(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-23
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】放射冷却膜及びその製品
(51)【国際特許分類】
F28F 13/18 20060101AFI20220111BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20220111BHJP
B32B 7/027 20190101ALI20220111BHJP
E04B 1/76 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
F28F13/18 E
B32B27/30 D
B32B7/027
E04B1/76 300
(21)【出願番号】P 2021065443
(22)【出願日】2021-04-07
【審査請求日】2021-04-07
(31)【優先権主張番号】202110154142.3
(32)【優先日】2021-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519020764
【氏名又は名称】寧波瑞凌新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Ningbo Radi-Cool Advanced Energy Technologies Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】No. 88, Dongfeng Road, Fenghua District, Ningbo City, Zhejiang Province, China
(73)【特許権者】
【識別番号】520124866
【氏名又は名称】寧波瑞凌新能源材料研究院有限公司
【氏名又は名称原語表記】NINGBO RUILING ADVANCED ENERGY MATERIALS INSTITUTE CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】88 Dongfeng Road,Yuelin Street,Fenghua District Ningbo,Zhejiang 315500 China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】徐 紹禹
(72)【発明者】
【氏名】楊 栄貴
(72)【発明者】
【氏名】鍾 松
(72)【発明者】
【氏名】王 明輝
(72)【発明者】
【氏名】尹 錚杰
(72)【発明者】
【氏名】楊 慧慧
(72)【発明者】
【氏名】夏 兆路
【審査官】長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第111806020(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111114031(CN,A)
【文献】中国実用新案第211683857(CN,U)
【文献】実開昭62-169197(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/76
B32B 27/30
B32B 7/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層して設置されたキャリア層、反射層及び放射層を含む放射冷却膜において、放射冷却膜には、放射冷却粒子が添加されず、前記放射層は、前記放射冷却膜の光入射側であり、前記放射層の材料は、C-F結合を含むポリマーであり、前記キャリア層の材料は、C-C結合及び/又はC-O結合を含むポリマーであり、前記キャリア層は、120℃で30分間置かれた後、横方向に熱収縮率が2%以下であり、縦方向に熱収縮率が3%以下であるという性質を持ち、前記放射冷却膜の厚さは、50μm~170μmであり、前記放射層の厚さが20%~90%を占め、前記キャリア層と前記反射層との間にポリマー塗布層が設置され、前記ポリマー塗布層の表面エネルギーは、40mN/m以上であり、前記ポリマー塗布層の厚さは、3nm~200nmであることを特徴とする放射冷却膜。
【請求項2】
前記反射層は、前記キャリア層と前記放射層との間に配置され、前記放射冷却膜の厚さは、55μm~170μmであることを特徴とする、請求項1に記載の放射冷却膜。
【請求項3】
前記放射層と前記キャリア層の厚さの比は、1:2~8:1であることを特徴とする、請求項2に記載の放射冷却膜。
【請求項4】
前記放射層の厚さは、25μm~120μmであることを特徴とする、請求項3に記載の放射冷却膜。
【請求項5】
前記キャリア層が前記放射層と前記反射層との間に配置され、前記放射冷却膜の厚さは、50μm~125μmであることを特徴とする、請求項1に記載の放射冷却膜。
【請求項6】
前記放射層と前記キャリア層の厚さの比は、3:10~22:3であることを特徴とする、請求項5に記載の放射冷却膜。
【請求項7】
前記放射層の厚さは、15μm~110μmであることを特徴とする、請求項6に記載の放射冷却膜。
【請求項8】
前記放射層の材料は、フッ素含有樹脂を含み、及び/又は前記キャリア層の材料は、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド及びポリカーボネートのうちの少なくとも一種を含み、及び/又は前記反射層の材料は、金属及び合金のうちの少なくとも一種を含むことを特徴とする、請求項1~請求項7のいずれかの一項に記載の放射冷却膜。
【請求項9】
前記キャリア層の前記反射層を支持する表面の表面エネルギーは、40mN/m以上であることを特徴とする、請求項1~請求項7のいずれかの一項に記載の放射冷却膜。
【請求項10】
前記キャリア層と前記ポリマー塗布層との間の屈折率差の絶対値は、0.05以上であることを特徴とする、請求項9に記載の放射冷却膜。
【請求項11】
前記放射層の光入射面にエンボス構造が設置されることを特徴とする、請求項1~請求項7のいずれかの一項に記載の放射冷却膜。
【請求項12】
製品は、基板及び前記基板に配置された請求項1に記載の放射冷却膜を含み、前記放射冷却膜の放射層から離れた表面は、接着剤層によって前記基板に接続されることを特徴とする放射冷却膜を含む製品。
【請求項13】
前記基板は、金属基板、セラミック基板、半導体基板、プラスチック基板、ガラス基板、ゴム基板、アスファルト基板、セメント基板及びテキスタイル基板のうちの少なくとも一種を含むことを特徴とする、請求項12に記載の
製品。
【請求項14】
前記製品は、放射冷却防水シートであり、前記基板は、石油アスファルト紙フェルト、石油アスファルトグラスファイバータイヤシート、アルミニウム箔表面シート、SBS修飾アスファルト防水シート、APP修飾アスファルト防水シート、EPDMシート、PVCシート、塩素化ポリエチレンシート、ゴムブレンドシート、TPO防水シートのうちの少なくとも一種であることを特徴とする、請求項12に記載の
製品。
【請求項15】
前記製品は、放射冷却金属板であり、前記基板は、アルミニウム合金金属板、亜鉛メッキ金属板、錫メッキ金属板、複合鋼金属板及びカラーコーティングされた鋼金属板のうちの少なくとも一種であることを特徴とする、請求項12に記載の
製品。
【発明の詳細な説明】
【関連特許出願の相互参照】
【0001】
本願は、2021年2月4日に出願した、出願番号が202110154142.3であり、発明の名称が「放射冷却膜及びその製品」である中国特許出願の優先権を主張し、その全ての内容が参照により本願に援用される。
【技術分野】
【0002】
本発明は、新材料技術及び省エネ技術の分野に関し、特に、放射冷却膜及びその製品に関する。
【背景技術】
【0003】
省エネ技術の分野では、放射冷却膜は、大気の窓(8μm~13μm)帯域内の赤外線放射の方式で物体の表面熱を宇宙空間に伝達し、エネルギー消費なしで冷却するという目的を達成することができる。
図1に示すのは、従来の放射冷却膜である。従来の放射冷却膜は、積層して設置された第一ベース層11、第一反射層12及び第一放射塗布層13を含む。第一放射塗布層13は、フッ素含有樹脂を硬化することによって形成され、第一放射冷却粒子14が分布される。放射冷却膜では、第一放射冷却粒子14が第一放射塗布層13に添加され、他方では、放射冷却膜の機械的特性を低下させ、他方では、第一放射塗布層13におけるフッ素含有樹脂の分子鎖の順序を破壊するので、水と酸素の透過性が増加し、それによって放射冷却膜の耐候性が低下する。
【0004】
図2に示すように、フッ素含有フィルム塗布層への放射冷却粒子の添加によって引き起こされる欠陥を回避するために、もう一つの従来の放射冷却膜を提供する。従来の放射冷却膜は、積層して設置された第二ベース層21、第二反射層22、第二放射層23及びフッ素含有フィルム24を含む。第二放射層23は、コロイド及びコロイド中に分布された第二放射冷却粒子25を含む。放射冷却膜では、第二放射性冷却粒子25は、フッ素含有フィルム24には添加されないが、コロイドに添加されるため、コロイドと第二放射冷却粒子とからなる接着層が第二放射層23として使用され、フッ素含有フィルム24は、主に放射冷却膜の耐候性を向上させるために使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、第二放射冷却粒子25がコロイドに添加されるので、コロイドの水及び酸素の透過性を増加させ、それによって放射冷却膜の耐候性を低下させる。また、第二放射冷却粒子25が、コロイドに添加されるので、コロイドの接着力を低下させると、放射冷却膜の完全性を低下させる。同時に、コロイドの内部構造を破壊し、コロイドの凝集力を低下させ、それによって放射冷却膜の機械的性質を低下させる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、従来技術の問題を解決するために、優れた冷却効果、耐候性及び機械的性質を有する放射冷却膜及びその製品を提供する。
【0007】
放射冷却膜は、積層して設置されたキャリア層、反射層及び放射層を含み、前記放射層は、前記放射冷却膜の光入射側であり、前記放射層の材料は、C-F結合を含むポリマーであり、前記キャリア層の材料は、C-C結合及び/又はC-O結合を含むポリマーであり、前記キャリア層は、120℃で30分間置かれた後、横方向に熱収縮率が2%以下であり、縦方向に熱収縮率が3%以下であり、前記放射冷却膜の厚さは、50μm~170μmであり、前記放射層の厚さが20%~90%を占める。
【0008】
前記反射層は、前記キャリア層と前記放射層との間に配置され、前記放射冷却膜の厚さは、55μm~170μmである。
【0009】
前記放射層と前記キャリア層の厚さの比は、1:2~8:1である。
【0010】
前記放射層の厚さは、25μm~120μmである。
【0011】
前記キャリア層が前記放射層と前記反射層との間に配置され、前記放射冷却膜の厚さは、50μm~125μmである。
【0012】
前記放射層と前記キャリア層の厚さの比は、3:10~22:3である。
【0013】
前記放射層の厚さは、15μm~110μmである。
【0014】
前記放射層の材料は、フッ素含有樹脂を含み、及び/又は前記キャリア層の材料は、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド及びポリカーボネートのうちの少なくとも一種を含み、及び/又は前記反射層の材料は、金属及び合金のうちの少なくとも一種を含む。
【0015】
前記キャリア層の前記反射層を支持する表面の表面エネルギーは、40mN / m以上である。
【0016】
前記キャリア層と前記反射層との間にポリマー塗布層が設置され、前記ポリマー塗布層の表面エネルギーは、40mN / m以上であり、前記ポリマー塗布層の厚さは、3nm~200nmである。
【0017】
前記キャリア層と前記ポリマー塗布層との間の屈折率差の絶対値は、0.05以上である。
【0018】
前記放射層の光入射面にエンボス構造が設置される。
【0019】
放射冷却膜を含む製品は、基板及び前記基板に配置された放射冷却膜を含み、前記放射冷却膜の放射層から離れた表面は、接着剤層によって前記基板に接続される。
【0020】
前記基板は、金属基板、セラミック基板、半導体基板、プラスチック基板、ガラス基板、ゴム基板、アスファルト基板、セメント基板及びテキスタイル基板のうちの少なくとも一種を含む。
【0021】
前記製品は、放射冷却防水シートであり、前記基板は、石油アスファルト紙フェルト、石油アスファルトグラスファイバータイヤシート、アルミニウム箔表面シート、SBS修飾アスファルト防水シート、APP修飾アスファルト防水シート、EPDMシート、PVCシート、塩素化ポリエチレンシート、ゴムブレンドシート、TPO防水シートのうちの少なくとも一種である。
【0022】
前記製品は、放射冷却金属板であり、前記基板は、アルミニウム合金金属板、亜鉛メッキ金属板、錫メッキ金属板、複合鋼金属板及びカラーコーティングされた鋼金属板のうちの少なくとも一種である。
【0023】
C-F結合は、8μm~13μmの大気の窓の波長域で高い吸収率を有し、且つ8μm~10μm波長域で強い吸収ピークを有する。同様に、C-C結合及びC-O結合は、8μm~13μmの大気の窓の波長域で高い吸収率を有し、特に8μm~9.5μmの波長域で強い吸収ピークを有する。従って、C-F結合を含むポリマーは、非常に優れたスペクトル選択性を有し、C-C結合及び/又はC-O結合を含むポリマーも優れたスペクトル選択性を有する。同時に、F原子の電気陰性度が高いため、C-F結合の結合エネルギーは高く、最大500KJ/molに達するが、太陽光の光波長域では、有機物を破壊する光波長域が280nm~780nmであり、そのエネルギーがC-F結合を破壊することができず、且つF原子の分極率が低く、C-F結合を含むポリマーは高い熱安定性と化学的不活性を有する。従って、C-F結合を含むポリマーは、更に優れた耐候性を有する。
【0024】
従って、本発明の放射冷却膜は、C-F結合を含むポリマーを放射層の材料として、C-C結合及び/又はC-O結合を含むポリマーをキャリア層の材料として、両方が協調して使用する。同時に、放射層を放射冷却膜の光入射側として、厚さの制御により、単位面積あたりのC-F結合、C-C結合及び/又はC-O結合の数量が最適化されるとともに、太陽光波長域での熱吸収を制御することができる。それによって放射冷却膜は、放射冷却粒子を添加せずに使用される時、優れた大気の窓の放射率を有するため、放射冷却粒子の添加が放射冷却膜の機械的特性や耐候性に及ぼす悪影響を回避することができ、放射冷却膜により優れた機械的特性と耐候性を持たせる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】従来技術の一つの放射冷却膜の構造を示す図である。
【
図2】従来技術のもう一つの放射冷却膜の構造を示す図である。
【
図3】本発明の第一実施例から提供された放射冷却膜の構造を示す図である。
【
図4】本発明の第二実施例から提供された放射冷却膜の構造を示す図である。
【
図5】本発明の第三実施例から提供された放射冷却膜の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下は、本発明から提供された放射冷却膜及びその製品を詳しく説明する。
【0027】
図3に示すのは、本発明の第一実施形態から提供された放射冷却膜である。放射冷却膜は、積層して設置されたキャリア層31、反射層32及び放射層33を含む。
【0028】
ここで、放射層33の材料は、C-F結合を含むポリマーである。C-F結合は、8μm~13μmの大気の窓の波長域で高い吸収率を有し、且つ8μm~13μm波長域で強い吸収ピークを有する。従って、C-F結合を含むポリマーは、非常に優れたスペクトル選択性を有し、放射層33の材料として使用される場合、優れた大気の窓の放射率を有する。同時に、F原子の電気陰性度が高いため、C-F結合の結合エネルギーは高く、最大500KJ/molに達するが、太陽光の光波長域では、有機物を破壊する光波長域が280nm~780nmであり、そのエネルギーがC-F結合を破壊することができず、且つF原子の分極率が低く、C-F結合を含むポリマーは高い熱安定性と化学的不活性を有する。従って、C-F結合を含むポリマーは、更に優れた耐候性を有し、放射層33の材料として使用される時に、放射層33に優れた耐候性を持たせることができる。
【0029】
キャリア層31の材料は、C-C結合及び/又はC-O結合を含むポリマーである。C-C結合及びC-O結合は、8μm~13μmの大気の窓の波長域で高い吸収率を有し、特に8μm~13μmの波長域で強い吸収ピークを有する。従って、C-C結合及び/又はC-C結合を含むポリマーも優れたスペクトル選択性を有し、キャリア層32の材料として使用する場合、放射冷却膜の大気の窓の放射率を高めるのを助ける。
【0030】
放射冷却膜では、放射率y=a-be ^(-x/k)となる。ここで、a、b、及びkはさまざまな材料に応じた定数であり、xは厚さであり、eは自然指数である。放射率の公式から、放射層33及びキャリア層31の厚さが増加し、単位面積あたりのC-F結合、C-C結合及び/又はC-O結合の数量が増加するにつれて、放射冷却膜の大気の窓の放射率も増加することが分かる。しかしながら、放射冷却膜の厚さが増加するとともに、放射冷却膜のコストを増加させるだけでなく、放射層33及びキャリア層31が太陽光波長域に対する熱吸収を増加させることもできる。放射冷却膜の厚さが限界に達すると、放射冷却膜の冷却効果は低下する。
【0031】
従って、本発明は、放射冷却膜の厚さを50μm~170μmに制御し、放射層33の厚さは20%~90%を占める。それによって、厚さの制御により、単位面積あたりのC-F結合、C-C結合及びC-O結合の数量が最適化されるとともに、太陽光波長域での熱吸収を制御し、放射層33とキャリア層31の熱吸収率を20%以下にする。従って、放射冷却膜は、放射冷却粒子を添加せずに使用される時、優れた大気の窓の放射率を有するため、放射冷却粒子の添加が放射冷却膜の機械的特性や耐候性に及ぼす悪影響を回避し、反射型放射冷却膜により優れた機械的特性と耐候性を持たせる。
【0032】
本実施形態では、反射層32は、キャリア層31と放射層33との間に配置される。基板で使用する場合、放射層33は、放射冷却膜の光入射側であるため、放射冷却膜は、優れた耐候性を有する。
【0033】
このとき、太陽光が放射冷却膜に照射した後、反射層32は太陽光の大部分を大気に反射し、それによって太陽光波長域が遮断されて、基板に入ることがほとんどない。次に、放射層33は、基板の内部の熱を8μm~13μmの赤外線に変換し、赤外線が8μm~13μmの大気の窓から放射される。8μm~13μmの大気の窓の大気は、赤外線に対して基本的に吸収はないため、赤外線は直接宇宙空間冷源に入り、それによって放射冷却の役割を果たし、基板の冷却を実現する。
【0034】
本実施形態では、キャリア層31と放射層33は反射層32によって分離されるので、キャリア層31は反射層32を保護することができるが、それに応じて放射を補助する効果が弱くなる。従って、ある実施形態では、放射冷却膜の厚さはさらに55μm~170μmを選択する。放射冷却膜の熱収縮性を考慮すると、放射層33とキャリア層31の厚さの比は、1:2~8:1であり、好ましくは、1:1~3.75:1である。放射層33と反射層32の厚さの比は、50:1~12000:1であり、好ましくは、80:1~4000:1である。放射層33の厚さは25μm~120μmであり、好ましくは、40μm~75μmである。それによって、厚さの制御により、単位面積あたりのC-F結合、C-C結合及びC-O結合の数量が最適化されるとともに、太陽光波長域での熱吸収を制御し、放射層33とキャリア層31の熱吸収率を15%以下にし、更に10%以下にする。
【0035】
本実施形態の放射冷却膜において、反射層32の材料は、金属及び合金のうちの少なくとも一種を含み、具体的には、銀、銀合金、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、及びチタン合金のうちの少なくとも一種を含む。一つの実施形態では、反射層32は、反射層32の内部応力を低減するために複数のサブ反射層を含む。同時に、サブ反射層の材料が異なる場合、例えば、反射層32が積層して設置された銀反射層とアルミニウム反射層、又はさらに積層して設置されたチタン反射層を含む時、複数のサブ反射層の協調作用によって、それぞれのサブ反射層が単独で存在する場合の技術的欠陥及び効果欠陥を補償することができ、反射層32が太陽光の全波長域に対する反射率を高め、それによって放射冷却膜の反射率を高める。同時に、紫外線が放射冷却膜に対する損傷を低減し、放射冷却膜の使用寿命を延長することができる。従って、本実施形態では、材料、構造及び厚さを最適化させることにより、放射冷却膜が大気の窓での放射率を85%に達させることができ、さらに90%に達させることができ、さらに95%に達させることができる。放射冷却膜が太陽光の全波長域での反射率を82%に達させることができ、さらに87%に達させることができ、さらに92%に達させることができ、優れた冷却効果を持たせる。
【0036】
放射冷却膜の引張強度などの機械的特性を考慮すると、一つの実施形態では、C-C結合及び/又はC-O結合を含むポリマーは、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド及びポリカーボネートのうちの少なくとも一種である。ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ(エチレンテレフタレート-1,4-シクロヘキサジエンジメチレンテレフタレート)(PETG)の少なくとも一種を含む。
【0037】
金属又は合金で作られた反射層32が高い表面エネルギーを有するので、反射層32は、キャリア層31の表面に直接貼り付けられ、又はスパッタリング、蒸着などによってキャリア層31の表面に直接堆積される。
【0038】
反射層の平坦性、放射冷却膜の冷却効果及び使用寿命を確保するために、キャリア層31は、120℃で30分間置かれた後、横(TD)方向に熱収縮率が2%以下であり、縦(MD)方向に熱収縮率が3%以下である。
【0039】
フッ素含有樹脂は、C-F結合を含み、入手が容易であることを考慮すると、一つの実施形態では、放射層33の材料は、フッ素含有樹脂であり、具体的には、エチレン‐テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、フルオロオレフィン-ビニルエーテルコポリマー(FEVE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン-クロロトリフルオロエチレンコポリマ-(ECTFE)、パーフルオロエチレンプロピレンコポリマー(FEP)、可融性ポリテトラフルオロエチレン(PFA)のうちの少なくとも一種である。
【0040】
フッ素含有樹脂の表面エネルギーが比較的に低いため、反射層32の表面にフッ素含有樹脂塗料を直接硬化させることにより、放射層33を形成することができ、フッ素含有樹脂塗料が水性又は油性である。
【0041】
放射層33がフッ素含有膜である場合、
図4に示すのは、第二実施形態の放射冷却膜である。本実施形態の放射冷却膜は、フッ素含有樹脂膜が接着層34によって反射層32に固定される。接着層34は、耐候性に優れたポリウレタン接着剤及びアクリル接着剤のうちの少なくとも一種であり、接着剤層34の厚さが0.5μm~20μmである。
【0042】
さらに、キャリア層31の材料がポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド及びポリカーボネートから選択される場合、その表面エネルギーが低いので、反射層32を堆積又は貼り付ける前に、プラズマ方法及びコロナ方法でキャリア層31の表面を、その表面エネルギーを40mN / m以上、さらに42mN / m以上、45mN / m以上、50mN / m以上又は55mN / m以上に増加させるように処理してもよい。或いは、キャリア層31にポリマー塗布層35が設置され、ポリマー塗布層35の表面エネルギーは40mN / m以上、さらに42mN / m以上又は45mN / m以上又は50mN /m以上又は55mN / m以上である。これによって、キャリア層31と反射層32との間の接着性が大幅に改善され、それにより、放射冷却膜全体の剥離強度が向上される。
【0043】
ポリマー塗布層35を設置する場合、ポリマー塗布層の厚さは3nm~200nmであり、キャリア層31とポリマー塗布層35との間の屈折率差の絶対値は、放射冷却膜の反射率を向上するのを助けるために、0.05以上である。
【0044】
一つの実施形態では、ポリマー塗布層35の材料は、エポキシアクリルポリマー、ウレタンアクリレート及びポリエステルアクリレートのうちの少なくとも一種である。
【0045】
図4に示すように、本発明の放射冷却膜では、放射層33の光入射面にも正方形、円形、菱形、綾形のうちのいずれかの一種又は多種である、深さが0.5μm~2.5μmであ るエンボス構造36を設置してもよい。エンボス構造36によって、放射冷却膜の表面光沢を低減して、鏡面で反射される光線を低減し、それにより、放射冷却膜が応用される時の光害を低減でき、空港などの光害に対する特別な要求を有する分野に適する。
【0046】
図5に示すのは、本出願から提供される第三実施形態の放射冷却膜である。本実施形態では、キャリア層31が反射層32と放射層33との間に配置される。このとき、太陽光が放射冷却膜に到達した後、反射層32は太陽光の大部分を大気に反射するため、太陽光の波長帯域が遮断され、基板に入ることがほとんどない。次に、放射層33が基板の内部の熱を8μm~13μmである赤外線に変換し、赤外線は、8μm~13μmの大気の窓を通して放射され、8μm~13μmの大気の窓の大気が赤外線を基本的に吸収せず、宇宙空間の冷源に直接入り、放射冷却の役割を果たし、基板の冷却を実現する。
【0047】
本実施形態では、キャリア層31は、放射層33と反射層32との間に配置される。従って、キャリア層31は、放射層33が放射するのをよりよく助けることができる。従って、一つの実施形態では、放射冷却膜の厚さが50μm~125μmである。同時に、放射冷却膜の熱収縮を考慮すると、放射層33とキャリア層31の厚さの比は、3:10~22:3であり、好ましくは、3:10~20:3である。放射層33と反射層32の厚さの比は、30:1~110000:1であり、好ましくは25:1~100000:1である。放射層33の厚さは、15μm~110μmであり、好ましくは40μm~75μmである。従って、厚さの制御を通じて、単位面積あたりのC-F結合、C-C結合及び/ 又はC-O結合の数量がさらに最適化され、同時に太陽光の波長帯域での熱吸収が制御されるため、放射層33及びキャリア層31の熱吸収率は15%以下に達することができ、さらに、熱吸収率は10%以下に達することができる。
【0048】
従って、本実施形態では、材料、構造及び厚さの最適化を通じて、放射冷却膜が大気の窓の波長帯域での放射率は、87%に達することができ、さらに、92%に達することができ、さらに、97%に達することができる。太陽光の波長帯域全体に対する反射率は、80%に達することができ、さらに85%に達することができ、さらに90%に達することができ、優れた冷却効果を持つ。
【0049】
本実施形態では、反射層32は、キャリア層31の表面に直接貼り付けることができ、又はスパッタリング、蒸着などによってキャリア層31の表面に直接堆積することができる。反射層32を堆積又は貼り付ける前に、表面エネルギーを高めるために、プラズマ方法及びコロナ方法でキャリア層31の表面を処理してもよい。或いは、キャリア層31と反射層32との間の接着力を高め、それによって放射冷却膜全体の剥離強度を改善するために、キャリア層31にポリマー塗布層35を設置する。
【0050】
キャリア層31の表面にフッ素含有樹脂塗料を直接硬化させることにより、放射層33を形成することができ、フッ素含有樹脂塗料が水性又は油性である。或いは、放射層33がフッ素含有膜である時、フッ素含有膜が接着層34によってキャリア層31に固定的に接着される。
【0051】
従って、本発明から提供された放射冷却膜は、材料、構造及び厚さの最適化を通じて、放射冷却粒子を添加せずに優れた大気の窓の放射率を有し、それにより、放射冷却粒子の添加が放射冷却膜の機械的性質と耐候性に悪影響を及ぼすことを回避することができ、放射冷却膜により優れた機械的性質と耐候性を持たせ、同時に優れた冷却効果を持たせる。
【0052】
本発明は、さらに放射冷却膜の応用を提供する。放射冷却膜が基板の表面に配置され、太陽光を反射し、赤外線放射方式で大気の窓を通して熱を放射する。
【0053】
一つの実施形態では、基板は、金属基板、セラミック基板、半導体基板、プラスチック基板、ガラス基板、ゴム基板、アスファルト基板、セメント基板及びテキスタイル基板のうちの少なくとも一種を含む。
【0054】
また、本発明は、放射冷却膜を含む製品を提供する。この製品は、基板及び基板に配置された放射冷却膜を含む。放射冷却膜の放射層33から離れた表面は、接着剤層によって基板に接続され、基板から離れた放射層33の表面が光入射側である。
【0055】
一つの実施形態では、接着剤層は、アクリル接着剤、ポリウレタン感圧接着剤、ホットメルト接着剤、ホットメルト接着剤フィルム及びブチル接着剤のうちの一種を含む。接着剤層の厚さは、20μm~1500μmであり、好ましくは25μm~150μmである。接着剤層が厚すぎると、接着剤層が太陽光に対する吸収率が高くなるので、放射冷却膜の冷却効果に影響を及ぼす。接着剤層が薄すぎると、接着性能が弱くなるので、放射冷却膜の使用寿命を減少する。
【0056】
一つの実施形態では、基板は、金属基板、プラスチック基板、ガラス基板、ゴム基板、アスファルト基板、セメント基板及びテキスタイル基板のうちの少なくとも一種を含む。
【0057】
一つの実施形態では、製品は放射冷却防水シートであり、基板は石油アスファルト紙フェルト、石油アスファルトグラスファイバータイヤシート、アルミニウム箔表面シート、SBS修飾アスファルト防水シート、APP修飾アスファルト防水シート、EPDMシート、PVCシート、塩素化ポリエチレンシート、ゴムブレンドシート、TPO防水シートのうちの少なくとも一種である。
【0058】
一つの実施形態では、製品は放射冷却金属板であり、基板は、アルミニウム合金金属板、亜鉛メッキ金属板、錫メッキ金属板、複合鋼金属板及びカラーコーティングされた鋼金属板のうちの少なくとも一種である。
【0059】
従って、本発明の放射冷却膜は、穀物貯蔵庫、大規模な公共建築物(高速鉄道駅、空港、展示ホール、博物館など)、石油化学貯蔵タンク、電力キャビネット及び通信キャビネットなどのエンクロージャ構造の外表面に使用できる。太陽光を反射し、赤外線放射の方式で大気の窓を通して熱を放射でき、エンクロージャー構造に対して、エネルギー消費はない冷却を実現する。
【0060】
以下、具体的な実施形態を通じて、放射冷却膜及びその製品についてさらに説明する。
【0061】
実施形態1
厚さが30μmであるポリエチレンテレフタレートフィルムをキャリア層として、キャリア層が120℃で30分間置いた後、横方向の熱収縮率が1.2%であり、縦方向の熱収縮率が1.4%であり、キャリア層の表面に厚さが100nmである銀反射層をマグネトロンスパッタリングした後、銀反射層から離れたキャリア層の表面にポリテトラフルオロエチレン樹脂をコーティングし、厚さが50μmである放射層に硬化し、放射冷却膜を得る。
【0062】
実施形態2
厚さが30μmであるポリエチレンテレフタレートフィルムをキャリア層として、キャリア層が120℃で30分間置いた後、横方向の熱収縮率が1.2%であり、縦方向の熱収縮率が1.4%であり、キャリア層の表面に厚さが100nmである銀反射層をマグネトロンスパッタリングした後、銀反射層にポリテトラフルオロエチレン樹脂をコーティングし、厚さが50μmである放射層に硬化し、放射冷却膜を得る。
【0063】
実施形態3
実施形態3と実施形態1の違いは、厚さが50μmであるポリテトラフルオロエチレンフィルムを厚さが10μmであるポリウレタン接着剤層によって、キャリア層の表面に接着して、放射冷却膜を得るということである。
【0064】
実施形態4
実施形態4と実施形態3の違いは、実施形態4のポリテトラフルオロエチレンフィルムがエンボス加工によって、表面に深さが1μmである正方形のエンボス構造を形成し、エンボス構造が放射層の光入射表面に設置されるということである。
【0065】
実施形態5
実施形態5と実施形態3との違いは、実施形態5の銀反射層を支持する表面に厚さが50nmであるエポキシアクリルポリマー塗布層が設置され、表面エネルギーが56mN / mであり、且つキャリア層とポリマー塗布層の屈折率の差の絶対値は0.06であるということである。
【0066】
実施形態6
厚さが15μmであるポリエチレンテレフタレートフィルムをキャリア層として、キャリア層が120℃で30分間置いた後、横方向の熱収縮率が1.6%であり、縦方向の熱収縮率が1.8%であり、キャリア層の表面にプラズマ処理を行って、その表面エネルギーを42mN/mに達させ、次に該表面に厚さが50nmである銀反射層をマグネトロンスパッタリングした後、銀反射層から離れたキャリア層の表面にポリテトラフルオロエチレン樹脂をコーティングし、且つ厚さが35μmである放射層に硬化し、放射層がエンボス加工によって、表面に深さが0.5μmである正方形のエンボス構造を形成し、放射冷却膜を得る。
【0067】
実施形態7
厚さが20μmであるポリエチレンテレフタレートフィルムをキャリア層として、キャリア層が120℃で30分間置いた後、横方向の熱収縮率が1.5%であり、縦方向の熱収縮率が1.6%であり、キャリア層の表面に厚さが10nmであるウレタンアクリレートポリマー塗布層をコーティングし、表面エネルギーが42mN/mであり、且つキャリア層とポリマー塗布層の屈折率の差の絶対値が0.07である。次に、ポリマー塗布層に厚さが60nmである銀反射層をマグネトロンスパッタリングした後、銀反射層から離れたキャリア層の表面にポリテトラフルオロエチレン樹脂をコーティングし、且つ厚さが40μmである放射層に硬化し、放射層がエンボス加工によって、表面に深さが0.5μmである正方形のエンボス構造を形成し、放射冷却膜を得る。
【0068】
実施形態8
厚さが30μmであるポリエチレンテレフタレートフィルムをキャリア層として、キャリア層が120℃で30分間置いた後、横方向の熱収縮率が1.2%であり、縦方向の熱収縮率が1.4%であり、キャリア層の表面に厚さが100nmであるポリエステルアクリレートポリマー塗布層をコーティングし、表面エネルギーが47mN/mであり、且つキャリア層とポリマー塗布層の屈折率の差の絶対値が0.06である。次に、ポリマー塗布層に厚さが50nmである銀反射層及び厚さが50nmであるアルミニウム反射層をマグネトロンスパッタリングした後、銀反射層から離れたキャリア層の表面にポリテトラフルオロエチレン樹脂をコーティングし、且つ厚さが15μmである放射層に硬化し、放射層がエンボス加工によって、表面に深さが1μmである正方形のエンボス構造を形成し、放射冷却膜を得る。
【0069】
実施形態9
厚さが50μmであるポリエチレンテレフタレートフィルムをキャリア層として、キャリア層を120℃で30分間置いた後、横方向の熱収縮率が0.8%であり、縦方向の熱収縮率が1.0%である。キャリア層の表面に厚さが20nmであるポリエステルアクリレートポリマー塗布層をコーティングし、表面エネルギーが47mN/mであり、且つキャリア層とポリマー塗布層の屈折率の差の絶対値が0.06である。次に、ポリマー塗布層に厚さが200nmである銀反射層をマグネトロンスパッタリングする。次に、厚さが75μmであるポリテトラフルオロエチレンフィルムを、厚さが5μmであるポリウレタン接着剤層によって、銀反射層から離れたキャリア層の表面に接着する。ポリテトラフルオロエチレンフィルムは、エンボス加工によって処理され、表面は深さが2μmである正方形のエンボス構造を有し、放射冷却膜を得る。
【0070】
実施形態10
厚さが35μmであるポリエチレンテレフタレートフィルムをキャリア層として、キャリア層を120℃で30分間置いた後、横方向の熱収縮率が1.1%であり、縦方向の熱収縮率が1.2%である。キャリア層の表面に厚さが50nmであるポリエステルアクリレートポリマー塗布層をコーティングし、表面エネルギーが42mN/mであり、且つキャリア層とポリマー塗布層の屈折率の差の絶対値が0.07である。次に、ポリマー塗布層に厚さが100nmである銀反射層及び厚さが100nmであるアルミニウム反射層をマグネトロンスパッタリングする。次に、厚さが110μmであるポリテトラフルオロエチレンフィルムを、厚さが5μmであるポリウレタン接着剤層によって、反射層から離れたキャリア層の表面に接着する。ポリテトラフルオロエチレンフィルムは、エンボス加工によって処理され、表面は深さが2.5μmである正方形のエンボス構造を有し、放射冷却膜を得る。
【0071】
比較例1
比較例1と実施形態1の違いは、銀反射層から離れたキャリア層の表面にポリテトラフルオロエチレン樹脂とシリカ粒子との混合塗料がコーティングされ、シリカ粒子の重量百分率が1%であり、粒径が5μmであるということである。
【0072】
比較例2
比較例2と比較例1の違いは、シリカ粒子の重量百分率が10%であり、粒径が5μmであるということである。
【0073】
比較例3
比較例3と実施形態3の違いは、ポリウレタン接着剤層がシリカ粒子を含み、シリカ粒子の重量百分率が1%であり、粒径が5μmであるということである。
【0074】
比較例4
比較例4と実施形態3の違いは、ポリウレタン接着剤層がシリカ粒子を含み、シリカ粒子の重量百分率が10%であり、粒径が5μmであるということである。
【0075】
実施形態1~10及び比較例1~4の放射冷却膜が以下の性能試験を行い、その結果を表1に示す。
【0076】
大気の窓(8μm~13μm)波長帯域の放射率試験方法:赤外線分光法を使用して試験し、試験装置はフーリエ変換赤外線分光計であり、8μm~13μm帯域の赤外線放射率をテストし、試験間隔は5nmであり、8μm~13μm帯域の放射率が、大気の窓の放射率である。
【0077】
太陽光(300μm~2500μm)波長帯域の反射率試験方法:GB/T25968-2010 6.2に従って行う。
【0078】
光沢度試験方法:GB/T9754-2007に従って行い、60°の試験結果を取得する。
【0079】
キセノンランプの経年劣化試験方法:試験キセノンランプは、GB/T16422.2-2014の要件を満たす必要がある。テストは、GB/T16422.2-2014のサイクル1に従って行う。テストする時、サンプルのフィルム表面は光源に面し、1000hの間置かれる。
【0080】
剥離強度試験方法:標準GB/T25256-2010「光学機能性フィルム剥離フィルムの180°の剥離力と残留接着率の試験方法」を参照し、サンプルカッターでTD方向、MD方向が150mm*25mmであるサンプルを三つカットする(左、中央、右に一つずつ)。100mmのゲージ長、100m/minのテスト速度で、接着剤層の剥離強度をテストする。
【0081】
破断伸長率と引張強度の試験方法:GB/T1040.1-2018の第5章の規定に従って行う。試験速度が150mm/minであり、幅が25mmであり、長さが150mm以上である三つの長いサンプル(即ち、GB/T1040.3-2006におけるタイプ2のサンプル)を提供する。サンプルのエッジがきちんとして、ノッチがなく滑らかであることを確保する必要がある。テストする時、サンプルを引張試験機のクランプに取り付け、クランプの間隔が100mmであり、100mm/minの速度で伸ばして、サンプルが破断したときの最大引張力と伸長量をテストする。式(1)によって破断伸長率を計算する。数値は小数点第一位に四捨五入される。
【0082】
【0083】
式では、Eは破断伸長率であり、L1はサンプルが破断したときの伸長量であり、L0はクランプ間の初期距離である。
【0084】
熱収縮率試験方法:ASTMD1204を参照されたい。
【0085】
【0086】
(工学応用実験)
放射冷却膜が建物に応用される場合、建物の内部に対する冷却効果を模倣するために、寧波市内の同じ環境に位置し、
図6に示すようなモデルハウスAとモデルハウスBを選択する。モデルハウスBの外表面にいずれの処理もせず、モデルハウスAの外表面に実施形態1の放射冷却膜が設置され、モデルハウスAとモデルハウスBの内部の中央位置に一つの温度測定点A1とB1がそれぞれ設置され、モデルハウスの周囲に環境温度測定点が設置され、温度測定点A1、B1及び周囲環境が2020.10.1~2020.10.3での温度データを連続して採集して、
図7に示すような温度曲線を参照する。
【0087】
図7から、(1)放射冷却膜は、モデルハウスの内部の温度を効果的に下げることができ、モデルハウスAとモデルハウスBの最大コントラスト温度差は18℃に達し、(2)毎日正午頃に太陽放射強度が最大に達し、この時点で、二つのモデルハウスの温度差が最大であり、(3)放射冷却膜によって、モデルハウスの全体的な温度を継続的かつ効果的に下げることができ、エネルギーを節約し、環境を保護できるということが分かる。
【0088】
上記実施形態の技術的特徴は任意に組み合わせることができる。説明を簡潔にするために、上記実施形態における様々な技術的特徴のすべての可能な組み合わせは記載されていない。ただし、これらの技術的機能の組み合わせは、矛盾がない限り、本明細書の記載の範囲と見なすべきである。
【0089】
上記の実施形態は、本発明のいくつかの実施形態を表すだけであり、その説明が比較的具体的かつ詳細であるが、それらは、本発明の特許の範囲に対する限定に理解されるべきではない。当業者であれば、本発明の技術構成の趣旨や範囲を逸脱しない前提下で、いろいろな更正及び変形を行なうことができる。これらの更正及び変形は、いずれも本発明の保護範囲に含まれるべきである。従って、本発明の保護範囲は、添付されたクレームをよりどころとする。
【符号の説明】
【0090】
11 第一ベース層
12 第一反射層
13 第一放射塗布層
14 第一放射冷却粒子
21 第二ベース層
22 第二反射層
23 第二放射層
24 フッ素含有フィルム
25 第二放射冷却粒子
31 キャリア層
32 反射層
33 放射層
34 接着層
35 ポリマー塗布層
36 エンボス構造
【要約】 (修正有)
【課題】従来の放射冷却膜では、放射冷却膜の耐候性を低下させる。また、放射冷却膜の機械的性質を低下させる。
【解決手段】本発明は、放射冷却膜及びその製品を提供する。前記放射冷却膜は、積層して設置されたキャリア層31、反射層32及び放射層33を含む。前記放射層33は、前記放射冷却膜の光入射側であり、前記放射層33の材料は、C-F結合を含むポリマーであり、前記キャリア層31の材料は、C-C結合及び/又はC-O結合を含むポリマーであり、前記キャリア層31は、120℃で30分間置かれた後、横方向に熱収縮率が2%以下であり、縦方向に熱収縮率が3%以下であり、前記放射冷却膜の厚さは、50μm~170μmであり、前記放射層の厚さが20%~90%を占める
【選択図】
図3