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特許6999066超伝導線材用Sn・Ti合金粉末、その製造方法、及びそれを利用した超伝導線材の製造方法
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  • 特許-超伝導線材用Sn・Ti合金粉末、その製造方法、及びそれを利用した超伝導線材の製造方法 図1
  • 特許-超伝導線材用Sn・Ti合金粉末、その製造方法、及びそれを利用した超伝導線材の製造方法 図2A
  • 特許-超伝導線材用Sn・Ti合金粉末、その製造方法、及びそれを利用した超伝導線材の製造方法 図2B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-23
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】超伝導線材用Sn・Ti合金粉末、その製造方法、及びそれを利用した超伝導線材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 9/08 20060101AFI20220111BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20220111BHJP
   C22C 13/00 20060101ALI20220111BHJP
   C22C 1/00 20060101ALI20220111BHJP
   B22F 5/12 20060101ALI20220111BHJP
   C22C 1/04 20060101ALI20220111BHJP
   B22F 3/16 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
B22F9/08 A
H01B13/00 561Z
C22C13/00
C22C1/00 Q
B22F5/12
C22C1/04 E
B22F3/16
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021514992
(86)(22)【出願日】2020-09-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 KR2020012805
(87)【国際公開番号】W WO2021066376
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2021-03-15
(31)【優先権主張番号】10-2019-0122726
(32)【優先日】2019-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0118690
(32)【優先日】2020-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521106304
【氏名又は名称】ケー.エー.ティー.株式会社
【氏名又は名称原語表記】K.A.T.Co.,LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100141173
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 啓一
(72)【発明者】
【氏名】イム ジェドク
(72)【発明者】
【氏名】キム ジマン
(72)【発明者】
【氏名】キム ホンファン
(72)【発明者】
【氏名】シン イクサン
(72)【発明者】
【氏名】ナ シンヘ
【審査官】中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-317232(JP,A)
【文献】特開2003-331669(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0025503(KR,A)
【文献】中国特許第100366773(CN,C)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 9/08
H01B 13/00
C22C 13/00
C22C 1/00
B22F 5/12
C22C 1/04
B22F 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Sn・Ti合金を溶融し、Sn・Ti金属間化合物の平均粒径が3μm以下に製造され、
全体合金において、前記Tiの含有率が0.5~3重量%である超伝導線材用Sn・Ti合金粉末の製造方法において、
Sn・Ti合金またはSn・Ti合金加工材を溶融させるSn・Ti合金溶融段階と、
Sn・Ti合金溶湯を、不活性ガス雰囲気内において、ノズルを介して噴射して凝固させるSn・Ti合金粉末形成段階と、を含んでなることを特徴とする超伝導線材用Sn・Ti合金粉末の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の超伝導線材用Sn・Ti合金粉末を利用しての超伝導線材の製造方法において、
Sn・Ti合金粉末をプレス加工、粉末押出加工またはCuチューブ内への装入後、引き抜き加工を介し、サブエレメントまたはスペーサを作製するサブエレメントまたはスペーサの形成段階と、
作製されたサブエレメントをCuチューブ内に設置する組み込み段階と、
引き抜きのような線材加工処理を行い、超伝導線材を完成させる線材製造段階と、を含んで構成されることを特徴とする超伝導線材用Sn・Ti合金粉末を利用した超伝導線材の製造方法。
【請求項3】
Sn・Ti合金を溶融し、Sn・Ti金属間化合物の平均粒径が3μm以下に製造され、
全体合金において、前記Tiの含有率が0.5~3重量%である超伝導線材用Sn・Ti合金粉末の製造方法において、
SnとTiとを基とし、Nb、Ta、Cu、Zr、Hf、V、Zn、Inのうちから選択された1以上の材料を追加して溶融させるSn・Ti合金溶融段階と、
Sn・Ti合金溶湯を、不活性ガス雰囲気内において、ノズルを介して噴射して凝固させるSn・Ti合金粉末形成段階と、を含んでなることを特徴とする超伝導線材用Sn・Ti合金粉末の製造方法。
【請求項4】
全体合金において、Nb、Ta、Cu、Zr、Hf、V、Zn、Inのうちから選択された1以上の材料は、0.1~2重量%であることを特徴とする請求項3に記載の超伝導線材用Sn・Ti合金粉末の製造方法。
【請求項5】
請求項3または4に記載の超伝導線材用Sn・Ti合金粉末を利用しての超伝導線材の製造方法において、
Sn・Ti合金粉末に対する、プレス加工、粉末押出加工またはCuチューブ内への装入後、引き抜き加工を介し、サブエレメントまたはスペーサを作製するサブエレメントまたはスペーサの形成段階と、
作製されたサブエレメントをCuチューブ内に設置する組み込み段階と、
引き抜きのような線材加工処理を行い、超伝導線材を完成させる線材製造段階と、を含んで構成されることを特徴とする超伝導線材用Sn・Ti合金粉末を利用した超伝導線材の製造方法。
【請求項6】
Sn・Ti合金を溶融し、Sn・Ti金属間化合物の平均粒径が3μm以下に製造され、
全体合金において、前記Tiの含有率が0.5~3重量%である超伝導線材用Sn・Ti合金粉末の製造方法において、
Sn・Ti合金を溶融させるSn・Ti合金溶融段階と、
Sn・Ti合金溶湯を、不活性ガス雰囲気内において、ノズルを介して噴射して凝固させるSn・Ti合金粉末形成段階と、
Sn・Ti合金粉末と共に、Nb、Ta、Cu、Zr、Hf、V、Zn、Inのうちから選択された1以上の材料を追加し、プレス加工、粉末押出加工またはCuチューブ内への装入後、引き抜き加工を介し、サブエレメントまたはスペーサを作製するサブエレメントまたはスペーサの形成段階と、
作製されたサブエレメントをCuチューブ内に設置する組み込み段階と、
引き抜きのような線材加工処理を行い、超伝導線材を完成させる線材製造段階と、を含んで構成されることを特徴とする超伝導線材用Sn・Ti合金粉末を利用した超伝導線材の製造方法。
【請求項7】
全体合金において、Nb、Ta、Cu、Zr、Hf、V、Zn、Inのうちから選択された1以上の材料は、0.1~2重量%であることを特徴とする請求項6に記載の超伝導線材用Sn・Ti合金粉末の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超伝導線材用Sn・Ti合金粉末、その製造方法、及びそれを利用した超伝導線材の製造方法に係り、さらに詳細には、Sn系合金内に分散されたSn・Ti粒子の大きさを最小化させ、超伝導特性にすぐれる超伝導線材用Sn・Ti合金粉末、その製造方法、及びそれを利用した超伝導線材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超伝導現象とは、電流に対する抵抗がなくなり、物質材料内部において、電子の衝突によって生じる抵抗による熱損失が消える現象であり、多くの金属の場合、液体ヘリウム温度と液体窒素温度との範囲である-265℃から-196℃まであたりの低温において、急に抵抗が「0」になるのであるが、このときの物質を超電導体と言い、超伝導現象が起きる温度を「臨界温度」と言う。
【0003】
前述のところのような超伝導現象が示される超電導体の最も重要な特徴は、電流の流れを妨害する電気抵抗がない無抵抗体であるという点、及び磁場を通過させない反磁性体であるという点である。
【0004】
一般的に、全ての物質は、外部磁場の方向に配列されながら、全体的に磁石に引っ張られる分子磁石からなり、そのような分子磁石が磁場方向に配列される効果が非常に弱く、日常生活においては、磁石に引っ張られる現象がほとんど観察されない一般的な物質を常磁性体と言い、前述のような特性が強く、磁石に強く引っ張られる物質、すなわち、鉄のような物質を強磁性体と言う。
【0005】
しかし、反磁性体は、前述の分子磁石がないために、その内部の電子が、外部磁場に対し、電磁気誘導による誘導電流を発生させることになり、該誘導電流が外部磁場を遮断することにより、磁石に押される方向に力を受けることになる。
【0006】
すなわち、超電導体は、電気抵抗が「0」であるだけではなく、前述の反磁性特性が非常に強く、外部磁場を完全に遮断することにより、物体内部の磁場も「0」になる物質であり、超電導体をコイルとして使用する場合には、抵抗熱損失がないために、弱い電流でも、非常に強い磁場を形成させることができる電磁石を作るだけではなく、反磁性体である超電導体上に磁石を位置させることになれば、磁石の磁場が超電導体を通過することができずに排斥されることにより、磁石を浮上させることができる効果を得ることもできる。
【0007】
前述のように、電気抵抗がないと共に、反磁性特性を有する超伝導物質は、高温超電導体と低温超電導体とに区分されうるが、電子は、液体窒素温度(77K)近辺において、後者は、液体ヘリウム温度(4K)近辺において、超伝導現象が起きる物質であり、そのような超伝導物質は、金属、有機物、セラミックス、化合物などから1千種以上が発見され、金属系超伝導物質であるNb・Ti合金、化合物系超伝導物質であるNbSn、NbAlのような5~6種ほどが現在実用化されて使用されている。
【0008】
そして、前述の超伝導線材をコイル状に巻き取り、大電流を流すことにより、強力な磁場を発生させる超伝導磁石が現在利用されており、今後の活発な応用が期待されている装置としては、医療用磁気映像診断装置(MRI)、各種物性分析装置として使用される核磁気共鳴装置(NMR)、蛋白質物質分析装置(FT-ICR)、粒子加速器、磁気浮上列車、及び核融合炉のトカマク装置などを挙げることができ、そのような分野に利用される超伝導マグネットの代表的な超伝導線材としては、NbSn系超伝導線材がある。
【0009】
前記NbSn系超伝導線材は、銅(Cu)基地内に、極細径のNbSnフィラメント多数が配列された構造であり、それを製造する方法としては、内部拡散法、ブロンズ法、ゼリーロール法、粉末法、外部拡散法などが知られている。
【0010】
NbSn系超伝導線材は、銅を基地にした金属内部に、Nbフィラメントを適切な位置に配置挿入して押出した押出材の中央部を孔を開けた後、その孔に、SnまたはSn系合金を挿入させた状態で、引き抜き加工を反復実施した前駆体を熱処理することにより、前駆体内部に挿入された前記Nbフィラメントと、SnまたはSn系合金との相互拡散反応により、Nbフィラメントを中心に、その外周面部位に超伝導物質であるNbSn化合物が形成されるようにする内部拡散法によって主に製造されてきた。
【0011】
そのように、銅基地金属に多数の孔を開け、Nbフィラメントを挿入させた状態で、さまざまな工程の押出により、所定直径の棒材にし、該棒材の中心部に孔を開けた後、その孔に、SnまたはSn系合金をコアとして挿入することにより、銅基地金属内において、中央部のSnまたはSn系合金を中心にその周囲に多数のNbフィラメントが挿入配列されたものを「サブエレメント(sub-element)」と言う。
【0012】
すなわち、NbSn超伝導線材は、CuとNbフィラメントとSn線材とを組み合わせて作られたサブエレメント1本を反復引き抜き加工し、1個の前駆体にした後、熱処理して作われ、銅チューブ内部に、前記サブエレメントを引き抜き加工した前駆体多数を密集挿入させた状態で、それを反復引き抜きした後で熱処理することにより、多数の銅線が密集挿入されている電線のように、1個の銅チューブ内部に、多数本の極細径超伝導線材が密集配列された超伝導線材1本に製造することもできる。
【0013】
このとき、前記サブエレメントは、銅チューブ内部に多数が挿入されうるように、多様な断面形状の前駆体に引き抜きされ、銅チューブ内部に挿入された多数前駆体間の隙間をなくすために、前駆体と前駆体との間には、SnまたはSn系合金がスペーサとしても挿入される。
【0014】
前述のような内部拡散法で、NbSn超伝導線材を製造するためのサブエレメントに使用されるSn系合金が、米国特許6,548,187号に開示されているが、該Sn系合金は、Tiが5wt%以下に添加され、1,300~1,500℃の温度に加熱されたSn溶湯を鋳造して製造するものの、Sn・Ti化合物の粒子サイズ、すなわち、長さを平均5~20μm、最大30μm以下に調節して作られたものであり、前述のSn系合金を使用して製造されたNbSn超伝導線材の場合、臨界電流密度が、12Tにおいて650A/mmから750A/mmまで向上したという報告がある。
【0015】
しかし、前述のような形態のSnTi粒子が分布されたSn系合金を、NbSn超伝導線材用サブエレメントに使用して熱処理を施す場合、前記SnTi粒子と、Sn系合金周囲を取り囲んでいるNbフィラメントとの拡散が十分ではなく、超伝導特性が低下してしまうという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
前述のような問題点を解決するために発明されたものであり、本発明は、Sn系合金内に分散されたSn・Ti粒子の大きさを最小化させ、Nb、Ta、Cu、Zr、Hf、V、Zn、Inなどを合金に追加することにより、超伝導特性及び機械的特性を向上させる超伝導線材用Sn・Ti合金粉末、その製造方法、及びそれを利用した超伝導線材の製造方法を提供するところにその目的がある。
【0017】
また、本発明は、加工性及び生産性を高めさせる超伝導線材用Sn・Ti合金粉末、その製造方法、及びそれを利用した超伝導線材の製造方法を提供するところに目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前述のような課題を解決するための手段として、本発明である超伝導線材用Sn・Ti合金粉末は、
Sn・Ti合金を溶融し、Sn・Ti金属間化合物の平均粒径が3μm以下に製造され、
全体合金において、前記Tiの含有率が0.5~3重量%であることを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、前記超伝導線材用Sn・Ti合金粉末の製造方法に係わるものであり、
Sn・Ti合金またはSn・Ti合金加工材を溶融させるSn・Ti合金溶融段階と、
Sn・Ti合金溶湯を、不活性ガス雰囲気内において、ノズルを介し、噴射させて凝固させるSn・Ti合金粉末形成段階と、を含んでなることを特徴とする。
【0020】
また、Sn及びTiを基にし、Nb、Ta、Cu、Zr、Hf、V、Zn、Inのうちから選択された1以上の材料を追加して溶融させるSn・Ti合金溶融段階と、
Sn・Ti合金溶湯を、不活性ガス雰囲気内において、ノズルを介し、噴射させて凝固させるSn・Ti合金粉末形成段階と、を含んでなることを特徴とする。
【0021】
また、全体合金において、Nb、Ta、Cu、Zr、Hf、V、Zn、Inのうちから選択された1以上の材料は、0.1~2重量%であることを特徴とする。
【0022】
また、本発明は、前記超伝導線材用Sn・Ti合金粉末を利用する、超伝導線材の製造方法に係わるものであり、Sn・Ti合金粉末に対する、プレス加工、粉末押出加工、またはCuチューブ内への装入後、引き抜き加工を介し、サブエレメントまたはスペーサを作製するサブエレメントまたはスペーサの形成段階と、
作製されたサブエレメントをCuチューブ内に設置する組み込み段階と、
引き抜きのような線材加工処理を行い、超伝導線材を完成する線材製造段階と、を含んで構成されることを特徴とする。
【0023】
また、Sn・Ti合金粉末と共に、Nb、Ta、Cu、Zr、Hf、V、Zn、Inのうちから選択された1以上の材料を追加し、プレス加工、粉末押出加工、またはCuチューブ内への装入後、引き抜き加工を介し、サブエレメントまたはスペーサを作製するサブエレメントまたはスペーサの形成段階と、
作製されたサブエレメントをCuチューブ内に設置する組み込み段階と、
引き抜きのような線材加工処理を行い、超伝導線材を完成する線材製造段階と、を含んで構成されることを特徴とする。
【0024】
また、全体合金において、Nb、Ta、Cu、Zr、Hf、V、Zn、Inのうちから選択された1以上の材料は、0.1~2重量%であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
前述のような課題解決手段を介し、本発明であるSn系合金内に分散されたSn・Ti金属間化合物粒子の大きさを、平均粒径3μm以下に最小化させ、Nb、Ta、Cu、Zr、Hf、V、Zn、Inなどを合金に追加することにより、超伝導特性及び機械的特性を向上させることができ、加工性及び生産性を高めることができるというような利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明による超伝導線材用Sn・Ti合金粉末の製造方法、及びそれを利用した超伝導線材の製造方法を示したブロック図である。
図2A】本発明による超伝導線材用Sn・Ti合金粉末の製造方法を介して製造されたSn・Ti金属間化合物の断面組織写真である。
図2B】従来のSn合金内金属間化合物の断面組織写真である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明による超伝導線材の製造方法の望ましい実施形態について、添付図面を参照しながら具体的に説明する。
【0028】
図1は、本発明による超伝導線材の製造方法を示したブロック図であり、図2A及び図2Bは、それぞれ、本発明による超伝導線材用Sn・Ti合金粉末の製造方法を介して製造されたSn・Ti金属間化合物断面組織写真であり、従来のSn合金内金属間化合物の断面組織写真である。
【0029】
一般的に、NbSn超伝導線材は、鍛造されたCuビレット(billet)に対し、ガンドリリング(gun-drilling)を介してホールを形成し、該ホールにNbロッド(rod)を挿入させた後、Nbロッド周囲のCu基地に、Nbフィラメントが挿入配列されたサブエレメント(subelement)とスペーサ(spacer)とを切断洗浄したモジュール多数を、拡散防止チューブ内部に密集配列させ、リスタッキングビレット(restacking billet)を作った後それを、引き抜き、伸線、熱処理などの作業を介して製造する。本発明による超伝導線材は、そのような製造過程において、サブエレメントとスペーサとの形成過程に特徴がある。
【0030】
本発明においては、サブエレメントまたはスペーサの製造において、Sn・Ti合金を溶融し、Sn・Ti金属間化合物の平均粒径を3μm以下に製造し、それを、直接サブエレメントまたはスペーサに使用する。
【0031】
ここで、前記Tiの含有率は、全体Sn・Ti合金において、0.5~3重量%にする。
【0032】
そのようなSn・Ti合金粉末の製造方法としては、図1に図示されているように、Sn・Ti合金またはSn・Ti合金加工材を溶融させるSn・Ti合金溶融段階と、Sn・Ti合金溶湯を、不活性ガス雰囲気内において、ノズルを介し、噴射させて凝固させるSn・Ti合金粉末形成段階と、を含んでなされる。
【0033】
具体的には、前記Sn・Ti合金粉末形成段階においては、Sn及びTiを炉内に装入し、噴射チャンバの内部を、2.5×10-5Torr以下に低めるように、真空ポンピングした後、噴射チャンバ内部を、Arガスのような不活性ガスで、1barまで置き換える不活性ガス雰囲気に形成し、炉内のSn・Ti合金を、1,100~1,300℃で加熱溶融し、不活性ガスを100barで噴射しつつ、炉のオリフィスを開放し、Sn・Ti合金溶融物を噴射する方法が適用されるが、必ずしもそのような条件に限定されるものではない。
【0034】
そのように製造されたSn・Ti合金粉末を利用する、超伝導線材を製造する方法は、Sn・Ti合金粉末に対する、プレス加工、粉末押出加工、またはCuチューブ内への装入後、引き抜き加工を介し、サブエレメントまたはスペーサを作製するサブエレメントまたはスペーサの形成段階と、作製されたサブエレメントをCuチューブ内に設置する組み込み段階と、引き抜きのような線材加工処理を行い、超伝導線材を完成する線材製造段階と、を含んで構成される。
【0035】
それを介し、従来のSn合金鋳造物を、機械的粉砕を介して強制粉砕することにより、表面の残留応力による境界面の硬化、それによる超伝導特性の低下、及び製造過程上の熱処理時間の延長のような加工の非容易性を解決するだけではなく、加工中、粉末間の結合にすぐれ、何よりも、最終超伝導線材内に形成されるSn・Ti金属間化合物粒子の形状を最適化させることができ、その大きさを従来の方法では、達成し難い状態に最小化が可能である。
【0036】
また、圧延、引き抜き、破砕、粉砕などによってなる複雑な粉末作製過程を単純化させ、加工性及び生産性を増大させることができる。
【0037】
実際、本発明を介して製造されたSn・Ti金属間化合物の写真(図2A)と、従来技術によるSn合金内金属間化合物の写真(図2B)とを比較すれば、本発明によって形成されたSn・Ti金属間化合物粒子が、従来技術によって形成された粒子に比べ、球状にはるかに近く、その粒径も、顕著に小さいということを確認することができる。
【0038】
以下、前記Sn・Ti合金粉末の本発明による製造方法の応用例について説明する。
【0039】
本発明によるSn・Ti合金粉末製造方法の応用例1においては、Sn及びTiを基にし、Nb、Ta、Cu、Zr、Hf、V、Zn、Inのうちから選択された1以上の材料を追加して溶融させるSn・Ti合金溶融段階と、Sn・Ti合金溶湯を、不活性ガス雰囲気内において、ノズルを介し、噴射させて凝固させるSn・Ti合金粉末形成段階と、を含んでもなる。
【0040】
ここで、全体合金において、Nb、Ta、Cu、Zr、Hf、V、Zn、Inのうちから選択された1以上の材料は、0.1~2重量%である。
【0041】
具体的には、前記Sn・Ti合金粉末形成段階においては、Sn及びTiと共に、Nb、Ta、Cu、Zr、Hf、V、Zn、Inのうちから選択された1以上の材料を、全体合金に対し、0.1~2重量%で炉内に装入し、噴射チャンバの内部を2.5×10-5Torr以下に低めるように真空ポンピングした後、噴射チャンバ内部を、Arガスのような不活性ガスで1barまで置き換える不活性ガス雰囲気に形成し、炉内のSn・Ti合金を、1,100~1,300℃で加熱溶融し、不活性ガスを100barで噴射しつつ、炉のオリフィスを開放し、Sn・Ti合金溶融物を噴射する方法が適用されうるが、必ずしもそのような条件に限定されるものではない。
【0042】
そのように、前記応用例1によるSn・Ti合金粉末製造方法を介して製造されたSn・Ti合金粉末を利用する、超伝導線材を製造する方法は、Sn・Ti合金粉末に対する、プレス加工、粉末押出加工、またはCuチューブ内への装入後、引き抜き加工を介し、サブエレメントまたはスペーサを作製するサブエレメントまたはスペーサの形成段階と、作製されたサブエレメントをCuチューブ内に設置する組み込み段階と、引き抜きのような線材加工処理を行い、超伝導線材を完成する線材製造段階と、を含んで構成される。
【0043】
本発明によるSn・Ti合金粉末製造方法の応用例2は、Sn・Ti合金を溶融させるSn・Ti合金溶融段階と、Sn・Ti合金溶湯を、不活性ガス雰囲気内において、ノズルを介し、噴射させて凝固させるSn・Ti合金粉末形成段階と、を含んでもなる。
【0044】
具体的には、前記Sn・Ti合金粉末形成段階においては、Sn及びTiを炉内に装入し、噴射チャンバの内部を2.5×10-5Torr以下に低めるように、真空ポンピングした後、噴射チャンバ内部を、Arガスのような不活性ガスで1barまで置き換える不活性ガス雰囲気に形成し、炉内のSn・Ti合金を1,100~1,300℃で加熱溶融し、不活性ガスを100barで噴射しつつ、炉のオリフィスを開放し、Sn・Ti合金溶融物を噴射する方法が適用されうるが、必ずしもそのような条件に限定されるものではない。
【0045】
そのように、前記応用例2によるSn・Ti合金粉末製造方法を介して製造されたSn・Ti合金粉末を利用する、超伝導線材を製造する方法は、Sn・Ti合金粉末と共に、Nb、Ta、Cu、Zr、Hf、V、Zn、Inのうちから選択された1以上の材料を追加し、プレス加工、粉末押出加工、またはCuチューブ内への装入後、引き抜き加工を介し、サブエレメントまたはスペーサを作製するサブエレメントまたはスペーサの形成段階と、作製されたサブエレメントをCuチューブ内に設置する組み込み段階と、引き抜きのような線材加工処理を行い、超伝導線材を完成する線材製造段階と、を含んで構成される。
【0046】
ここで、全体合金において、Nb、Ta、Cu、Zr、Hf、V、Zn、Inのうちから選択された1以上の材料は、0.1~2重量%である。
【0047】
それを介して、従来のSn合金鋳造物を、機械的粉砕を介して強制粉砕することにより、表面の残留応力による境界面の硬化、それによる超伝導特性の低下、及び製造過程上の熱処理時間の延長のような加工の非容易性を解決することではなく、加工中、粉末間の結合にすぐれ、何よりも、最終超伝導線材内に形成されるSn・Ti金属間化合物粒子の形状を最適化させることができ、その大きさを従来の方法では、達成し難い状態に最小化が可能である。また、Nb、Ta、Cu、Zr、Hf、V、Zn、Inを添加することにより、機械的特性を向上させ、超伝導線材への加工時、加工性を向上させることができる。
【0048】
また、圧延、引き抜き、破砕、粉砕などによってなる複雑な粉末作製過程を単純化させ、加工性及び生産性を増大させることができる。
【0049】
前述のような構成を介して、本発明であるSn系合金内に分散されたSn・Ti金属間化合物粒子の大きさを、平均粒径3μm以下に最小化させながらも、Nb、Ta、Cu、Zr、Hf、V、Zn、Inなどを合金に追加することにより、超伝導特性及び機械的特性を向上させることができ、加工性及び生産性を高めることができるというような利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明による超伝導線材用Sn・Ti合金粉末、その製造方法、及びそれを利用した超伝導線材の製造方法は、超伝導線材の製造、及び超伝導線材を使用する多様な産業分野に利用されうる。
図1
図2A
図2B