(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】枠体
(51)【国際特許分類】
E04B 2/74 20060101AFI20220111BHJP
E04B 1/00 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
E04B2/74 521B
E04B1/00 502N
(21)【出願番号】P 2020135044
(22)【出願日】2020-08-07
【審査請求日】2020-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】510209993
【氏名又は名称】株式会社アルミック
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】堀田 和志
(72)【発明者】
【氏名】三島 将弘
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-098001(JP,U)
【文献】特開平11-022324(JP,A)
【文献】特開2001-082041(JP,A)
【文献】特開2013-234498(JP,A)
【文献】特開2018-021329(JP,A)
【文献】実公昭59-034713(JP,Y2)
【文献】特開2007-191950(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/74
E04B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、該本体部から突出した形状に形成されて対向して配置された一対の支持壁とを有し、該一対の支持壁の間に配置される板材を該板材の厚さ方向に挟んで支持する枠体であって、
前記本体部は、閉断面構造を有し、
前記本体部は、該本体部から突出した形状に形成されて対向して配置された一対の対向壁を有し、前記一対の支持壁は、互いに対向する前記対向壁の内側に配置され、
前記一対の支持壁は、開口部を構成する一対の第1支持部と、該第1支持部と前記本体部との間に位置する一対の第2支持部とを有し、
前記一対の第2支持部は、前記一対の第1支持部が前記板材を支持する間隔よりも狭い間隔で前記板材を支持する枠体。
【請求項2】
前記第1支持部及び前記第2支持部の少なくとも一つの支持部は、対向する支持部との間隔が変化するように曲がった形状に形成されている
請求項1に記載の枠体。
【請求項3】
前記一対の支持壁は、前記本体部の連結壁に形成されていて、
前記本体部の内部には補強のための芯材が設けられてい
て、
前記芯材は、前記連結壁の内周面に当接する一対の裏打ち部を有する
請求項1または2に記載の枠体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枠体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、集合住宅のバルコニーに設置される間仕切り板が記載されている。間仕切り板は、バルコニー内の空間を隣家との間で仕切る。間仕切り板は、上下一対の横枠と左右一対の縦枠とで構成された枠体、及び枠体に支持された板材を備える。枠体は、板材の厚さ方向に対向して配置された一対の支持壁を有し、この支持壁によって板材の周縁部を厚さ方向に挟むことで板材を支持する。間仕切り板は、非常時に板材を突き破ることで、住民がバルコニーを通じて隣家へ避難可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記間仕切り板の枠体では、一対の支持壁の間隔は、組付けられる板材の厚さに応じて予め設計する必要がある。そのため、組付けられる板材とは異なる厚さの板材を組付ける場合、一対の支持壁の間隔が適切とならない場合があり、汎用性に乏しい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための枠体は、本体部と、該本体部から突出した形状に形成されて対向して配置された一対の支持壁とを有し、該一対の支持壁の間に配置される板材を該板材の厚さ方向に挟んで支持する枠体であって、前記一対の支持壁は、開口部を構成する一対の第1支持部と、該第1支持部と前記本体部との間に位置する一対の第2支持部とを有し、前記一対の第2支持部は、前記一対の第1支持部が前記板材を支持する間隔よりも狭い間隔で前記板材を支持する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【発明を実施するための形態】
【0007】
枠体の一実施形態について、
図1~
図4を参照して説明する。なお、本実施形態では、マンションなどの集合住宅に設けられる間仕切り板の枠体を例に説明する。
図1に示すように、マンションのバルコニーBに設置される間仕切り板Pは、枠体10を有している。枠体10は、左右一対の縦枠11と、上下一対の横枠12と、一対の横枠12の間に配置された中間枠13とから構成されている。各枠11,12,13は、例えばアルミ合金材を押出し成形することで成形される。枠体10では、各枠11,12,13によって板材20を上下方向に並べた状態で支持する。板材20は、上方に配置される第1板材21と下方に配置される第2板材22とからなる。板材20は、例えば、不燃性のケイカル板やフレキ板である。本実施形態では、第2板材22の厚さ(例えば4mm)は、第1板材21の厚さ(例えば5mm)よりも薄く成形されており、第1板材21よりも第2板材22の方が突き破り易く構成されている。間仕切り板Pは、一対の縦枠11に取り付けられた固定金具30を介してバルコニーBの壁面に固定されている。なお、以下では、板材20の厚さ方向を単に厚さ方向という。
【0008】
図2に示すように、縦枠11は、閉断面構造を有する第1本体部40と、該第1本体部40から突出した形状に形成されて対向して配置された一対の支持壁45とを有している。なお、第1本体部40において一対の支持壁45が連結されている部分を連結壁41という。
【0009】
一対の支持壁45は、厚さ方向(
図2の上下方向)に対向している。一対の支持壁45は、開口部50を構成する一対の第1支持部46と、第1支持部46と第1本体部40との間に位置する第2支持部47とからなる。第1支持部46は、開口を構成する入口端部46Aと、入口端部46Aに繋がった湾曲部46Bとから構成されている。入口端部46Aは、先端側(
図2の左側)ほど互いの間隔が拡がった形状である。湾曲部46Bは、中央部分の間隔が最も広くなるように湾曲した略円弧形状である。第1支持部46では、入口端部46Aの間隔D1が最も狭くなっている。一対の第1支持部46では、入口端部46A及び湾曲部46Bの各々が対向する支持部との厚さ方向における間隔が変化するように曲がった形状に形成されている。
【0010】
第2支持部47は、湾曲部46Bに繋がった押さえ部47Aと、押さえ部47Aに繋がった固定部47Bとからなる。固定部47Bは第1本体部40に接続されていて互いに平行に延びている。押さえ部47Aは、固定部47Bに繋がった基端側から湾曲部46Bに繋がった先端側にいくに連れて、一旦は互いに接近するが、その後は互いに離間するように拡がっている。このように、押さえ部47Aは、中央部分が括れた湾曲形状となっている。すなわち、第2支持部47では、押さえ部47Aが対向する支持部との間隔が変化するように曲がった形状に形成されている。第2支持部47では、押さえ部47Aの括れた部分の間隔D2が最も狭くなっており、この間隔D2は、第1支持部46の入口端部46Aの間隔D1よりも狭い(D1>D2)。そのため、一対の第2支持部47は、一対の第1支持部46が板材20を支持する間隔よりも狭い間隔で板材20を支持する。
【0011】
すなわち、厚さの薄い第2板材22は、一対の支持壁45の開口部50を通じて奥側へ挿通された際に、第1支持部46の間を通過して第2支持部47の間まで至る。そのため、第2板材22は、第2支持部47の押さえ部47Aによって厚さ方向に挟まれて支持された状態となる。なお、第2支持部47が第2板材22を厚さ方向に挟んだ状態では、押さえ部47Aと第2板材22とが当接していてもよいし、押さえ部47Aと第2板材22との間に所定のクリアランスが設けられていてもよい。
【0012】
また、
図3に示すように、第1板材21は、第2板材22に比して厚いことから、一対の支持壁45の開口部50を通じて奥側へ挿通された際に、第1支持部46の湾曲部46Bに突き当たった状態となり、第2支持部47の間までは至らない。そのため、第1板材21は、第1支持部46の入口端部46Aによって厚さ方向に挟まれて支持された状態となる。なお、第1支持部46が第1板材21を厚さ方向に挟んだ状態では、入口端部46Aと第1板材21とが当接していてもよいし、入口端部46Aと第1板材21との間に所定のクリアランスが設けられていてもよい。湾曲部46Bの形状は、第1板材21が湾曲部46Bに突き当てられるまで挿通されたときに、枠体10において第1板材21を適切に支持可能な挿通量となるように予め設定されている。
【0013】
一対の横枠12は、上述した縦枠11の構成と同様の構成であるため、詳細な説明は省略し、次に、中間枠13の構成について説明する。
図4に示すように、中間枠13は、閉断面構造の第2本体部60と、該第2本体部60から突出した形状に形成されて対向して配置された一対の支持壁45を有する。一対の支持壁45は、第2本体部60から上方に突出した形状の一対の上支持壁45A、及び第2本体部60から下方に突出した形状の一対の下支持壁45Bからなる。上支持壁45A及び下支持壁45Bの構成は、上述した縦枠11の一対の支持壁45の構成と同じである。そのため、縦枠11と同じ構成については同様の符号を付して説明は省略する。一対の上支持壁45Aは、第1板材21の下側の周縁部を、厚さ方向(
図4の左右方向)に対向した第1支持部46によって支持する。また、一対の下支持壁45Bは、第2板材22の上側の周縁部を、厚さ方向に対向した第2支持部47によって支持する。
【0014】
中間枠13には、第2本体部60に接続されているビス締結壁61も設けられている。ビス締結壁61は、上支持壁45Aと下支持壁45Bとの配置方向(
図4の上下方向)と直交する方向(
図4の左右方向)に沿って設けられている。また、中間枠13には、上支持壁45Aにおける先端と下支持壁45Bにおける先端とを繋ぐ周側壁62も設けられている。中間枠13では、本体部、上支持壁45A、周側壁62、下支持壁45B、及びビス締結壁61によって閉断面構造が形成されている。これにより、中間枠13では、上支持壁45A及び下支持壁45Bにおける剛性が高められている。
【0015】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)本実施形態では、枠体10の一対の支持壁45に、第1支持部46と、第1支持壁よりも間隔の狭い第2支持部47とを設けている。そのため、枠体10の支持壁45において支持可能な板材の板厚を2段階で設定することが可能になる。したがって、第1板材21及び第2板材22のような厚さの異なる板材20を1つの枠体10で支持可能となり、汎用性を高めることができる。なお、従来の枠体の構成として、一対の支持壁の間隔を余裕をもたせて大きめに設定し、板材と枠体との隙間に埋め込まれるパッキンによって板材の厚さの違いを吸収するようにした構成が実用されている。本実施形態によれば、パッキンを設けることなく板材20の板厚の違いに対応可能であるため、上記従来の枠体に比して部品点数の削減にも貢献できる。
【0016】
(2)本実施形態では、第1支持部46及び第2支持部47の各支持部を、対向する支持部との間隔が変化するように曲がった形状に形成している。そのため、板材20を支持する第1支持部46及び第2支持部47が、上記厚さ方向に撓みやすくなる。そのため、各支持部46,47に板材20を組付けるときに、板材20の厚さや板材20の表面に形成される塗装膜の厚さにおける寸法公差を吸収することが可能になる。したがって、枠体10の一層の汎用性向上に貢献できる。
【0017】
(3)本実施形態では、板材20が挿通される開口部50を構成する第1支持部46の入口端部46Aや、第2支持部47の入口となる押さえ部47Aを先端側ほど拡がった形状に形成した。そのため、板材20を挿通する際に、第1支持部46の間や第2支持部47の間に案内され易くなる。したがって、一対の支持壁45への板材20の組付け性を向上させることができる。
【0018】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態において、枠体10は、第1本体部40の内部に補強のための芯材を有する構成としてもよい。例えば、
図5に示すように、縦枠11の第1本体部40の内部に、該縦枠11と同じ長さを有する芯材70を挿入して配置する。芯材70は、第1本体部40の一部における内周形状と略同一の外形形状に構成されている一対の係合部71と、一対の係合部71を接続する接続部72と、接続部72から突出して第1本体部40の連結壁41の内周面に当接する一対の裏打ち部73とからなる。芯材70は、第1本体部40と同じ素材又は異なる素材で構成されていてもよい。このように、枠体10の本体部の内部に補強のための芯材70を設けることで、本体部の剛性を向上させることができる。したがって、マンションの高層階等に設置される間仕切り板Pにおいて、風圧等の影響に耐え得る剛性を確保するために枠体10の外形状を変更する必要がなく、高層建築物においても枠体10の統一感を確保できる。
【0019】
なお、芯材70の断面形状は適宜変更が可能である。すなわち、係合部71や裏打ち部73の一方が省略されるなどしてもよい。また、芯材70は、縦枠11に限らず横枠12や中間枠13に設けてもよい。中間枠13に設ける場合、第2本体部60の内部に限らず、第2本体部60、上支持壁45A、周側壁62、下支持壁45B、及びビス締結壁61によって構成される閉断面構造の内部に設置することも可能である。
【0020】
・一対の支持壁45の形状は、上記実施形態のものに限らない。例えば、第1支持部46に板材20を組付ける際の弾性変形量に応じて、入口端部46Aの間隔D1を押さえ部47Aの間隔D2よりも狭くしてもよい。こうした構成であっても、一対の第2支持部47が、一対の第1支持部46が板材20を支持する間隔よりも狭い間隔で板材20を支持するといった構成は実現可能である。また、入口端部46Aや押さえ部47Aを先端側ほど拡がった形状としなくてもよいし、固定部47Bを曲がった形状に形成してもよい。
【0021】
また、一対の支持壁の他の構成として、例えば、
図6に示す構成を採用することも可能である。すなわち、一対の支持壁85において、開口部50を構成する一対の第1支持部86を平行に延びるように構成する。また、一対の第2支持部87を、第1本体部40から平行に延びる固定部87Bと、固定部87Bから該固定部87Bの延びる方向と直交する方向に延びる屈曲部87Aとによって構成する。固定部87Bの間隔を第1支持部86の間隔よりも狭くする。こうした構成によれば、一対の支持壁85は、曲がった形状ではなく、直線上に延びる形状となり、第2支持部87が第1支持部86よりも狭い間隔となるように段差状に形成される。こうした構成であっても、一対の第2支持部87は、一対の第1支持部86が板材20を支持する間隔よりも狭い間隔で板材20を支持することができる。
【0022】
・枠体10の本体部は必ずしも閉断面構造を有する必要はない。例えば、本体部が一対の支持壁45を連結する連結壁41のみで構成されていてもよい。
・枠体10を構成する素材は、アルミ合金以外の金属であってもよいし、樹脂であってもよい。また、枠体10を金属や樹脂とは異なる素材で構成してもよい。さらには、枠体10の製造方法は、押出し成形に限らず、プレス成形や3Dプリンタを用いた成形方法など適宜採用することができる。
【0023】
・上記実施形態では、一対の縦枠11、一対の横枠12、及び中間枠13の全てに第1支持部46及び第2支持部47を有する一対の支持壁45を設けた構成を例示したが、枠体10を構成する各枠の少なくとも一部において上述した一対の支持壁45が設けられていれば上記(1)と同様の作用及び効果が得られることはいうまでもない。
【0024】
・枠体10において、中間枠13を複数設けることも可能である。また枠体10において、一対の縦枠11、一対の横枠12、中間枠13のうち少なくとも1つを省略してもよい。
【0025】
・上記実施形態では、板材20として厚さの異なる第1板材21と第2板材22とを各々支持する枠体10を例示した。枠体は厚さの異なる板材を支持するものに限らず、同じ厚さの板材を支持する構成であってもよい。例えば、枠体10において、2つの第1板材21を上下に並べて支持する構成を採用することも可能である。また、枠体は、1つの板材や3つ以上の板材を支持する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0026】
10…枠体、20…板材、40…第1本体部、45…支持壁、46…第1支持部、47…第2支持部、50…開口部、60…第2本体部、70…芯材。
【要約】
【課題】枠体の汎用性を向上させる。
【解決手段】枠体10は、第1本体部40と、第1本体部40から突出した形状に形成されて対向して配置された一対の支持壁45とを有し、一対の支持壁45の間に配置される板材20を該板材20の厚さ方向に挟んで支持する。一対の支持壁45は、開口部50を構成する一対の第1支持部46と、第1支持部46と第1本体部40との間に位置する一対の第2支持部47とを有する。一対の第2支持部47は、一対の第1支持部46が板材20を支持する間隔よりも狭い間隔で板材20を支持する。
【選択図】
図2