IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本圧着端子製造株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】防水コネクタ及び防水コネクタ取付構造
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/52 20060101AFI20220111BHJP
   H01R 13/74 20060101ALI20220111BHJP
   H01R 13/46 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
H01R13/52 301H
H01R13/74 Z
H01R13/46 304G
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018007600
(22)【出願日】2018-01-19
(65)【公開番号】P2019128985
(43)【公開日】2019-08-01
【審査請求日】2020-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】390033318
【氏名又は名称】日本圧着端子製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】京極 之宏
(72)【発明者】
【氏名】西田 佳史
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】実開昭49-133183(JP,U)
【文献】特表2011-503775(JP,A)
【文献】特開平07-326402(JP,A)
【文献】特開平11-126649(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/52
H01R 13/73-13/74
H01R 13/46
H01R 13/622-13/623
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と前記第1面の反対側の第2面とを有し前記第1面と前記第2面とを挿通する挿通孔が形成された取付壁の前記挿通孔を介して相手方コネクタと接続される防水コネクタであって、
前記相手方コネクタと電気的に接続されるコンタクトと、
前記第1面と対向する対向面を有し前記コンタクトを保持する対向壁部と、前記対向壁部から突出し前記挿通孔に挿通される挿通部と、前記対向壁部の前記対向面から前記第1面に当接可能に突出する凸部と、前記取付壁に対して前記対向壁部とは反対側で前記挿通部の外周面に設けられた被係合部と、を含むハウジングと、
前記第2面と対向し前記挿通部に周方向に回転可能に外嵌された環状の本体部と、前記本体部の内周面に設けられた係合部とを含む抜け止め部材であって、前記周方向の一方側のロック位置で前記係合部が前記挿通部の前記被係合部に係合することにより前記挿通孔から前記挿通部を抜け止めする抜け止め部材と、
前記抜け止め部材の前記本体部と前記ハウジングの前記凸部との間に前記取付壁が挟まれる状態で、前記対向壁部の前記対向面と前記第1面との間で弾性的に圧縮される単一の環状シール部材と、を備え
前記凸部は、前記環状シール部材よりも径方向外方で前記挿通部を取り囲む環状に配列された複数の凸部を含み、前記複数の凸部どうしの間が、前記挿通部の径方向外方に開放されている、防水コネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載の防水コネクタにおいて、前記抜け止め部材が前記ロック位置からアンロック側へ回転されることを規制する緩み回転規制機構を備え、
前記緩み回転規制機構が、前記挿通部の前記外周面及び前記抜け止め部材の前記本体部の前記内周面の少なくとも一方に設けられ径方向に撓み可能なランスと、前記挿通部の前記外周面及び前記抜け止め部材の前記本体部の前記内周面の他方に設けられ、前記ランスが前記周方向に係止するランス係止部と、を含む防水コネクタ。
【請求項3】
請求項に記載の防水コネクタにおいて、前記抜け止め部材が前記ロック位置から前記周方向の前記一方側へ回転されることを規制する締め込み過ぎ規制機構を備え、
前記締め込み過ぎ規制機構が、前記抜け止め部材に設けられた第1被規制部と、前記挿通部に設けられ前記第1被規制部と係合する第1規制部と、を含む、防水コネクタ。
【請求項4】
請求項に記載の防水コネクタにおいて、前記被係合部が、前記ランスに対して前記周方向の前記一方側に隣接しており、
前記係合部が前記ランスと前記周方向に重なる状態で、前記抜け止め部材が前記周方向の他方側へ回転されることを規制することにより、前記抜け止め部材を前記周方向に位置決めする位置決め機構を備え、
前記位置決め機構が、前記抜け止め部材に設けられた第2被規制部と、前記挿通部に設けられ前記第2被規制部と係合する第2規制部と、を含む、防水コネクタ。
【請求項5】
請求項に記載の防水コネクタにおいて、前記第1規制部及び前記第2規制部が前記挿通部に設けられた共通の平坦部で形成され、
前記第1被規制部及び前記第2被規制部が、前記本体部から突出する共通の突起部に配置されている、防水コネクタ。
【請求項6】
第1面及び前記第1面の反対側の第2面を挿通する挿通孔が形成された取付壁と、
前記取付壁の前記挿通孔を介して相手方コネクタと接続される請求項1~の何れか一項に記載の防水コネクタと、を備える防水コネクタ取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水コネクタ及び防水コネクタ取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に提案される防水コネクタ接続構造では、開口部を備えた取付壁の一方の面に対し、該開口部に挿通された状態で取り付けられる第1コネクタと、前記取付壁の他方の面側で支持される第2コネクタとが、前記取付壁の前記開口部を介して嵌合され接続される。
前記第1コネクタが、前記開口部内に嵌合される筒状のスペーサと、ハウジングとを備える。前記ハウジングが、前記取付壁の前記一方の面に対してボルトにより締結された支持部と、前記支持部から直交状に延設され、前記スペーサに挿通される筒状のハウジング本体とを含む。
【0003】
特許文献1では、前記開口部の内周面と前記スペーサの外周面との間に介装された環状シール部材と、前記支持部と前記支持部と対向する前記スペーサの端面との間に介装された環状シール部材とを含む複数の環状シール部材によって、開口部と第1コネクタとの間が封止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5801705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、複数の環状シール部材を用いたシール構造を採用しているため、構造が複雑になる。
本発明の目的は、簡単な構造で防水性が確保される防水コネクタ及び防水コネクタ取付構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、第1面(201)と前記第1面の反対側の第2面(202)とを有し前記第1面と前記第2面とを挿通する挿通孔(203)が形成された取付壁(200)の前記挿通孔を介して相手方コネクタ(300)と接続される防水コネクタ(1)であって、前記相手方コネクタと電気的に接続されるコンタクト(2)と、前記第1面と対向する対向面(51)を有し前記コンタクトを保持する対向壁部(50)と、前記対向壁部から突出し前記挿通孔に挿通される挿通部(60)と、前記対向壁部の前記対向面から前記第1面に当接可能に突出する凸部(80)と、前記取付壁に対して前記対向壁部とは反対側で前記挿通部の外周面(62a)に設けられた被係合部(90)と、を含むハウジング(3)と、前記第2面と対向し前記挿通部に周方向(Y)に回転可能に外嵌された環状の本体部(41)と、前記本体部の内周面(41d)に設けられた係合部(43)とを含む抜け止め部材(4)であって、前記周方向の一方側(Y1)のロック位置で前記係合部が前記挿通部の前記被係合部に係合することにより前記挿通孔から前記挿通部を抜け止めする抜け止め部材と、前記抜け止め部材の前記本体部と前記ハウジングの前記凸部との間に前記取付壁が挟まれる状態で、前記対向壁部の前記対向面と前記第1面との間で弾性的に圧縮される単一の環状シール部材(5)と、を備え、前記凸部は、前記環状シール部材よりも径方向外方で前記挿通部を取り囲む環状に配列された複数の凸部を含み、前記複数の凸部どうしの間が、前記挿通部の径方向外方に開放されている、防水コネクタを提供する。
【0007】
なお、括弧内の英数字は、後述する実施形態における対応構成要素等を表すが、このことは、むろん、本発明がそれらの実施形態に限定されるべきことを意味するものではない。以下、この項において同じ
【0008】
請求項に記載の発明のように、請求項1又は2において、前記抜け止め部材が前記ロック位置からアンロック側へ回転されることを規制する緩み回転規制機構(Q)を備え、前記緩み回転規制機構が、前記挿通部の前記外周面及び前記抜け止め部材の前記本体部の前記内周面の少なくとも一方に設けられ径方向に撓み可能なランス(64)と、前記挿通部の前記外周面及び前記抜け止め部材の前記本体部の前記内周面の他方に設けられ、前記ランスが前記周方向に係止するランス係止部(44)と、を含んでいてもよい。
【0009】
請求項に記載の発明のように、請求項3において、前記抜け止め部材が前記ロック位置から前記周方向の前記一方側へ回転されることを規制する締め込み過ぎ規制機構(R)を備え、前記締め込み過ぎ規制機構が、前記抜け止め部材に設けられた第1被規制部(461)と、前記挿通部に設けられ前記第1被規制部と係合する第1規制部(H)と、を含んでいてもよい。
【0010】
請求項に記載の発明のように、請求項4に記載の防水コネクタにおいて、前記被係合部が、前記ランスに対して前記周方向の前記一方側に隣接しており、前記係合部が前記ランスと前記周方向に重なる状態で、前記抜け止め部材が前記周方向の他方側(Y2)へ回転されることを規制することにより、前記抜け止め部材を前記周方向に位置決めする位置決め機構(S)を備え、前記位置決め機構が、前記抜け止め部材に設けられた第2被規制部(462)と、前記挿通部に設けられ前記第2被規制部と係合する第2規制部(H)と、を含んでいてもよい。
【0011】
請求項に記載の発明のように、請求項5において、前記第1規制部及び前記第2規制部が前記挿通部に設けられた共通の平坦部(H)で形成され、前記第1被規制部及び前記第2被規制部が、前記本体部から突出する共通の突起部(46)に配置されていてもよい。
請求項に記載の発明は、第1面及び前記第1面の反対側の第2面を挿通する挿通孔が形成された取付壁と、前記取付壁の前記挿通孔を介して相手方コネクタと接続される請求項1~6の何れか一項に記載の防水コネクタと、を備える防水コネクタ取付構造(10)を提供する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明では、取付壁の挿通孔に挿通されたハウジングの挿通部に対して抜け止め部材を周方向の一方側であるロック位置側へ回転させて、抜け止め部材の係合部を挿通部の被係合部に係合させ、挿通部を抜け止めする。取付壁が抜け止め部材の本体部とハウジングの対向壁部の凸部との間に挟まれる状態で、環状シール部材が、取付壁の第1面と対向壁部の対向面との間で弾性圧縮されて、前記第1面と前記対向面との間を封止する。このため、防水コネクタにおいて、単一の環状シール部材を用いる簡単な構造で防水性を確保することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明では、対向壁部の対向面から第1面側へ突出する凸部が、挿通部を取り囲む環状凸部又は環状に配置された複数の凸部で形成されるので、環状シール部材の圧縮量が、環状シール部材の周方向位置によって偏りを生ずることを抑制することができる。
請求項3に記載の発明では、ロック位置で挿通部の抜け止めを達成した状態の抜け止め部材がアンロック側へ回転されることが、ランスを含む緩み回転規制機構によって規制される。このため、防水性が確保された取付状態を確実に維持することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明では、緩み回転規制機構によってアンロック側への回転が規制された状態の抜け止め部材がロック位置を超えて締め込まれ過ぎることが、締め込み過ぎ規制機構によって規制される。このため、防水性が確保された取付状態が、確実に維持される。
請求項5に記載の発明では、組立時において、係合部がランスと周方向に重なる状態で、位置決め機構によって、抜け止め部材が周方向の他方側へ回転されることが規制される。このため、組立時に、係合部とランスとを周方向に位置合わせし易くなり、組立性が向上する。
【0015】
請求項6に記載の発明では、部材の兼用によって構造を簡素化することができる。
請求項7に記載の発明では、単一の環状シール部材を用いる簡単な構造で防水性が確保される防水コネクタ取付構造を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A図1Aは、本発明の一実施形態に係る防水コネクタの分解斜視図である。
図1B図1Bは、防水コネクタを含むコネクタ取付構造の分解斜視図である。
図2】防水コネクタの拡大分解斜視図である。
図3】取付壁に取り付けられた防水コネクタの正面図である。
図4A】防水コネクタの断面図であり、図3のIV-IV線に沿って切断された断面図である。
図4B図4Aの一部を拡大した、防水コネクタの一部拡大断面図である。
図5A】ロック前の状態の防水コネクタの正面図である。
図5B】ロック前の状態の防水コネクタの断面図である。
図6A】ロック後の状態の防水コネクタの正面図である。
図6B】ロック後の状態の防水コネクタの断面図である。
図7A】ハウジングの平面図である。
図7B】ハウジングの正面図である。
図7C】ハウジングの左側面図である。
図7D】ハウジングの右側面図である。
図8A】抜け止め部材の正面図である。
図8B】抜け止め部材の側面図である。
図8C】抜け止め部材の背面図である。
図9A】抜け止め機構及び緩み回転規制機構の模式図であり、抜け止め部材が第2嵌合部に嵌合される前の段階で抜け止め部材の係合部が、ハウジングのランスに対して周方向に位置合わせされた状態を示している。
図9B】抜け止め機構及び緩み回転規制機構の模式図であり、アンロック位置の抜け止め部材の係合部が、ハウジングのランスの外面に係合された状態を示している。
図9C】抜け止め機構及び緩み回転規制機構の模式図であり、ロック位置でハウジングの挿通部の抜け止めが達成され且つ抜け止め部材の緩み回転が規制された状態を示している。
図10A】緩み回転規制機構の模式図であり、アンロック位置の抜け止め部材の係合部が、ハウジングのランスの外面に係合された状態を示している。
図10B】緩み回転規制機構の模式図であり、抜け止め部材がアンロック位置からロック位置側へ回転変位される途中の状態を示している。
図10C】緩み回転規制機構の模式図であり、ロック位置でランスによって抜け止め部材の緩み回転が規制された状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に従って説明する。
図1Aは、本発明の一実施形態に係る防水コネクタ1の分解斜視図であり、図1Bは、防水コネクタ1が適用された防水コネクタ取付構造10の分解斜視図である。
防水コネクタ1は、取付壁200に固定された状態で相手方コネクタ300(図1Bに示される例えばプラグコネクタ)と接続される。図1Aに示すように、取付壁200は、第1面201と、第1面201の反対側の第2面202と、第1面201および第2面202を挿通する挿通孔203とを含む。挿通孔203は、例えば、四隅に湾曲コーナ部が設けられた略矩形に形成されている。防水コネクタ1は、取付壁200の挿通孔203を介して相手方コネクタ300とコネクタ接続方向X1に接続される。
【0018】
防水コネクタ1は、複数のコンタクト2と、コンタクト2を収容保持する中空のハウジング3と、環状の抜け止め部材4と、単一の環状シール部材5とを備える。
図2は、防水コネクタ1の拡大分解斜視図である。図3は、取付壁200に取り付けられた防水コネクタ1の正面図である。図4Aは、防水コネクタ1の断面図であり、図3のIV-IV線に沿って切断された断面図である。図4Bは、図4Aの一部を拡大した、防水コネクタ1の一部拡大断面図である。図7Aは、ハウジング3の平面図である。図7Bは、ハウジング3の正面図である。図7Cは、ハウジング3の左側面図である。図7Dは、ハウジング3の右側面図である。これらの図を参照して、ハウジング3について説明する。
【0019】
図2に示すように、ハウジング3は、対向壁部50と、挿通部60と、保持筒部70と、凸部80と、被係合部90と、係合部収容凹部100とを含む。
図2図4A及び図7Cに示すように、対向壁部50は、略矩形の板状に形成されている。対向壁部50は、第1面201と対向する対向面51を有している。凸部80は、対向壁部50の四隅において対向面51から第1面201側に向けて突出しており、第1面201と当接可能である。
【0020】
挿通部60は、対向壁部50から突出しており、取付壁200の挿通孔203に挿通される。挿通部60は、相手方コネクタ300が挿入される挿入凹部60Sを形成する中空の筒状に形成されている。挿通部60は、対向壁部50に近い側から、第1嵌合部61と、第2嵌合部62と、延設筒部63とを含む。
図4Aに示すように、第2嵌合部62は、挿通孔203から突出し、抜け止め部材4と嵌合される。延設筒部63は、第2嵌合部62から突出し先端が開放された略矩形の筒状に形成されている。第2嵌合部62に抜け止め部材4が嵌合された状態で、延設筒部63は、抜け止め部材4を貫通して抜け止め部材4から突出する。
【0021】
図2及び図7Cに示すように、略矩形の延設筒部63は、互いに対向する一対の第1壁部631と、互いに対向する一対の第2壁部632とを含む。一対の第1壁部631の外面は、互いに平行な平坦部H(平坦部Hが、後述する締め込み過ぎ規制機構Rの第1規制部に相当し、後述する位置決め機構Sの第2規制部に相当する)を含む。一対の第2壁部632には、相手方コネクタ300をロックするための機構等が配置されている。
【0022】
図4Aに示すように、第1嵌合部61は、取付壁200の挿通孔203に嵌合される。対向壁部50の対向面51からの第1嵌合部61の突出高さが、対向面51からの凸部80の突出高さよりも所定量、大きくされている。
第1嵌合部61の基端部側(対向壁部50側)の半部における外周面61aに、環状シール部材5が嵌合されている。第1嵌合部61の先端部側(第2嵌合部62側)の半部が、取付壁200の挿通孔203に嵌合される。図7Cに示すように、第1嵌合部61の断面形状の外郭は、四隅に湾曲コーナ部が設けられた略矩形に形成され、取付壁200の挿通孔203の形状と等しくされている。このため、挿通孔203に対する第1嵌合部61の回転が規制される。
【0023】
図4Aに示すように、抜け止め部材4とハウジング3の凸部80との間に取付壁200が挟まれる状態で、環状シール部材5が、対向壁部50の対向面51と取付壁200の第1面201との間で弾性的に圧縮される。対向壁部50の対向面51からの凸部80の突出高さが、環状シール部材5の厚みよりも所定量小さくされており、環状シール部材5は、一定の弾性圧縮量で弾性圧縮される。
【0024】
図7A図7B及び図7Dに示すように、保持筒部70は、対向壁部50から挿通部60とは反対側に延びる例えば矩形断面の筒部である。保持筒部70には、例えば弾性ゴム製の保持部材(図示せず)が内嵌固定されている。図2に示すように、各コンタクト2と接続された被覆電線71が、保持筒部70に設けられた貫通孔72(図7Dを参照)に液密的に挿通されている。
【0025】
図2及び図7Cに示すように、第2嵌合部62の外周面62aは、円筒面の一部により形成されている。第2嵌合部62の外周面62aには、周方向に等間隔を隔てて複数のランス64が配置されている。ランス64は、片持ち状の弾性片からなり、挿通部60の径方向に弾性変形可能である。
具体的には、図7Cに示すように、ランス64は、第2嵌合部62に接続された基端部64aと、基端部64aから周方向Yの一方側Y1へ延びる自由端である先端部64bと、抜け止め部材4と径方向に対向する外面64cとを含む。ランス64は、基端部64aを支点として挿通部60の径方向に揺動されるように弾性変形される。
【0026】
図2並びに図7A及び図7Bに示すように、被係合部90と係合部収容凹部100とは、第2嵌合部62の外周面62aにおいて、各ランス64の周方向Yの一方側Y1に、隣接して配置されている。係合部収容凹部100は、被係合部90に対して第1嵌合部61側(コネクタ接続方向X1の反対方向である抜脱方向X2側)に隣接して配置され、被係合部90に対して径方向に窪む平坦部に形成されている。
【0027】
図8Aは、抜け止め部材4の正面図である。図8Bは、抜け止め部材4の側面図である。図8Cは、抜け止め部材4の背面図である。図2並びに図8A図8B及び図8Cを参照して、抜け止め部材4について説明する。
抜け止め部材4は、環状の本体部41と、環状のフランジ部42と、複数の係合部43と、複数のランス係止部44とを含む。ランス係止部44は、係合部43の一部により形成されている。
【0028】
本体部41は、軸方向の一端部41aと他端部41bと、外周面41cと、内周面41dとを含む。抜け止め部材4の本体部41の内周面41dは、円筒面状に形成されている。抜け止め部材4の本体部41の内周面41dは、図5Bに示すように、ハウジング3の挿通部60の第2嵌合部62の円筒面状の外周面62aと嵌め合わされる。
図2及び図8Cに示すように、複数の係合部43は、本体部41の一端部41aにおける内周面41dに、周方向Yに等間隔を隔てて設けられた突起である。係合部43は、本体部41の軸方向から見て略直角三角形状に形成されている。ランス係止部44は、係合部43の周方向Yの他方側Y2の端部により形成され、ランス64と係止される。ランス係止部44は、周方向Yに対して略直交する平坦面である。
【0029】
図2及び図8Bに示すように、本体部41の外周面41cには、軸方向に延びる多数の凸条41eが、周方向に等間隔を隔てて配置されている。抜け止め部材4の外周面41cを指で摘んで、抜け止め部材4を回転操作するときに、凸条41eが指の滑り止めとなり、容易に抜け止め部材4を回転操作することができる。
図2及び図8Cに示すように、環状のフランジ部42は、本体部41の他端部41bから径方向の内側へ延びる内向フランジ部である。フランジ部42には、当該フランジ部42を本体部41の軸方向に貫通する複数のスリット45が、周方向に等間隔を隔てて形成されている。
【0030】
図8Aに示すように、各スリット45は、対応する係合部43の少なくとも一部を本体部41の軸方向から視認可能な周方向Yの位置に配置されている。各スリット45は、周方向Yに延びる円弧状縁部45aと、周方向Yに対する接線方向に延びる直線状縁部45bとで区画された三日月状に形成されている。
図2及び図8Cに示すように、フランジ部42の内周面42aは、円筒面部42bと、一対の突起部46とを含む。アンロック状態を示す図5A及びロック状態を示す図6Aに示すように、各突起部46は、ハウジング3の挿通部60の延設筒部63の対応する第1壁部631の外面の平坦部Hに対向している。各突起部46は、直角三角形状に形成されており、第1被規制部461と、第2被規制部462とを含む。第1被規制部461は、前記直角三角形の直角に隣接する一方の片部により形成されている。第2被規制部462は、前記直角三角形の直角に対応する頂部により形成されている。
【0031】
防水コネクタ1は、ハウジング3の挿通部60の第2嵌合部62と抜け止め部材4とに関連して、抜け止め機構P(図4Bを参照)と、緩み回転規制機構Q(図5B及び図6Bを参照)と、締め込み過ぎ規制機構R(図6Aを参照)と、位置決め機構S(図5Aを参照)とを備える。
まず、抜け止め機構Pについて説明する。図4Bに示すように、抜け止め機構Pは、挿通部60の第2嵌合部62に嵌合された抜け止め部材4を用いて挿通部60が取付壁200の挿通孔203から抜脱方向X2側へ抜けないようにする機構である。抜け止め機構Pは、第2嵌合部62に設けられた被係合部90と、抜け止め部材4に設けられた係合部43とを含む。
【0032】
組立時において、抜け止め部材4を挿通部60の第2嵌合部62に嵌め合わせるときに、まず、図9Aに示すように、挿通部60の第2嵌合部62のランス64と抜け止め部材4の係合部43とを周方向に位置合わせし、この位置合わせ状態で、図9Bに示すように、抜け止め部材4を挿通部60に対して軸方向(抜脱方向X2側)に移動させる。このときの抜け止め部材4の周方向位置がアンロック位置(図5A及び図10Aを参照)に相当する。アンロック位置では、抜け止め部材4の係合部43の周方向Yの一方側Y1に、係合部収容凹部100が配置される。
【0033】
抜け止め部材4をハウジング3の挿通部60の第2嵌合部62に嵌合させる組立時に、図5Aに示すように、抜け止め部材4のスリット45の周方向位置を、ハウジング3の第2嵌合部62のランス64の周方向位置に合わせることで、抜け止め部材4を第2嵌合部62に対するアンロック位置(図9B及び図10Aを参照)に相当する組み付け初期位置に容易に位置合わせすることができる。
【0034】
次いで、アンロック位置(図9B図10Aを参照)にある抜け止め部材4を、図9C及び図10Cに示すように、周方向Yの一方側Y1であるロック位置側へ回転変位させる。この回転変位に伴って、図10Bに示すように、係合部43がランス64の外面64cを押圧することにより、ランス64が径方向の内側に弾性変形される。次いで、図9C及び図10Cに示すように、係合部43が、ランス64の先端部64bを乗り越えて、係合部収容凹部100に収容されると共に、係合部43が被係合部90の抜脱方向X2側に配置されるロック位置に回転変位される。
【0035】
次いで、緩み回転規制機構Qについて説明する。
図6Aに示すように、抜け止め部材4がロック位置に変位されると、図6B及び図10Cに示すように、緩み回転規制機構Qによって、抜け止め部材4がロック位置からアンロック側に回転されることが規制される。具体的には、緩み回転規制機構Qは、ハウジング3のランス64と、抜け止め部材4の係合部43の周方向Yの他方側Y2の端部に設けられたランス係止部44とで構成される。
【0036】
図6A及び図10Cに示すように、抜け止め部材4がロック位置へ変位すると、図6Bに示すように、ランス64の先端部64bが、弾性変形前の元の径方向位置に弾性復帰する。これにより、ランス64の先端部64bが、抜け止め部材4の係合部43のランス係止部44に対して、周方向Yのアンロック側(他方側Y2)に配置される。このため、抜け止め部材4のランス係止部44がランス64の先端部64bと当接することにより、ロック位置にある抜け止め部材4がアンロック側(Y2側)へ回転されることが規制される。
【0037】
次いで、締め込み過ぎ規制機構Rについて説明する。図6Aに示すように、締め込み過ぎ規制機構Rは、抜け止め部材4がロック位置から周方向Yの一方側Y1へ回転されることを規制する。
具体的には、締め込み過ぎ規制機構Rは、抜け止め部材4のフランジ部42の内周面42aの一対の突起部46の第1被規制部461と、ハウジング3の延設筒部63の一対の第1壁部631の外面の平坦部H(第1規制部)とで構成されている。抜け止め部材4のロック位置(図10Cを参照)で、図6Aに示すように、抜け止め部材4の突起部46の平坦な辺部からなる各第1被規制部461が、ハウジング3の延設筒部63の対応する第1壁部631の平坦部H(第1規制部に相当)と近接対向される。このため、ロック位置にある抜け止め部材4が、周方向Yの一方側Y1へ回転される締め込み過ぎが規制される。
【0038】
次いで、位置決め機構Sについて説明する。図5Aを参照して、位置決め機構Sは、抜け止め部材4の係合部43が、ハウジング3のランス64と少なくとも一部どうしが周方向に重なる状態(図9B及び図10Aのアンロック状態を参照)で、ランス64と位置合わせされた抜け止め部材4が周方向Yの他方側Y2へ回転されることを規制することにより、抜け止め部材4を周方向に位置決めする機構である。
【0039】
具体的には、位置決め機構Sは、抜け止め部材4のフランジ部42の内周面42aの直角三角形状の各突起部46の頂部により構成される第2被規制部462と、ハウジング3の延設筒部63の一対の第1壁部631の外面の平坦部H(第2規制部に相当)とで構成されている。
本実施形態によれば、下記の作用効果を奏することができる。すなわち、取付壁200の挿通孔203に挿通されたハウジング3の挿通部60に対して抜け止め部材4を周方向Yの一方側Y1であるロック位置側へ回転させて、図4B及び図9Cに示すように、抜け止め部材4の係合部43を挿通部60の被係合部90に係合させ、挿通部60を抜け止めする。
【0040】
図4Aに示すように、取付壁200が抜け止め部材4の本体部41とハウジング3の対向壁部50の凸部80との間に挟まれる状態で、環状シール部材5が、取付壁200の第1面201と対向壁部50の対向面51との間で弾性圧縮されて、第1面201と対向面51との間を封止する。このため、防水コネクタ1において、単一の環状シール部材5を用いる簡単な構造で挿通孔203との間を封止することができる。
【0041】
また、図2及び図4Aに示すように、対向壁部50の対向面51から第1面201側へ突出する複数の凸部80が、挿通部60を取り囲む環状に配置されている。このため、環状シール部材5の圧縮量が、環状シール部材5の周方向位置によって偏りを生ずることを抑制することができる。
また、ロック位置で挿通部60の抜け止めを達成した状態の抜け止め部材4がアンロック側(周方向Yの他方側Y2)へ回転されることが、図6Bに示すように、ランス64を含む緩み回転規制機構Qによって規制される。このため、防水性が確保された取付状態を確実に維持することができる。
【0042】
また、緩み回転規制機構Qによってアンロック側への回転が規制された状態の抜け止め部材4がロック位置を超えて締め込まれ過ぎることが、図6Aに示すように、締め込み過ぎ規制機構Rによって規制される。このため、防水性が確保された取付状態が、確実に維持される。
また、組立時において、抜け止め部材4の係合部43がランス64と周方向に重なる状態で、図5Aに示すように、位置決め機構Sによって、抜け止め部材4が周方向Yの他方側Y2へ回転されることが規制される。このため、組立時に、係合部43とランス64とを周方向Yに位置合わせし易くなり、組立性が向上する。
【0043】
また、図5A及び図6Aに示すように、締め込み過ぎ規制機構Rの第1規制部と位置決め機構Sの第2規制部が、ハウジング3の挿通部60の第1壁部631の共通の平坦部Hで形成され、また、締め込み過ぎ規制機構Rの第1被規制部461と位置決め機構Sの第2被規制部462が、抜け止め部材4の本体部41から突出する共通の突起部46に配置されている。このため、部材の兼用によって構造を簡素化することができる。
【0044】
また、単一の環状シール部材5を用いる簡単な構造で取付壁200の挿通孔203と防水コネクタ1との間を封止する防水コネクタ取付構造10を実現することができる。
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、抜け止め機構Pにおいて、抜け止め部材4にランス(図示せず)が設けられ、ハウジング3の挿通部60にランス係止部(図示せず)が設けられてもよい。また、ハウジング3の被係合部が雄ねじ(図示せず)で構成され、抜け止め部材4の係合部が前記雄ねじに嵌合する雌ねじ(図示せず)で形成されてもよい。その他、本発明は、特許請求の範囲記載の範囲内で種々の変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0045】
1 防水コネクタ
2 コンタクト
3 ハウジング
4 抜け止め部材
5 環状シール部材
10 防水コネクタ取付構造
41 本体部
41d 内周面
43 係合部
44 ランス係止部
46 突起部
50 対向壁部
51 対向面
60 挿通部
61 第1嵌合部
62 第2嵌合部
62a 外周面
64 ランス
80 凸部
90 被係合部
100 係合部収容凹部
200 取付壁
201 第1面
202 第2面
203 挿通孔
300 相手方コネクタ
461 第1被規制部
462 第2被規制部
631 第1壁部
H 平坦部(第1規制部。第2規制部)
P 抜け止め機構
Q 緩み回転規制機構
R 締め込み過ぎ規制機構
S 位置決め機構
X1 コネクタ接続方向
Y 周方向
Y1 一方側
Y2 他方側
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C