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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-23
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】イソソルビドの新規使用
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/40 20170101AFI20220111BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20220111BHJP
   B29C 64/264 20170101ALI20220111BHJP
   C08G 59/50 20060101ALI20220111BHJP
   C08G 59/26 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
B29C64/40
B33Y70/00
B29C64/264
C08G59/50
C08G59/26
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020554589
(86)(22)【出願日】2018-12-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-25
(86)【国際出願番号】 EP2018086428
(87)【国際公開番号】W WO2019122257
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-08-13
(31)【優先権主張番号】17209572.1
(32)【優先日】2017-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520222287
【氏名又は名称】エランタス ヨーロッパ ソシエタ ア レスポンサビリタ リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】特許業務法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゲラルディ パオラ
(72)【発明者】
【氏名】メノツィ ダニエラ
(72)【発明者】
【氏名】カンパニーニ ファビオ
(72)【発明者】
【氏名】ファツィオ エットレ
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-030346(JP,A)
【文献】特表2018-522997(JP,A)
【文献】国際公開第2017/025687(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/10,64/20,64/264,64/40
B33Y 70/00
C08G 59/26,59/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソソルビドジグリシジルエーテルおよび硬化剤を含む犠牲支持体の製造のための組成物であって、
前記硬化剤は、アミン窒素に結合された少なくとも1つの活性水素を有する少なくとも1つのアミン官能基を有する、組成物
【請求項2】
前記硬化剤は、アミン窒素に結合された少なくとも1つの活性水素をそれぞれ有する2つのアミン官能基を有する、請求項1に記載の組成物
【請求項3】
前記組成物は、少なくとも1種の有機充填剤を更に含む、請求項1または2に記載の組成物
【請求項4】
前記有機充填剤は、フェノール樹脂、アクリル樹脂およびそれらの混合物、またはポリ(ビニルアルコール)、ポリ(酢酸ビニル)、エチレン-酢酸ビニル、ゴムおよびそれらの混合物の群から選択される熱可塑性樹脂を基礎とする系からなる群から選択される、請求項に記載の組成物
【請求項5】
前記組成物は、少なくとも1種の発泡剤を更に含む、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物
【請求項6】
前記発泡剤は、シロキサン、ポリメチルヒドロシロキサン、シリコーンハイブリッド、シリコーン誘導体およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項に記載の組成物
【請求項7】
イソソルビドエーテル繰返単位及びアミン基を有するポリマーを含む3次元物体の製造用の犠牲支持体。
【請求項8】
前記犠牲支持体は、ASTM D 3418に従って示差走査熱量測定によって測定されて、50℃から180℃の間のTgを有する、請求項に記載の犠牲支持体。
【請求項9】
前記犠牲支持体は、ASTM D 638に従って25℃で測定されて、3.5%から10.5%の範囲の破壊伸びを有する、請求項7または8に記載の犠牲支持体。
【請求項10】
イソソルビドエーテル繰返単位を有するポリマーを含む3次元物体の製造用の犠牲支持体を製造する方法であって、
a)イソソルビドジグリシジルエーテルおよび硬化剤を含む組成物を準備する工程であって、前記硬化剤は、アミン窒素に結合された少なくとも1つの活性水素を有する少なくとも1つのアミン官能基を有する工程
b)前記組成物を型内に流し込む工程、
c)前記組成物を少なくとも部分的に硬化させる工程、
d)前記硬化された組成物を前記型から分離して、犠牲支持体を得る工程、
を含む、方法。
【請求項11】
前記硬化工程c)は、2時間から30時間の範囲の時間にわたって行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
3次元物体を作製する方法であって、
a)犠牲支持体を請求項10または11に記載の方法に従って製造する工程と、
b)ポリマーを含む材料を堆積させて、前記犠牲支持体を少なくとも部分的に覆う工程と、
c)前記堆積された材料から前記犠牲支持体を除去することで、3次元物体を得る工程と、
を含む、方法。
【請求項13】
前記犠牲支持体の除去工程は、水性酸性溶液を使用して行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記堆積させる材料は硬化性ポリマーを含み、該硬化性ポリマーは工程c)の前に硬化される、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
複合材料の製造においてポリマーの3次元物体を製造するための、請求項10~14のいずれか一項に記載の方法で製造された犠牲支持体の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、犠牲支持体としてのイソソルビドジグリシジルエーテルおよび硬化剤を含む組成物の使用、イソソルビド繰返単位を含む犠牲支持体、本発明の犠牲支持体を製造する方法、ならびに3次元物体の製造のための本発明の犠牲支持体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
複雑な構造を有する3次元物体の製造には、特にその物体に孔または空洞を作る必要がある場合に特有の製造上の課題が生ずる。
【0003】
犠牲支持体または犠牲コアは、3次元物体の製造において特殊な形を作るための、最終的には孔を作る必要がある場合の充填材として使用される。したがって、そのような犠牲支持体の目的は、3次元物体の加工の間にその形状を決めることであるが、その後に犠牲支持体を、そこから最終的な物体を損傷することなく分離する必要がある。そのため、犠牲コアは、少なくとも3次元物体の加工を保証するために良好な熱的安定性および機械的安定性を備えねばならず、容易に除去されるべきである。一部の例では、部材の設計形状のおかげで犠牲支持体を容易に除去することができるが、コアまたはマンドレルを内側に閉じ込める何らかの構造が特別な、しばしば犠牲的な工具形態を必要とする。
【0004】
現在の技術水準には、様々な犠牲支持体の選択肢が含まれる。それらの例は、取出し可能なコア、可溶性のコア、2片式積層(two-piece layup)、閉鎖クラムシェル型(closed clamshell mold)内での積層、クラムシェル型と取出し可能なコアとの組合せである。取出し可能なコアおよび閉鎖クラムシェル型には形状に厳しい制限があるため、空洞に到達し易い場合にのみそれらを選択することができる一方で、2片式積層は追加の接合工程を必要とすることから、最終的な複合部材に継ぎ目が残り、最終的な物体を脆弱にする危険性がある。
【0005】
犠牲コアは、アンダーカットを伴う中空形状の構築に最も有望なアプローチである。犠牲コアは通常、共晶塩、セラミック材料、ウレタン、メモリブラッダー(memory bladder)および熱可塑性材料でできているが、追加の工具および器具を必要とし、それらは取り扱いが困難であり、特定の温度範囲、しばしば125℃未満で選択的に機能する必要がある。犠牲コアがより高い温度に耐え得る場合に、それは犠牲コアを過酷な条件で除去する必要があることを意味する。
【0006】
したがって、容易に除去可能であると同時に高温に耐える、例えば100℃より高い温度に耐える犠牲支持体として使用されるべき材料を有することが望ましいこととなる。
【0007】
ビスフェノールAを基礎とするエポキシ樹脂は、工業的に使用される全てのエポキシ樹脂の75%を占めており、それらの優れた機械的特性および熱的特性について当該技術分野でよく知られている。ビスフェノールAの生物毒性のため、ビスフェノールAはエポキシ系に置き換えられる傾向がある。
【0008】
さらに、需要の増加と相まって石油ベースのポリマーの限られた供給により、バイオベースの、したがって再生可能な原料を探求する研究が推進された。熱可塑性樹脂の分野では既に多くのことが行われているが、バイオベースの熱硬化性樹脂については、非常に少ない製品しか報告されていない。
【0009】
ビスフェノールAを基礎とするエポキシ樹脂に匹敵する特性を有し、例えば、犠牲支持体として使用された場合に容易に除去することもできる材料を手に入れることが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
要するに、3次元物体の製造における犠牲支持体として使用することができる新規の材料を調査して見つけ出すことが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
これらの課題は、本発明の犠牲支持体によって解決される。
【0012】
犠牲支持体の製造のために使用される本発明の組成物は、イソソルビドジグリシジルエーテルおよび硬化剤を含む。
【0013】
イソソルビドは、穀物に基づく多糖類からの再生可能資源に由来するため、完全に生物学的に利用可能であるという利点を有する。
【0014】
その特定の化学的構造のおかげで、イソソルビドおよびその誘導体は水性環境に親和性を示す。
【0015】
イソソルビドジグリシジルエーテルの硬化により、熱的特性および機械的特性を最適化することができる。
【0016】
驚くべきことに、イソソルビドおよびその誘導体の全ての特徴を組み合わせて、犠牲支持体において、そして本発明の犠牲支持体を製造するために使用される組成物において使用することができる。
【0017】
実際、犠牲支持体を製造するために使用される本発明の組成物は、より良い水溶性を有する対応するビスフェノールAに基づくエポキシ樹脂の匹敵する機械的特性および熱的特性を有する犠牲支持体を得ることを可能にする。さらに、本発明の犠牲支持体を完全に可溶化する温和な条件により、最終的な3次元製品を損傷することなく、そこから犠牲支持体を分離することが可能となる。
【0018】
本発明の意味の範囲内では、犠牲支持体について述べられる場合に、溶解、分解および可溶という用語は同様の意味を有し、本発明により使用される溶液の存在下で犠牲支持体がその溶液の一部になることを意味する。
【0019】
第1の実施形態では、本発明は、犠牲支持体の製造のための、イソソルビドジグリシジルエーテルおよび硬化剤を含む組成物の使用に関する。
【0020】
好ましい実施形態では、本発明は、3次元物体の製造用の犠牲支持体を製造するための、イソソルビドジグリシジルエーテルおよび硬化剤を含む組成物の使用に関する。
【0021】
好ましくは、3次元物体は、ポリマーの3次元物体である。
【0022】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、100g/molから230g/molの間、好ましくは120g/molから210g/molの間、より好ましくは140g/molから190g/molの間、最も好ましくは155g/molから175g/molの間のエポキシ当量を有するイソソルビドジグリシジルエーテルを含む。
【0023】
別の実施形態では、本発明の組成物は1種以上の追加の硬化剤を含み得る。好ましくは、本発明の組成物は、1種~8種の硬化剤、より好ましくは1種~7種の硬化剤、より好ましくは1種~6種の、より好ましくは1種~5種の、より好ましくは1種~4種の、より好ましくは1種~3種の、より好ましくは1種または2種の、より好ましくは1種の追加の硬化剤を含み得る。
【0024】
本発明の組成物の硬化剤および追加の硬化剤は同じまたは異なってもよい。
【0025】
更なる好ましい実施形態では、本発明の組成物の硬化剤は、アミン窒素に結合された少なくとも1つの活性水素を有する少なくとも1つのアミン官能基を有する。より好ましくは、硬化剤は、アミン窒素に結合された少なくとも1つの活性水素をそれぞれ有する2つのアミン官能基を有する。
【0026】
本発明の組成物の好ましい硬化剤は、脂肪族アミン、環状脂肪族アミン、ヘテロ環式アミン、芳香族アミン、ポリエーテルアミン、ポリアミノアミドおよびそれらとエポキシ基含有化合物との付加物からなる同じ群または異なる群から選択される。より好ましいのは、種々の分子量を有するポリ(プロピレングリコール)ビス(2-アミノプロピルエーテル)、トリメチロールプロパントリス[ポリ(プロピレングリコール),アミン末端]エーテル、2(1-ピペラジニル)エチルアミン、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン、3,6,9,12-テトラアザテトラデカン-1,14-ジアミン、テトラエチレンペンタミンおよびトリエチレンテトラミン、3,6-ジアザオクタンエチレンジアミン、3,6,9-トリアザウンデカメチレンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)ベンゼン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、5-ジエチルトルエン-2,4-ジアミンおよび3,5-ジエチルトルエン-2,6-ジアミン(2つの異性体の混合物)、2,2’-(エチレンジオキシ)ビス(エチルアミン)、1,6-ジアミノ-2,2,4(2,4,4)-トリメチルヘキサン、N’-(3-アミノプロピル)-N,N-ジメチルプロパン-1,3-ジアミン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,2-シクロヘキサンジアミンおよびそれらの混合物である。
【0027】
更なる好ましい硬化剤は、付加物としても知られる、上述のアミンを過剰なアミン中でエポキシ誘導体と部分的に反応させて構造中にOH官能基を導入することで、蒸気圧、反応性および最終的な特性が制御された反応物からなる群から選択することができる。好ましくは、付加物は架橋されない。
【0028】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は触媒を更に含む。
【0029】
反応を促進する触媒を、硬化促進剤として単独でまたは上述の硬化剤と共に使用することもできる。一実施形態では、該触媒は第三級アミンまたはその塩から選択される。好ましくは、触媒は、ベンジルジメチルアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、それらと2-エチルヘキサン酸との塩、ジメチルベンジルアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールのトリ2-エチルヘキサノエート、1-メチルイミダゾール、2-シアノグアニジンおよびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0030】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、UV硬化過程のための触媒を更に含む。
【0031】
UV硬化用の触媒は、紫外光および/または可視光によって開始される重合の光化学反応における硬化剤として使用することができ、好ましくは、1種以上のUV硬化用の触媒が単独で、すなわち他の上述の硬化剤と組み合わせずに、特にアミン誘導体から選択される硬化剤と組み合わせずに使用される。一実施形態では、該触媒はオニウム化合物塩から選択される。本発明の組成物の好ましいUV硬化用の触媒は、スルホニウム塩およびヨードニウム塩からなる群から選択される塩を含む有機化合物である。好ましくは、本発明の組成物のUV硬化用の触媒は、アリールスルホニウム塩、アリールヨードニウム塩、アリールチオキサンテン誘導体およびそれらの混合物である。
【0032】
好ましい実施形態では、犠牲支持体は、イソソルビドジグリシジルエーテルおよびUV硬化用の触媒である硬化剤を含む本発明の組成物を使用する3次元印刷を使用して製造され得る。
【0033】
更なる好ましい硬化剤は、犠牲支持体のより長い分解時間およびより過酷な除去条件を受け入れることができるのであれば、無水物の群から選択され得る。無水物は、好ましくは、単独でまたはルイス塩基もしくはルイス酸、ベンジルジメチルアミン、ジメチルアミノメチルフェノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の第三級アミン、ホウ素三ハロゲン化物アミン錯体、塩化第二スズ、アンモニウム塩、ホスホニウム塩および置換イミダゾールのような触媒と共に、メチル-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、4-メチル-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物(cisおよびtransの混合物)、ドデセニルコハク酸無水物(異性体の混合物)、テトラヒドロフタル酸無水物、テトラヒドロメチルフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物およびそれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0034】
本発明の意味の範囲内では、付加物は、少なくとも1つのエポキシ基を有する化合物と反応させた少なくとも1つの活性水素アミン官能基を有する硬化剤を意味し、こうして、該付加物は少なくとも1つの活性水素アミン官能価を有し、架橋されない。本発明の意味の範囲内では、硬化剤および硬化促進剤は同じ意味を有し、原則的にエポキシの硬化に関する技術分野で知られるあらゆる硬化剤および硬化促進剤である。
【0035】
一実施形態では、硬化剤は、イソソルビド樹脂中に存在するエポキシ基に対して化学量論比で使用される。これは、組成物中のエポキシ基の量とアミン官能基のアミン窒素に結合された活性水素の量との比率が100対100であることを意味する。
【0036】
別の実施形態では、組成物中のエポキシ基の量とアミン官能基のアミン窒素に結合された活性水素の量との比率は、100対120、好ましくは100対110、より好ましくは100対105である。
【0037】
別の実施形態では、組成物中のエポキシ基の量とアミン官能基のアミン窒素に結合された活性水素の量との比率は、120対100、好ましくは110対100、より好ましくは105対100である。
【0038】
別の実施形態では、本発明の組成物は1種以上の反応性希釈剤を含み得る。好ましくは、反応性希釈剤は、クレシルグリシジルエーテルを含む単官能性エポキシ希釈剤、様々なアルキルグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルを含む二官能性エポキシ希釈剤、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、エポキシ化ひまし油、エポキシ化大豆油を含む多官能性エポキシ希釈剤およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0039】
別の実施形態では、本発明の組成物は少なくとも1種の無機充填剤を更に含む。好ましい無機充填剤は、炭酸塩、アルミナ水和物、ケイアルミン酸塩、中空ガラス微小球、石英、絹雲母、緑泥石およびそれらの混合物からなる群から選択される。より好ましい無機充填剤はフィライトである。
【0040】
別の実施形態では、本発明の組成物は少なくとも1種の有機充填剤を更に含む。
【0041】
好ましい有機充填剤は、フェノール樹脂、アクリル樹脂およびそれらの混合物からなる群から選択され、靭性または水溶性/溶解性を高める熱可塑性樹脂を基礎とする系は、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(酢酸ビニル)、エチレン-酢酸ビニル、ゴムおよびそれらの混合物の群から選択され得る。より具体的には、好ましい有機充填剤は、ポリ(ビニルアルコール)を基礎とするポリマーからなる群から選択される。
【0042】
別の実施形態では、本発明の組成物は添加剤を更に含む。本発明によれば、添加剤は、脱気剤、湿潤剤、消泡剤およびそれらの混合物、泡止め剤、分散助剤、レオロジー沈降防止剤および顔料からなる群から選択され得る。
【0043】
本発明の別の実施形態では、該組成物は少なくとも1種の泡止め剤を更に含む。
【0044】
好ましい1種以上の泡止め剤は、少なくとも1種のアクリルコポリマーもしくはシリコーン系消泡剤またはそれらの混合物から選択される。
【0045】
本発明の別の実施形態では、該組成物は1種以上の分散助剤、レオロジー沈降防止剤および顔料を更に含み得る。
【0046】
別の実施形態では、本発明の犠牲コアを製造するために使用される組成物は、イソソルビドジグリシジルエーテル、1種以上の硬化剤、無機充填剤、有機充填剤および泡止め剤からなる。
【0047】
別の実施形態では、本発明の組成物は、イソソルビドジグリシジルエーテル、1種以上の硬化剤、無機充填剤および泡止め剤を含む。
【0048】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、
(a)55重量%~85重量%のイソソルビドジグリシジルエーテル、
(b)10重量%~30重量%の硬化剤、
(c)0重量%~15重量%の添加剤、
を含み、ここで、重量%は、成分(a)、(b)および(c)の合計を基準とし、その合計には有機充填剤、無機充填剤および触媒は含まれない。
【0049】
別の実施形態では、本発明は、イソソルビドエーテル繰返単位を有するポリマーを含む3次元物体の製造のための犠牲支持体に関する。
【0050】
本発明の好ましい実施形態では、イソソルビドエーテル繰返単位を有するポリマーは、アミン基を更に含む。
【0051】
別の好ましい実施形態では、イソソルビドエーテル繰返単位を有するポリマーは、ASTM D 3418に従って10℃/分のランプで示差走査熱量測定により測定されて、50℃から180℃の間、好ましくは50℃から180℃の間、好ましくは70℃から150℃の間、より好ましくは70℃から130℃の間、最も好ましくは70℃から110℃の間のTgを有する。好ましくは、Tgの値は、1回目の測定または走査で得られた値である。
【0052】
別の実施形態では、本発明は、イソソルビドエーテル繰返単位を有するポリマーを含む3次元物体の製造用の犠牲支持体を製造する方法であって、
a)イソソルビドジグリシジルエーテルおよび硬化剤を含む組成物を準備する工程、
b)上記組成物を型内に流し込む工程、
c)上記組成物を少なくとも部分的に硬化させる工程、
d)上記少なくとも部分的に硬化された組成物を上記型から分離して、犠牲支持体を得る工程、
を含む、方法に関する。
【0053】
本発明の好ましい実施形態では、本発明の方法は、犠牲支持体を型から分離した後にその形状を変更する更なる工程e)を含む。好ましくは、該変更は、犠牲支持体の切断または機械的研磨によって行われる。
【0054】
あるいは、犠牲支持体を製造する方法は、イソソルビドジグリシジルエーテルおよびUV硬化用の触媒である硬化剤を含む組成物を準備することにより3次元印刷のための装置を使用して行われ得る。
【0055】
一実施形態では、上記組成物は型内で部分的に硬化され、その部分的に硬化された組成物を型から分離した後に更に硬化される。好ましくは、更なる硬化工程は炉内で行われる。
【0056】
別の実施形態では、ポリエチレン、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)、ポリアミド等のようなポリマー材料でできた挿入物を使用して、犠牲コア内に孔および空洞を作ることができる。これらの空洞が存在することで、溶液と犠牲支持体との間の接触面が増加して犠牲支持体のより優れた溶解性または分解が可能となり、犠牲支持体に必要とされる犠牲支持体材料の量も削減される。
【0057】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は発泡剤を更に含む。
【0058】
発泡剤を使用することで、犠牲コア内に孔および空洞を作ることができ、こうして発泡過程を介して気泡質構造が作製される。本発明の組成物の好ましい発泡剤は、ポリシラン、シリコーンハイブリッド(silicone hybride)、ポリシロキサン、シリコーン誘導体およびそれらの混合物の群から選択される。より好ましいのは、ポリシロキサンであり、最も好ましいのは、ポリメチルヒドロシロキサンである。さらに、界面活性剤を使用して、発泡過程の間に犠牲コア内の気泡質構造を増やすことができる。好ましくは、本発明の組成物の界面活性剤は、シリコーングリコール、ポリシロキサンおよびそれらの混合物の群から選択される。
【0059】
本発明の意味の範囲内では、シリコーンハイブリッドは、少なくとも1つのシリル官能基、シロキサン官能基またはヒドロキシシロキサン官能基を有するポリエーテル、ポリウレタン、アクリル鎖、脂肪族鎖および芳香族鎖を意味する。
【0060】
したがって、本発明の方法は、任意に、犠牲支持体から挿入物を分離する工程を含む。
【0061】
本発明の好ましい実施形態では、3次元物体の製造用の犠牲支持体を製造する方法の硬化工程c)は、2時間から30時間の間、好ましくは2時間から26時間の間、好ましくは2時間から24時間の間、好ましくは2時間から20時間の間、好ましくは2時間から16時間の間、好ましくは2時間から12時間の間、好ましくは2時間から8時間の間、好ましくは2時間から6時間の間、好ましくは2時間から4時間の間に含まれる時間にわたって行われる。
【0062】
本発明の別の好ましい実施形態では、3次元物体の製造用の犠牲支持体を製造する方法の硬化工程c)は、23℃から180℃の間、好ましくは40℃から180℃の間、好ましくは60℃から130℃の間の温度で行われる。
【0063】
本発明の別の好ましい実施形態では、3次元物体の製造用の犠牲支持体を製造する方法の硬化工程c)は、40℃から180℃の間の温度で2時間~16時間にわたって行われる。
【0064】
更なる好ましい実施形態では、3次元物体の製造用の犠牲支持体を製造する方法の硬化工程c)は、2回のサイクルで、各サイクルにおいて同じ温度または異なる温度で、同じ硬化時間または異なる硬化時間で行われる。
【0065】
別の実施形態では、本発明は、3次元物体を作製する方法における犠牲支持体の使用を更に含む、犠牲支持体の製造のためのイソソルビドジグリシジルエーテルおよび硬化剤を含む組成物の使用に関する。
【0066】
別の実施形態では、本発明は、3次元物体を作製する方法であって、
a)犠牲支持体を本発明の方法に従って製造する工程と、
b)ポリマーを含む材料を堆積させて、上記犠牲支持体を少なくとも部分的に覆う工程と、
c)上記堆積された材料から上記犠牲支持体を除去することで、3次元物体を得る工程と、
を含む、方法に関する。
【0067】
別の実施形態では、工程b)における材料の堆積の前に、犠牲支持体の表面上に標準的な液体状、ペースト状または固体状の離型剤が塗られる。離型剤は、少なくとも部分的に硬化された組成物と堆積された材料とを分離し易くする。
【0068】
あるいは、3次元物体を製造する方法の工程a)において、犠牲支持体は、3次元印刷装置において、イソソルビドジグリシジルエーテルおよびUV硬化用の触媒である硬化剤を含む組成物を使用して製造される。
【0069】
好ましい実施形態では、3次元物体を作製する方法における犠牲支持体の除去工程は、水、または水性塩基性溶液、または水性酸性溶液のいずれかを使用して行われる。好ましくは、犠牲支持体の除去工程は、水性酸性溶液を使用して行われる。より好ましくは、水性酸性溶液は、酢酸溶液または酢溶液である。
【0070】
好ましい実施形態では、酸性溶液は、1~5、より好ましくは3~4の範囲に含まれるpHを有する。
【0071】
本発明の意味の範囲内では、犠牲支持体を少なくとも部分的に覆うとは、犠牲支持体の表面が、堆積された材料によって部分的にのみまたは完全に覆われ得ることを意味する。犠牲支持体の表面が部分的に覆われている場合に、犠牲支持体はその開放表面から始まって除去され得る。犠牲コアの表面が、堆積された材料で完全に覆われている場合に、3次元物体は機械的に加工され、例えば3次元物体の穿孔または所望の形状での切断により、3次元物体から犠牲コアを分離することが可能となる。
【0072】
別の好ましい実施形態では、3次元物体を作製する方法の工程b)で使用される材料は、工程c)の前に硬化される硬化性ポリマーを含む。
【0073】
好ましくは、硬化性ポリマーは、熱可塑性ポリマーまたは熱硬化性ポリマーから選択される。
【0074】
より具体的には、好ましい熱可塑性ポリマーは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン、ナイロン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニルからなる群から選択される。
【0075】
より具体的には、好ましい熱硬化性ポリマーは、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリアミノアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂およびシリコーン系樹脂からなる群から選択される。
【0076】
別の好ましい実施形態では、3次元物体を作製する方法の工程b)で使用される材料は、RTM成形、オートクレーブ成形、成層成形、インフュージョン成形、引抜成形、フィラメントワインディング成形のようなあらゆる既知の技術を用いて得られる複合材料である。
【0077】
別の好ましい実施形態では、3次元物体は複合材料でできている。
【0078】
好ましい実施形態では、本発明は、複合材料の製造における、本明細書に記載される実施形態のいずれかの3次元物体の製造のための犠牲支持体の使用に関する。
【0079】
好ましくは、複合材料で使用される繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、天然繊維または合成繊維である。最も好ましいのは、炭素繊維である。
【0080】
犠牲コア、犠牲支持体、犠牲支持体材料および供試体は同じ意味を有し、3次元物体に形状、例えば中空を与えるために使用される材料を示し、この犠牲支持体材料は3次元物体から排除または分離する必要がある。
【0081】
3次元物体を製造する方法の工程b)で堆積される材料は、同じ意味を有し得る1つ以上の層またはコーティングを含み得る。本発明で使用される層またはコーティングは、ホットメルトまたは溶剤混合物中のいずれかのエポキシ樹脂またはポリエステル樹脂のファミリーに属するポリマー物質で予備含浸された炭素繊維および/またはガラス繊維の織物ベールまたは不織ベールでできていてよい。これらの層は、複合部材の製造で中空の複雑な閉じ込められた形状のためのその除去可能な工具を想定して、犠牲支持体上に堆積され、オートクレーブ内で80℃~180℃で3bar~8barの圧力を用いた2時間~16時間の硬化サイクルで硬化される。
【0082】
本発明による犠牲支持体は、好ましくは、25℃で測定されて、80MPaから160MPaの範囲、好ましくは115MPaから120MPaの範囲の曲げ強さを有する。
【0083】
本発明による犠牲支持体は、好ましくは、25℃で測定されて、2%から6%の範囲、好ましくは3.5%から5.0%の範囲の曲げ特性について計算された最大ひずみを有する。
【0084】
本発明による犠牲支持体は、好ましくは、25℃で測定されて、5%から12%の範囲、好ましくは8.5%から9.5%の範囲の曲げ特性について計算された破壊ひずみを有する。
【0085】
本発明による犠牲支持体は、好ましくは、25℃で測定されて、2500MPaから5500MPaの範囲、好ましくは3500MPaから4500MPaの範囲の曲げ弾性率を有する。
【0086】
本発明による犠牲支持体は、好ましくは、25℃で測定されて、50MPaから100MPaの範囲、好ましくは75MPaから85MPaの範囲の引張強さを有する。
【0087】
本発明による犠牲支持体は、好ましくは、25℃で測定されて、3%から10%の範囲、好ましくは6%から7%の範囲の引張特性について計算された最大ひずみを有する。
【0088】
本発明による犠牲支持体は、好ましくは、25℃で測定されて、3.5%から10.5%の範囲、好ましくは6.5%から7.5%の範囲の引張特性について計算された破壊ひずみまたは破壊伸びを有する。
【0089】
本発明を、以下の実施例によってより詳細に説明する。
【0090】
本発明の意味の範囲内では、r.t.は室温を意味し、それは23℃であると意図される。
【実施例
【0091】
実施例1-比較例
硬化性の参照エポキシ組成物
34.2重量%の数平均分子量700g/mol以下を有する液体のビスフェノールAを基礎とするエポキシ樹脂と、40.9%の数平均分子量700g/mol以下を有する液体のビスフェノールFを基礎とするエポキシ樹脂と、24.2重量%の1,6-ビス(2,3-エポキシプロポキシ)ヘキサンと、0.7重量%の泡止め剤としてのAirex 900とを含有するエポキシ配合物を配合し、均質化し、そしてガス抜きした。
【0092】
50.7重量%の数平均分子量230g/molを有するポリ(プロピレングリコール)ビス(2-アミノプロピルエーテル)と、34.1重量%の2-(1-ピペラジニル)エチルアミンと、8.2重量%の3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミンと、7重量%の4,4’-イソプロピリデンジフェノールとを含む硬化促進剤配合物を調製し、均質化し、そしてガス抜きした。
【0093】
100重量部のエポキシ配合物を33重量部の硬化促進剤配合物と混合した。
【0094】
その系を60℃で15時間硬化させた。
【0095】
実施例2
100重量部のエポキシ当量165を有する市販の液体のイソソルビドジグリシジルエーテルを、実施例1の硬化促進剤配合物と同じ組成を有する34重量部の硬化促進剤配合物と混合した。
【0096】
その系を60℃で15時間硬化させた。
【0097】
表1には、ビスフェノールAエポキシ樹脂を基礎とする比較例1の組成物および実施例1の同じ硬化剤を使用するが、ビスフェノールAの代わりにイソソルビドジグリシジルエーテルエポキシを使用する組成物の粘度および反応性挙動がまとめられている。初期混合物粘度とは、10RPMで可動の21番スピンドルを用いて40℃でブルックフィールド粘度計によって測定される2つの成分の混合物の粘度を指す。ゲル化時間は、UNI 8701に従って測定された。ポットライフおよび発熱ピークは以下の試験を指す。100mLの系を、該系に浸漬されて記録システムに接続された温度プローブで熱サイクルを測定しながら23±2℃で硬化させる。ポットライフは、その系が40℃に達するのに要する時間であり、一方で、発熱ピークは、硬化の間に達成される最大温度である。
【0098】
表2は、比較例1および本発明による実施例2の硬化された組成物の機械的特性および熱的特性を示す。ガラス転移温度はASTM D 3418に従って示差走査熱量測定によって測定され、引張特性はASTM D 638に従って行われ、曲げ特性はASTM D 790に従って測定された。
【0099】
【表1】
【0100】
【表2】
【0101】
上記のように、実施例2の組成物は、エポキシ要素のビスフェノールAをイソソルビドで置き換えたことを除いて、実施例1の組成物と同じ成分を使用して得られた。
【0102】
表1および表2にまとめられた2つの組成物の機械的分析および熱的分析の結果から、3次元物体の製造に使用され得る支持体材料を得るために必要な特性が維持されていることが明らかになった。
【0103】
実施例3
100重量部のエポキシ当量165を有する液体のイソソルビドジグリシジルエーテルを18重量部の3,6,9,12-テトラアザテトラデカン-1,14-ジアミン(硬化促進剤)と混合し、60℃で15時間硬化させた。
【0104】
示差走査熱量測定(DSCモデル25 T.A. Instruments社、ASTM D 3418)によって測定された75℃のTgは、完全な硬化を示した。
【0105】
実施例4
100重量部のエポキシ当量165を有する液体のイソソルビドジグリシジルエーテルを21重量部の1,3-ビス(アミノメチル)ベンゼンと混合し、60℃で15時間硬化させた。
【0106】
示差走査熱量測定(ASTM D 3418)によって測定された74℃のTgは、完全な硬化を示した。
【0107】
実施例5
100重量部のエポキシ当量165を有する液体のイソソルビドジグリシジルエーテルを28重量部の3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン(硬化促進剤)と混合し、100℃で3時間硬化させることで、最大のTgに達した。
【0108】
示差走査熱量測定(ASTM D 3418)によって測定された98℃のTgは、完全な硬化を示した。
【0109】
吸水試験
吸水試験は、ASTM D 570に従って実施した。直径50.8mm±0.3mmおよび厚さ3.2mm±0.3mmの6つの供試体を、各実施例のために注型し、60℃で15時間硬化させた。各系の3つの供試体を室温(23±2℃)で24時間水に浸したのに対して、残りの3つは沸騰した熱湯に2時間浸した。供試体の重量を試験の前後に記録した。表3に示されるパーセンテージは、試験後の重量変動を表している。正の値は、供試体の重量が増えたことを意味する。「分解した」は、供試体が試験の間にばらばらになったことを意味する。
【0110】
【表3】
【0111】
比較例1および本発明による実施例2~実施例5の吸水のパーセンテージが表3にまとめられている。
【0112】
この表に明らかに示されるように、実施例2~実施例5は、水に浸したときに分解する、またはその重量をかなり増やすかのいずれかである。
【0113】
表3に示されるデータは、本発明の組成物が水性環境の存在により極めて影響を受けることを明らかに裏付けている。全ての実施例は、供試体の崩壊または膨潤のいずれかにつながるマトリックス内部の水拡散を示した。この特性は、水中または水性ベースの溶液中に溶解し得る犠牲コアを作製するための特定のイソソルビドを基礎とする有機マトリックスの配合物に活用され得る。
【0114】
実施例6
59.3重量%のエポキシ当量165を有する液体のイソソルビドジグリシジルエーテルと、40重量%のフィライトと、0.7重量%の泡止め剤としてのAirex 900とを含有するエポキシ配合物を配合し、均質化し、そしてガス抜きした。2つの主要な異性体の3,5-ジエチルトルエン-2,4-ジアミンおよび3,5-ジエチルトルエン-2,6-ジアミンの混合物としてのジエチルメチルトルエンジアミンを硬化剤として使用した。100重量部のイソソルビド配合物を17重量部の硬化剤と混合し、慎重にガス抜きした。
【0115】
その系を120℃で2時間および175℃で2時間硬化させた。
【0116】
示差走査熱量測定(ASTM D 3418)によって測定された108℃のTgは、完全な硬化を示した。
【0117】
実施例7
犠牲支持体の作製および溶解試験
溶解性試験のために、実施例6の組成物を円筒型の型に注ぎ込んで、高さ50mm×直径29mmの供試体を得た。型内の組成物を120℃で2時間および175℃で2時間硬化させた。示差走査熱量測定(ASTM D 3418)によって測定された108℃のTgは、完全な硬化を示した。
【0118】
溶解試験
溶解試験のために、円筒状供試体を、室温(23±2℃)で貯蔵された水中の5重量%の酢酸溶液中に浸漬した。犠牲支持体は、72時間の間に有機マトリックスの完全な分解/溶解を示した。
【0119】
実施例8
溶解試験のための硬化性のイソソルビド組成物
59.3重量%のエポキシ当量165を有する液体のイソソルビドジグリシジルエーテルと、40重量%のフィライトと、0.7重量%の泡止め剤としてのAirex 900とを含有するエポキシ配合物を調製し、均質化し、そしてガス抜きした。硬化剤として3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミンを使用した。100重量部のイソソルビド配合物を17重量部の硬化剤と混合し、慎重にガス抜きした。その系を40℃で3時間および100℃で2時間硬化させた。示差走査熱量測定(ASTM D 3418)によって測定された87℃のTgは、完全な硬化を示した。
【0120】
実施例9
犠牲支持体の作製
実施例8の組成物を円筒型の型に注ぎ込んで、高さ50mm×直径29mmの供試体を得た。型内の組成物を40℃で3時間および100℃で2時間硬化させた。示差走査熱量測定(ASTM D 3418)によって測定された87℃のTgは、完全な硬化を示した。得られた供試体を型から分離した後に、次に犠牲支持体に炭素プリプレグ層の堆積を施し、真空バギング後に6barの圧力で120分間にわたる130℃の硬化サイクルに供した。
【0121】
溶解試験
内部の犠牲支持体を除去するために、内部に犠牲支持体を有する炭素複合物を、水中の5重量%の酢酸溶液中に浸漬した。48時間~72時間後に、犠牲コアは完全に分解/溶解した。
【0122】
酸性処理の前後の複合材料の特性がまとめられている表4において理解されるように、複合材料は一切損傷なく分離された。実際、炭素複合物の機械的特性は、溶液中に浸漬した後にも変化しなかった。
【0123】
複合物の機械的特性の試験
炭素複合物に対する酸性溶液の効果を評価するために、層間せん断強さ(ILSS、ASTM D 2344)用の供試体を作製し、酸性溶液中に72時間浸漬した。
【0124】
【表4】
【0125】
実施例10
77.9重量%のエポキシ当量165を有する液体のイソソルビドジグリシジルエーテルと、18.8重量%の中空ガラス微小球と、3.2%の炭酸ステアリン酸カルシウムと、0.1重量%の泡止め剤としてのAirex 900とを含有するエポキシ配合物を調製し、均質化し、そしてガス抜きした。硬化剤として3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミンを使用した。100重量部のイソソルビド配合物を22重量部の硬化剤と混合し、慎重にガス抜きした。
【0126】
犠牲支持体の作製
実施例10の組成物を型内に流し込むことで、長さ460mm、幅120mmおよび厚さ5mmを有する機械加工可能なブロックを得た。型内の組成物を室温で24時間硬化させた後に、100℃で2時間硬化させた。示差走査熱量測定(ASTM D 3418)によって測定された75℃のTgは、完全な硬化を示した。得られた供試体を型から分離した後に、機械加工可能なブロックをフライス加工にかけて、該系の機械加工性を評価した。優れた機械加工性が達成された。
【0127】
溶解試験
機械加工可能なブロックの溶解特性を評価するために、元のブロックから21×37×35mmの平行六面体を切り出し、200mLの5重量%の酢酸水溶液中に浸漬した。8時間~12時間毎に溶液を交換することによって、犠牲コアは28時間~36時間後に完全に分解/溶解した。
【0128】
実施例11
発泡犠牲支持体の作製
77.5重量%のエポキシ当量165を有する液体のイソソルビドジグリシジルエーテルと、18.8重量%の中空ガラス微小球と、3.2%の炭酸ステアリン酸カルシウムと、0.5重量%の発泡剤としてのシリコーングリコールとを含有するエポキシ配合物を調製し、均質化し、そしてガス抜きした。50%の1,2-シクロヘキサンジアミンおよび50%の2つの異性体の3,5-ジエチルトルエン-2,4-ジアミンおよび3,5-ジエチルトルエン-2,6-ジアミンを含む硬化促進剤配合物を硬化剤として使用した。発泡剤としてポリメチルヒドロシロキサンを使用した。100重量部のイソソルビド配合物を16重量部の硬化剤および0.7重量部の発泡剤と混合した。
【0129】
実施例11の組成物を型内に流し込むことで、長さ200mm、幅200mmおよび厚さ2.4mmを有する機械加工可能なブロックを得た。型内の組成物を80℃で8時間硬化させた後に、130℃で6時間硬化させた。示差走査熱量測定(ASTM D 3418)によって測定された108℃のTgは、完全な硬化を示した。得られた供試体を型から分離した後に、機械加工可能なブロックをフライス加工にかけて、該系の機械加工性を評価した。優れた機械加工性が達成された。
【0130】
溶解試験
機械加工可能なブロックの溶解特性を評価するために、元のブロックから175×125×24mmの平行六面体を切り出し、5Lの酢中に浸漬した。コアの表面の侵食された部分を4時間~8時間毎に手動で除去することによって、犠牲支持体は18時間~20時間後に完全に分解/溶解した。