IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アズビル株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-照明制御方法および装置 図1
  • 特許-照明制御方法および装置 図2
  • 特許-照明制御方法および装置 図3
  • 特許-照明制御方法および装置 図4
  • 特許-照明制御方法および装置 図5
  • 特許-照明制御方法および装置 図6
  • 特許-照明制御方法および装置 図7
  • 特許-照明制御方法および装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】照明制御方法および装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 47/115 20200101AFI20220111BHJP
   H05B 47/155 20200101ALI20220111BHJP
   H05B 47/165 20200101ALI20220111BHJP
   H05B 47/18 20200101ALI20220111BHJP
【FI】
H05B47/115
H05B47/155
H05B47/165
H05B47/18
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017125944
(22)【出願日】2017-06-28
(65)【公開番号】P2019009064
(43)【公開日】2019-01-17
【審査請求日】2020-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】本田 光弘
【審査官】野木 新治
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-228174(JP,A)
【文献】特開平08-329730(JP,A)
【文献】特開2016-162696(JP,A)
【文献】特開2010-055801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 45/00、47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象空間の熱画像から得られた人検知位置について、前記対象空間に設置されている照明器具の点消灯を制御する照明制御方法であって、
前記対象空間のうち、前記照明器具に対して予め割り当てた照明エリアを示す照明エリア位置と、前記照明エリアの外周に配置された帯状の緩衝エリアを示す緩衝エリア位置を記憶部で記憶するステップと、
照明制御部が、前記照明エリア位置および前記緩衝エリア位置と前記人検知位置とを比較し、前記照明エリアに人が存在する場合には前記照明器具を点灯し、前記照明エリアおよび前記緩衝エリアのいずれにも人が存在しない場合には前記照明器具を消灯し、前記照明エリアに人が存在せず前記緩衝エリアに人が存在する場合には、直前における前記照明器具の制御状態が点灯の場合には点灯を維持する一方、直前における前記照明器具の制御状態が消灯の場合は消灯を維持する照明制御ステップと
を備えることを特徴とする照明制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の照明制御方法において、
前記照明器具のうち第1および第2の照明器具が隣接する場合、前記第1の照明器具に関する第1の緩衝エリアと前記第2の照明器具に関する第2の緩衝エリアとが互いに隣接するよう配置されていることを特徴とする照明制御方法。
【請求項3】
請求項1に記載の照明制御方法において、
前記照明器具のうち第1および第2の照明器具が隣接する場合、前記第1の照明器具に関する第1の緩衝エリアと前記第2の照明器具に関する第2の緩衝エリアとが互いに重複するよう配置されていることを特徴とする照明制御方法。
【請求項4】
請求項1に記載の照明制御方法において、
前記照明器具のうち第1および第2の照明器具が隣接する場合、前記第1の照明器具に関する第1の照明エリアと前記第2の照明器具に関する第2の照明エリアとの間のエリアを、第1および第2の照明器具で共用する共用緩衝エリアに設定することを特徴とする照明制御方法。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれかに記載の照明制御方法において、
前記緩衝エリアは、前記熱画像に現れる人の表面温度を示す人領域の大きさの幅を有していることを特徴とする照明制御方法。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれかに記載の照明制御方法において、
前記照明制御部は、前記照明器具の点灯要否を判定する場合、予め設定された第1の感度で人検知して得られた第1の人検知位置を用いて判定し、前記照明器具の消灯要否を判定する場合、前記第1の感度より高い第2の検知感度で人検知して得られた第2の人検知位置を用いて判定することを特徴とする照明制御方法。
【請求項7】
請求項1~請求項5のいずれかに記載の照明制御方法において、
前記照明制御部は、前記照明器具を点灯する際、予め設定された第1の判定時間だけ連続して前記照明エリアに人が存在することが確認された場合に前記照明器具を点灯し、前記照明器具を消灯する際、前記第1の判定時間より長い第2の判定時間だけ連続して前記照明エリアおよび前記緩衝エリアに人が存在しないことが確認された場合に前記照明器具を消灯することを特徴とする照明制御方法。
【請求項8】
対象空間に関する人検知結果が示す人検知位置について、前記対象空間に設置されている照明器具の点消灯を制御する照明制御装置であって、
前記対象空間のうち、前記照明器具に対して予め割り当てた照明エリアを示す照明エリ
ア位置と、前記照明エリアの外周に配置された帯状の緩衝エリアを示す緩衝エリア位置を記憶する記憶部と、
前記照明エリア位置および前記緩衝エリア位置と前記人検知位置とを比較し、前記照明エリアに人が存在する場合には前記照明器具を点灯し、前記照明エリアおよび前記緩衝エリアのいずれにも人が存在しない場合には前記照明器具を消灯し、前記照明エリアに人が存在せず前記緩衝エリアに人が存在する場合には、直前における前記照明器具の制御状態が点灯の場合には点灯を維持する一方、直前における前記照明器具の制御状態が消灯の場合は消灯を維持する照明制御部と
を備えることを特徴とする照明制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
従来、対象空間の天井や壁に取り付けた複数の赤外線センサで検出した対象空間内の熱画像(サーモグラフィ)から、人の表面温度を示す人領域を検索することにより、対象空間内に存在する在室者を検知する、人検知技術が提案されている(例えば、特許文献1など参照)。これにより、在室者のいる空間に限定して快適な空調環境に制御し、在室者のいない空間については、空調や照明を停止させるなど、対象空間の環境を自動制御することが可能となる。
【0002】
赤外線センサの1つとしてサーモパイルアレイセンサを天井に設置し、床面の温度分布を計測すると、発熱体である人間は床面よりも高い温度で検出される。解像度の高いサーモパイルアレイセンサを用いることで、約10cm単位での位置情報の取得も可能となる。したがって、一定のフレームレートで温度分布を計測し続けることにより、人の移動を追跡し、位置情報をリアルタイムに検出する事が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-057840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来技術を利用して、天井に配置された照明器具を、その照明器具の照明エリアに人が存在するか否かにより自動制御する場合、単に検知した人の検知位置と照明エリアとを比較するだけでは、スムーズな照明制御ができないという問題点があった。
例えば、人の検知位置が照明エリア内である場合には照明器具を点灯し、検知位置が照明エリア外となった場合には照明器具を消灯する制御が考えられる。しかしながら、照明エリアの境界付近で人が留まって作業をしているような場合、人の微妙な動きの影響で照明器具が明滅を繰り返すことがあり、人に不快感を与えるだけでなく、照明機器の寿命を短縮してしまう原因にもなる。
【0005】
このような明滅を抑えるため、オフディレイという制御方法を適用することも考えられる。オフディレイとは、照明器具の消灯を遅らせる方法であり、例えば照明エリアの外に人が移動した場合、すぐには消灯せず、ある程度の監視時間だけ人がいない状態が維持した時点で消灯する方法である。しかしながらこのオフディレイの場合、安定した照明制御を実現するためには、数分~数十分程度の監視時間が必要となるため、照明自動制御の本来の目的である省エネルギー効果を低減してしまうことになる。
【0006】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、無駄な監視時間を必要とすることなく、人検知結果に基づいて照明器具を効率よく自動制御できる照明制御技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するために、本発明にかかる照明制御方法は、対象空間の熱画像から得られた人検知位置について、前記対象空間に設置されている照明器具の点消灯を制御する照明制御方法であって、前記対象空間のうち、前記照明器具に対して予め割り当てた照明エリアを示す照明エリア位置と、前記照明エリアの外周に配置された帯状の緩衝エリアを示す緩衝エリア位置を記憶部で記憶するステップと、照明制御部が、前記照明エリア位置および前記緩衝エリア位置と前記人検知位置とを比較し、前記照明エリアに人が存在する場合には前記照明器具を点灯し、前記照明エリアおよび前記緩衝エリアのいずれにも人が存在しない場合には前記照明器具を消灯し、前記照明エリアに人が存在せず前記緩衝エリアに人が存在する場合には、直前における前記照明器具の制御状態が点灯の場合には点灯を維持する一方、直前における前記照明器具の制御状態が消灯の場合は消灯を維持する照明制御ステップとを備えている。
【0008】
また、本発明にかかる上記照明制御方法の一構成例は、前記照明器具のうち第1および第2の照明器具が隣接する場合、前記第1の照明器具に関する第1の緩衝エリアと前記第2の照明器具に関する第2の緩衝エリアとが互いに隣接するよう配置したものである。
【0009】
また、本発明にかかる上記照明制御方法の一構成例は、前記照明器具のうち第1および第2の照明器具が隣接する場合、前記第1の照明器具に関する第1の緩衝エリアと前記第2の照明器具に関する第2の緩衝エリアとが互いに重複するよう配置したものである。
【0010】
また、本発明にかかる上記照明制御方法の一構成例は、前記照明器具のうち第1および第2の照明器具が隣接する場合、前記第1の照明器具に関する第1の照明エリアと前記第2の照明器具に関する第2の照明エリアとの間のエリアを、第1および第2の照明器具で共用する共用緩衝エリアに設定するようにしたものである。
【0011】
また、本発明にかかる上記照明制御方法の一構成例は、前記緩衝エリアが、前記熱画像に現れる人の表面温度を示す人領域の大きさの幅を有している。
【0012】
また、本発明にかかる上記照明制御方法の一構成例は、前記照明制御部が、前記照明器具の点灯要否を判定する場合、予め設定された第1の感度で人検知して得られた第1の人検知位置を用いて判定し、前記照明器具の消灯要否を判定する場合、前記第1の感度より高い第2の検知感度で人検知して得られた第2の人検知位置を用いて判定するようにしたものである。
【0013】
また、本発明にかかる上記照明制御方法の一構成例は、前記照明制御部が、前記照明器具を点灯する際、予め設定された第1の判定時間だけ連続して前記照明エリアに人が存在することが確認された場合に前記照明器具を点灯し、前記照明器具を消灯する際、前記第1の判定時間より長い第2の判定時間だけ連続して前記照明エリアおよび前記緩衝エリアに人が存在しないことが確認された場合に前記照明器具を消灯するようにしたものである。
【0014】
また、本発明にかかる照明制御装置は、対象空間に関する人検知結果が示す人検知位置について、前記対象空間に設置されている照明器具の点消灯を制御する照明制御装置であって、前記対象空間のうち、前記照明器具に対して予め割り当てた照明エリアを示す照明エリア位置と、前記照明エリアの外周に配置された帯状の緩衝エリアを示す緩衝エリア位置を記憶する記憶部と、前記照明エリア位置および前記緩衝エリア位置と前記人検知位置とを比較し、前記照明エリアに人が存在する場合には前記照明器具を点灯し、前記照明エリアおよび前記緩衝エリアのいずれにも人が存在しない場合には前記照明器具を消灯し、前記照明エリアに人が存在せず前記緩衝エリアに人が存在する場合には、直前における前記照明器具の制御状態が点灯の場合には点灯を維持する一方、直前における前記照明器具の制御状態が消灯の場合は消灯を維持する照明制御部とを備えている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、人が照明エリアの境界付近や緩衝エリアの外側境界付近で留まったとしても、照明器具が明滅を繰り返すことはなく、人に不快感を与えることはない。また、人が緩衝エリアの外側に出た時点で直ちに照明器具が消灯されるので、照明自動制御の本来の目的である省エネルギー効果を得ることができる。したがって、無駄な監視時間を必要とすることなく、人検知結果に基づいて照明器具を効率よく自動制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】照明制御装置の構成を示すブロック図である。
図2】照明エリアの設定例である。
図3】人検知結果を示す構成例である。
図4】照明制御処理を示すフローチャートである。
図5】照明制御動作例(単独)を示す説明図である。
図6】照明制御動作例(隣接または一部重複)を示す説明図である。
図7】照明制御動作例(完全重複)を示す説明図である。
図8】人検知判定例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかる照明制御装置10について説明する。図1は、照明制御装置の構成を示すブロック図である。
この照明制御装置10は、全体としてサーバ装置や産業用コントローラなどの情報処理装置からなり、人検知システム20で得られた対象空間Rに関する人検知結果についてR内に設置されている照明器具Qを制御する装置である。
【0018】
人検知システム20は、対象空間Rの天井や壁に取り付けられている、サーモパイルアレイセンサなどからなる複数の赤外線センサSPで、R内の熱画像(サーモグラフィ)を検出し、通信回線L2を介して各SPから取得した熱画像から、人Uの表面温度を示す人領域を検索することにより、R内に存在する人Uを検知する、一般的なシステムである。なお、本実施の形態では、対象空間Rにおけるこれらの人検知処理を人検知システム20が実行する場合を例として説明するが、上記人検知処理についても照明制御装置10で実行するようにしてもよい。
【0019】
図2は、照明エリアの設定例である。対象空間Rの天井には、赤外線センサSPのほか、複数の照明器具Qが設置されている。これらQには、Qからの照明が届くRの床面において、Qの設置位置を中心とした照明エリアSが設定されており、この照明エリアS内における人の存在有無に基づいてQの点消灯が照明制御装置10により自動制御される。
本発明は、照明エリアSの外周に帯状の緩衝エリアKを配置し、照明エリアSだけでなく緩衝エリアKでの人の存在も考慮してQを制御するようにしたものである。
【0020】
図2の例では、照明エリアSがQを中心とした略正方形状をなしており、その外周に帯状のKが等幅で配置されている。Kの幅は、熱画像に現れる人の表面温度を示す人領域Mの大きさ以上の幅Wを有している。後述するように人がKに存在している場合には、Sに存在していなくても直前におけるQの制御状態が維持されるため、Qの照明がKまで届くことが前提となる。したがって、Qの照明により一定以上の明るさが得られる範囲を、Wの外側境界としてもよい。
【0021】
図1に示すように、照明制御装置10には、主な機能部として、通信I/F部11、操作入力部12、画面表示部13、記憶部14、人検知結果取得部15、および照明制御部16が設けられている。これら機能部のうち、人検知結果取得部15、および照明制御部16は、中央処理装置(CPU)とプログラムとが協働することにより実現されている。
【0022】
通信I/F部11は、通信回線L1を介して人検知システム20とデータ通信を行う機能と、通信回線L3を介して対象空間Rに配置されている照明器具Qとデータ通信を行う機能とを有している。
操作入力部12は、キーボード、マウス、タッチパネルなどの操作入力装置からなり、オペレータの走査を検出出力する機能を有している。
画面表示部13は、QCDなどの画面表示装置からなり、メニュー画面、設定画面、照明制御画面などにより、各種の情報を画面表示する機能を有している。
【0023】
記憶部14は、ハードディスクや半導体メモリなどの記憶装置からなり、人検知結果、照明エリア位置、緩衝エリア位置、判定結果など、人検知結果判定処理に用いる各種の処理データやプログラムを記憶する機能を有している。
人検知結果取得部15は、通信I/F部11を介して人検知システム20で得られた人検知結果を取得して、記憶部14に保存する機能を有している。
図3は、人検知結果を示す構成例である。ここでは、検知日時ごとに、人を検知した検知位置が登録されている。
【0024】
照明制御部16は、照明エリアSの位置および緩衝エリアKの位置と人検知位置とを比較し、照明エリアSに人Uが存在する場合には通信I/F部11を介して照明器具Qを点灯制御する機能と、照明エリアSおよび緩衝エリアKのいずれにも人Uが存在しない場合には通信I/F部11を介して照明器具Qを消灯制御する機能と、照明エリアSに人Uが存在せず緩衝エリアKに人Uが存在する場合には、直前における照明器具Qの制御状態を維持する機能とを有している。
【0025】
[第1の実施の形態の動作]
次に、図4を参照して、本実施の形態にかかる照明制御装置10の動作について説明する。図4は、照明制御処理を示すフローチャートである。
照明制御装置10は、所定の周期で図4の照明制御処理を実行する。なお、記憶部14には、照明器具Qごとに照明エリアSと緩衝エリアKの位置が予め設定されているものとする。
【0026】
まず、人検知結果取得部15は、通信I/F部11を介して人検知システム20から最新の人検知結果を取得して記憶部14に保存し(ステップ100)、各照明器具Qのうちから未選択の照明器具Qを選択する(ステップ101)。
次に、照明制御部16は、記憶部14から読み出した人検知結果と、予め記憶部14に設定されている、選択したQの照明エリアSの位置とを比較することにより、S内における人の存在有無を確認する(ステップ102)。
【0027】
ここで、S内に人が存在している場合(ステップ102:YES)、照明制御部16は、通信I/F部11を介してQを点灯制御する(ステップ103)。
一方、S内に人が存在していない場合(ステップ102:NO)、照明制御部16は、人検知結果と、予め記憶部14に設定されている、選択したQの緩衝エリアKの位置とを比較することにより、K内における人の存在有無を確認する(ステップ104)。
【0028】
ここで、K内に人が存在していない場合(ステップ104:NO)、照明制御部16は、通信I/F部11を介してQを消灯制御する(ステップ105)。
また、K内に人が存在している場合(ステップ104:YES)、照明制御部16は、直前のQに対する制御状態を維持する(ステップ106)。
この後、照明制御部16は、Qをすべて選択したか確認し(ステップ107)、未選択のQが存在する場合(ステップ107:NO)、ステップ101に戻る。一方、Qをすべて選択した場合(ステップ107:YES)、一連の照明制御処理を終了する。
【0029】
[照明制御動作例(単独)]
次に、図5を参照して、本実施の形態にかかる照明制御装置10の動作例として、緩衝エリアKが単独の照明器具Qに関する照明制御動作について説明する。図5は、照明制御動作例(単独)を示す説明図であり、図5(a)は照明エリアと緩衝エリアの配置例を示しており、図5(b)は人の移動に対する照明器具の制御状態を示している。
【0030】
ここでは、照明器具Qの照明エリアS内に1人だけ人Uが存在していてQが点灯している初期状態から、UがSから出て照明器具Qの緩衝エリアKを通過してKの外側へ出た場合を想定する。なお、Kにはいずれの人も存在していないものとする。
【0031】
まず、S内の位置P1ではUの存在が検知されておりQが点灯状態に制御されている。SとKとの境界位置P2では、SでのUの存在が検知されなくなるが、KでUの存在が検知されることになるため、Qは直前の制御状態、すなわち点灯状態が維持される。続いて、Kの外側の境界位置P3では、KでのUの存在が検知されなくなるため、Qは消灯状態に制御され、Kの外側位置P4でも同様となる。
【0032】
この後、UがS方向に戻った場合、Kの外側の境界位置P5では、KでのUの存在が検知されるが、Qは直前の制御状態、すなわち消灯状態が維持される。続いて、KとSとの境界位置P6では、KでのUの存在が検知されなくなるが、SでUの存在が検知されることになるため、Qが点灯状態に制御される。
【0033】
これにより、UがSの外側に出てもK内に存在していればQは点灯のままとなり、UがKの外側へ出た時点でQが消灯される。その後、UがKに戻ってもQは消灯のままとなり、UがSに入った時点でQが点灯される。
したがって、S内にいたUがSの境界付近で留まって微妙な動きをしてもQは点灯のままとなる。このため、Qが明滅を繰り返すことはなく、人に不快感を与えることはない。また、UがKの外側に出た時点で直ちにQが消灯されるので、照明自動制御の本来の目的である省エネルギー効果を得ることができる。
【0034】
また、Uが一旦Kの外側に出た場合には、UがKに戻ってもQは点灯しないため、UがKの外側境界付近で留まって微妙な動きをしてもQは消灯のままとなる。このため、Qが明滅を繰り返すことはなく、人に不快感を与えることはない。
さらに、UがSに戻った場合には、Qが直ちに点灯するため、KがSの境界付近で留まって微妙な動きをしてもQは点灯のままとなる。このため、Qが明滅を繰り返すことはなく、人に不快感を与えることはない。
【0035】
[照明制御動作例(隣接または一部重複)]
次に、図6を参照して、本実施の形態にかかる照明制御装置10の動作例として、隣接配置されている照明器具Q1(第1の照明器具),Q2(第2の照明器具)間でそれぞれの緩衝エリアK1(第1の緩衝エリア),K2(第2の緩衝エリア)が隣接または一部重複している場合における照明制御動作について説明する。図6は、照明制御動作例(隣接または一部重複)を示す説明図であり、図6(a)は照明エリアと緩衝エリアの配置例を示しており、図6(b)は人の移動に対する照明器具の制御状態を示している。
【0036】
ここでは、照明器具Q1,Q2間で緩衝エリアK1,K2が隣接配置されているものとし、照明器具Q1の照明エリアS1(第1の照明エリア)内に1人だけ人Uが存在していてQ1が点灯している初期状態から、UがS1から出て照明器具Q1の緩衝エリアK1および照明器具Q2の緩衝エリアK2を通過してQ2の照明エリアS2(第2の照明エリア)へ入った場合を想定する。なお、K1,K2,S2にはいずれの人も存在していないものとし、Q2は消灯しているものとする。
【0037】
まず、S1内の位置P1ではUの存在が検知されておりQ1が点灯状態に制御されている。S1とK1との境界位置P2では、S1でのUの存在が検知されなくなるが、K1でUの存在が検知されることになるため、Q1は直前の制御状態、すなわち点灯状態が維持される。続いて、K1とK2との境界位置P3では、K1でのUの存在が検知されなくなるため、Q1は消灯状態に制御される。一方、K2でUの存在が検知されるが、Q2は直前の制御状態、すなわち消灯状態が維持される。
【0038】
この後、K2とS2の境界位置P4では、K2でのUの存在が検知されなくなるが、S2でUの存在が検知されるため、Q2は点灯状態に制御され、S2内の位置P5でも同様となる。
【0039】
これにより、緩衝エリアK1,K2が隣接している場合に、UがK1の外側に一旦出て再びK1に戻っても、Q1については図5と同様の点灯制御が行われるため、UがS1の境界付近やK1の外側境界付近で留まったとしても、Q1が明滅を繰り返すことはなく、人に不快感を与えることはない。また、UがK1の外側に出た時点で直ちにQ1が消灯されるので、照明自動制御の本来の目的である省エネルギー効果を得ることができる。
【0040】
また、Q1に対する上記照明制御は、Q2に対しても同様に実施されるため、上記と同様の作用効果がQ2でも得られることになる。したがって、Q1,Q2のK1,K2が隣接して配置されている場合でも、両方のQ1,Q2で安定した効果的な照明制御を実現することが可能となるため、対象空間R内で隙間なく緩衝エリアKを設定することができる。
【0041】
なお、隣接する緩衝エリアK1,K2の一部が重複している場合、P3ではなくK2の外側境界G2で、K2でのUの存在が検知されるとともに、P3ではなくK1の外側境界G1で、K1でのUの存在が検知されなくなる。これにより、P3ではなくQ1はG1で消灯状態に制御されるが、K1,K2が重複しない場合と比較して同等な照明制御が行われる。K1,K2の一部が重複配置されている場合でも、両方のQ1,Q2で安定した効果的な照明制御を実現することが可能となるため、対象空間R内で隙間なく緩衝エリアを設定することができる。
【0042】
[照明制御動作例(完全重複)]
次に、図7を参照して、本実施の形態にかかる照明制御装置10の動作例として、隣接配置されている照明器具Q1,Q2間でそれぞれの緩衝エリアK1,K2が完全に重複している場合における照明制御動作について説明する。図7は、照明制御動作例(完全重複)を示す説明図であり、図7(a)は照明エリアと緩衝エリアの配置例を示しており、図7(b)は人の移動に対する照明器具の制御状態を示している。
【0043】
ここでは、照明器具Q1,Q2間で緩衝エリアK1,K2が共用緩衝エリアGで完全に重複して配置されているものとし、照明器具Q1の照明エリアS1内に1人だけ人Uが存在していてQ1が点灯している初期状態から、UがS1から出て照明器具Q1,Q2で共用する共用緩衝エリアGを通過してQ2の照明エリアS2へ入った場合を想定する。なお、G,S2にはいずれの人も存在していないものとし、Q2は消灯しているものとする。
【0044】
まず、S1内の位置P1ではUの存在が検知されておりQ1が点灯状態に制御されている。S1とK1との境界位置P2では、S1でのUの存在が検知されなくなるが、GでUの存在が検知されることになるため、Q1は直前の制御状態、すなわち点灯状態が維持されるとともに、Q2も直前の制御状態、すなわち消灯状態が維持される。
続いて、GとQ2との境界位置P3では、GでのUの存在が検知されなくなるため、Q1は消灯状態に制御される。一方、S2でUの存在が検知されるため、Q2は点灯状態に制御され、S2内の位置P4でも同様となる。
【0045】
これにより、K1,K2が共用緩衝エリアGで完全に重複していて、Q1,Q2でGを自己の緩衝エリアK1,K2として共用する場合、UがGの外側に一旦出て再びGに戻っても、Q1については図5と同様の点灯制御が行われるため、UがS1の境界付近やGの外側境界付近で留まったとしても、Q1が明滅を繰り返すことはなく、人に不快感を与えることはない。また、UがGの外側に出た時点で直ちにQ1が消灯されるので、照明自動制御の本来の目的である省エネルギー効果を得ることができる。
【0046】
また、Q1に対する上記照明制御は、Q2に対しても同様に実施されるため、上記と同様の作用効果がQ2でも得られることになる。したがって、Q1,Q2のGが完全に重複して配置されている場合でも、両方のQ1,Q2で安定した効果的な照明制御を実現することが可能となるため、対象空間R内で極めて効率よく緩衝エリアKを設定することができる。さらに、UがS1からGを経てS2に移動した場合、Q1の消灯とQ2の点灯が同時に制御されるため、Uの移動に合わせて極めてスムーズにQ1,Q2を制御することができる。
【0047】
[第1の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、照明制御部16が、照明エリアSの位置および緩衝エリアKの位置と人検知位置とを比較し、照明エリアSに人Uが存在する場合には照明器具Qを点灯し、照明エリアSおよび緩衝エリアKのいずれにも人Uが存在しない場合には照明器具Qを消灯し、照明エリアSに人Uが存在せず緩衝エリアKに人Uが存在する場合には、直前における照明器具の制御状態を維持するようにしたものである。
【0048】
これにより、人Uが照明エリアSの境界付近や緩衝エリアKの外側境界付近で留まったとしても、照明器具Qが明滅を繰り返すことはなく、人Uに不快感を与えることはない。また、人Uが緩衝エリアKの外側に出た時点で直ちに照明器具Qが消灯されるので、照明自動制御の本来の目的である省エネルギー効果を得ることができる。したがって、無駄な監視時間を必要とすることなく、人検知結果に基づいて照明器具Qを効率よく自動制御することが可能となる。
【0049】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態にかかる照明制御装置10について説明する。
一般に、人検知の結果には誤りが存在するが、この誤りには2種類ある。「人が存在するのに存在しない」とする誤りと、「人が存在しないのに存在する」とする誤りである。たいていの場合、人検知手法のパラメータ、例えば人検知判定の感度に関するパラメータの調整でどちらの傾向にするか調整できる。
【0050】
「感度が低い人検知」とは、「人が存在するのに存在しない」とする誤りがやや大きくなるように調整された人検知である。この調整のとき、逆に、「人が存在しないのに人が存在する」とする誤りは少なくなる。一方「感度が高い人検知」とは、「人が存在しないのに人が存在する」とする誤りがやや大きくなるように調整された人検知である。この調整のとき、逆に、「人が存在するのに存在しない」とする誤りは少なくなる。
【0051】
通常、人検知は1秒間に数回~数十回の頻度で行われる。例えば、人が照明エリアに入ってきた時点で、照明の点灯が必要であることを正確に判定するには、その時点から最初の数秒間に得られた複数の人検知結果のうち、そのすべてで人が存在することを確認する必要はなく、1回でもよいから確実に人が存在することを確認できたほうがよい。逆に、人が存在しないのに誤って存在すると判定し、照明を点灯してしまっては省エネにならない。したがって、照明の点灯が必要かどうかを判定する場合には、「感度が低い人検知」を用いるのがよい。
【0052】
同様に、人が照明エリアQおよび緩衝エリアKからいなくなった時点で、照明の消灯が必要であることを正確に判定するには、その時点から最初の数秒間に得られた複数の人検知結果のうち、そのすべてで人が存在していないことを確認する必要はなく、1回でもよいから確実に人が存在しないことを確認できたほうがよい。逆に、人が存在するのに誤って存在しないと判定し、照明を消灯してしまっては在室者に不快感を与えることになる。したがって、照明の消灯が必要かどうかを判定する場合には、「感度が高い人検知」を用いるのがよい。
【0053】
人検知の感度については、前述したように、人検知手法のパラメータ、例えば人検知判定の感度に関するパラメータの調整でどちらの傾向にするか調整できる。例えば、人検知システム10において、熱画像から熱のかたまりを人として検知する際、その熱のかたまりに関する判定値(評価値)を計算し、予め設定されている閾値と比較することにより、人の存在有無を判定する。したがって、この閾値を変更することにより感度を調整でき、2種類の閾値を用いることにより、感度の異なる人検知位置(人検知結果)を得ることができる。
【0054】
図8は、人検知判定例を示す説明図であり、横軸が時間を示し、縦軸が判定値(評価値)を示している。また、期間Xは、実際に人が存在していない期間を示し、期間Yは、実際に人が存在している期間を示している。
閾値Vを用いて人の存在有無を判定する場合、判定値E≦Vの場合に存在なしと判定し、E>Vの場合に存在ありと判定することになる。したがって、Eに含まれるスパイク状のピーク値がVを超えた場合、期間Xであっても存在ありと誤判定することになる。逆に、Eに含まれるスパイク状のピーク値がV以下となった場合、期間Yであっても存在なしと誤判定することになる。
【0055】
ここで、閾値Vより高い値の閾値Aを用いた場合、期間Xではすべて存在なしと判定され、期間YではEに含まれるスパイク状のピーク値がAを超えた場合、存在ありと判定されることになる。したがって、比較的高い閾値を用いれば検知の感度は低くなり、存在ありを正確に判定することができる。
一方、閾値Vより低い値の閾値Bを用いた場合、期間XではEに含まれるスパイク状のピーク値がB以下となった場合、存在なしと判定され、期間Yではすべて存在ありと判定されることになる。したがって、比較的低い閾値を用いれば人検知の感度は高くなり、存在なしを正確に判定することができる。
【0056】
本実施の形態は、このような技術思想に基づいて、照明制御部16が、照明器具Qの点灯要否を判定する場合、予め設定された第1の感度(閾値Aに相当)で人検知して得られた第1の人検知位置を用いて判定し、照明器具Qの消灯要否を判定する場合、第1の感度より高い第2の検知感度(閾値こに相当)で人検知して得られた第2の人検知位置を用いて判定するようにしたものである。
【0057】
具体的には、照明器具Qの点灯要否を判定する場合、前述した図4のステップ102において、人検知結果として、比較的感度の低い第1の感度で人検知して得られた人検知結果(第1の人検知位置)を用いる。ステップ102での比較の結果、照明エリアS内における人の存在ありが確認された場合(ステップ102:YES)、Qを点灯制御する。これにより、比較的感度の低い第1の感度を用いた「感度が低い人検知」に基づいて、Qの点灯要否が判定されることになり、Qの点灯が必要であることを正確に判定することができる。
【0058】
また、前述した図4のステップ102およびステップ104において、人検知結果として、比較的感度の高い第2の感度で人検知して得られた人検知結果(第2の人検知位置)を用いる。ステップ102での比較の結果、照明エリアS内における人の存在なしが確認され(ステップ102:NO)、続くステップ104での比較の結果、緩衝エリアK内における人の存在なしが確認された場合(ステップ104:NO)、Qを消灯制御する。これにより、比較的感度の高い第2の感度を用いた「感度が高い人検知」に基づいて、Qの消灯要否が判定されることになり、Qの消灯が必要であることを正確に判定することができる。
【0059】
なお、照明エリアSおよび緩衝エリアKにおける人の存在有無を判定する2種類の判定時間に基づいて、照明器具Qの点灯・消灯要否を判定することもできる。
すなわち、照明制御部16が、照明器具Qを点灯する際、予め設定された第1の判定時間だけ連続して照明エリアに人が存在することが確認された場合にQを点灯し、Qを消灯する際、第1の判定時間より長い第2の判定時間だけ連続して照明エリアQおよび緩衝エリアKに人が存在しないことが確認された場合に照明器具を消灯すればよい。
【0060】
具体的には、照明器具Qの点灯要否を判定する場合、前述した図4のステップ102において、比較的短い第1の判定時間だけ連続して照明エリアS内に人が存在することが確認された場合(ステップ102:YES)、Qを点灯制御する。これにより、比較的「感度が低い人検知」と同等の人検知に基づいて、Qの点灯要否が判定されることになり、Qの点灯が必要であることを正確に判定することができる。
【0061】
また、前述した図4のステップ102において、比較的長い第2の判定時間だけ連続して照明エリアS内に人が存在しないことが確認され(ステップ102:NO)、続くステップ104において、比較的長い第2の判定時間だけ連続して緩衝エリアK内に人が存在しないことが確認された場合(ステップ104:NO)、Qを消灯制御する。これにより、比較的「感度が高い人検知」と同等の人検知に基づいて、Qの消灯要否が判定されることになり、Qの消灯が必要であることを正確に判定することができる。
【0062】
[実施の形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0063】
10…照明制御装置、11…通信I/F部、12…操作入力部、13…画面表示部、14…記憶部、15…人検知結果取得部、16…照明制御部、20…人検知システム、SP…赤外線センサ、Q…照明器具、R…対象空間、L1,L2,L3…通信回線、S,S1,S2…照明エリア、K,K1,K2…緩衝エリア、G…共用緩衝エリア。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8