(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】生体情報収集システム及びセンサユニット
(51)【国際特許分類】
A61B 5/087 20060101AFI20220111BHJP
A61B 5/02 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
A61B5/087
A61B5/02 H
(21)【出願番号】P 2020116274
(22)【出願日】2020-07-06
【審査請求日】2020-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】511217212
【氏名又は名称】株式会社コスモスウェブ
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(73)【特許権者】
【識別番号】510108951
【氏名又は名称】公立大学法人広島市立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100074147
【氏名又は名称】本田 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】吉村 直幸
(72)【発明者】
【氏名】丸田 勝弘
(72)【発明者】
【氏名】郷古 重成
(72)【発明者】
【氏名】須田 勉
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 信
(72)【発明者】
【氏名】川部 勤
(72)【発明者】
【氏名】松島 充代子
(72)【発明者】
【氏名】式田 光宏
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 義大
【審査官】樋口 祐介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/125842(WO,A1)
【文献】特開2019-194538(JP,A)
【文献】特表2007-525267(JP,A)
【文献】特表2002-535024(JP,A)
【文献】藤範知弘,他4名,呼吸と体温の両計測が可能な MEMS 流量センサの開発,第35回「センサ・マイクロマシンと応用システム」 シンポジウム論文集,2018年10月23日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B5/02-5/03
A61B5/06-5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気道または口腔の呼吸流路に配置される機器に取り付けられ、前記呼吸流路に設けられた流量センサと温度センサと、前記流量センサにより得られる流量データと前記温度センサにより得られる温度データとを送信する送信部と、を備えるセンサユニットと、
前記送信部から送信される流量データと温度データとを受信する受信部と、この受信部が受信した流量データに基づき、呼吸数情報、換気量情報、心拍数情報、
血圧(または心拍出量)情報を生成すると共に、前記温度データに基づき体温情報を生成する生体情報生成手段と、前記生体情報生成手段が生成した呼吸数情報、換気量情報、心拍数情報、
血圧(または心拍出量)情報、体温情報に基づき情報の出力を行う出力制御部とを具備する中央ユニットとを有
し、
前記センサユニットは、筒状のセンサホルダを有し、該センサホルダの筒部分における筒の直径に沿って筒内には、
温度センサと2つの流量センサを集積化して設けたセンサフィルムが設けられると共に、
前記センサフィルムに当たる呼気・吸気を整流するための第1の整流板と第2の整流版により構成される整流体が設けられ、
前記第1の整流板と前記第2の整流板は、相互に対向する側に突出した複数条のリブを有し、対向するリブは相互に前記センサフィルムの同じ位置に表面と裏面から当接し、前記第1の整流板と前記第2の整流板とリブにより囲まれた空間は、呼吸流路を構成することを特徴とする生体情報収集システム。
【請求項2】
口腔の呼吸流路に配置される前記機器は、
医療用フェイスマスクであることを特徴とする請求項1に記載の生体情報収集システム。
【請求項3】
前記センサユニットには、
前記気道または前記口腔の呼吸流路に配置される機器から突出した短管と、
前記流量センサにより得られる信号に基づき流量データに対応する信号を測定する測定回路と、前記温度センサにより得られる信号に基づき温度データに対応する信号を測定する温度測定回路と、前記測定回路の出力と前記温度測定回路の出力とをディジタル化して前記送信部へ送るA/D変換回路と、前記送信回路とが実装され、前記短管が挿入される穴部が形成されたプリント基板とが、
備えられており、
前記プリント基板は、前記短管が挿入された状態で下ケースに設けられ、この下ケースが上ケースにより蓋をされており、
前記センサユニットの使用時に該センサユニット内を流れるユーザの呼吸が前記プリント基板に漏れぬように、前記上ケースと前記短管の結合部分に形成された段部をシールするOリングが設けられることを特徴とする請求項1または2に記載の生体情報収集システム。
【請求項4】
前記出力制御部は、時系列で生成される呼吸数情報、換気量情報、心拍数情報、
血圧(または心拍出量)情報、体温情報の値に基づき作成されたグラフを出力することを特徴とする請求項
1または2に記載の生体情報収集システム。
【請求項5】
送信される流量データと温度データとを受信する受信部と、この受信部が受信した流量データに基づき、呼吸数情報、換気量情報、心拍数情報、
血圧(または心拍出量)情報を生成すると共に、前記温度データに基づき体温情報を生成する生体情報生成手段と、前記生体情報生成手段が生成した呼吸数情報、換気量情報、心拍数情報、
血圧(または心拍出量)情報、体温情報に基づき情報の出力を行う出力制御部とを具備する中央ユニットへ流量データと温度データとを送信するセンサユニットであって、
気道または口腔の呼吸流路に配置される機器に取り付けられ、前記呼吸流路に設けられた流量センサと温度センサと、
前記流量センサにより得られる流量データと前記温度センサにより得られる温度データとを送信する送信部と
、を備え、
前記センサユニットは、筒状のセンサホルダを有し、該センサホルダの筒部分における筒の直径に沿って筒内には、
温度センサと2つの流量センサを集積化して設けたセンサフィルムが設けられると共に、
前記センサフィルムに当たる呼気・吸気を整流するための第1の整流板と第2の整流版により構成される整流体が設けられ、
前記第1の整流板と前記第2の整流板は、相互に対向する側に突出した複数条のリブを有し、対向するリブは相互に前記センサフィルムの同じ位置に表面と裏面から当接し、前記第1の整流板と前記第2の整流板とリブにより囲まれた空間は、前記口腔の呼吸流路に続く呼吸流路を構成することを特徴とするセンサユニット。
【請求項6】
口腔の呼吸流路に配置される前記機器は、
医療用フェイスマスクであることを特徴とする請求項5に記載のセンサユニット。
【請求項7】
筒状のセンサホルダにおける筒部の中央に長手方向に沿って、流量センサと温度センサが設けられた基板を支持する支持枠を備えることを特徴とする請求項5または6に記載のセンサユニット。
【請求項8】
医療用フェイスマスクに着脱自在に取り付け可能とする取付部を備えることを特徴とする請求項6に記載のセンサユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、生体情報収集システム及びセンサユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、人の健康状態などを把握するためには、体温、呼吸数、血圧(または心拍出量)情報などの生体情報については、それぞれの生体情報に対応した計測デバイス(センサ)を用い、かつ、1つの計測デバイスから得られた情報からは1つの生体情報を得ているに過ぎず、1つの計測デバイスから得られた情報を用いて簡便に複数の生体情報を得るようなことはできない。
【0003】
また、生体情報の測定に際しては、無拘束条件下で、いつでもどこでも計測することは難しいという課題がある。ところで、昨今のセンサデバイスの小型化などにより、手軽なウエアラブル計測装置が開発され、これにより呼吸数、心拍数、体温などの生体情報が簡便に計測できるようになった。しかしながら、現行のウエアラブル計測装置では、呼吸量、心拍出量などの生体情報に対する定量的な計測評価ができないという問題がある。その結果、上記ウエアラブル計測装置の用途は日常生活におけるモニタリングレベルに留まり、生体情報に対する高精度かつ定量的な数値を必要とする医療用としては適用できないものである。
【0004】
特許文献1には、体重センサ、体温センサ、体脂肪センサ、血液型センサ、血圧(心拍出量)センサ、血糖センサ、酸化飽和度センサ、心拍センサ、脳電図センサ、心電図センサ、筋電図センサ、眼電図センサ、電気皮膚反応センサなどの各種センサを用いて健康状態の把握を行うことが記載されている。
【0005】
特許文献2には、心拍センサ、血圧(心拍出量)センサ、発汗センサ及び体温センサなどを用いて、記録時のユーザの感情を他のユーザが体験できるようにした装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2013-540454号公報
【文献】特開2017-211862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の実施形態は、呼吸数情報、換気量情報、心拍数情報、血圧(または心拍出量)情報、体温情報を簡易な構成により得るようにする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態に係る生体情報収集システムは、気道または口腔の呼吸流路に配置される機器に取り付けられ、前記呼吸流路に設けられた流量センサと温度センサと、前記流量センサにより得られる流量データと前記温度センサにより得られる温度データとを送信する送信部と、を備えるセンサユニットと、前記送信部から送信される流量データと温度データとを受信する受信部と、この受信部が受信した流量データに基づき、呼吸数情報、換気量情報、心拍数情報、血圧(または心拍出量)情報を生成すると共に、前記温度データに基づき体温情報を生成する生体情報生成手段と、前記生体情報生成手段が生成した呼吸数情報、換気量情報、心拍数情報、血圧(または心拍出量)情報、体温情報に基づき情報の出力を行う出力制御部とを具備する中央ユニットとを有し、前記センサユニットは、筒状のセンサホルダを有し、該センサホルダの筒部分における筒の直径に沿って筒内には、温度センサと2つの流量センサを集積化して設けたセンサフィルムが設けられると共に、前記センサフィルムに当たる呼気・吸気を整流するための第1の整流板と第2の整流版により構成される整流体が設けられ、前記第1の整流板と前記第2の整流板は、相互に対向する側に突出した複数条のリブを有し、対向するリブは相互に前記センサフィルムの同じ位置に表面と裏面から当接し、前記第1の整流板と前記第2の整流板とリブにより囲まれた空間は、呼吸流路を構成することを特徴とする。
【0009】
本発明の実施形態に係る生体情報収集システムでは、口腔の呼吸流路に配置される前記機器は、医療用フェイスマスクであることを特徴とする。
【0010】
本発明の実施形態に係る生体情報収集システムでは、前記センサユニットには、前記気道または前記口腔の呼吸流路に配置される機器から突出した短管と、前記流量センサにより得られる信号に基づき流量データに対応する信号を測定する測定回路と、前記温度センサにより得られる信号に基づき温度データに対応する信号を測定する温度測定回路と、前記測定回路の出力と前記温度測定回路の出力とをディジタル化して前記送信部へ送るA/D変換回路と、前記送信回路とが実装され、前記短管が挿入される穴部が形成されたプリント基板とが、備えられており、前記プリント基板は、前記短管が挿入された状態で下ケースに設けられ、この下ケースが上ケースにより蓋をされており、前記センサユニットの使用時に該センサユニット内を流れるユーザの呼吸が前記プリント基板に漏れぬように、前記上ケースと前記短管の結合部分に形成された段部をシールするOリングが設けられることを特徴とする。
【0011】
本発明の実施形態に係る生体情報収集システムでは、前記出力制御部は、時系列で生成される呼吸数情報、換気量情報、心拍数情報、血圧(または心拍出量)情報、体温情報の値に基づき作成されたグラフを出力することを特徴とする。
【0012】
本発明の実施形態に係るセンサユニットは、送信される流量データと温度データとを受信する受信部と、この受信部が受信した流量データに基づき、呼吸数情報、換気量情報、心拍数情報、血圧(または心拍出量)情報を生成すると共に、前記温度データに基づき体温情報を生成する生体情報生成手段と、前記生体情報生成手段が生成した呼吸数情報、換気量情報、心拍数情報、血圧(または心拍出量)情報、体温情報に基づき情報の出力を行う出力制御部とを具備する中央ユニットへ流量データと温度データとを送信するセンサユニットであって、気道または口腔の呼吸流路に配置される機器に取り付けられ、前記呼吸流路に設けられた流量センサと温度センサと、前記流量センサにより得られる流量データと前記温度センサにより得られる温度データとを送信する送信部と、を備え、前記センサユニットは、筒状のセンサホルダを有し、該センサホルダの筒部分における筒の直径に沿って筒内には、温度センサと2つの流量センサを集積化して設けたセンサフィルムが設けられると共に、前記センサフィルムに当たる呼気・吸気を整流するための第1の整流板と第2の整流版により構成される整流体が設けられ、前記第1の整流板と前記第2の整流板は、相互に対向する側に突出した複数条のリブを有し、対向するリブは相互に前記センサフィルムの同じ位置に表面と裏面から当接し、前記第1の整流板と前記第2の整流板とリブにより囲まれた空間は、前記口腔の呼吸流路に続く呼吸流路を構成することを特徴とする。
【0013】
本発明の実施形態に係るセンサユニットでは、口腔の呼吸流路に配置される前記機器は、医療用フェイスマスクであることを特徴とする。
【0014】
本発明の実施形態に係るセンサユニットでは、筒状のセンサホルダにおける筒部の中央に長手方向に沿って、流量センサと温度センサが設けられた基板を支持する支持枠を備えることを特徴とする。
【0015】
本発明の実施形態に係るセンサユニットでは、医療用フェイスマスクに着脱自在に取り付け可能とする取付部を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る生体情報収集システムの機能ブロック図。
【
図2】本発明の実施形態に係るセンサユニットの使用状態を示す側面図。
【
図3】本発明の実施形態に係るセンサユニットの組み立て斜視図。
【
図4】本発明の実施形態に係るセンサユニットに用いられるセンサホルダの第1のケース255Aと第2のケース255Bとの接合面から第2のケース255B側の断面図。
【
図5】本発明の実施形態に係るセンサユニットに用いられるセンサホルダの組み立て斜視図。
【
図6】本発明の実施形態に係る生体情報収集システムにおいて表示される波形の一例を示す図。
【
図7】本発明の実施形態に係るセンサユニットが接続される気管挿管チューブの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下添付図面を参照して、本発明の実施形態に係る生体情報収集システム及びセンサユニットを説明する。各図において、同一の構成要素には同一の符号を付して重複する説明を省略する。
図1に、本発明の実施形態に係る生体情報収集システム100及びセンサユニット200の機能ブロック図を示す。
【0018】
図1に示すように、生体情報収集システム100は、センサユニット200と中央ユニット300とを有する。センサユニット200は、流量センサ21A、21Bと温度センサ22とを備える。この流量センサ21A、21Bと温度センサ22は、温度によって抵抗が変化する熱抵抗素子により構成される。流量センサ21Aは、国際公開WO2016/125842号の気体流速計測回路38の一方のブリッジ回路(第1のブリッジ回路)に組み込まれ、流量センサ21Aは、国際公開WO2016/125842号の気体流速計測回路38の他方のブリッジ回路(第2のブリッジ回路)に組み込まれる。
【0019】
流量センサ21A、21Bが接続されている測定回路23は、国際公開WO2016/125842号の気体流速計測回路38と同一の構成である。測定回路23は、第1のブリッジ回路の出力電圧Vout1と第2のブリッジ回路の出力電圧Vout2と気体流速計測回路38の出力電圧Voutを出力する。温度センサ22は、定電流回路により定電流が供給される温度測定回路24に接続される。温度測定回路24は、上記で定電流回路の電流が温度センサ22に流れることにより生じる電圧を出力する。
【0020】
上記測定回路23の出力は流量算出に使用可能であるから、本実施形態では流量データと称する。この測定回路23の出力である流量データはA/D変換回路25によりディジタル化されて送信部27へ送られる。温度測定回路24の出力である温度データもA/D変換回路26によりディジタル化されて送信部27へ送られる。
【0021】
中央ユニット300は、パーソナルコンピュータシステムと同程度のコンピュータシステムによって実現される。即ち、中央ユニット300は、CPU310が主メモリ320のプログラムやデータを用いて所要の演算を行い、各部を制御する構成のコンピュータシステムである。CPU310には、バス330を介して外部記憶コントローラ340、通信コントローラ350、入力コントローラ360、出力コントローラ370に接続されている。
【0022】
外部記憶コントローラ340には、外部記憶装置345が接続されている。外部記憶装置345には、CPU310が用いるプログラムやデータなどが記憶されており、CPU310は必要なプログラムやデータを主メモリ320へ読み込んで、これを用いて演算や各部を制御することができる。
【0023】
通信コントローラ350には、受信部及び送信部を含む通信部355が接続されている。送信部27から送られた流量データと温度データは、この通信部355により受信し、CPU310が通信コントローラ350を介して取り込むことができる。
【0024】
入力コントローラ360には、情報を入力するためのキーボードやタッチパネル、更にはポインティグデバイスであるマウスなどにより構成される入力装置365が接続される。この入力装置365からコマンドやデータなどを入力して、コンピュータシステムを動作させることができる。
【0025】
出力コントローラ370には、LEDなどの各種ディスプレイ装置やプリンタなどの出力装置375が接続されている。CPU310は、必要な生体情報などを文字により或いはグラフにしてこの出力装置375から出力(表示やプリントアウト)することができる。
【0026】
本実施形態のセンサユニット200は、
図2に示すように、気道または口腔の呼吸流路に配置される機器である医療用フェイスマスク500に取り付けられるものである。
図3の220は、マスク固定用部品である。このマスク取付部品220は、
図3に示す医療用フェイスマスク500の中央部から突出した短管210の外壁に比較的固く嵌った状態で、この外周に沿って摺動する径のリング部221を備える。リング部221の周縁からは1/4周ごとに、アーム222が突出して設けられ、アーム222の先端には、医療用フェイスマスク500から離れる方向に突出したフック223が形成されている。
【0027】
230は、下ケースである。下ケース230は皿の形状を有し、周縁が立ち上がって形成され、中央部には、上記の短管210が挿入される穴部231が形成されている。更に、下ケース230の内部には、ドーナツ盤状に形成されたプリント基板232が設けられている。このプリント基板232には、測定回路23、温度測定回路24、A/D変換回路25、26、送信部27が設けられる。
【0028】
240は、上ケースである。上ケース240は、下ケース230の蓋として機能するものであり、下ケース230に対応した皿の形状を有し、周縁が立ち上がって形成され、中央部には、上記の短管210が挿入される穴部241が形成されている。穴部241における上部の周縁には、僅かな段部242が形成されるように、穴部241の周縁からホルダ受容壁243が設けられている。
【0029】
ホルダ受容壁243は、円柱に直方体を繋いだ形状のセンサホルダ250を受け入れ可能な形状であり、基本的に円筒形であり、円筒の一部が切り欠かれている。この切り欠かれた部分から上ケース240の周縁に向けて、上記ホルダ受容壁243の直方体部分を配置可能にガイド244が形成されている。
【0030】
上ケース240の段部242には、Oリング270が介装される。この状態でホルダ受容壁243に対して上方からセンサホルダ250を収容させることにより、ホルダ受容壁243の円柱部分の底部周縁部と上記段部242との間がOリング270によりシールされ、センサユニット200の使用時にユーザの呼吸が基板232に漏れることによる基板232の汚染を防止し、かつ正確な測定を可能とする。
【0031】
図4、
図5に示すように、センサユニット200は、例えば、筒状のセンサホルダ250を有し、このセンサホルダ250における筒部の長手方向に沿って、流量センサと温度センサが設けられる。具体的な一例としては、センサホルダ250の円筒部分における筒の直径に沿って筒内には、流量センサ21A、21Bと温度センサ22を集積化して設けたセンサフィルム901に当たる呼気・吸気を整流するための整流板251A、251Bにより構成される整流体251が設けられている。流量センサ21A、流量センサ21Bはセンサフィルム901において、一方がマスクから遠い側に設けられ、他方がマスクに近い側に設けられる。整流板251Aと整流板251Bとは、相互に対向する側に突出した複数条のリブ52を有している。対向するリブ52は相互にセンサフィルム901及び絶縁板902の同じ位置に表面と裏面から当接し、整流板251A、251Bとリブ52により囲まれた空間は、呼吸流路を構成する。流量センサ21A、21Bは、筒状のセンサホルダ250の筒における内壁などに設けられる構造であっても良い。
【0032】
センサフィルム901は、コの字状の中継基板903とコネクタ904を介して
図1の測定回路23や
図1の温度測定回路24が搭載されたプリント基板232に繋がっている。センサホルダ250は、円柱に側部から直方体を結合した形状により構成されるケースを2等分した第1のケース255Aと第2のケース255Bとを結合したケーシングを備えている。第1のケース255Aは整流板251Aを含み、第2のケース255Bは整流板251Bを含む。第1のケース255Aと第2のケース255Bの直方体部分には、互いに向き合う位置に先端部に凹部と凸部が形成されたボス252が形成され、このボス252は中継基板903の穴を介して相互に結合されることにより、センサ900が固定される。
【0033】
第1のケース255Aと第2のケース255Bの円筒部分と直方体部分との境界には、パッキン254が介装され、呼吸が円筒部分から直方体部分へ漏れ出すのを防止し、高精度な測定を保証している。第1のケース255Aの端部に設けられた被抑え板256、256は、第2のケース255Bの端部近傍に設けられた抑え片257、258間で嵌め込まれて第1のケース255Aと第2のケース255Bが結合される。第2のケース255Bの円筒部外壁に設けられた図示されている凹部259Bと、この凹部259Bの対応する位置であって、第1のケース255Aの円筒部外壁に設けられた図示しない凹部259Aとは、上ケース240のホルダ受容壁243の対応位置に形成されている爪片245(
図3)により弾性的に押圧され、センサホルダ250が上ケース240に固定される。
【0034】
以上のように組み立てられるセンサユニット200には、
図1の流量センサ21A、21Bと温度センサ22が集積化されて設けられており、整流板251A、251Bにより構成される整流体251(
図3)が呼吸流路を構成している。このように、流量センサ21A、21Bと温度センサ22を備えるセンサユニット200は、気道または口腔の呼吸流路に配置される機器であるマスク500に取り付けられる。
【0035】
このセンサユニット200によって測定され、ディジタル化されて
図1に示す送信部27から送られた流量データと温度データとは、
図1に示すように、中央ユニット300の通信部355により受信され、通信コントローラ350を介してCPU310が取り込む。CPU310は電圧である温度データを例えば、電圧と温度の変換テーブルを用いて温度情報へ変換し、出力コントローラ370へ送り出力装置375から出力させる。
【0036】
流量データは、既に述べた通り、第1のブリッジ回路の出力電圧Vout1と第2のブリッジ回路の出力電圧Vout2と気体流速計測回路38の出力電圧Voutである。これに基づき、気道または口腔の呼吸流路における往方向及び復方向の気体流の方向を示す波形を求めること、即ち、1呼吸周期の波形を求めることが国際公開WO2016/125842号に掲載されている。CPU310は、この手法により1呼吸周波の波形を求めて、呼吸数情報並びに気流の量的変化である換気量情報を得ることができる。
【0037】
上記流量データに基づき気体流量を求めることが国際公開WO2016/125842号に掲載され、呼吸信号から心拍波形を示す心拍信号を抽出することが記載されている。この手法に必要なデータ等を外部記憶装置345に記憶しておき、これをCPU310が用いて心拍数情報を得ることができる。
【0038】
本実施形態に係る生体情報収集システム100は、血圧(または心拍出量)情報を得て出力する。心拍数と血圧(心拍出量)については、以下のように解析することができる。このセンサユニット200は、物理量の変化を測定するものであり、得られた心拍数(回/分)と、心拍出量(mL/分)は、以下のような関係がある。
心拍出量(mL/分)=1回拍出量(mL)×心拍数(回/分)
この流量センサで得られた心拍運動に伴う物理量の変化は心拍出量を反映し、「1回拍出量(mL)」の相対的な評価をすることができる。つまり、
心拍出量(mL/分)∝
[この流量センサで得られた心臓の収縮に伴う容積変化(mL)]×心拍数(回/分)
という関係が成り立つ。
【0039】
一方、血圧は、以下のように心拍出量(mL/分)と末梢血管抵抗(mmHg/(mL/分))の関係がある。
血圧=心拍出量(mL/分)x末梢血管抵抗(mmHg/(mL/分))
「末梢血管抵抗(mmHg/(mL/分)」は、この流量センサでは計測できないが、血圧と心拍出量の間には
血圧∝[この流量センサで得られた心臓の収縮に伴う容積変化(mL)]×心拍数(回/分) x末梢 血管抵抗
つまり、血圧∝[この流量センサで得られた心臓の収縮に伴う容積変化(mL)]
の関係が成り立ち、[この流量センサで得られた心臓の収縮に伴う容積変化(mL)]は血圧の変動を反映する。
【0040】
従って、CPU310は、流量データから呼吸に基づく成分を削除し、[この流量センサで得られた心臓の収縮に伴う容積変化(mL)]を求め、これに基づき血圧(心拍出量)の変動を求めるものとする。このようにして求められたものを、血圧(または心拍出量)情報と称する。以上のように、CPU310は、受信部(通信部355)が受信した流量データに基づき、呼吸数情報、換気量情報、心拍数情報、血圧(または心拍出量)情報を生成すると共に、前記温度データに基づき体温情報を生成する生体情報生成手段として機能する。上記生体情報生成手段としてCPU310が生成した呼吸数情報、換気量情報、心拍数情報、血圧(または心拍出量)情報、体温情報に基づく情報は、出力を行う出力制御部である出力コントローラ370へ送られ、出力コントローラ370によって出力装置375において出力される。
【0041】
本実施形態のCPU310は、時系列で生成される呼吸数情報、換気量情報、心拍数情報、
血圧(または心拍出量)情報、体温情報の値に基づきグラフを作成し、出力することができる。例えば、呼吸数が分かるように呼吸流量の情報を
図6に示すようなグラフとして出力する。
【0042】
以上の実施形態では、気道または口腔の呼吸流路に配置される機器を医療用フェイスマスクとして説明したが、この機器は、
図7に示すような気管挿管チューブ700や場合によっては、医療用鼻マスクであっても良い。気管挿管チューブ700は、気管に挿入するチューブ710と、チューブ710の先端付近に設けられたカフ720を主な構成要素とする。カフ720には、インフレーションライン730を介してカフ720を膨らますための空気が送られる。
図7の構成は一例に過ぎず、例えば、小児用の気管挿管中部にあっては、カフが設けられないものも存在する。
【0043】
インフレーションライン730には、パイロットバルン740が接続されており、カフ720の膨らみ具合をモニタ可能である。パイロットバルン740の先端側には空気を送る図示しないシリンジが設けられる。チューブ710の口元側はコネクタ750となっており、このコネクタ750にセンサユニット200を接続する。即ち、コネクタ750が短管210に相当する。この気管挿管チューブ700にセンサユニット200を接続して測定を行っても、呼吸数情報、換気量情報、心拍数情報、血圧(または心拍出量)情報、体温情報を簡易な構成により得ることができる。
【符号の説明】
【0044】
21A 流量センサ
21B 流量センサ
22 温度センサ
23 測定回路
24 温度測定回路
25、26 A/D変換回路
27 送信部
100 生体情報収集システム
200 センサユニット
210 短管
220 マスク取付部品
230 下ケース
240 上ケース
250 センサホルダ
251 整流体
251A、251B 整流板
255A 第1のケース
255B 第2のケース
270 Oリング
300 中央ユニット
320 主メモリ
330 バス
340 外部記憶コントローラ
345 外部記憶装置
350 通信コントローラ
355 通信部
360 入力コントローラ
365 入力装置
370 出力コントローラ
375 出力装置
500 医療用フェイスマスク
700 気管挿管チューブ
【要約】 (修正有)
【課題】呼吸数情報、換気量情報、心拍数情報、血圧(心拍出量)情報、体温情報を簡易な構成により得るシステムを提供する。
【解決手段】呼吸流路に設けられた流量センサ21A、21Bと温度センサ22と、流量センサ21A、21Bにより得られる流量データと温度センサ22により得られる温度データとを送信する送信部27とを備えるセンサユニット200と、送信部27から送信される流量データと温度データとを受信する通信部355が受信した流量データに基づき、呼吸数情報、換気量情報、心拍数情報、血圧(心拍出量)情報を生成すると共に、温度データに基づき体温情報を生成する生体情報生成手段と、生成された呼吸数情報、換気量情報、心拍数情報、血圧(心拍出量)情報、体温情報に基づき情報の出力を行う出力制御部370とを具備する中央ユニット300とを有する。
【選択図】
図1