(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】油圧回路
(51)【国際特許分類】
F15B 11/024 20060101AFI20220111BHJP
E02F 9/22 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
F15B11/024 C
E02F9/22 M
(21)【出願番号】P 2017176015
(22)【出願日】2017-09-13
【審査請求日】2020-08-13
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100130719
【氏名又は名称】村越 卓
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 仁
(72)【発明者】
【氏名】後藤 啓介
【審査官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-242796(JP,A)
【文献】特開2005-221026(JP,A)
【文献】特開2017-067137(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/024
F15B 11/00
F15B 11/028
E02F 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油路に作動油を供給する油圧源と、鉛直方向に駆動される支持部材を支持するピストンロッド、ヘッド側チャンバー及びロッド側チャンバーを有する油圧シリンダと、に接続される油圧回路であって、
前記ヘッド側チャンバーに連通し、前記ヘッド側チャンバーからの前記作動油の圧力に応じて前記油路を切り換えるセレクター弁と、
前記ヘッド側チャンバーと前記ロッド側チャンバーとを連通させる連絡路と、を備え、
前記セレクター弁は、前記ヘッド側チャンバーからの前記作動油の圧力が切換圧以上の場合、前記油圧源と前記ロッド側チャンバーとの間の連通を遮断する油圧回路。
【請求項2】
前記セレクター弁は、前記ヘッド側チャンバーからの前記作動油の圧力が前記切換圧よりも低い場合、前記油圧源と前記ロッド側チャンバーとを連通させる請求項1に記載の油圧回路。
【請求項3】
前記連絡路は、前記ヘッド側チャンバーをタンク通路に連通させ、
前記ロッド側チャンバーは、前記タンク通路に連通し、前記タンク通路及び前記連絡路を介して前記ヘッド側チャンバーに連通する請求項1又は2に記載の油圧回路。
【請求項4】
前記セレクター弁は、前記ヘッド側チャンバーからの前記作動油の圧力が前記切換圧以上の場合、前記油圧源をバイパス通路に連通させる請求項1~3のいずれか一項に記載の油圧回路。
【請求項5】
前記油圧源は、前記バイパス通路の前記作動油の圧力に応じて前記作動油の供給量を変えるネガティブコントロール式の油圧ポンプである請求項4に記載の油圧回路。
【請求項6】
前記油圧源と前記油圧シリンダとの間の前記油路を切り換える方向切換弁を更に備え、
前記セレクター弁は、前記方向切換弁の内部に設けられる請求項1~5のいずれか一項に記載の油圧回路。
【請求項7】
前記支持部材はブームである請求項1~6のいずれか一項に記載の油圧回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧シリンダに接続される油圧回路に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルのブームは、重力の影響下で、概ね鉛直方向に上下駆動される。そのようなブームの駆動特性が考慮され、ブーム駆動用の油圧シリンダに接続される油圧回路として様々なタイプの油圧回路が提案されている。
【0003】
例えば特許文献1に記載の建設機械の省エネ装置には、ブームシリンダへの圧油の供給制御を行うコントロールバルブ(方向切換弁)が設けられるとともに、タンクに通じる油路にネガコン絞りが設けられており、ネガコン絞りよりも上流側にセンサが設置されている。この省エネ装置では、センサが検出するネガコン圧に基づいて、油圧ポンプを駆動するエンジンの回転数が制御され、省エネ化が図られている。
【0004】
また特許文献2に記載の油圧ショベルのブームの下げ再生回路では、方向制御弁のブーム下げ位置において、ブームボトム側のタンク戻り油路に絞りが設けられるとともに、ブームロッド側への供給油路に絞りが設けられている。またタンク戻り油路と供給油路とを連通させる再生油路が設けられており、この再生油路にはチェック弁が介装されている。この再生回路によれば、ブーム下げ動作の際に、ブームボトム側からの戻り油を、絞りにより圧力を高めて、再生油路を介してブームロッド側に戻すことができるため、油圧ポンプからの供給油を減少させることができる。
【0005】
また特許文献3に記載の油圧回路では、ブームの下降に抗する力が働いていない状態でブームを下降させる場合、第一切換バルブにより第一センタバイパス油路を開いて第一油圧ポンプの吐出量を少なくしつつ、シリンダ縮小側油室には伸長側油室からの排出油が再生回路を経由して供給される。一方、ブームの下降に抗する力が働いている場合には、第一切換バルブにより第一センタバイパス油路が閉じられてポンプ吐出量が増大される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-333017号公報
【文献】特開平10-089317号公報
【文献】特開平11-247236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の従来の油圧回路では、ブームの下降動作時には油圧源(油圧ポンプ)から供給される作動油の供給量を抑える等の工夫がなされているが、構成の簡素化、低コスト化及び省エネ化に関して更なる改良の余地がある。
【0008】
例えば特許文献1の省エネ装置のようにセンサの検出結果に基づいて油圧ポンプの作動油の出力を制御する装置では、センサの設置が必須であるため、装置構成が複雑化するとともにコストが高くなる。また特許文献2の再生回路では、例えばバケットが空中にある状態でブームを下降させる場合のように、自重を利用してブームを下降させることができる場合にも、油圧ポンプからブームシリンダ(特にブームロッド側)に油が供給される。このように本来的に必要とされていない作動油を油圧ポンプからブームシリンダに供給することは、エネルギーのロスを生むため、必ずしも最適な省エネ化が図られてはいない。また特許文献3の油圧回路においても、ブームの下降に抗する力が働いていない状態でブームを下降させる場合、油圧ポンプからの圧油がブームシリンダに供給されており、エネルギーのロスを生んでいる。
【0009】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、ブームなどの支持部材の動作(特に下降動作)をエネルギー効率良く行える油圧回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、油路に作動油を供給する油圧源と、鉛直方向に駆動される支持部材を支持するピストンロッド、ヘッド側チャンバー及びロッド側チャンバーを有する油圧シリンダと、に接続される油圧回路であって、ヘッド側チャンバーに連通し、ヘッド側チャンバーからの作動油の圧力に応じて油路を切り換えるセレクター弁と、ヘッド側チャンバーとロッド側チャンバーとを連通させる連絡路と、を備え、セレクター弁は、ヘッド側チャンバーからの作動油の圧力が切換圧以上の場合、油圧源とロッド側チャンバーとの間の連通を遮断する油圧回路に関する。
【0011】
セレクター弁は、ヘッド側チャンバーからの作動油の圧力が切換圧よりも低い場合、油圧源とロッド側チャンバーとを連通させてもよい。
【0012】
連絡路は、ヘッド側チャンバーをタンク通路に連通させ、ロッド側チャンバーは、タンク通路に連通し、タンク通路及び連絡路を介してヘッド側チャンバーに連通してもよい。
【0013】
セレクター弁は、ヘッド側チャンバーからの作動油の圧力が切換圧以上の場合、油圧源をバイパス通路に連通させてもよい。
【0014】
油圧源は、バイパス通路の作動油の圧力に応じて作動油の供給量を変えるネガティブコントロール式の油圧ポンプであってもよい。
【0015】
油圧回路は、油圧源と油圧シリンダとの間の油路を切り換える方向切換弁を更に備え、セレクター弁は、方向切換弁の内部に設けられてもよい。
【0016】
支持部材はブームであってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ブームなどの支持部材の動作(特に下降動作)をエネルギー効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、油圧回路の回路構成例を示す回路図であり、ブーム用方向切換弁が中立位置に配置され、且つ、アーム用方向切換弁が中立位置に配置されている状態を示す。
【
図2】
図2は、油圧回路の回路構成例を示す回路図であり、ブーム用方向切換弁が逆駆動位置に配置され、且つ、アーム用方向切換弁が中立位置に配置されている状態を示し、ブームが空中状態にある場合を示す。
【
図3】
図3は、油圧回路の回路構成例を示す回路図であり、ブーム用方向切換弁が逆駆動位置に配置され、且つ、アーム用方向切換弁が逆駆動位置に配置されている状態を示す。
【
図4】
図4は、油圧回路の回路構成例を示す回路図であり、ブーム用方向切換弁が逆駆動位置に配置され、且つ、アーム用方向切換弁が中立位置に配置されている状態を示し、ブームが接地状態にある場合を示す。
【
図5】
図5は、ブーム用方向切換弁及びセレクター弁の一例を示す部分断面図であり、ブームが接地状態にあり、ブーム用方向切換弁が中立位置に配置されている状態を示す。
【
図6】
図6は、ブーム用方向切換弁及びセレクター弁の一例を示す部分断面図であり、ブームが空中状態にあり、ブーム用方向切換弁が逆駆動位置に配置されている状態を示す。
【
図7】
図7は、ブーム用方向切換弁及びセレクター弁の一例を示す部分断面図であり、ブームが接地状態にあり、ブーム用方向切換弁が逆駆動位置に配置されている状態を示す。
【
図8】
図8は、ブーム用方向切換弁及びセレクター弁の一例を示す部分断面図であり、ブーム用方向切換弁が正駆動位置に配置されている状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面に示される要素には、理解を容易にするために、サイズ及び縮尺等が実際のそれらと異なって示されている要素が含まれうる。
【0020】
以下では、油圧ショベル(特にブーム)の駆動制御のための油圧回路に対して本発明を適用する場合について説明する。ただし本発明は、ブーム以外の鉛直方向に駆動される支持部材を支持するピストンロッドを有する油圧シリンダの駆動制御のための油圧回路に対して有効に適用可能であり、本発明の適用対象はブームの駆動制御のための油圧回路には限定されない。
【0021】
図1~
図4は、本発明の一実施形態に係る油圧回路10の回路構成例を示す回路図である。
図1は、ブーム用方向切換弁30が中立位置bに配置され、且つ、アーム用方向切換弁31が中立位置bに配置されている状態を示す。
図2及び
図4は、ブーム用方向切換弁30が逆駆動位置cに配置され、且つ、アーム用方向切換弁31が中立位置bに配置されている状態を示し、
図2はブーム71がバケット73及びアーム72とともに地面から離れている状態(以下「空中状態」とも称する)にある場合を示し、
図4はブーム71がバケット73及びアーム72を介して地面に接触している状態(以下「接地状態」とも称する)にある場合を示す。
図3は、ブーム用方向切換弁30が逆駆動位置cに配置され且つアーム用方向切換弁31が逆駆動位置cに配置されている状態を示す。
【0022】
なお
図1~
図4には、油路構成が回路図として示される一方で、油圧ショベル70(特にブーム71、アーム72及びバケット73等)が外観図として示されている。そのため
図1~
図4には、アーム用油圧シリンダ75が回路図及び外観図の双方において示されているが、これらは同一のアーム用油圧シリンダ75を指す。
【0023】
図1~
図4に示す油圧回路10は、油圧源12、ブーム用油圧シリンダ74及びアーム用油圧シリンダ75に接続されており、油圧源12とブーム用油圧シリンダ74との間の油路11を切り換えるブーム用方向切換弁30と、油圧源12とアーム用油圧シリンダ75との間の油路11を切り換えるアーム用方向切換弁31とを備える。本明細書において油路11の用語は、作動油が流される通路の総称であり、例えば後述の分岐油路11b、11c、タンク通路21、バイパス通路22、連絡路23、ネガティブコントロール油路24及び方向切換弁30、31における作動油の通路も、油路11を構成する。
【0024】
ブーム用方向切換弁30及びアーム用方向切換弁31は、スプール弁によって構成されている。
図1~
図4に示す方向切換弁30、31は、スプールに加えられるパイロット油圧に応じて油路11を切り換えるが、他の弁体(電磁駆動タイプのスプール弁等)によって構成されてもよい。なお、油圧源12とバケット用油圧シリンダ76との間にもバケット用方向切換弁が設けられているが、全体構成を単純化して理解を容易にするため、
図1~
図4ではバケット用方向切換弁を省略し、以下ではバケット用方向切換弁及びバケット用油圧シリンダ76の駆動制御に関する詳細な説明を省略する。ただし、バケット用方向切換弁及びバケット用油圧シリンダ76の油路11に対する接続態様や作動油の供給態様は、アーム用方向切換弁31及びアーム用油圧シリンダ75と同様にすることができる。
【0025】
油圧源12は、油路11に作動油を供給する可変容量型の油圧ポンプによって構成されており、レギュレータ13の制御下で、油路11に対する作動油の供給量を増減することができる。本実施形態の油圧源12は、タンク14に連通するバイパス通路22(特に第2バイパス油路22b)に接続されたネガティブコントロール油路24の作動油の圧力(すなわち第2バイパス油路22bの作動油の圧力)に応じて作動油の供給量を変えるネガティブコントロール式の油圧ポンプによって構成されている。例えば、第2バイパス油路22bを流れる作動油の流量が増えて第2バイパス油路22b及びネガティブコントロール油路24の作動油の圧力が増大するに従って、レギュレータ13は油圧源12からの作動油の供給量を低減させる。一方、第2バイパス油路22bを流れる作動油の流量が減ってバイパス通路22及びネガティブコントロール油路24の作動油の圧力が低減するに従って、レギュレータ13は油圧源12からの作動油の供給量を増大させる。
【0026】
油圧源12から延びる油路11は、ブーム用方向切換弁30に向かって延びる油路11a(以下「メイン油路」とも称する)と、このメイン油路11aから分岐する2つの油路(以下「分岐油路」とも称する)11b、11cとを含み、メイン油路11a及び分岐油路11b、11cは油圧源12に対して並列に接続されている。一方の分岐油路11bは、ブーム用方向切換弁30を介してバイパス通路22(特に第1バイパス通路22a)に連通されることが意図されており、ブーム用方向切換弁30の作動状態に応じて当該分岐油路11bとバイパス通路22との間の連通及び遮断がコントロールされる。また他方の分岐油路11cはアーム用方向切換弁31を介してアーム用油圧シリンダ75に連通されることが意図されており、アーム用方向切換弁31の作動状態に応じて当該分岐油路11cとアーム用油圧シリンダ75との間の連通及び遮断がコントロールされる。
【0027】
ブーム用油圧シリンダ74は、ピストンロッド81及びシリンダチューブ82を有する。ピストンロッド81は、シリンダチューブ82内に配置されるピストン部81aと、ピストン部81aと一体的に設けられシリンダチューブ82の内側から外側にわたって延在するロッド部81bと有する。ロッド部81bの一方の先端部にはブーム71が回転自在に連結され、ピストンロッド81はブーム71を鉛直方向下方から支持する。ピストンロッド81のシリンダチューブ82からの突出量を増大させることでブーム71は上昇駆動され、ピストンロッド81のシリンダチューブ82からの突出量を低減させることでブーム71は下降駆動される。シリンダチューブ82の内部空間は、ピストン部81aを介してロッド側チャンバー83及びヘッド側チャンバー84に仕切られている。ピストン部81aは、シリンダチューブ82内においてロッド側チャンバー83及びヘッド側チャンバー84の相互間で作動油が漏れないようにロッド側チャンバー83及びヘッド側チャンバー84の各々をシールしつつ、シリンダチューブ82内を移動可能に設けられている。
【0028】
アーム用油圧シリンダ75は、基本的に上述のブーム用油圧シリンダ74と同様に構成され、移動可能に設けられたピストンロッド75aと、容量可変のロッド側チャンバー75b及びヘッド側チャンバー75cとを有する。またバケット用油圧シリンダ76は、回路図としての図示は省略されているが、基本的に上述のブーム用油圧シリンダ74及びアーム用油圧シリンダ75と同様に構成され、移動可能に設けられたピストンロッドと、容量可変のロッド側チャンバー及びヘッド側チャンバーとを有する。
【0029】
本実施形態の油圧回路10(特にブーム用方向切換弁30)には連絡路23が設けられており、ブーム用方向切換弁30が逆駆動位置cに配置されている状態で、ヘッド側チャンバー84とロッド側チャンバー83とは連絡路23を介して連通される。すなわちヘッド側チャンバー84は、ブーム用方向切換弁30に形成された連絡路23を介し、タンク14に接続されるタンク通路21に連通される。一方、ロッド側チャンバー83は、ブーム用方向切換弁30を介さずに、タンク通路21に連通する。したがってロッド側チャンバー83及びヘッド側チャンバー84は、ブーム用方向切換弁30の駆動状態に応じて、タンク通路21及び連絡路23を介して互いに連通され、或いは互いに遮断される。
【0030】
タンク通路21とロッド側チャンバー83との間の油路11にはラインリリーフメイクアップ弁43が設けられている。ラインリリーフメイクアップ弁43は、タンク通路21側の油路11及びロッド側チャンバー83側の油路11に対して並列的に設けられた逆止弁41及び圧力制御弁45を含む。ラインリリーフメイクアップ弁43の逆止弁41は、タンク通路21側からロッド側チャンバー83側に向かう作動油の流通を許容するが、ロッド側チャンバー83側からタンク通路21側に向かう作動油の流通を許容しない。ラインリリーフメイクアップ弁43の圧力制御弁45は、ロッド側チャンバー83側の油路11の作動油の圧力が所定の開弁圧よりも大きい場合にはロッド側チャンバー83側の油路11とタンク通路21側の油路11とを連通させるが、ロッド側チャンバー83側の油路11の作動油の圧力が所定の開弁圧以下の場合にはロッド側チャンバー83側の油路11とタンク通路21側の油路11との間の連通を遮断する。
【0031】
タンク通路21側の油路11の作動油の圧力がロッド側チャンバー83側の油路11の作動油の圧力よりも大きい場合、ラインリリーフメイクアップ弁43の逆止弁41を介し、タンク通路21側の油路11からロッド側チャンバー83側の油路11に作動油が流入する。一方、ロッド側チャンバー83側の油路11の作動油の圧力がタンク通路21側の油路11の作動油の圧力よりも大きく且つラインリリーフメイクアップ弁43の圧力制御弁45の開弁圧よりも小さい場合、ロッド側チャンバー83側の油路11とタンク通路21側の油路11との間における作動油の流通はラインリリーフメイクアップ弁43によって遮断される。そしてロッド側チャンバー83側の油路11の作動油の圧力がタンク通路21側の油路11の作動油の圧力よりも大きく且つラインリリーフメイクアップ弁43の圧力制御弁45の開弁圧よりも大きい場合、圧力制御弁45が開いて、ロッド側チャンバー83側の油路11からタンク通路21側の油路11に作動油が流入する。
【0032】
このようにラインリリーフメイクアップ弁43は、逆流を防ぎつつタンク通路21側の油路11からロッド側チャンバー83側の油路11に作動油を供給する機能と、ロッド側チャンバー83側の油路11の作動油の圧力が過大になった場合にロッド側チャンバー83側の油路11からタンク通路21側の油路11に作動油を逃がしてロッド側チャンバー83の作動油の圧力が過大になるのを防ぐ機能とを併せ持つ。したがってラインリリーフメイクアップ弁43の圧力制御弁45の開弁圧は、ロッド側チャンバー83及びロッド側チャンバー83側の油路11における作動油の許容圧力の上限に基づいて定められる。
【0033】
上述のようにロッド側チャンバー83は、ラインリリーフメイクアップ弁43を介してタンク通路21に連通する。一方、ブーム用方向切換弁30が逆駆動位置cに配置されている場合、連絡路23はヘッド側チャンバー84をタンク通路21に連通させる。したがって、ブーム用方向切換弁30が逆駆動位置cに配置されている場合には、ヘッド側チャンバー84とロッド側チャンバー83とは、連絡路23及びタンク通路21を含む油路11と、ラインリリーフメイクアップ弁43とを介し、相互に連通される。特にラインリリーフメイクアップ弁43を設けることによって、ヘッド側チャンバー84から連絡路23を介してタンク通路21に排出される作動油の圧力とロッド側チャンバー83内の作動油の圧力との間の大小関係、及びロッド側チャンバー83内の作動油の圧力の大きさに応じて、タンク通路21(したがってヘッド側チャンバー84)とロッド側チャンバー83との間における作動油の流れを適切に調整することができる。
【0034】
油圧回路10は更にセレクター弁40を有する。
図1~
図4に示す油圧回路10ではブーム用方向切換弁30の内部にセレクター弁40が設けられている。ブーム用方向切換弁30が逆駆動位置cに配置されている状態で、セレクター弁40は油路11(特に連絡路23)を介してヘッド側チャンバー84に連通し、ヘッド側チャンバー84からの作動油の圧力(
図1~
図4では連絡路23の作動油の圧力)に応じて油路11を切り換える。例えばヘッド側チャンバー84からセレクター弁40に供給される作動油の圧力(すなわち連絡路23の作動油の圧力)が所定の切換圧以上の場合、セレクター弁40は油圧源12とロッド側チャンバー83との間の連通を遮断する(
図2の符合「e」参照)。一方、ヘッド側チャンバー84からセレクター弁40に供給される作動油の圧力(すなわち連絡路23の作動油の圧力)が切換圧よりも低い場合、セレクター弁40は油圧源12とロッド側チャンバー83とを連通させる(
図4の符合「f」参照)。
【0035】
またセレクター弁40は、ヘッド側チャンバー84からの作動油の圧力が切換圧以上の場合(
図2の符合「e」参照)には油圧源12をバイパス通路22(特に第1バイパス通路22a)に連通させ、ヘッド側チャンバー84からの作動油の圧力が切換圧よりも低い場合には油圧源12とバイパス通路22との間の連通を遮断する(
図4の符合「f」参照)。バイパス通路22はタンク14に連通する油路11である。なおバイパス通路22に接続されるタンク14と、上述のタンク通路21に接続されるタンク14とは、同じタンクによって構成されている。
図1~
図4に示すバイパス通路22にはアーム用方向切換弁31が設けられており、バイパス通路22は、アーム用方向切換弁31よりも上流側の第1バイパス通路22aと、アーム用方向切換弁31よりも下流側の第2バイパス油路22bとに区分される。第1バイパス通路22aの両端部はそれぞれブーム用方向切換弁30及びアーム用方向切換弁31によって開閉コントロールされる。また第2バイパス油路22bの一方の端部はアーム用方向切換弁31に接続され、他方の端部はタンク14に接続されている。第2バイパス油路22bの一方の端部はアーム用方向切換弁31によって開閉コントロールされる。
【0036】
図1~
図4に示す油圧回路10には、更に逆止弁41、絞り42、圧力制御弁45及びその他の器具が適宜設けられる。例えばメイン油路11a及び分岐油路11cには逆止弁41が設けられている。また連絡路23には絞り42が設けられており、この絞り42は、連絡路23のうちセレクター弁40と接続する箇所よりも下流側(すなわちタンク14側)に設けられている。したがってセレクター弁40による油路11(
図1~
図4に示す符合「e」及び「f」参照)の切り換えは、連絡路23に設けられた絞り42により圧力が高められた連絡路23の作動油の圧力に応じて行われる。また第2バイパス油路22bには、絞り42及び圧力制御弁45を有する排出コントロール弁44が設けられている。排出コントロール弁44の絞り42は、第2バイパス油路22bのうちネガティブコントロール油路24と接続する箇所よりも下流側(すなわちタンク14側)に設けられている。したがってレギュレータ13による油圧源12のコントロールは、第2バイパス油路22bに設けられた絞り42により圧力が高められたネガティブコントロール油路24の作動油の圧力に応じて行われる。排出コントロール弁44の圧力制御弁45は、第2バイパス油路22bの作動油の圧力に応じて開閉し、第2バイパス油路22bの作動油の圧力が所定の開弁圧よりも大きい場合に開いてタンク14に向けた作動油の流量を増大させる。
【0037】
次に、上述の油圧回路10の作動について説明する。
【0038】
まず、
図1に示すようにブーム用方向切換弁30及びアーム用方向切換弁31が共に中立位置bに配置される場合について説明する。この場合、油圧源12とブーム用油圧シリンダ74との間の連通はブーム用方向切換弁30によって遮断され、油圧源12とアーム用油圧シリンダ75との間の連通はアーム用方向切換弁31によって遮断される。すなわちブーム用方向切換弁30は、ヘッド側チャンバー84とタンク通路21との間の連通を遮断し、ロッド側チャンバー83と油圧源12(特にメイン油路11a)との間の連通を遮断し、分岐油路11bと第1バイパス通路22aとを連通させる。またアーム用方向切換弁31は、アーム用油圧シリンダ75のロッド側チャンバー75bとタンク通路21との間の連通を遮断し、アーム用油圧シリンダ75のヘッド側チャンバー75cと分岐油路11cとの間の連通を遮断し、第1バイパス通路22aと第2バイパス油路22bとを連通させる。
【0039】
この場合、油圧源12は、分岐油路11bを介して第1バイパス通路22aに接続され、第1バイパス通路22aはアーム用方向切換弁31を介して第2バイパス油路22bに接続される。そのため、油圧源12は、分岐油路11b及びバイパス通路22を介してタンク14及びネガティブコントロール油路24に連通される。したがって、ブーム用方向切換弁30及びアーム用方向切換弁31が中立位置bに配置された当初は、バイパス通路22を流れる作動油の量が増大してネガティブコントロール油路24の作動油の圧力が上がる。そのため油圧源12は、レギュレータ13の制御下で作動油の供給量を抑える。これにより、バイパス通路22を流れる作動油の量が低減してネガティブコントロール油路24の作動油の圧力が下がり、省エネ化が図られる。
【0040】
次に
図2に示すように、ブーム用方向切換弁30が逆駆動位置cに配置され、アーム用方向切換弁31が中立位置bに配置され、ブーム71がバケット73及びアーム72とともに空中状態にある場合について説明する。この場合、ヘッド側チャンバー84は、連絡路23に連通し、当該連絡路23を介してタンク通路21に連通する。また重力の影響下でブーム71等の重量によりピストンロッド81は下降し、ヘッド側チャンバー84内の作動油の圧力が大きくなり、ヘッド側チャンバー84に連通される連絡路23の作動油の圧力がセレクター弁40の切換圧以上になる。そのため、セレクター弁40は
図1~
図4の符合「e」で示す状態をとり、油圧源12(特にメイン油路11a)とロッド側チャンバー83との間の連通を遮断し、且つ、分岐油路11bを介して油圧源12を第1バイパス通路22aに連通させる。一方、アーム用方向切換弁31は、アーム用油圧シリンダ75のロッド側チャンバー75bとタンク通路21との間の連通を遮断し、アーム用油圧シリンダ75のヘッド側チャンバー75cと分岐油路11cとの間の連通を遮断し、第1バイパス通路22aと第2バイパス油路22bとを連通させる。
【0041】
この場合、ヘッド側チャンバー84から排出された高圧の作動油が、連絡路23及びタンク通路21を介してタンク14に向けて流されるとともに、連絡路23、タンク通路21及びラインリリーフメイクアップ弁43(特に逆止弁41)を介してブーム用油圧シリンダ74に供給(すなわち再生)される。これにより、ピストン部81aの下降とともに容積が増大するロッド側チャンバー83における作動油の量及び圧力の不足が補われ、ブーム71は自重を利用して下降することができる。一方、油圧源12から吐出された作動油はバイパス通路22を介してタンク14に向けて送られ、ネガティブコントロール式の油圧源12からの作動油の供給量は低く抑えられ、省エネ化を図ることができる。
【0042】
次に
図3に示すように、ブーム用方向切換弁30が逆駆動位置cに配置され、アーム用方向切換弁31も逆駆動位置cに配置され、ブーム71がバケット73及びアーム72とともに空中状態にある場合について説明する。この場合、上述の
図2に示す場合と同様に、ヘッド側チャンバー84は連絡路23を介してタンク通路21に連通し、連絡路23の作動油の圧力がセレクター弁40の切換圧以上になり、セレクター弁40は
図1~
図4の符合「e」で示す状態をとる。したがってブーム用方向切換弁30は、ロッド側チャンバー83と油圧源12(特にメイン油路11a)との間の連通を遮断し、且つ、分岐油路11bを介して油圧源12をバイパス通路22に連通させる。一方、アーム用方向切換弁31は、ロッド側チャンバー75bとタンク通路21とを連通し、ヘッド側チャンバー75cと油圧源12(特に分岐油路11c)とを連通し、第1バイパス通路22aと第2バイパス油路22bとの間の連通を遮断する。
【0043】
この場合、ヘッド側チャンバー84から排出された高圧の作動油は、上述の
図2に示す場合と同様に、連絡路23、タンク通路21及びラインリリーフメイクアップ弁43を介してブーム用油圧シリンダ74に供給され、ブーム71は自重を利用して下降する。一方、油圧源12から吐出された作動油の一部は、分岐油路11cを介してヘッド側チャンバー75cに供給される。またロッド側チャンバー75bから排出された作動油は、タンク通路21に送られ、その後、タンク14に排出されたり、ラインリリーフメイクアップ弁43を介してロッド側チャンバー83に供給されたりする。このようにブーム用油圧シリンダ74の駆動には、ブーム71等の自重が利用されるとともに、ヘッド側チャンバー84及びロッド側チャンバー75bから排出される高圧の作動油が利用され、油圧源12からの作動油をアーム用油圧シリンダ75の駆動に利用しなくても済む。したがって、油圧源12から新たに供給される作動油をアーム用油圧シリンダ75の駆動に対して効率的に利用することができ、省エネ化を図ることができる。なお、第2バイパス油路22bがアーム用方向切換弁31によって遮断されるため、第2バイパス油路22bを流れる作動油の量が減ってネガティブコントロール油路24の作動油の圧力が下がり、ネガティブコントロール式の油圧源12は作動油の供給量を増大させる。これにより、十分量及び十分圧の作動油を、分岐油路11cを介してヘッド側チャンバー75cに供給することができる。
【0044】
次に
図4に示すように、ブーム用方向切換弁30が逆駆動位置cに配置され、アーム用方向切換弁31が中立位置bに配置され、ブーム71がバケット73及びアーム72を介して接地状態にある場合について説明する。この場合、ヘッド側チャンバー84は、連絡路23に連通し、当該連絡路23を介してタンク通路21に連通する。ただしブーム71は接地状態にあるため、ピストンロッド81の下降駆動において、基本的にブーム71等の重量を利用することができない。したがってヘッド側チャンバー84内の作動油の圧力は比較的小さくなり、ヘッド側チャンバー84に連通される連絡路23の作動油の圧力はセレクター弁40の切換圧よりも小さくなる。そのため、セレクター弁40は
図4の符合「f」で示す状態をとり、メイン油路11aを介して油圧源12をロッド側チャンバー83に連通させ、且つ、油圧源12(特に分岐油路11b)とバイパス通路22(特に第1バイパス通路22a)との間の連通を遮断する。一方、アーム用方向切換弁31は、アーム用油圧シリンダ75のロッド側チャンバー75bとタンク通路21との間の連通を遮断し、アーム用油圧シリンダ75のヘッド側チャンバー75cと分岐油路11cとの間の連通を遮断し、第1バイパス通路22aと第2バイパス油路22bとを連通させる。
【0045】
油圧回路10が上述の
図4に示す状態をとる場合、油圧源12から吐出された作動油はロッド側チャンバー83に供給され、ロッド側チャンバー83内の作動油の圧力がヘッド側チャンバー84内の作動油の圧力よりも大きくなり、ピストン部81aは下方へ力を受け、ブーム71は下降される。ヘッド側チャンバー84は連絡路23を介してタンク通路21に連通されるが、ヘッド側チャンバー84から排出される作動油の圧力はロッド側チャンバー83内の作動油の圧力よりも小さいため、ヘッド側チャンバー84からロッド側チャンバー83に作動油は送られない。そのためヘッド側チャンバー84から排出された作動油は、連絡路23及びタンク通路21を介してタンク14に向けて送られる。なおラインリリーフメイクアップ弁43の逆止弁41によって、ロッド側チャンバー83からタンク14、タンク通路21及びヘッド側チャンバー84に向かう作動油の逆流が防がれている。また油圧源12は、ブーム用方向切換弁30によってバイパス通路22(特に第1バイパス通路22a)から遮断される。そのため、第2バイパス油路22bを流れる作動油の量が減ってネガティブコントロール油路24の作動油の圧力が下がり、ネガティブコントロール式の油圧源12は作動油の供給量を増大させる。これにより十分量及び十分圧の作動油を、メイン油路11aを介してロッド側チャンバー83に供給することができる。
【0046】
なお詳細な説明は省略するが、ブーム用方向切換弁30が正駆動位置aに配置されると、油圧源12はメイン油路11aを介してブーム用油圧シリンダ74のヘッド側チャンバー84に連通され、ブーム用油圧シリンダ74のロッド側チャンバー83はタンク通路21に連通され、分岐油路11bと第1バイパス通路22aとの間の連通は遮断される。この場合、油圧源12から吐出された作動油はヘッド側チャンバー84に供給され、ロッド側チャンバー83から排出された作動油はタンク通路21に流出し、ブーム71はピストンロッド81とともに上昇される。一方、アーム用方向切換弁31が正駆動位置aに配置されると、油圧源12は分岐油路11cを介してアーム用油圧シリンダ75のロッド側チャンバー75bに連通され、アーム用油圧シリンダ75のヘッド側チャンバー75cはタンク通路21に連通され、第1バイパス通路22aと第2バイパス油路22bとの間の連通は遮断される。この場合、油圧源12から吐出された作動油はロッド側チャンバー75bに供給され、ヘッド側チャンバー75cから排出された作動油はタンク通路21に流出し、ピストンロッド75aの突出量は低減し、アーム72は、ブーム71との連結箇所を支点にして上昇方向へ揺動される。またブーム用方向切換弁30及び/又はアーム用方向切換弁31によってバイパス通路22が遮断され、ネガティブコントロール式の油圧源12は作動油の供給量を増大させ、十分量及び十分圧の作動油をヘッド側チャンバー84及び/又はロッド側チャンバー75bに供給することができる。
【0047】
次に、ブーム用方向切換弁30及びセレクター弁40の具体的な構成例を説明する。
【0048】
図5~8は、ブーム用方向切換弁30及びセレクター弁40の一例を示す部分断面図である。
図5は、ブーム71が接地状態にあり、ブーム用方向切換弁30が中立位置bに配置されている状態を示す。
図6は、ブーム71が空中状態にあり、ブーム用方向切換弁30が逆駆動位置cに配置されている状態を示す。
図7は、ブーム71が接地状態にあり、ブーム用方向切換弁30が逆駆動位置cに配置されている状態を示す。
図8は、ブーム用方向切換弁30が正駆動位置aに配置されている状態を示す。なお
図5~
図8に示すブーム用方向切換弁30及びセレクター弁40は、上述の
図1~
図4に示すブーム用方向切換弁30及びセレクター弁40と必ずしも厳密には構造的及び機能的に一致していないが、
図1~
図4に示すブーム用方向切換弁30及びセレクター弁40に概ね対応している。したがって当業者であれば、以下の説明に基づいて
図5~
図8に示すブーム用方向切換弁30及びセレクター弁40の構造及び機能を十分に理解可能である。
【0049】
図5~
図8に示すブーム用方向切換弁30は、スプール50と、スプール50を内側においてスライド自在に保持する本体部51と、を備える。スプール50の内部にはセレクター弁40がスライド自在に設けられている。スプール50には複数のランド部及び複数の切欠部(セレクター弁40が収容されるスプール50内の溝部とスプール50の外部とをつなぐ穴部を含む)が形成されており、本体部51に対するスプール50の相対的なスライド位置に応じて油路11が切り換えられる。セレクター弁40にも複数のランド部及び複数の切欠部が形成されており、スプール50に対するセレクター弁40の相対的なスライド位置に応じて油路11が切り換えられる。
【0050】
本体部51には、タンク通路21に連通されるタンク連通路52、ロッド側チャンバー83に連通される第1アクチュエータ通路53、油圧源12に連通されるブリッジ通路58、分岐油路11bに連通される第1上流側アンロード通路54及び第2上流側アンロード通路56、第1バイパス通路22aに連通される第1下流側アンロード通路55及び第2下流側アンロード通路57、及びヘッド側チャンバー84に連通される第2アクチュエータ通路59が形成されている。なお図示を省略するが、本体部51には、第2アクチュエータ通路59を介してブリッジ通路58とは反対側(
図5~
図8の右方側)において、タンク14に連通するタンク連通路も形成されている。
【0051】
スプール50には更に連絡路23が形成されている。連絡路23の一方の端部(
図5~
図8の左側端部)はセレクター弁40の一方の端部(
図5~
図8の右側端部)に連通し、連絡路23の他方の端部(
図5~
図8の右側端部)はスプール50に形成された切欠部に連通する。セレクター弁40の他方の端部(
図5~
図8の左側端部)には切換スプリング60(弾性体)が設けられている。後述のように、セレクター弁40のスライド位置は、セレクター弁40の一方の端部に作用する連絡路23からの作動油の力と、セレクター弁40の他方の端部に作用する切換スプリング60の弾性力と、に応じて定まる。したがって、連絡路23からセレクター弁40の一方の端部に作動油が供給されていない状態や、セレクター弁40の一方の端部に作用する連絡路23からの作動油の力がセレクター弁40の他方の端部に加えられる切換スプリング60の弾性力よりも小さい状態では、セレクター弁40は切換スプリング60に押されて
図5~
図8の右方位置に配置される。
【0052】
例えばブーム用方向切換弁30が中立位置bに配置される場合(
図1参照)、ブーム用方向切換弁30及びセレクター弁40は
図5に示すように配置される。すなわちスプール50のランド部を介し、ロッド側チャンバー83はブリッジ通路58及びタンク連通路52から遮断され、第2アクチュエータ通路59はブリッジ通路58及びタンク連通路(図示省略)から遮断される。一方、第1上流側アンロード通路54と第1下流側アンロード通路55とは、スプール50の切欠部及びセレクター弁40の切欠部を介して互いに連通され、第2上流側アンロード通路56と第2下流側アンロード通路57とは、スプール50の切欠部を介して互いに連通される。したがって油圧源12からの作動油は、ロッド側チャンバー83及びヘッド側チャンバー84のいずれにも供給されず、分岐油路11bを介して第1上流側アンロード通路54及び第2上流側アンロード通路56に流入し、第1下流側アンロード通路55及び第2下流側アンロード通路57を介して第1バイパス通路22aに流出される。
【0053】
またブーム用方向切換弁30が中立位置bに配置される場合、連絡路23は、第2アクチュエータ通路59を介してヘッド側チャンバー84に連通する。したがって、ヘッド側チャンバー84からの作動油が第2アクチュエータ通路59を介して連絡路23に流入し、セレクター弁40は連絡路23の作動油の圧力に応じてスライド位置が定まる。
図5には、ブーム71が接地状態にあり、ヘッド側チャンバー84から連絡路23に流入する作動油の圧力が低く、セレクター弁40が切換スプリング60に押されて右方に配置されている場合が示されている。ただし、ブーム71が空中状態にあり、ヘッド側チャンバー84から連絡路23に流入する作動油の圧力が高い場合には、セレクター弁40は連絡路23からの作動油に押されて左方に配置される。この場合にも、ロッド側チャンバー83はブリッジ通路58及びタンク連通路52から遮断され、第2アクチュエータ通路59はブリッジ通路58及びタンク連通路(図示省略)から遮断され、第1上流側アンロード通路54と第1下流側アンロード通路55とは、スプール50の切欠部及びセレクター弁40の切欠部を介して互いに連通され、第2上流側アンロード通路56と第2下流側アンロード通路57とは、スプール50の切欠部を介して互いに連通される。
【0054】
一方、ブーム71が空中状態にあり且つブーム用方向切換弁30が逆駆動位置cに配置される場合(
図2及び
図3参照)、ブーム用方向切換弁30及びスプール50は
図6に示すように配置される。すなわち、スプール50はパイロット圧によって
図5に示す位置よりも右方に配置される。またヘッド側チャンバー84からの作動油は、第2アクチュエータ通路59を介して連絡路23に流入し、セレクター弁40を押して切換スプリング60を圧縮し、セレクター弁40を
図6の左方の位置に配置させる。これにより第1アクチュエータ通路53は、スプール50のランド部を介してブリッジ通路58からは遮断される。また第2アクチュエータ通路59は、スプール50のランド部を介してブリッジ通路58からは遮断されるとともに、スプール50の切欠部及び連絡路23を介してタンク連通路(図示省略)に接続される。一方、第1上流側アンロード通路54と第1下流側アンロード通路55とは、スプール50の切欠部及びセレクター弁40の切欠部を介して互いに連通され、第2上流側アンロード通路56と第2下流側アンロード通路57とは、スプール50の切欠部を介して互いに連通される。したがって、油圧源12からの作動油は、ロッド側チャンバー83及びヘッド側チャンバー84のいずれにも供給されず、分岐油路11bから第1上流側アンロード通路54及び第2上流側アンロード通路56に流入し、第1下流側アンロード通路55及び第2下流側アンロード通路57を介して第1バイパス通路22aに流出される。一方、ヘッド側チャンバー84から排出された作動油は、連絡路23を介してタンク連通路(図示省略)に流入し、当該タンク連通路から
図6の符合52で示すタンク連通路に流入し、このタンク連通路52から第1アクチュエータ通路53を介してロッド側チャンバー83に供給(再生)される。
【0055】
また、ブーム71が接地状態にあり且つブーム用方向切換弁30が逆駆動位置cに配置される場合(
図4参照)、ブーム用方向切換弁30及びスプール50は
図7に示すように配置される。すなわち、スプール50はパイロット圧によって本体部51に対して
図6に示す位置と基本的に同じ位置に配置される。ただし、ヘッド側チャンバー84から第2アクチュエータ通路59を介して連絡路23に流入した作動油によってセレクター弁40に加えられる力は、切換スプリング60がセレクター弁40に加える力よりも小さく、セレクター弁40は切換スプリング60により押されて
図7の右方位置に配置される。これにより第1アクチュエータ通路53は、スプール50の切欠部及びセレクター弁40の切欠部を介してブリッジ通路58に連通される。また第2アクチュエータ通路59は、スプール50のランド部を介してブリッジ通路58からは遮断されるとともに、スプール50の切欠部及び連絡路23を介してタンク連通路(図示省略)に接続される。一方、第1上流側アンロード通路54と第1下流側アンロード通路55とは、スプール50のランド部及びセレクター弁40のランド部を介して互いに遮断され、第2上流側アンロード通路56と第2下流側アンロード通路57とは、スプール50のランド部を介して互いに遮断される。したがって、油圧源12からの作動油は、ブリッジ通路58及び第1アクチュエータ通路53を介してロッド側チャンバー83に供給され、分岐油路11bは第1バイパス通路22aから遮断される。一方、ヘッド側チャンバー84から排出された作動油は、連絡路23を介してタンク連通路(図示省略)に流入し、当該タンク連通路から図示しないタンク(
図1~
図4の符合「14」参照)に向けて流れる。
【0056】
なおブーム用方向切換弁30が正駆動位置aに配置される場合には、ブーム用方向切換弁30及びスプール50は
図8に示すように配置される。すなわち、スプール50はパイロット圧によって
図5に示す位置よりも左方に配置される。これにより、ロッド側チャンバー83は第1アクチュエータ通路53及びタンク連通路52を介してタンク通路21に連通され、ヘッド側チャンバー84はブリッジ通路58及び第2アクチュエータ通路59を介して油圧源12に連通し、第1上流側アンロード通路54及び第2上流側アンロード通路56はそれぞれ第1下流側アンロード通路55及び第2下流側アンロード通路57から遮断される。
【0057】
以上説明したように、上述の油圧回路10、ブーム用方向切換弁30及びセレクター弁40によれば、空中状態にあるブーム71を下降駆動する場合、ヘッド側チャンバー84から排出される高圧の作動油がロッド側チャンバー83に供給され、油圧源12からブーム用油圧シリンダ74に新たな作動油は供給されない。したがって、ブーム71等の位置エネルギーを有効に利用し、ブームの下降動作をエネルギー効率良く行うことができる。
【0058】
またセレクター弁40は、ヘッド側チャンバー84からの作動油の圧力がセレクター弁40の切換圧よりも低い場合、油圧源12とロッド側チャンバー83とを連通させる(
図4参照)。この場合、ブーム71等の重量をピストンロッド81の下降に利用できなくても、油圧源12からロッド側チャンバー83に作動油(圧油)が供給されるため、ピストン部81aを含むピストンロッド81を下降させることができる。したがって、例えば油圧ショベル70のバケット73が降下して接地し、ヘッド側チャンバー84からの作動油の圧力がセレクター弁40の切換圧より低くなっている場合であっても、油圧源12からロッド側チャンバー83に供給される作動油によってピストンロッド81を下降させることができため、バケット73により地面を押し固めたり油圧ショベル70の機体を持ち上げたりする作業を効率良く行うことができる。
【0059】
なお本発明は、上述の実施形態及び変形例には限定されない。
【0060】
例えば、上述の実施形態ではブーム用方向切換弁30の内側にセレクター弁40が設けられ、ブーム用方向切換弁30及びセレクター弁40が一体的に構成されているが、ブーム用方向切換弁30の外側にセレクター弁40を設けて、ブーム用方向切換弁30及びセレクター弁40を互いに分離して構成してもよい。
【0061】
また
図1~
図4には、主としてブーム用油圧シリンダ74及びアーム用油圧シリンダ75に接続される油圧回路10が示されているが、バケット用油圧シリンダ76や、油圧ショベル70を構成する他の油圧式アクチュエータ(例えば、車輪(クローラ)を駆動する走行用油圧モータや、クローラよりも上方の構造体を旋回駆動する旋回用油圧モータ)が油圧回路10に接続されてもよい。これらの油圧式アクチュエータの油圧回路10に対する接続態様は特に限定されない。例えば油圧源12から延在する油路を分岐させ、油圧源12に対して互いに並列的に接続されるこれらの分岐油路を、スプール弁等の方向切換弁を介してそれぞれの油圧式アクチュエータに接続してもよい。またタンク14に連通するバイパス通路(
図1~
図4の符合「22」参照)から分岐される油路を、方向切換弁を介してそれぞれの油圧式アクチュエータに接続してもよい。
【0062】
また、上述の実施形態及び変形例の各要素に各種の変形が加えられてもよい。また、上述の構成要素以外の構成要素を含む形態も、本発明の実施形態に含まれうる。また、上述の構成要素のうちの一部の要素が含まれない形態も、本発明の実施形態に含まれうる。また、本発明のある実施形態に含まれる一部の構成要素と、本発明の他の実施形態に含まれる一部の構成要素とを含む形態も、本発明の実施形態に含まれうる。したがって、上述の実施形態及び変形例、及び上述以外の本発明の実施形態の各々に含まれる構成要素が組み合わされてもよく、そのような組み合わせに係る形態も本発明の実施形態に含まれうる。また、本発明によって奏される効果も上述の効果に限定されず、各実施形態の具体的な構成に応じた特有の効果も発揮されうる。このように、本発明の技術的思想及び趣旨を逸脱しない範囲で、特許請求の範囲、明細書、要約書及び図面に記載される各要素に対して種々の追加、変更及び部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0063】
10 油圧回路、11 油路、11a メイン油路、11b 分岐油路、11c 分岐油路、12 油圧源、13 レギュレータ、14 タンク、21 タンク通路、22 バイパス通路、22a 第1バイパス通路、22b 第2バイパス油路、23 連絡路、24 ネガティブコントロール油路、30 ブーム用方向切換弁、31 アーム用方向切換弁、40 セレクター弁、41 逆止弁、42 絞り、43 ラインリリーフメイクアップ弁、44 排出コントロール弁、45 圧力制御弁、50 スプール、51 本体部、52 タンク連通路、53 第1アクチュエータ通路、54 第1上流側アンロード通路、55 第1下流側アンロード通路、56 第2上流側アンロード通路、57 第2下流側アンロード通路、58 ブリッジ通路、59 第2アクチュエータ通路、60 切換スプリング、70 油圧ショベル、71 ブーム、72 アーム、73 バケット、74 ブーム用油圧シリンダ、75 アーム用油圧シリンダ、75a ピストンロッド、75b ロッド側チャンバー、75c ヘッド側チャンバー、76 バケット用油圧シリンダ、81 ピストンロッド、81a ピストン部、81b ロッド部、82 シリンダチューブ、83 ロッド側チャンバー、84 ヘッド側チャンバー、a 正駆動位置、b 中立位置、c 逆駆動位置