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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】カテーテル力制御装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/082 20060101AFI20220111BHJP
   A61B 18/14 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
A61M25/082
A61B18/14
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018558456
(86)(22)【出願日】2017-02-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-04-18
(86)【国際出願番号】 CA2017050119
(87)【国際公開番号】W WO2017132768
(87)【国際公開日】2017-08-10
【審査請求日】2020-01-28
(31)【優先権主張番号】62/290,243
(32)【優先日】2016-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518272083
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティ オブ ウエスタン オンタリオ
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ゲルマン,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】スケイン,アラン
(72)【発明者】
【氏名】ドランゴバ,マリア
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-506621(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0076445(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0141914(US,A1)
【文献】特表2001-520085(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0184955(US,A1)
【文献】特開2010-259810(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/082
A61B 18/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コントローラを伴う使用のための手持ちカテーテル力制御装置であって、前記装置は、
手持ちされる大きさとされた細長い基部であって、前記基部は、第1の長手方向端部と第2の長手方向端部との間に長手方向軸を画定し、前記第1の長手方向端部および前記第2の長手方向端部は互いに対向する、基部と、
前記基部の長手方向軸に対して平行な直線運動を提供するように前記基部に取り付けられた線形アクチュエータと、
前記基部に結合されたシースクランプであって、前記シースクランプは、シースハンドルを捕捉する大きさとされている、シースクランプと、
前記線形アクチュエータに結合されたカテーテルクランプであって、前記カテーテルクランプは、カテーテルを捕捉する大きさとされており、前記カテーテルクランプは、前記シースクランプと同軸であるように位置合わせされる、カテーテルクランプと、
前記基部に旋回可能に結合されたカバーと、
前記カバーと前記基部との対応する当接縁端部内に形成された側部ポート開口部であって、前記側部ポート開口部は、前記カバーおよび前記基部が閉位置にあるときに形成され、側部ポートは前記シースハンドルから半径方向に延びる、側部ポート開口部と、
を備える、装置。
【請求項2】
前記シースクランプは、前記カバーおよび前記基部の対応する当接縁端部内に形成された開口部であり、前記開口部は、前記カバーおよび前記基部が閉位置にあるときに形成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記装置は、前記基部に結合された誘導開口部をさらに備え、前記誘導開口部は、前記カテーテルの自由摺動通過を可能にする大きさとされており、前記誘導開口部は、前記カテーテルクランプおよび前記シースクランプと同軸である、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記シースクランプは前記第1の長手方向端部に配置され、前記誘導開口部は前記第2の長手方向端部に配置され、前記カテーテルクランプはそれらの間に配置される、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記誘導開口部は、前記カバーおよび前記基部の対応する当接縁端部内に形成され、前記誘導開口部は、前記カバーおよび前記基部が閉位置にあるときに形成される、請求項3または4に記載の装置。
【請求項6】
前記線形アクチュエータは、橇摺動軌道機構、あるいは磁性ロッド上に取り付けられたコイルアセンブリ、あるいは回転ステッピングモータまたはDCモータ機構を有する送りねじと送りナット、あるいは圧電アクチュエータまたはボイスコイルである、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記基部の第1の長手方向端部に取り付けられた第1のリミットスイッチと、
前記基部の第2の長手方向端部に取り付けられた第2のリミットスイッチと、
をさらに備える、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
カテーテル力制御システムであって、
カテーテルおよびシースハンドルに結合された請求項1乃至7のいずれか一項に記載の装置と、
前記カテーテルの遠端に配置された力センサであって、前記遠端は標的組織との接触のために構成され、前記力センサはリアルタイム接触力データを検出する、力センサと、
前記リアルタイム接触力データを受信するための、かつ、前記リアルタイム接触力データと事前設定済みの所望の接触力との間の差を最小限にするために制御信号を発生して前記線形アクチュエータに伝達するためのコントローラと、
を備える、システム。
【請求項9】
前記コントローラは、比例微分積分(PID)コントローラ、ハイブリッドPIDコントローラ、スミス予測器コントローラ、モデル予測コントローラ、またはカルマンフィルタコントローラである、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記コントローラは、前記システム内の遅延を補償する遅延に基づく修正因子、心臓運動外乱を補償する心臓修正因子、または呼吸運動外乱を補償する呼吸修正因子を含む、請求項8または9に記載のシステム。
【請求項11】
前記コントローラは、リアルタイム患者固有データを受信し、前記リアルタイム患者固有データを使用して前記リアルタイム接触力データと前記事前設定済みの所望の接触力との差を最小限にするように前記制御信号を発生する、請求項8乃至10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記リアルタイム患者固有データは、前記カテーテルとの接触点における組織温度、心電図、呼吸数、カテーテル-組織侵入角、またはそれらの任意の組み合わせである、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記コントローラは、力時間積分(FTI)を計算するようにプログラムされ、所望のFTIに達した時点で前記カテーテルを退避させるために制御信号を自動的に送信する、請求項8乃至12のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテル医療処置に関し、より詳細には、標的組織とのカテーテル接触力の自動制御に関する。
【背景技術】
【0002】
インターベンション医療器具としてのカテーテルの使用は、普及し続けている。例えば、外科処置は骨および周囲軟部組織の切除を含む大切開を伴う場合があるため、多くの心臓および血管外科処置がカテーテル法の恩恵を受けている。侵襲的外科処置をカテーテル処置に置き換えることによって、患者の回復時間が短縮されることが多い。
【0003】
経皮的高周波(RF)カテーテルアブレーションは、様々な心不整脈の治療の標準になりつつあるカテーテル法処置の一例である。心臓インターベンション医師は、心臓にアブレーションカテーテルを導入し、遠端が標的心筋に接触するまでカテーテルを操作する。標的心筋に達した後は、RF出力を与えて、不整脈に関与する電気経路を遮断するアブレーション組織変性を形成する。表層組織変性は、疾患再発およびアブレーション障害となる可能性のある健康な心筋の領域を残すため、治療の成功のためにはこれらの組織変性が貫壁性であることが重要である。治療の成功のためには、組織に対するカテーテル先端の接触力が所望の接触力の範囲内に維持される必要がある。標的組織である心筋壁の動きのため、典型的にはカテーテルタイプセンサによって提供されるリアルタムの接触力データを観察することによってカテーテルを手動制御するインターベンション医師は、必要な時間にわたって所望の接触力範囲を維持することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カテーテルの手動操作は、所望の範囲と比較して不十分な接触力または過剰な接触力に伴うリスクをもたらす。不十分な接触力は、患者が反復治療を必要とする効果のないアブレーション組織変性のリスクをもたらす。過剰な接触力によって施される処置は、深部組織過熱のリスクをもたらし、その結果、「スチームポップ」、穿孔、および食道、肺、横隔神経損傷を含む、心臓外部の傷害を引き起こす可能性がある。
【0005】
過剰接触力に伴うこれらの傷害の潜在的リスクは、インターベンション医師を躊躇させることが多く、アブレーション組織変性をためらいがちに施させ、接触力をより低くする方向に誤りを犯しやすい。
【0006】
したがって、標的組織とのカテーテル接触力の自動制御が引き続き必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、手持ちカテーテル力制御装置であって、
線形アクチュエータと、
カテーテルを線形アクチュエータに接続するためのクランプとを含み、
線形アクチュエータはカテーテルと標的組織との間の接触力を制御する、手持ちカテーテル力制御装置が提供される。
【0008】
別の態様では、手持ちカテーテル力制御装置であって、
手持ちされる大きさとされ、第1と第2の対向する長手方向端部間に長手方向軸を画定する細長い基部と、
基部の長手方向軸に実質的に平行な直線運動を生じさせるように基部に取り付けられた線形アクチュエータと、
基部に結合され、シースハンドルを固定して捕捉する大きさとされたシースクランプと、
線形アクチュエータに結合され、カテーテルを固定して捕捉する大きさとされたカテーテルクランプとを備え、
カテーテルクランプはシースクランプと実質的に同軸になるように位置合わせされた、手持ちカテーテル力制御装置が提供される。
【0009】
さらに他の態様では、上記のカテーテル接触力制御装置を組み込んだシステムおよび方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】開位置にあるカテーテルクランプを有するCFC装置10を、(A)等角図および(B)等角ワイヤフレーム図で示す図である。
図2】閉位置にあるカテーテルクランプを有するCFC装置10を、(A)等角図および(B)等角ワイヤフレーム図で示す図である。
図3】閉位置にある筐体を備えたCFC装置10の、(A)等角図と、(B)軸方向断面図と、(C)側方向断面図と、(D)分解後部立面図とを示す図である。
図4A】CFC装置10を組み込んだシステムの流れ図を、(A)第1の変形、(B)第2の変形、および(C)第3の変形で示す図である。
図4B】CFC装置10を組み込んだシステムの流れ図を、(A)第1の変形、(B)第2の変形、および(C)第3の変形で示す図である。
図4C】CFC装置10を組み込んだシステムの流れ図を、(A)第1の変形、(B)第2の変形、および(C)第3の変形で示す図である。
図5図4Aに示すシステムの修正を示す流れ図である。
図6】CFC装置を組みこんだシステムの第4の変形を示す流れ図図である。
図7】CFC装置を評価するために使用される、カテーテルとシースとが装填されたリニアモーションファントムを示す概略図である。
図8】リニアモーションファントムに装着された、CFC装置とシースとカテーテルとを示す概略図である。
図9】同じ患者プロファイルを実行する、リニアモーションファントムによって固定カテーテル先端に加えられる2つの代表的な患者接触力(CF)プロファイル((a)および(c))と、対応するCFプロファイル(それぞれ、(b)および(d))とを示す図である。
図10】時点ごとにプロットされた平均および標準偏差とともに、基準値25gの場合のCFC装置のステップ応答を示す図である。
図11】3つの固有運動プロファイル(パネル(d)のそれぞれ16、15、および9)の手動およびCFC制御CFの分布を示すヒストグラム(a)から(c)と、16の手動(d)および16の対応するCFC制御(e)インターベンションのグレースケール表現とを示す図である(図9(b)および(d)の運動プロファイルが、パネル(d)のそれぞれプロファイル#13および#3である)。
図12】(a)CFCが解除された状態のCFプロファイルと、(b)CFCが15g(最下段のプロット)、25g(中段のプロット)および40g(最上段のプロット)を与えるように係合された状態で生成されたCFプロファイルと、様々な所望CFレベルにおける手動とCFCインターベンション間のCF分布を示すヒストグラム(c)とグレースケール表現(d)(図8(d)のプロファイル#1に対応する運動プロファイル)とを示す図である。
図13】0秒から20秒までの期間(CFCが解除された状態でファントムと接触するカテーテル)、20秒から39.5秒までの期間(25gで500gsを与えるように係合されたCFC)、および39.5秒から45秒までの期間(所望のFTI(破線)に達した後、カテーテルの先端がシース内に退避)のCFプロファイルと、図8(d)のプロファイル#15に対応する運動プロファイルとを示す図である。
図14】カバーが(A)開位置および(B)閉位置にある、図1に示すCFC装置の変形を示す等角図である。
図15-1】CFC装置を制御するための様々な制御アルゴリズムの模式表現を示す図である。
図15-2】CFC装置を制御するための様々な制御アルゴリズムの模式表現を示す図である。
図16図15に示す制御アルゴリズムを使用したシミュレーションにおけるCFプロファイルを示す図である。
図17-1】豚の心臓の標的位置におけるカテーテル接触力を制御するためにCFC装置を使用した豚での実験時に記録されたCFプロファイルを示す図である。
図17-2】豚の心臓の標的位置におけるカテーテル接触力を制御するためにCFC装置を使用した豚での実験時に記録されたCFプロファイルを示す図である。
図18】PID制御アルゴリズムに対する無駄時間の影響を実証するシミュレーションCFプロファイルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を参照すると、図1から図3に、カテーテル力制御(CFC)装置10の様々な図が示されている。
【0012】
図1および図2は両方とも等角図であり、(A)筐体12が内部構成要素が見えないように隠す中実体として示された図と、(B)筐体12が内部構成要素を見えるようにワイヤフレームで示された図である。図1は、カテーテル30から係合解除されたCFC装置10を示し、図2は、カテーテル30に係合されたCFC装置10を示す。図3AもCFC装置10の等角図であるが、筐体12のカバー16が閉位置にある点が図1および図2と異なる。図3Bは、線3B-3Bで切り取られた軸方向断面図を示す。図3Cは、線3C-3Cで切り取られた側方向断面図を示す。図3Dは、分解後部立面図を示す。
【0013】
CFC装置10の筐体12は、基部14とカバー16とを含む。基部14とカバー16とは、実質的に対称である。両方とも、片手で保持するのに好都合な大きさの実質的に等しい長手方向寸法および側方向寸法を有する内部空間を画定する、細長い硬質の貫通形状の箱である。基部14は、開放上部を画定し、カバー16は対応する開放底部を画定し、基部14とカバー16とが閉位置とされたときに、それぞれの内部空間どうしが開放連通するように互いに位置合わせされる。基部14は、ヒンジ18の各腕が基部14の開放上部とカバー16の開放底部とに沿った対応する縁端部と接合した状態で、ヒンジ18によってカバー16に旋回可能に結合され、それによって、基部14とカバー16とが閉位置にあるときに開放上部と底部とが位置合わせされる。閉位置にある基部14とカバー16とを可逆的に締結するように、ヒンジ18の対向する側の縁端部に第1のラッチ20および第2のラッチ22(図3Aに示す)が配置される。
【0014】
筐体12は、カテーテルとシースとの組み合わせの構造構成要素を受け入れるためのいくつかの開口部を画定する。各開口部は、基部14およびカバー16の内部空間と連通する。各開口部は、外周部に画定された開口部の一部が基部14の開放上部に沿い、外周部の対応する場所に画定された各開口部の残りの部分がカバー16の開放底部に沿った状態で、基部14とカバー16とが閉位置にあるときに形成される。基部14およびカバー16の対応する第1の端部に画定された互いに一致する半円形切り欠きの位置合わせによって形成される第1の開口部24が、シースハンドル26を挟む大きさとされ、それによって、基部14とカバー16とが閉位置にあるときにシースハンドルが筐体12に固定され、筐体12を基準にして固定したままとなる。基部14とカバー16との対応する第2の端部において画定された互いに一致する矩形切り欠きの位置合わせによって形成される第2の開口部28が、カテーテル30の自由摺動通過を可能にする大きさとされ、それによって、基部14とカバー16とが閉位置にあるときにカテーテル30が筐体12とシースハンドル26とを基準にして移動することができる。第1および第2の開口部は、筐体12の長手方向寸法を挟んで対向するとともに実質的に同軸になるように画定され、それによってカテーテル30は、第1の開口部24から第2の開口部28まで基部14の長手方向寸法にわたって延びると直線的に支持されることができる。基部14およびカバー16の第1の端部に近い対応する側部位置に画定された互いに一致する半円形切り欠きの位置合わせによって形成される第3の開口部32が、シースハンドル26から半径方向に外側に延びる側部ポート34を受け入れる大きさとされ、それによって側部ポート34は基部14とカバー16とが閉位置にあるときに送水管36との接続を維持することができる。送水管36は、シースとカテーテルとの間の摩擦を小さくするとともに、例えば冷却および/または薬物投与のためにRF印加時に潅注を行うために、等張食塩水などの適合する液体を供給する。側部ポート34の半径方向の向きに適応するように、第3の開口部32の軸は、第1の開口部24の軸に対して実質的に垂直に位置合わせされる。
【0015】
シースハンドル26は、カテーテル30挿入用のエントリバルブを備えた管状体38を含む。エントリバルブの第1の端部は、カテーテル30を受け入れる大きさとされた挿入点を画定する気密シール40を支持し、エントリバルブの第2の端部は管状体38の終端肩部と一体的に接続されたネック42を形成する。ネック42は、気密シール40と管状体38との間に配置され、気密シール40および管状体38の両方よりも小さい直径を有する。したがって、第1の開口部24をネック42を捕捉または挟むような大きさとし、基部14とカバー16とが閉位置にあるときに筐体12の第1の端部をネック42と接合する管状体38の終端肩部に接して支えることによって、シースハンドルの動きが実質的に防止される。
【0016】
線形アクチュエータ44が基部14の内部空間内に取り付けられる。線形アクチュエータ44は、前後の直線運動を与える単一自由度を有する橇摺動軌道機構である。橇はコイルアセンブリ46であり、摺動軌道は磁性ロッド48である。ブッシングを備えた適合する筐体内に収容されたコイルアセンブリ46は、磁性ロッド48に取り付けられ、磁性ロッド48は基部14に取り付けられる。基部14の第1の端部に第1のリミットスイッチ60が取り付けられ、基部14の第2の端部に第2のリミットスイッチ62が取り付けられる。第1および第2のリミットスイッチは、ホーミングプロトコルのために使用され、CFC装置10の動作時に過移動停止スイッチまたは範囲終端停止スイッチとしても使用することができる。
【0017】
動作時、線形アクチュエータ44はコントローラと通信可能である。線形アクチュエータとの通信によってコントローラ/ドライバ回路から制御信号を受信するためのコネクタポート(図示せず)が基部14内部に取り付けられ、コネクタポート(図示せず)は、コントローラ/ドライバ回路から対応するコネクタケーブル(図示せず)を接続するために基部14の外面から接触可能である。
【0018】
コイルアセンブリ46の筐体にカテーテルクランプ50が取り付けられる。カテーテルクランプ50は、細長い底板52と、それと合致する等しい寸法の上板54とを含む。底板52は、コイルアセンブリ46の筐体に取り付けられ、上板54はボルト58によって底板52に可逆的に締結される。ボルト58は、上板54に形成された孔を通って延び、底板52に形成されたブラインドねじ穴と螺合するように回転される。上板54と底板52とは、閉位置においてカテーテルクランプ50を可逆的に締結するために必要なボルトの数を減らすために、共通の縁端部に沿って旋回可能に結合されてもよい。上板54は、底板の対応する接触面に当接する接触面を備える。各接触面内に、部分円筒形の導管、典型的には半円筒形の導管が同延状に形成されている。上板54が底板52に可逆的に締結されると、全円筒形導管56が形成される。したがって、全円筒形導管56は、カテーテルクランプ50が閉位置にあるときに底板52の接触面によって画定される導管の一部と上板54の接触面によって画定される導管の残りの部分とによって、形成される。
【0019】
全円筒形導管56は、カテーテル30と摩擦係合する大きさとされ、第1の開口部24および第2の開口部28と実質的に同軸であり、それによって、全円筒形導管56内でのカテーテル30の捕捉により第1の開口部24から筐体12の内部空間を通って第2の開口部28に至る実質的に直線状の経路が維持される。カテーテル30と全円筒形導管56との摩擦係合は、全円筒形導管56の長さの一部または全長上の、高い摩擦係数を有するゴムまたはその他の適合する材料の被覆を含んでもよい。動作時、筐体12に固定されたままシースハンドル26が第1の開口部24によって挟まれるとともに、線形アクチュエータ44に取り付けられたカテーテルクランプ50がカテーテル30を捕捉し、それによってシースハンドル26を基準にしたカテーテル30の直線運動を生じさせる。
【0020】
図4Aに、CFC装置10を組み込んだCFCシステム70のサイクルの流れ図を示す。カテーテル30の先端または遠端が標的位置にあるようにシース39とカテーテル30とが手動またはロボット制御で操作されると、カテーテルクランプ50と筐体12の両方が閉位置にある状態で図1から図3に示すようにCFC装置10がカテーテル30およびシースハンドル26に結合される。CFCシステム70、より具体的にはハイブリッド比例微分積分(PID)コントローラ76が、事前設定済みの所望の接触力72を基準としたパルス幅変調(PWM)制御信号を発生する。PWM制御信号は、入力PWM制御信号に基づいて線形アクチュエータ44の速度を制御するために制御信号を発生する速度比例積分(PI)コントローラ78に伝達される。PIコントローラ78によって発生された制御信号は、ドライバ回路80に伝達され、ドライバ回路80はその制御信号を、電源電圧および、線形アクチュエータ44の要件に合致する電流により出力する。線形アクチュエータ82/44の直線運動が、エンコーダを使用して追跡され、位置の変化を計算するために線形アクチュエータの位置86がPIコントローラ78に返送される。線形アクチュエータ82/44の運動がカテーテル30に運動を与え、その結果、カテーテル先端84に直線運動が生じる。カテーテル先端が組織に接触すると、力センサ90がカテーテル先端と標的組織との間の接触力を測定する。外乱88によって、接触力センサ90によって測定される力が変化する。外乱88には、心肺運動88A、カテーテルの不安定性88B、および患者の動き88Cが含まれる。接触力92が、ハイブリッドPIDコントローラ76にリアルタイムで伝達され、ハイブリッドPIDコントローラ76は、そのリアルタイム接触力データ92と事前設定済みの所望の接触力72との比較74を行い、リアルタイム力データ92と事前設定済みの所望の接触力72との差を最小限にするために新たなPWM制御信号を発生してサイクルの新たな期間を開始する。
【0021】
図4Bに、線形アクチュエータ82/44の位置86が接触力コントローラ75に直接フィードバックされる、図4Aに示すサイクルの変形を示す。
【0022】
図4Cに、ドライバ回路80に供給される制御信号に影響を与える追加の変数を提供するために接触力コントローラ77に追加の入力パラメータ96が供給される、図4Bに示すサイクルの変形を示す。
【0023】
図5に、サイクルの開始および停止を制御するためのフットペダル108と、任意によりカテーテルロボットナビゲーションシステム105を備える、図4Aに示すサイクルの一実装形態を示す。インターベンション医師は、ローカルコンピュータ102にインストールされて動作するグラフィックユーザインターフェースで表されたカテーテルマッピングシステムによって誘導される標的位置までカテーテル先端を操作することができる。シースハンドル26によってシース39を手動操作してカテーテル30を標的位置に位置決めしてもよい。標的位置に配置されると、CFC装置10をカテーテル30およびシースハンドル26に結合することができる。任意により、ロボットカテーテルナビゲーションシステム105が、CFC111に位置コマンド106を中継することによってカテーテル30をシース39を介して標的位置まで進めてもよい。力コントローラが係合されていないとき110、CFC111は手動ロボットカテーテル動作112を可能にする。CFCシステム111を係合させる110には、フットペダル108を押すと、その結果、リアルタイム接触力と事前設定済みの所望の接触力104との差を最小限にするようにカテーテル制御力コントローラ114が制御信号を発生する。接触力コントローラ114は、コントローラ75、76または77のいずれかとすることができる。制御信号の発生のためにカテーテル侵入角、ECG、組織温度または組織インピーダンスなどの入力パラメータ104も入力されてもよい。制御信号は、モータドライバ回路116に出力され、モータドライバ回路116はその制御信号を、適合する電源電圧と、線形アクチュエータ118の動作要件に合致する電流により線形アクチュエータ118に伝達する。線形アクチュエータ118の直線運動がカテーテルの対応する直線運動120を発生させ、カテーテルと標的組織との接触をもたらし、力センサ122によって検出された新たな接触力データ点を提供する。外乱121が接触力を変化させる可能性がある。新たな接触力データ点125はローカルコンピュータ102に伝達され、ローカルコンピュータ102は再びサイクルを開始するためにそのデータ点をコントローラ114に伝達する。フットペダルが解放された場合、線形アクチュエータおよびカテーテルは基準位置に退避される。シリアル通信プロトコルによって、コントローラとローカルコンピュータとの間の通信が可能になる。任意により、フットペダル108が解放された状態で、インターベンション医師は、ロボットカテーテルナビゲーションシステム105を使用してカテーテルをロボット制御で所望の位置106まで移動させてもよい。
【0024】
図6に、所望の力時間積分(FTI)202またはその他の組織変性サイズ測定指標に達するまで標的組織に所望の接触力200を与えるように係合されたCFCシステムの変形を示す。カテーテル接触力コントローラ204は、シース39を介してカテーテルの動き206を標的組織にかみ合わせる。この新たな接触力データ点210がCFCシステム211に伝達される。CFCシステム211は、累積FTI212を計算し、所望のFTI202と比較する214。所望のFTI202に達していない場合、接触力コントローラ204は新たな制御信号を発生し、再びサイクルを開始する。比較214で所望の力時間積分202に達すると、カテーテル30がシース39内の基準位置まで引き戻される。接触力コントローラ204は、コントローラ75、76または77のいずれかとすることができる。
【0025】
CFC装置は、臨床状況においていくつかの利点を提供する。例えば、CFC装置は最適かつ制御された方式でアブレーション組織変性をもたらすことができる能力を提供する便利な手持ち器具である。現在、カテーテル先端の接触力制御を可能にする市販の装置はない。別の例として、CFC装置は、既存の市販カテーテルシステムに容易に後付けすることができる。CFC装置は、複数のカテーテル製品にわたる既製のカテーテルおよびシースを使用する標準カテーテル処置の追加手段とすることができる。特殊な固有器具の必要がなく、カテーテルロボットシステムによくあるように手術室の基盤施設の設計変更を必要としないため、この装置のこの特徴は有利である。さらに別の例として、このCFCは付加装置として手動インターベンションに完全に対応する。この装置は、インターベンション医師がシースとカテーテルを血管系に挿入した後で追加することができ、随時、取り外すことができ、シースとカテーテルの無菌状態を損なうことなく後で位置を変えることができる。
【0026】
CFC装置の使用の成功は実験により実証され、カテーテル先端と標的面との間の所望の接触力制御が証明されている。CFC装置の例示の実験証明について以下に説明する。
【0027】
経皮的高周波(RF)カテーテルアブレーションは、様々な心不整脈の治療の標準になりつつある。心臓インターベンション医師は、心臓にアブレーションカテーテルを導入し、遠端が標的心筋に接触するまでカテーテルを操作する。到達した後は、RF出力が与えられて、不整脈に関与する電気経路を遮断するアブレーション組織変性を形成する。表層組織変性は疾患再発およびアブレーション障害となる可能のある健康な心筋の領域を残すため、治療の成功のためにはこれらの組織変性が貫壁性であることが重要である。
【0028】
カテーテル先端と組織との接触力(CF)は、組織変性発現を評価するための標識となることが証明されており、施された組織変性を有効であるものと分類するためのCFガイドラインが確立されている。他の研究によって、特定のRF出力での施行の存続期間とCFの両方を監視することによって組織変性量を予測することができることが証明されている。従来から力時間積分(FTI)と称されているこのモデルを、定義されたパラメータの下での組織変性量を判断するための有望な数量化手段として使用することができる。残念ながら、このモデルはカテーテルの安定性に依存するとともに、診療室において指針として使用されてはいるが、組織変性量または貫壁度を予測することができる定量的測定指標としては使用されてこなかった。最後に、過度のCFにより施される組織変性は深部組織過熱のリスクをもたらし、その結果、「スチームポップ」、穿孔、および食道、肺ならびに横隔神経組織変性を含む心臓外部の傷害を引き起こすことがある。これらの潜在的リスクは、インターベンション医師を躊躇させることが多く、傷害のリスクを減らすためにより低いレベルのCFでのアブレーション組織変性をためらいがちに施させる。臨床的には、カテーテル先端の接触を確実にし、CFを許容可能範囲に収めるための指針としてCF情報が使用されることが多いが、CF情報は、図1の右下のCFプロファイルに示すように、結局は組織の動きによって制限される。
【0029】
理想的にはCFは所定範囲内に規制される必要があるが、インターベンション医師は、心臓運動および呼吸運動を補償するのに十分に速かに応答することができない。高頻度ジェット換気を含む、アブレーション中に心筋運動を最小限に抑える各種手法が提案されている。そのいずれも、すべての患者で動きのない環境をもたらすことに成功していない。
【0030】
市販の力感知アブレーションカテーテルは、インターベンション医師が、組織変性を施している間にCFをリアルタイムで監視することができるようにする。これらのカテーテルは、ステアラブルシースとともに使用されることが多く、その多用性および安定性のレベルの向上が臨床成果を向上させた。インターベンション医師は、典型的には、カテーテルが標的領域を向くまでステアラブルシースを操作し、その後、組織に所望のレベルのCFが加えられるまでシースを介してカテーテルを前進させる。
【0031】
手持ち装置。手持ちCFC装置はシースハンドルの遠端(すなわち、カテーテルの気密シールおよび挿入点にある端)に対して機械的に締め付けられる。カテーテルロックアダプタが、カテーテルシャフトを、直径12mm、長さ134mmの精密磁性シャフトに沿って移動する精密線形アクチュエータ(LM2070-040、MICROMO、米国クリアウォーター)に対して強固に締め付ける。アクチュエータの移動はそのまま、シースを通したカテーテルの移動になる。アダプタとアクチュエータとは、カテーテルを気密シール内に同心円状に取り付けられた状態に維持しながらシースハンドルにしっかりとロックするように設計された筐体内に取り付けられる。1組のヒンジとラッチが、CFCの容易な締め付けと取り外しとを可能にする。アダプタと筐体は両方とも付加製造を使用してポリプロピレンで製作されたものである(Objet3D Pro,Stratasys Ltd.,イスラエル国レホボト)。
【0032】
ハイブリッド制御システム。ハイブリッド制御システムは、カテーテルの先端と動く標的との間の所定のCFを維持する。一般的な閉ループ比例積分微分(PID)制御アルゴリズムは、所望の入力と実際の入力との誤差を最小限にすることに基づいており、ロボットカテーテル制御システムにおける実行可能な解決策であることが証明されている。このCFCは、制御パラメータが誤差変数に基づいて変化する標準PIDコントローラをわずかに変更したものであるハイブリッドPIDコントローラを使用する。制御信号u(t)は以下のように計算される。
【数1】
上式で、誤差e(t)は所望の接触力Fと現在の接触力F(t)との差である。制御パラメータK、KおよびKは、リアルタイムで測定された誤差に応じて異なる制御信号を生成する。誤差が事前定義済みのCF閾値Fよりも大きい場合、制御システムはKPA、KIA、KDAによって示される「アグレッシブ」状態である。誤差がFよりも低い場合、制御システムは、KPC,KIC、KDCによって示される「保守的」状態で動作する。CF閾値は、経験的に5gに指定されている。これは、定常状態の精度を維持することが観察されたレベルである。アグレッシブ制御パラメータのチューニングは、Tyrues-Luybenチューニング法(B.D.TyreusおよびW.L.Luyben、“Tuning PI controllers for integrator/dead time processes”、Industrial & Engineering Chemistry Research、 vol. 31、 no.11、 pp.2625-2628、1992)を使用して行われた。保守的制御パラメータは、所望の定常状態応答のために手動でチューニングした。現行の実装形態では、保守的制御パラメータは、アグレッシブ制御パラメータの少なくとも4分の1である。
【0033】
電子ハードウェア設計。このハイブリッド制御システムは、線形アクチュエータのリアルタイム制御を可能にする内蔵電子システム内で実装された。Atmel SAM3X8E 84MHz 32ビットARMアーキテクチャ(Due、Arduino LLC、イタリア国イブレア)に基づくマイクロコントローラ開発プラットフォームは、測定接触力と所望の接触力とに基づいてパルス幅変調(PWM)制御信号を発生し、これは線形アクチュエータコントローラおよびドライバ回路(MCLM-3003-、MICROMO、米国クリアウォーター)への入力となる。このドーターボードは、入力PWM信号に基づいてモータの速度を制御する固有の速度比例積分(PI)コントローラを使用してプログラムされる。PIコントローラのチューニングは、ハイブリッドPIDシステムのチューニングの前に、製造業者のチューニングソフトウェアを使用して行った。ハイブリッドPIDシステムの更新レートは、線形アクチュエータコントローラの最大レートである1kHzに設定した。
【0034】
リニアモーションファントム。試験管内の動く標的に対するCFCのCF規制能力を評価するために、特製のリニアモーションファントムを開発した(図7)。このモーションファントムは、正弦波および生理学的運動プロファイルを提供するように製作された。ホール効果エンコーダを備えたギアモータ(37D Gearmotor、Pololu Electronics、米国ネバダ州ラスベガス)が、キャリッジに直線運動を与える送りねじを駆動する。内蔵電子システム内の第2のPID制御システムが、モーションステージを制御する。回路基板アセンブリは、マイクロコントローラ開発プラットフォーム(Due、Arduino LLC、イタリア国イブレア)と、DCモータドライバドーターボード(VNH5019 Driver Shield、Pololu Electroinics、米国ネバダ州ラスベガス)とを備える。線形増幅器(CSG110、FUTEK Inc.、 米国カリフォルニア州アーバイン)に結合された200ミリグラムの精細度で力を検出可能なひずみゲージ(S100、Strain Measurement Devices、Wallingford、米国コネチカット州)がキャリッジに取り付けられ、カテーテルの先端のCFを測定するために使用される。軟部組織コンプライアンスを模擬するために、ひずみゲージとカテーテル先端との間に1片のシリコーン(Dragon Skin 30、Smooth-On Inc.、米国ペンシルベニア州マカンギー)を配置する。位置決めねじによって、シース内に収容されているカテーテルの移動を妨げずにシースを所定位置にしっかりと固定する。まず、フックの法則による線形較正を行って組織の変位とひずみゲージで測定された力との関係を求めた。任意の正弦波運動プロファイルおよび正弦波掃引プロファイルを実行するためと、生理学的運動を再現するためにファントムをプログラムした。典型的なアブレーション処置時に力感知アブレーションカテーテルによって、図1に示すプロファイルと同様の接触力プロファイルを記録した。高周波低振幅の心臓運動と低周波高振幅の呼吸運動の両方を含むこれらのプロファイルを、線形較正パラメータを使用して位置軌跡として運動ファントムにプログラムした。リアルタイムで測定されたひずみゲージからの信号を、CFC制御システムのCFフィードバック信号として使用し、市販の力感知カテーテルによって与えられると考えられるCF信号の代用を表現する。
【0035】
リニアモーションファントムの評価。実行された運動プロファイルが、臨床的に測定されたものと類似した接触力プロファイルとなる生理的運動を確実に模擬するようにするために、まず、リニアモーションファントムを評価した。リニアモーションファントムが16の異なる患者固有運動プロファイルを与える間、カテーテルを固定したままとした。実験のうちの半分の間は、シースを所定位置にロックした。ひずみゲージによって得られたリアルタイムCF測定値を記録し、対応するCFプロファイルと比較した。実行されたCFプロファイルを対応する患者プロファイルと完全に突き合わせる試みは行わず、測定されたCFプロファイルの目視検査のみを行い、振幅および周波数の範囲が生理学的範囲内にあることを確認した。
【0036】
カテーテル力コントローラの評価
CFCの全体的精度および動的性能を評価するために実験を行った。これらの実験のために、一般的に使用されるステアラブルシース(8F Agilis NxT、St.Jude Medical、米国ミネソタ州セントポール)とCF感知アブレーションカテーテル(7.5F SmartTouch、Biosense Webster Ltd.、米国カリフォルニア州ダイヤモンドバー)との組み合わせの後端にCFCを取り付けた。臨床状況を模擬するためと、シースとカテーテルの間の摩擦を減らすために、シースの側部ポートを介して水を導入した。図8に示すようにシースとカテーテルをリニアモーションファントムに挿入した。
【0037】
1)ステップ応答:まず、(25gの)ステップ入力に対するCFC制御システムの応答を評価した。次に、25回の反復中にステップ応答を測定し、立ち上がり時間、オーバーシュート、およびピークレベルを特性評価した。これらの実験中、リニアモーションファントムは固定したままとした。
【0038】
2)安全性:組織穿孔を生じさせる可能性のある過度、高速および突然の動きに対する応答についてCFCを試験した。リニアモーションファントムは、70gのピークツーピーク振幅で0.1Hzから2.5Hzの掃引となる双方向連続正弦波掃引を与えるようにプログラムした。このあり得そうにない臨床シナリオは、40を越える患者固有のCFプロファイルのフーリエ解析に従い、観察された最大周波数成分が2.5Hzであると判断して選択された。ファントムが所定の運動を実行している間、CFCを係合させ、CFを25gの所望の基準値に規制することを試みた。所望の接触力と実際の接触力との最大誤差を測定した。この実験を10回繰り返した。
【0039】
3)患者固有の動的応答:手動インターベンションと比較したCFCの全体的性能を評価するために、16の異なる患者の動きプロファイルを実行するようにリニアモーションファントムをプログラムした。CFCの評価の前に、対照実験を行い、この実験によってファントムはCFCが解除された状態の各プロファイルを再現した。これは、インターベンション医師がカテーテルを運動する心筋組織に接触させ、カテーテルを保持したまま組織変性を施す手動インターベンションを表している。次に、この実験を、運動プロファイルの期間、15g、25gおよび40gを与えるようにプログラムされたCFCによって繰り返した。この規制されたプロファイルの統計分析を行って、平均信頼区間と二乗平均平方根誤差(RMSE)とを計算した。「手動」インターベンションとCFCインターベンションのCFのヒストグラムもプロットした。なお、この研究では「手動」という用語は、臨床アブレーション処置時に記録されたCFプロファイルを代表するCFプロファイルを指す。
【0040】
4)力時間積分:この実験は、CFCが、加えられる力を規制するためのみならず、所定のFTIによる組織変性を施すためにも使用可能であることを実証するために企図されたものである。CFCを、リニアモーションファントムが患者の動きプロファイルを与えている間に所望のCFで所定のFTIを出力するようにプログラムした。各FTI/CFの組み合わせについて、期待期間を計算することができる。CFCを、FTIを計算し、所望のFTIに達したらカテーテルの先端を自動的にシース内に退避させるようにプログラムした。生成されたCFプロファイルとカテーテル係合の期間とを記録し、期待値と比較した。次に、この実験を、臨床状況においてユーザ定義することができるFTIおよびCFの様々な構成について繰り返した。試験したFTI値は、500g、1000gおよび1500gであり、それぞれ25gおよび40gのCFで繰り返した。各構成を3回繰り返した。
【0041】
リニアモーションファントムの結果。リニアモーションファントムは、一連の患者固有CFプロファイルを再現することができた。CFCを評価するために選定されたプロファイルは、図9(a)に示す典型的な心肺パターンと、図9(c)に示す患者の動きまたはカテーテルの不安定性に伴う不規則プロファイルに典型的なものである。図9(b、d)に示す生成されたCF曲線は、対応する臨床的に得られたプロファイル(図9aおよび9c)に類似した高レベルを視覚的に実証している。これらの結果は、リニアモーションファントムが、カテーテルRF出力時に典型的に遭遇する心肺力を再現することができ、CFCの評価のためのファントムとして使用されるのに適切であることを実証している。シースを所定位置にロックしても結果には影響がなかった。
【0042】
CFC-ステップ応答-結果。25gのステップ入力に対するCFCの制御システムの応答を図10に示す。測定値から以下のステップ応答特性が計算された。すなわち、38±3msの立ち上がり時間、3±2gのオーバーシュート、および29±2gのピークである。ステップ応答の25回の繰り返しの平均および標準偏差を報告している。この無視できるほどのオーバーシュートと変動は、制御パラメータを決定するために使用されたこのチューニング方法の結果、所望の一時的応答および定常状態応答が得られたことを示している。
【0043】
CFC-安全性-結果。0.1Hzから2.5Hzの70gピークツーピーク正弦波掃引の制御時に、所定CFと測定CFの最大差は15±2gであり、すべての測定CF値が42g未満であった。これらの結果は、CFの大きなスパイクを生じさせて組織損傷を引き起こす可能性のある組織変位の突然の変化に対して、CFCが反応することができることを実証している。
【0044】
CFC-患者固有の動的応答-結果。CFCは、手動インターベンションと比較して、カテーテル先端のCFプロファイルを大幅に変えることができた(p<0.001)。図11(aからc)に、異なる組織変性が施されたときに測定されたCFを表す3つの運動プロファイルの測定CFの分布を示す。ヒストグラムは、所定CFレベル25gによる手動インターベンションとCFC制御インターベンションの両方についてプロットしたものである。図11(d、手動)および図11(e、CFC制御)の画像は、16の運動プロファイルすべてのCFヒストグラムのグレースケール表現である。これらは、CFCが係合しているとき、すべての運動プロファイルについて所定の平均力が得られることを明確に実証している。所定CFの大きさにかかわりなく同様の性能が得られた。図12に、CFCが3つの臨床的に妥当なレベルである15、25および40gのCFを与えるようにプログラムされた1つの代表的な実験の結果を示す。所定CF値にかかわりなく、一貫して同様の力分布が得られた。上記の3つの所定CFレベルについて、試験されたすべての運動プロファイルについて平均した詳細な性能測定指標を表Iに示す。
【表1】
【0045】
CFC-力時間積分-結果。CFCが目標FTIを達成可能であることを実証するために行ったすべての実験について、CFCは、目標FTIが達成されるまで所望のCFでカテーテルを係合させることに成功した。FTIおよびCFの各構成により得られた結果を表IIに示す。代表的な実験を図13に示す。組織変性施行時間は、期待期間の480±199ms以内であった。過度のCFがあればその結果として変性施行時間が短くなり、CFレベルが低ければその逆の結果となるため、このことは施行全体を通じて規制されたCFプロファイルを示している。予測された逸脱および予測可能な逸脱はあるが、所望のCFおよびFTIの各構成について同様のプロファイルが生成された。
【表2】
【0046】
CFCは、加えられる運動の種類にかかわらず動く組織に対して標準的アブレーションカテーテルによって加えられるCFを規制する、使いやすい手段である。このコンパクトな手持ち装置は、最新の電気生理学設備において広く使用されている市販の力感知アブレーションカテーテルおよびステアラブルシースとともに使用される。提示のCFCは、インターベンション医師が入手可能な同じ手段および情報を使用しながら、CFおよびFTIを規制することができる機能を与える。
【0047】
(アブレーションカテーテルの先端における)接触力測定は、しばらく前から電気生理学者にとって利用可能であったが、主として、十分な接触が行われたか否か、または組織穿孔のリスクがあるか否かを判断するための視覚的な指針として使用されてきた。このCFCは、カテーテルの先端における力を、所定の力レベルの数グラム以内に制御することが実証された。
【0048】
臨床アブレーション処置時に記録され、CFCの評価のために臨床的に妥当な運動を与えるために使用される、図11に示すCFプロファイルは、アブレーション施行に付随する問題のいくつかを示してる。例えば、プロファイル#16(図11(a))は、RF出力が与えられているほとんどの時間にカテーテル先端と壁との間に無視できるほどの力が存在していた組織変性を表す。CFCを係合させたとき、平均CFが所定の25gに上昇した。同様に、図11(b)に示すシナリオは、動きによる接触力(手動)の大きな変動を示しており、この動きがCFCの使用により補正され、RMSE(約25g)を15.1から5.5gに減少させることを示している。図11(c)に示すように手動で密な力の分散が得られる場合であっても、平均CFは、貫壁性の施行にとって十分なレベルではないことがあり、この場合、CFCの使用により、CFの分散が約15gを中心とする集中から約25gを中心とする集中にシフトされる。異なる所定CFレベルについても一貫して狭く対称なCFの分散が達成される(図12、表I)。
【0049】
変性施行の期間にわたるCFの制御の成功は、FTIの制御も可能にした。所望のCFでの指定FTIのためのカテーテルの自動係合と退避は、電気生理学設備における基本的かつ強力な手段となる可能性がある。FTIは組織変性の貫壁性および量の予測における有用な手段として提案されているが、このCFCのような装置がなければ、臨床的に測定指標として、または組織変性施行パラメータの最適化を目的とした臨床前研究において、FTIを容易に使用することはできない。
【0050】
急速に変化する運動条件下でCFCの性能を評価する研究により、臨床的に、CFCの使用は過度の力による組織損傷を最小限にする可能性があることも示された。CFCは、700g/秒もの高速でCFの変化を補償することができ、CFを所定値の15g以内に維持することができた。これらの結果は、CFCを使用することによって、組織を穿孔可能な力が生じないことを示しているため、意義がある。
【0051】
このCFCは、インターベンション医師が完全アブレーション処置中に任意の時点でCFCを係合させることができるようにするものであるが、現在の臨床診療で行われているような他のあらゆる作業を行うのも自由である。CFCは、最適なカテーテル操向性を確保するためにカテーテル/シースアセンブリから容易に取り外すことができるとともに、標的位置に達したら、RF出力印加の直前に再度締め付けることができる。この装置は、用途が広く、独立型CF制御補助として使用することができ、または、位置および力の制御をさらに向上させるためにカテーテルロボットナビゲーションシステムを組み込むことができる。
【0052】
以上、CFC装置の例示の態様およびいくつかの変形態様と、それを組み込んだシステムおよび方法について、普遍性の喪失を意図せずに説明した。修正および変形のその他の例も企図される。
【0053】
例えば、CFC装置に対してシースハンドルを固定するために、任意の適合する種類のクランプを使用してもよい。同様に、線形アクチュエータにカテーテルを固定するために、任意の適合する種類のクランプを使用してもよい。一例では、カテーテル用のクランプは、ゴムまたは高い摩擦係数を有するその他の適合する材料などの把持材料で被覆または重ね合わされた、可逆的に閉じることができる全円筒形導管を設ける。
【0054】
CFC装置に対してシースハンドルを固定するために、シースクランプを、例えばシースハンドルのネック、管状体、またはネックと管状体の両方など、シースハンドルの任意の部分に係合させることができる。図1および図2に示すように、第1の開口部24は、筐体12が閉位置にあるときに、管状体のネックを捕捉または挟むことができる。同様に、シースハンドル26の管状体38を捕捉するようにクランプを構成してもよい。例えば、図14に示すように、第1の顎部64をカバー16の長手方向端部に接続または一体的に形成し、第2の顎部65を基部14の対応する長手方向端部に接続または一体的に形成してもよい。第1の顎部64は第1の合わせ面66を備え、第2の顎部65は第2の合わせ面67を備える。筐体12が閉位置にあるとき、第1の合わせ面66と第2の合わせ面67とが連係して、管状体の半径方向に対向する面と係合する。第1および第2の合わせ面は、把持しやすいようにするために、歯状部、隆起部、凹みなどの表面特徴によって表面加工してもよい。第1および第2の合わせ面は、把持を容易にするゴムまたはその他の高い摩擦係数を有する材料で形成するか、または重ね合わせてもよい。
【0055】
シースハンドルは、例えば図1に示す気密シールなしで形成されてもよい。同様に、シースハンドルは、例えば図1に示すネック構造体なしで形成されてもよい。したがって、シースクランプは、連係してシースハンドルの管状体を捕捉する第1および第2の顎部64および65を、シースハンドルのネック構造体を捕捉するシースクランプに加えて、またはその代わりとして含んでもよい。シースクランプは、CFC装置の筐体を基準にしてシースハンドルを実質的に固定する任意の適合する種類のクランプを組み込んでよい。シースクランプは、カバーと基部の両方に接続しなくてもよく、カバーまたは基部のいずれかに接続されたクランプでも十分な場合もある。例えば、基部またはカバーから延びる棒に固定されたCクランプが、シースクランプとして機能することができる。基部またはカバーから延びる棒は、筐体およびシースハンドルの長手方向の軸に対して平行な向きとされ、Cクランプは、筐体およびシースハンドルの側方軸に対して横断方向の向きとされる。Cクランプが開位置にある状態で、シースハンドルは、Cクランプの両端部によって画定される開放環内に位置決めされ、次に、閉じてCクランプの両端を互いに近づけるトグルラッチを使用してクランプを締め付けてシースハンドルを捕捉することができる。同様に、シースクランプは、ホースリングとねじ連通してホースリングの直径を縮小または拡大するように動作可能なワームスクリュードライブでカバーまたは基部から延びる棒に固定された、O字型のホースリングを含んでもよい。他の多くの種類のクランプが通常に入手可能であり、シースクランプとして組み込むのに適合し得る。
【0056】
シースクランプの代わりに、シースハンドルをCFC装置の筐体に取り外し可能に取り付け可能にするとともに、CFC装置の動作時に筐体を基準にしてシースハンドルを固定する機能を果たす任意の可逆コネクタまたは可逆締機構を使用してもよい。
【0057】
シースクランプとカテーテルクランプは、典型的には、CFC装置の動作時にカテーテルがCFC装置の筐体全体にわたって実質的に同軸に位置合わせされた状態に維持されるように、実質的に同軸になるように位置合わせされる。しかし、同軸位置合わせからの逸脱にも対応可能である。同軸位置合わせからの逸脱は、典型的には約30度未満となる。多くの場合、同軸位置合わせからの逸脱は、約20度未満となる。より多くの場合、同軸位置合わせからの逸脱は、約10度未満となる。
【0058】
線形アクチュエータは、任意の適合する種類のものであってよく、橇摺動軌道機構には限定される必要はない。例えば、線形アクチュエータは、回転ステッピングモータまたはDCモータ機構を備えた送りねじと送りナットであってもよい。別の例では、線形アクチュエータは、圧電アクチュエータまたはボイスコイルであってもよい。
【0059】
CFC装置は、剛性または軟性カテーテル、針、またはプローブを含む、任意の種類のカテーテルに対応可能である。
【0060】
CFC装置は、標的組織とのカテーテル先端の接触力を制御するために様々な種類のコントローラおよびコントローラアルゴリズムに対応することができる。例えば、特定の実装形態のパラメータに応じてCFC装置を制御するために、比例積分微分(PID)、比例積分(PI)、または比例(P)アルゴリズムを使用することができる。PIDアルゴリズムがシステムにおける時間遅延に直面する場合には、特定の実装形態のパラメータに応じて随意に組み込むことができる様々な時間遅延補償アルゴリズムが知られている。例えば、J Normey-Rico、EF CamachoによるControl of Dead-time Processesの1章および5章、Guillermo J.Silva、Aniruddha Datta、 Shankar PによるPID Controllers for Time-Delay Systemsの1章、7章および8章、K.WarwickおよびD. ReesによるIndustrial Digital Control Systemの5章、www.mathworks.com/help/control/examples/control-of-processes-with-long-dead-time-the-smith-predictor.html、WarwickおよびD.ReesによるIndustrial Digital Control Systemの10章にいくつかの時間遅延補償アルゴリズムが記載されている。時間遅延補償は、例えばK.WarwickおよびD.ReesによるIndustrial Digital Control Systemの10章およびJ Normey-Rico, EF CamachoによるControl of Dead-time Processesの4章に記載されているように、適応型制御アルゴリズムによっても行うことができる。例えば、K. S. Walgama,“Control of Processes with Noise and Time Delays”、 AIChE, 1989, Vol 35, No. 2に記載されているように、カルマンフィルタングも時間遅延補償に有用な場合がある。例えば、J Normey-Rico、 EF CamachoによるControl of Dead-time Processesの9章に記載されているように、モデル予測制御(MPC)も時間遅延補償に有用な場合がある。例えばweb.stanford.edu/class/archive/ee/ee392m/ee392m.1056/ Lecture11_IMC.pdfに記載されているように、内部モデル制御技術(IMC)を使用するダーリンコントローラも時間遅延補償に有用な場合がある。さらに、時間遅延または無駄時間を伴うプロセスの制御に有用な可能性がある他の制御アルゴリズムも利用可能である。
【0061】
図15に、CFC装置を制御するために使用可能な様々な例示のコントローラアルゴリズムの流れ図を示す。
【0062】
図15Aに概略的に示すように、比例積分微分(PID)は、制御用途で広く使用されている制御ループ負帰還機構である。PIDコントローラは、所望の接触力と測定された接触力との誤差e(t)を計算し、補正制御信号u(t)を適用し、これが装置の線形アクチュエータに送信される。線形アクチュエータが応答してカテーテルをシースを介して並進させると、新たな接触力読み取り値が取得され、このループが繰り返される。コントローラC(s)は、誤差と制御信号をモータに関係づけるPID伝達関数であり、プロセスG(s)は制御信号をモータと結果の接触力応答とに関係づける現実世界のシステムである。この閉ループシステムは、心肺運動によって生じる接触力変動を含む、出力外乱を補償する。PIDコントローラは多くの動作環境で機能的解決策を提供するが、PIDコントローラの考えられる欠点は、制御ループにおける時間遅延または無駄時間θpの影響の受けやすさであり、それによって制御が不安定になり、性能が低下する可能性があることである。
【0063】
時間遅延を伴うプロセスの制御の困難さを軽減する手段を提供する制御方式が知られている。例えば、スミス予測器、利得適応型PID、カルマンフィルタまたはその他の適合する時間遅延補償アルゴリズムを含む、そのような制御方式を、制御ループにおける無駄時間の影響を軽減するために組み込んでもよい。図15Bに示すように、スミス予測器(SP)は、通常のフィードバックループと、プロセスのモデルを導入する内部ループとを含む。このプロセスのモデルは、伝達関数
【数2】
と、無駄時間θpmの推定値の形態をとる。この構成では、
【数3】
の場合、フィードバックによって無駄時間のない外乱の推定値が得られる。
【0064】
現実世界のプロセスG(s)は、CFC装置およびその制御に使用されるシステムのすべてのダイナミクスを捉える。これには、例えば、モータの慣性、カテーテルにおけるコンプライアンス、組織のコンプライアンス、力センサのダイナミクスなどが含まれる。G(s)は、モータへの制御信号と出力接触力応答との隠れた関係である。
【数4】
は、マイクロコントローラで処理される数値モデルである。このモデルは、例えば、入出力データを使用するMATLAB(mathworks.com/products/matlab)ブラックボックスシステム特定方法を含む、任意の適合するモデリングソフトウェアを使用して作成可能である。
【0065】
スミス予測器は、無駄時間が重要な問題である閉ループ性能を向上させるが、θp-1rad/秒を越える周波数の出力外乱は低減されない。市販の力感知カテーテルシステムでは、システムに存在する無駄時間の長さは心臓運動の外乱除去を阻害する可能性がある。図15Cに示すように、フィードバックをさらに遅延させる余分な無駄時間項θが導入されたスミス予測器制御システムの改善版を導入することができる。
【0066】
この余分な遅延は、θm=T-θpmとして計算され、Tは患者の心拍周期である。例えば、システムの無駄時間が0.1秒であり、患者の心拍が75BPM(0.8秒)である場合、θmは0.7である。この計算は、心拍が大幅に変動しないことを前提としている(カテーテルアブレーション処置の大部分がペーシング技術を使用しているため、この前提は診療室において満たされる)。線形アクチュエータはこれで、無駄時間に加えて全心周期1周期分だけ遅延させた心拍と同期するようになる。その結果、心臓性外乱が補償される。患者の心拍を、制御システムへの入力として手動で入力するか、または接触力システム内の心臓周波数成分を求める自動的方法を使用して入力してもよい。そのような1つの方法として、心臓周波数を求めるために自動相関およびピーク検出を使用するピッチ検出がある。次にこの値を使用してTの値が自動的に更新される。
【0067】
心臓における呼吸運動優位標的の場合、スミス予測器に別の変更が導入されてもよい。フィードバックをさらに遅延させるのではなく、図15Dに示すようにフィルタF(s)が導入される。F(s)は、フィードバック経路から高周波心臓性外乱を除去するように設計されたローパスフィルタの形態をとる。
【0068】
図15Eに、心臓補償(θmを有するSP)アルゴリズムと呼吸補償(F(s)を有するSP)アルゴリズムの両方を実装するコントローラ方式を示す。点線枠内に示す構成要素がマイクロコントローラ上でリアルタイムに処理される。この2つの制御アルゴリズム間の切り換えは、手動または自動で行うことができる。例えば、医師が標的までカテーテルを操作して、接触力プロファイルが心臓運動優位であることに気づいた場合、心臓補償(θmを有するSP)が使用可能にされる(スイッチ下)。プロファイルが呼吸運動優位である場合、呼吸補償(F(s)を有するSP)が使用可能にされる(スイッチ上)。あるいは、CFプロファイルが心臓運動優位であるか呼吸運動優位であるかを判断してアブレーションにどのアルゴリズムを実行するかを選択するために、ピーク検出と組み合わせた力信号の周波数解析を使用することもできる。さらに他の方法として、心臓と呼吸の両方の外乱を含む複数の外乱を同時に補償するために、拡張カルマンフィルタ(EKF)、モデル予測コントローラ(MPC)または他の予測制御アルゴリズムなどの単一のコントローラを実装してもよい。
【0069】
図16に、図15に示す制御方式の異なる構成を使用した一連のシミュレーションを示す。図16Aに、PIDとスミス予測器(SP)との相違を示す。16Aは、CFプロファイルを経時的に示している。最初にCFCが解除され、次にCFCが係合されて、PIDを使用して30秒のマークで20gの力を与えるようにプログラムされる。60秒のマークで、コントローラをSPに切り換えた。システムにおける大きな無駄時間のためにPID利得が最適に選定された。SPは、PIDよりも性能がわずかに上回るだけであるが、フィードバック経路に修正因子を加えることができることでSPを優れた制御システムにする。
【0070】
図16Bは、(図15Bに示すような)SPと心臓外乱修正因子を有するSP(15Cに示すようにθmを有するSP)との比較を示すシミュレーションである。図16Aに示すシミュレーションと同様に、最初にCFCを解除し、次に係合させてSPを使用して20秒のマークで20gの力を与える。40秒のマークで、修正因子が使用可能にされた。このCFプロファイルは心臓運動優位であるため、心臓外乱修正因子を有するSP(θmを有するSP)の性能が優れることが期待され、実際にそうである。
【0071】
図16Cは、(図15Bに示すような)SPと呼吸外乱修正因子を備えたSP(図15Dに示すようにF(s)を有するSP)との比較を示すシミュレーションである。図16Aに示すシミュレーションと同様に、最初にCFCが解除され、次に係合されてSPを使用して50秒の間マークで20gの力を与える。100秒のマークでF(s)修正因子が加えられる。このCFプロファイルは呼吸運動優位であるため、SPとF(s)を有するSPの両方が良好に働くことが期待される。ただし、F(s)フィルタは出力される力のCF変動量を減少させる。
【0072】
図17に、豚の心臓における様々な標的位置での生体内カテーテル接触に関わる実験の記録CFプロファイルを示す。これらの実験では、家畜の雄豚がカテーテル法用に準備された。この豚は、カテーテル挿入用の左右の大腿部挿入点を備えて用意された。
【0073】
右心房と左心房の標的位置を評価した。それぞれの場所について、標的までカテーテル先端を操作し、20gの力を30秒間与えるように手動で維持した状態で、接触力(CF)プロファイルを記録した。その後、CFCを係合させ、20gの力を与えるようにプログラムした。制御されたCFプロファイルを記録した。一貫性を保つため、手動プロファイルとCFC制御プロファイルとでカテーテル先端の位置を変えなかった。カテーテル-組織侵入角は<30度に維持した。
【0074】
図17Aに、豚の左心房において行われた実験の結果を示す。カテーテルが組織に接触するとき、心臓の鼓動による大きな力の変動がある。20gの力を維持するようにプログラムされたコントローラをオンにすると(破線)、これらの変動は急激に減少し、接触力レベルが一定する。この期間中、線形アクチュエータが、カテーテル先端を心臓と同期して動かしており、所望の力のレベルを維持している。
【0075】
図17Bに、右心房における別の実験の記録CFプロファイルを示す。この場合も、コントローラは最初、解除され、次にオンにされて(破線)、プログラムされた20gの力を与える。所望の力は、約13.5秒の時点で10グラムに低減され、次に25秒の時点で20グラムに復帰し、接触力制御を実証している。
【0076】
図17Aおよび図17Bに示す結果は、運動が心臓運動外乱優位であるときにこの心臓補償アルゴリズムの性能がきわめて良好であることを実証している。多くのアブレーション処置では、カテーテルアブレーション中に患者が無呼吸とされる(患者に一時的に息を止めさせる)ため、心臓運動外乱優位はよくあることである。しかし、無呼吸を利用することができず、呼吸運動が優位となる場合がある。そのような場合、心臓補償アルゴリズムは呼吸運動外乱を十分に補償しない。図17Cは、心臓外乱の低減を示しているが、呼吸運動外乱はほとんどまたはまったく減少していない。これは、豚の左心房で行われた別の実験である。
【0077】
図17Dに、心臓運動が最小の間、右心房中隔が呼吸運動優位である、豚での別の実験の結果を示す。このような低周波外乱の除去には心臓補償コントローラは効果がないと考えられる。20gの力のために呼吸補償コントローラをオンにし(破線)、その結果、応答に大幅な改善があった。
【0078】
左心房と右心房とにいくつかのRFアブレーションを施した。記録CFプロファイル(図示せず)が、アブレーション施行中に所望の接触力が維持されたことを立証している。豚の心臓を除去し、検査することにより、アブレーション組織変性の視覚的立証(図示せず)が得られた。
【0079】
理想的な制御応用では、フィードバックループにおいて有意な無駄時間がない。無駄時間が少ないことによって高利得が可能になり、その結果、優れた外乱除去が実現される。それに対して、無駄時間が多いと制御の応答が阻害され、性能が悪くなる。PIDコントローラにおける積分項は、制御ループにおける無駄時間の影響を特に受けやすい。この項の機能は、所望のCFと測定CFとに誤差がある限り、コントローラの出力を上昇させ続けることである。ループ内の無駄時間は性能を低下させる可能性があり、不安定性の原因となることがあり、不十分な外乱除去につながる可能性がある。システム内の無駄時間が多いほど、PIDは出力外乱の除去ができにくくなる。
【0080】
PIDは無駄時間に影響されやすいが、PIDはより低いレベルの無駄時間では許容可能な制御を実現することができる。無駄時間のあるシステムにおけるPIDの適合性を判断するためにいくつかの技術が利用可能である。例えば、1つの手法は、現実世界のプロセスG(s)の時定数を求め、その時定数を無駄時間と比較することである。システムの無駄時間がシステムの時定数を超える場合、無駄時間補償またはその他のモデル方式の制御技術などの時間遅延補償アルゴリズムが、一般的にはPIDよりも性能がよい(W.L.Wade、Basic and Advanced Regulatory Control:System Design and Application、2004、6章、pp.136)。実際には、無駄時間が時定数の2倍を超える場合、スミス予測器などの時間遅延補償アルゴリズムが実装されることが多い。
【0081】
図17に示す豚の心臓の実験におけるCFC装置の実装のために、プロセスモデル
【数5】
を一次伝達関数または二次伝達関数によって、それぞれ時定数30msまたは34msでモデル化することができる。この同じ実装形態では、システムの観測無駄時間(約100ms)はこれらの時定数の3倍であり、この観測に基づくと、スミス予測器などの時間遅延補償アルゴリズムは有利となり得る。
【0082】
PIDが無駄時間のある特定の実装形態に適するか否かを判断する別の手法は、シミュレーションまたは実験から得られたCFプロファイルに不安定性または性能低下がないか調べることである。例えば、図18に、無駄時間がCFプロファイルに与える影響を比較するPIDコントローラを備えた実装形態のいくつかのCFプロファイルを示す。図18Aは、安定性分析について比較可能ないくつかのプロットを示し、図18Bは外乱除去を分析するために比較可能ないくつかのプロットを示す。
【0083】
図18Aは、いかなる外乱もない(例えば心臓運動および呼吸運動による外乱がない)状態で、無駄時間が増加している、PIDコントローラを使用したプロセスモデル
【数6】
のステップ応答を示す。これらのシミュレーションは、無駄時間が時定数(前述のように30msまたは34ms)を越えると、コントローラは不安定になることを示している。無駄時間が34msのときの大きなリンギング(オーバーシュート)と無駄時間が40msのときの不安定性に注目されたい。豚の実験における無駄時間は、このプロセスモデルの時定数の3倍以上であり、したがって、標準PIDアルゴリズムと比較して、時間遅延補償アルゴリズムが有利であると考えられる。PIDコントローラの利得を減少させることにより、40msの無駄時間において明らかな安定性問題が軽減される可能性がある。しかし、その場合、コントローラは不十分な外乱除去により反応が遅くなることになる。
【0084】
図18Bに、無駄時間が異なる、PIDコントローラを使用した出力外乱の除去を実証するCFプロファイルを示す。これらのプロットのそれぞれで外乱は同じであり(なお、45msおよび50msのプロットは、他の4つのプロットとは異なるスケールで示されている)、このシミュレーションではピークツーピーク10gで0から2.5Hzの正弦波掃引としてモデル化され、心臓に見られる代表的周波数範囲を含んでいる。これらのプロットは、無駄時間がない場合(0ms)、出力CFは十分に規制され所望の値を維持することを示している。フィードバックループにおける遅延がそれぞれ20ms、34msおよび45msの場合の対応するシミュレーションも、出力CFを所望の値に維持可能であることを示している。それに対して、45msおよび50msのプロットでは低性能および不安定性が明らかである。これらのシミュレーションは、このシステムが、心臓の周波数範囲(0.1から2.5Hz)における外乱がある場合にわずか45msの遅延(>時定数)で不安定になることを示している。豚の実験の実装形態におけるシステムに存在する観測無駄時間の長さ(平均約100ms)は、このシミュレーションで示されている45msの無駄時間の2倍以上であり、時間遅延補償アルゴリズムがPIDコントローラの性能をしのぐことになることを示している。
【0085】
システムにおける無駄時間を正確に求めるためと、無駄時間を補償する修正因子のモデル化の改善のためには較正が有用となり得る。したがって、CFC装置を制御する方法は、較正ステップを含み得る。同様に、システムは、較正モジュールまたは構成要素を含んでもよい。高性能なカテーテルマッピングシステムは、様々な複雑度よび優先度を有するタスクを処理する汎用オペレーティングシステム上で運用される。この結果、無駄時間が処置ごとに、または日によって一貫しない場合がある。したがって、各処置の前、または必要に応じて定期的に較正器を使用してもよい。制御システムはかなり堅牢ではあるが、較正ステップは、無駄時間θpの正確な推定を可能にして推定無駄時間θpmのモデル化を向上させるという点で有利となり得る。
【0086】
較正ステップの一例では、外部理想力センサ(ひずみゲージ)から受信したCFデータと、医療処置時に使用されるカテーテルの遠端にある力センサから受信したCFデータとを比較する。外部理想力センサ(ひずみゲージ)は、力感知カテーテルと動的に接触する。ひずみゲージとカテーテル力センサの両方からの接触力読み取り値を同時に記録する。両方の接触力データセット間の相互相関計算を使用して、システムにおける推定無駄時間θpmをモデル化する。これを行うために専用(別途)装置を使用することができる。この較正ステップは、必要であれば
【数7】
を修正/補正するためにも使用することができる(時定数および
【数8】
はカテーテルごとにわずかに異なることがある)。
【0087】
CFC装置は、カテーテル先端と標的組織との間の接触力に影響を及ぼす可能性のあるどのような外乱にも適応するように使用することができる。心臓運動、呼吸運動、患者の動きおよびカテーテル不安定性による外乱は例示であり、他の外乱にも対応可能である。
【0088】
CFC装置は、力感知カテーテルおよび/または力感知カテーテルを組み込んだ任意のロボットシステムと組み合わせて使用することができる。力感知カテーテルおよび/または、力感知カテーテルを組み込んだロボットシステムは、CFC装置の実装形態を限定することなく、任意の数のアクチュエータを使用したカテーテルの任意の数の運動自由度に対応することができる。CFC装置は、市販の既存力感知カテーテルおよびシースと互換性のある付加手段とすることができる。
【0089】
CFC装置、およびそれを組み込んだシステムならびに方法は医療に使用することができる。CFC装置、およびそれを組み込んだシステムならびに方法は、任意の適合する標的組織のための任意の適合するカテーテル処置で使用するこができる。RFカテーテルアブレーションは、カテーテルアブレーションの一例であり、例えば冷凍アブレーションを含む、他の種類のカテーテルアブレーションにも対応可能である。CFC装置を組み込んだアブレーション治療は、かならずしも心臓組織に限定されず、例えば肝臓を含む、他の標的組織にも対応可能である。
【0090】
CFC装置は、カテーテル先端および/または標的組織の画像データを提供する画像処理システムと組み合わせて使用してもよい。磁気共鳴画像処理、x線コンピュータ断層撮影または超音波を含む、任意の適合する画像処理システムを使用することができる。
【0091】
CFC装置のコンピュータ実装制御は、典型的にはメモリとインターフェースとプロセッサとを必要とする。メモリ、インターフェースおよびプロセッサの種類および構成は、実装形態によって異なってもよい。例えば、インターフェースは、エンドユーザのコンピューティング装置と通信するソフトウェアインターフェースを含んでよい。インターフェースは、エンドユーザから要求または照会を受信するように構成された物理電子装置も含み得る。
【0092】
前述の実験ではマイクロプロセッサまたはマイクロコントローラを使用したが、例えばプログラマブルロジックコンピュータまたはフィールドプログラマブルロジック/ゲートアレイを含む、他の多くの種類のコンピュータ装置を使用することができる。また、CFC装置のコンピュータ実装制御には、例えば、一般にデータ処理装置のシステムバスに接続された、メモリと、大容量記憶装置と、プロセッサ(CPU)と、読取り専用メモリ(ROM)と、ランダムアクセスメモリ(RAM)とを含む、任意の従来のコンピュータアーキテクチャを使用することができる。メモリは、ROM、RAM、これらの組み合わせ、または単に汎用メモリユニットとして実装可能である。所望の接触力を維持するためにCFC装置の特徴を実行するためのルーチンおよび/またはサブルーチンの形態のソフトウェアモジュールをメモリに記憶することができ、その後、特定のタスクまたは機能を実行するためにプロセッサにより読み出して処理することができる。同様に、1つまたは複数の補償アルゴリズムをプログラム構成要素としてコーディングし、実行可能命令としてメモリに格納し、その後、プロセッサにより読み出して処理することができる。キーボード、マウス、またはその他のポインティングデバイスなどのユーザ入力装置をPCI(ペリフェラルコンポーネントインターコネクト)バスに接続することができる。ソフトウェアは、典型的には、コンピュータモニタ画面上にグラフィックとして表示されるアイコン、メニューおよびダイアログボックスを用いてプログラム、ファイル、選択項目などを表現する環境を提供する。
【0093】
データ処理装置は、PCIホストブリッジを介してデータ処理装置のPCI(ペリフェラルコンポーネントインターコネクト)ローカルバスに結合された、CPUとROMとRAMを含むことができる。PCIホストブリッジは、バスメモリおよび/または入出力(I/O)アドレス空間内の任意の場所にマッピングされたPCI装置に、プロセッサが直接アクセスすることができるようにする低レイテンシパスを提供することができる。PCIホストブリッジは、PCI装置がRAMに直接アクセスすることができるようにするための高帯域パスも提供することができる。
【0094】
通信アダプタ、スモールコンピュータシステムインターフェース(SCSI)および拡張バスブリッジもPCIローカルバスに接続することができる。通信アダプタは、データ処理装置をネットワークに接続するために使用することができる。SCSIは、高速SCSIディスクドライブを制御するために使用することができる。ISAバスをPCIローカルバスに結合するためにPCI-ISAバスブリッジなどの拡張バスブリッジを使用してもよい。PCIローカルバスを、操作者のためにデータおよび情報を表示するためと、グラフィカルユーザインターフェースを対話式に表示するために、ディスプレイ(例えばビデオモニタ)として機能するモニタに接続することができる。
【0095】
CFC装置のコンピュータ実装制御は、ネットワーク接続を介して通信するコンピューティング装置を含む、任意の種類のエンドユーザコンピューティング装置に対応可能である。コンピューティング装置は、事前設定済みの所望の接触力の選択、制御アルゴリズムの選択、補償アルゴリズムの選択、既存の接触力設定または既存の制御アルゴリズムまたは既存の補償アルゴリズムの変更、またはコンピューティング装置にローカルで記憶可能な活動ログのデータベースの更新など、システムの様々な機能を実行するためのグラフィカルインターフェース要素を表示することができる。例えば、コンピューティング装置は、デスクトップ、ラップトップ、ノートブック、タブレット、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、PDA電話またはスマートフォン、ゲーム機、ポータブルメディアプレーヤなどであってよい。コンピューティング装置は、有線および/または無線通信用に構成された、ハードウェアおよび/またはソフトウェアの任意の適切な組み合わせを使用して実装可能である。通信は、例えば、CFC装置の遠隔制御または遠隔監視が望まれる場合に、ネットワークを介して行うことができる。
【0096】
ネットワーク接続が望ましい場合、CFC装置およびその制御システムは任意の種類のネットワークに対応可能である。ネットワークは、単一のネットワークまたは複数のネットワークの組み合わせとすることができる。例えば、ネットワークは、インターネットおよび/または1つまたは複数のイントラネット、有線ネットワーク、無線ネットワーク、および/またはその他の適切な種類の通信ネットワークを含み得る。別の例では、ネットワークは、インターネットなど他の通信ワークと通信するようになされた無線遠隔通信ネットワーク(例えば携帯電話ネットワーク)を含み得る。例えば、ネットワークは、(HTTP、HTTPSまたはFTPなどの、TCP/IPプロトコルに基づくプロトコルを含む)TCP/IPプロトコルを利用するコンピュータネットワークを含み得る。
【0097】
本明細書に記載のCFC装置およびそれを組み込んだシステムと、そのそれぞれの変形、修正またはこれらの組み合わせは、適合するコンピュータ実装方法によって制御することができる。CFC装置を制御する方法は、カテーテルの遠端に配置された力センサによって接触力データを検出することと、コントローラによって接触力データを受信することと、リアルタイム接触力データと事前設定済みの所望の接触力との差を最小限にするために制御信号を発生して線形アクチュエータ伝達することとを含む。例えば、図15に概略的に示す制御アルゴリズムを参照しながら説明したように、この方法は、測定された出力CFと所望のCFとの誤差を計算することと、その誤差を、適切な制御信号が計算されるコントローラC(s)に入力することと、その制御信号をモータの線形アクチュエータに伝達することとを含み、モータの応答がカテーテル先端の動きと、その後のCFC値の測定および伝達とを実現し、このループを再開し、繰り返す(無駄時間θpを含むこのシステムのダイナミクスがG(s)において捕捉される)。十分な大きさの無駄時間がある場合、この方法は、特定された遅延に基づいてモデル化された遅延に基づく修正因子を生成することと、遅延に基づく修正因子を制御信号に適用することとを任意で含んでもよい。特定される時間遅延は、接触力データを検出するステップと接触力データを受信するステップとの間の時間遅延を特定することによって求めることができる。例えば図15を再び参照すると、無駄時間補償のためのこれらの任意選択の方法ステップは、無駄時間のないCF値の推定値である遅延に基づく修正因子を出力する数値モデル
【数9】
に制御信号を入力することを含み、これが、測定出力CFから差し引かれる他の遅延に基づく修正因子となるプロセス遅延θpの推定値θpmだけ遅延され、次に、遅延のないCF値が加えられる。さらに他の任意選択の方法ステップは、心拍を測定し、その心拍に基づいて心臓修正因子を導出することによって任意により生成される心臓修正因子によって、心臓運動外乱を補償するために、制御信号に心臓修正因子を適用することをさらに含んでもよい。図15を再び参照すると、心臓修正因子を適用するステップは、線形アクチュエータを心拍と同期させることを目的としてθmを加えることによってθpmと組み合わされた無駄時間のないCF値の推定値をさらに遅延させるものとして、例示的に示されている。さらに他の任意選択の方法ステップは、呼吸運動外乱を補償するために制御信号に呼吸修正因子を適用することを含んでよく、呼吸修正因子は、接触力データ内にある高周波外乱を除去するように設定されたローパスフィルタとすることができる。さらに他の任意選択の方法ステップは、コントローラによってリアルタイム患者固有データを受信することと、そのリアルタイム患者固有データを使用して、リアルタイム接触力データと事前設定の所望接触力との差を最小限にするように制御信号を発生することとを含んでよく、リアルタイム患者固有データはカテーテルとの接触点における組織の温度、心電図、呼吸数、カテーテル-組織侵入角、またはこれらの任意の組み合わせであってよい。さらに他の任意選択の方法ステップは、コンピュータモニタ上に接触力データを表示することをさらに含んでよい。さらに他の任意選択の方法ステップは、カテーテルの遠端のリアルタイム画像処理データを受信することと、その画像処理データをコンピュータモニタに表示することとを含んでよい。さらに他の任意選択の方法ステップは、力時間積分(FTI)を計算することと、事前設定済みの所望のFTIに達したらカテーテルを退避させるように制御信号を自動的に送信することとを含んでよい。
【0098】
本明細書に記載のCFC装置およびそれを組み込んだシステムと、それぞれの変形、修正またはこれらの組み合わせは、方法または非一時的コンピュータ可読媒体(すなわち基板)上のコンピュータプログラム可能/可読コードとしても実装可能である。コンピュータ可読媒体は、データを記憶することができるデータ記憶装置であり、データはその後コンピュータシステムによって読み取ることができる。コンピュータ可読媒体の例としては、読み取り専用メモリ、ランダムアクセスメモリ、CD-ROM、磁気テープ、SDカード、光学データ記憶装置などがある。コンピュータ可読媒体は、地理的にローカライズされてよく、またはコンピュータ可読コードが分散式に記憶され実行されるようにネットワーク結合コンピュータシステムを介して分散されてもよい。
【0099】
本明細書に記載の実施形態は例示目的を意図したものであり、一般性を失う意図はない。他の変形、修正およびこれらの組み合わせも企図され、当業者によって認識されるであろう。したがって、以上の詳細な説明は、特許請求の範囲に記載された対象の範囲、適用可能性または構成を限定することを意図していない。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15-1】
図15-2】
図16
図17-1】
図17-2】
図18