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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】釣り竿の竿管保持用具
(51)【国際特許分類】
   A01K 97/00 20060101AFI20220111BHJP
【FI】
A01K97/00 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020045448
(22)【出願日】2020-03-16
(65)【公開番号】P2021145561
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2020-06-16
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)令和2年2月7日~9日に開催された、フィッシングショーOSAKA2020にて公開 (2)令和2年2月15日~16日に開催された、にいがたフィッシングショー2020にて公開
(73)【特許権者】
【識別番号】591199062
【氏名又は名称】株式会社ジャクソン
(74)【代理人】
【識別番号】100098936
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 晃司
(74)【代理人】
【識別番号】100098888
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 明子
(72)【発明者】
【氏名】横川 隼大
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0061514(US,A1)
【文献】特開2018-117575(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0162231(US,A1)
【文献】米国特許第03113363(US,A)
【文献】ジャクソン ロッドエッグ(フィッシングショー大阪2020),TAKUの何でもルアー釣行記,2020年02月25日,p.1,https://taku.naturum.ne.jp/e3310340.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 97/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
竿管どうしの連結部を跨いで握り、前記竿管どうしを互いに異なる方向に捩じることで前記連結部の固着を解除する際に、前記竿管に装着してグリップとして利用される釣り竿の竿管保持用具であって、
エラストマーで一体成型され、
軸心方向で貫通した保持穴と、前記軸心方向と交差する方向から延びて前記軸心方向で貫通した保持穴側と括れ状の境界を介して連なるスリットで構成された一組の装着部を一つ、
軸心方向と平行な方向で貫通した保持穴と、前記平行な方向と交差する方向から延びて前記平行な方向で貫通した保持穴側と括れ状の境界を介して連なるスリットで構成された一組の装着部を複数備え、
前記軸心方向で貫通した保持穴を前記平行な方向で貫通した保持穴が複数で囲んで、それぞれに連なる複数の前記スリットが放射状に外面に向かって延び、前記外面では前記複数のスリットが間隔をあけて並行に設けられており、
前記保持穴は固着解除用だけでなく、結束用にも利用可能であり、
前記スリットが竿菅の通過により押し広げられる際に、前記押し広げられるスリットと、隣り合うスリットとの間で中心側を括れ状の基部として相対的に突出した突出部分が弾性的に回動して前記隣り合うスリット側に弾性的に逃げることを特徴とする竿管保持用具。
【請求項2】
請求項1に記載した釣り竿の竿管保持用具において、
隣り合うスリットの間は平面状になっており、保持穴の貫通方向に直交する直交断面が多角形状になっていることを特徴とする竿管保持用具。
【請求項3】
請求項1または2に記載した釣り竿の竿管保持用具において、
保持穴が異なる穴径で形成されていることを特徴とする竿管保持用具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣り竿の竿管に貫通した状態で装着する竿管保持用具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
釣り竿の竿管どうしの連結部では、砂等の異物が混入したり、水等が流入したりすることにより固着が起こり易くなっている。
実釣現場で、一旦固着が起こると、並継ぎタイプでは、竿管を分割することができなくなり、振出しタイプでは、竿先側の竿管を竿元側の竿管の内部に戻して収めることができなくなる。
そのままでは持ち運びができなくなってしまうことから、竿管を石等で叩いたりして固着を無理やりにでも解除しようとするが、往々にして、竿管が破損したり、竿管の開口が割れたりする。一方、持ち運びができたとしても、後日販売店に持ち込んで固着を解除してもらうことになり、煩わしいことこの上ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-111014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これに対して、実釣現場で、竿管の破損等を避けながら固着を解除できるよう、特許文献1では、一対のベルトとその間を繋ぐ複数の横糸で構成された固着解除器が提案されている。而して、この固着解除器は連結部を跨いで両側の竿管にそれぞれベルトを巻き付け、それぞれのベルトを掴んで互いに逆方向に捩じるようになっているが、ベルトを竿管に密接させた状態で巻き付けるのは難しく、ベルトを捩じってもベルトが空回りしがちである。
本発明は上記従来の問題点に着目して為されたものであり、竿管どうしの連結部を跨いで握り、竿管どうしを互いに異なる方向に捩じることで連結部の固着を解除する際に、竿管に装着してグリップとして利用でき、竿管の破損等を回避しつつ容易に固着を解除できる、新規かつ有用な釣り竿の竿管保持用具を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、請求項1の発明は、竿管どうしの連結部を跨いで握り、前記竿管どうしを互いに異なる方向に捩じることで前記連結部の固着を解除する際に、前記竿管に装着してグリップとして利用される釣り竿の竿管保持用具であって、エラストマーで一体成型され、軸心方向で貫通した保持穴と、前記軸心方向と交差する方向から延びて前記軸心方向で貫通した保持穴側と括れ状の境界を介して連なるスリットで構成された一組の装着部を一つ、軸心方向と平行な方向で貫通した保持穴と、前記平行な方向と交差する方向から延びて前記平行な方向で貫通した保持穴側と括れ状の境界を介して連なるスリットで構成された一組の装着部を複数備え、前記軸心方向で貫通した保持穴を前記平行な方向で貫通した保持穴が複数で囲んで、それぞれに連なる複数の前記スリットが放射状に外面に向かって延び、前記外面では前記複数のスリットが間隔をあけて並行に設けられており、前記保持穴は固着解除用だけでなく、結束用にも利用可能であり、前記スリットが竿菅の通過により押し広げられる際に、前記押し広げられるスリットと、隣り合うスリットとの間で中心側を括れ状の基部として相対的に突出した突出部分が弾性的に回動して前記隣り合うスリット側に弾性的に逃げることを特徴とする竿管保持用具である。
【0008】
請求項の発明は、請求項に記載した釣り竿の竿管保持用具において、隣り合うスリットの間は平面状になっており、保持穴の貫通方向に直交する直交断面が多角形状になっていることを特徴とする竿管保持用具である。
【0009】
請求項の発明は、請求項1または2に記載した釣り竿の竿管保持用具において、保持穴が異なる穴径で形成されていることを特徴とする竿管保持用具である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の釣り竿の竿管保持用具を固着解除に用いれば、竿管の破損等を回避しつつ容易に固着を解除できる。また、持ち運びの際の保持にも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態に係る釣り竿の竿管保持用具の正面図である。
図2図1の竿管保持用具の背面図である。
図3図1の竿管保持用具の平面図である。
図4図1の竿管保持用具の底面図である。
図5図1の竿管保持用具を用いた、竿管の保持状態の説明図である。
図6図1の竿管保持用具を用いた、連結部の固着解除方法の説明図である。
図7図6と共に、連結部の固着解除方法の説明図である。
図8図1の竿管保持用具を用いた、竿管の結束方法の説明図である。
図9図8と共に、竿管の結束方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態に係る釣り竿の竿管保持用具1について、図面にしたがって説明する。
図1図4に示すように、この竿管保持用具1の本体3は中実構造で、その外面5は、長手方向に沿ってその両端部に向かうにしたがって漸次先窄みになっており、卵形に似たグリップ状をなしている。
本体3の軸心方向に保持穴7が貫通しており、この保持穴7の軸心方向に直交する断面、すなわち直交断面は、同径の円形になっている。
そして、外面5から保持穴7に向かって延び、保持穴7と連なるスリット9が形成されている。このスリット9は保持穴7の軸心方向に沿って延びている。また、スリット9は、直交断面側から見ると、保持穴7から外面5に向かって直径方向にほぼ直状に延びており、対向内面9a、9aは外面5に向かうにしたがって均等に漸次広がっている。
【0013】
スリット9の対向内面9a、9aは保持穴7に連なる側が最も近接して、スリット9の幅、すなわち対向内面9a、9aの間隔が狭くなっているが、この最小幅寸法は保持穴7の円弧の1/4よりもやや小さくなっているので、スリット9と保持穴7の境界には括れが形成されている。一方、スリット9の幅寸法は外面5に連なる側が最も広くなっているが、この最大幅寸法は保持穴7の穴径とほぼ同じになっている。
なお、境界は面取りにより鋭い角部が取られている。
【0014】
保持穴7とスリット9とで竿管Sの一組の装着部が構成されており、別に、四組の装着部も形成されている。当該四組の装着部は、それぞれ、保持穴11とスリット13、保持穴15とスリット17、保持穴19とスリット21、保持穴23とスリット25で構成されている。
それぞれの保持穴11、15、19、23は、保持穴7と同様に軸心方向に平行に本体3を貫通しており、直交断面は、同径の円形になっている。但し、保持穴11、15、19、23の順に穴径が大きくなっており、保持穴19の穴径は保持穴7の穴径とほぼ同じになっており、保持穴23の穴径は保持穴7の穴径よりもやや大きくなっている。
また、保持穴11、15、19、23の軸心は、本体3の軸心よりも外面5側にやや偏っており、保持穴7を含めて互いの保持機能に影響を及ぼさないよう十分な間隔があけられている。
【0015】
スリット13、17、21、25も、スリット9と同様に、保持穴11、15、19、23と一対一対応で形成されている。
これらのスリット13、17、21、25も、直交断面側から見ると、それぞれの対になる保持穴11、15、19、23から外面5に向かって直径方向に延びており、保持穴7とスリット9と同様な寸法関係で形成されているので、それぞれの境界には括れが形成されている。但し、スリット13、17、21、25のそれぞれの対になる保持穴11、15、19、23の穴径が異なり、保持穴が大きいものほどその保持穴の穴縁が外面5側に接近しているので、その分だけスリットの直径方向の長さが短くなり、かつ、スリットの直径方向の長さが短いものは幅寸法が保持穴から外面5に至るまでほぼ一定になっている。すなわち、短い方のスリット21、25の幅寸法はほぼ一定になっている。残りのスリット13、17の幅寸法は外面5に向かうにしたがって均等に漸次大きくなっている。
【0016】
図1の正面図に示すように、正面側から見ると、保持穴11、15、19、23で保持穴7の左右の斜めやや下側と、左右の斜め上側からそれぞれ囲んだ状態になっている。左下側から右下側に向かって、保持穴11、15、19、23が上方に膨らんだ円弧状に順に並んだ状態になっている。
そして、5つのスリット9、13、17、21、25が放射状に外面5に向かって延びており、それぞれの外面5側のスリット縁が、直交断面に現れる外面5をほぼ五分割した部位に当たっている。
外面5は隣り合うスリットどうしの間が平面状になっており、図1の正面図や図2の背面図では、この平面5aの輪郭が五角形状に現れている。
【0017】
本体3は素材をスチレン系のエラストマーとする一体の樹脂成型品で、ショア硬度Aは45度になっている。従って、本体3はゴム性状を呈して、適度な弾力性と柔軟性を有している。
また、スリット9、13、17、21、25が放射状に延びているので、隣り合うスリットどうしの間にある部分は本体3の中心側を括れ状の基部として突出した突出部分3a(図5)になっており、両側のスリットを逃げ場として利用し、弾性的に回動してスリット側に寄せるような僅かではあるが有意的な動きが可能となっている。
【0018】
従って、竿管保持用具1を竿管Sに装着する場合には、図5(1)に示すように、竿管Sをスリット9側に先ず差し込んで通過させる。その際には、スリット9の両側の突出部分3a、3aがそれぞれ曲がってスリット13、25側に逃げられるのでスリット9が容易に押し広げられる。
そして、スリット9の幅寸法は十分に小さくなっているので、図5(2)に示すように、竿管Sを保持したときには、保持穴7の穴縁は周方向に十分な長さで巻き付いて密接している。突出部分3a、3aも弾性的に曲げられていたので、元の位置に近い位置まで戻る。
スリット9は保持穴7側からも同様に押し広げることができるので、竿管Sを取り外すことも容易である。
【0019】
スリット9の両側に突出部分3a、3aが存在せず、本体3の外面5からの凹み部分がスリット9だけになると、竿管Sを通り抜けさせるためには、スリット9の幅寸法を大きくしたり、保持穴7の内面に切り欠き状の溝を形成してその溝を中心としてスリット9を押し広げたりすることになるが、幅寸法を大きくすると今度は保持したときの周方向の巻き付けが不足するので密接性が落ち、溝を形成すればそこに応力が集中してき裂が伝播することになる恐れがある。
しかしながら、竿管保持用具1では、形状的工夫によりそのような欠点は克服されている。
【0020】
なお、この図の場合には、保持穴7のサイズは竿管Sの径にほぼ一致しているが、保持穴7は閉じておらずスリット9を開口としているので、竿管Sが太い場合には保持穴7を弾性的に広げ、竿管Sが細い場合には保持穴7を弾性的に狭めることが可能となっている。すなわち、竿管Sの径の違いに対応することが可能となっている。
この保持穴7とスリット9との関係は、別の四組の装着部でも同様に適用される。
【0021】
竿管保持用具1を、固着解除用に用いる場合には、図6に示すように、2つの竿管保持用具1A、1Bを用意し、竿管S1と竿管S2の連結部Rを跨いで、それぞれ、竿管S1と竿管S2に装着する。
その状態で、図7に示すように、竿管保持用具1A、1Bをグリップとして手で握ると、本体3の外面5には平面5aが設けられて角形状になっているのでそれが滑り防止機能を発揮して、掌と外面5は滑り不能に密着する。
竿管S1、S2と、竿管保持用具1A、1Bも周方向に十分巻き付いた状態で密接しているので、矢印に示すように互いに反対方向に捩じると、それぞれの竿管S1、S2には摩擦により大きな捩じりモーメントが作用して、固着が容易に解除される。
【0022】
この竿管保持用具1は、保持穴7、11、15、19、23を結束用にも利用できる。
並継ぎタイプでは、釣り竿を構成する複数の竿管を分割して持ち運ぶことになるが、この分割した複数の竿管をその外径に近い穴径の保持穴にそれぞれ嵌め込んで保持させれば複数の竿管を結束させた状態になる。竿管保持用具1を手で握って持ち運べば、竿管どうしが接触して傷付くことが阻止される。スリット9等を押し広げるのを突出部分3aの回動を利用して実現していることから、素材側に十分な剛性を有して本体3を構成することが可能となっており、結束用に保持させたときにも不用意に竿管が脱着することはない。
図8では、太い竿管S1と細い竿管S3を、保持穴7と保持穴11を利用して結束させた状態を示し、図9では、保持穴23と保持穴11を利用して結束させた状態を示す。
【0023】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的構成は、この実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計の変更などがあっても発明に含まれる。
例えば、固着解除の際には、穴径が合えば本体3の中心側にある保持穴に竿管Sを保持させた方が握り易いため、上記では保持穴7を利用して竿管Sを保持させているが、竿管Sが細い場合には、小さめの穴径の保持穴に保持させて密接性を優先することが好ましい。このように、竿管Sの穴径に合わせて、保持穴を使い分けることが可能となっている。
【符号の説明】
【0024】
1、1A、1B…竿管保持用具
3…本体 3a…突出部分 5…外面 5a…平面 7…保持穴
9…スリット 9a…対向内面 11…保持穴 13…スリット 15…保持穴
17…スリット 19…保持穴 21…スリット 23…保持穴 25…スリット
S、S1、S2、S3…竿管 R…連結部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9