(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】カーボンニュートラル液体燃料製造システム
(51)【国際特許分類】
C10G 2/00 20060101AFI20220111BHJP
C10L 1/02 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
C10G2/00
C10L1/02
(21)【出願番号】P 2021564237
(86)(22)【出願日】2021-09-09
(86)【国際出願番号】 JP2021033067
【審査請求日】2021-11-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】306047996
【氏名又は名称】株式会社 ユーリカ エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】特許業務法人 共立
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【氏名又は名称】小林 脩
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 信三
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-119556(JP,A)
【文献】特表2016-511296(JP,A)
【文献】特表2018-523046(JP,A)
【文献】国際公開第2020/203087(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/002183(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 2/00
C10L 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンニュートラルな液体燃料を製造するシステムであって、
バイオマス由来燃料を供給するバイオマス由来燃料供給装置と、
前記バイオマス由来燃料供給装置から供給された前記バイオマス由来燃料を酸素ガスで燃焼させて回転駆動力を発生し、前記バイオマス由来燃料が前記酸素ガスで燃焼して排出された炭酸ガスリッチな排ガスを一方部分と他方部分とに分流し、前記他方部分を前記酸素ガスとともに供給される動力発生装置と、前記動力発生装置によって駆動され発電する発電機とを備える酸素吹き発電装置と、
前記炭酸ガスリッチな排ガスの前記一方部分から炭酸ガス分離装置で分離された炭酸ガスが供給され、前記炭酸ガスに対するモル比がほぼ2の高温水蒸気が供給され、直流電力によって前記炭酸ガスと前記高温水蒸気とを電気分解し、モル比でほぼ2:1の水素ガスと一酸化炭素ガスとの合成ガスをカソード側に生成し、前記一酸化炭素ガスに対するモル比がほぼ1.5で、前記バイオマス由来燃料を燃焼させる前記酸素ガスを含む酸素ガスをアノード側に生成し、生成した前記酸素ガスを前記酸素吹き発電装置に供給する固体酸化物型水電解装置と、
前記酸素吹き発電装置で発電される交流電力と電力グリッドから供給される再生エネルギー由来交流電力を系統連系して前記システムの稼働に必要な稼働電力を賄い、前記稼働電力のうち前記電気分解に必要な電力を直流電力に変換して前記固体酸化物型水電解装置に供給する電力供給装置と、
水蒸気供給装置から供給された水蒸気を加熱用エネルギーによって再熱し、前記高温水蒸気に再熱する水蒸気再熱装置と、
前記固体酸化物型水電解装置から前記合成ガスが供給され、前記合成ガスを所定の温度・圧力環境で触媒によって反応させ、FT粗油または粗メタノールを合成する液体燃料合成装置と、
を備えたカーボンニュートラル液体燃料製造システム。
【請求項2】
前記バイオマス由来燃料供給装置は、バイオマスからメタン発酵装置で生成したバイオガスまたは酸素吹きバイオマスガス化装置で生成した一酸化炭素リッチなガス化ガスを前記バイオマス由来燃料として供給し、
前記酸素吹き発電装置は、前記バイオガスまたは前記一酸化炭素リッチなガス化ガスを前記酸素ガスで燃焼させて作動される酸素吹きガスエンジン装置を前記動力発生装置として備え、前記酸素吹きガスエンジン装置によって駆動され発電する発電機を前記発電機として備える酸素吹きガスエンジン発電装置であり、
前記液体燃料合成装置は、前記固体酸化物型水電解装置から供給された前記合成ガスを所定の温度・圧力環境で触媒によって反応させて前記液体燃料を合成する反応部を備えるとともに、前記反応で生じる発熱を水供給装置から供給された水に熱移動して前記反応部を冷却し、前記水から前記水蒸気を生成する冷却管を前記水蒸気供給装置として備え、
前記水蒸気再熱装置は、前記合成ガスの一部または前記バイオマス由来燃料の一部が供給されて燃焼し、前記燃焼で生じた燃焼熱が前記冷却管から供給された前記水蒸気を前記高温水蒸気に再熱する、
請求項1に記載のカーボンニュートラル液体燃料製造システム。
【請求項3】
前記バイオマス由来燃料供給装置は、バイオマスを燃料として供給し、
前記酸素吹き発電装置は、前記バイオマスを酸素吹きボイラー装置において前記酸素ガスで燃焼させて生成した水蒸気で駆動される復水タービン装置を前記動力発生装置として備え、前記復水タービン装置で駆動されて発電する発電機を前記発電機として備える復水タービン発電装置であり、
前記液体燃料合成装置は、前記固体酸化物型水電解装置から供給された前記合成ガスを所定の温度・圧力環境で触媒によって反応させて前記液体燃料を合成する反応部を備えるともに、前記反応で生じる発熱を水供給装置から供給された水に熱移動して前記反応部を冷却し、前記水から前記水蒸気を生成する冷却管を前記水蒸気供給装置として備え、
前記水蒸気再熱装置は、前記合成ガスの一部が供給されて燃焼し、前記燃焼で生じた燃焼熱が前記冷却管から供給された前記水蒸気を前記高温水蒸気に再熱する、
請求項1に記載のカーボンニュートラル液体燃料製造システム。
【請求項4】
前記冷却管は、前記復水タービン装置の復水器から送出される凝縮水が前記水供給装置から供給された前記水として供給され、前記反応で生じる発熱を前記凝縮水に熱移動して前記反応部を冷却し、前記凝縮水から高温水を生成し、前記高温水を前記酸素吹きボイラー装置に環流させ、前記酸素吹きボイラー装置で生成される前記水蒸気の一部を前記水蒸気再熱装置で再熱する、
請求項3に記載のカーボンニュートラル液体燃料製造システム。
【請求項5】
前記バイオマス由来燃料供給装置は、バイオマスからメタン発酵装置で生成したバイオガスまたは酸素吹きバイオマスガス化装置で生成した一酸化炭素リッチなガス化ガスを前記バイオマス由来燃料として供給し、
前記酸素吹き発電装置は、前記バイオガスまたは前記一酸化炭素リッチなガス化ガスを前記酸素ガスで燃焼させて作動される酸素吹きガスエンジン装置を前記動力発生装置として備え、前記酸素吹きガスエンジン装置によって駆動され発電する発電機を前記発電機として備える酸素吹きガスエンジン発電装置であり、
前記液体燃料合成装置は、前記固体酸化物型水電解装置から供給された前記合成ガスを所定の温度・圧力環境で触媒によって反応させて前記液体燃料を合成する反応部を備えるとともに、前記反応で生じる発熱を水供給装置から供給された水に熱移動して前記反応部を冷却し、前記水から前記水蒸気を生成する冷却管を前記水蒸気供給装置として備え、
前記水蒸気再熱装置は、前記再生エネルギー由来電力を前記加熱用エネルギーとする、
請求項1に記載のカーボンニュートラル液体燃料製造システム。
【請求項6】
前記バイオマス由来燃料供給装置は、バイオマスを燃料として供給し、
前記酸素吹き発電装置は、前記バイオマスを酸素吹きボイラー装置において前記酸素ガスで燃焼させて生成した水蒸気で駆動される復水タービン装置を前記動力発生装置として備え、前記復水タービン装置で駆動されて発電する発電機を前記発電機として備える復水タービン発電装置であり、
前記液体燃料合成装置は、前記固体酸化物型水電解装置から供給された前記合成ガスを所定の温度・圧力環境で触媒によって反応させて前記液体燃料を合成する反応部を備えるともに、前記反応で生じる発熱を水供給装置から供給された水に熱移動して前記反応部を冷却し、前記水から前記水蒸気を生成する冷却管を前記水蒸気供給装置として備え、
前記水蒸気再熱装置は、前記再生エネルギー由来電力を前記加熱用エネルギーとする、
請求項1に記載のカーボンニュートラル液体燃料製造システム。
【請求項7】
前記冷却管は、前記復水タービン装置の復水器から送出される凝縮水が前記水供給装置から供給された前記水として供給され、前記反応で生じる発熱を前記凝縮水に熱移動して前記反応部を冷却し、前記凝縮水から高温水を生成し、前記高温水を前記酸素吹きボイラー装置に環流させ、前記酸素吹きボイラー装置で生成される前記水蒸気の一部を前記水蒸気再熱装置で再熱する、
請求項6に記載のカーボンニュートラル液体燃料製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンニュートラルな液体燃料を製造するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化問題は深刻度を増しており、21世紀中に世界の平均温度の上昇を産業革命以前の2℃以下、できれば1.5℃以下に抑える対策が喫緊の課題となっている。各国はこの課題を達成するために、再生可能エネルギー(風力、太陽光、地熱、水力等)由来の電力供給を拡大し、化石燃料由来の発電をフェードアウトさせ、化石燃料由来電力を再エネ由来電力に転換しようとしている。そして、再エネ由来電力の余剰分で水を電気分解して水素を製造し、この水素をカーボンリサイクルに利用する。
特許文献1に記載された固体酸化物型電解装置は、固体酸化物電解セルSOEC(Solid Oxide Electrolisis Cell)のスタックを含む反応器内で、高温水蒸気を水素ガスと酸素ガスに電気分解する水蒸気の電気分解および/または高温水蒸気および炭酸ガスを合成ガスと酸素ガスに電気分解する共電解を行うことができる。
水蒸気の電気分解: H2O→H2+1/2O2 (1)
水蒸気および炭酸ガスの共電解:CO2+H2O→CO+H2+O2 (2)
そして、この合成ガスからメタンやメタノール等の燃料を効率的に製造する技術の研究開発も進められている。
特許文献2には、固体酸化物電解セルを利用した水電解装置2Bと、バイオガス化設備4Bと、バイオガス発電装置5Bとメタネーション設備3Bとを備えた再生可能エネルギー利用システム10Bが開示されている。水電解装置2Bは、水または水蒸気を再生可能エネルギー発電装置1Bの余剰電力を用いて水素と酸素とを製造する。バイオガス化設備4Bは、汚泥を水電解装置2Bで製造された酸素で有機物に分解し、この有機物を嫌気性の微生物によって発酵させメタン(約60%)と炭酸ガス(約40%)とを生成する。バイオガス発電装置5Bは、バイオガス化設備4Bで生成されたメタンを燃焼させて発電し、炭酸ガスを排出する。メタネーション設備3Bは、水電解装置2Bで製造された水素と、バイオガス化設備4Bおよびバイオガス発電装置5Bから排出された炭酸ガスとを合成してメタン等の炭化水素燃料を製造する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2020-500259号公報
【文献】特開2020-45430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、固体酸化物型電解装置の固体酸化物電解セルを含む反応器で水蒸気の電気分解および水蒸気および炭酸ガスの共電解を行い、反応器自体の内部でメタンを直接生成することが記載されているが、カーボンニュートラルな発電によって生じた電力および炭酸ガスからカーボンニュートラルな液体燃料を高い熱効率、低コストで製造することについては記載されていない。
特許文献2には、バイオガス発電装置で発電したクリーン電力で水を電気分解して水素を製造し、この水素と、バイオガス発電装置で生じた炭酸ガスとからCO2フリーメタンを製造するシステムは開示されているが、固体酸化物型水電解装置の固体酸化物電解セルを含む反応器で水蒸気の電気分解および水蒸気および炭酸ガスの共電解を行って生成した合成ガスからカーボンニュートラルな液体燃料を高い熱効率、低コストで製造することについては記載されていない。
【0005】
本発明の目的は、固体酸化物型電解装置の固体酸化物電解セルを含む反応器で水蒸気の電気分解および水蒸気および炭酸ガスの共電解を行ってモル比でほぼ2:1の水素ガスと一酸化炭素ガスとの合成ガスを生成し、この合成ガスを液体燃料合成装置に供給して所定の温度・圧力環境で触媒によって反応させ、FT粗油または粗メタノールを合成するカーボンニュートラルな液体燃料を製造するシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、カーボンニュートラルな液体燃料を製造するシステムであって、バイオマス由来燃料を供給するバイオマス由来燃料供給装置と、前記バイオマス由来燃料供給装置から供給された前記バイオマス由来燃料を酸素ガスで燃焼させて回転駆動力を発生し、前記バイオマス由来燃料が前記酸素ガスで燃焼して排出された炭酸ガスリッチな排ガスを一方部分と他方部分とに分流し、前記他方部分を前記酸素ガスとともに燃焼部に供給される動力発生装置と、前記動力発生装置によって駆動され発電する発電機とを備える酸素吹き発電装置と、前記炭酸ガスリッチな排ガスの前記一方部分から炭酸ガス分離装置で分離された炭酸ガスが供給され、前記炭酸ガスに対するモル比がほぼ2の高温水蒸気が供給され、直流電力によって前記炭酸ガスと前記高温水蒸気とを電気分解し、モル比でほぼ2:1の水素ガスと一酸化炭素ガスとの合成ガスをカソード側に生成し、前記一酸化炭素ガスに対するモル比がほぼ1.5で、前記バイオマス由来燃料を燃焼させる前記酸素ガスを含む酸素ガスをアノード側に生成し、生成した前記酸素ガスを前記酸素吹き発電装置に供給する固体酸化物型水電解装置と、前記酸素吹き発電装置で発電される交流電力と電力グリッドから供給される再生エネルギー由来交流電力を系統連系して前記システムの稼働に必要な稼働電力を賄い、前記稼働電力のうち前記電気分解に必要な電力を直流電力に変換して前記固体酸化物型水電解装置に供給する電力供給装置と、水蒸気供給装置から供給された水蒸気を加熱用エネルギーによって再熱し、前記高温水蒸気に再熱する水蒸気再熱装置と、前記固体酸化物型水電解装置から前記合成ガスが供給され、前記合成ガスを所定の温度・圧力環境で触媒によって反応させ、FT粗油または粗メタノールを合成する液体燃料合成装置と、を備えたカーボンニュートラル液体燃料製造システムである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のカーボンニュートラル液体燃料製造システムは、バイオマス由来燃料供給装置がバイオマス由来燃料を酸素吹き発電装置に供給する。酸素吹き発電装置に設けられた動力発生装置は、前記バイオマス由来燃料供給装置から供給された前記バイオマス由来燃料を酸素ガスで燃焼させて回転駆動力を発生するとともに、前記バイオマス由来燃料が前記酸素ガスで燃焼して排出された炭酸ガスリッチな排ガスが一方部分と他方部分に分流され、他方部分が前記酸素ガスとともに燃焼部に供給される。前記酸素吹き発電装置に設けられた発電機は、前記動力発生装置で駆動されて発電する。固体酸化物型電解装置は、前記炭酸ガスリッチな排ガスの一方部分に含まれる炭酸ガスが炭酸ガス分離装置で分離されて供給されるとともに、前記一方部分に含まれる炭酸ガスに対するモル比がほぼ2の高温水蒸気が供給され、直流電力によって前記炭酸ガスと前記高温水蒸気とを電気分解し、モル比でほぼ2:1の水素ガスと一酸化炭素ガスとの合成ガスをカソード側に生成し、前記一酸化炭素ガスに対するモル比がほぼ1.5の酸素ガスをアノード側に生成する。アノード側に生成された酸素ガスは、前記酸素吹き発電装置の動力発生装置に供給される。電力供給装置は、前記酸素吹き発電装置で発電される交流電力と電力グリッドから供給される再生エネルギー由来交流電力を系統連系してカーボンニュートラルな液体燃料を製造するシステムの稼働に必要な稼働電力を賄い、前記稼働電力のうち前記電気分解に必要な電力を直流電力に変換して前記固体酸化物型電解装置に供給する。水蒸気再熱装置は、水蒸気供給装置から供給された水蒸気を加熱用エネルギーによって再熱し、前記高温水蒸気に再熱する。液体燃料合成装置は、前記固体酸化物型電解装置から前記合成ガスが供給され、前記合成ガスを所定の温度・圧力環境で触媒によって反応させ、FT粗油または粗メタノールを液体燃料として合成する。
【0008】
酸素吹き発電装置は、前記バイオマス由来燃料を酸素ガスで燃焼させてカーボンニュートラルな電力を出力し、炭酸ガスリッチな排ガスを排出する。排ガスは炭酸ガスリッチであるので、炭酸ガスを効率的に低コストで分離することができる。固体酸化物型電解装置は、前記直流電力、前記高温水蒸気および排ガスから分離された炭酸ガスを用いてカソード側に液体燃料の製造に適した水素ガスと一酸化炭素ガスとのモル比がほぼ2:1の合成ガスを生成し、アノード側に酸素吹き発電装置で用いる酸素ガスを生成する。液体燃料合成装置は、液体燃料の製造に適した前記合成ガスから液体燃料を製造することができる。このように、本発明によれば液体燃料の製造に適した合成ガスを高い熱効率で容易に製造し、カーボンニュートラルな液体燃料を効率的に低コストで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係るカーボンニュートラル液体燃料製造システムの全体構成を示すブロック図である。
【
図2】第2実施形態に係るカーボンニュートラル液体燃料製造システムの全体構成を示すブロック図である。
【
図3】第3実施形態に係るカーボンニュートラル液体燃料製造システムの全体構成を示すブロック図である。
【
図4】第4実施形態に係るカーボンニュートラル液体燃料製造システムの全体構成を示すブロック図である。
【
図5】第5実施形態に係るカーボンニュートラル液体燃料製造システムの全体構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.第1実施形態の構成
第1の実施形態に係るカーボンニュートラルな液体燃料を製造するカーボンニュートラル液体燃料製造システム1aは、
図1に示すように、バイオマス由来燃料供給装置10と、酸素吹き発電装置20と、固体酸化物型電解装置30と、電力供給装置40と、水蒸気再熱装置50と、液体燃料合成装置60を備える。
【0011】
バイオマス由来燃料供給装置10は、バイオガス、一酸化炭素リッチなガス化ガスまたはバイオマスのようなバイオマス由来燃料を酸素吹き発電装置20に供給する。バイオマス由来燃料供給装置10としては、例えば公知のメタン発酵装置、または酸素吹きバイオマスガス化装置、あるいは木質チップや木質ペレット等のバイオマスを復水タービン発電装置の酸素吹きボイラー装置に供給するバイオマス供給装置などを用いる。
【0012】
酸素吹き発電装置20は、動力発生装置21と発電機22を有する。動力発生装置21は、バイオマス由来燃料供給装置10から供給されたバイオマス由来燃料を酸素ガスで燃焼させて回転駆動力を発生する。動力発生装置21は、バイオマス由来燃料が酸素ガスによって燃焼部25で燃焼する熱エネルギーを回転エネルギーに変換することによって回転力を発生する。燃焼部25から排出された炭酸ガスリッチな排ガスは分流器26で一方部分と他方部分とに分流される。排ガスの他方部分は、バイオマス由来燃料供給装置10から供給されるバイオマス由来燃料および後述する固体酸化物型電解装置30から供給される酸素ガスとともに燃焼部25に供給され、動力発生装置21内で作動するガス量を増大する。酸素吹き発電装置20としては、例えば公知の酸素吹きガスエンジン発電装置、酸素吹きボイラーで生成される水蒸気で復水タービン装置を作動させて発電機を駆動する復水タービン発電装置を用いる。
【0013】
固体酸化物型電解装置30は公知で、例えば、アノード、固体電解質、カソードの3層からなるセルがインターコネクタを介して複数積層され、インターコネクタを介して各セルに直流電力が供給されるようになっている。インターコネクタのカソード側面に複数のカソード側溝が形成され、アノード側面に複数のアノード側溝が形成されている。
【0014】
固体酸化物型電解装置30は、水蒸気を電気分解する水電解ゾーンと水蒸気および炭酸ガスを共電解する共電解ゾーンとを備える。水電解ゾーンでは、高温水蒸気がカソード側溝の一端に後述の水蒸気再熱装置50から供給され、排出用酸素ガスがアノード側溝の一端に流入されることによって、式(1)に示すようにカソード側溝の他端から水素ガスが送出され、アノード側溝の他端から酸素ガスが送出される。
【0015】
共電解ゾーンでは、高温水蒸気および炭酸ガスがカソード側溝の一端に供給され、排出用酸素ガスがアノード側溝の一端に流入されることによって、式(2)に示すようにカソード側溝の他端から水素ガスと一酸化炭素ガスとの合成ガスが送出され、アノード側溝の他端から酸素ガスが送出される。高温水蒸気は水蒸気再熱装置50からカソード側溝の一端に供給される。動力発生装置21の燃焼部25から排出された炭酸ガスリッチな排ガスは分流器26で一方部分と他方部分に分流され、一方部分は炭酸ガス分離装置35に供給され、炭酸ガスが分離される。分離された炭酸ガスはカソード側溝の一端に供給され、オフガスは大気に放出される。
【0016】
式(1)および式(2)から明らかなように、固体酸化物型電解装置30は、水電解ゾーンのカソード側に時間当たりAモル数の高温水蒸気を供給され、共電解ゾーンのカソード側に時間当たりAモル数の高温水蒸気および時間当たりAモル数の炭酸ガスを供給されることによって、炭酸ガスと高温水蒸気とを直流電力によって電気分解し、モル比でほぼ2:1の水素ガスと一酸化炭素ガスとの合成ガスをカソード側31に生成し、前記一酸化炭素ガスに対するモル比がほぼ1.5で、バイオマス由来燃料を燃焼させる酸素ガスを含む酸素ガスをアノード側32に生成する。
【0017】
電力供給装置40は、公知の再生エネルギー由来交流電力を需給する電力グリッド41に酸素吹き発電装置20から送電される交流電力を逆潮流可能に系統連系し、カーボンニュートラル液体燃料製造システム1aの稼働に必要な稼働電力を賄う。稼働電力のうち固体酸化物型電解装置30での電気分解に必要な電力は、系統連系された交流電流をAC/DC変換器42で直流電力に変換して固体酸化物型電解装置30に供給する。
【0018】
水蒸気再熱装置50は、一例として、水蒸気供給装置51から供給される水蒸気が流動する再熱管52と、加熱用エネルギー供給装置54から加熱用エネルギーとして供給された再熱用燃料を燃焼させて燃焼熱を生成する燃焼炉53を備える。水蒸気は、再熱管52を流動する間に燃焼熱を熱伝達されて高温水蒸気に再熱され、固体酸化物型電解装置30の水電解ゾーンおよび共電解ゾーンのカソード側31に等分に供給される。水蒸気供給装置51が水蒸気再熱装置50に供給する水蒸気の流量は、固体酸化物型電解装置30のカソード側31に供給される炭酸ガスの流量に対しモル比でほぼ2:1である。
【0019】
水蒸気供給装置51は供給された水を加熱して水蒸気を生成する。加熱用エネルギー供給装置54は、例えば、固体酸化物型電解装置30から送出される合成ガスの一部を再熱用燃料として水蒸気再熱装置50の燃焼炉53に供給する。バイオマス由来燃料供給装置10がメタン発酵装置または酸素吹きバイオマスガス化装置である場合、加熱用エネルギー供給装置54は、メタン発酵装置から供給されるバイオガスまたは酸素吹きバイオマスガス化装置から供給される一酸化炭素リッチなガス化ガスの一部を再熱用燃料として水蒸気再熱装置50の燃焼炉53に供給するようにしてもよい。加熱用エネルギー供給装置54は、電力供給装置40から再生エネルギー由来電力の一部を再熱用電力として水蒸気再熱装置50に送電するようにし、水蒸気再熱装置50は、再熱用電力を加熱用エネルギーとして使用し再熱管52を流動する水蒸気を高温水蒸気に再熱するようにしてもよい。これにより、加熱用エネルギーをシステム1a内で賄うことができ、加熱用エネルギーの調達コストを低減することができる。
【0020】
液体燃料合成装置60は、触媒が充填された反応器61と反応器61内に配置された冷却管62を備える。反応器61には合成ガスが固体酸化物型電解装置30から供給され、合成ガスを所定の温度・圧力環境で触媒によって反応させ、FT粗油または粗メタノールの液体燃料を合成する。冷却管62には水供給装置63から供給された水が循環し、反応熱を吸収して水蒸気になり、反応器61内を所定温度に維持する。冷却管62で生成される水蒸気を水蒸気再熱装置50に送出するようにすると排熱を有効活用できる。この場合、水供給装置63、反応器61および冷却管62は、水蒸気再熱装置50に水蒸気を供給する水蒸気供給装置51としても機能する。
【0021】
液体燃料合成装置60でFT粗油を製造する場合、液体燃料合成装置60はFT合成装置であり、固体酸化物型電解装置30から供給される合成ガスに含まれる水素ガスと一酸化炭素ガスとのモル比はほぼ2である。FT合成装置は、供給された合成ガスから公知のフィッシャー・トロプシュ法(FT法:Fischer-Tropsch process)を用いて所定の温度・圧力環境で触媒によって所望のFT粗油を生成する。即ち、FT合成装置は、各種の触媒が充填された反応器に合成ガスを導入し、化学式(3)に示す合成反応を行わせてFT粗油を生成する。
(2n+1)H2 +nCO) → Cn2n+2 +nH2O 発熱反応 (3)
【0022】
液体燃料合成装置60で粗メタノールを製造する場合、液体燃料合成装置60はメタノール合成油製造装置であり、固体酸化物型電解装置30から供給される合成ガスに含まれる水素ガスと一酸化炭素ガスとのモル比はほぼ2である。メタノール製造装置16は、供給された合成ガスから公知のメタノール合成法を用いて所定の温度・圧力環境で触媒によって化学式(4)に示す合成反応を行わせてメタノールを生成する。
2H2+CO → CH3OH 発熱反応 (4)
【0023】
2.第1実施形態の作動
バイオマス由来燃料供給装置10は、バイオマス由来燃料を酸素吹き発電装置20の動力発生装置21に供給する。動力発生装置21は、燃焼部25に供給されたバイオマス燃料を固体酸化物型電解装置30から供給された酸素ガスで燃焼させることによって回転力を生成し、発電機22を駆動する。発電機22によって発電された交流電力は、電力供給装置40の再生エネルギー由来交流電力を需給する電力グリッド41に逆潮流可能に系統連系され、カーボンニュートラル液体燃料製造システム1aの稼働に必要な稼働電力を賄う。
【0024】
動力発生装置21の燃焼部25から排出された炭酸ガスリッチな排ガスは、分流器26で一方部分と他方部分とに分流され、他方部分は燃焼部25に戻される。一方部分は、炭酸ガス分離装置35で炭酸ガスが分離され、オフガスは大気に排出される。分離された炭酸ガスは、固体酸化物型電解装置30の共電解ゾーンに供給される。
【0025】
加熱用エネルギー供給装置54が再熱用燃料を供給する場合について説明する。水蒸気再熱装置50は、加熱用エネルギー供給装置54から供給された再熱用燃料を燃焼炉53で燃焼させ、水蒸気供給装置51から供給された水蒸気を燃焼熱で加熱し高温水蒸気にして固体酸化物型電解装置30のカソード側31に供給する。固体酸化物型電解装置30のカソード側31に供給される高温水蒸気の流量と、炭酸ガスとの流量比は、モル比でほぼ2:1である。高温水蒸気は、固体酸化物型電解装置30内で水電解ゾーン35および共電解ゾーン36のカソード側に等分配される。
【0026】
固体酸化物型電解装置30は、水電解ゾーンにおいて、高温水蒸気がカソード側に供給され、排出用酸素ガスがアノード側に流入され、高温水蒸気を電気分解して水素ガス(H2)をカソード側に生成し、酸素ガス(1/2O2)をアノード側に生成する。共電解ゾーンにおいて、高温水蒸気および炭酸ガスがカソード側に供給され、排出用酸素ガスがアノード側に流入され、炭酸ガスおよび高温水蒸気が共電解して合成ガス(CO+H2)をカソード側に生成し、酸素ガス(O2)をアノード側に生成する。これにより、固体酸化物型電解装置30は、炭酸ガス分離装置35から炭酸ガスが供給され、水蒸気再熱装置50から炭酸ガスに対するモル比がほぼ2の高温水蒸気が供給され、電力供給装置40から供給される直流電力によって炭酸ガスと高温水蒸気とを電気分解し、モル比でほぼ2:1の水素ガスと一酸化炭素ガスとの合成ガス(2H2+CO)をカソード側31に生成し、一酸化炭素ガスに対するモル比がほぼ1.5の酸素ガス(3/2O2)をアノード側32に生成する。固体酸化物型電解装置30は、生成した合成ガスを液体燃料合成装置60に供給し、酸素ガスを酸素吹き発電装置20の動力発生装置21の燃焼部25に供給する。
【0027】
液体燃料合成装置60は、固体酸化物型電解装置30から反応器61に供給された合成ガスを所定の温度・圧力環境で触媒によって反応させ、液体燃料であるFT粗油または粗メタノールを合成する。冷却管62には水供給装置63から供給された水が循環し、反応熱を吸収して蒸発し反応器61を冷却する。液体燃料合成装置60で生成された液体燃料は、液体燃料利用装置66において有効に使用される。
冷却管62で生成された水蒸気を水蒸気再熱装置50に供給するようにすると、水供給装置63、反応器61および冷却管62は水蒸気供給装置51として機能し、反応熱を利用することができる。
【0028】
FT粗油を製造する場合、液体燃料合成装置60はFT合成装置となり、固体酸化物型電解装置30から供給された一酸化炭素に対する水素のモル比がほぼ2である合成ガスに化学式(3)に示す合成反応を行わせて所望のFT粗油を生成する。
【0029】
粗メタノールを製造する場合、液体燃料合成装置60はメタノール合成装置となり、固体酸化物型電解装置30から供給された一酸化炭素に対する水素のモル比がほぼ2である合成ガスに触媒下で化学式(4)に示す合成反応を行わせて粗メタノールを生成する。
【0030】
3.第1実施形態の効果
このように、酸素吹き発電装置20は、バイオマス由来燃料を酸素ガスで燃焼させてカーボンニュートラルな電力を出力し、炭酸ガスリッチな排ガスを排出する。固体酸化物型電解装置30は、電力グリッド41から供給される再生エネルギー由来電力と、酸素吹き発電装置20から出力された電力および排出された炭酸ガスと、水蒸気供給装置51から供給される水蒸気が水蒸気再熱装置50で昇温された高温水蒸気を用いてカソード側31に液体燃料の製造に適した水素ガスと一酸化炭素ガスとのモル比がほぼ2:1の合成ガスを生成し、アノード側32に酸素吹き発電装置20で用いる酸素ガスを生成する。液体燃料合成装置60は、液体燃料の製造に適した合成ガスから液体燃料を効率的に低コストで製造することができる。
【0031】
4.第2実施形態の構成
第2実施形態にかかるカーボンニュートラル液体燃料製造システム1bは、第1実施形態におけるバイオマス由来燃料供給装置10を湿式メタン発酵装置11とし、酸素吹き発電装置20を酸素吹きガスエンジン発電装置23としている点以外は第1実施形態と同じであるので、相違点について説明し、第1の実施形態と同じ構成要素には同一の参照番号を付して説明を省略する。
【0032】
公知の湿式メタン発酵装置11がバイオマス由来燃料供給装置10として設けられている。湿式メタン発酵装置11は、前処理装置12でスラリー化した有機性廃棄物をメタン発酵槽13で嫌気性雰囲気メタン発酵菌によって分解し、バイオガスをバイオマス由来燃料として生成する。メタン発酵槽13では、嫌気性菌であるメタン発酵菌が定着し、スラリー化した有機性廃棄物に含まれる有機物がメタン発酵菌によって分解され、例えば、メタンガスを60%、炭酸ガスを40%含むバイオガスに再生される。湿式メタン発酵装置11は、メタン発酵槽13で生成したバイオガスを一次貯留するバイオガス用ガスホルダーとこのガスホルダーから供給されるバイマスガスから硫化水素を取り除くための公知の脱硫装置を含む。湿式メタン発酵槽13では無動力攪拌も可能であり、よりエネルギー効率を上げることができる。有機性廃棄物としては、パームオイルの生産過程で大量に排出されるPOME(パームオイル搾り滓)がメタンガスの大気への放出を防ぐためにも最適であるが、畜産糞尿、食品加工物残渣、生ごみ等を再利用することも可能である。なお、バイオマス由来燃料供給装置10は、公知の乾式メタン発酵装置でもよい。
【0033】
酸素吹きガスエンジン発電装置23が酸素吹き発電装置20として設けられている。酸素吹きガスエンジン発電装置23は、酸素吹きガスエンジン装置24を動力発生装置21として備え、酸素吹きガスエンジン装置24が発電機22を駆動する。酸素吹きガスエンジン装置24は、吸入行程で湿式メタン発酵装置11からバイオガスを、固体酸化物型電解装置30のアノード側32から酸素ガスを燃焼部25に供給され、燃焼行程でバイオガスを酸素ガスで燃焼して回転力を発生する。排気行程で燃焼部25から排出された炭酸ガスリッチな排ガスは分流器26で一方部分と他方部分とに分流され、他方部分はバイオガスおよび酸素ガスとともに吸気行程で燃焼部25に供給される。酸素吹きガスエンジン装置24の冷却水がメタン発酵装置11のメタン発酵槽13との間で循環され、メタン発酵槽13をメタン発酵菌の増殖に適した温度に加温している。
【0034】
酸素吹きガスエンジン装置24から排気された炭酸ガスリッチな排ガスの一方部分は、炭酸ガス分離装置35に供給され、炭酸ガスを分離され、オフガスは大気に放出される。分離された炭酸ガスは固体酸化物型電解装置30の共電解ゾーンのカソード側に供給される。
【0035】
水蒸気再熱装置50の再熱管52には、液体燃料合成装置60の冷却管62が水蒸気供給装置51として接続され、反応器61を冷却して蒸発した水蒸気が供給される。燃焼炉53には、固体酸化物型電解装置30のカソード側31から合成ガス(2H2+CO)の一部が再熱用燃料として供給され、燃焼して燃焼熱で再熱管52を流動する水蒸気を高温水蒸気に再熱する。
【0036】
上記実施形態では、加熱用エネルギー供給装置54は、固体酸化物型電解装置30のカソード側31から合成ガス(2H2+CO)の一部を水蒸気再熱装置50の燃焼炉53に供給しているが、湿式メタン発酵装置11からバイオガスの一部を燃焼炉53に供給するようにしてもよい。
【0037】
5.第2実施形態の作動および効果
酸素吹きガスエンジン発電装置23は、酸素吹きガスエンジン装置24が湿式メタン発酵装置11からバイオガスを、固体酸化物型電解装置30のアノード側32から酸素ガスを、分流器26から炭酸ガスリッチな排出ガスの他方部分を燃焼部25に供給され、バイオガスを酸素ガスで燃焼して作動し、発電機22を駆動して発電する。
【0038】
水蒸気再熱装置50は、液体燃料合成装置60の冷却管62から再熱管52に供給された水蒸気を、加熱用エネルギー供給装置54が固体酸化物型電解装置30のカソード側31から燃焼炉53に供給した合成ガスの一部を燃焼させて燃焼熱で高温水蒸気に再熱して固体酸化物型電解装置30に送出する。
【0039】
液体燃料合成装置60をFT合成装置としてFT粗油を製造した場合、FT粗油はアップグレーディング装置65に移送され、炭酸ガスフリー水素でナフサや灯軽油等にアップグレードされて液体燃料利用装置66で使用される。
【0040】
液体燃料合成装置60をメタノール合成装置として粗メタノールを製造した場合、粗メタノールは液体燃料利用装置66で燃料として使用される。
【0041】
第2実施形態は第1実施形態と同様の効果を奏する。さらに、第2実施形態では、水蒸気再熱装置50の再熱管52に液体燃料合成装置60の冷却管62が接続され、反応器61を冷却して蒸発した水蒸気が供給され、燃焼炉53には、固体酸化物型電解装置30から合成ガスの一部またはメタン発酵装置からバイオガスの一部が加熱用エネルギー供給装置54によって供給されて燃焼し、燃焼熱で冷却管62を流動する水蒸気を高温水蒸気に再熱する。これにより、水蒸気を高温水蒸気に再熱するための加熱用エネルギーのコスト低減することができる。さらに、酸素吹きガスエンジン装置24の冷却水がメタン発酵装置11のメタン発酵槽13との間で循環され、メタン発酵槽13をメタン発酵菌の増殖に適した温度に加温するので、排熱を有効に利用することができる。
【0042】
6.第3実施形態の構成
第3実施形態にかかるカーボンニュートラル液体燃料製造システム1cは、第2実施形態における湿式メタン発酵装置11を公知の酸素吹きバイオマスガス化装置15としている点以外は第2実施形態と同じであるので、相違点について説明し、第2の実施形態と同じ構成要素には同一の参照番号を付して説明を省略する。
【0043】
図3に示すように酸素吹きバイオマスガス化装置15がバイオマス由来燃料供給装置10として設けられている。酸素吹きバイオマスガス化装置15は、供給された木質チップ、木質ペレットなどのバイオマスを酸化剤として空気の代わりに酸素を用いて酸素不足の不完全燃焼の状態で化学式(5)のように熱分解ガス化反応させてガス化ガスをバイオマス由来燃料として生成する。
C
nH
mO
p+aO
2+bH
2O→cCO+dCO
2+eH
2+C
xH
y (5)
【0044】
図3に示す第3実施形態では、加熱用エネルギー供給装置54が固体酸化物型電解装置30のカソード側31から合成ガス(2H
2+CO)の一部を水蒸気再熱装置50の燃焼炉53に供給しているが、酸素吹きバイオマスガス化装置15からガス化ガスの一部を燃焼炉53に供給して燃焼させるようにしてもよい。
【0045】
7.第3実施形態の作動および効果
酸素吹きガスエンジン発電装置23は、酸素吹きガスエンジン装置24が酸素吹きバイオマスガス化装置15からガス化ガスを、固体酸化物型電解装置30のカソード側31から酸素ガスを、分流器26から炭酸ガスリッチな排出ガスの他方部分を燃焼部25に供給され、ガス化ガスを酸素ガスで燃焼して作動し、発電機22を駆動して発電する。
【0046】
酸素吹きバイオマスガス化装置15で生成されるガス化ガスには、空気に含まれる窒素ガスが混入されない。したがって、この一酸化炭素リッチなガス化ガスが酸素吹きガスエンジン装置24で燃焼して生じる炭酸ガスリッチな排ガスに窒素は含まれない。このような炭酸ガスリッチな排ガスから炭酸ガスを効率的に低コストで分離することができる。
【0047】
8.第4実施形態の構成
第4実施形態にかかるカーボンニュートラル液体燃料製造システム1dは、第2実施形態における湿式メタン発酵装置11をバイオマス供給装置15とし、酸素吹きガスエンジン発電装置23を復水タービン発電装置70としている点以外は第2の実施形態と同じであるので、相違点について説明し、第1および第2実施形態と同じ構成要素には同一の参照番号を付して説明を省略する。
【0048】
木質バイオマス、可燃ゴミ等のバイオマスをバイオマス由来燃料として復水タービン発電装置70に供給するバイオマス供給装置15がバイオマス由来燃料供給装置10として設けられている。
【0049】
復水タービン発電装置70が酸素吹き発電装置20である。復水タービン発電装置70は、酸素吹きボイラー装置71、復水タービン装置72および発電機22を備える。酸素吹きボイラー装置71および復水タービン装置72が動力発生装置21である。酸素吹きボイラー装置71は、バイオマス供給装置15からバイオマスを、固体酸化物型電解装置30のアノード側32から酸素ガスを、分流器26から炭酸ガスリッチな排出ガスの他方部分を燃焼部73に供給され、バイオマスを酸素ガスで燃焼させて燃焼ガスを生成する。酸素吹きボイラー装置71は、復水タービン装置72の復水器74で復水した凝縮水が供給され、燃焼ガスで加熱して水蒸気を生成する。復水タービン装置72は酸素吹きボイラー装置71で生成された水蒸気によって作動され、発電機22を駆動する。
【0050】
9.第4実施形態の作動および効果
復水タービン発電装置70において、酸素吹きボイラー装置71は、排出ガスの他方部分が戻された燃焼部73でバイオマスを酸素ガスで燃焼させ燃焼ガスを生成し、復水タービン装置72の復水器74で復水した凝縮水を燃焼ガスで加熱して水蒸気を生成する。復水タービン装置72がこの水蒸気によって作動され、発電機22を駆動して発電する。
第4実施形態は第1乃至第3実施形態と同様の効果を奏する。さらに、第4実施形態では、バイオマスを酸素で直接燃焼させることによって復水タービン発電装置70を作動させて発電するとともに、固体酸化物型電解装置30に供給する炭酸ガスを生成するので、第2および第3実施形態にかかるシステムに較べて大規模化を図ることができる。
【0051】
10.第5実施形態の構成
第5実施形態は、酸素吹きボイラー装置71で生成された水蒸気が水蒸気再熱装置50に供給され、復水タービン装置72の復水器74で復水した凝縮水を液体燃料合成装置60で反応熱によって高温水にして酸素吹きボイラー装置71に供給する点以外は第4実施形態と同じであるので、相違点について説明し、4実施形態と同じ構成要素には同一の参照番号を付して説明を省略する。
【0052】
復水タービン装置72の復水器74で復水した凝縮水は、液体燃料合成装置60の冷却管62に供給される。凝縮水は冷却管62を流動する間に反応熱を伝達されて高温水になって酸素吹きボイラー装置71に供給される。酸素吹きボイラー装置71で高温水を加熱して生成した水蒸気の一部を水蒸気再熱装置50に供給するようにして水蒸気供給装置51を構成している。水蒸気供給装置51で使用される水など必要な水は復水器74で補給される。
【0053】
11.第5実施形態の作動および効果
復水タービン発電装置70は、酸素吹きボイラー装置71の燃焼部73でバイオマスを酸素ガスで燃焼させて燃焼ガスを生成し、液体燃料合成装置60の冷却管62から供給された高温水を燃焼ガスで加熱して水蒸気を生成る。復水タービン装置72はこの水蒸気によって作動され、発電機22を駆動して発電する。
【0054】
復水タービン装置72の復水器74で復水した凝縮水を液体燃料合成装置60の冷却管62を流動させて反応熱で加熱し高温水にして酸素吹きボイラー装置71に供給するので、復水タービン装置72を作動させる水蒸気の生成コストを低減することができる。
【符号の説明】
【0055】
10:バイオマス由来燃料供給装置、11:湿式メタン発酵装置、15:酸素吹きバイオマスガス化装置、13:メタン発酵槽、20:酸素吹き発電装置、21:動力発生装置、22:発電機、23:酸素吹きガスエンジン発電装置、24:酸素吹きガスエンジン装置、25:燃焼部、26:分流器、30:固体酸化物型電解装置、31:カソード側、32:アノード側、35:炭酸ガス分離装置、40:電力供給装置、41:電力グリッド、42:AC/DC変換器、50:水蒸気再熱装置、51:水蒸気供給装置、52:再熱管、53:燃焼炉、54:加熱用エネルギー供給装置、60:液体燃料合成装置、61:反応器、62:冷却管、70:復水タービン発電装置、71:酸素吹きボイラー装置、72:復水タービン装置、73:燃焼部、74:復水器、66:液体燃料利用装置
【要約】
酸素吹き発電装置20と、固体酸化物型電解装置30と、液体燃料合成装置60を備え、酸素吹き発電装置20は、バイオマス由来燃料を酸素ガスで燃焼させてカーボンニュートラルな電力を出力し、炭酸ガスリッチな排ガスを排出し、固体酸化物型電解装置30は、電力グリッド41から供給される再生エネルギー由来電力と、酸素吹き発電装置20から出力された電力および排出された炭酸ガスと、水蒸気供給装置51から供給される水蒸気を水蒸気再熱装置50で昇温された高温水蒸気を用いてカソード側31に水素ガスと一酸化炭素ガスとのモル比がほぼ2:1の合成ガスを生成し、アノード側32に酸素吹き発電装置20で用いる酸素ガスを生成し、液体燃料合成装置60は、前記合成ガスから液体燃料を製造する、バイオマス由来燃料からカーボンニュートラルな液体燃料を効率的に低コストで製造可能なシステムである。