(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】採血デバイス及び採血キット
(51)【国際特許分類】
A61B 5/155 20060101AFI20220111BHJP
A61B 5/153 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
A61B5/155
A61B5/153 100
(21)【出願番号】P 2017151886
(22)【出願日】2017-08-04
【審査請求日】2020-07-08
(31)【優先権主張番号】P 2016163079
(32)【優先日】2016-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504155293
【氏名又は名称】国立大学法人島根大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000153030
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・エム・エス
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】藤原 稔也
(72)【発明者】
【氏名】仁科 雅良
(72)【発明者】
【氏名】中村 守彦
(72)【発明者】
【氏名】林 裕馬
【審査官】▲瀬▼戸井 綾菜
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-500540(JP,A)
【文献】特開2008-237834(JP,A)
【文献】国際公開第2014/033911(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/004973(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/004307(WO,A1)
【文献】特表平9-504726(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/15-5/157
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1接続口
と、
第1開口、第2接続口、及び第3接続口
が設けられた分岐管と、
前記第1接続口と前記第1開口とをつなぐ柔軟なチューブとを備え、
前記第1接続口は、前記チューブと前記分岐管内の流路とで構成された第1流路を介して前記第3接続口に連通され、
前記第2接続口は、前記分岐管内の流路で構成された第2流路を介して第3接続口に連通され、
前記第1接続口または前記第1流路は開閉可能であり、
前記分岐管は、前記第2接続口の中心軸と前記第3接続口の中心軸とが平行に維持されるように硬質材料からなり、
前記第1接続口は前記第3接続口に対して変位可能であ
り、
前記第1接続口は、第1シリンジの筒先を着脱可能に接続することができるように構成されており、
前記第2接続口は、第2シリンジの筒先を着脱可能に接続することができるように構成されており、
前記第3接続口は、金属針の針基を接続可能なように構成されていることを特徴とする採血デバイス。
【請求項2】
前記第1接続口は、自閉式の弁体を備えたメスコネクタであり、
前記第1接続口は、前記第1接続口から
前記第1シリンジの筒先を分離すると前記弁体が直ちに閉じられるように構成されている請求項
1に記載の採血デバイス。
【請求項3】
前記第1接続口は、前記
筒先が摩擦嵌合することにより、前記
筒先が前記第1接続口に接続された状態が維持されるように構成されている請求項
2に記載の採血デバイス。
【請求項4】
前記第1流路のうち前記第2流路と共通しない前記第1流路独自の部分に設けられた一方向弁を更に備え、
前記一方向弁は、前記第3接続口から前記第1接続口に向かって血液が流れることを許可し、これとは逆向きに血液が流れることを阻止するように構成されている請求項1~
3のいずれか一項に記載の採血デバイス。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか一項に記載の採血デバイスと、前記第1接続口に着脱可能に接続された
前記第1シリンジと、前記第2接続口に着脱可能に接続された
前記第2シリンジと、前記第3接続口に接続された
前記金属針とを備えた採血キット。
【請求項6】
前記第1シリンジは、前記第2シリンジよりも、血液の流入抵抗が小さい請求項
5に記載の採血キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液採取の際に使用される採血デバイスに関する。特に、複数本のシリンジに血液を順次採取することを可能にする採血デバイスに関する。また、本発明はこのような採血デバイスを備えた採血キットに関する。
【背景技術】
【0002】
血液ガス検査と、これ以外の血球検査や生化学検査等の一般血液検査とを行うために、動脈から各検査用の血液を別個のシリンジに採取する場合がある。救急医療の現場では早急に採血する必要があり、特に血液ガス検査用の採血は緊急度が高い。血液ガス検査用血液を採取するシリンジ(以下「血ガス用シリンジ」という)内には血液凝固を防ぐためのヘパリンが塗布されているため、血ガス用シリンジに採取した血液が一般血液検査用血液を採取するシリンジ(以下「一般用シリンジ」という)に流入すると、一般血液検査の結果に悪影響を及ぼす。
【0003】
上記の2通りの検査のための採血を行うため、一般的な三方活栓(例えば特許文献1参照)を用いた以下の採血方法が知られている。
【0004】
即ち、三方活栓の「T」字状に配された3つの接続口に、金属針、血ガス用シリンジ、一般用シリンジをそれぞれ接続する。三方活栓のレバーを操作し、金属針と血ガス用シリンジとを連通させる。この状態で、金属針を患者の動脈に穿刺し、血ガス用シリンジに血液を採取する。次いで、三方活栓のレバーを操作し、金属針と一般用シリンジとを連通させる。血ガス用シリンジを三方活栓から取り外し、血液ガス検査に供する。次いで、一般用シリンジに血液を採取する。次いで、金属針を動脈から抜く。一般用シリンジを三方活栓から分離し、一般血液検査に供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-350787号公報
【文献】特開平11-197254号公報
【文献】特開2013-252165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の三方活栓を用いた採血方法では、金属針を動脈に穿刺した状態で、三方活栓のレバーを操作し、また、血ガス用シリンジを三方活栓から取り外す必要がある。レバー操作や血ガス用シリンジの取り外し操作の際に、金属針が誤って移動してしまい、金属針が動脈から外れてしまう場合がある。この場合、その後つづいて一般用シリンジに採血することができなくなるという課題がある。また、レバー操作や血ガス用シリンジの取り外し操作に時間がかかり、迅速な血液採取ができないという課題がある。
【0007】
本発明の第1の目的は、複数のシリンジに順次、迅速に採血することにある。本発明の第2の目的は、採血中に金属針が血管から外れるという事態が起こる可能性を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の採血デバイスは、第1接続口と、第1開口、第2接続口、及び第3接続口が設けられた分岐管と、前記第1接続口と前記第1開口とをつなぐ柔軟なチューブとを備える。前記第1接続口は、前記チューブと前記分岐管内の流路とで構成された第1流路を介して前記第3接続口に連通されている。前記第2接続口は、前記分岐管内の流路で構成された第2流路を介して第3接続口に連通されている。前記第1接続口または前記第1流路は開閉可能である。前記分岐管は、前記第2接続口の中心軸と前記第3接続口の中心軸とが平行に維持されるように硬質材料からなる。前記第1接続口は前記第3接続口に対して変位可能である。前記第1接続口は、第1シリンジの筒先を着脱可能に接続することができるように構成されている。前記第2接続口は、第2シリンジの筒先を着脱可能に接続することができるように構成されている。前記第3接続口は、金属針の針基を接続可能なように構成されている。
【0009】
本発明の採血キットは、前記採血デバイスと、前記第1接続口に着脱可能に接続された第1シリンジと、前記第2接続口に着脱可能に接続された第2シリンジと、前記第3接続口に接続された金属針とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、金属針を患者に穿刺して、第1及び第2シリンジに血液を順次採取することができる。
【0011】
第1接続口または第1流路が開閉可能であるので、三方活栓を用いることなく、第1流路と第2流路とを切り替えることができる。このため、三方活栓のレバーを操作する際に金属針が誤って移動してしまい、金属針が動脈から外れてしまうという従来の三方活栓を用いた採血方法の課題が解消される。また、三方活栓が不要であるので、迅速な採血が可能である。
【0012】
第1接続口は第3接続口に対して変位可能である。このため、第1接続口及び第2接続口に血ガス用シリンジ及び一般用シリンジをそれぞれ接続した場合、一般用シリンジに採血する前に血ガス用シリンジを第1接続口から分離しても、金属針が血管から外れることがない。また、採血中に血ガス用シリンジの位置や姿勢を自由に変更することができるので、血ガス用シリンジを血液で完全に満たす前に血ガス用シリンジに内蔵された疎水性フィルタを血液で濡らしてしまうという誤操作をする可能性が低減する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態1に係る採血デバイスの斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態1に係る採血デバイスを備えた採血キットの側面図である。
【
図3】
図3Aは、本発明の実施形態2に係る採血デバイスを備えた採血キットの側面図である。
図3Bは、本発明の実施形態2に係る採血デバイスに設けられたバルブユニットの要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上記の本発明の採血デバイスにおいて、前記第1接続口及び前記第2接続口は、シリンジの筒先を着脱可能に接続することができるように構成されていてもよい。また、前記第3接続口は、金属針を接続することができるように構成されていてもよい。かかる構成によれば、更に別の部材を用いることなく、シリンジ及び金属針を本発明の採血デバイスに直接接続することができる。
【0015】
前記第1接続口は、自閉式の弁体を備えたメスコネクタであってもよい。この場合、前記第1接続口は、前記第1接続口からオス部材を分離すると前記弁体が直ちに閉じられるように構成されていてもよい。かかる構成によれば、第1接続口に対するオス部材(例えば血ガス用シリンジの筒先)の接続/分離に連動して第1接続口を開閉させることができる。当該構成は、第1接続口を開閉させるための別個の部材及び第1流路を開閉させるための別個の部材がいずれも不要になるので、血液デバイスの構成の簡単化と、採血操作の容易化及び迅速化に有利である。
【0016】
前記第1接続口は、前記オス部材が摩擦嵌合することにより、前記オス部材が前記第1接続口に接続された状態が維持されるように構成されていてもよい。かかる構成によれば、第1接続口に対するオス部材(例えば血ガス用シリンジの筒先)の接続/分離の操作が容易になる。特に、第1接続口からのオス部材の分離を、片手で容易に行うことができる。当該構成は、第1接続口に血ガス用シリンジを接続した場合に、血液ガス検査用の採血を迅速に行うのに有利である。
【0017】
前記第3接続口の中心軸は、前記第2接続口の中心軸と平行であってもよい。かかる構成によれば、第2シリンジの筒先に金属針が直接接続されている場合と同様に、金属針の穿刺作業を違和感なく容易に行うことができる。この観点から、より好ましくは、前記第3接続口は、前記第2接続口と同軸に配置される。
【0018】
前記第1接続口と前記第3接続口との間に、変形容易な材料からなる部材が介在していてもよい。かかる構成は、第1接続口を第3接続口に対して変位可能にするのに有利である。
【0019】
本発明の採血デバイスは、前記第2接続口及び前記第3接続口が設けられた分岐管と、前記分岐管と前記第1接続口とをつなぐ柔軟なチューブとを更に備えていてもよい。この場合、好ましくは、前記第1流路は前記分岐管及び前記チューブ内に設けられ、前記第2流路は前記分岐管内に設けられる。かかる構成によれば、簡単な構成で本発明の採血デバイスを実現できる。
【0020】
本発明の採血デバイスは、前記第1流路のうち前記第2流路と共通しない前記第1流路独自の部分に設けられた一方向弁を更に備えていてもよい。この場合、前記一方向弁は、前記第3接続口から前記第1接続口に向かって血液が流れることを許可し、これとは逆向きに血液が流れることを阻止するように構成されていてもよい。かかる構成によれば、第1流路を介して血ガス用シリンジを血液で満たした後、採血デバイスから血ガス用シリンジを取り外さなくても、血ガス用シリンジ内の血液が、第2接続口に接続された一般用シリンジに流入するのを防止することができる。
【0021】
上記の本発明の採血キットにおいて、前記第1シリンジは、前記第2シリンジよりも、血液の流入抵抗が小さくてもよい。かかる構成によれば、三方活栓のような流路を切り替える部材を用いることなく、第2シリンジよりも先に第1シリンジに血液を採取することができる。これは、第1シリンジへの採血を容易且つ迅速に行うのに有利である。
【0022】
以下に、本発明を好適な実施形態を示しながら詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。以下の説明において参照する各図は、説明の便宜上、本発明の実施形態を構成する主要部材を簡略化して示したものである。従って、本発明は以下の各図に示されていない任意の部材を備え得る。また、本発明の範囲内において、以下の各図に示された各部材を変更または省略し得る。各実施形態の説明において引用する図面において、先行する実施形態で引用した図面に示された部材に対応する部材には、当該先行する実施形態の図面で付された符号と同じ符号が付してある。そのような部材については、重複する説明が省略されており、先行する実施形態の説明を適宜参酌すべきである。
【0023】
1.実施形態1
1.1.採血デバイスの構成
図1は、本発明の実施形態1に係る採血デバイス1の斜視図である。採血デバイス1は、第1接続口11、第2接続口12、及び第3接続口13を備える。
【0024】
第1接続口11は、自閉式の弁体11aを備えたメスコネクタである。弁体11aは、ゴム弾性を有する軟質の材料(例えば、イソプレンゴム、シリコーンゴム、ブチルゴム等のゴム材料や、熱可塑性エラストマー等)からなる円形の薄板状物であり、その中央に、弁体11aを厚さ方向に貫通するスリット11bが形成されている。弁体11aは、キャップ11cで覆われている。キャップ11cの天板の中央には円形の開口(貫通孔)11dが設けられており、当該開口11dを介して、スリット11bを含む弁体11aの中央の領域が外界に露出されている。鋭利な先端を有しない筒状のオス部材(例えばシリンジの筒先)を弁体11aのスリット11bに向かって押し込むと、オス部材は弁体11aを変形させてスリット11bを開き、スリット11bを貫通することができる。これにより、第1接続口11とオス部材とが連通する。その後、オス部材を弁体11aから引き抜くと、弁体11aは直ちに初期状態に弾性復帰し、スリット11bは閉じられる。オス部材がスリット11bを貫通していないとき、スリット11bは液密及び気密に閉じられるので、血液がスリット11bを通って外界に漏れ出ることはない。オス部材は、第1接続口11の弁体11aに、何度でも繰り返し挿抜することができる。このようなリシール性を有するメスコネクタは「セプタム」とも呼ばれ、一般に公知である(例えば特許文献2,3参照)。
【0025】
第1接続口11の弁体11aとは反対側端は、柔軟なチューブ14を介して分岐管15の第1開口15aに接続されている。第2接続口12及び第3接続口13は、分岐管15に一体的に設けられている。
【0026】
第2接続口12は、中空の筒状の内周面を有する。第2接続口12の内周面は、その開口端に近づくにしたがって内径が大きくなるテーパ面(いわゆるメステーパ面)である。例えばISO594-1に準拠した6/100テーパ面であってもよい。
【0027】
第3接続口13は、棒状のオス部材である。第3接続口13の外周面は、その先端に近づくにしたがって外径が小さくなるテーパ面(いわゆるオステーパ面)である。例えばISO594-1に準拠した6/100テーパ面であってもよい。第3接続口13の中心軸は、第2接続口12の中心軸と平行である。
【0028】
第3接続口13には、その中心軸に沿った流路(図示せず)が設けられている。第3接続口に設けられた流路は、分岐管15内に設けられた略「Y」字状に分岐した分岐流路(図示せず)を介して、チューブ14が挿入された第1開口15a及び第2接続口12に連通されている。即ち、第1接続口11は、チューブ14と分岐管15内の流路とで構成された第1流路を介して第3接続口13に連通されている。また、第2接続口12は、分岐管15内の流路で構成された第2流路を介して第3接続口13と連通されている。なお、第1接続口11と第2接続口12とは、チューブ14及び分岐管15内の流路を介して連通されている。
【0029】
分岐管15の材料は、制限はないが、外力によって実質的に変形しない程度の機械的強度(剛性)を有する硬い材料(硬質材料)であることが好ましい。例えば、ポリカーボネート(PC)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、硬質ポリ塩化ビニル、ポリアセタール(POM)、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)等の樹脂材料を用いることができ、中でもポリカーボネート(PC)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、硬質ポリ塩化ビニルが好ましい。分岐管15は、上記の樹脂材料を用いて、射出成形法等により全体を一部品として一体的に製造することができる。
【0030】
チューブ14は柔軟性を有し、且つ、透明又は半透明であることが好ましい。チューブ14の材料は特に制限はないが、例えば樹脂を用いることができ、具体的には軟質ポリ塩化ビニル、ポリブタジエン、ポリエチレンを例示することができる。
【0031】
1.2.採血デバイスの使用方法
採血デバイス1の使用方法を説明する。
【0032】
最初に、
図2に示すように、採血デバイス1に、第1シリンジ21、第2シリンジ22、及び金属針23を接続して、採血キット6を準備する。
【0033】
第1シリンジ21は第1接続口11に接続される。第1シリンジ21は、血液ガス検査用血液を採取するシリンジ(以下「血ガス用シリンジ」という)である。血ガス用シリンジ21としては、血液ガス検査用の血液を採取するために使用される任意の血ガス用シリンジを用いることができる。血ガス用シリンジ21は、一般的なシリンジと同様に、筒状の外筒21aと、外筒21a内に挿抜可能に挿入されたプランジャ21cとを備える。外筒21aの外周面には、採血量を示す目盛り(図示せず)が設けられている。外筒21aの先端に設けられた筒先21bが第1接続口11の弁体11aのスリット11b(
図1参照)に挿入されている。筒先21bの外周面は、先端に近づくにしたがって外径が小さくなるテーパ面(いわゆるオステーパ面)である。筒先21bの外周面が、第1接続口11のキャップ11cの開口11d(
図1参照)の端縁に嵌合し、筒先21bと開口11dの端縁との間に摩擦力が発生する。このように筒先21bが開口11dの端縁に摩擦嵌合することによって、筒先21bが第1接続口11に接続された状態が維持される。軽微な振動等によって血ガス用シリンジ21が第1接続口11から分離することはない。図示を省略するが、プランジャ21cの先端に設けられたガスケットに開口が設けられ、当該開口に疎水性フィルタが設けられている。疎水性フィルタは、気体は通過させるが、液体(本実施形態1では血液)は通過させない特性を有する。疎水性フィルタを介して、外筒21a内のガスケットによってシールされた空間と外界とが連通されている。
【0034】
第2シリンジ22は第2接続口12に接続される。第2シリンジは、血球検査や生化学検査等の一般血液検査用の血液を採取するシリンジ(以下「一般用シリンジ」という)22である。一般用シリンジ22も、筒状の外筒22aと、外筒22a内に挿抜可能に挿入されたプランジャ22cとを備える。外筒22aの先端に設けられた筒先22bが第2接続口12(
図1参照)に挿入されている。筒先22bの外周面は、先端に近づくにしたがって外径が小さくなるテーパ面(いわゆるオステーパ面)であり、そのテーパ角度及び径は、第2接続口12の内周面に設けられたメステーパ面と一致する。従って、一般用シリンジ22の筒先22bは、第2接続口12に液密に嵌合する。一般用シリンジ22には、血ガス用シリンジ21が備える疎水性フィルタは設けられていない。
【0035】
金属針23は第3接続口13に接続される。具体的には、金属針23の基端部に設けられた樹脂製の針基23bに第3接続口13が嵌入されている。金属針23は、鋭利な先端23aを有する。
【0036】
かくして、金属針23と血ガス用シリンジ21とが、チューブ14及び分岐管15を介して連通される。また、金属針23と一般用シリンジ22とが、分岐管15を介して連通される。上述したように、分岐管15は硬質材料からなり、また、第2接続口12の中心軸と第3接続口13の中心軸とは平行である。従って、一般用シリンジ22の長手方向と金属針23の長手方向とは平行であり、両者の相対的位置は不変である。一方、チューブ14は容易に変形可能であるため、血ガス用シリンジ21及び第1接続口11は、一般用シリンジ22、分岐管15、及び金属針23に対して自由に変位可能である。本発明において「変位」とは、並進運動及び回転運動の一方または両方を伴う運動を意味する。
【0037】
次いで、血ガス用シリンジ21のプランジャ21cを、外筒21a内に最深部まで押し込んだ後、ガスケットの先端が必要な採血量の目盛りの位置に一致するまで引き戻す。一般用シリンジ22のプランジャ22cを外筒22a内に最深部まで押し込む。
【0038】
この状態で、金属針23を患者の動脈に穿刺する。穿刺は、例えば一般用シリンジ22を把持して行うことができる。血液が、動脈圧によって、金属針23を通って分岐管15内に流入する。血液が採血デバイス1内に流入するのにともなって、採血デバイス1内に存在していた空気は、血ガス用シリンジ21のガスケットに設けられた疎水性フィルタを通って外界に排出される。疎水性フィルタを通過する空気の流動抵抗は比較的小さいので、分岐管15内に流入した血液は、一般用シリンジ22ではなく、チューブ14を通って血ガス用シリンジ21へ優先的に流れる。血ガス用シリンジ21内の、予め設定した空間を血液で満たす。血ガス用シリンジ21内の空間の空気が血液で完全に置き換わる前に、疎水性フィルタが血液で濡れることがないように、必要に応じて、採血中の血ガス用シリンジ21の姿勢(傾き)を調整する。例えば、一方の手で一般用シリンジ22を保持しながら、他方の手で血ガス用シリンジ21を所定の姿勢に保持することができる。
【0039】
血ガス用シリンジ21内に血液が貯留され、疎水性フィルタが血液で濡れると、金属針23への血液の流入が停止する。血ガス用シリンジ21内への血液の流入状態や、疎水性フィルタの血液による濡れ状態は、外筒21aを介して視認することができる。作業者は、血ガス用シリンジ21が血液で満たされたことを確認した後、第1接続口11から血ガス用シリンジ21を取り外す。例えば、片方の手の親指を除く4本の指と手のひらとで第1接続口11を握りながら、当該手の親指で外筒21aの円筒状の外周面の先端側(筒先21b側)の端縁を押し出す。筒先21bは、第1接続口11のキャップ11cの開口11d(
図1参照)の端縁に単に摩擦嵌合しているだけであるから、外筒21aを押し出せば、血ガス用シリンジ21を第1接続口11から簡単に分離させることができる。上述したように、第1接続口11は、自閉式の弁体11aを備えている。筒先21bが弁体11aのスリット11bから抜け出ると、スリット11bは直ちに閉じられる。このため、血液がスリット11bから漏れ出ることはない。また、血ガス用シリンジ21の疎水性フィルタ23は血液で濡れているので、疎水性フィルタを通って外界の空気が血ガス用シリンジ21内に流入することはない。従って、筒先21bが第1接続口11から抜け出た後に、血ガス用シリンジ21に貯留された血液が筒先21bから漏れ出ることはない。分離された血ガス用シリンジ21内の血液は、直ちに血液ガス検査に供される。
【0040】
次いで、金属針23を動脈に穿刺した状態で、一般用シリンジ22のプランジャ22cを引き、一般用シリンジ22内に所定量の血液を流入させる。
【0041】
その後、金属針23を患者から引き抜く。一般用シリンジ22を第2接続口12から分離させる。一般用シリンジ22内の血液は、血球検査や生化学検査等に供される。
【0042】
1.3.作用
以上のように、本実施形態1の採血デバイス1は、第1接続口11と第3接続口13とを連通させる第1流路と、第2接続口12と第3接続口13とを連通させる第2流路とを備える。第1及び第2接続口11,12はシリンジ21,22をそれぞれ接続することができるように構成されており、第3接続口13は金属針23を接続することができるように構成されている。従って、金属針23を患者に穿刺して、2本のシリンジ21,22に血液を順次採取することができる。例えば、第1接続口11に接続される第1シリンジ21は血ガス用シリンジであってもよく、第2接続口12に接続される第2シリンジ22は一般用シリンジであってもよい。
【0043】
第1接続口11は、柔軟なチューブ14を介して分岐管15に接続されているので、第1接続口11は第3接続口13に対して自由に変位可能である。即ち、第1接続口11と第3接続口13とは、一方の位置や姿勢(傾き)の変化が他方の位置や姿勢(傾き)に影響を与えることがないように、位置及び姿勢(傾き)に関して互いに独立している。
【0044】
このため、第3接続口13に接続された金属針23を患者に穿刺した状態で第1接続口11に接続された血ガス用シリンジ21の姿勢を調整しても、血ガス用シリンジ21の姿勢の変化が金属針23の位置や姿勢(傾き)に何ら影響を与えない。これは、血ガス用シリンジ21内の空間を血液で完全に満たす前に、血ガス用シリンジ21に内蔵された疎水性フィルタを血液で濡らしてしまうという誤操作をする可能性を低減するのに有利である。
【0045】
また、金属針23を患者に穿刺した状態で血ガス用シリンジ21を第1接続口11から分離しても、当該分離の操作によって第3接続口13の位置や姿勢(傾き)が変化しない。これは、血ガス用シリンジ21への採血が終了した後であって一般用シリンジ22への採血を開始する前に血ガス用シリンジ21を採血デバイス1から分離するのに有利である。このため、緊急を要する場合に、血液ガス検査を迅速に行うことができる。従来の三方活栓を用いた場合と異なり、血ガス用シリンジ21の分離の操作によって金属針23が動脈から外れることがないので、その後の一般用シリンジ22への採血が不可能になるということはない。
【0046】
第1接続口11は開閉可能に構成されている。第1接続口11の開閉状態に応じて血液の流路が切り替わり、血液は第1流路及び第2流路のいずれかを選択的に流れる。このため、本実施形態1の血液デバイス1では、第1流路と第2流路とを切り替えるための部材(例えば、従来の採血方法で用いていた三方活栓)が不要である。
【0047】
上述した従来の採血方法では、流路を切り替えるために、金属針を動脈に穿刺した状態で三方活栓のレバーを操作する必要がある。レバー操作の際に金属針が誤って移動してしまい、金属針が動脈から外れてしまう場合がある。この場合、一般用シリンジに採血することができなくなるという課題がある。また、レバー操作に時間がかかり、迅速な血液採取ができないという課題がある。これに対して、本実施形態1では、三方活栓を備えないので、これらの課題は解消される。2本のシリンジ21,22に、順次、迅速に血液を採取することができる。
【0048】
第1接続口11は、自閉式の弁体11aを備える。第1接続口11に血ガス用シリンジ21の筒先21bが接続されている場合には第1接続口11と血ガス用シリンジ21とが連通され、第1接続口11から筒先21bが抜け出ると弁体11aが初期状態に復帰し、第1接続口11は直ちに自動的に閉じられる。即ち、第1接続口11に対する血ガス用シリンジ21の接続/分離に連動して第1接続口11が開閉する。このため、第1接続口11を開閉させるための別個の部材が不要である。更に、第1流路を開閉させるための別個の部材(例えば、後述するクランプ)も不要である。これは、血液デバイス1の構成の簡単化と、採血操作の容易化及び迅速化に有利である。
【0049】
血ガス用シリンジ21の筒先21bは、第1接続口11に摩擦嵌合する。このため、第1接続口11に対する血ガス用シリンジ21の接続/分離の操作が容易である。特に、第1接続口11からの血ガス用シリンジ21の分離は、片手で容易に行うことができる。例えば、血ガス用シリンジ21に採血するときは一方の手で第1接続口11及び血ガス用シリンジ21を保持し、その後、その手で、第1接続口11から血ガス用シリンジ21を分離することができる。このように、血ガス用シリンジ21への採血と血ガス用シリンジ21の第1接続口11からの分離という一連の作業を、同じ一方の手のみで連続的に行うことができる。これは、血液ガス検査用の採血を迅速に行うのに有利である。
【0050】
第3接続口13の中心軸と第2接続口12の中心軸とが平行である。このため、金属針23は一般用シリンジ22と平行となる。これにより、作業者は、一般用シリンジ22の筒先22bに金属針23が直接接続されている場合と同様に、金属針23の穿刺作業を違和感なく容易に行うことができる。より好ましくは、第3接続口13は第2接続口12と同軸に配置される。
【0051】
分岐管15に第2接続口12及び第3接続口13が設けられ、第1接続口11は、チューブ14を介して分岐管15に接続されている。これは、簡単な構成で本発明の採血デバイスを構成するのに有利である。
【0052】
血ガス用シリンジ21は、疎水性フィルタを内臓しているので、一般用シリンジ22に比べて、血液の流入抵抗が小さい。このため、本実施形態1のように第1流路及び第2流路が常時開である採血デバイス1を用いた場合であっても、血ガス用シリンジ21のプランジャ21cを予め所定位置まで引いておけば、金属針23を動脈に穿刺した直後、血液は、血ガス用シリンジ21に選択的に流入する。即ち、第1流路と第2流路とを切り替える部材(例えば三方活栓)を用いることなく、一般用シリンジ22よりも先に血ガス用シリンジ21に血液を採取することができる。これは、採血デバイス1の構成の簡単化と、血液ガス検査用の採血の容易化及び迅速化に有利である。
【0053】
2.実施形態2
図3Aは、本発明の実施形態2に係る採血デバイス2を備えた採血キット7の側面図である。本実施形態2では、バルブユニット30が、第1接続口11と一体的に設けられている。
図3Bは、バルブユニット30の要部断面図である。バルブユニット30内には、一方向弁31が設けられている。一方向弁31は、分岐管15からチューブ14を通って第1接続口11へ血液が流れるのを許可するが、これとは逆に、第1接続口11からチューブ14を通って分岐管15へ血液が流れるのを阻止する。このように一方向にのみ流体の流れを許容し、逆流を防止する弁は、逆止弁、またはチェックバルブなどとも呼ばれる。一方向弁31の構成は、このような機能を有する限り制限はない。本実施形態2では、一方向弁31としてダックビル型の一方向弁を用いている。
【0054】
本実施形態2の採血デバイス2及び採血ユニット7の使用方法は、実施形態1の採血デバイス1及び採血ユニット76の使用方法と概略同じである。
【0055】
実施形態1(
図2参照)では、上述したように、金属針23を患者の動脈に穿刺すると、最初に、血ガス用シリンジ21が血液で満たされる。次いで、第1接続口11から血ガス用シリンジ21を取り外す。次いで、一般用シリンジ22のプランジャ22cを引き、一般用シリンジ22内に血液を流入させる。この一連の操作において、血ガス用シリンジ21が血液で満たされた後、第1接続口11から血ガス用シリンジ21を取り外すことなく、一般用シリンジ22のプランジャ22cを引くと、血ガス用シリンジ21に貯留された血液が、第1接続口11、チューブ14、分岐管15、第2接続口12を介して一般用シリンジ22内に流入するおそれがある。このとき、血ガス用シリンジ21内に塗布されたヘパリンが、血液とともに一般用シリンジ22内に流入すると、一般血液検査の結果に悪影響を及ぼす。血ガス用シリンジ21が血液で満たされた後、血ガス用シリンジ21のプランジャ21cを外筒21a内に誤って押し込んでしまった場合も同様の問題が発生しうる。
【0056】
本実施形態2では、一方向弁31が、血ガス用シリンジ21内の血液が一般用シリンジ22へ流入するのを防止する。従って、血ガス用シリンジ21を血液で満たした後、第1接続口11から血ガス用シリンジ21を取り外すことなく、引き続いて一般用シリンジ22のプランジャ22cを引いて、一般用シリンジ22に血液を流入させることができる。また、採血の途中で血ガス用シリンジ21のプランジャ21cを誤って押してしまっても、一旦血ガス用シリンジ21に流入した血液が血ガス用シリンジ21から流出することはない。
【0057】
以上のように、本実施形態2では、一般用シリンジ22への採血の前に血ガス用シリンジ21を第1接続口11から取り外す操作が必ずしも必要ではない。この点で、採血の操作に関して自由度が高い。血ガス用シリンジ21を血液で満たした後、血ガス用シリンジ21を第1接続口11から取り外さずに、一般用シリンジ22のプランジャ22cを引いてしまう、または、血ガス用シリンジ21のプランジャ21cを押してしまう、という操作をしても、これが一般血液検査に悪影響を及ぼすことはない。
【0058】
本実施形態2では、一方向弁31は、第1接続口11とチューブ14との間に設けられていたが、一方向弁31の位置はこれに限定されない。第1接続口11と第3接続口13とを連通させる第1流路のうち、第2接続口12と第3接続口13とを連通させる第2流路と共通していない第1流路独自の部分に、一方向弁31を配置すればよい。
【0059】
本実施形態2は、上記を除いて実施形態1と同じである。実施形態1の説明が、本実施形態2にも適用される。
【0060】
3.各種の変更
上記の実施形態1,2は例示に過ぎない。本発明は、上記の実施形態1,2に限定されず、適宜変更することができる。
【0061】
上記の実施形態1,2では、第1接続口11を第3接続口13に対して変位可能に構成するために、第1接続口11と分岐管15とが柔軟なチューブ14を介して接続されていた。しかしながら、本発明はこれに限定されず、第1接続口11が第3接続口13に対して変位可能である限り、任意の構成を採用しうる。一般に、第1接続口11と第3接続口13との間に、変形容易な部材(以下「可変部材」という。上記の実施形態1,2ではチューブ14がこれに相当する)を介在させることにより、第1接続口11を第3接続口13に対して変位可能に構成することができる。可変部材を第1接続口11と第3接続口13との間のどこに配置するかは任意である。2以上の可変部材を、第1接続口11と第3接続口13との間に配置してもよい。例えば、上記の実施形態1,2において、第3接続口13と分岐管15とが柔軟なチューブを介して接続されていてもよい。この場合、第1接続口11は、チューブ14を介することなく、分岐管15に直接設けられていてもよい。可変部材の構成は任意であり、例えば変形容易な材料(可撓性材料)で構成されたものであってもよいし、あるいは、自在継手のように硬質材料からなる部材を相対的な変位が可能なように連結したものであってもよい。可撓性材料で構成された可変部材は、チューブ14のような柔軟なチューブに限定されない。例えば、分岐管15の一部又は全部が変形が容易な材料からなり、そのような分岐管15に第1接続口11及び第3接続口13が設けられていてもよい。
【0062】
第1接続口11が備える自閉式の弁体11aの構成は上記の例に限定されない。第1接続口11は、第1接続口11とシリンジ21の筒先21bとの接続/分離に連動して第1接続口11が開閉するように構成された任意の弁体を備えていてもよい。弁体にスリット11bが形成されていなくてもよい。
【0063】
第1接続口11とシリンジ21の筒先21bとの意図しない分離を防止するために、第1接続口11及び/又は筒先21bに、両者の接続状態を維持するためのロック機構が設けられていてもよい。ロック機構の構成は、任意であるが、例えば、第1接続口11の外周面に設けられた雄ネジと、筒先21bを取り囲む円筒状のロックリングの内周面(筒先21bに対向する面)に設けられた雌ネジとで構成されたスクリューロック機構であってもよい。筒先21bを第1接続口11に挿入した状態で、雄ネジと雌ネジとが螺合される。このスクリューロック機構では、ロックリングは、筒先21bの回りを回転可能であってもよいし、筒先21bに固定されていてもよい。
【0064】
あるいは、第1接続口11自身が開閉動作をするのではなく、第1接続口11と第3接続口13とを連通させる第1流路が開閉するように構成されてもよい。例えば、チューブ14を押し潰すことによってチューブ14内の流路を閉塞させることができる任意のクランプを、チューブ14に設けてもよい。この場合、第1接続口11は、弁体11aを備える必要はなく、例えば第2接続口12と同様にメステーパ面で構成されていてもよい。
【0065】
第2接続口12が第3接続口13に対して自由に変位可能であってもよい。これは、例えば、第2接続口12と分岐管15とを柔軟なチューブを介して接続することによって、あるいは、分岐管15の一部又は全部を変形が容易な材料で構成することによって、実現できる。これにより、一般用シリンジ22に採血するためにプランジャ22cを操作した際に発生するかも知れない一般用シリンジ22の位置や姿勢の変化が金属針23に影響を与えない。金属針23の患者への穿刺は、金属針23を保持して行う。
【0066】
第2接続口12が、第1接続口11と同様の、自閉式の弁体を備えていてもよい。この場合、第2接続口12から一般用シリンジ22を分離すると、第2接続口12から血液が流出するのを防止できる。第1及び第2接続口11,12がいずれも自閉式の弁体を備えている場合には、採血を終了し、シリンジ21,22を第1及び第2接続口11,12から分離した後、第1及び第2接続口11,12及び金属針23の先端23aのいずれからも血液が流出するのを防止できる。血液の流出が防止できることは、作業者が血液に触れる可能性を低減するのに有利である。
【0067】
シリンジを接続することができる接続口の数は2つに限定されない。本発明の採血デバイスは、3本以上のシリンジを接続することができるように、3つ以上の接続口を備えていてもよい。上記の第1及び第2接続口11,12以外の更なる接続口(第3接続口、第4接続口、・・・)は、金属針23が接続される第3接続口13に連通される。更なる接続口は、第1接続口11と同様の自閉式の弁体を備えていてもよく、あるいは第2接続口12と同様のメステーパ面で構成されていてもよい。更なる接続口は、分岐管15に設けられていてもよく、あるいは柔軟なチューブを介して分岐管15に接続されていてもよい。
【0068】
上記の実施形態1,2では、血液ガス検査用の採血と、その他の一般血液検査用の採血とを行う採血デバイスを説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、本発明の採血デバイスを用いて、2本のシリンジ21,22に一般血液検査用の採血を行ってもよい。この場合、第1接続口11に接続される第1シリンジ21は、疎水性フィルタを備えていなくてもよい。金属針23は、動脈ではなく、静脈に穿刺してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、血液検査のための採血を行う分野において広範囲に利用することができる。特に、血液ガス検査用の血液と、これ以外の一般血液検査用の血液とを別々のシリンジに採取する場合に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0070】
1,2 採血デバイス
6,7 採血キット
11 第1接続口
11a 弁体
12 第2接続口
13 第3接続口
14 チューブ
15 分岐管
21 第1シリンジ(血液ガス検査用血液を採取するためのシリンジ)
21b 第1シリンジの筒先(オス部材)
22 第2シリンジ(一般血液検査用の血液を採取するためのシリンジ)
22b 第2シリンジの筒先
23 金属針
31 一方向弁