(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】自転車用ダイナモ
(51)【国際特許分類】
B62M 6/45 20100101AFI20220111BHJP
B60L 7/12 20060101ALI20220111BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20220111BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
B62M6/45
B60L7/12 Q
B60L50/60
B60L15/20 J
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017141247
(22)【出願日】2017-07-20
【審査請求日】2020-03-06
(31)【優先権主張番号】102016000080022
(32)【優先日】2016-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】517255898
【氏名又は名称】ゼフス ソシエタ ペル アチオニ
【氏名又は名称原語表記】ZEHUS S.p.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100149249
【氏名又は名称】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】パウロ リサンチ
(72)【発明者】
【氏名】マルセロ セガト
(72)【発明者】
【氏名】ジョバンニ アリ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエレ ベッレッタ
(72)【発明者】
【氏名】パウロ ジュディチ
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-512825(JP,A)
【文献】特開2012-76579(JP,A)
【文献】特開2006-15887(JP,A)
【文献】特開2010-30539(JP,A)
【文献】特開2015-109798(JP,A)
【文献】特開2004-359034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 1/00- 29/02
B62J 6/12
B62J 43/20
B62J 43/28
B60L 1/00- 3/12
B60L 7/00- 13/00
B60L 15/00- 58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車のホイール(3)に接続可能なハブダイナモ(1)であって、
発電機またはモーターとして択一的に作動可能な電気機械(2)と、
前記電気機械(2)とエネルギー交換することができるように前記電気機械(2)に接続された1つ以上のバッテリー(4)と、
前記自転車のホイール(3)に一体的に接続されるとともに前記電気機械(2)および前記1つ以上のバッテリー(4)を収容する閉鎖体であって、当該閉鎖体は、前記バッテリーを外部エネルギー源に接続するコネクタを有さず、それにより、前記バッテリーは前記自転車のホイール(3)の回転により発電機として作動する前記電気機械(2)によってのみ再充電可能である閉鎖体と、
第一
作動モードおよび第二
作動モードに従って前記電気機械(2)に命令するよう構成された制御ユニット(6)と、
前記1つ以上のバッテリー(4)の充電状態(SOC)を検出するセンサーであって、当該センサーは、前記制御ユニット(6)に接続されるとともに、前記1つ以上のバッテリー(4)の前記充電状態の代表的信号を生成するのに適しているセンサーとを有し、
前記制御ユニット(6)は、
前記第一
作動モードでは、前記電気機械(2)が発電機として作動し、前記電気機械は、前記1つ以上のバッテリー(4)に充電するために、前記ホイールの回転機械エネルギーを電気エネルギーに変換することができ、前記第一
作動モードは、第一
エネルギー回収レベルおよび第二
エネルギー回収レベルに従って前記制御ユニット(6)によってさらに構成することができ、同じ
速度状態下で、前記第一
エネルギー回収レベルに従った回収動力は前記第二
エネルギー回収レベルに従った回収動力未満であり、
前記第二
作動モードでは、前記電気機械(2)がモーターとして作動し、前記電気機械は、前記1つ以上のバッテリー(4)からエネルギーを引き出すことにより前記自転車のホイールに追加の動力を伝達することができる
ように前記電気機械(2)に命令するよう構成され、
前記第一
作動モードおよび
前記第二
作動モードの間および/または前記第一
エネルギー回収レベルおよび
前記第二エネルギー回収レベルの間での選択は、適当なセンサーからの信号に基づき、前記制御ユニットによって少なくとも一部自動的に行うことができ、
および/または、
1つ以上のコマンド部材(7)が前記制御ユニット(6)に接続され、前記コマンド部材(7)は、ユーザーが、
前記第一
作動モードおよび
前記第二作動モードの間および/または前記第一作動モードにおける前記第一
エネルギー回収レベルおよび
前記第二
エネルギー回収レベルの間で選択するための命令をすることができ、
前記制御ユニット(6)は、同じ
速度状態下で、前記1つ以上のバッテリー(4)の充電レベルが減少するにつれて前記回収動力が増加するように、前記第一
作動モードに従って前記電気機械(2)に命令するよう構成された、ハブダイナモ。
【請求項2】
前記自転車のホイールの速度(ω
v)を検出するセンサーを有し、当該センサーは、前記制御ユニット(6)に接続されるとともに、前記自転車のホイールの前記速度の代表的信号を生成するのに適している、請求項1に記載のハブダイナモ(1)。
【請求項3】
前記制御ユニット(6)は、前記自転車のホイールの前記速度が増加するにつれて前記回収動力が増加するように、前記第一作動モードに従って前記電気機械(2)に命令するよう構成されている、請求項2に記載のハブダイナモ(1)。
【請求項4】
前記自転車のケイデンス(ω
p)を検知するためのセンサーを有し、当該センサーは前記制御ユニット(6)に接続されるとともに、前記ケイデンスの代表的信号を生成するのに適しており、
前記制御ユニット(6)は、前記回収動力が前記ケイデンスに応じて修正されるように前記第一作動モードに従って、および/または、供給動力が前記ケイデンスに応じて修正されるように前記第二作動モードに従って、前記電気機械(2)に命令するよう構成された、請求項1~3に記載のハブダイナモ(1)。
【請求項5】
前記制御ユニット(6)は、回収動力が前記1つ以上のバッテリー(4)の前記充電レベル(SOC)から独立するように、前記第一
作動モードの前記第二
エネルギー回収レベルに従って前記電気機械(2)に命令するよう構成された、請求項1に記載のハブダイナモ(1)。
【請求項6】
前記制御ユニット(6)は、同じ自転車の作動状態下で、前記1つ以上のバッテリー(4)の前記充電レベル(SOC)が減少するにつれて前記電気機械(2)から供給される前記追加動力が減少するように、前記第二
作動モードに従って前記電気機械(2)に命令するよう構成された、請求項1に記載のハブダイナモ(1)。
【請求項7】
前記制御ユニット(6)は、前記バッテリー(4)の前記充電レベル(SOC)の閉ループ制御をするよう構成された、請求項1に記載のハブダイナモ(1)。
【請求項8】
前記制御ユニット(6)は、前記電気機械(2)が前記第二作動モー
ドに設定された際、前記電気機械(2)が前記第一作動モー
ドから前記第二作動モー
ドに移行する前の所定の時間にわたって前記第一作動モードに設定された際に前記バッテリー(4)に蓄えられたエネルギー量以下のエネルギー量を、前記バッテリー(4)から引き出すようよう構成された、請求項1に記載のハブダイナモ(1)。
【請求項9】
該ダイナモはさらに、外部装置(5)と接続するための1つ以上の出力口を有し、前記1つ以上の出力口は、発電機として作動する前記電気機械(2)および/または前記1つ以上のバッテリ(4)によって、重要機器(5’)に動力供給するための1つ以上の第一出力口と、前記1つ以上のバッテリー(4)によって非重要機器(5”)に動力供給するための1つ以上の第二出力口とを有する、請求項1に記載のハブダイナモ(1)。
【請求項10】
前記制御ユニット(6)は、前記第一
エネルギー回収レベルに設定された前記第一作動モードが、前記電気機械(2)の通常の作動モードであるよう構成された、請求項1に記載のハブダイナモ(1)。
【請求項11】
前記電気機械(2)は、前記第一作動モードの前記第一
エネルギー回収レベルおよび
前記第二
エネルギー回収レベルの間で漸進的かつ連続的に切替が可能である、請求項1に記載のハブダイナモ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車用のダイナモに関し、いわゆる「ハブダイナモ」タイプにより例示的かつ非限定的に説明するものである。
【背景技術】
【0002】
通常フロントホイールの回転によって生成される機械的エネルギーを、例えば自転車のランプに供給する電気エネルギーに変換するために、ダイナモとして知られる装置を備えた自転車が知られている。
【0003】
標準的なダイナモは内部にオルタネータを収容した円筒形のケースを有し、そのシャフトはケースから突出し、自転車のホイールにその外周に沿って順次接触することで当該外周上で回転する接触要素によって回転させられる。オルタネータによって生成された電流は、例えば転換器によって直流に変換され、そして例えば自転車のライトに動力供給する。
【0004】
さらに、自転車のホイールのハブに直接取り付けられハブの周りでホイールと一体的に回転する、いわゆる「ハブダイナモ」タイプのダイナモが提案されてきた。そのようなハブダイナモは内部にホイールの回転により交流を発生する発電機を有し、そしてこの電流は、自転車のライトまたは場合によっては例えばスマートフォンのような外部装置の供給に用いられる。標準的なダイナモと比較して、ハブダイナモは、一般により小さい転がり抵抗を生成するので、サイクリストにとって要する労力はより少ない。しかしながら、このハブダイナモもまた、ホイール速度に比例しさらに当該ホイール速度によって動力供給される機器の数に応じて増加する、無視できない程度の転がり抵抗を生成する。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、従来技術のダイナモよりも優れたエネルギー効率を有し、さらにサイクリストの平均労力を従来技術のダイナモ未満のレベルにし得る自転車用ダイナモの利用を可能にすることである。
【0006】
この目的および他の目的は、請求項1に記載の自転車用ダイナモによって達成される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明のダイナモの作動を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るダイナモの制御ユニットの作動を示すブロック図である。
【
図3】ダイナモが関連付けられた自転車の速度に応じて、本発明のダイナモによる回収動力Pの可能な傾向を示す図である。
【
図4】さらに可能な作動モードに従い、ダイナモの電池の充電状態SOCに応じて、本発明のダイナモによる回収動力の変調の代表補正係数Rの傾向例を示す図である。
【
図5】さらに可能な作動モードに従い、ダイナモの電池の充電状態SOCに応じて、本発明のダイナモによる回収動力の変調の代表補正係数Rの傾向例を示す図である。
【
図6】さらに可能な作動モードに従い、ダイナモの電池の充電状態SOCに応じて、本発明のダイナモによる供給動力の変調の代表補正係数Rの傾向例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のより良い理解とその利点の認識のため、以下、いくつかの例示的および非限定的な実施形態について添付の図面を参照しながら述べる。
【0009】
図1のブロック図を参照すると、自転車用のダイナモは参照符号1によって示されている。ダイナモは、例示的かつ非限定的にハブタイプであってよく、自転車のホイール3、例えば自転車のフロントホイールに、接続されるように適合される。このため、ダイナモ1は、例えばダイナモ自体を作動させるのに必要な手段を内部に受け入れられる閉鎖体(図示せず)を有してもよい。閉鎖体は、自転車のホイール3と回転的、一体的に接続可能である。例えば、このため、閉鎖体は自転車のホイール3のスポークと結合されるための適切な穴を有してもよい。閉鎖体は、ホイールと共に回転することができるように、ダイナモが接続されるホイールのハブに回転的に取り付けられ得る。
【0010】
閉鎖体が設けられている場合、閉鎖体が、そしてより一般的にはダイナモ1自体が、自転車のペダルおよびチェーンから(または、より一般的には、ペダルを駆動ホイールに接続する伝動要素から)機械的に分離されることが認められる。なぜなら、ダイナモ1が自転車のペダルおよびチェーンと直接相互作用するものではないからであり、したがってダイナモ1はフリーホイール等のようにダイナモ1を自転車のペダルおよびチェーンに接続する機構を持たない。
【0011】
好ましくは、ダイナモ1は閉鎖体の内部に、発電機として、または以下でより詳細に述べるようにモーターとしても作動できる電気機械2を有する。自転車のホイール3の回転がステータに対するロータの回転に変えられ結果的に交流が生成されるよう、特に、電気機械2はホイール3と一体的に回転可能なロータ(なぜならまたホイール3は、例えば、閉鎖体と一体であるため)と、ハブと一体のステータとを有することができる。機械的エネルギー(ホイール回転による運動エネルギー)を電気エネルギーに変換することは自転車の転がり抵抗を引き起こし、これはペダルを漕ぐサイクリストによって知覚される。例えば、電気機械2は発電機としても、またモーターとしても作動可能なブラシレスモーターを有してもよい。
【0012】
ダイナモ1が電気機械2に接続された1つ以上のバッテリー4を有することにより、電気機械2が発電機として作動する場合に、ホイール3の回転により、バッテリー4はこの電気機械2によって再充電され得る。好ましくは、バッテリー4もまた閉鎖体内部に収められる。
【0013】
さらに、以下でより詳細に説明するように、バッテリー4がまた電気エネルギーを電気機械2に供給し、電気機械2はモーターとして作動できる。
【0014】
有利には、ダイナモ1はバッテリーを外部エネルギー源に接続するコネクタを有さないので、バッテリー4は自転車のホイールの回転により発電機として作動する電気機械2によってのみ再充電されることが認められる。
【0015】
自転車の前部および/または後部ランプ、スマートフォン等の装置、またはサイクリストのバイオメトリックパラメータ(心拍数等)の検出器等の外部装置5はダイナモ1に接続することができ、このためダイナモ1はそれらと電気的に接続する適当な出力口を有する。好ましくは、ダイナモ1はいわゆる重要機器5’に動力供給する1つ以上の出力口と非重要機器5”に動力供給する1つ以上の出力口とを特に有する。重要機器はバッテリー4が完全に放電された場合にダイナモ1に電気的に動力供給されなくてはならない外部装置であり(例えば、自転車のランプ)、従って、重要機器はバッテリー4だけでなく発電機として作動する場合の電気機械2によってもまた直接的に動力供給され得る。非重要機器は、自転車の安全な運転を妨げない電気装置である(例えば、スマートフォン)。これらはバッテリー4によってのみ動力供給されるので、バッテリーが完全に放電されると、エネルギーを受け取ることができない。
【0016】
図1は、ホイール3、電気機械2、バッテリー4、重要機器5’および非重要機器5”の間の可能なエネルギーの流れ方向の概略図である。
【0017】
上述のエネルギーの流れを制御するため、またサイクリストがそれらに作用することを可能にするためにダイナモ1は
図2に概略的に示される制御ユニット6を有する。
【0018】
図2を参照すると、制御ユニット6は、2つの異なるモードに従って電気機械2に命令するよう構成されている。
【0019】
第一モードによれば、電気機械2は発電機として作動するように、つまり自転車のホイールの回転によって生成された機械的エネルギーの一部を回収するように命令される。このようなエネルギーは、発電機として作動する電気機械2によって電気エネルギーに変換され、バッテリー4に蓄えられる。なお、そのような第一モードは少なくとも2つの異なる回収レベルに従って設定され得る。第一回収レベルに従うと、発電機として作動する電気機械2による回収動力は低く維持され、この方法により電気機械による転がり抵抗もまた低くなる。この設定は、例えば、サイクリストがペダルを漕いでいる時または漕いでいない時に自転車が標準的な前進状態下にいる間維持され得る。代わりに第二回収レベルに基づくと、発電機として作動する電気機械2による回収動力量は、第一レベルの回収動力量超で維持される(同じ自転車の運動状態、特に同じ速度状態において)。電気機械による前進抵抗もまた明らかに増加させる当該設定は、サイクリストが追加の労力を感じないように、例えば自転車が下り道を進むときおよび/または制動時、つまりサイクリストがペダルを漕いでいないときにエネルギーを回収するため利用可能である。
【0020】
代わりに、第二モードに従い、電気機械2はモーターとして作動するように命令される。したがって、ダイナモ1は、エネルギーを蓄えるだけでなく、サイクリストが必要とする場合に追加の動力供給をするためにも使用される。この場合、モーターとして作動する電気機械2に供給するためのエネルギーは、バッテリー4から引き出される。
【0021】
サイクリストが第一作動モード(MOD1)と第二作動モード(MOD2)との間で選択できるように、また第一モードの場合には、第一エネルギー回収レベル(LEV1)と第二エネルギー回収レベル(LEV2)との間で選択できるように、制御ユニット6は1つ以上のコマンド部材7、またはより一般的には、人間‐機械インターフェースユニットに接続され得る。例えば、第一および第二作動モード間を選択するための第一レバーが設けられてもよいし、第一モードが選択された場合、第一および第二エネルギー回収レベル間を選択するための第二レバー(または、さらなる位置に移動可能な同じ第一レバー)を設けてもよい。さらなる代替案として、第一モードの第一および第二レベルは、サイクリストの制動行為に関連し得る。例えば、制動行為が検出されたときに制御ユニットにパルスを伝達するセンサーを制動レバーに関連付けることができ、当該センサーは第一レベルから第二レベルへの切り替えを示す。またさらに、ペダルには、サイクリストの後退ペダル推力を検出するよう適合されたセンサーを関連付けることができ、この後退ペダル推力はエネルギー回収要求として理解されるため、センサーはまた制御ユニット6にパルスを伝達することができ、制御ユニット6はエネルギーが回収されるよう第二回収エネルギーレベルを選択する。さらに別の代替案によれば、制御装置6に接続されるとともに制御ユニット6とのインターフェースとなることができるアプリケーションを搭載したスマートフォン等の外部装置を用いてサイクリストに上記1つ以上の選択は命令され得る。さらなる変形例によれば、第一作動モード(MOD1)と第二作動モード(MOD2)との間および/または第一エネルギー回収レベル(LEV1)と第二エネルギー回収レベル(LEV2)との間の選択は、適当なセンサーからの信号に基づき、制御ユニット6によって少なくとも一部自動的に行われ得る(例えば、スロープセンサーは第一作動モードの第二レベルを起動する状態に対応し得る下降状態、または第二作動モードを起動する状態に対応し得る上昇状態を示してもよい)。
【0022】
好ましくは、第一エネルギー回収レベルに設定された第一作動モードは電気機械の標準作動モードであることが認められる。つまり、制御ユニット6は、サイクリストからの指示またはセンサーからの具体的な信号なしに、第一作動モードの第一回収レベルに従って電気機械に命令する。
【0023】
さらに、第一作動モードの2つのエネルギー回収レベルが設けられ得ることが認められる。可能な実施形態によれば、制御ユニット6はおそらくは中間レベルに設定することによって、第一エネルギー回収レベルから第二エネルギー回収レベルまで漸進的かつ連続的に切り替えるよう電気機械2に命令するように構成され、そして逆の場合も同様である。このために、例えば、命令部材は第一回収レベルに対応する第一位置と、中間エネルギー回収レベルに対応する中間位置を通り、第二回収レベルに対応する第二位置との間で連続的に切り替え可能な電気レバーを有してもよい。
【0024】
次に、制御ユニット6によって行われる電気機械2の異なる作動モードについて述べる。
【0025】
第一モード、第一レベル:エネルギー回収、低抵抗
このモードによれば、発電機として作動する電気機械2による回収エネルギーは、乗物の実効速度に依存し、特に乗物の高速度において回収エネルギーはより高い。乗物速度ω
vに応じた回収動力Pの可能な曲線を
図3に示す。乗物速度ω
vは、ホイールに関連付けられた速度センサーによって得られる。好ましくは、このようなセンサーはダイナモ1自体に(例えば、閉鎖体内に)含まれるとともに、例えばステータに対するロータの角速度を測定することができ、制御ユニット6にそのような速度の代表的信号を供給する。
【0026】
可能な実施形態によれば、回収動力Pと乗物速度ω
vとの間の関係はペダル推力ケイデンスに応じて、つまりサイクリストによって発揮されるペダル推力の速度/頻度ω
pに応じてさらに調整され得る。このため、ダイナモ制御ユニット6はペダル推力ケイデンスの代表的信号を生成するのに適したペダル推力ケイデンスセンサーに接続可能である。実際、サイクリストのエネルギー効率はペダル推力速度が増加するにつれて増加することが一般的に認められる。従って、高いペダル推力速度の場合、特にエネルギー回収によりサイクリストにより大きな労力を費やさせる。このような考察に従い、例えばエネルギー回収は、例えば
図3に示すように、しきい値超のペダル推力速度が検出された場合にのみ作動させられるよう設けられてもよい。代替案として、このような曲線を、検出されたペダル推力速度に応じて、例えば高いペダル推力速度での回収動力を増加し、また低いペダル推力速度での回収動力を減少させることによって、修正してもよい。
【0027】
ダイナモ1が設置されている自転車における物理的ケーブルの数を減らすために、例えば、ケイデンスセンサーを制御ユニット6に無線で接続してもよい。
【0028】
可能な実施形態によれば、発電機として作動する電気機械2による回収エネルギーをバッテリーの充電レベルSOCに基づいて修正するよう制御ユニット6はさらに構成され、このため、当該バッテリーは、制御ユニット自体に接続されるとともにバッテリーの充電状態の代表的信号を生成するよう適合された適当な充電センサーにもまた監視もされる。好ましくは、特に、低い充電レベルにおいて回収動力を(そして結果的にサイクリストの追加の労力を)増加させるため、およびバッテリーが高い充電レベルを持つ場合には回収動力を減少させるために制御ユニット6は作動する。
【0029】
例えば、
図3に示したタイプの曲線に基づく回収動力は、1(0%の充電レベルSOC状態に対応する)と0(100%の充電レベルSOC状態に対応する)との間で変動する係数R
11に基づいて調整されてもよく、その可能な傾向は定性的に
図4に示される。
【0030】
第一モード、第二レベル:エネルギー回収、高抵抗
またこのモードによれば、発電機として作動する電気機械による回収エネルギーは、乗物の実効速度に依存し、特に乗物の高速度において回収エネルギーはより高い。乗物速度ω
vに応じる回収動力Pの定性的傾向は、
図3に例示的に示されているものと類似し得るが、回収動力の絶対値は、同じ自転車の運動状態下、特に同じ速度下において、より大きい。
【0031】
この作動モードはペダル推力に対し高い抵抗を伴うので、サイクリストがペダルを漕ぐ必要がない状態において、典型的には下り坂にある際および制動する際に主に使用することができる。
【0032】
従って、この場合ペダル推力速度に基づいて回収動力を修正する必要がある。しかしながら、前述したように、ペダル推力ケイデンスセンサー(またはそれとは異なるセンサー)は、サイクリストの後退ペダル推力からこの作動モードを起動する制動状態を判定するためにも使用され得る。
【0033】
さらに、このモードによれば、特に制動する際、バッテリーの充電レベルSOCに基づいて回収動力を調整しないことが好ましい。というのは、これは、充電レベルに応じて、自転車の挙動を変え、したがってサイクリストが知覚するものを変えるからである。
【0034】
したがって、この場合、回収動力はバッテリーの充電レベルSOCから独立して常に1に等しく保たれる係数R
12(
図5の実線)に応じて調整される。
【0035】
明らかに、上記記述にかかわらず、いずれの場合においても制御ユニットは、
図4を参照して示したのと同じ方法で、1(0%の充電レベルSOC状態に対応する)と0(100%の充電レベルSOC状態に対応する)との間で変動する係数R
12に基づき、充電レベルに応じて回収動力をまた調整することが可能であり、これは
図5の破線で定性的に示される。
【0036】
第二モード:ペダル推力補助
このモードによれば、電気機械2はモーターとして作動するので必要なエネルギーをバッテリー4から引き出すことにより、サイクリストによる供給動力に加えてダイナモ1は動力を供給する。
【0037】
駆動力(および駆動トルク)の供給法則は、いくつかの基準に応じて選択され得る。例えば、可能な論理によれば、制御ユニット6は追加の一定の駆動力を伝達するように電気機械2に命令することができる。可能な別の実施形態によれば、電気機械による供給動力Pはペダル推力ケイデンスに応じて、つまり制御ユニット6に接続された前記ケイデンスセンサーによって測定されサイクリストによって及ぼされるペダル推力速度/周波数ωpに応じて調整されうる。さらなる変形例によれば、自転車自体に取付けられた1つ以上のセンサー、例えばスロープセンサーからの信号に応じて、供給動力は調整され得る。
【0038】
可能な実施形態によれば、この場合にはバッテリー4の充電レベルSOCに基づいて電気機械による供給駆動動力を調整することもまた可能である。このために、充電レベルSOCは、制御ユニット6に接続された前記充電センサーによって監視され得る。
【0039】
例えば、前記基準に従う供給動力は、0(0%の充電レベルSOC状態に対応する)と1(100%の充電レベルSOC状態に対応する)との間で変動する係数R
2に基づいて調整されてもよく、これは
図6に定性的に示される。この場合、充電レベルが低い場合にはモーターの作動は制限され、代わりに充電レベルが高い場合はモーターの作動は増加され得る。
【0040】
第二作動モードに従って設定されている電気機械2による供給エネルギーは、電気機械が第一作動モードに従って設定されているときにサイクリストに完全に利用可能になることが認められる。したがって、本発明のダイナモを、電池を再充電するため外部エネルギー源に接続する必要はない。可能な実施形態によれば、制御ユニットは、電気機械2が第二作動モードに設定された際、電気機械2が第一作動モードから第二作動モードに移行する前の所定の時間にわたって第一作動モードに設定された際にバッテリー自体に蓄えられたエネルギー量以下のエネルギー量を、バッテリーから引き出すようよう構成されている。
【0041】
さらに、可能な別の実施形態によれば、制御ユニット6はバッテリーの充電レベルSOCの閉ループ制御を行うように構成されていることが認められる。例えば、電気機械が第一レベル(
図4)または第二レベル(破線、
図5)に従って第一モードに設定されているとき、目標平均充電値SOC
*を一旦設定すると、充電レベルが目標レベルを維持する傾向となるよう、制御ユニットは係数R
11およびR
12を変化させることによって吸収動力をさらに調整する。したがって、例えば、電気機械が発電機として作動し充電レベルが目標値SOC
*よりはるかに小さい場合に、電気機械が大量の動力を回収し、充電レベルが目標レベルSOC
*で安定するまで漸進的に回収動力が減少するよう制御ユニットは作動する。同様に、電気機械がモーターとして作動し、充電レベルが目標値SOC
*よりもはるかに大きい場合に、電気機械が高い動力を供給し、充電レベルが目標値SOC
*で安定するまで漸進的に供給動力が減少するよう制御ユニットは電気機械に作用する。
【0042】
上記説明から、当業者は本発明のダイナモが既知のダイナモに関しエネルギー最適化を可能にすることを理解できる。実際、電気機械が発電機として作動する場合、サイクリストは、低抵抗(第一レベル)と高抵抗(第二レベル)とに対応する2つの回収レベルの間で選択することができる。第一および第二レベルに関連する抵抗は、それぞれ、従来技術のダイナモによって提供される単一抵抗未満および単一抵抗超となるように制御ユニットによって動的に選択される。このようにして、サイクリストは、通常の状態においては少量のエネルギー回収を選択でき(従ってダイナモによる限定的抵抗の保有を選択でき)、また、特定の状態において、例えば電気機械によってもたらされる高抵抗がペダル推力を妨げない降下時又は制動時に、大量のエネルギー回収を選択できる。本発明のダイナモは、従来技術のダイナモにおいては熱に消散されるエネルギーを蓄えることをさらに可能にし、発電機としてではなくモーターとして電気機械を作動することにより当該エネルギーは必要に応じて使用し得る。
【0043】
本発明のダイナモの上記実施形態に、具体的な偶発的必要を満たすため、当業者は添付の特許請求の範囲外となることなくいくつかの追加、変更、または作動的に同等な他のものにより要素の置換をし得る。