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特許6999061免疫賦活用組成物、風邪様症状予防剤、及びウイルス感染予防剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-23
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】免疫賦活用組成物、風邪様症状予防剤、及びウイルス感染予防剤
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20220111BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20220111BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20220111BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20220111BHJP
   A61K 35/744 20150101ALI20220111BHJP
【FI】
C12N1/20 E
A61P37/04
A61P31/00
A61P31/12
A61K35/744
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021110217
(22)【出願日】2021-07-01
【審査請求日】2021-07-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591014097
【氏名又は名称】サンエイ糖化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(72)【発明者】
【氏名】三ケ尻 脩人
(72)【発明者】
【氏名】阿部 秀飛
【審査官】小倉 梢
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-172019(JP,A)
【文献】特開2016-005452(JP,A)
【文献】特開2017-085975(JP,A)
【文献】Clin. Vaccine Immunol.,2012年,Vol. 19,p. 1207-1217
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00 - 1/38
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンテロコッカス・フェカリス菌であって、20μg/mLの前記エンテロコッカス・フェカリス菌と5×10個/mLの骨髄細胞由来のプラズマサイトイド樹状細胞とを共培養することで50pg/mL以上のIFN-αを産生する指標で表されるプラズマサイトイド樹状細胞の活性化能を有するエンテロコッカス・フェカリス菌を含む、免疫賦活用組成物(ただし、魚介類用のNBRC 3989発酵物含有免疫賦活剤を除く。)
【請求項2】
分泌型IgAの産生促進用である、請求項1に記載の免疫賦活用組成物。
【請求項3】
エンテロコッカス・フェカリス菌であって、20μg/mLの前記エンテロコッカス・フェカリス菌と5×10個/mLの骨髄細胞由来のプラズマサイトイド樹状細胞とを共培養することで50pg/mL以上のIFN-αを産生する指標で表されるプラズマサイトイド樹状細胞の活性化能を有するエンテロコッカス・フェカリス菌を含む、風邪様症状予防剤。
【請求項4】
エンテロコッカス・フェカリス菌であって、20μg/mLの前記エンテロコッカス・フェカリス菌と5×10個/mLの骨髄細胞由来のプラズマサイトイド樹状細胞とを共培養することで50pg/mL以上のIFN-αを産生する指標で表されるプラズマサイトイド樹状細胞の活性化能を有するエンテロコッカス・フェカリス菌を含む、ウイルス感染予防剤(ただし、魚介類用のNBRC 3989発酵物含有免疫賦活剤を除く。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫賦活用組成物、風邪様症状予防剤、及びウイルス感染予防剤に関する。
【背景技術】
【0002】
動物の体内に備わる免疫力は、環境変化や各種ストレスにより低下し得る。免疫力の維持や向上のための方法として、免疫機構に作用する乳酸菌を摂取することが知られる。
【0003】
免疫機構に作用する乳酸菌として、エンテロコッカス属の乳酸菌、特にエンテロコッカス・フェカリス菌が挙げられる。
特許文献1及び2には、エンテロコッカス・フェカリスEC-12株がマウス由来のマクロファージ及びヒト由来の末梢血単核球を刺激し、インターロイキン-12を産生することが記載されている。
特許文献3及び4には、エンテロコッカス・フェカリスNF-1011株がマウスの脾臓細胞に作用し、インターフェロン-β及びインターフェロン-γの産生を増強することが記載されている。
特許文献5には、エンテロコッカス・フェカリス菌を、マウスのパイエル板細胞と共培養することで、培地上清のIgAが増加したことが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2011/027829号
【文献】特許第6138570号公報
【文献】特開平8-259450号公報
【文献】特開平9-124496号公報
【文献】特開平11-92389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、免疫機構への作用がより強い乳酸菌に対するニーズがある。
【0006】
本発明は以上の実情に鑑みてなされたものであり、良好な免疫賦活作用を有するエンテロコッカス・フェカリス菌含有組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが検討した結果、エンテロコッカス・フェカリス菌のうち一部の菌が、プラズマサイトイド樹状細胞を高度に活性化できること、及び、IFN-αの産生量の高さがその活性化指標となることを新規に見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下を提供する。
【0008】
(1) エンテロコッカス・フェカリス菌であって、20μg/mLの前記エンテロコッカス・フェカリス菌と5×10個/mLの骨髄細胞由来のプラズマサイトイド樹状細胞とを共培養することで50pg/mL以上のIFN-αを産生する指標で表されるプラズマサイトイド樹状細胞の活性化能を有するエンテロコッカス・フェカリス菌を含む、免疫賦活用組成物。
【0009】
(2) 分泌型IgAの産生促進用である、(1)に記載の免疫賦活用組成物。
【0010】
(3) エンテロコッカス・フェカリス菌であって、20μg/mLの前記エンテロコッカス・フェカリス菌と5×10個/mLの骨髄細胞由来のプラズマサイトイド樹状細胞とを共培養することで50pg/mL以上のIFN-αを産生する指標で表されるプラズマサイトイド樹状細胞の活性化能を有するエンテロコッカス・フェカリス菌を含む、風邪様症状予防剤。
【0011】
(4) エンテロコッカス・フェカリス菌であって、20μg/mLの前記エンテロコッカス・フェカリス菌と5×10個/mLの骨髄細胞由来のプラズマサイトイド樹状細胞とを共培養することで50pg/mL以上のIFN-αを産生する指標で表されるプラズマサイトイド樹状細胞の活性化能を有するエンテロコッカス・フェカリス菌を含む、ウイルス感染予防剤。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、良好な免疫賦活作用を有するエンテロコッカス・フェカリス菌含有組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0014】
<免疫賦活用組成物>
本発明の免疫賦活用組成物は、エンテロコッカス・フェカリス菌であって、20μg/mLの該エンテロコッカス・フェカリス菌と5×10個/mLの骨髄細胞由来のプラズマサイトイド樹状細胞とを共培養することで50pg/mL以上のIFN-αを産生する指標で表されるプラズマサイトイド樹状細胞の活性化能を有するエンテロコッカス・フェカリス菌を含む。
【0015】
本発明において「エンテロコッカス・フェカリス菌」とは、学名が「Enterococcus faecalis」である乳酸菌を意味し、免疫賦活用組成物の有効成分に相当する。
【0016】
本発明において「免疫賦活用組成物」とは、動物(ヒト及び非ヒト動物)又は動物由来の細胞に対して、免疫賦活作用をもたらすための組成物を意味する。
免疫賦活用組成物は、エンテロコッカス・フェカリス菌からなるものであってもよく、エンテロコッカス・フェカリス菌とともにその他の成分が配合されたものであってもよい。
【0017】
本発明において「免疫賦活作用」とは、免疫力の賦活化、及びそれによってもたらされる体調維持効果や治療効果等を包含する。
本発明の免疫賦活用組成物は、プラズマサイトイド樹状細胞の活性化及びIFN-αの産生によって免疫賦活作用をもたらす。
【0018】
本発明において「プラズマサイトイド樹状細胞」は、「pDC」(plasmacytoid dendritic cell)とも称される。
本発明において「IFN-α」は、「インターフェロン-α」の略称である。本発明における「IFN-α」は、サブタイプの全て、又は1以上の組み合わせを包含する。
【0019】
本発明において「プラズマサイトイド樹状細胞の活性化能」とは、IFN-αの産生量の増加を指標として特定される。
つまり、本発明において「プラズマサイトイド樹状細胞の活性化能が高い」とは、エンテロコッカス・フェカリス菌が、プラズマサイトイド樹状細胞の活性化を介してIFN-αの産生量を増加させることを意味する。
そして、本発明によれば、産生されるIFN-αの産生量が高く、20μg/mLのエンテロコッカス・フェカリス菌と5×10個/mLの骨髄細胞由来のプラズマサイトイド樹状細胞とを共培養することで50pg/mL以上のIFN-αを産生する。
【0020】
本発明において「骨髄細胞由来のプラズマサイトイド樹状細胞」とは、Flt3-L(FMS-related tyrosine kinase 3 ligand)の存在下で骨髄細胞を培養することで産生誘導されるプラズマサイトイド樹状細胞を含む樹状細胞群を意味する。本発明において、骨髄細胞にFlt3-Lを添加し、培養することで得られる樹状細胞群の中には、プラズマサイトイド樹状細胞のほか、ミエロイド系樹状細胞等が含まれ得る。
Flt3-Lの由来は問わず、例えば哺乳類(ヒト、マウス等)に由来していてもよいし、微生物(例えば、Escherichia coli等)等を用いた合成物であってもよい。Flt3-Lの添加量は特に限定されないが、例えば、骨髄細胞濃度1×10個/mLの細胞培養培地に対し、0.1ng/mL以上1mg/mL以下であってもよい。
【0021】
骨髄細胞からプラズマサイトイド樹状細胞が誘導されたかどうかは、細胞の形状、目的のマーカー(プラズマサイトイド樹状細胞が特異的に発現しているタンパク質やプラズマサイトイド樹状細胞が発現していないタンパク質等)の発現等を観察又は測定等することで特定できる。
例えば、骨髄細胞からプラズマサイトイド樹状細胞が誘導されたかどうかは、実施例に示す顕微鏡観察や、フローサイトメトリー分析によって特定できるが、その条件は特に限定されない。顕微鏡観察やフローサイトメトリーに使用する抗体や標識の種類や数は適宜設定できる。
【0022】
本発明におけるIFN-αの産生量の具体的な測定方法は、実施例の<乳酸菌株のスクリーニング>の項に示すとおりである。
具体的には、以下の方法で測定する。
(プラズマサイトイド樹状細胞と乳酸菌との共培養)
マウス(C57BL/6J(C57BL/6JJmsSlc等))の大腿骨から、常法に従って骨髄細胞を回収し、赤血球除去処理を行う。
得られた骨髄細胞を、細胞培養培地中に、1×10個/mLとなるように懸濁し、COインキュベーターで、5%CO、37℃の培養条件で培養する。
培養開始から4日目に、3/7量の培地を交換する。
培養開始から8日目に、細胞培養培地に懸濁したエンテロコッカス・フェカリス菌を添加し、骨髄細胞の終濃度を5×10個/mLに調整し、かつエンテロコッカス・フェカリス菌の終濃度を20μg/mLに調整する。
さらに、5%CO、37℃で48時間培養後、培養上清を回収する。
なお、細胞培養培地としては、RPMI-1640培地に、10% ウシ胎児血清、10mM HEPES、5,000IU/μg ペニシリン・ストレプトマイシン、50μM β-メルカプトエタノール、及び、100ng/mL Flt3-Lを添加したものを使用する。
上記培地成分のうち、「Flt3-L」は、プラズマサイトイド樹状細胞を誘導するためのサイトカインである。
(IFN-α産生量の測定)
ELISA法により、各培養上清中のIFN-α産生量を測定する。
【0023】
20μg/mLのエンテロコッカス・フェカリス菌と5×10個/mLの骨髄細胞由来のプラズマサイトイド樹状細胞とを共培養することによるIFN-αの産生量は高いほど好ましく、例えば、100pg/mL以上、150pg/mL以上、200pg/mL以上、250pg/mL以上、300pg/mL以上であってもよい。
20μg/mLのエンテロコッカス・フェカリス菌と5×10個/mLの骨髄細胞由来のプラズマサイトイド樹状細胞とを共培養することによるIFN-αの産生量の上限は特に限定されないが、通常1,000pg/mL以下である。
【0024】
本発明の免疫賦活用組成物は、分泌型IgA(secretory IgA、s-IgA)の産生も促進し得る。
したがって、本発明において「免疫賦活」とは、「分泌型IgAの産生促進」を包含する。
【0025】
分泌型IgAの産生量の特定方法は特に限定されないが、例えば、本発明の免疫賦活用組成物を摂取した哺乳類(ヒト等)において、摂取前後の生体試料(唾液、気道分泌液、腸管分泌液、乳汁、涙、尿、汗等)に含まれる分泌型IgAの量や分泌型IgAの分泌速度を測定する方法が挙げられる。
また、分泌型IgAの量の代わりに、以下を測定してもよい。
・ 樹状細胞からIgA産生形質細胞(IgAB細胞)までに関与する、T細胞やB細胞の活性化指標
・ 免疫関与物質(各種サイトカイン等)の遺伝子発現
・ 乳酸菌の抗原特異的s-IgA、又は非抗原特異的s-IgAの量
・ 分泌型IgAによるウイルスや細菌の不活化や接着量、複合体形成量
【0026】
分泌型IgA産生量は、例えば、以下のように測定してもよい。
(1)1日当たり1,000億個のエンテロコッカス・フェカリス菌に相当する量の免疫賦活用組成物を、2週間継続的にヒトに経口摂取させる。
(2)免疫賦活用組成物の摂取前後の唾液を流涎で採取し、唾液に含まれる分泌型IgA量をELISA法により測定する。
(3)分泌型IgA量の増加量が高いほど、分泌型IgAの産生促進効果が高いと判断できる。
例えば、免疫賦活用組成物摂取前と比較した時の分泌型IgAの増加量は、15mg/dL以上、10mg/dL以上、5mg/dL以上、4mg/dL以上、3mg/dL以上、2mg/dL以上、1mg/dL以上、0.5mg/dL以上であり得る。
例えば、分泌型IgAの産生比(摂取後/摂取前)は、4.0倍以上、3.5倍以上、3.0倍以上、2.5倍以上、2.0倍以上、1.5倍以上、1.2倍以上であり得る。
【0027】
(エンテロコッカス・フェカリス菌)
本発明におけるエンテロコッカス・フェカリス菌は、20μg/mLの該エンテロコッカス・フェカリス菌と5×10個/mLの骨髄細胞由来のプラズマサイトイド樹状細胞とを共培養することで50pg/mL以上のIFN-αを産生する指標で表されるプラズマサイトイド樹状細胞の活性化能を有するものであれば特に限定されない。
【0028】
本発明におけるエンテロコッカス・フェカリス菌の例としては、以下が挙げられる。
Enterococcus faecalis NBRC3971
Enterococcus faecalis NBRC3989
Enterococcus faecalis NBRC12580
Enterococcus faecalis NBRC12964
Enterococcus faecalis NBRC12965
Enterococcus faecalis NBRC12966
Enterococcus faecalis NBRC12967
Enterococcus faecalis NBRC12968
Enterococcus faecalis NBRC12969
Enterococcus faecalis NBRC12970
Enterococcus faecalis NBRC100480
Enterococcus faecalis NBRC100482
Enterococcus faecalis NBRC100483
Enterococcus faecalis NBRC100484
Enterococcus faecalis JCM8902
Enterococcus faecalis JCM8904
Enterococcus faecalis JCM20307
Enterococcus faecalis JCM20313
Enterococcus faecalis JCM31467
Enterococcus faecalis JCM20309
Enterococcus faecalis NRIC0103
Enterococcus faecalis NRIC0110
Enterococcus faecalis NRIC0112
Enterococcus faecalis NRIC1141
Enterococcus faecalis NRIC1142
Enterococcus faecalis NRIC1143
Enterococcus faecalis NRIC1746
Enterococcus faecalis NRIC1751
Enterococcus faecalis NRIC1783
【0029】
本発明におけるエンテロコッカス・フェカリス菌としては、プラズマサイトイド樹状細胞の活性化能力が特に高いという観点から、以下が好ましい。
Enterococcus faecalis NBRC3971
Enterococcus faecalis NBRC3989
Enterococcus faecalis NBRC12580
Enterococcus faecalis NBRC12964
Enterococcus faecalis NBRC12965
Enterococcus faecalis NBRC12966
Enterococcus faecalis NBRC12967
Enterococcus faecalis NBRC12968
Enterococcus faecalis NBRC12969
Enterococcus faecalis NBRC100480
Enterococcus faecalis NBRC100482
Enterococcus faecalis NBRC100483
Enterococcus faecalis NBRC100484
【0030】
上記で例示された乳酸菌は、独立行政法人製品評価技術基盤機構(https://www.nite.go.jp/)、理化学研究所バイオリソース研究センター(https://web.brc.riken.jp/ja/)、又は東京農業大学菌株保存室(https://www.nodai.ac.jp/)から入手することができる。
【0031】
なお、本発明においては、上記で例示された乳酸菌だけではなく、該乳酸菌株と同等の菌株も包含する。ただし、本発明における乳酸菌はこれらに限定されない。
本発明において「同等の菌株」とは、菌株名が異なっていても、上記で例示された乳酸菌株から由来している菌株、上記で例示された乳酸菌株が由来する菌株、又は上記で例示された乳酸菌株の子孫である菌株を包含する。
【0032】
上記で例示された乳酸菌株と同等の菌株は、他の菌株保存機関に保存されている場合もある。
例えば、「Enterococcus faecalis NBRC100480」と同等の菌株として、「Enterococcus faecalis NBRC100481」、「Enterococcus faecalis JCM 5803」、「Enterococcus faecalis JCM 8726」等が挙げられる。
そのため、本発明における「Enterococcus faecalis NBRC100480」は、これらの同等の菌株も包含する。
【0033】
本発明におけるエンテロコッカス・フェカリス菌は、生菌であってもよく、死菌(殺菌処理を施されたもの等)であってもよい。
【0034】
本発明におけるエンテロコッカス・フェカリス菌の形態は特に限定されず、培養物、培養濃縮物、乾燥物等であり得る。
培養物の濃縮方法としては、膜濾過、遠心分離等が挙げられる。
乾燥方法としては、凍結乾燥、スプレードライ、ドラムドライ等が挙げられる。
【0035】
本発明におけるエンテロコッカス・フェカリス菌は、必要に応じて、超音波破砕処理、酵素添加処理、夾雑物(色素、タンパク質等)除去処理、凍結処理等が施されていてもよい。
夾雑物除去処理としては、活性炭、イオン交換樹脂、合成吸着剤等を用いた方法等が挙げられる。
【0036】
本発明の免疫賦活用組成物における、本発明におけるエンテロコッカス・フェカリス菌(つまり、20μg/mLの該エンテロコッカス・フェカリス菌と5×10個/mLの骨髄細胞由来のプラズマサイトイド樹状細胞とを共培養することで50pg/mL以上のIFN-αを産生する指標で表されるプラズマサイトイド樹状細胞の活性化能を有するエンテロコッカス・フェカリス菌)の含有量は特に限定されない。
本発明におけるエンテロコッカス・フェカリス菌の含有量(菌数)の下限は、本発明の免疫賦活用組成物に対して、1回用量あたり、好ましくは100万個以上、より好ましくは1,000万個以上である。
本発明におけるエンテロコッカス・フェカリス菌の含有量(菌数)の上限は、本発明の免疫賦活用組成物に対して、1回用量あたり、好ましくは10兆個以下、より好ましくは2兆個以下である。
【0037】
(その他の成分)
本発明の免疫賦活用組成物には、本発明におけるエンテロコッカス・フェカリス菌の作用を阻害しない範囲で、飲食品や、医薬品等に含まれ得る任意の成分が含まれていてもよい。
このような成分としては、本発明における要件のいずれか又は全てを満たさないエンテロコッカス・フェカリス菌、乳酸菌培養培地成分、発酵物、免疫賦活剤、賦形剤(デキストリン等)、基剤、乳化剤、溶剤、安定剤等が挙げられる。
これらの成分の種類や配合量は、得ようとする効果等に応じて適宜設定できる。
【0038】
<免疫賦活用組成物の製造方法>
本発明の免疫賦活用組成物の製造方法は特に限定されず、得ようとする免疫賦活用組成物の形態等に応じて適宜選択できる。
【0039】
本発明の免疫賦活用組成物の形態としては、飲食品(栄養補助食品、健康補助食品、栄養調整食品、保健機能食品、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品等)、化粧品、医薬(医薬品、医薬部外品等)等が挙げられる。
【0040】
飲食品としては、ヒト用飲食品、非ヒト動物用又は養魚用飼料、ペットフード等を包含する。
具体的には、以下が挙げられる;
飲料類(日本茶、ウーロン茶、紅茶、コーヒー、ジュース、加工乳、スポーツドリンク等)、
ベーカリー類(パン、ピザ、パイ等)、
洋菓子類(クッキー、クラッカー、ビスケット、ケーキ、カステラ等)、
麺類(うどん、そば、ラーメン等)、
パスタ類(スパゲティー、マカロニ等)、
スナック菓子類(おかき、ポテトチップス、スナック等)、
菓子類(ハードキャンディー、ソフトキャンディー、キャラメル、ガム、チョコレート等)、
冷菓(アイスクリーム、シャーベット等)、
乳製品(クリーム、チーズ、ムース、粉乳、練乳、乳飲料等)、
洋生菓子類(ゼリー、プリン、ムース、ヨーグルト、バタークリーム、カスタードクリーム等)、
和菓子類(求肥、ういろう、もち、おはぎ、どら焼き等)、
果実・野菜の加工食品類(ジャム、マーマレード、シロップ漬け、糖果等)、
ペースト類(フラワーペースト、フルーツペースト、ピーナッツペースト等)、
漬物類(らっきょ漬け、福神漬け、キムチ等)、
複合調味料(醤油、ソース、たれ、麺つゆ、だしの素、スープの素等)、
調味料類(シチューの素、スープの素、カレーの素、マヨネーズ、ケチャップ等)、
レトルトや缶詰食品(カレー、シチュー、スープ等)、
冷凍食品や冷蔵食品(ハム、ソーセージ、ベーコン、ハンバーグ、ミートボール、コロッケ、餃子、ピラフ、おにぎり等)、
水産加工食品(ちくわ、かまぼこ等)、
米飯類(リゾット、寿司等)、
乳児用ミルク、離乳食、ベビーフード、ペットフード、ペット用ガム、動物用飼料等。
【0041】
化粧品としては、例えば、以下が挙げられる;
洗浄剤(石けん、ボディーシャンプー、クレンジングクリーム、洗顔料等)、
ローション、
クリーム(洗顔フォーム、バニシングクリーム、コールドクリーム、エモリエントクリーム、マッサージクリーム等)、
乳液、美容液、パック、浴用剤等。
【0042】
医薬としては、経口投与剤、血管内投与剤、経腸投与剤、経皮投与剤、腹腔内投与剤等が挙げられる。
剤形としては、特に限定されないが、例えば、散剤、粉剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、丸剤、坐剤、液剤、注射剤等が挙げられる。
【0043】
<免疫賦活用組成物の用途>
本発明の免疫賦活用組成物の用途は特に限定されず、免疫の賦活化を要する任意の対象に投与できる。
【0044】
本発明の免疫賦活用組成物の投与量は、投与対象の種類や状態等に応じて適宜設定できる。
【0045】
本発明の免疫賦活用組成物の投与頻度や投与期間は、投与対象の種類や状態等に応じて適宜設定できる。
例えば、本発明の免疫賦活用組成物は毎日又は数日(例えば、2~4日)おきに投与してもよい。
例えば、本発明の免疫賦活用組成物は数日~数年にわたって投与してもよい。
【0046】
本発明は、良好な免疫賦活効果を有するため、投与対象に免疫機能の改善をもたらし得る。例えば、本発明の免疫賦活用組成物は、風邪様症状予防剤や、ウイルス感染予防剤として機能し得るため、健康な体調の維持に役立てることができる。
【0047】
本発明において「風邪様症状」とは、鼻水、倦怠感、疲労感、寒気、のどの痛み、咳等を包含する。
【0048】
本発明において「ウイルス感染」とは、例えば、ヘルペスウイルス、インフルエンザウイルス、コロナウイルス、麻疹ウイルス、ノロウイルス等のウイルスへの感染を包含する。
【0049】
<免疫賦活に用いるエンテロコッカス・フェカリス菌のスクリーニング方法>
本発明は、上述のとおり、エンテロコッカス・フェカリス菌のうち一部の菌が、プラズマサイトイド樹状細胞の活性化作用が強く、その結果、IFN-αの産生能も特に高いという新規な知見に基づく。
したがって、本発明は、プラズマサイトイド樹状細胞の活性化、及び/又は、IFN-α産生量の増加を指標とする、免疫賦活に用いるエンテロコッカス・フェカリス菌のスクリーニング方法も包含する。
【0050】
本発明のスクリーニング方法は、エンテロコッカス・フェカリス菌に分類される候補菌株群から目的菌株を選抜する選抜工程を含む。
該選抜工程における候補菌株群の選抜基準は、プラズマサイトイド樹状細胞の活性化(IFN-α産生量の増加)である。
【0051】
選抜工程は、例えば、候補菌群の培養、培養上清の分析等を含み得る。
【0052】
候補菌群の培養方法としては、乳酸菌の任意の培養方法を採用し得る。例えば、実施例の<乳酸菌株のスクリーニング>の項に示した方法であってもよい。
【0053】
培養上清の分析の方法としては、測定対象(IFN-α濃度等)に応じた方法を採用し得る。例えば、市販のキットを用いたELISA法であってもよい。
【0054】
選抜基準は特に限定されないが、例えば、20μg/mLのエンテロコッカス・フェカリス菌と5×10個/mLの骨髄細胞由来のプラズマサイトイド樹状細胞とを共培養することで50pg/mL以上のIFN-αを産生する指標で表されるプラズマサイトイド樹状細胞の活性化能を有するという要件を満たすように選抜してもよい。
【実施例
【0055】
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0056】
<乳酸菌の準備>
以下の乳酸菌を準備した。
エンテロコッカス・フェカリス菌(Enterococcus faecalis):59株
エンテロコッカス属に属する乳酸菌(エンテロコッカス・フェカリス菌以外):3株
【0057】
エンテロコッカス・フェカリス菌は、独立行政法人製品評価技術基盤機構から分譲されたもの、又は自然界より単離したものである。
【0058】
エンテロコッカス属に属する乳酸菌(エンテロコッカス・フェカリス菌以外)は、独立行政法人製品評価技術基盤機構から分譲されたものである。具体的には、エンテロコッカス・フェシウム菌(Enterococcus faecium)、エンテロコッカス・デュランス菌(Enterococcus durans)、又はエンテロコッカス・カセリフラバス菌(Enterococcus casseliflavus)を用いた。
【0059】
<乳酸菌の菌末化>
各乳酸菌を、乳酸菌培養培地(ぶどう糖2質量%、及び市販の酵母エキス2質量%を含む。)で30℃又は37℃で、9~24時間培養した。
培養中、水酸化ナトリウムを用いて培地のpHを6.5に制御しつつ、100rpmで攪拌した。
培養後の菌体を遠心分離で集菌した後、培地上清を水に置換し、遠心分離を繰り返すことで、遠心分離後の上清のBrix値が0.2%以下になるまで洗浄した。
洗浄後の菌体を集菌した後、105℃で30分殺菌した。
殺菌した菌体を凍結乾燥することで菌末を得た。
【0060】
<乳酸菌株のスクリーニング>
以下の方法で、各乳酸菌株のIFN-α産生能を評価した。
【0061】
(プラズマサイトイド樹状細胞と乳酸菌との共培養)
マウス(C57BL/6JJmsSlc)の大腿骨から、常法に従って骨髄細胞を回収し、ACK lysing buffer(Thermo Fisher SCIENTIFIC)で赤血球除去処理を行った。
得られた骨髄細胞を、細胞培養培地中に、1×10個/mLとなるように懸濁し、COインキュベーターで、5%CO、37℃の培養条件で培養した。
培養開始から4日目に、3/7量の培地を交換した。
培養開始から8日目に、細胞培養培地に懸濁した各菌末を添加し、骨髄細胞の終濃度を5×10個/mLに調整し、かつ乳酸菌の終濃度を20μg/mLに調整した。
さらに、5%CO、37℃で48時間培養後、培養上清を回収した。
【0062】
なお、細胞培養培地としては、RPMI-1640培地(Sigma-Aldrich)に、10% FCS(ウシ胎児血清、biowest)、10mM HEPES(Thermo Fisher SCIENTIFIC)、5,000IU/μg ペニシリン・ストレプトマイシン(Sigma-Aldrich)、50μM β-メルカプトエタノール(富士フイルム和光純薬株式会社)、及び、100ng/mL Flt3-L(Escherichia coliを用いた合成物、Miltenyi Biotec)を添加したものを使用した。
上記培地成分のうち、「Flt3-L」は、プラズマサイトイド樹状細胞を誘導するためのサイトカインである。
【0063】
(IFN-α産生量の測定)
IFN-α測定キット(PBL)を用いて、ELISA法により、各培養上清中のIFN-α産生量を測定した。
【0064】
また、以下の試料中のIFN-α産生量も測定した。以下の試料は、上記「(プラズマサイトイド樹状細胞と乳酸菌との共培養)」と同様の操作によって得られたものである。
陰性対照:細胞培養培地のみ
OK-432:各菌末の代わりに「ピシバニール(登録商標)」を添加して得られた試料である。「ピシバニール(登録商標)」は、乳酸球菌(ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes))を有効成分として含む、市販の抗悪性腫瘍剤及びリンパ管腫治療剤である。
【0065】
(IFN-α産生量の測定結果)
IFN-α産生量の測定結果の一部を表1に示す。IFN-α産生量が高いほど、プラズマサイトイド樹状細胞の活性が高いことを意味する。
エンテロコッカス・フェカリス菌のうち、表1の「実施例」に示した菌のみが、高いIFN-α産生能を有し、プラズマサイトイド樹状細胞を高度に活性化することがわかった。例えば、スクリーニングした59株のうち、50pg/mL以上のIFN-αを産生した株は13株のみで、そのうち、わずか3株が200pg/mL以上ものIFN-αを産生し、高度にプラズマサイトイド樹状細胞を活性化した。
他方で、多くのエンテロコッカス・フェカリス菌は、例えば、「比較例」の「NBRC 12970」のようにIFN-α産生能が低く、プラズマサイトイド樹状細胞の活性化能力が低かった。
【0066】
また、エンテロコッカス属に属する乳酸菌であっても、エンテロコッカス・フェカリス菌以外はいずれもIFN-α産生能が低く、プラズマサイトイド樹状細胞の活性化能力が低かった。
【0067】
「OK-432」は、マクロファージの増加効果、ナチュラルキラー細胞等の活性化効果、各種サイトカイン(IL-1、IL-2、IL-8、IL-12、IFN-γ、TNF-α等)の産生誘導効果を有することが知られており、樹状細胞に感作し得ると予測できる。
しかし、予測に反し、「OK-432」には、IFN-α産生能がほぼ認められず、プラズマサイトイド樹状細胞を活性化しないことが明らかとなった。
【0068】
以上より、プラズマサイトイド樹状細胞の高度な活性化能は、多くのエンテロコッカス・フェカリス菌に認められなかったことから、任意の菌株が備えているわけではないことがわかった。
他方で、一部のエンテロコッカス・フェカリス菌は、プラズマサイトイド樹状細胞の高度な活性化能を有し、かかる点は極めて意外な知見である。
【0069】
【表1】
【0070】
<プラズマサイトイド樹状細胞の確認>
以下の方法で、上記<乳酸菌株のスクリーニング>における骨髄細胞の培養系により、プラズマサイトイド樹状細胞が実際に誘導されていることを確認した。
【0071】
(NBRC100480株の染色)
0.1mg/mLの蛍光標識試薬「Fluorescein isothiocyanate isomer I」(Sigma-Aldrich)を、0.1M 炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.2)に懸濁し、FITC染色液を作製した。
1mg/mLのエンテロコッカス・フェカリス菌(NBRC100480株)を、FITC染色液に懸濁し、常温、暗環境下で60分間インキュベートした。
FITC染色したNBRC100480株を、PBS(-)(日水製薬株式会社)で3回洗浄後、細胞培養培地に再懸濁し、染色したNBRC100480株を得た。
【0072】
(プラズマサイトイド樹状細胞及び乳酸菌貪食の顕微鏡観察)
染色したNBRC100480株を用いて上記「(プラズマサイトイド樹状細胞と乳酸菌との共培養)」と同様に骨髄細胞の調製を行い、FITC染色したNBRC100480株を添加し、3時間培養を行った。
培養した細胞の培地上清をアスピレーターで吸い取り、PBS(-)で置換した後、「PE-Cy5」(登録商標)標識抗マウスCD45R/B220ラット抗体(RA3-6B2)(BD)を用いて、常温、暗環境下で30分間、培養した細胞に抗体で標識を行った。その後、PBS(-)で3回洗浄した後、光学顕微鏡(モデル:MT4300L、メイジテクノ株式会社)で、明視野観察法及び蛍光観察法(480nmで励起)に基づき観察した。
【0073】
(フローサイトメトリー分析)
NBRC100480株を用いて上記「(プラズマサイトイド樹状細胞と乳酸菌との共培養)」と同様に培養を行い、NBRC100480株で刺激をかけた細胞培養物を得た。
あわせて、「(IFN-α産生量の測定)」と同様に培養を行い、陰性対照の細胞培養物も準備した。
それぞれの細胞培養物を、PBS(-)で懸濁し、下記の抗体で標識した。あわせて、下記のアイソタイプコントロールも準備した。各抗体との反応を、常温、暗環境下で30分行った後、PBS(-)で洗浄し、「GUAVA PCA」(MERCK)を用いてフローサイトメトリー分析を行った。
[標識抗体]
「PE-Cy5」(登録商標)標識抗マウスCD45R/B220ラット抗体(RA3-6B2)(BD)
抗CD11c抗体(KB90)(abcam)
「Cy3」(登録商標)標識抗マウスIgG H&L抗体(abcam)
[アイソタイプコントロール]
「PE-Cy5」(登録商標)標識ラットIgG2a,κアイソタイプコントロール抗体(R35-95)(BD)
マウスIgG1,κモノクローナルアイソタイプコントロール抗体(15-6E10A7)(abcam)
【0074】
(顕微鏡観察の結果)
明視野観察法での観察の結果、プラズマサイトイド樹状細胞の特徴である球状の細胞を確認した。さらに、活性化されたプラズマサイトイド樹状細胞に生じる突起も確認した。
蛍光観察法での観察の結果、明視野観察法での観察でプラズマサイトイド樹状細胞の特徴が認められた細胞に、「PE-Cy5」による蛍光を確認し、B220が発現していることを確認した。B220はマウス由来の樹状細胞のうち、プラズマサイトイド樹状細胞に特徴的に発現するマーカーである。この結果から、観察した細胞がプラズマサイトイド樹状細胞であることを確認した。さらに、FITC染色したNBRC100480株がプラズマサイトイド樹状細胞に貪食されている様子も確認した。
【0075】
また、本試験系では、プラズマサイトイド樹状細胞だけではなく、ミエロイド系樹状細胞も生育し得る。
実際、明視野観察法での観察の結果、ミエロイド系樹状細胞と思われる枝状の突起を有する細胞を観察した。
蛍光観察法での観察の結果、ミエロイド系樹状細胞と思われる細胞には「PE-Cy5」による蛍光は確認できなかったため、B220は発現していないことが確認できた。さらに、FITC染色したNBRC100480株がミエロイド系樹状細胞に貪食されている様子を確認した。
【0076】
以上より、NBRC100480株がプラズマサイトイド樹状細胞に認識され、貪食されることで、活性化していることを確認した。
【0077】
(フローサイトメトリー分析の結果)
表2にフローサイトメトリーの結果を示す。アイソタイプコントロールの測定結果に基づき設定した蛍光強度より、CD11cB220細胞をプラズマサイトイド樹状細胞として解析した。
陰性対照では、プラズマサイトイド樹状細胞が全体細胞に対して1.3%存在していた。このことから、骨髄細胞からプラズマサイトイド樹状細胞が誘導されていることを確認した。
また、NBRC100480株の細胞培養物では、プラズマサイトイド樹状細胞が全体細胞に対して3.3%存在していた。この値は、陰性対照における値よりも高い。したがって、NBRC100480株がプラズマサイトイド樹状細胞を刺激し、活性化することにより、その存在割合が増加することを確認した。
【0078】
【表2】
【0079】
<ヒトの唾液中分泌型IgA測定試験>
上記<乳酸菌株のスクリーニング>において、高いIFN-α産生能が確認されたエンテロコッカス・フェカリス菌から免疫賦活用組成物を調製した。該免疫賦活用組成物をヒトに投与し、唾液中分泌型IgA(s-IgA)量を評価した。
【0080】
(免疫賦活用組成物の作製)
エンテロコッカス・フェカリス菌(NBRC100480株)の菌末の菌数を、「バクテリアカウンター」(サンリード硝子有限会社)を用いて測定した。
次いで、菌数が1,000億個となるように、菌末を、賦形剤であるデキストリン(「デキストリンNSD300」、サンエイ糖化株式会社)中に分散させ、乳酸菌含有試験食品を作製した。
該乳酸菌含有試験食品は、本発明の免疫賦活用組成物に相当する。
【0081】
(免疫賦活用組成物の投与)
健康な20~50歳の男女(8名)に、免疫賦活用組成物を2週間毎日摂取させた。
摂取前、及び摂取2週間後の各時点で被験者から唾液を採取した。
唾液採取は、朝食後2時間を経過しており、かつ、唾液採取前1時間は飲食をしていない状態で、午前10時に行った。唾液採取には唾液採取キット(SALIMETRICS)を用いて流延で行った。
【0082】
(唾液中分泌型IgA量の測定)
各唾液中の分泌型IgA量を、s-IgA測定キット(Immundiagnostik GmbH)を用いて、ELISA法で測定した。
測定結果について、「BellCurve for Excel(version 3.21)」(Social Survey Research Information Co., Ltd.)を用いて、t検定を行い、統計解析した(*有意差あり、p<0.05)。
【0083】
(唾液中分泌型IgA量の測定結果)
唾液中分泌型IgA量の測定結果を表3に示す。
摂取前に平均6.0mg/dLであった唾液中分泌型IgA量が、摂取2週間後には平均11.4mg/dLまで有意(P<0.05)に増加した。
この結果から、本発明の免疫賦活用組成物は、唾液中の分泌型IgA量を増加させることが示された。
【0084】
また、被験者に対し、摂取前と比べて摂取2週間後の体調の変化に関するアンケートもあわせて行った。
その結果、摂取前と比べ、摂取2週間後では、8名中5名が鼻水、倦怠感、疲労感、寒気、のどの痛み、咳等が軽減されたと回答した。
また、残りの3名も良好な体調を維持していた。
【0085】
以上から、本発明の免疫賦活用組成物を摂取することで、風邪様症状の緩和効果やウイルス感染予防効果や、健康な体調の維持効果が期待できる。
【0086】
【表3】

【要約】
【課題】本発明の課題は、良好な免疫賦活作用を有するエンテロコッカス・フェカリス菌含有組成物を提供することである。
【解決手段】本発明は、エンテロコッカス・フェカリス菌であって、20μg/mLの前記エンテロコッカス・フェカリス菌と5×10個/mLの骨髄細胞由来のプラズマサイトイド樹状細胞とを共培養することで50pg/mL以上のIFN-αを産生する指標で表されるプラズマサイトイド樹状細胞の活性化能を有するエンテロコッカス・フェカリス菌を含む、免疫賦活用組成物を提供する。
【選択図】なし