、
【化4】
に置換されてもよいことを特徴とする、請求項3に記載のフッ素含有フルオレンオキシムエステル系光開始剤。
【請求項6】
前記一般式(I)において、前記R
2及び前記R
2’は、それぞれ独立に、オキシラニル基で置換されたC
1~C
10のアルキル基又はエポキシプロピル基で置換されたC
1~C
10のアルキル基から選ばれ、前記R
2及び前記R
2’中のC
1~C
10のアルキル基における一つ又は複数の-CH
2-は、それぞれ独立に、
【化5】
に置換されてもよいことを特徴とする、請求項3に記載のフッ素含有フルオレンオキシムエステル系光開始剤。
【請求項7】
前記一般式(I)において、前記R
2及び前記R
2’は、それぞれ独立に、オキシラニル基又は
エポキシプロピル基を
末端基とするC
1~C
8のアルキル基から選ばれ、前記R
2及び前記R
2’中のC
1~C
8のアルキル基における一つ又は複数の-CH
2-は、それぞれ独立に、
【化6】
に置換されてもよく、前記オキシラニル基又は前記エポキシプロピル基中のHは、C
1~C
4のアルキル基で置換されてもよいことを特徴とする、請求項
6に記載のフッ素含有フルオレンオキシムエステル系光開始剤。
【請求項8】
前記一般式(I)において、m個の前記R
3及びm’個の前記R
5は、それぞれ独立に、
【化7】
から選ばれることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のフッ素含有フルオレンオキシムエステル系光開始剤。
【請求項9】
前記一般式(I)において、前記R
4及び前記R
6は、それぞれ独立に、C
1~C
6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、C
3~C
10のシクロアルキル基、C
3~C
6のシクロアルキル基で置換されたC
1~C
8のアルキル基、C
1~C
8のアルキル基で置換されたC
3~C
6のシクロアルキル基、又はC
6~C
12のアリール基から選ばれることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のフッ素含有フルオレンオキシムエステル系光開始剤。
【請求項10】
前記一般式(I)において、前記R
4及び前記R
6は、それぞれ独立に、フェニル基、C
1~C
4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、C
3~C
8のシクロアルキル基、又はC
3~C
6のシクロアルキル基で置換されたC
1~C
4アルキル基から選ばれることを特徴とする、請求項
9に記載のフッ素含有フルオレンオキシムエステル系光開始剤。
【請求項11】
前記一般式(I)で示されるフッ素含有フルオレンオキシムエステル系光開始剤は、以下のものからなる群から選ばれる一種又は複数種であることを特徴とする、請求項
1に記載のフッ素含有フルオレンオキシムエステル系光開始剤。
【化8-1】
【化8-2】
【化8-3】
【化8-4】
【化8-5】
【化8-6】
【請求項12】
一般式(II)で示される構造を有することを特徴とするフッ素含有フルオレン類光開始剤。
【化9】
前記一般式(II)において、前記R
1
及び前記R
1
’は、それぞれ独立に、フッ素含有基を示す。
前記R
2
及び前記R
3
は、それぞれ独立に、C
1
~C
20
の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、C
3
~C
12
のシクロアルキル基、C
4
~C
18
のシクロアルキルアルキル基、C
6
~C
20
のアリール基、C
7
~C
24
のアリールアルキル基、置換もしくは無置換のC
4
~C
20
のヘテロアリール基を示すか、又はR
2
及びR
3
が互いに連結してC
3
~C
10
のシクロアルキル基を形成している。
前記R
4
は、ヒドロキシル基、N-モルホリニル基、N-ピペリジニル基、N-ピペラジニル基、N-ピロリル基又はN-第3級アミノ基を示す。
前記Aは、水素、ニトロ基、-CO-CR
2
R
3
R
4
基、又は-R
5
-(R
6
)
n
を示し、ここにおいて、R
2
、R
3
及びR
4
は、前記一般式(II)中と同義であり、前記R
5
は、O、S、N又はカルボニル基を示し、前記R
6
は、C
1
~C
20
の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、C
3
~C
12
のシクロアルキル基、C
4
~C
18
のシクロアルキルアルキル基、置換もしくは無置換のC
6
~C
20
のアリール基、C
7
~C
24
のアリールアルキル基、5員環又は6員環の不飽和ヘテロ環基、又は置換もしくは無置換のC
4
~C
20
のヘテロアリール基を示し、nは、1又は2を示す。
【請求項13】
前記一般式(II)において、前記R
1及び前記R
1’は、それぞれ独立に、C
2~C
10の直鎖又は分岐鎖のフッ素含有アルキル基から選ばれ、任意に、その中の-CH
2-は、-O-又はフェニレン基に置換されてもよく、また、フェニレン基上のHは、任意にC
1~C
4のアルキル基で置換されてもよいことを特徴とする、請求項
12に記載のフッ素含有フルオレン類光開始剤。
【請求項14】
前記一般式(II)において、前記R
1及び前記R
1’は、それぞれ独立に、-CF
3、-CF
2CF
3、-CF
2-CH
2F又は-CF
2-CHF
2を末端基とするC
3~C
8の直鎖又は分岐鎖のフッ素含有アルキル基を示し、任意に、その中の-CH
2-は、-O-又は1,4-フェニレン基に置換されてもよく、また、1,4-フェニレン基上のHは、任意にC
1~C
4のアルキル基で置換されてもよいことを特徴とする、請求項
12に記載のフッ素含有フルオレン類光開始剤。
【請求項15】
前記一般式(II)において、前記R
2及び前記R
3は、それぞれ独立に、C
1~C
8の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、C
4~C
12のシクロアルキルアルキル基、C
7~C
14のアリールアルキル基を示すか、又はR
2及びR
3が互いに連結してC
3~C
8のシクロアルキル基を形成していることを特徴とする、請求項
12に記載のフッ素含有フルオレン類光開始剤。
【請求項16】
前記一般式(II)において、前記R
2及び前記R
3は、それぞれ独立に、C
1~C
4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、C
4~C
10のシクロアルキルアルキル基、C
7~C
10のフェニルアルキル基を示すか、又はR
2及びR
3が互いに連結してC
3~C
8のシクロアルキル基を形成していることを特徴とする、請求項
15に記載のフッ素含有フルオレン類光開始剤。
【請求項17】
前記一般式(II)において、前記R
4は、ヒドロキシル基、N-モルホリニル基、N-ピペリジニル基、又は二つの水素がC
1~C
4のアルキル基で置換されたアミノ基を示すことを特徴とする、請求項
12に記載のフッ素含有フルオレン類光開始剤。
【請求項18】
前記一般式(II)において、前記Aは、水素、ニトロ基、-CO-CR
2R
3R
4基、又は-R
5-(R
6)
nを示し、ここにおいて、
R
2
及びR
3
は、それぞれ独立に、C
1
~C
8
の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、C
4
~C
12
のシクロアルキルアルキル基、C
7
~C
14
のアリールアルキル基を示すか、又はR
2
及びR
3
が互いに連結してC
3
~C
8
のシクロアルキル基を形成している;前記R
4
は、ヒドロキシル基、N-モルホリニル基、N-ピペリジニル基、又は二つの水素がC
1
~C
4
のアルキル基で置換されたアミノ基を示す;R
5は、O、S、N又はカルボニル基を示し、R
6は、C
1~C
8の直鎖又は分岐鎖のアルキル基;C
6~C
12のアリール基;C
1~C
5のアルキル基、ニトロ基又はシアノ基で置換されたC
6~C
12のアリール基;又は5員環の不飽和ヘテロ環基を示し、nは、1又は2を示すことを特徴とする、請求項
12に記載のフッ素含有フルオレン類光開始剤。
【請求項19】
前記一般式(II)において、前記R
6は、C
1~C
4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、フラニル基、ピロリル基、チエニル基、C
6~C
10のアリール基;C
1~C
4のアルキル基、ニトロ基又はシアノ基で置換されたC
6~C
10のアリール基を示すことを特徴とする、請求項
18に記載のフッ素含有フルオレン類光開始剤。
【請求項20】
請求項
12~
19のいずれか一項に記載の一般式(II)で示されるフッ素含有フルオレン類光開始剤の製造法であって、原料aと原料bとを触媒の作用下で反応させる、反応式は、以下に示す、フッ素含有フルオレン類光開始剤の製造法。
【化10】
ここにおいて、前記一般式(II)において、前記Mは、H又はOHを示す。
前記MがHを示す場合に、R
0は、即ちR
1であり、R
0’は、即ちR
1’であり、
前記MがOHを示す場合に、前記R
0、前記R
0’は、それぞれ、R
1、R
1’に対応し、かつ、前記R
1は、OR
0を示し、前記R
1’は、OR
0’を示す。
前記Xは、Cl又はBrを示す。
【請求項21】
前記触媒は、アルカリ性触媒で
あることを特徴とする、請求項
20に記載の製造法。
【請求項22】
前記触媒は、リチウムtert-ブトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド及びカリウムtert-ブトキシドのうちの少なくとも一種であることを特徴とする、請求項20に記載の製造法。
【請求項23】
光硬化組成物であって、前記光硬化組成物が光開始剤を含み、前記光開始剤が請求項1~
11のいずれか一項に記載のフッ素含有フルオレンオキシムエステル系光開始剤
、又は請求項12~19のいずれか一項に記載のフッ素含有フルオレン類光開始剤を含むことを特徴とする光硬化組成物。
【請求項24】
カラーレジスト、ブラックマトリックス、フォトスペーサー、リブ、ドライフィルム、半導体フォトレジスト又はインクの製造に適用されることを特徴とする、請求項1~
11のいずれか一項に記載のフッ素含有フルオレンオキシムエステル系光開始
剤。
【請求項25】
カラーレジスト、ブラックマトリックス、フォトスペーサー、リブ、ドライフィルム、半導体フォトレジスト
又はインクの製造に適用されることを特徴とする、
請求項12~19のいずれか一項に記載のフッ素含有フルオレン類光開始剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機合成分野に関するものであり、詳しくは、フッ素含有フルオレンオキシムエステル系光開始剤、それを含む光硬化組成物およびその適用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
伝統的なブラウン管モニタに比べ、液晶表示装置には、エネルギー消費が低く、体積が小さく、放射線フリーなどの利点を有するが、視野角が小さく、影像遅延、輝度及びコントラスト不良、などの欠陥を抱えている。近年、人々の生活水準の向上につれて、人々は、液晶表示装置に対しても、より高い要求を求めてきており、大型サイズ、高輝度、高コントラスト及び広い視野角などの要求が提出されており、このため、液晶ディスプレイの製造に用いられる材料に対してもより高い要求を求めるようになる。
【0003】
カラーレジスト、ブラックレジスト及びフォトスペーサーは、液晶パネルディスプレイを構成する重要な構成部分であり、次世代のパネルディスプレイにおいて大型サイズ、高解像度を実現するのに必要不可欠な材料であり、高感度のオキシムエステル開始剤は、レジスト及びフォトスペーサーの配合処方の重要な構成部分であり、近年、高感度開始剤について研究が非常に盛んになっているが、これまでに開示の光開始剤の表面乾燥特性が悪く、マイグレーションしやすいという課題が依然として有効に解決されておらず、材料の適用性能にある程度で影響を及ぼすこととなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来のオキシムエステル系光開始剤の表面乾燥特性が悪く、マイグレーションしやすいという課題を解決するために、フッ素含有フルオレンオキシムエステル系光開始剤、それを含む光硬化組成物およびその適用を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を実現するために、本発明は、フッ素含有フルオレンオキシムエステル系光開始剤を提供し、当該光開始剤は、一般式(I)又は(II)で示される構造を有する:
【0006】
【0007】
ここにおいて、一般式(I)において、nは、1~4の整数を示す;mは、1~4の整数を示す。
【0008】
n個のR1は、それぞれ独立に、-G-(M’)q、水素、ニトロ基、ハロゲン、又は
【0009】
【0010】
から選ばれ、m’は、1~4の整数を示す;ここにおいて、Gは、ヘテロ原子又はカルボニル基から選ばれ、ヘテロ原子は、O、N又はSであり、M’は、C1~C20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、C3~C8のシクロアルキル基、C3~C8のシクロアルキル基で置換されたC1~C10のアルキル基、C6~C20のアリール基、C1~C10のアルキル基、ニトロ基で置換されたC6~C20アリール基、シアノ基で置換されたC6~C20アリール基、C4~C20のヘテロアリール基、ニトロ基で置換されたC6~C20ヘテロアリール基又はシアノ基で置換されたC6~C20ヘテロアリール基から選ばれ、M’における一つ又は複数の炭素原子がヘテロ原子に置換されてもよい。qが1又は2である。
【0011】
R2及びR2’は、それぞれ独立に、重合可能基から選ばれる。
Z及びZ’は、それぞれ独立に、不存在であるか、又はカルボニル基を示す。
【0012】
m個のR3及びm’個のR5は、それぞれ独立に、フッ素、一つ又は複数のフッ素で置換された直鎖又は分岐鎖のアルキル基、一つ又は複数のフッ素で置換された直鎖又は分岐鎖アルコキシ基から選ばれる。
【0013】
R4及びR6は、それぞれ独立に、C1~C20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、C3~C20のシクロアルキル基、C3~C8のシクロアルキル基で置換されたC1~C10のアルキル基、C1~C10のアルキル基で置換されたC3~C8のシクロアルキル基、C6~C20のアリール基、C4~C20のヘテロアリール基又はC2~C20のアルケニル基から選ばれる。
【0014】
一般式(II)において、R1及びR1’は、それぞれ独立にフッ素含有基を示す。
R2及びR3は、それぞれ独立に、C1~C20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、C3~C12のシクロアルキル基、C4~C18のシクロアルキルアルキル基、C6~C20のアリール基、C7~C24のアリールアルキル基、置換もしくは無置換のC4~C20のヘテロアリール基を示すか、又はR2及びR3が互いに連結してC3~C10のシクロアルキル基を形成している。
【0015】
R4は、ヒドロキシル基、N-モルホリニル基、N-ピペリジニル基、N-ピペラジニル基、N-ピロリル基又はN-第2級アミノ基を示す。
【0016】
Aは、水素、ニトロ基、-CO-CR2R3R4基、又は-R5-(R6)nを示し、ここにおいて、R5は、O、S、N又はカルボニル基を示し、R6は、C1~C20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、C3~C12のシクロアルキル基、C4~C18のシクロアルキルアルキル基、置換もしくは無置換のC6~C20のアリール基、C7~C24のアリールアルキル基、5員環又は6員環の不飽和ヘテロ環基、置換もしくは無置換のC4~C20のヘテロアリール基を示し、nは、1又は2を示す。
【発明の効果】
【0017】
本発明の技術内容を適用すれば、本願が提供する一般式(I)又は(II)で示されるフッ素含有フルオレンオキシムエステル系光開始剤において、フッ素含有基を導入することで、当該光開始剤が開始効率の高いという利点を有するようになる。そして、前記構造上の特殊さによって、当該光開始剤がさらに表面乾燥特性が良く、表面硬化効果がよく、そしてマイグレーションし難いという利点などを有するようになる。これに基づいて、前記光開始剤は、開始効率が高く、表面乾燥特性が良く、表面硬化効果がよく、そしてマイグレーションし難いという利点などを有し、広く適用される見込みがある。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明を実施するための形態
なお、矛盾にならないのであれば、本願の実施様態及実施様態中の特徴は、互いに組み合わせることができる。以下は、実施様態と共に本発明を詳しく説明する。
【0019】
背景技術に示されるように、従来のオキシムエステル系光開始剤には、表面乾燥特性が悪く、そしてマイグレーションしやすいという課題を抱えている。前記技術的課題を解決するために、本発明は、フッ素含有フルオレンオキシムエステル系光開始剤を提供し、当該光開始剤は、一般式(I)又は(II)で示される構造を有する。
【0020】
【0021】
ここにおいて、nは、1~4の整数を示す。mは、1~4の整数を示す。
n個のR1は、それぞれ独立に、-G-(M’)q、水素、ニトロ基、ハロゲン、又は
【0022】
【0023】
から選ばれ、m’は、1~4の整数を示す。ここにおいて、Gは、ヘテロ原子又はカルボニル基を含むが、これらに限られない。ヘテロ原子は、O、N又はSであり、M’は、C1~C20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、C3~C8のシクロアルキル基、C3~C8のシクロアルキル基で置換されたC1~C10のアルキル基、C6~C20のアリール基、C1~C10のアルキル基、ニトロ基で置換されたC6~C20アリール基、シアノ基で置換されたC6~C20アリール基、C4~C20のヘテロアリール基、ニトロ基で置換されたC6~C20ヘテロアリール基又はシアノ基で置換されたC6~C20ヘテロアリール基を含むがこれらに限られない。M’における一つ又は複数の炭素原子がヘテロ原子に置換されてもよく、qが1又は2である。
【0024】
R2及びR2’は、それぞれ独立に、重合可能基から選ばれる。Z及びZ’は、それぞれ独立に、不存在であるか、又はカルボニル基を示す。m個のR3及びm’個のR5は、それぞれ独立に、フッ素、一つ又は複数のフッ素で置換された直鎖又は分岐鎖のアルキル基、一つ又は複数のフッ素で置換された直鎖又は分岐鎖アルコキシ基から選ばれる。R4及びR6は、それぞれ独立に、C1~C20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、C3~C20のシクロアルキル基、C3~C8のシクロアルキル基で置換されたC1~C10のアルキル基、C1~C10のアルキル基で置換されたC3~C8のシクロアルキル基、C6~C20のアリール基、C4~C20のヘテロアリール基又はC2~C20のアルケニル基から選ばれる。
【0025】
一般式(II)において、R1及びR1
’は、それぞれ独立に、フッ素含有基を示す。
R2及びR3は、それぞれ独立に、C1~C20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、C3~C12のシクロアルキル基、C4~C18のシクロアルキルアルキル基、C6~C20のアリール基、C7~C24のアリールアルキル基、置換もしくは無置換のC4~C20のヘテロアリール基を示すか、又はR2及びR3が互いに連結してC3~C10のシクロアルキル基を形成している。
【0026】
R4は、ヒドロキシル基、N-モルホリニル基、N-ピペリジニル基、N-ピペラジニル基、N-ピロリル基又はN-第2級アミノ基を示す。
【0027】
Aは、水素、ニトロ基、-CO-CR2R3R4基、又は-R5-(R6)nを示し、ここにおいて、R5は、O、S、N又はカルボニル基を示し、R6は、C1~C20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、C3~C12のシクロアルキル基、C4~C18のシクロアルキルアルキル基、置換もしくは無置換のC6~C20のアリール基、C7~C24のアリールアルキル基、5員環又は6員環の不飽和ヘテロ環基、置換もしくは無置換のC4~C20のヘテロアリール基を示し、nは、1又は2を示す。
【0028】
本願が提供する一般式(I)又は(II)で示されるフッ素含有フルオレンオキシムエステル系光開始剤において、フッ素含有基を導入することで、当該光開始剤が開始効率の高いという利点を有するようになる。そして、前記構造上の特殊さによって、当該光開始剤がさらに表面乾燥特性が良く、表面硬化効果がよく、そしてマイグレーションし難いという利点などを有するようになる。これに基づいて、前記光開始剤は、開始効率が高く、表面乾燥特性が良く、表面硬化効果がよく、そしてマイグレーションし難いという利点などを有し、広く適用される見込みがある。
【0029】
また、一般式(I)で示される光開始剤において、さらにフルオレン構造の9位に重合可能基を導入することで、一般式(I)で示される光開始剤が基材と重合できるようになり、従って、当該光開始剤のマイグレーションし難さのより一層の向上に有利である。
【0030】
前記フッ素含有フルオレンオキシムエステル系光開始剤の構造安定性をより一層向上するために、好ましくは、一般式(I)において、M’は、C1~C10の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、C3~C6のシクロアルキル基、C3~C6のシクロアルキル基で置換されたC1~C5のアルキル基、C6~C10のアリール基、C1~C5のアルキル基、ニトロ基で置換されたC6~C10のアリール基、シアノ基で置換されたC6~C10のアリール基、C4~C10のヘテロアリール基、ニトロ基で置換されたC6~C10のヘテロアリール基又はシアノ基で置換されたC6~C10ヘテロアリール基を含むがこれらに限られない。
【0031】
前記フッ素含有フルオレンオキシムエステル系光開始剤のマイグレーション性をより一層低下させるために、好ましくは、一般式(I)において、R2及びR2’は、それぞれ独立に、二重結合又はエポキシ基を有する重合可能基から選ばれる。
【0032】
一つの好ましい実施様態において、一般式(I)において、R2及びR2’は、それぞれ独立に、C2~C12のアルケニル基から選ばれる。R2及びR2’中の一つ又は複数の-CH2-は、それぞれ独立に、
【0033】
【0034】
に置換されてもよい。
好ましくは、一般式(I)において、R2及びR2’は、それぞれ独立に、C3~C8のアルケニル基から選ばれる。R2中の一つ又は複数の-CH2-は、それぞれ独立に、
【0035】
【0036】
に置換されてもよい。
一つの好ましい実施様態において、一般式(I)において、R2及びR2’は、それぞれ独立に、オキシラニル基で置換されたC1~C10のアルキル基、又はエポキシプロピル基で置換されたC1~C10のアルキル基を示す。R2及びR2’中のC1~C10のアルキル基における一つ又は複数の-CH2-は、それぞれ独立に、
【0037】
【0038】
に置換されてもよい。
一つの好ましい実施様態において、一般式(I)において、R2及びR2’は、それぞれ独立に、オキシラニル基又はシクロプロピル基が封鎖基のC1~C8のアルキル基から選ばれ、R2及びR2’中のC1~C8のアルキル基における一つ又は複数の-CH2-は、それぞれ独立に、
【0039】
【0040】
に置換されてもよく、オキシラニル基又はエポキシプロピル基中のHは、C1~C4のアルキル基で置換されてもよい。
【0041】
好ましくは、一般式(I)において、m個のR3及びm’個のR5は、それぞれ独立に、
【0042】
【0043】
から選ばれる。R3及びR5として前記基を選択して使用すれば、光開始剤の開始効率のより一層の向上に有利である。
【0044】
好ましくは、一般式(I)において、R4及びR6は、それぞれ独立に、C1~C6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、C3~C10のシクロアルキル基、C3~C6のシクロアルキル基で置換されたC1~C8のアルキル基、C1~C8のアルキル基で置換されたC3~C6のシクロアルキル基又はC6~C12のアリール基から選ばれる。
【0045】
より好ましくは、一般式(I)において、R4及びR6は、それぞれ独立に、フェニル基、C1~C4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、C3~C8のシクロアルキル基、又はC3~C6のシクロアルキル基で置換されたC1~C4アルキル基から選ばれる。
【0046】
より好ましくは、一般式(I)で示されるフッ素含有フルオレンオキシムエステル系光開始剤は、以下のものからなる群から選ばれる一種又は複数種である。
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
本発明のもう一つの側面によれば、本発明は、さらに、以下の工程を含む前記一般式(I)で示されるフッ素含有フルオレンオキシムエステル系光開始剤の製造法を提供する。
【0054】
(1)中間体aの製造
三塩化アルミニウム又は塩化亜鉛の触媒作用によって、原料aと原料bを有機溶媒中でフリーデルクラフツアシル化反応させ、中間体aを得る。合成ルートは、以下の通りである。
【0055】
【0056】
Aは、不存在であるか、又はメチレン基である。
(2)中間体bの製造
中間体aが塩化ヒドロキシルアンモニウム及び醋酸ナトリウムの作用下でオキシム化反応する場合に、Aが不存在であり、中間体bを得る。合成ルートは、以下の通りである。
【0057】
【0058】
濃塩酸の存在下で中間体aと亜硝酸エステル又は亜硝酸塩が常温でオキシム化反応する場合に、Aがメチレン基であり、中間体bを得る。合成ルートは、以下の通りである。
【0059】
【0060】
(3)生成物の製造
中間体bと
【0061】
【0062】
とがエステル化反応し、目的生成物を得る。合成ルートは、以下の通りである。
【0063】
【0064】
Zは、不存在であるか、又は炭素基である。
前記合成中に用いられる原料は、いずれも既知の化合物であり、市販により入手できるか又は既知の合成法により便利で製造でき、そのうちの原料aは、中国特許出願番号201710274018.4に開示の合成法により得ることができる。当該合成過程は、順にフリーデルクラフツアシル化反応、オキシム化反応及びエステル化反応を含み、これらの工程は、いずれも有機化学合成分野の通常の反応種類である。反応のフローを明瞭にした後、具体的な反応条件は、当業者にとって容易に確定し得ることである。
【0065】
工程(1)中の反応温度は、通常-10~30℃である。使用される有機溶媒の種類について特に限定されるものではなく、原料を溶解できかつ反応に悪影響がないものであればよく、好ましくは、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ベンゼン、トルエン及びキシレンからなる群のうちの一種又は複数種である。
【0066】
工程(2)において、中間体bの製造は、溶媒系で行われ、使用される溶媒種類について特に限定されるものではなく、原料を溶解できかつ反応に悪影響がないものであればよい。Zが不存在である場合に、使用される溶媒は、アルコールと水との混合溶媒であってもよく、好ましくは、エタノールと水との混合溶媒であり;当該反応は、加熱還流の状態下で行われる。Zがカルボニル基である場合に、使用される溶媒は、ジクロロメタン、ベンゼン、トルエン及びテトラヒドロフランからなる群のうちの一種又は複数種を含むがこれらに限られず、亜硝酸エステルは、亜硝酸エチルエステル、亜硝酸イソアミルエステル及び亜硝酸イソオクチルエステルからなる群のうちの一種又は複数種を含むがこれらに限られず、亜硝酸塩は、亜硝酸ナトリウム及び/又は亜硝酸カリウムを含むがこれらに限られない。
【0067】
工程(3)において、エステル化反応は、有機溶媒中で行われ、溶媒の種類について特に限定されるものではなく、原料を溶解できかつ反応に悪影響がないものであればよく、好ましくは、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ベンゼン、トルエン及びキシレンからなる群のうちの一種又は複数種である。
【0068】
もう一つの好ましい実施様態において、前記一般式(II)で示されるフッ素含有フルオレン類光開始剤において、R1及びR1’は、それぞれ独立に、C2~C10の直鎖又は分岐鎖のフッ素含有アルキル基を示し、任意に(optionally)、そのうちの-CH2-は、-O-又はフェニレン基に置換されてもよく、かつ、フェニレン基上のHは、任意にC1~C4のアルキル基で置換されてもよい。さらに好ましくは、R1及びR1’は、それぞれ独立に、-CF3、-CF2CF3、-CF2-CH2F又は-CF2-CHF2を末端基とするC3~C8の直鎖又は分岐鎖のフッ素含有アルキル基を示し、任意に、そのうちの-CH2-は、-O-又は1,4-フェニレン基に置換されてもよく、かつ、1,4-フェニレン基上のHは、任意にC1~C4のアルキル基で置換されてもよい。
【0069】
好ましくは、一般式(II)において、R2及びR3は、それぞれ独立に、C1~C8の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、C4~C12のシクロアルキルアルキル基、C7~C14のアリールアルキル基を示すか、又はR2及びR3が互いに連結してC3~C8のシクロアルキルを形成している。さらに好ましくは、R2及びR3は、それぞれ独立に、C1-C4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、C4~C10のシクロアルキルアルキル基、C7~C10のフェニルアルキル基を示すか、又はR2及びR3が互いに連結してC3~C8のシクロアルキルを形成している。
【0070】
好ましくは、一般式(II)において、R4は、ヒドロキシル基、N-モルホリニル基、N-ピペリジニル基、又は二つの水素がC1~C4アルキル基で置換されたアミノ基を示す。
【0071】
好ましくは、一般式(II)において、Aは、水素、ニトロ基、-CO-CR2R3R4基、又は-R5-(R6)nを示し、ここにおいて、R5は、O、S、N又はカルボニル基を示し、R6は、C1~C8の直鎖又は分岐鎖のアルキル基;C6~C12のアリール基;C1~C5アルキル基、ニトロ基又はシアノ基で置換されたC6~C12のアリール基;又は5員環の不飽和ヘテロ環基を示し、nは、1又は2を示す。さらに好ましくは、R6は、C1~C4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、フラニル基、ピロリル基、チエニル基、C6~C10のアリール基;又はC1~C4アルキル基、ニトロ基又はシアノ基で置換されたC6~C10のアリール基を示す。
【0072】
限定的ではないが、一般式(II)で示されるフッ素含有フルオレン類光開始剤は、以下の構造から選ばれる。
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
相応的に、本発明は、前記一般式(II)で示されるフッ素含有フルオレン類光開始剤の製造法に関するものであり、原料aと原料bとを触媒の作用下で反応させ、反応式は、以下に示される。
【0078】
【0079】
ここにおいて、Mは、H又はOHを示す。
MがHを示す場合に、R0が即ちR1であり、R0’が即ちR1’であり、
MがOHを示す場合に、R0、R0’は、それぞれR1、R1’に対応し、かつ、R1は、OR0を示し、R1’は、OR0’を示す、
Xは、Cl又はBrを示す。
【0080】
前記製造法に使用される原料及び試薬は、いずれも従来技術中の既知の化合物であるか又は既知のプロセスにより便利で製造でき、そのうちの原料aは、出願番号201510937328.0、201710088234.X、201710530354.0、201710835527.Xなどの中国発明特許出願に記載の合成法により製造できる。
【0081】
反応は、有機溶媒中で行われ、溶媒の種類について特に限定されず、原料を溶解できかつ反応に悪影響がないものであればよく、好ましくは、極性の溶媒であり、特にDMFである。前記触媒は、アルカリ性触媒であり、好ましくは、リチウムtert-ブトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド及びカリウムtert-ブトキシドのうちの少なくとも一種である。反応温度は、10~50℃である。反応時間は、原料の種類によってやや相違するが、通常は、1~6hである。
【0082】
本発明のさらにもう一つの側面によれば、本発明は、さらに、光硬化組成物を提供し、当該光硬化組成物は、光開始剤を含み、光開始剤は、前記一般式(I)及び/又は一般式(II)で示されるフッ素含有フルオレンオキシムエステル系光開始剤を含む。
【0083】
本願が提供する一般式(I)又は(II)で示されるフッ素含有フルオレンオキシムエステル系光開始剤において、フッ素含有基を導入することで、当該光開始剤が開始効率の高いという利点を有するようになる。そして、前記構造上の特殊さによって、当該光開始剤がさらに表面乾燥特性が良く、表面硬化効果がよく、そしてマイグレーションし難いなどの利点を有するようになる。これに基づいて、前記光開始剤は、マイグレーションし難く、開始効率が高く、表面乾燥特性が良く、そして表面硬化効果がよいなどの利点を有するようになり、広く適用される見込みがある。
【0084】
本発明のさらにもう一つの側面によれば、本発明は、さらに、前記一般式(I)又は(II)で示されるフッ素含有フルオレンオキシムエステル系光開始剤の光硬化分野への適用を提供する。
【0085】
本願が提供する一般式(I)又は(II)で示されるフッ素含有フルオレンオキシムエステル系光開始剤において、フッ素含有基を導入することで、当該光開始剤が開始効率の高いという利点を有するようになる。そして前記構造上の特殊さによって、当該光開始剤がさらに、表面乾燥特性が良く、表面硬化効果がよく、そしてマイグレーションし難いなどの利点を有するようになる。これに基づいて、前記光開始剤は、マイグレーションし難く、開始効率が高く、表面乾燥特性が良く、そして表面硬化効果がよいなどの利点を有するようになり、広く適用される見込みがある。
【0086】
本発明は、さらに、前記フッ素含有フルオレン類光開始剤が光硬化分野への適用に関するものである。制限的ではないが、当該光開始剤は、カラーレジスト(RGB)、ブラックマトリックス(BM)、フォトスペーサー(photo-spacer)、リブ(rib)、ドライフィルム、半導体フォトレジスト及びインクなどにおいて適用できる。当該光開始剤は、開始効率が高く、優れた表面乾燥特性及び耐候性能をもたらすことができる。
【実施例】
【0087】
実施例
以下、具体的な実施例と共とに本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の保護範囲に対する制限と理解すべきではない。
【0088】
一般式(I)で示されるフッ素含有フルオレンオキシムエステル系光開始剤の製造実施例は、以下に示す。
【0089】
実施例1
(1)中間体1aの合成
500mLの四つ口フラスコ中に中間体1aを66.1g、三塩化アルミニウムを27.0g、及びジクロロメタンを100mL添加し、氷水浴を使用して四つ口フラスコ中の原料の温度を0℃まで降温させた。その後、攪拌しながら、前記原料中に57.0gの原料1bと50mLのジクロロメタンとの混合溶液を滴下すると同時に、反応系の温度を10℃以下に制御し、2hをかけて滴下が終了した。滴下終了後、2h攪拌し続け、反応が完全になるまで液相クロマトグラフィーによりトラッキングした。続いて、前記反応系を400g氷水と50mL濃塩酸(37%)とを配合してなる稀塩酸にゆっくりと注ぎ、添加しながら攪拌し、その後、それを分液ロートに注ぎ、下層のジクロロメタン層を分離し、そして50mLジクロロメタンで水層を引き続き洗浄し、ジクロロメタン層を合併した。5wt%の炭酸水素ナトリウム水溶液(1回ずつ150mL、合計3回)でジクロロメタン層を洗浄し、続いて、pHが中性となるまでジクロロメタン層を水洗浄し、80gの無水硫酸マグネシウムでジクロロメタン層を乾燥させ、濾過後に生成物のジクロロメタン溶液を回転蒸発し、メタノールを溶媒として再結晶させ、その後、80℃のオーブンで2h乾燥させ、97.2gの中間体1aを得、收率が84wt%であり、純度が98wt%であった。合成ルートは、以下の通りである。
【0090】
【0091】
中間体1aは、プロトン核磁気共鳴スペクトル及び質量分析により確認される。
1H-NMR(CDCl3、500MHz):1.2885-1.3307(8H、m)、1.8654-1.9975(8H、m)、2.3506(3H、s)、3.8098(2H、s)、4.9657-5.0342(4H、m)、5.6786-5.7153(2H、t)、6.1976(1H、s)、6.4672-6.8400(3H、m)、7.2813-7. 9503 (7H、m)。
【0092】
MS(m/z):579(M+1)+。
(2)中間体1bの合成
500mLの四つ口フラスコに57.9gの中間体1a、塩化ヒドロキシルアンモニウム7.0g、醋酸ナトリウム8.2g、100mLのエタノール、50mLの水を仕込み、85℃で加熱還流しながら5h攪拌した後、反応をオフにし、内容物を1000mLの大型ビーカーに注ぎ、500mLの水を添加して攪拌し、100mLのジクロロメタンで抽出し、抽出液に30gの無水MgSO4を添加して乾燥させ、吸引濾過し、濾過液を減圧下で回転蒸発して溶媒を除去し、回転ボトル中にオイル状の粘稠物を得、粘稠物を100mLの石油エーテルに注ぎ、攪拌して析出させ、吸引濾過し、白色粉末状の固体を得、70℃で5hベークし、中間体1b 43.7gを得、收率が72wt%であり、純度が98wt%であり、MS(m/z):608(M+1)+であった。合成ルートは以下に示す。
【0093】
【0094】
(3)化合物1の合成
250mLの四つ口フラスコに30.4gの中間体1b、100mLのジクロロメタンを添加し、室温で5min攪拌し、その後、5gの塩化プロピオニルを滴下し、約30minをかけて滴下が終了し、2h攪拌し続け、その後、5% NaHCO3水溶液を添加してpH値を中性となるように調節し、分液ロートで有機層を分離し、さらに100mLの水で2回洗浄し、20gの無水MgSO4で乾燥させ、濾過後、回転蒸発して溶媒を除去し、粘稠状の液体を得、メタノールで再結晶して白色固体粉末を得、濾過し、化合物1合計27.2gを得、收率が82%であり、純度が99%であった。合成ルートは、以下の通りである。
【0095】
【0096】
化合物1の構造は、プロトン核磁気共鳴スペクトル及び質量分析により確認される。
1H-NMR(CDCl3、500MHz):0.9869-1.0045(3H、t)、1.2895-1.3347(8H、m)、1.8678-1.9668(8H、m)、2.2678-2.3567(5H、m)、4.9678-5.0546(4H、m)、5.6695-5.7206(2H、m)、6.1996 (1H、s) 、6.7846-8. 0331 (10H、m)。
【0097】
MS(m/z):664(M+1)+。
実施例2
(1)中間体2aの合成
500mLの四つ口フラスコに72.5gの中間体2a、三塩化アルミニウム27.0g、ジクロロメタン100mLを仕込み、氷水浴を使用して四つ口フラスコ中の原料の温度を0℃までに降温させた。その後、攪拌しながら、前記原料に54.5gの原料2bと50mLのジクロロメタンとの混合溶液を滴下し、同時に、反応系の温度を10℃以下に制御し、2hをかけて滴下が終了した。滴下終了後、2h攪拌し続け、反応が完全になるまで液相クロマトグラフィーによりトラッキングした。続いて、前記反応系を400gの氷水と50mLの濃塩酸(37%)を配合してなる稀塩酸にゆっくりと注ぎ、添加しながら攪拌し、その後、それを分液ロートに注ぎ、下層のジクロロメタン層を分離し、そして50mLのジクロロメタンで引き続き水層を洗浄し、ジクロロメタン層を合併し、5 wt%の炭酸水素ナトリウム水溶液(1回ずつ150mL、合計3回)でジクロロメタン層を洗浄し、続いて、pHが中性となるまでジクロロメタン層を水洗浄し、80gの無水硫酸マグネシウムでジクロロメタン層を乾燥させ、濾過後、生成物のジクロロメタン溶液を回転蒸発し、メタノールを溶媒として再結晶させ、その後、80℃のオーブンで2h乾燥させ、101.8gの中間体2aを得、收率が85wt%であり、純度98wt%であった。合成ルートは、以下の通りである。
【0098】
【0099】
中間体2aは、プロトン核磁気共鳴スペクトル及び質量分析により確認される。
1H-NMR(CDCl3、500MHz):2.1489-2.1673(4H、t)、2.3507(3H、s)、4.1043-4.1554(4H、t)、5.7986-6.0521(4H、m)、6.4207-6.4332(2H、d)、7.1105-7. 8023 (10H、m)。
【0100】
MS(m/z):599(M+1)+。
(2)中間体2bの合成
250mLの四つ口フラスコに59.8gの中間体2a、37wt%の塩酸10.0g、亜硝酸イソアミルエステル11.8g、100mLのテトラヒドロフランを添加し、常温で5h攪拌し、反応をオフにした。内容物を1000mLの大型ビーカーに注ぎ、500mLの水を添加して攪拌し、100mLのジクロロメタンで抽出し、抽出液に30gの無水MgSO4を添加して乾燥させ、吸引濾過し、濾過液を減圧下で回転蒸発して溶媒を除去し、回転ボトル中にオイル状の粘稠物を得、粘稠物を100mLの石油エーテルに注ぎ、攪拌して析出させ、吸引濾過し、白色粉末状の固体を得、70℃で5hベークし、中間体2b 44.8gを得、收率が75%であり、純度が98%であり、MS(m/z):614(M+1)+であった。合成ルートは、以下の通りである。
【0101】
【0102】
(3)化合物2の合成
250mLの四つ口フラスコに30.7gの中間体2b、100mLのジクロロメタンを添加し、室温で5min攪拌し、その後、6.5gの無水プロピオン酸を滴下し、約30minをかけて滴下が終了し、2h攪拌し続け、その後、5% NaHCO3水溶液を添加してpH値を中性となるように調節し、分液ロートで有機層を分離し、そして200mLの水で2回洗浄し、50gの無水MgSO4で乾燥させ、濾過後、回転蒸発して溶媒を除去し、粘稠状液体を得、メタノールで再結晶して白色固体粉末を得、濾過し、製品28.5gを得、收率が85%であり、純度が99%であった。
【0103】
合成ルートは、以下の通りである:
【0104】
【0105】
化合物2の構造は、プロトン核磁気共鳴スペクトル及び質量分析により確認される。
1H-NMR(CDCl3、500MHz):1.0004-1.1049(3H、t)、2.1497-2.2732(6H、m)、4.1003-4.1666(4H、t)、5.8006-6.1056(4H、m)、6.4275-6.4365(2H、d)、7.2809-8. 0603 (7H、m)。
【0106】
MS(m/z):670(M+1)+。
実施例3
実施例1及び2の方法を参照して、相応する原料から、表1に示される構造を有する化合物3~13を製造する。
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
光開始剤の性能評価
代表的な光硬化樹脂組成物を調製することにより、本発明の式(I)で示される光開始剤の硬化速度、マイグレーション性、表面乾燥などの適用性能を評価する。具体的な手順は、以下に示す。
【0111】
(1)以下の組成の光硬化樹脂組成物(重量部)を調製し、表2に示される。
【0112】
【0113】
ここにおいて、表2において、A:1,6-ヘキサンジオールジアクリレート。
B:アクリル酸エステルコポリマー[ベンジルメタクリレート/メタアクリル酸/ヒドロキシエチルメタクリレート(モル比70/10/20)コポリマー(Mv:10000)]。
【0114】
C1:化合物1、C2:化合物2、C3:化合物4、C4:化合物7、C5:化合物11、C6:化合物12。
【0115】
【0116】
D1がブタノン(溶媒)である。
(2)硬化速度。
【0117】
前記組成物を黄光ランプ下で攪拌し、その後、採取してロール塗布でPET基板に塗布して成膜し、90℃で2min乾燥させ、乾燥膜の厚さが2μmである塗膜を得る。その後、前記塗膜を室温まで冷却し、高圧水銀ランプ(露光機型番:RW-UV70201、1回ずつの露光量 50mJ/cm2)で照射することで、前記塗膜を露光し、硬化成膜させる。
【0118】
塗膜が硬化して硬化膜を成膜するまでベルト式露光機を通過する回数で評価し、通過する回数が多いほど、硬化速度が好ましくないことを示す。
【0119】
(3)マイグレーション性。
前記硬化膜を粉々に切断し、サンプルとする。0.5gの硬化膜サンプルを秤量して50mLのビーカーに置き、4.5mLのメタノールを添加し、超音波で30min超音波溶解させる。得られる溶液を10mLのメスフラスコに移し、サンプルをメタノールで引き続き2回洗浄(2mL×2)し、メスフラスコに注ぎ、ピペットで0.1mLのトルエンを採取して内部標準物質として添加し、メタノールを添加して容量を規定量にし、均一になるまで振盪し、静置する。
【0120】
日本島津LC-20A液体クロマトグラフィー(shim packカラム、150×6.0nm、検出器SPD-20A、検出限20ppm、検出波長254nm)を採用して、25℃で流速1.0mL/min、流動相(体積比メタノール/水=90/10)を使用して、光開始剤の存在が検出できるかを観察する。トルエンに対しての液相クロマトグラフィーピーク面積比の百分率で、液相における開始剤の含有量が高いほど、マイグレーション性が大きいことを示す。
【0121】
(4)表面乾燥測定
コットンボール吹き法(GB/T 1728-1979(1989))を採用して、硬化膜の表面に1個の1cm2のふわとした脱脂コットンボールを軽く置きながら、コットンボールから15cmの距離で口で水平方向に沿って軽くコットンボールを吹く。
【0122】
コットンボールを吹き飛ばすことができ、膜の表面に綿繊維が残らない場合に、Aとする;
コットンボールを吹き飛ばすことができるが、膜の表面に綿繊維が残る場合に、Bとする;
コットンボールを吹き飛ばすことができない場合に、Cとする;
コットンボールを吹き飛ばすことができ、かつ膜の表面に綿繊維が残らないのであれば、すなわち表面乾燥であり、膜の表面乾燥特性に優れていることを示す。
【0123】
評価結果は、表3に示される。
【0124】
【0125】
表3の測定結果から分かるように、本発明の一般式(I)で示される重合可能基含有フルオレンオキシムエステル系光開始剤は、表面乾燥特性に優れ、光硬化への適用において開始剤効率が高く、硬化速度が素早く、そしてマイグレーションが起こらず、総合的な性能の面で従来のオキシムエステル系光開始剤製品よりも明らかに優れている。
【0126】
一般式(II)で示されるフッ素含有フルオレンオキシムエステル系光開始剤の製造実施例は、以下に示す。
【0127】
実施例1
化合物1の合成
【0128】
【0129】
250mLの四つ口フラスコに36.8gの原料1a、ナトリウムtert-ブトキシド10.6g及びDMF 50mLを仕込み、室温(約25℃)で攪拌し、26.6gの原料1bを滴下し、約1hをかけて滴下が終了し、滴下終了後、3h攪拌し続け、反応が完全になるまで液相クロマトグラフィーによりトラッキングした。内容物をゆっくりと200gの水に注ぎ、ジクロロメタン(1回ずつ50mL、合計2回)で抽出し、5%の炭酸水素ナトリウム水溶液(1回ずつ100mL、合計3回)でジクロロメタン層を洗浄し、続いて、pHが中性となるまでジクロロメタン層を水洗浄し、80gの無水硫酸マグネシウムでジクロロメタン層を乾燥させ、濾過後、生成物のジクロロメタン溶液を回転蒸発して、メタノールで再結晶して、70℃のオープンで2h乾燥し、41.9gの化合物1を得、收率が75%であり、純度が98%である。
【0130】
化合物1の構造は、プロトン核磁気共鳴スペクトル及び質量分析により確認される。
1H-NMR(CDCl3、500MHz):1.3662-1.3772(6H、s)、1.8068-1.8925(8H、m)、2.3675-2.4704(7H、m)、3.6523-3.6744(4H、t)、7.3027-8.1823(6H、m)。
【0131】
MS(m/z):560(M+1)+。
実施例2
化合物2の合成
【0132】
【0133】
250mLの四つ口フラスコに50.5gの原料2a、カリウムtert-ブトキシド10.6g及びDMF 50mLを仕込み、室温(約25℃)で攪拌し、27.3gの原料2bを滴下し、約1hをかけて滴下が終了し、滴下終了後、3h攪拌し続け、反応が完全になるまで液相クロマトグラフィーによりトラッキングした。内容物をゆっくりと200gの水に注ぎ、ジクロロメタン(1回ずつ50mL、合計2回)で抽出し、5%の炭酸水素ナトリウム水溶液(1回ずつ100mL、合計3回)でジクロロメタン層を洗浄し、続いて、pHが中性となるまでジクロロメタン層を水洗浄し、80gの無水硫酸マグネシウムでジクロロメタン層を乾燥させ、濾過後、生成物のジクロロメタン溶液を回転蒸発し、メタノールで再結晶して、70℃のオープンで2h乾燥し、51.4g化合物2を得、收率が68%であり、純度が98%であった。
【0134】
化合物1の構造は、プロトン核磁気共鳴スペクトル及び質量分析により確認される。
1H-NMR(CDCl3、500MHz):0.9556-0.9918(3H、t)、1.5208-1.5476(2H、m)、2.2675-2.2807(6H、s)、2.7598-2.7604(2H、s)、5.9989-6.0387(2H、d)、7.1225-8.1783(16H、m)。
【0135】
MS(m/z):706(M+1)+。
実施例3-20
実施例1の方法を参照して、相応する原料から、表4に示される構造を有する化合物を製造する。
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
【0140】
性能評価
代表的な光硬化樹脂組成物を調製し、本発明の一般式(II)で示される光開始剤の肝心な適用性能を評価する。
【0141】
1. 光硬化樹脂組成物の調製
光硬化樹脂組成物は、以下の成分から構成される。
【0142】
1,6-ヘキサンジオールジアクリレート 20重量部
アクリル酸エステルコポリマー[ベンジルメタクリレート/メタアクリル酸/ヒドロキシエチルメタクリレート(モル比70/10/20)コポリマー、Mv=10000]
57重量部
光開始剤 3重量部
ブタノン(溶媒) 20重量部。
【0143】
各成分を均一に混合すれば、性能評価用の光硬化樹脂組成物を得られる。ここにおいて、前記光開始剤は、本発明の一般式(II)で示されるフッ素含有フルオレン類光開始剤又は対比例としての従来技術で既知の代表的なフルオレン類光開始剤である。
【0144】
2. 性能評価
光硬化樹脂組成物に対する性能評価は、硬化速度、表面乾燥特性及び耐候性を含む。
【0145】
(1)硬化速度
光硬化樹脂組成物を黄光ランプ下で攪拌し、その後、採取してロール塗布でPET基板に塗布して成膜し、90℃で2min乾燥させ、乾燥膜の厚さが2μmである塗膜を得、その後、室温まで冷却し、高圧水銀ランプ(露光機型番:RW-UV70201、1回ずつの露光量 50mJ/cm2)で照射することで塗膜を露光し、硬化成膜させる。
【0146】
塗膜が硬化して硬化膜を成膜するまでベルト式露光機を通過する回数で評価し、通過する回数が多いほど、硬化速度が好ましくないことを示す。
【0147】
(2)耐候性
GB/T-1740-2007に参照して、塗膜耐湿熱性の測定方法を採用する。十分に硬化した硬化膜を、予め調節済みの温度湿度制御ボックス中(温度50±1℃、相対湿度96±2%)に入れて、240h放置した後、硬化膜表面の発泡、亀裂、黄変などの破坏現象を評価する。
【0148】
変化がない場合に、Aとする;
発泡、亀裂、黄変などの破坏現象がある場合に、Bとする。
【0149】
(3)表面乾燥特性
GB/T 1728-1979(1989)に参照して、コットンボール吹き法を採用して測定する。硬化膜の表面に1個の1cm2程度のふわとした脱脂コットンボールを軽く置いておいて、コットンボールから15cmの距離で口で水平方向に沿って軽くコットンボールを吹く。
【0150】
コットンボールを吹き飛ばすことができ、膜の表面に綿繊維が残らない場合に、Aとする;
コットンボールを吹き飛ばすことができるが、膜の表面に綿繊維が残る場合に、Bとする;
コットンボールを吹き飛ばすことができない場合に、Cとする;
コットンボールを吹き飛ばすことができ、かつ膜の表面に綿繊維が残らないのであれば、すなわち表面乾燥であり、膜の表面乾燥特性に優れていることを示す。
【0151】
評価結果は、表5に示される。
【0152】
【0153】
表5中の比較化合物1及び2の構造は、以下に示す。
【0154】
【0155】
表5の測定結果から分かるように、本発明の一般式(II)で示されるフッ素含有フルオレン類光開始剤を用いた光硬化樹脂組成物の方が、1回の50mJ/cm2の露光量で十分に硬化でき、明らかにより高い開始効率を示し、そして、耐候性及び表面乾燥特性においても、従来のフルオレン類光開始剤を採用したサンプルよりも明らかに優れている。
【0156】
以上は、本発明の好適な実施例に過ぎず、本発明を制限するためのものではなく、当業者にとって、本発明には各種の変更や変化ができる。本発明の精神及び主旨内である限り、行った一切の修正、等価代替、改良等は、いずれも本発明の保護範囲内に含まれるべきである。