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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】サーバーとその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A47J 31/02 20060101AFI20220111BHJP
   A47J 31/44 20060101ALI20220111BHJP
   A47J 31/46 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
A47J31/02
A47J31/44 110
A47J31/44 180
A47J31/46
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018218708
(22)【出願日】2018-11-21
(65)【公開番号】P2020081249
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】591005501
【氏名又は名称】行重 実
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】行重 実
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3108056(JP,U)
【文献】特開2016-116800(JP,A)
【文献】特開平11-128081(JP,A)
【文献】実開昭51-074182(JP,U)
【文献】特開2014-104155(JP,A)
【文献】特開2014-014641(JP,A)
【文献】米国特許第6343542(US,B1)
【文献】特開2004-141236(JP,A)
【文献】国際公開第2009/037868(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0174758(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 31/02
A47J 31/44
A47J 31/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部が開口し、底部には底部貫通孔が形成され、外周面に把手部を備えて前記上部から前記底部にかけて縮径する円錐台形状を有するフィルター収納部と、
下部が開口し、前記フィルター収納部の底面の外面に接する天面部に前記底部貫通孔と同心に形成される天面部貫通孔を有する台座部と、
前記天面部貫通孔と前記底部貫通孔に挿通され、前記フィルター収納部と前記台座部とを一体となるよう固定される栓部とから構成され、
この栓部は、外周面に前記底部貫通孔より大きな径を有すフランジが設けられた筒体と、
液通路となる前記筒体の中空部に設置され、ばねによって下から上に向けて付勢されて前記筒体の下部開口部を閉塞する栓と、
この栓に連結し、前記フィルター収納部の内周面に近接して配置され、上端は前記フィルター収納部の上方に突出して前記ばねの付勢に対抗可能なロッドと、
から構成され、
前記筒体には前記ロッドの下端が上下に移動可能なように垂直ガイド孔が設けられることを特徴とするサーバー。
【請求項2】
前記台座部は透明材料により形成されていることを特徴とする請求項1記載のサーバー。
【請求項3】
前記筒体の前記下部開口部の外周面には雄ねじが螺刻され、
前記台座部の前記天面部貫通孔の内面に前記雄ねじと螺合可能な雌ねじが螺刻されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のサーバー。
【請求項4】
前記筒体の前記下部開口部の外周面には雄ねじが螺刻され、この雄ねじの螺刻された外周面内において前記筒体の長手方向と平行な溝が形成され、前記台座部の前記天面部貫通孔の内面に前記溝と篏合する爪が形成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のサーバー。
【請求項5】
前記筒体の前記下部開口部の外周面には雄ねじが螺刻され、この雄ねじの螺刻された外周面内において前記筒体の長手方向と平行な溝が形成され、前記フィルター収納部の前記下部開口部の内面に前記溝と篏合する爪が形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のサーバー。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のサーバーを製造するための製造方法であって、
前記フィルター収納部が陶器又は磁器製であって、前記フィルター収納部の成形体を鋳込み又は轆轤により成形する工程、前記成形体に把手部が付された第2の成形体を作製する工程、前記第2の成形体を乾燥させる工程、乾燥した前記第2の成形体を焼成し焼成体とする工程、前記焼成体であるフィルター収納部と前記台座部が、前記栓部を介して一体化固定される工程を、この順に行うことを特徴とするサーバーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーヒー豆原料からコーヒーを抽出する場合、紅茶の茶葉から紅茶を抽出する場合等に使用でき、さらに容器に入れた抽出液の量の確認が容易な陶器又は磁器製のサーバーとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コーヒー等を抽出するハンディタイプのサーバーは、従来より全体が陶磁器(陶器又は磁器)、金属等で構成されたもので、逆円錐台状で濾紙等のフィルターを収納する部分(以下、フィルター収納部)の底には通液孔が形成され、このフィルター収納部の外面には把手が付けられ、さらにフィルター収納部の底部にはカップの開口部等にサーバーを安定して載置可能なように円形の台が設けられたものが多い。なお、円形の台の径は、汎用されるカップ等の開口部より大きくなるように形成されている。
このようなサーバーを用いてコーヒーを作る場合、まずカップ等の容器の開口部にサーバーを載せた後、フィルター収納部の濾紙内にあるコーヒー豆に熱湯を注ぎ、抽出されたコーヒーを通液孔より容器内に流下させるものとなる。
【0003】
しかし、このようなサーバーにはフィルター収納部の底に設けられた通液孔に栓がなく、通液孔は常に開放状態である。そのため、抽出液を複数の容器に注ぐ際には、一つの容器に抽出液を注ぎ、次いで他の容器に注ぐためにサーバーを移動する時に、通液孔から抽出液が漏れ出してしまうことになる。したがって、実際の使用時には容器の置かれたテーブル周辺に漏出させて抽出液を減量してしまわないように、漏出液を受ける受け皿を伴いながら移動するといった工夫が必要であった。
また、抽出時間の異なる飲料を作製しようとしても、通液孔が単に開いただけのサーバーでは、抽出している間も通液孔から流出するため、飲料それぞれの所定の時間だけ抽出するという調整自体が不可能であった。
【0004】
さらに、容器に抽出液を注ぎ入れる時は容器の開口部を覆うようにサーバーが設置されるため、サーバー全体が不透明な陶磁器、金属等により形成されている場合、容器内に抽出液をどの程度流下させたのか判断し難いものとなる。このため、抽出液の流下量を確認するため、流下途中に頻繁にサーバーを持ち上げなければならず、確認するタイミングが悪いと、容器から抽出液が溢れてしまうという課題もあった。
【0005】
ここで、流下量を確認することができるように、例えば透明な耐熱ガラス、又は透明な耐熱樹脂から成るサーバーに変更すれば内部を目視することができ、問題は解消すると考えられる。しかしながら、このような材質変更によってサーバーの耐熱性,保温性等の性能も変化し、抽出条件自体が変わってしまうため、これまで他の材質のサーバーにより得られていた品質の抽出液が得られなくなるという課題もあった。また、樹脂製のサーバーでは高温環境下での使用により経年劣化し易くなるため、長期に亘って使用する場合には不向きであった。
【0006】
このような背景から、上記の課題を解消するため、近年新しいサーバーの開発が行われている。最近では、特許文献1に「コーヒードリッパー」という名称で、コーヒー用サーバーの発明が開示されている。
特許文献1に記載されているサーバーは、濾紙を受けるための漏斗状の本体部と、この本体部の側部下方には外部に突出する抽出ノズルが設置されている。さらに、この抽出ノズルにはレバーが併設されており、このレバーの調整によってノズル内の液通路にある弁の開閉が可能となる。
【0007】
このような構造により、サーバーの側部下方の抽出ノズルより抽出液を取り出せ、かつレバーの操作により液通路内の弁の開度を調整することが可能となる。この結果、従来のサーバーのように流下の際にカップ等の容器の開口部をサーバーの本体部で覆うこともなくなるため、急須を用いるように抽出液の流下量を確認しながらカップに抽出液を入れることも可能となる。その結果、誤って容器から抽出液を溢れさせることも少なくなると考えられる。
【0008】
さらに、液通路内の弁の開度調整が可能となるため、複数の容器に抽出液を流下させる際に、サーバーを移動させる時だけ液通路を閉じれば、テーブルへの抽出液の漏出等もなくなり、かつコーヒー豆や茶葉等の飲料用の原料の無駄な消費も抑えられるという効果を有する。また、抽出時間についても、栓を閉じてから開けるまでの時間の調整、および弁の開度調整による流下量の調整により、抽出時間を調整することも可能となる。すなわち、弁の調整により、抽出時間を任意に決定することができるため、様々な飲料も容易に作製することが可能になるという効果を有する。
【0009】
また、特許文献2には、本願出願人により「ドリッパー」という名称でサーバーに関する発明が開示されている。ここで開示されているサーバーは、濾紙を収納する漏斗状の濾紙収納部の底部に通液孔が形成されたものであるが、この通液孔には栓が新たに設置され、その開閉操作が濾紙収納部の把手部付近に配置されたロッドを動かして行われるものとなる。
【0010】
このような構造であれば、特許文献1に記載の発明と同様に、栓の開閉により簡単に抽出液を出し入れすることが可能となる。これにより、複数の容器に抽出液を注ぐためにサーバーを移動させる場合でも、栓を閉じることで抽出液の漏出を簡単に止めることができ、漏出液によりテーブルを汚すこともなくなる。また、漏出がなくなるため抽出液の減少も抑えられ、コーヒー豆や茶葉等の飲料用の原料の無駄な消費も抑えられるという効果を有する。
さらに、栓によって簡単に通液孔を開閉できるため、抽出開始から開栓するまでの時間(抽出時間)を任意に変えることができ、一つのサーバーにより様々な飲料を作製が可能になるという効果も有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2011-240025号公報
【文献】特開2007-75434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1に開示されたサーバーは、基本的に本体部を容器より高い台上に載せて使用するものである。持ち歩いて使用することも不可能ではないが、この場合流下用ノズルが周囲の人や物と接触したりしないように細心の注意を払う必要がある。また、流下用ノズルの先端部と弁の間の距離が長く、抽出液の流下中に弁を閉じると流下用ノズルの先端部と弁の間の液通路に抽出液が溜まり易く、この状態のまま本体を移動させた場合には、液通路内に溜まった抽出液が振動により流下口から垂れ落ちて周囲を汚す可能性もあった。また、流下用ノズルの途中に弁の開閉を行うレバーが設置されているため、持ち歩いて使用する際は、一方の手で把手を握って本体を支持しながら他方の手でレバーを調整する必要があり、操作し難いという課題もあった。
【0013】
一方、特許文献2に記載のサーバーは、把手部付近に設置されたロッドの先端を上下させるだけで底部の通液孔にある栓を開閉可能であり、使い勝手の非常に良いものではあるが、サーバーを容器に載せて抽出液を流下させる時に、流下状況が確認できないため容器に抽出液を流下させ過ぎて溢れさせてしまい易いという上述する課題も残っていた。
【0014】
また、そもそも陶磁器は陶土や磁土を粘土にするか泥漿土にして製造するが、粘土で形状が同一な製品を量産する方法としては、職人技による水挽轆轤造りや、石膏型成形機械轆轤で成形した後、生乾き状態で余分な部分を削り取る方法が採用される。また、泥漿土で、形状が同一な製品を量産するには、石膏型を使用する。この石膏型を使用する場合には、(1)石膏の鋳型の中に泥漿土を流し込み、石膏に土が沈着した頃、中の排土水を捨て、更に乾きを待って型より取りだす排泥鋳込み製造と、(2)石膏の鋳型に泥漿状の陶土や磁土を圧力機械を使って注入し、泥漿土の水分が石膏に吸い取られ土が固まった後、石膏型より取り出す圧力鋳込み製造がある。
特許文献1および特許文献2に記載のサーバーは任意の材質で作製することが可能なものの、サーバー全体を陶磁器製としたい場合に、上述の製造方法を採用すると、形状が複雑なため容易に成形することが難しく、大量生産には不向きであるという課題もあった。例えば、特許文献2に記載のサーバーのように上方から下方に向かって一旦縮径し、形成された台(栓の保護部としての役割も担う)により再び拡径するような縊れた形状として成形する場合、轆轤成形とすると、縮径する部分や拡径する部分で後加工による削り出し工程が加わり、削り込み部分が多くなり、鋳込み成形とすると、成形型の割型の数が増えることで、排泥時に歪みが出たり、成形型が複雑化して成形の準備に時間と労力を要するなどの点が、大量生産ができないことの原因となっていた。そのため、特許文献2に記載のサーバーを大量生産可能な陶磁器製とする場合には、サーバーの下方が拡径しない形状を採らざるを得ないという制約もあった。
【0015】
本発明は特許文献1,2に記載の発明における、これらの課題を鑑みてなされたものであって、その目的は漏出させることなく複数のカップへ抽出液を注ぐことが可能で、飲料に合わせた抽出時間の調整も可能であり、さらにカップ等の容器への抽出液の流下状況を目視確認することが可能なサーバーを提供することにある。さらに、サーバーとしての性能に加え、独特の質感やデザインから、陶磁器製のサーバーに対する要望も近年高まっていることを考慮し、特に陶磁器製のサーバーの提供を目的とした。
そして、その陶磁器製のサーバーの場合、金属製や樹脂製のサーバーに比較して製造精度が劣ると同時に複雑な構造に対して生産性が悪く、ある程度大量生産しようとしても困難であることから、陶磁器製のサーバーを組立て可能な部品から成る構成とし、部品の組立ての際には陶磁器製の部品は直接固定には用いず、他の部品を用いて間接的に固定されるようにしたサーバーの製造方法を提供することも目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、第1の発明であるサーバーは、上部が開口し、底部には底部貫通孔が形成され、外周面に把手部を備えて上部から底部にかけて縮径する円錐台形状を有するフィルター収納部と、下部が開口しフィルター収納部の底面の外面に接する天面部に底部貫通孔と同心に形成される天面部貫通孔を有する台座部と、天面部貫通孔と底部貫通孔に挿通され、フィルター収納部と台座部とを一体となるよう固定される栓部とから構成され、この栓部は外周面に底部貫通孔より大きな径を有すフランジが設けられた筒体と、液通路となる筒体の中空部に設置され、ばねによって下から上に向けて付勢されて筒体の下部開口部を閉塞する栓と、この栓に連結し、フィルター収納部の内周面に近接して配置され、上端はフィルター収納部の上方に突出してばねの付勢に対抗可能なロッドとから構成され、筒体にはロッドの下端が上下に移動可能なように垂直ガイド孔が設けられることを特徴とする。なお、上述する円錐台形状とは略円錐台形状も含むものである。
【0017】
このように構成されたサーバーであれば、把手が設置されていることで、指をかけ易くなるという作用を有す。また、サーバー自体がフィルター収納部と台座部、そして栓部の3つの部品に分離可能となるため、それぞれ別の素材からなる部品を用いて組み立てることができるように作用する。例えば、フィルター収納部が陶磁器製である場合に、台座部も陶磁器製としてもよいし、これを樹脂製としてもよい。また、フィルター収納部と台座部とを一体化固定するのは栓部であるため、フィルター収納部と台座部の取り合いを厳密に構成する必要はないという作用も有する。
【0018】
また、筒体の中央に配置され、ばねにより付勢された下部開口部を閉塞している上下移動可能な栓は、ロッドの上端を下方に押し込むことで下方に移動し、下部開口部を開けるように作用する。また、ロッドの上端を押し下げることを止めれば、ばねの力により栓は再び上方に押し上げられ、下部開口部を閉塞するように作用する。
【0019】
次に、第2の発明は、第1の発明であるサーバーにおいて、台座部が透明材料により形成されていることを特徴とする。
このように構成されたサーバーであれば、サーバーの下方に設置された下部開口部を囲む台座部が透明材料により形成されているため、台座部は可視光を透過できるという作用を有する。
なお、この台座部の材料としては特に指定はないが、用途を考慮すると100℃までの温度に耐え得るような耐熱性を有する材料であることが好ましい。このような耐熱性を有する材料としては、例えば無機系材料であれば耐熱ガラス、有機系材料であればアクリル系樹脂等の樹脂が挙げられる。
台座部の形状としては、天面部から下部にかけて拡径する円錐台形状であってもよく、円板状であっても有頂円筒状であってもよい。
【0020】
また、第3の発明は、第1又は第2の発明であるサーバーにおいて、筒体の下部開口部の外周面には雄ねじが螺刻され、台座部の天面部貫通孔の内面にはこの雄ねじと螺合可能な雌ねじが螺刻されていることを特徴とする。
このように構成されたサーバーであれば、フィルター収納部の底部貫通孔に栓部の筒体を挿入し、底部貫通孔より露出する筒体の雄ねじと台座部の雌ねじを螺合させることで、フィルター収納部は栓部のフランジと台座部の天面部から圧縮力を受けながら固定されるという作用も有する。
【0021】
そして、第4の発明は、第1又は第2の発明であるサーバーにおいて、筒体の下部開口部の外周面に雄ねじが螺刻され、この雄ねじの螺刻された外周面内において筒体の長手方向と平行な溝が形成され、さらに台座部の天面部貫通孔の内面に溝と篏合する爪が形成されることを特徴とする。
このようなサーバーであれば、筒体に形成されている溝と、この溝と篏合する台座部の爪は、栓部の向きや配置等を表示する標識として作用する。また、サーバーを組み立てる際に、台座部の爪が筒体の溝に篏合するように筒体が配置されるという作用を有する。
【0022】
さらに、第5の発明では、第1乃至第3の発明のいずれか1つの発明であるサーバーにおいて、筒体の下部開口部の外周面には雄ねじが螺刻され、この雄ねじの螺刻された外周面内において筒体の長手方向と平行な溝が形成され、フィルター収納部の下部開口部の内面に溝と篏合する爪が形成されることを特徴とする。
このようなサーバーであれば、筒体に形成されている溝と、これと篏合する台座部の爪は、栓部の向きや配置等を表示する標識として作用する。また、サーバーを組み立てる際に、筒体の溝がフィルター収納部の爪に篏合するように筒体が配置されるという作用を有する。
【0023】
さらに、第6の発明では、第1乃至第5の発明の何れか1つの発明であり、
フィルター収納部が陶器又は磁器製のサーバーの製造方法であって、フィルター収納部の成形体を鋳込み又は轆轤により成形する工程、成形体に把手部が付された第2の成形体を作製する工程、第2の成形体を乾燥させる工程、乾燥した第2の成形体を焼成し焼成体とする工程、焼成体であるフィルター収納部と台座部が、前記栓部を介して一体化固定される工程を、この順に行うことを特徴とする。このような製造方法であれば、サーバーをいくつかの部品に分けて作製できるため、一般的に知られた成形方法によりフィルター収納部のみを陶磁器製として作製できるという作用を有する。
【発明の効果】
【0024】
第1の発明であるサーバーによれば、把手部が併設されているため手で持ち易く、複数のカップに抽出液を入れる場合には持ち運びし易くなるという効果を有する。また、サーバーはフィルター収納部と台座部、および栓部の3つの部品から構成されており、フィルター収納部は陶磁器製で、台座部は陶磁器製の他、樹脂材料や他の所望の材料、例えば金属製の成形体とすることが可能になるという効果も有する。
【0025】
そして、筒体の下部開口部の栓は、ロッドの操作により簡単に開閉可能となる。これにより、複数の容器に抽出液を入れるため容器間を移動する際には、栓を閉じて流下を止めることもでき、給仕の際の作業効率を向上させるという効果がある。さらに、栓の開閉により抽出液の出し入れを行えるため、抽出時間を任意に決定でき、抽出時間の異なる様々な飲料も作ることが可能になるという効果も有する。
【0026】
次に第2の発明であるサーバーによれば、台座部を透明材料とすることで、サーバーを容器から持ち上げることなく抽出液の流下状況を確認できるようになる。この結果、抽出液の流下量を誤ることがなくなり、さらに抽出液を容器から溢れさせてテーブルを汚すこともなくなるため、飲料用の原料の無駄な消費も抑えられる。また、透明材料がガラスではなく樹脂であれば、サーバーはさらに軽量化することから、給仕する際に使用者の負担が少なくなるという効果も有する。
【0027】
次に、第3の発明であるサーバーによれば、サーバーを構成するフィルター収納部と栓部、台座部の3つの部品が、栓部の筒体に螺刻された雄ねじと、台座部の天面部貫通孔内に螺刻された雌ねじとを螺合させることのみで、簡単に組み立てることができるという効果を有する。
【0028】
そして、第4の発明であるサーバーによれば、フィルター収納部の底部に台座部を設置する際に、栓部の配置(特にロッドの配置)を考慮して台座部の爪を配置しておけば、栓部は溝と篏合する台座部の爪により固定される。この結果、栓部の位置決めと固定がし易くなり、サーバーを組み立てた後で栓部のロッド位置を使い易い位置へ調整するという作業が減るという効果を有する。
ここで、台座部が透明材料により形成されている場合においては、フィルター収納部に対する台座部の配置を決定し易くするためフィルター収納部の底面の所定の位置に、標識となる印を付しても良い。印は台座部を透過して目視できるため、この印を指標としながら台座部の爪の配置を決めることができ、最適なロッドの配置となるサーバーの組み立てがさらに容易になるという効果もある。上記印の代わりに把手部を標識として活用することも十分可能であるが、視点移動の少ない印を用いる方が高精度に栓部の配置を決定できることは言うまでもない。
【0029】
また、上述する印の代わりに、フィルター収納部の底面と台座部の天面部の所定の位置に、篏合可能な凸部と凹部が形成されていても良い。これにより、印を付した場合のように視覚だけでなく、触覚的にも台座部の最適な配置を確認することが可能となり、目の不自由な者であってもサーバーを直感的に組み立てることが可能になる。さらに、凸部と凹部が篏合して台座部がフィルター収納部に係止されるため、台座部の配置が変化し難く、サーバーを精度良く組み立てる上で好都合である。
【0030】
さらに、第5の発明であるサーバーによれば、栓部をフィルター収納部の底部貫通孔に挿通する際に、栓部の溝と、栓部の配置を考慮して形成された底部貫通孔の爪を篏合させておけば、栓部(特にロッド)は常にフィルター収納部の所望の位置に固定される。この結果、栓部の底部貫通孔を中心とする回転が抑制されるため、組み立ての際に各部品を一体的に固定する作業が容易となり、組み立てた後で栓部のロッド位置を再調整するといった作業が不要になるという効果を有する。
【0031】
最後に、第6の発明であるサーバーの製造方法によれば、フィルター収納部だけが陶磁器製であり、他の部品が異なる材料であっても製造できるという効果を有する。
また、フィルター収納部と台座部が一体化したサーバーを、全て陶磁器により製造する場合、サーバーの形状によっては轆轤成形,鋳込み成形といった一般的な方法が使用できないことがあった。例えば、上部から底部にかけて縮径する円錐台形状を有すフィルター収納部と、そのフィルター収納部の底面と同じ形状の天面部を有しており、かつ底部にかけて拡径する台座部とが一体となった陶磁器製サーバーの場合、轆轤成形等により成形すると、台座部付近においてエア溜りが発生し易いという課題もあった。
【0032】
しかしながら、第6の発明であるサーバーの製造方法により陶磁器製サーバーを部品に分けて成形ができるため、エア溜り等が発生し難いフィルター収納部、台座部を個別に轆轤成形等により作製することも可能となる。さらに、より複雑な形状のサーバーであっても成形可能な部品に分けることで、作製可能になると考えられる。そして、陶磁器製のフィルター収納部に対して台座部を一体化固定する際には、陶磁器の製造に際しての精度が金属や樹脂等でできた物よりも劣ることから、フィルター収納部と台座部を直接固定することが困難であるので、これらを栓部を介して間接的に固定することでサーバーを容易に製造することが可能である。
このような製造方法により、陶磁器製サーバーの製造の難易度が下がり、かつ生産効率も向上するため、大量生産も可能になるという効果も有する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の第1乃至第3の実施の形態に係るサーバーの実施例であり、使用時の外観斜視図である。
図2図1に示す本発明の第1の実施の形態に係るサーバーの実施例の、H―H線矢視断面図である。
図3】(a)は本発明の第1の実施の形態に係るサーバーの台座部の実施例の外観斜視図であり、(b)はその栓部の実施例の外観斜視図である。
図4図1に示す本発明の第2の実施の形態に係るサーバーの実施例の、H-H線矢視断面図である。
図5】(a)は本発明の第2の実施の形態に係るサーバーの台座部の実施例の外観斜視図であり、(b)はその栓部の実施例の外観斜視図であり、(c)は環状部材の外観斜視図である。
図6図1に示す本発明の第3の実施の形態に係るサーバーの実施例の、H-H線矢視断面図である。
図7】本発明の第3の実施の形態に係るサーバーのフィルター収納部の実施例の平面図である。
図8】本発明に係るサーバーであって、このうちフィルター収納部が陶磁器製であるサーバーの製造方法の工程を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明のサーバーについて、図1乃至図8を参照しながら説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態に係るサーバーの実施例の外観斜視図であり、サーバーから容器に抽出液を流下させている際の配置を示したものである。なお、後述する本発明の第2の実施の形態のサーバー、および第3の実施の形態のサーバーも図1と同じ外観となるため、これらの説明の際にも図1を用いて行う。
【0035】
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係るサーバー1は、蓋2aと、上部から底部にかけて縮径する円錐台形状であって、外周面には把手部2bを備えたフィルター収納部2と、そのフィルター収納部2の底部の外面に設置されている透明材料から成る台座部3と、ロッド4aを備える栓部4(後段における図3を参照)とから構成されており、これらフィルター収納部2、台座部3、および栓部4は一体的に連結されている。
なお、このようなサーバー1を使用する際の手順としては、まずフィルター収納部2の中に飲料用の原料の入ったフィルター(濾紙、メッシュフィルター等)を設置し、次いで栓部4が閉栓した状態においてフィルター収納部2の中に湯等を流下させ、所定の時間かけて抽出を行う。この抽出が完了すれば、図1に示すように、サーバー1の台座部3を容器8の開口部に覆うように載せて、栓部4を開栓して抽出液を容器8内へ流下させるものとなる。
【0036】
次に、本発明の第1の実施の形態に係るサーバー1について、図2図3を用いてより詳細に説明する。
図2は、図1に示す本発明の第1の実施の形態に係るサーバーのH-H線矢視断面図であり、サーバーの部分のみを示したものである。また、図3は本発明の第1の実施の形態に係るサーバーの部品であり、同図(a)は台座部、同図(b)は栓部の外観斜視図を示している。
【0037】
図2より、本発明の第1の実施の形態に係るサーバー1において、蓋2aにより上部の開口部が覆われ、底部に底部貫通孔2cが形成されたフィルター収納部2がサーバー1の上部に配置される。そして、このフィルター収納部2の底部下方には台座部3が設置されており、フィルター収納部2の底面2dと接する台座部3の天面部3cには、フィルター収納部2の底部貫通孔2cと中心が一致する天面部貫通孔3aが形成され、その内面には雌ねじ3bが螺刻されている(図3(a)参照)。そして、フィルター収納部2の底部貫通孔2cと台座部3の天面部貫通孔3aに栓部4が挿通固定される。
【0038】
この栓部4に関し、図3(b)に示す通り、栓部4は上部にフィルター設置台4bが形成され、かつフィルター収納部2(図2を参照)の底部貫通孔2cより大きな径を有するフランジ4cを外周面に有し、フランジ4cの下方に形成されている下部開口部4dの周縁には台座部3の雌ねじ3bと螺合する雄ねじ4eが螺刻されている筒体4fを有している。さらに栓部4は、フランジ4cに隣接しフランジ4cの上又は下の面と同程度の大きさの環状形の環状シール材4gと、筒体4f内の液通路となる中空部に設置されたばね4hと、このばね4hにより下から上に向けて付勢され下部開口部4dを閉塞する栓4iと、この栓4iに連結し、フィルター収納部2の内周面に近接して配置され上端がフィルター収納部2の上方に突出する、ばね4hの付勢に対抗可能なロッド4aを有している。そして、このロッド4aの下端が上下に移動可能なように、筒体4fの両側には垂直ガイド孔4jが形成されている。
【0039】
このように構成されたサーバー1であれば、フィルター収納部2の中のメッシュフィルター等に入れた飲料用の原料に湯等を流下させた後、蓋2aをフィルター収納部2の開口部を覆うように載置すれば、フィルター収納部2の内部は密封された状態となる。この結果、フィルター収納部2の内部が保温・保湿されるという作用を有する。また、把手部2bを付すことで、指でサーバー1を摘まみ持ったり、手指をかけることができるという作用を有す。
また、サーバー1は、栓部4と台座部3によりそれぞれ螺刻されている、雄ねじ4eと雌ねじ3bの締緩により、フィルター収納部2,台座部3,および栓部4を分解・連結できるという作用も有する。すなわち、フィルター収納部2と台座部3は、栓部4を介して一体化固定されており、フィルター収納部2と台座部3の取り合いは精度が多少低くともよい。さらに、下部開口部4dを囲む台座部3が透明材料により形成されることで、台座部3の内部の状況を外から目視確認できるという作用を有する。
【0040】
また、筒体4fの中央に配置された栓4iは、ロッド4aの上端が下方に押し込まれることで、下部開口部4dが開栓するという作用を有する。また、ロッド4aの上部の押し下げを解除すれば、ばね4hの付勢により栓4iは再び上方に押し上げられ、下部開口部4dを閉栓するように作用する。
【0041】
上述する作用により、本発明の第1の実施の形態に係るサーバー1であれば、フィルター収納部2を蓋2aで覆うことで、飲料用の原料を蒸らす、温度を一定に維持する等の調整が可能となり、所望の抽出液を作製することが容易になるという効果を有する。また、把手部2bが設置されていることにより運搬が容易となるという効果も有する。さらに、サーバー1は分離可能な複数の部品より組み立てることができるため、フィルター収納部2は陶磁器で、台座部3は透明材料の成形体とすれば、一部が陶磁器製でありながら流下状況を確認可能なサーバーを作ることができる。これにより、陶磁器製サーバーならではの抽出条件により抽出でき、さらに容器から抽出液を溢れさせてテーブルを汚すこともなくなるため、飲料用の原料を無駄に消費しなくなるという効果もあると考えられる。また、台座部3を樹脂製の透明材料とすれば、サーバーの軽量化も可能となる。
加えて、フィルター収納部2、台座部3、および栓部4の3つの部品の分解・連結が容易なため、汚れた際には簡単に分解して洗浄することもでき、小さな隙間に残る汚れ等も除去が容易であるため、雑菌等が繁殖し難くなるという効果も有すると考えられる。
【0042】
一方、筒体4fの下部開口部4dには、ロッド4aの上端を上下させることで開閉できる栓4iが設置されているため、複数の容器に抽出液を入れる作業においては、運搬時は閉栓して漏出を防ぎ、容器に入れる際は開栓して流下させることができる。これにより、サーバーからの漏出がなくなるばかりか、給仕作業の労力軽減にも繋がると考えられる。また、栓4iの開閉により抽出液の流下タイミングを任意に決定することができるため、抽出時間の異なる飲料用の原料の抽出も可能になるという効果を有する。
なお、本実施の形態においては、フィルター収納部2を陶磁器製とし、台座部3を透明材料としたが、これらの材料とする場合の他、フィルター収納部2と台座部3のいずれも陶磁器製としてもよいし、いずれも樹脂製としてもよいし、金属製としてもよい。また、フィルター収納部2と台座部3で材料を同一としてもよいし異なる材料としてもよい。このような選択が可能な点については、第2及び第3の実施の形態においても同様である。フィルター収納部2と台座部3は栓部4を介して固定されることから、前述のとおり取り合い部分、すなわち、フィルター収納部2の底面2dと台座部3の天面部3cの接触部分の精度に対する要求を低くすることが可能であり、フィルター収納部2と台座部3が同一材料であろうが異種材料であろうが製造も容易となる。
【0043】
次に、本発明の第2の実施の形態に係るサーバー5について、図4図5を用いて詳細に説明する。なお、サーバー1と共通する構成については同じ名称を用いている。
図4は、図1に示す本発明の第1の実施の形態に係るサーバーと同じ外観を示す、本発明の第2の実施の形態に係るサーバーのH-H線矢視断面図であり、サーバーの部分のみを示したものである。また、図5は本発明の第2の実施の形態に係るサーバーの部品を示したものであり、図5(a)は台座部の外観斜視図であり、同図(b)は栓部の外観斜視図であり、そして同図(c)は環状部材を示している。
【0044】
図4図5より、本発明の第2の実施の形態に係るサーバー5は、蓋2aにより上部の開口部が覆われ、底部貫通孔2cが形成されたフィルター収納部2と、このフィルター収納部2の底部の下方に設置され、その底面2dと接する天面部3cには底部貫通孔2cと中心が一致する天面部貫通孔3aを有する台座部3と、底部貫通孔2cと天面部貫通孔3aに挿通されて天面部貫通孔3aより下部開口部4dを露出する栓部4と、天面部貫通孔3aより大きな径を有し、内面には栓部4の雄ねじ4eと螺合可能な雌ねじ6aが螺刻された環状部材6(図5(c)参照)とにより構成されている。なお、台座部3は透明材料により形成されている。
さらに、栓部4の下部開口部4dにおいて、この雄ねじ4eの螺刻された外周面内には筒体4fの長手方向と平行に溝4kが形成されている(図5(b)参照)。そして、台座部3では、天面部貫通孔3aの内面に溝4kと篏合する爪3dが形成されている(図5(a)参照)。
【0045】
このような構成のサーバー5であれば、溝4kと爪3dが栓部4の向きを示す標識になるという作用を有する。さらに、フィルター収納部2に台座部3を設置する際に、栓部4の配置を考慮しながら爪3dを配置し、この爪3dに溝4kを篏合させれば、栓部4を所望の位置に固定できるという作用を有する。また、この爪3dにより、栓部4は環状部材6の回転とともに供回りし難くするという作用も有する。
加えて、栓部4の位置を決定するのをさらに容易にするため、フィルター収納部2の底面2dに標識となる印をつけても良く、またフィルター収納部2の底面2d、および台座部3の天面部3cに、篏合可能であり標識にもなる凹部と凸部を形成されていても良い。何れの場合でも栓部4の配置の決定をさらに容易にするという作用を有する。
【0046】
そして、以上の作用により、サーバー5において、フィルター収納部2に台座部3を設置する際に、栓部4の向きを規定する台座部3の爪3dの配置を予め決めることができるため、サーバー5の組み立ての際に栓部4の向きを間違え難くなるという効果を有する。さらに、環状部材6を用いて各部品を連結する際に、爪3dが栓部4の動きを抑制するストッパーとなるため、雄ねじ4eと雌ねじ6aを螺合させる時に、栓部4(ロッド4a)の位置が変わり難くなる。これによりサーバー5の組み立て作業が容易となり、作業時間の短縮にも繋がると考えられる。
【0047】
さらに、上述したフィルター収納部2の底面2d、および台座部3の天面部3cに篏合可能な凹部と凸部が形成されていれば、環状部材6を用いて各部品を連結する際に台座部3は供回りしなくなるため、栓部4をより確実に所望の位置に固定できる。そして、サーバー5の組み立てはさらに容易となり、組み立てミス等も起こり難くなると考えられる。
なお、第1の実施の形態に係るサーバー1では環状部材6を用いずに栓部4と台座部3を螺合させることで、栓部4を介して間接的にフィルター収納部2と台座部3を一体化固定したが、第2の実施の形態では雌ねじ6aが螺刻された環状部材6を用いることで台座部3に雌ねじ3bを螺刻しなくともよいので、例えば台座部3を製造精度が金属や樹脂に比べて劣る陶磁器製とすることができるのである。
【0048】
次に、本発明の第3の実施の形態に係るサーバー7について、図6図7を用いて詳細に説明する。なお、サーバー7の説明において、上述するサーバー1又はサーバー5と共通する構成については、同じ名称を用いている。
図6は、図1に示す本発明の第1の実施の形態に係るサーバーと同じ外観を示す、本発明の第3の実施の形態に係るサーバーのH-H線矢視断面図であり、サーバーの部分のみを示したものである。また、図7は本発明の第3の実施の形態に係るサーバーのフィルター収納部の平面図である。
【0049】
図6図7より、本発明の第3の実施の形態に係るサーバー7は、フィルター収納部2の底面2dに形成されている底部貫通孔2cの内周面に爪2eが形成され、このフィルター収納部2の底面2dの下方に設置され、その底面2dと接する天面部3cには底部貫通孔2cと中心が一致し、その内面には雌ねじ3bが螺刻されたサーバー1と同じ台座部3と(図3(a)参照)、底部貫通孔2cと天面部貫通孔3aに挿通固定される栓部4とから構成されている。なお、ここでの栓部4は、サーバー5において使用するものと同じ構成となり、その作用と効果もサーバー5と同じものとなる。
【0050】
このような構成のサーバー7は、溝4kと爪2eが栓部4の向きを示す標識となり、溝4kの位置を考慮して所定の位置に爪2eが形成されていれば、爪2eに溝4kを篏合するだけで栓部4(ロッド4a)は常に所望の位置に固定されるように作用する。また、この爪2eに溝4kを篏合させることで、雄ねじ4eと雌ねじ3bを螺合させる際に栓部4は爪2eにより動きが抑制されるため、台座部3の回転とともに栓部4が供回りしなくなるという作用も有する。
以上のような作用により、栓部4はフィルター収納部2に設置する際に常に最適な配置となり、台座部3を取り付ける際には栓部4が所望の配置でフィルター収納部2に固定され、サーバー7の組み立て作業が非常に容易となり、作業時間の短縮に繋がると考えられる。
【0051】
次に、フィルター収納部を陶磁器製としたサーバーの製造方法について、図8を用いて説明する。図8は、本発明に係るサーバーであって、このうちフィルター収納部が陶磁器製であるサーバーの製造方法を示すブロック図であり、五つの工程によりサーバーが作製できることを示している。なお、製造工程は(1)から(5)の順に進むものとなる。
【0052】
(1)は、把手部のないフィルター収納部の第1の成形体を轆轤成形又は鋳込み成形により作製する工程である。なお、轆轤成形では、型に投入された粘土をヘラで延ばしながら、この粘土を型の内壁に密着させて第1の成形体が作製される。一方、鋳込み成形であれば、石膏型に泥漿土が流し込まれ、石膏型の水分吸収等により泥漿土を硬化させることで第1の成形体が成形される。
次いで(2)においては、(1)により得られた第1の成形体に把手部が付され、第2の成形体を作製する工程である。(1)の工程において成形が困難な把手等(加飾のための部分も含む)については、この(2)において形成することが可能となる。
そして(3)では、(2)において作成した第2の成形体を乾燥させる工程となる。ここで、第2の成形体の水分をムラなく十分に除去しておかなければ、次工程である焼成時に、水分の気化により焼成体の内部に空洞が生成したり、焼成体にひび割れが発生したりするなどの原因となる。
さらに(4)では、(3)において得られた第2の成形体が高温により焼成される。これにより、第2の成形体は高温にも耐え高硬度な焼成体となり、フィルター収納部として活用される。
最後に(5)において、この焼成体であるフィルター収納部と台座部を,栓部を介して間接的に一体化固定させることで、サーバーが完成する。
【0053】
このように本発明のサーバーはフィルター収納部,台座部,および栓部に分けて作製可能となり、上述する製造方法によりフィルター収納部が陶磁器製となったサーバーであっても容易に成形可能である。特に、鋳込み成形等では形状が複雑なため成形不良が起こっていた陶磁器製のサーバーも、分割して成形できるため製造の難易度が下がり、熟練者でなくとも容易に生産できる。また、成形時間が短く取り扱いの容易な轆轤成形も利用できる。
さらに、陶磁器製のフィルター収納部に対して台座部を一体化固定する際には、陶磁器の製造精度が金属や樹脂等よりも劣るためフィルター収納部と台座部を直接組立て固定することが困難であるが、本発明のサーバーであれば栓部を介して間接的に固定するため、サーバーを容易に製造することが可能となり、生産効率も向上し、安価かつ大量に陶磁器製サーバーを製造できるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の請求項1乃至請求項3に記載された発明は、抽出工程を必要とする種々飲料を作製することが可能な、さらに流下状況を目視確認することが可能なサーバーとして利用可能である。
【符号の説明】
【0055】
1…サーバー 2…フィルター収納部 2a…蓋 2b…把手部 2c…底部貫通孔 2d…底面 2e…爪 3…台座部 3a…天面部貫通孔 3b…雌ねじ 3c…天面部 3d…爪 4…栓部 4a…ロッド 4b…フィルター設置台 4c…フランジ 4d…下部開口部 4e…雄ねじ 4f…筒体 4g…環状シール材 4h…ばね 4i…栓 4j…垂直ガイド孔 4k…溝 5…サーバー 6…環状部材 6a…雌ねじ 7…サーバー 8…容器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8