(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】電動式乗用車両
(51)【国際特許分類】
B60G 9/04 20060101AFI20220111BHJP
B60K 7/00 20060101ALI20220111BHJP
B60G 11/24 20060101ALI20220111BHJP
B62K 5/027 20130101ALI20220111BHJP
【FI】
B60G9/04
B60K7/00
B60G11/24
B62K5/027
(21)【出願番号】P 2017172868
(22)【出願日】2017-09-08
【審査請求日】2020-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】513004629
【氏名又は名称】株式会社アクティブ
(73)【特許権者】
【識別番号】591282205
【氏名又は名称】島根県
(74)【代理人】
【識別番号】100081673
【氏名又は名称】河野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100141483
【氏名又は名称】河野 生吾
(74)【代理人】
【識別番号】100166659
【氏名又は名称】楠 和也
(72)【発明者】
【氏名】井上 賢二
(72)【発明者】
【氏名】吉野 勝美
【審査官】森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-103467(JP,A)
【文献】特開2010-269634(JP,A)
【文献】特表2001-507242(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0024219(US,A1)
【文献】特開2017-001407(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 1/00-99/00
B60K 7/00
B62K 5/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動式乗用車両であって、
車輪及び該車輪を駆動させるホイールモータを含む駆動ユニットと、
車体側に取付けられた支持部材を含み且つ前記ホイールモータの非回転部を上下方向に直線状に移動可能に車体側に支持する支持機構と、
前記駆動ユニットが車体に対して上方に変位した場合に変形して該駆動ユニットに弾性力を作用させる弾性部材と
、
前記支持部材を上下方向に直線状に移動可能に車体側に取付ける取付機構と、
前記支持部材が車体に対して上方に変位した場合に変形して該支持部材に弾性力を作用させる弾性部材とを備
え、
前記駆動ユニットは上下方向に直線状に移動可能に支持部材に支持され、
前記支持部材は支持枠であり、
該支持枠の枠内には、前記駆動ユニットに弾性力を作用させる前記弾性部材と、前記支持部材に弾性力を作用させる前記弾性部材とが、前記ホイールモータの非回転部の直線状の移動方向に並べられた状態で配置された
電動式乗用車両。
【請求項2】
前記支持機構は上下方向に形成された軸部を有し、
前記支持機構は、上記軸部によって前記ホイールモータの非回転部を該軸部の軸方向に変位可能に車体側に支持するように構成され、
前記弾性部材は上記軸部側に配置された
請求項1に記載の電動式乗用車両。
【請求項3】
前記弾性部材は上記軸部に外装される筒状の弾性ブロック体であり、
前記弾性ブロック体は、上記駆動ユニットが車体に対して上方に変位した場合に圧縮変形され、該駆動ユニットに弾性力を作用させるように構成された
請求項2に記載の電動式乗用車両。
【請求項4】
少なくとも前記支持部材及び前記弾性部材を一体化させて支持ユニットを構成し、
一の駆動ユニットを複数の支持ユニットによって支持した
請求項
1乃至3の何れかに記載の電動式乗用車両。
【請求項5】
前記支持部材と駆動ユニットとの間、或いは前記支持部材と車体側との間には、互いの衝撃を緩衝する緩衝材を設けた
請求項
1乃至4の何れかに記載の電動式乗用車両。
【請求項6】
前記支持部材が、車体の一部を構成する車台フレームから上方に突出した状態で、該車台フレームに取り付けられた
請求項
1乃至5の何れかに記載の電動式乗用車両。
【請求項7】
前記支持部材を、車体の一部を構成する車台フレームに取り付けるボルトを備え、
該ボルトには前記軸部が形成された
請求項
2に記載の電動式乗用車両。
【請求項8】
前記駆動ユニットを前記支持部材に取り付けるボルトを備え、
該ボルトには前記軸部が形成された
請求項
2又は7の何れかに記載の電動式乗用車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動式乗用車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車輪及び該車輪を駆動させるホイールモータを含む駆動ユニットを備えた特許文献1に示す電動式乗用車両が従来公知である。
【0003】
上記文献の電動式乗用車両によれば、車輪及びホイールモータが一体化され、ホイールモータから車輪に直接的に動力が伝動されるため、トランスミッションのような大掛かりな伝動機構によってエンジンの動力を車輪に伝動する場合と比べ、エネルギー損失が少なく、重量も軽量化される。
【0004】
一方、上記文献の電動式乗用車両では、路面からの衝撃が車輪を介して直接的にホイールモータに伝わるため、その衝撃を和らげる必要がある。
【0005】
このため、複数の支持アーム(同文献では「アッパアーム34」並びに「ロワアーム36」)及び緩衝手段(同文献では「ショックアブソーバ38」)を有するサスペンション(同文献では「車輪懸架部材26」)と、該サスペンションを車体側に支持させる専用の支持フレーム(同文献では「サブフレーム14」)とによって、ホイールモータの非回転部を支持している。
【0006】
該構成によれば、路面からの緩衝をサスペンションによって和らげることが可能になるが、駆動ユニットの支持構造が複雑化し、製造コストを低く抑えることが困難になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、車輪及び該車輪を駆動させるホイールモータを含む駆動ユニットを備え、路面から駆動ユニットに伝わる衝撃を和らげることが可能に該駆動ユニットを車体側に支持し、その支持構造もシンプルな電動式乗用車両を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、電動式乗用車両であって、車輪及び該車輪を駆動させるホイールモータを含む駆動ユニットと、車体側に取付けられた支持部材を含み且つ前記ホイールモータの非回転部を上下方向に直線状に移動可能に車体側に支持する支持機構と、前記駆動ユニットが車体に対して上方に変位した場合に変形して該駆動ユニットに弾性力を作用させる弾性部材と、前記支持部材を上下方向に直線状に移動可能に車体側に取付ける取付機構と、前記支持部材が車体に対して上方に変位した場合に変形して該支持部材に弾性力を作用させる弾性部材とを備え、前記駆動ユニットは上下方向に直線状に移動可能に支持部材に支持され、前記支持部材は支持枠であり、該支持枠の枠内には、前記駆動ユニットに弾性力を作用させる前記弾性部材と、前記支持部材に弾性力を作用させる前記弾性部材とが、前記ホイールモータの非回転部の直線状の移動方向に並べられた状態で配置されたことを特徴とする。
【0010】
前記支持機構は上下方向に形成された軸部を有し、前記支持機構は、上記軸部によって前記ホイールモータの非回転部を該軸部の軸方向に変位可能に車体側に支持するように構成され、前記弾性部材は上記軸部側に配置されたものとしてもよい。
【0011】
前記弾性部材は上記軸部に外装される筒状の弾性ブロック体であり、前記弾性ブロック体は、上記駆動ユニットが車体に対して上方に変位した場合に圧縮変形され、該駆動ユニットに弾性力を作用させるように構成されたものとしてもよい。
【0012】
少なくとも前記支持部材及び前記弾性部材を一体化させて支持ユニットを構成し、一の駆動ユニットを複数の支持ユニットによって支持したものとしてもよい。
【0013】
前記支持部材と駆動ユニットとの間、或いは前記支持部材と車体側との間には、互いの衝撃を緩衝する緩衝材を設けたものとしてもよい。
【0014】
前記支持部材が、車体の一部を構成する車台フレームから上方に突出した状態で、該車台フレームに取り付けられたものとしてもよい。
【0015】
前記支持部材を、車体の一部を構成する車台フレームに取り付けるボルトを備え、該ボルトには前記軸部が形成されたものとしてもよい。
【0016】
前記駆動ユニットを前記支持部材に取り付けるボルトを備え、該ボルトには前記軸部が形成されたものとしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
上記構成によれば、路面からの衝撃によって駆動ユニットが車体に対して上方に変位した場合、駆動ユニットが一直線状に上方に変位し、弾性部材が弾力的に衝撃を吸収するため、その支持構造を簡略化させて路面からの衝撃を和らげることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の電動式乗用車両を適用した電動三輪車の構成を示す平面図である。
【
図2】本発明の電動式乗用車両を適用した電動三輪車の構成を示す側面図である。
【
図3】本発明の電動式乗用車両を適用した電動三輪車の構成を示す正面図である。
【
図4】本電動三輪車のフレーム構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1乃至
図3は本発明の電動式乗用車両を適用した電動三輪車の構成を示す平面図、側面図及び正面図であり、
図4は本電動三輪車のフレーム構造を示す斜視図である。図示する電動三輪車は、単一の前輪1と、左右一対の後輪2、2と、この3つの車輪1,2,2に支持された車体3とを備えている。
【0020】
車体3は、3つの車輪1,2に支持される車台フレーム4と、該車台フレーム4の前端部から上方に形成され且つ正面視で逆U字状に形成されたフロントフレーム6と、該車台フレーム4の後端部から上方に形成され且つ正面視で逆U字状に形成されたリヤフレーム7と、フロントフレーム6の上部とリヤフレーム7の上部との間に架設され且つ左右方向に並列された複数(図示する例では4本)の前後方向に延びるルーフフレーム8を有している。
【0021】
車台フレーム4の後部の左右両側には、それぞれ切欠き状をなす配置スペース9,9が形成されている。この左右の設置スペース9,9には、後輪2,2が配置される。フロントフレーム6の左右幅と、車台フレーム4の前端部の左右幅とは同一又は略同一に設定されている。リヤフレーム7の左右幅と、車台フレーム4の後端部の左右幅とは同一又は略同一に設定されている。これらのフレーム4,6,7,8は、車体3のフレーム部(機体フレーム)3aの少なくとも一部を構成している。また、フロントフレーム6と、リヤフレーム7との間には車内空間11が形成されている。
【0022】
車内空間11は、車台フレーム4上に敷設された板状部材によって床面12が形成され、前方がフロントフレーム6に取付けられたフロントパネル13によってカバーされ、後方がリヤフレーム7に取付けられたリヤパネル(図示しない)によってカバーされ、上方がルーフフレーム8によって支持されたルーフパネル14によってカバーされている。
【0023】
このフロントパネル13の中央部には透明なフロントガラス16が設置され、車内空間11から前方への視界が確保されている。また、このフロントパネル13におけるフロントガラス16の下方には、前方を照らすフロントライト17,17が左右一対で設置されている。一方、リヤパネルにも覗き窓が設けられ、その下部寄り部分の左右2箇所には、リヤランプ18がそれぞれ設置されている。
【0024】
また、車内空間12には、運転席19と、該運転席19の後方に配置された後部座席21とが設けられている。
【0025】
運転席19は、車台フレーム4の前端部から上方に突設された前フレーム22と、前フレーム22の真後ろ側において車台フレーム4から上方に突設された後フレーム23と、前フレーム22と後フレーム23との間に架設され且つ前方斜め上方に延びる前後フレーム24と、前後フレーム24の前端部に固設され且つ上下方向に形成された支持筒26と、後フレーム23及び前後フレーム24に支持されたサドル(座部)27と、前記支持筒26に挿通される回動軸28と、該回動軸28の上端部に取付固定され且つ該上端部から左右に二股に分かれるハンドル29とを備えている。
【0026】
前記回動軸28は、ハンドル29側から前方斜め下方に延びるフロントフォーク31の一部を構成している。このフロントフォーク31は、サスペンションの機能を有し、その下端部に前輪1を回転自在に支持している。また、前輪1に左右で隣接する位置には、前輪1と一体回転する回転ディスク32が配設され、前輪1に制動力を作用させるディスクブレーキの一部を構成している。
【0027】
該構成の運転席19によれば、サドル27に着座し且つ足を床面12に乗せた運転手が、ハンドル28の左右両側を把持し、該ハンドル28によって、回動軸28の軸回りにフロントフォーク31を回動させ、前輪1の向きを変更する操向操作を行う。
【0028】
また、前後フレーム24の中途部の上面側には、操作パネル33が設置されている。この操作パネル33によって始動、停止等の各種操作を行うことが可能になる。また、この操作パネル33には、速度計も設けられ、本電動三輪車の走行速度を目視で確認できる。
【0029】
後部座席21は、複数人の運転手でない乗客等の搭乗者が着座可能なベンチシートである。この後部座席21は、車台フレーム4上の後部においてボックス状に形成された座席フレーム34と、座席フレーム34の上面に敷設された座部36と、該座部36の後方に配置された背もたれ37と、座部36及び背もたれ37の左右両側方にそれぞれ配置されたサイドフレーム38とを有している。
【0030】
左右のサイドフレーム38,38は、座部36に着座した一又は複数の搭乗者が側方から車外に落下することを防止する柵としても機能する。
【0031】
座席フレーム34の左右両側部分は、配置スペース9を避けるように平面視でそれぞれ切欠き状に成形されている。また、この座席フレーム34の内部には収容スペース39が形成され、四方が図示しない複数のカバー体によって覆われ、該カバー体又は座部36を開閉又は取外すことによって、この収容スペース39にアクセス可能である。
【0032】
この収容スペース39には、メインバッテリ(図示しない)及び補助バッテリ41と、メインバッテリ及び補助バッテリ41からホイールモータ42,42に電力を供給する供給回路43と、各種制御を行う制御ユニット44と、電源のON・OFFを行うメインスイッチ46等が収容されている。
【0033】
ホイールモータ42,42は左右の後輪2,2毎に設けられた電動モータの一種である。このホイールモータ42は、動力を後輪2に直接伝動するダイレクトドライブ方式又は動力を減速機を介して後輪2に伝動するギアリダクション方式の何れを採用してもよく、後輪2のハブ内部に少なくとも一部が装着され且つ該ハブと一体化されている。言換えると、後輪2及びホイールモータ42は一体化されている。
【0034】
供給回路43は、図示する例では、DC/DCコンバータを含み、メインバッテリ又は補助バッテリ41からの電圧を前記ホイールモータ42に対応した適切な電圧に下降又は上昇させ、該ホイールモータ42に電力を供給する。ちなみに、その他の半導体素子、インバータ又はコンバータを組合せて供給回路43を構成してもよい。
【0035】
制御ユニット44は、運転席19からの操作や外部環境に応じて、供給回路43を介したホイールモータ42,42への電力供給を制御する。
【0036】
本電動三輪車では、運転手が、メインスイッチ46をONに切換え、運転席19に着座し、後部座席21に一又は複数の搭乗者を乗せ、ハンドル29で操向操作を行いながら加速操作又はブレーキ操作によって加減速を行うことにより、車体3を走行させる。
【0037】
【0038】
図6,
図7は、後輪の支持構造を示す側面図及び背面図である。左右の各配置スペース9,9には、水平に前後に延びる方形板状に成形され且つ車台フレーム4(車体3)の一部を構成する取付ブラケット47が左右内側に寄せて設けられ、この取付ブラケット47上には、複数(図示する例では前後一対)の支持ユニット48,48を介して、車輪2及びホイールモータ42を一体化してなる駆動ユニット49が上下動可能に弾力支持されている。
【0039】
上記ホイールモータ42は、車体3側に取付けられる非回転部51と、該非回転部51の外側側方に配置され且つ該車体3に対して回転作動する回転部52とを有している。
【0040】
非回転部51は、前後方向に延びる被取付フレーム53と、該被取付フレーム53の前後中途部(具体的には中間部)から下方に突出し且つ直方体状に成形された支持体54とを一体的に有して側面視でT字状に成形されている。被取付フレーム53は、上方が開放されたU字状断面視を有するチャネル状部材である。
【0041】
回転部52は、大部分が車輪2内に収容され且つ支持体53に回転自在に支持されている。この回転部52は、車輪2のハブ内と一体化し且つ該車輪2と一体で回転するロータ56と、このロータ56と支持体54との間に配置され且つ該ロータ56と一体で回転する回転軸57とを有している。
【0042】
ロータ56及び回転軸57の回転軸心Xは、該車体3の全長方向に対して垂直で且つ水平な方向に向けられている。また、左右のホイールモータ42,42は、支持体54,54同士が、左右方向に延びる丸パイプ状に成形された連結フレーム58によって連結固定され、互いの回転軸心Xも同一の軸心上に設定されている。
【0043】
また、回転軸57には、該回転軸57と一体回転する回転ディスク59が装着され、この回転ディスク59は、制動機構の一種であるディスクブレーキ61の一部を構成している。このディスクブレーキ61は、被取付フレーム53に設置され且つ前記ディスクブレーキの一部を構成する制動装置62によって制動され、後輪2にブレーキをかける。
【0044】
上記支持ユニット49は、側面視で方形状に成形された支持枠63と、該支持枠63の枠内に配置された上下一対の弾性ブロック体(弾性部材)64,66とを一体的に有し、ホイールモータ42、42毎に前後一対で設けられている。
【0045】
まず、この支持ユニット49の取付ブラケット47への取付構造について説明する。前記支持枠63を、ボルト67及びナット68によって取付ブラケット47上に取付けている。ボルト67は、支持枠63の下部と取付ブラケット47とを上下に貫く軸部67aを有している。
【0046】
支持枠63の枠内の下側に配置された弾性ブロック体64は、ボルト67の軸部67aに外装可能なように筒状に形成される。このようにして軸部67aに外装された弾性ブロック体64は、支持枠63の下側内面(底面)と、ボルト67のヘッド部分又はナット68との間に弾力的に挟持されている。
【0047】
該構造によれば、支持枠63が、ボルト67の軸部67aの軸方向(上下方向に直線状)に移動可能に取付ブラケット47(車体3側)に取付けられる。言換えると、ボルト67及びナット68が、支持枠63を軸部67aの軸方向に移動可能に車体3側に取付ける取付機構を構成している。
【0048】
そして、支持枠63を上方に変位させる衝撃力が作用した場合、前記弾性ブロック体64が、圧縮側に弾性変形して該衝撃力を打消す側である下方に弾性力を作用させ、この衝撃を吸収する。
【0049】
また、支持枠63の外面下側(下端面)と、取付ブラケット47とに間には、弾性変形可能な緩衝材69が介在している。この緩衝材69は、上述した軸部67aに外装される筒状に形成され且つ外周は下方に向かって径が次第に減少する円錐台状に成形されている。そして、支持枠63を下方に変位させる衝撃力が作用した場合、この緩衝材69は、該支持枠63と取付ブラケット47との間で弾性変形して、その衝撃を和らげる。
【0050】
続いて、前後一対の支持ユニット49、49へのホイールモータ42の支持構造について説明すると、前後の支持ユニット49、49の支持枠63,63の間に支持体54が位置した状態で、被取付フレーム53の左右両側部分を、夫々、左右の支持枠63,63の上面に載置して支持させた状態で、該左右の支持枠63,63の上面にボルト71及びナット72によって取付ける。ボルト71は、被支持フレーム53の底部分と支持枠63の上部とを上下に貫く軸部71aを有している。
【0051】
支持枠63の枠内の上側に配置された弾性ブロック体66は、ボルト71の軸部71aに外装可能なように筒状に形成される。このようにして軸部71aに外装された弾性ブロック体66は、支持枠63の上側内面(天井面)と、ボルト71のヘッド部分又はナット72との間に弾力的に挟持されている。
【0052】
該構造によれば、複数(図示する例では前後一対)の支持ユニット49,49によって、駆動ユニット49(ホイールモータ42)が、ボルト71の軸部71aの軸方向(上下方向に直線状)に移動可能に支持枠63(車体3側)に取付けられる。言換えると、前後一対の支持ユニット49,49が、駆動ユニット49(ホイールモータ42)を、互いに平行な前後の軸部71aの軸方向に移動可能に車体3側に支持する支持機構を構成している。
【0053】
そして、駆動ユニット49(ホイールモータ42)を上方に変位させる衝撃力が作用した場合、前記弾性ブロック体66が、圧縮側に弾性変形して該衝撃力を打消す側である下方に弾性力を作用させ、この衝撃を吸収する。
【0054】
また、支持枠63の上側外面(上端面)と、被取付フレーム53の下面との間には、弾性変形可能な緩衝材73が介在している。この緩衝材73は、上述した軸部71aに外装される筒状に形成され且つ外周は上方に向かって径が次第に減少する円錐台状に成形されている。そして、駆動ユニット49(ホイールモータ42)を下方に変位させる衝撃力が作用した場合、この緩衝材73は、該支持枠63と被取付フレーム53との間で弾性変形して、その衝撃を和らげる。
【0055】
ちなみに、各支持枠63の枠内に少なくとも一部が位置している上下の軸部67a,71aは、同一の軸心Yを有している。このため、支持枠63及び駆動ユニット49は、この軸心Yに沿う方向(具体的には平行な方向)に移動作動する。
【0056】
以上のような支持構造によれば、複雑なサスペンション等の機構を設けることなく、路面からの衝撃を吸収できるため、構成が簡略化される。特に、車体3が凹凸のある路面を走行している際、該路面からの衝撃に起因して駆動ユニット49が支持ユニット49に対して上方に変位した場合、これに伴って支持ユニット49も取付ブラケット47に対して上方に変位し、上下の弾性ブロック体64,66によって、段階的に衝撃が吸収されるため、その効果は大きい。
【0057】
また、弾性ブロック体64,66も圧縮スプリング等に比べ、構成もシンプルで、価格も安いため、さらなるコスト低減を図ることが可能になる。
【0058】
さらに、この弾性ブロック体64,66は、支持枠63の枠内に収容され、別途スペースを用意する必要がないため、全体をコンパクトに形成することも容易になる。この他、弾性ブロック体64,66は、軸部67a,71a上にコンパクトに配置されるため、その意味でも、省スペース化に寄与している。
【0059】
しかも、この弾性ブロック体64,66は、軸部67a,71aが挿通される筒状に形成され、駆動ユニット49又は支持枠63の軸部67a,71aの軸方向への移動を案内するガイドとしても機能するため、部品点数の削減にも寄与している。
【0060】
一方、駆動ユニット49が支持ユニット49に対して下方に変位したことに起因して、ホイールモータ42と支持枠63の間、或いは、支持枠63と取付ブラケット47の間に衝撃が生じた場合、この衝撃が上下の緩衝材69,73によって緩和される。
【0061】
なお、本発明の電動式乗用車両は、三輪車に限定されるものではなく、左右一対の前輪1,1及び左右一対の後輪2,2を有する四輪車に適用することも可能である。この場合には、ホイールモータ42及び複数の支持ユニット49を、左右の前輪1にそれぞれ設けてもよいし、或いは左右の後輪2にそれぞれ設けてもよい。
【0062】
また、4つの以上の車輪を有する大型のトラック等の乗用車両に本発明を適用してもよい。
【0063】
さらに、弾性部材は、軸部に67a,71aに外装される弾性ブロック体64,66に限定されるものではなく、路面からの衝撃を吸収できるものであれば、コイルスプリング等の軸部67a,71aに外装可能な圧縮バネや、引張スプリングや、板バネ等であってもよい。
【符号の説明】
【0064】
2 後輪(車輪)
3 車体
42 ホイールモータ(電動モータ)
49 駆動ユニット
51 非回転部
63 支持枠(支持部材)
64 弾性ブロック体(弾性部材)
66 弾性ブロック体(弾性部材)
69 緩衝材
71a 軸部
73 緩衝材