(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】エレベータの制御装置
(51)【国際特許分類】
B66B 1/18 20060101AFI20220111BHJP
B66B 5/00 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
B66B1/18 L
B66B5/00 G
(21)【出願番号】P 2017140837
(22)【出願日】2017-07-20
【審査請求日】2020-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルテクノサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(74)【代理人】
【識別番号】100194939
【氏名又は名称】別所 公博
(74)【代理人】
【識別番号】100206782
【氏名又は名称】佐藤 彰洋
(72)【発明者】
【氏名】秋山 圭輔
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-018585(JP,A)
【文献】特開2009-137684(JP,A)
【文献】特開2015-044668(JP,A)
【文献】特開2014-069954(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00-1/52;
5/00-5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗場操作盤によって発生する乗場呼びをエレベータ号機に割り当てて、複数のエレベータ号機の群管理制御を行うエレベータの制御装置であって、
前記制御装置は、
前記複数のエレベータ号機の中から任意のエレベータ号機である保守号機を保守実施階に呼ぶための保守呼びを発生させる操作が行われた場合、前記保守号機に対して前記保守呼びを割り当て、
前記保守呼びに従って前記保守号機が前記保守実施階に停止した際に、前記保守実施階の前記乗場操作盤によって発生する前記乗場呼びとして、保守実施階乗場呼びが発生していない状態であれば、
前記保守実施階以外の階への前記乗場呼びの有無に関係なく、前記保守号機を前記群管理制御から切り離し、
前記保守呼びに従って前記保守号機が前記保守実施階に停止した際に、前記保守実施階乗場呼びが発生している状態であれば、前記保守号機を切り替え、切り替え後の保守号機に対して前記保守呼びを割り当てる切り替え処理を行い、前記保守実施階乗場呼びが発生していない状態となるまで、前記切り替え処理を繰り返す
エレベータの制御装置。
【請求項2】
乗場操作盤によって発生する乗場呼びをエレベータ号機に割り当てて、複数のエレベータ号機の群管理制御を行うエレベータの制御装置であって、
前記制御装置は、
前記複数のエレベータ号機の中から特定のエレベータ号機である保守号機を保守実施階に呼ぶための保守呼びを発生させる操作が行われた場合、前記保守号機に対して前記保守呼びを割り当て、
前記保守呼びに従って前記保守号機が前記保守実施階に停止した際に、前記保守号機のかご内操作盤によって発生するかご呼びとして、行先階が前記保守実施階である保守実施階かご呼びが発生していない状態であれば、
前記保守実施階以外の階への前記かご呼びの有無に関係なく、前記保守号機のエレベータ扉を閉めた状態を維持し、前記保守号機を前記群管理制御から切り離し、
前記保守呼びに従って前記保守号機が前記保守実施階に停止した際に、前記保守実施階かご呼びが発生している状態であれば、前記保守号機の前記エレベータ扉を開けた後、前記保守号機を前記群管理制御から切り離す
エレベータの制御装置。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記保守呼びに従って前記保守号機が前記保守実施階に停止した際に、前記保守実施階かご呼びが発生している状態であり、かつ、前記保守実施階の前記乗場操作盤によって発生する前記乗場呼びとして、保守実施階乗場呼びが発生している状態であれば、前記保守号機の前記エレベータ扉を開けた後、前記保守号機への利用者の乗車を禁止する乗車禁止処理を行い、前記保守号機を前記群管理制御から切り離す
請求項2に記載のエレベータの制御装置。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記保守号機のかご内に利用者がいないことを確認した場合に、前記乗車禁止処理を行う
請求項3に記載のエレベータの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗場操作盤によって発生する乗場呼びをエレベータ号機に割り当てて、複数のエレベータ号機の群管理制御を行うエレベータの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベータ群管理システムは、乗場に設けられた乗場操作盤によって発生する乗場呼びを適切なエレベータ号機に割り当てて、複数のエレベータ号機を群管理制御するように構成されている(例えば、特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-215605号公報
【文献】特開平9-156842号公報
【文献】特開2009-215045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、エレベータ群管理システムが適用されるエレベータを保守点検する際、保守点検予定のエレベータ号機(以下、保守号機と称す)を、保守点検作業を開始する特定の階床(以下、保守実施階と称す)に停止させる必要がある。なお、保守実施階としては、例えば、建物の最上階が選択される。しかしながら、エレベータ号機の台数によっては、エレベータ利用者の需要に対応するために、保守号機の停止措置を取ることができず、保守号機が常に稼働せざるを得ない状況がある。このような状況において、利用者を配慮することなく、保守号機の停止措置を取って保守点検作業を開始すると、利用者に不快な思いをさせる可能性がある。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、利用者に可能な限り配慮して保守号機を保守実施階に停止させることのできるエレベータの制御装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明におけるエレベータの制御装置は、乗場操作盤によって発生する乗場呼びをエレベータ号機に割り当てて、複数のエレベータ号機の群管理制御を行うエレベータの制御装置であって、制御装置は、複数のエレベータ号機の中から任意のエレベータ号機である保守号機を保守実施階に呼ぶための保守呼びを発生させる操作が行われた場合、保守号機に対して保守呼びを割り当て、保守呼びに従って保守号機が保守実施階に停止した際に、保守実施階の乗場操作盤によって発生する乗場呼びとして、保守実施階乗場呼びが発生していない状態であれば、保守実施階以外の階への乗場呼びの有無に関係なく、保守号機を群管理制御から切り離し、保守呼びに従って保守号機が保守実施階に停止した際に、保守実施階乗場呼びが発生している状態であれば、保守号機を切り替え、切り替え後の保守号機に対して保守呼びを割り当てる切り替え処理を行い、保守実施階乗場呼びが発生していない状態となるまで、切り替え処理を繰り返すものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、利用者に可能な限り配慮して保守号機を保守実施階に停止させることのできるエレベータの制御装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態1におけるエレベータの制御装置を含むエレベータシステムを示す構成図である。
【
図2】本発明の実施の形態1におけるエレベータの制御装置による保守号機の保守実施階への停止動作を示すフローチャートである。
【
図3】本発明の実施の形態2におけるエレベータの制御装置による保守号機の保守実施階への停止動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明によるエレベータの制御装置を、好適な実施の形態にしたがって図面を用いて説明する。なお、図面の説明においては、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0010】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1におけるエレベータの制御装置3を含むエレベータシステムを示す構成図である。
図1に示すエレベータシステムは、乗場操作盤1と、かご内操作盤2と、エレベータの制御装置3を備える。なお、
図1では、制御装置3によって群管理制御される複数台のエレベータ号機として、1号機~4号機の4台のエレベータ号機を図示している。
【0011】
乗場操作盤1は、各エレベータ号機のかごが停止する複数の乗場階の各乗場に設置されている。乗場操作盤1は、利用者が操作することで乗場呼びを発生させる。乗場に設置されている乗場操作盤1によって乗場呼びが発生すると、後述する制御装置3は、その乗場呼びに応答して、その乗場にかごを配車する。
【0012】
乗場操作盤1は、例えば、利用者が乗車するかごの走行方向を示す上方向釦および下方向釦を有するように構成すればよい。例えば、利用者の行先階が乗場階よりも上方の階床であれば、利用者は、乗場操作盤1の上方向釦を押すことで乗場呼びを発生させる。その後、利用者は、この乗場呼びに対して割り当てられたエレベータ号機のかごに乗車することができる。
【0013】
かご内操作盤2は、各エレベータ号機のかご内に設置されている。かご内操作盤2は、かご内の利用者が操作することでかご呼びを発生させる。かご内に設置されているかご内操作盤2のかご呼びが発生すると、後述する制御装置3は、そのかご呼びに応答して、かごを行先階に走行させて停止させる。
【0014】
かご内操作盤2は、例えば、利用者が乗車するかごの行先階を示す行先階釦を有するように構成すればよい。例えば、利用者の行先階が10階であれば、利用者は、かご内操作盤2の10階に対応する行先階釦を押すことでかご呼びを発生させる。その後、かごは、10階に走行して停止するので、利用者は、行先階の10階で降車することができる。
【0015】
制御装置3は、例えば、演算処理を実行するマイクロコンピュータと、プログラムデータ、固定値データ等のデータを記憶するROM(Read Only Memory)と、格納されているデータを更新して順次書き換えられるRAM(Random Access Memory)によって実現される。
【0016】
制御装置3には、乗場操作盤1によって発生する乗場呼びと、かご内操作盤2によって発生するかご呼びが入力される。制御装置3は、乗場操作盤1によって発生する乗場呼びを複数のエレベータ号機の中の適切なエレベータ号機に割り当てることでその号機のかごを乗場に配車する群管理制御を行う。また、制御装置3は、かご内操作盤2によって発生するかご呼びに対応する行先階にかごを走行させ停止させる。
【0017】
制御装置3は、上記のような制御の他に、一般的なエレベータシステムに具備される各種機器(図示せず)の動作を制御する。
【0018】
次に、制御装置3による保守号機の保守実施階への停止動作について、
図2を参照しながら説明する。
図2は、本発明の実施の形態1におけるエレベータの制御装置3による保守号機の保守実施階への停止動作を示すフローチャートである。
【0019】
ステップS101において、制御装置3は、任意の保守号機を保守実施階に呼ぶための保守呼びが発生しているか否かを判断する。
【0020】
ここで、保守呼びについて説明する。保守呼びとは、複数のエレベータ号機の中から任意のエレベータ号機である保守号機を保守実施階に呼ぶための呼びであり、保守点検作業を行う作業員の特定の操作によって発生するものである。作業員は、保守点検したい号機の指定がない場合、すなわち、任意の号機を保守点検したい場合、保守呼びを発生させる操作を行い、保守呼びを発生させる。
【0021】
なお、上記の保守呼びを発生させる構成としては、どのような構成であってもよいが、例えば、保守実施階の乗場に設置されている乗場操作盤1を作業員が操作することで保守呼びを発生させる構成とすればよい。具体的には、保守実施階の乗場操作盤1に設けられる釦(上方向釦、下方向釦)が押されるパターンが特定のパターン(例えば、釦の長押しが2回実行されるパターン)であれば、保守呼びが発生するようにすればよい。
【0022】
ただし、釦が押されるパターンだけで保守呼びが発生するようにすると、作業員だけでなく利用者も保守呼びを発生可能となる。そこで、エレベータの機械室に設けられる各号機のメンテナンススイッチを作業員がすべてオンに切り替えたことを条件として、釦が押されるパターンが特定のパターンであれば、保守呼びを発生するようにしてもよい。これにより、作業員だけが保守呼びを発生可能なようにすることができる。
【0023】
図2の説明に戻り、ステップS101において、制御装置3は、保守呼びが発生している(すなわち、Yes)と判断した場合には、処理がステップS102へと進む。一方、制御装置3は、保守呼びが発生していない(すなわち、No)と判断した場合には、再びステップS101の処理を実行する。つまり、保守呼びが発生するまで、制御装置3は、ステップS101の処理を繰り返す。
【0024】
ステップS102において、制御装置3は、保守呼びを、複数のエレベータ号機の中の任意のエレベータ号機に割り当て、処理がステップS103へと進む。
【0025】
なお、任意のエレベータ号機に保守呼びを割り当てる構成としては、どのような構成であってもよいが、例えば、複数のエレベータ号機の中で、保守実施階にかごが到着する到着時間が最短のエレベータ号機に保守呼びを割り当てる構成とすればよい。
【0026】
このように、制御装置3は、保守呼びを発生させる操作が行われた場合、保守号機に対して保守呼びを割り当てるように構成されている。
【0027】
ステップS103において、制御装置3は、保守呼びに従って保守号機を保守実施階に停止させた際に、保守実施階乗場呼びが発生している状態であるか否かを判断する。
【0028】
ここで、保守実施階乗場呼びについて説明する。保守実施階乗場呼びとは、保守実施階の乗場に設置されている乗場操作盤1によって発生する乗場呼びである。つまり、保守実施階の乗場操作盤1を利用者が操作すれば、保守実施階乗場呼びが発生する。
【0029】
ステップS103において、制御装置3は、保守実施階乗場呼びが発生していない状態である(すなわち、No)と判断した場合には、処理がステップS104へと進む。一方、制御装置3は、保守実施階乗場呼びが発生している状態である(すなわち、Yes)と判断した場合には、処理がステップS105へと進む。
【0030】
ステップS104において、制御装置3は、保守実施階に停止している保守号機を群管理制御から切り離し、保守号機の運転モードを独立運転モードとし、処理が終了となる。保守号機が独立運転モードとなれば、保守号機が群管理制御されなくなり、作業員が保守号機のかごに乗車して、保守点検作業が開始される。
【0031】
このように、制御装置3は、保守呼びに従って保守号機が保守実施階に停止した際に、保守実施階の乗場操作盤1によって発生する乗場呼びとして、保守実施階乗場呼びが発生していない状態であれば、保守号機を群管理制御から切り離すように構成されている。
【0032】
ステップS105において、制御装置3は、保守号機を現在の保守号機から別のエレベータ号機に切り替え、切り替え後の保守号機に対して保守呼びを割り当てる切り替え処理を行い、処理がステップS103へと戻る。この場合、ステップS103以降の処理が再度行われる。
【0033】
ここで、保守号機の切り替え処理について説明する。保守実施階乗場呼びが発生している状態である場合、利用者がかごに乗車するため、保守実施階の乗場でかごの到着を待っていると考えられる。このような場合において、利用者の目の前で、保守号機が保守実施階に停止し、保守点検作業を開始すると、利用者に不快な思いをさせる可能性がある。そこで、このような場合には、現在の保守号機での保守点検作業を開始せずに、その保守号機を利用者が利用可能なようにする。
【0034】
また、保守号機を現在の保守号機から別のエレベータ号機に切り替え、切り替え後の保守号機を保守実施階に停止させて、保守実施階乗場呼びが発生していない状態となるまで、保守号機を切り替える処理を繰り返す。このようにすることで、保守実施階で待機する利用者がいなくなってはじめて、その時点の保守号機での保守点検作業を開始するようにすることができる。
【0035】
なお、保守号機を現在の保守号機から別のエレベータ号機に切り替える構成としては、どのような構成であってもよいが、例えば、複数のエレベータ号機から現在の保守号機を除いた残りのエレベータ号機の中で、保守実施階にかごが到着する到着時間が最短のエレベータ号機に切り替える構成とすればよい。
【0036】
このように、制御装置3は、保守呼びに従って保守号機が保守実施階に停止した際に、保守実施階乗場呼びが発生している状態であれば、保守号機を切り替え、切り替え後の保守号機に対して保守呼びを割り当てる切り替え処理を行い、保守実施階乗場呼びが発生していない状態となるまで、切り替え処理を繰り返すように構成されている。
【0037】
以上、本実施の形態1におけるエレベータの制御装置によれば、保守呼びに従って保守号機が保守実施階に停止した際において、保守実施階乗場呼びが発生していない状態であれば、保守号機を群管理制御から切り離し、保守実施階乗場呼びが発生している状態であれば、切り替え処理を行い、保守実施階乗場呼びが発生していない状態となるまで、切り替え処理を繰り返すように構成されている。これにより、利用者に可能な限り配慮して保守号機を保守実施階に停止させることができる。
【0038】
実施の形態2.
先の実施の形態1では、エレベータ号機を保守点検する際に任意の保守号機を保守実施階に呼ぶための保守呼びを発生させるように構成されたエレベータシステムについて説明した。これに対して、本発明の実施の形態2では、エレベータ号機を保守点検する際に特定の保守号機を保守実施階に呼ぶための保守呼びを発生させるように構成されたエレベータシステムについて説明する。なお、本実施の形態2では、先の実施の形態1と同様である点の説明を省略し、先の実施の形態1と異なる点を中心に説明する。
【0039】
図3は、本発明の実施の形態2におけるエレベータの制御装置3による保守号機の保守実施階への停止動作を示すフローチャートである。なお、本実施の形態2における制御装置3を含むエレベータシステムの構成は、先の
図1の構成と同様である。
【0040】
ステップS201において、制御装置3は、特定の保守号機を保守実施階に呼ぶための保守呼びが発生しているか否かを判断する。
【0041】
ここで、実施の形態2における保守呼びについて説明する。実施の形態2における保守呼びとは、複数のエレベータ号機の中から特定のエレベータ号機である保守号機を保守実施階に呼ぶための呼びであり、保守点検作業を行う作業員の特定の操作によって発生するものである。作業員は、保守点検をしたい号機の指定がある場合、すなわち、特定の号機を保守点検したい場合、保守呼びを発生させる操作を行い、保守呼びを発生させる。
【0042】
なお、上記の保守呼びを発生させる構成としては、どのような構成であってもよいが、例えば、保守実施階の乗場に設置されている乗場操作盤1を作業員が操作することで保守呼びを発生させる構成とすればよい。具体的には、保守実施階の乗場操作盤1に設けられる釦(上方向釦、下方向釦)が押されるパターンが特定のパターン(例えば、1回目の釦の長押しが実行された後、特定の号機に対応する回数だけ釦が押され、2回目の釦の長押しが実行されるパターン)であれば、保守呼びが発生するようにすればよい。例えば、作業員は、保守号機として3号機を保守実施階に呼びたい場合には、1回目の釦の長押しを実行し、釦を3回押し、2回目の釦の長押しを実行する。
【0043】
ただし、釦が押されるパターンだけで保守呼びが発生するようにすると、作業員だけでなく利用者も保守呼びを発生可能となる。そこで、保守号機として保守実施階に呼びたいエレベータ号機のメンテナンススイッチを作業員がオンに切り替えたことを条件として、釦が押されるパターンが特定のパターンであれば、保守呼びを発生するようにしてもよい。これにより、作業員だけが保守呼びを発生可能なようにすることができる。
【0044】
図3の説明に戻り、ステップS201において、制御装置3は、保守呼びが発生している(すなわち、Yes)と判断した場合には、処理がステップS202へと進む。一方、制御装置3は、保守呼びが発生していない(すなわち、No)と判断した場合には、再びステップS201の処理を実行する。つまり、保守呼びが発生するまで、制御装置3は、ステップS201の処理を繰り返す。
【0045】
ステップS202において、制御装置3は、保守呼びを、複数のエレベータ号機の中の特定のエレベータ号機に割り当て、処理がステップS203へと進む。保守号機に保守呼びが割り当てられれば、その保守号機に保守実施階乗場呼びが新たに割り当てられることはない。また、保守実施階乗場呼びがすでに割り当てられている保守号機に保守呼びが割り当てられれば、その保守実施階乗場呼びはキャンセルされ、別のエレベータ号機に割り当てられる。
【0046】
ステップS203において、制御装置3は、保守呼びに従って保守号機を保守実施階に停止させた際に、保守実施階かご呼びが発生している状態であるか否かを判断する。
【0047】
ここで、保守実施階かご呼びについて説明する。保守実施階かご呼びとは、保守号機のかご内操作盤2によって発生する行先階が保守実施階であるかご呼びである。つまり、行先階が保守実施階である利用者がかご内操作盤2を操作すれば、保守実施階かご呼びが発生する。
【0048】
ステップS203において、制御装置3は、保守実施階かご呼びが発生していない状態である(すなわち、No)と判断した場合には、処理がステップS204へと進む。一方、制御装置3は、保守実施階かご呼びが発生している状態である(すなわち、Yes)と判断した場合には、処理がステップS205へと進む。
【0049】
ステップS204において、制御装置3は、保守実施階に停止している保守号機のエレベータ扉を閉めた状態を維持し、保守号機を群管理制御から切り離し、保守号機の運転モードを独立運転モードとし、処理が終了となる。
【0050】
なお、保守実施階かご呼びが発生していない状態であっても、かご内に利用者がいる可能性がある。そこで、制御装置3は、かご内に利用者がいないことを確認したことを条件として、エレベータ扉を閉めた状態を維持するように構成されていてもよい。かご内に利用者がいないことを確認する方法としては、公知の方法を適用すればよく、例えば、エレベータ号機の秤装置によって計測される秤値を確認する方法、かご内のカメラによって撮像されたかご内の画像を確認する方法等が挙げられる。
【0051】
このように、制御装置3は、保守呼びに従って保守号機が保守実施階に停止した際に、保守号機のかご内操作盤2によって発生するかご呼びとして、行先階が保守実施階である保守実施階かご呼びが発生していない状態であれば、保守号機のエレベータ扉を閉めた状態を維持し、保守号機を群管理制御から切り離すように構成されている。
【0052】
ステップS205において、制御装置3は、保守呼びに従って保守号機を保守実施階に停止させた際に、保守実施階乗場呼びが発生している状態であるか否かを判断する。
【0053】
ステップS205において、制御装置3は、保守実施階乗場呼びが発生していない状態である(すなわち、No)と判断した場合には、処理がステップS206へと進む。一方、制御装置3は、保守実施階乗場呼びが発生している状態である(すなわち、Yes)と判断した場合には、処理がステップS207へと進む。
【0054】
ステップS206において、制御装置3は、保守実施階に停止している保守号機のかご内の利用者を保守実施階で降車させるために、保守号機のエレベータ扉を開け、保守号機を群管理制御から切り離し、保守号機の運転モードを独立運転モードとし、処理が終了となる。
【0055】
このように、制御装置3は、保守呼びに従って保守号機が保守実施階に停止した際に、保守実施階かご呼びが発生している状態であれば、保守号機のエレベータ扉を開けた後、保守号機を群管理制御から切り離すように構成されている。
【0056】
ステップS207において、制御装置3は、保守実施階に停止している保守号機のエレベータ扉を開け、乗車禁止処理を行い、保守号機を群管理制御から切り離し、保守号機の運転モードを独立運転モードとし、処理が終了となる。保守呼びに従って保守号機を保守実施階に停止させた際に発生している保守実施階乗場呼びは、保守号機とは別のエレベータ号機に割り当てられる。結果として、その別のエレベータ号機のかごが保守実施階に到着する。
【0057】
ここで、乗車禁止処理について説明する。保守実施階かご呼びが発生している状態である場合、保守号機のかご内の利用者が保守実施階で降車するため、エレベータ扉を開ける必要がある。この場合、さらに、保守実施階乗場呼びが発生している状態であれば、かご内の利用者が保守実施階で降車した後、保守実施階の乗場でかごの到着を待っている利用者が保守号機に乗車する可能性がある。そこで、このような場合には、保守号機に利用者が乗車しないようにする乗車禁止処理が行われる。
【0058】
なお、制御装置3は、乗車禁止処理として、例えば、保守号機のエレベータ扉を閉める制御、保守号機のかご内の照明を消す制御、保守号機のかご内のスピーカから乗車を禁止する旨の音声アナウンスを行う制御等を行う。
【0059】
なお、制御装置3は、かご内に利用者がいないことを確認したことを条件として、乗車禁止処理を行うように構成されていてもよい。かご内に利用者がいないことを確認する手法としては、上述したとおり、公知の方法を適用すればよく、例えば、エレベータ号機の秤装置によって計測される秤値を確認する方法、かご内のカメラによって撮像されたかご内の画像を確認する方法等が挙げられる。このように、制御装置3は、保守号機のかご内に利用者がいないことを確認した場合に、乗車禁止処理を行うように構成されていてもよい。
【0060】
このように、制御装置3は、保守呼びに従って保守号機が保守実施階に停止した際に、保守実施階かご呼びが発生している状態であり、かつ、保守実施階の乗場操作盤1によって発生する乗場呼びとして、保守実施階乗場呼びが発生している状態であれば、保守号機のエレベータ扉を開けた後、保守号機への利用者の乗車を禁止する乗車禁止処理を行い、保守号機を群管理制御から切り離すように構成されている。
【0061】
以上、本実施の形態2におけるエレベータの制御装置によれば、保守呼びに従って保守号機が保守実施階に停止した際において、保守実施階かご呼びが発生している状態であり、かつ、保守実施階乗場呼びが発生している状態であれば、保守号機のエレベータ扉を開けた後、保守号機への利用者の乗車を禁止する乗車禁止処理を行い、保守号機を群管理制御から切り離すように構成されている。これにより、先の実施の形態1と同様に、利用者に可能な限り配慮して保守号機を保守実施階に停止させることができる。
【符号の説明】
【0062】
1 乗場操作盤、2 かご内操作盤、3 エレベータの制御装置。