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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】感震用錠装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 35/08 20060101AFI20220111BHJP
   E05B 5/02 20060101ALI20220111BHJP
   E05B 65/00 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
E05B35/08
E05B5/02 D
E05B65/00 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018137675
(22)【出願日】2018-07-23
(65)【公開番号】P2020016023
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】515270183
【氏名又は名称】有限会社大協工産
(74)【代理人】
【識別番号】100119725
【弁理士】
【氏名又は名称】辻本 希世士
(74)【代理人】
【識別番号】100072213
【弁理士】
【氏名又は名称】辻本 一義
(74)【代理人】
【識別番号】100168790
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英之
(72)【発明者】
【氏名】藤原 義正
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-017018(JP,A)
【文献】特開2015-063801(JP,A)
【文献】特開2016-148228(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 35/08
E05B 5/02
E05B 65/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納容器に固設される錠装置本体と、
前記錠装置本体に回転可能に挿通される把持軸に回動軸を介して前記錠装置本体に対して起伏回動可能に装着される把手部と、
前記把手部に配設され、特定の鍵をロータの鍵孔に挿入し前記ロータを回転操作することにより連動する固定部材を有するシリンダー錠と、
前記固定部材を係止しうる固定溝を有する係止部材と、
前記係止部材に一部が固設された第1伝動部材と、
前記第1伝動部材の他部にて当接するとともに、震動検知器が震動を検知したときに震動検知器からの力が伝えられる第2伝動部材と、
前記第2伝導部材を支持し、前記錠装置本体に固設された支持部材と
を備え、
前記震動検知器が震動を検知したときに、前記震動検知器から直接又は間接的に前記第2伝動部材の一部に力が加えられて、前記第2伝動部材が前記第1伝動部材を介して前記係止部材を移動させることで、前記係止部材の前記固定溝と前記固定部材を離隔することを特長とする感震用錠装置。
【請求項2】
前記支持部材側に一端が、前記係止部材側に他端が位置し、前記第1伝動部材を挿通するとともに、前記支持部材と前記係止部材が離隔する方向に付勢するコイルバネを備えることを特長とする請求項1に記載の感震用錠装置。
【請求項3】
前記支持部材と前記係止部材の間に位置し、前記第1伝動部材を挿通する筒状部材を備えることを特長とする請求項1又は請求項2に記載の感震用錠装置。
【請求項4】
前記支持部材と前記コイルバネの一端との間に位置し、前記第1伝動部材を挿通するワッシャーを備えることを特長とする請求項2又は請求項2に従属する請求項3に記載の感震用錠装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平常時は収納容器の扉の開閉を錠装置に設けられたシリンダー錠等の錠によって行うが、地震などにより大きな振動が発生した非常時にはシリンダー錠等の錠が施錠状態であっても振動検知器からの機械的な動きに応じて解錠状態として収納容器の扉の開閉を可能とする感震用錠装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鍵や貴重品などを収納する容器に取り付けられ、特定の人しか開閉することができない錠装置が種々知られている。そして、その錠装置に適合する鍵を有している特定の人しかその容器を開閉することができない。
【0003】
例えば、特許文献1には以下の錠装置が開示されている。すなわち、まず、地震などの所定以上の振動が生じる災害が起こったときには、その振動により連動する可動体B22の当接部B21が枢軸部A9と当接して、枢軸部A9に第1弾性部材A91の付勢力に抗い軸方向に沿った力が加わると、枢軸部A9及び接触部材A8は錠装置本体1の一方に移動する。このとき、特許文献1の図6に示すように、接触部材A8は、ラッチA67の下方から水平方向にずれるために、ラッチA67とはもはや当接不可能となり、ダイヤル錠A6の施錠状態、解錠状態の如何にかかわらずダイヤル錠A6の方向に退避回転することができるようになる。このとき、シリンダー錠A7が施錠状態であったとしても、把手部A4を錠装置本体A1から引き起こし方向に回転させると、固定部材A73の先端部が接触部材A8の固定溝A83より連続する傾斜面A84を押すため、接触部材A8は枢軸部A9を中心として拘束解除方向に退避回転することにより、把手部A4を所望の角度に引き起こすことができる。このように、ダイヤル錠A6及びシリンダー錠A7の両方ともが施錠状態であったとしても、地震などの非常時には解錠することが可能である錠装置が開示されている。なお、本段落における符号は特許文献1における符号を示すものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-17018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の錠装置では、一般的には地震などの所定以上の振動が生じる災害が起こることがほとんどないために、枢軸部A9を挿通する第1弾性部材A91は、時間が経過するにつれて錆が発生するなど品質の劣化が生じてしまい、そのような災害が起こった時には第1弾性部材A91が発生した錆により固くなっており、当初想定した弾性力を発現できずに、接触部材A8とラッチA67が当接不可能となる位置まで枢軸部A9が移動できないことにより、ダイヤル錠A6やシリンダー錠A7が施錠状態であれば、地震などの非常時には解錠することができなくなるおそれがあった。例えば、特許文献1に記載の錠装置が海の近くに設置される場合には、潮風により第1弾性部材A91の腐食がより早く進行するので、より顕在化する問題となる。なお、本段落における符号は特許文献1における符号を示すものである。
【0006】
そこで、本発明はこのような問題点を解決するものであって、設置してから長時間が経過して起こった地震などの所定以上の振動が生じる災害時においても、シリンダー錠により施錠状態であって、シリンダー錠の鍵が手元に存在しない状況であっても、地震による振動と連動して確実に作動して解錠を行うことができる感震用錠装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔1〕すなわち、本発明は、収納容器(B)に固設される錠装置本体(1)と、
前記錠装置本体(1)に回転可能に挿通される把持軸(21)に回動軸(22)を介して前記錠装置本体(1)に対して起伏回動可能に装着される把手部(2)と、
前記把手部(2)に配設され、特定の鍵(K)をロータ(31)の鍵孔(311)に挿入し前記ロータ(31)を回転操作することにより連動する固定部材(32)を有するシリンダー錠(3)と、
前記固定部材(32)を係止しうる固定溝(41)を有する係止部材(4)と、
前記係止部材(4)に一部が固設された第1伝動部材(5)と、
前記第1伝動部材(5)の他部にて当接するとともに、震動検知器(S)が震動を検知したときに震動検知器(S)からの力が伝えられる第2伝動部材(6)と、
前記第2伝導部材(6)を支持し、前記錠装置本体(1)に固設された支持部材(7)と
を備え、
前記震動検知器(S)が震動を検知したときに、前記震動検知器(S)から直接又は間接的に前記第2伝動部材(6)の一部に力が加えられて、前記第2伝動部材(6)が前記第1伝動部材(5)を介して前記係止部材(4)を移動させることで、前記係止部材(4)の前記固定溝(41)と前記固定部材(32)を離隔することを特長とする感震用錠装置である。
【0008】
〔2〕そして、前記支持部材(7)側に一端が、前記係止部材(4)側に他端が位置し、前記第1伝動部材(5)を挿通するとともに、前記支持部材(7)と前記係止部材(4)が離隔する方向に付勢するコイルバネ(8)を備えることを特長とする前記〔1〕に記載の感震用錠装置である。
【0009】
〔3〕そして、前記支持部材(7)と前記係止部材(4)の間に位置し、前記第1伝動部材(5)を挿通する筒状部材(9)を備えることを特長とする前記〔1〕又は前記〔2〕に記載の感震用錠装置である。
【0010】
〔4〕そして、前記支持部材(7)と前記コイルバネ(8)の一端との間に位置し、前記第1伝動部材(5)を挿通するワッシャー(W)を備えることを特長とする前記〔2〕又は前記〔2〕に従属する前記〔3〕に記載の感震用錠装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の感震用錠装置では、設置してから長時間が経過して起こった地震などの所定以上の振動が生じる災害時においても、シリンダー錠により施錠状態であって、シリンダー錠の鍵が手元に存在しない状況であっても、地震による振動と連動して確実に作動して解錠を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例における感震用錠装置を収納容器に取り付けた状態の正面図である。
図2】本発明の実施例における感震用錠装置の平常時を示す垂直面断面図である。
図3】本発明の実施例における感震用錠装置の非常時を示す垂直面断面図である。
図4】本発明の実施例における感震用錠装置の平常時を示す背面図である。
図5】本発明の実施例における感震用錠装置の非常時を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態における感震用錠装置を図面に基づいて説明する。本発明の感震用錠装置は、図1に示すように、鍵や貴重品などを収納し矩形状などの形状を有する収納容器Bの施錠解錠のための手段として収納容器Bの蓋部に取り付けられる。
【0014】
錠装置Aについて概要を説明する。錠装置Aに設けられたシリンダー錠3を操作することにより、把持部2を介して、錠装置Aが固設された収納容器Bの扉の開閉を行うことができる。 図2及び図3などに示すように、錠装置Aは、収納容器Bの扉に固設される錠装置本体1と、把持部2を備えている。把持部2は、錠装置Aの図1における左右方向に回転可能に挿通される把持軸21と連動し、さらに錠装置本体1に対して図1における前後方向に起伏回動可能となる回動軸22が一端側に装着されている。そして、把持部2は、錠装置本体1に収納されるように形成されている。さらに、錠装置本体1の背面側に把持軸21を介して回転可能に取り付けられて、図1における左右方向に把持部2の回転操作を行うことにより収納容器Bの容器本体側の図示しない受け部に対して係脱可能な片状の係脱部23を備えている。これにより、扉の開閉時に把持部2を錠装置本体1から引き起こして図1における左右方向に回転操作することにより係脱部23を受け部に対して係脱するようになっており、収納容器Bの内部に保管している鍵や貴重品などを取り出したり、収納したりすることができる。
【0015】
また、錠装置Aには、把持部2に配設されたシリンダー錠3を有している。シリンダー錠3は、特定の鍵Kを挿入する鍵孔311を有するロータ31を備えている。その鍵Kをロータ31の鍵孔311に挿入しロータ31を施錠方向に回転操作すると、図2に示すように、ロータ31の回動とともに連動して偏心軸33が回動する。そして、ロータ31の背面側に突出した偏心軸33に係合する板状の固定部材32が、錠装置本体1の背面側で突出して、係止部材4の表面から内側に窪んだ固定溝41と係止して、図2における左右方向に当接して錠装置本体1から把持部2を起こすことができなくなるという施錠状態となる。逆に、鍵Kでロータ31を解錠方向に回転操作して、固定部材32が固定溝41から離隔され固定部材32と固定溝41が係止しないようになると錠装置本体1から把持部2を起こすことができるようになるという解錠状態となる。このように、地震や火山噴火などにより大きな振動が発生していない平常時は、特定の鍵Kを用いてシリンダー錠3を操作することにより施錠及び解錠が可能となり、収納容器Bの扉を容器本体に対して閉めた状態を維持することができ、開けることができるようになる。
【0016】
錠装置本体1は、図2及び図3における左側に開口11を有する縦に細長い箱形状に形成され、開口11の全周に亘って外側に向けてフランジ12が突設されている。錠装置本体1の上部には、収納容器Bの扉の前面と直角に軸受孔13が形成されており、当該軸受孔13に対して把持軸21が図2及び図3における左右方向に移動できないように嵌合されている。この錠装置本体1は、収納容器Bの扉の縦長の受孔に扉正面側から嵌入されて、錠装置本体1の背面側から嵌め合わされる断面U形状の座金板とビスなどの固定具によって扉に固定される。
【0017】
把持部2は錠装置本体1の開口11内に嵌入して収納できるように縦長形状に形成されている。また、把持部2の下端部は、使用者が手に取りやすいように、錠装置本体1の下端部の下方にまで延びている。また、把持部2の上端部に、把持部2を錠装置本体1側の把持軸21に枢着するための凹部24が形成されている。そして、把持部2の下端部側にシリンダー錠3が嵌着される。この把持部2は、上端部の凹部24に、把持軸21の可動空間を残して挿入され、図2及び図3における前後方向に延びた回動軸22によって把持軸21の前端部に枢着される。
【0018】
このように、把持部2は、錠装置本体1に向けて倒伏されると、把持部2の背面側に位置する部分が錠装置本体1の開口11内に収納される。また、使用者が把持部2の下端部を持って把手部4を錠装置本体1から引き起こし、この引き起こした状態のときに、使用者が把持部2を握って回転操作すると、把持部2と連動して把持軸21が回転する。
【0019】
係脱部23は、図2及び図3における前後方向又は図4及び図5における左右方向に長い片状を有している。係脱部23は、把持軸21に設けられた角軸21aに嵌め合わされ、さらに座金が嵌め込まれて、ボルト25によって固定される。把持部2を、収納容器Bの扉に対して所定の角度で斜めに引き起こし、図1における左方向又は右方向の所定の方向に回転することにより、把持部2と把持軸21の間の回動軸22を介して把持軸21を同方向に一体に回転して、係脱部23を収納容器Bの容器本体側の受け部に係合し、また、逆に把持部2をこれとは反対の方向に回すと、回動軸22を介して把持軸21を同方向に一体に回転して、係脱部23を収納容器Bの容器本体側の受け部から離脱する。こうして、把持部2を回転させることにより、収納容器Bの扉の開け閉めを行うことができる。
【0020】
シリンダー錠3は、内部錠機構として公知のディスクタンブラ錠機構が使用され、ロータ31の後端面に形成された偏心軸33が、固定部材32の基端部に形成した横長スロットに嵌め込まれて、固定部材32がロータ31の後端面上で垂直方向(図2及び図3における上下方向)に前進後退可能に取り付けられる。なお、シリンダー錠3の内部錠機構としては、ピンタンブラ錠機構などの他の錠機構を使用することもできる。このシリンダー錠3は、把持部2下端部側に装着され、把持部2の正面にシリンダー錠3の鍵孔311が表出され、把持部2の背面側の上面に固定部材32のための挿通口26が形成されてこの挿通口26から固定部材32が出没可能になっている。
【0021】
係止部材4は、把持部2の背面側の上面に穿設された挿通口26の上方に位置し、挿入口26から突出した固定部材32を係止しうる固定溝41を有する部材である。平常時には、図2に示すように、係止部材4が下方に下がっていることにより特定の鍵Kを用いてシリンダー錠3を操作することにより施錠及び解錠が可能となる。そして、非常時には、もともと図2に示すように、係止部材4の固定溝41と固定部材32が係止して錠装置本体1から把持部2を起こすことができないという施錠状態であったとしても、図3に示すように、係止部材4が上方に上がることにより、係止部材4の固定溝41と固定部材32が離隔して固定部材32と固定溝41が係止しないようになると錠装置本体1から把持部2を起こすことができるようになるという解錠状態となる。また、係止部材4の上部には、第1伝動部材5の下端側を固設する略凹形状の係止部材支持部42が設けられており、係止部材4と第1伝動部材5が一体として動くことができる。
【0022】
第1伝動部材5は、係止部材4の係止部材支持部42に下端側が固設された棒状の部材である。第1伝動部材5により、震動検知器Sが所定以上の震動を検知したときに震動検知器Sから力が機械的に第2伝動部材6を介して係止部材4に伝えられる。また、第1伝動部材5の上端側には、第2伝動部材6の一端側と緩嵌する螺子51が設けられており、螺子51と第2伝動部材6の一端側において緩嵌しているために、図3に示すように、第2伝動部材6がと緩嵌螺子51に対して所定の角度まで自在に傾斜可能となっている。
【0023】
第2伝動部材6は、一端側において、第1伝動部材5の上端部側にて当接するとともに、他端側において、震動検知器Sが震動を検知したときに震動検知器Sからの力が直接的又は間接的に伝えられる板状の部材である。第2伝動部材6により、震動検知器Sが震動を検知したときに震動検知器Sからそのことの信号して出力される力が機械的に第2伝道部材6へ直接的に、又は中継器を介して間接的に伝えられると、第1伝動部材5及び係止部材4を上方に上げることができる。すわなち、図3に示すように、震動検知器Sが震動を検知したときに震動検知器Sから力が機械的に第2伝動部材6の他端側に伝えられると、第2伝動部材6の他端側が押し下げられて、第2伝動部材6を支持する支持部材7を支点にして、第2伝動部材6の一端側がシーソーのように上げられる。そして、第2伝動部材6の一端側に穿設された孔の周縁において当接可能に緩嵌している螺子51とともに第1伝動部材5及び係止部材4を上方に上げることができる。
【0024】
支持部材7は、第2伝導部材6を支持し、錠装置本体1に固設された部材である。支持部材7は、第1伝動部材5の上部側及び第2伝動部材6の一端側を内部に収納するような箱状の形状を有している。支持部材7の背面側の一面には、第2伝動部材6の他端側を突出させるための長孔が穿設されており、その長孔の部分において、第2伝動部材6を支持し、非常時に震動検知器Sが震動を検知したときに震動検知器Sから力が機械的に伝えられ、第2伝動部材6の他端側が下方に下がると、支点となり、第2伝動部材6の一端側が上方に上がる。また、支持部材7の底面の下方には、ワッシャーW、コイルバネ8、筒状部材9が配設されている。
【0025】
コイルバネ8は、支持部材7側に一端が、係止部材4側に他端が位置し、第1伝動部材5を内部に挿通するとともに、支持部材7と係止部材4が離隔する方向に付勢する部材である。コイルバネ8により、図3に示すように、非常時に係止部材4及び第1伝動部材5が上方に上がったあと、震動検知器Sが震動を検知したときに震動検知器Sから力が第2伝動部材6の他端側に加わらなくなったときに、ワッシャーWと係止部材支持部42との間で縮められて蓄積された付勢力を開放して、係止部材4及び第1伝動部材5が下方に下がることの補助を行うことができる。係止部材4及び第1伝動部材5は、それらの自重で下方に下がるが、コイルバネ8の一端側が錠装置本体1に固設された支持部材7側及びワッシャーW側に位置しているため、コイルバネ8に蓄積された付勢力がコイルバネ8の他端側である下方側に向かって働くので、コイルバネ8が係止部材4を押し下げることになる。
【0026】
筒状部材9は、支持部材7と係止部材4の間に位置し、第1伝動部材5を挿通する部材である。筒状部材9は、本実施形態において、その内部に第1伝動部材5だけでなくコイルバネ8も挿通しているが、他の実施形態において、その内部に第1伝動部材5だけを挿通するようにすることもできる。非常時に震動検知器Sが震動を検知したときに震動検知器Sから力が機械的に伝えられ、係止部材4及び第1伝動部材5が上方に上がると、筒状部材9がその上方に位置するワッシャーWと当接することにより、係止部材4及び第1伝動部材5が上方に上がる距離を制限している。このように筒状部材9により、固定溝41と固定部材32が離隔する程度には係止部材4が上方に上がるが、係止部材4が錠装置本体1から離れすぎないようにすることによって、震動検知器Sが震動を検知したときに震動検知器Sから力が第2伝動部材6の他端側に加わらなくなり係止部材4及び第1伝動部材5が下方に下がるときに、係止部材4が錠装置本体1の一部と引っかかってしまい、係止部材4の固定溝41と固定部材32が再度係止できなくなることを防止している。
【0027】
ワッシャーWは、支持部材7と筒状部材9の間に位置し、第1伝動部材5を挿通する円環状の部材である。ワッシャーWにより、支持部材7の底面側における第1伝動部材5を挿通する孔に、コイルバネ8の上端が入り込まないようにすることができる。
【0028】
このように、平常時には、使用者が収納容器Bの扉を閉めて施錠するときは、扉を閉め、鍵Kによりシリンダー錠3のロータ31を回動させて、固定部材32を固定溝41に係止させる。これにより、錠装置本体1から把持部2を起こすことができなくなり施錠状態となる。また、使用者が解錠して収納容器Bの扉を開けるときは、鍵Kによりシリンダー錠3のロータ31を回動させて、固定溝41に係止している固定部材32を移動させることにより固定溝41から離隔させる。これにより、錠装置本体1から把持部2を起こすことができるので開錠状態となり、その後に把持部2を回転させて係脱部23を収納容器Bの容器本体側から係脱させて扉を開けるようになる。
【0029】
そして、地震や火山噴火などにより大きな振動が発生した非常時には、震動検知器Sが震動を検知したときに震動検知器Sから力が、第2伝動部材6の他端側に機械的に伝えられると、連動して第1伝動部材5及び係止部材4が上方に上げられることにより、係止部材4の固定溝41と固定部材32が係止されているか否かにかかわらず固定溝41と固定部材32が離隔されて、錠装置本体1から把持部2を起こすことができるようになり解錠状態となる。そして、平常時と同様に、その後に把持部2を回転させて係脱部23を収納容器Bの容器本体側から係脱させて扉を開けるようになる。こうして、非常時においても、電気又は電池等を使用しないことから、停電、電池切れ等によって作動不可能となることがなく、シリンダー錠3の鍵が手元に存在せず施錠状態であっても、地震による振動を検知したときにはシリンダー錠3を備える錠装置Aの解錠が行われるので、収納容器Bに収納されている鍵や貴重品などを誰でも取り出すことができる。
【符号の説明】
【0030】
1・・・錠装置本体
11・・・開口
12・・・フランジ
13・・・軸受孔
2・・・把手部
21・・・把持軸
21a・・・角軸
22・・・回動軸
23・・・係脱部
24・・・凹部
25・・・ボルト
26・・・挿通口
3・・・シリンダー錠
31・・・ロータ
311・・・鍵孔
32・・・固定部材
33・・・偏心軸
4・・・係止部材
41・・・固定溝
42・・・係止部材支持部
5・・・第1伝動部材
51・・・螺子
6・・・第2伝動部材
7・・・支持部材
8・・・コイルバネ
9・・・筒状部材
A ・・・錠装置
W・・・ワッシャー
S・・・振動検知器
B・・・収納容器
K・・・鍵
図1
図2
図3
図4
図5