(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】建具ハンドル、建具ハンドル用の保護カバー及び建具ハンドルの製造方法
(51)【国際特許分類】
E05C 3/04 20060101AFI20220111BHJP
E05B 1/00 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
E05C3/04 J
E05B1/00 311N
(21)【出願番号】P 2017192989
(22)【出願日】2017-10-02
【審査請求日】2020-08-21
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】野沢 和哉
(72)【発明者】
【氏名】三菅 徹
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3194504(JP,U)
【文献】特表2013-508578(JP,A)
【文献】実開平02-122844(JP,U)
【文献】実開昭50-089797(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00-85/28
E05C 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドル本体の一端部側に、前記ハンドル本体の長さ方向と交差する方向に突出する軸部を有する建具ハンドルであって、
前記ハンドル本体は、
熱収縮性フィルムからなる保護カバーで被覆され、
前記保護カバーは、前記ハンドル本体の外周を被覆する外周被覆部と、前記ハンドル本体の前記一端部側の先端面を被覆する先端面被覆部と、前記軸部を露出させる切り欠き部と、を有する、建具ハンドル。
【請求項2】
前記建具ハンドルは、クレセント錠の操作ハンドルである、請求項1
に記載の建具ハンドル。
【請求項3】
ハンドル本体の一端部側に、前記ハンドル本体の長さ方向と交差する方向に突出する軸部を有する建具ハンドルを被覆する建具ハンドル用の
熱収縮性フィルムからなる保護カバーであって、
前記ハンドル本体の外周を被覆する外周被覆部と、
前記ハンドル本体の一端部側の先端面を被覆する先端面被覆部と、
前記軸部を露出させる切り欠き部と、を有する、建具ハンドル用の保護カバー。
【請求項4】
ハンドル本体の一端部側に、前記ハンドル本体の長さ方向と交差する方向に突出する軸部を有する建具ハンドルが、台座部に組み付けられる建具ハンドルの製造方法であって、
前記ハンドル本体に前記軸部を設ける工程と、
前記ハンドル本体の外周を被覆する外周被覆部と、前記ハンドル本体の一端部側の先端面を被覆する先端面被覆部と、前記ハンドル本体の前記軸部を露出させる切り欠き部と、を有する
熱収縮性フィルムからなる保護カバーによって前記ハンドル本体を被覆する工程と、
前記切り欠き部から露出する前記軸部を、前記台座部に組み付ける工程と、を備える、建具ハンドルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建具ハンドル、建具ハンドル用の保護カバー及び建具ハンドルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クレセント錠において、つまみ部分を断熱性のカバーで被覆したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、クレセント錠等の建具ハンドルは、組み立て後の工場出荷時から、建物の施工現場における施主への引き渡しまでの間の汚れ防止を目的として、保護カバーによって被覆されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開昭54-77795号の全文明細書及び図面
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の保護カバーは、ハンドル本体の一端から挿入しているだけであるため、輸送中や施工中に容易に外れてしまうおそれがあり、輸送中や施工中のキズ・汚れに対する保護が十分ではなかった。
【0006】
しかも、従来の保護カバーは、建具ハンドルの組み立て時に邪魔となるため、組立て後に被覆していた。このため、従来の建具ハンドルは、組み立て時におけるキズ・汚れから全く保護することができず、組立て時にキズ・汚れが付着するおそれがあった。
【0007】
そこで、本発明は、建具ハンドルの組み立て時にも保護カバーによって保護されると共に、保護カバーが輸送中や施工中等に容易に外れてしまうことのない建具ハンドル、建具ハンドル用の保護カバー及び建具ハンドルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本発明に係る建具ハンドルは、ハンドル本体(例えば、後述のハンドル本体2)の一端部(例えば、後述の一端部2a)側に、前記ハンドル本体の長さ方向と交差する方向に突出する軸部(例えば、後述の軸部3)を有する建具ハンドル(例えば、後述の操作ハンドル1)であって、前記ハンドル本体は、保護カバー(例えば、後述の保護カバー4)で被覆され、前記保護カバーは、前記ハンドル本体の外周を被覆する外周被覆部(例えば、後述の外周被覆部41)と、前記ハンドル本体の前記一端部側の先端面(例えば、後述の先端面22)を被覆する先端面被覆部(例えば、後述の先端面被覆部42)と、前記軸部を露出させる切り欠き部(例えば、後述の切り欠き部43)と、を有するものである。
【0009】
(2) (1)に記載の建具ハンドルにおいて、前記保護カバーは、熱収縮フィルムからなることが好ましい。
【0010】
(3) (1)又は(2)に記載の建具ハンドルにおいて、前記建具ハンドルは、クレセント錠(例えば、後述のクレセント錠5)の操作ハンドルであってもよい。
【0011】
(4) 本発明に係る建具ハンドル用の保護カバーは、ハンドル本体(例えば、後述のハンドル本体2)の一端部(例えば、後述の一端部2a)側に、前記ハンドル本体の長さ方向と交差する方向に突出する軸部(例えば、後述の軸部3)を有する建具ハンドル(例えば、後述の操作ハンドル1)を被覆する建具ハンドル用の保護カバー(例えば、後述の保護カバー4)であって、前記ハンドル本体の外周を被覆する外周被覆部(例えば、後述の外周被覆部41)と、前記ハンドル本体の一端部側の先端面(例えば、後述の先端面22)を被覆する先端面被覆部(例えば、後述の先端面被覆部42)と、前記軸部を露出させる切り欠き部(例えば、後述の切り欠き部43)と、を有するものである。
【0012】
(5) (4)に記載の建具ハンドル用の保護カバーにおいて、前記保護カバーは、熱収縮フィルムからなることが好ましい。
【0013】
(6) 本発明に係る建具ハンドルの製造方法は、ハンドル本体(例えば、後述のハンドル本体 )の一端部(例えば、後述の一端部2a)側に、前記ハンドル本体の長さ方向と交差する方向に突出する軸部(例えば、後述の軸部3)を有する建具ハンドル(例えば、後述の操作ハンドル1)が、台座部(例えば、後述の台座部50)に取り付けられる建具ハンドルの製造方法であって、前記ハンドル本体に前記軸部を設ける工程と、前記ハンドル本体の外周を被覆する外周被覆部(例えば、後述の外周被覆部41)と、前記ハンドル本体の一端部側の先端面(例えば、後述の先端面22)を被覆する先端面被覆部(例えば、後述の先端面被覆部42)と、前記軸部を露出させる切り欠き部(例えば、後述の切り欠き部43)と、を有する保護カバー(例えば、後述の保護カバー4)によって前記ハンドル本体を被覆する工程と、前記切り欠き部から露出する前記ハンドル本体の前記軸部を、前記台座部に組み付ける工程と、を備えるものである。
【0014】
(7) 前記保護カバーは、熱収縮フィルムからなることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、建具ハンドルの組み立て時にも保護カバーによって保護されると共に、保護カバーが輸送中や施工中等に容易に外れてしまうことのない建具ハンドル、建具ハンドル用の保護カバー及び建具ハンドルの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図4】操作ハンドルに取り付けられる前の本発明に係る保護カバーを示す斜視図である。
【
図5】収縮前の保護カバーに操作ハンドルを収容した状態を示す側面図である。
【
図6】保護カバーで被覆された操作ハンドルをクレセント錠の台座部に取り付ける様子を説明する図である。
【
図7】操作ハンドルが保護カバーで被覆されたクレセント錠を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1~
図3は、本発明に係る建具ハンドルの一実施形態を示しており、
図1は、建具ハンドルの平面図、
図2は建具ハンドルの側面図、
図3は、建具ハンドルの底面図である。
本実施形態において、建具ハンドルは、サッシ窓に設けられるクレセント錠の操作ハンドル1を例示している。
【0018】
操作ハンドル1は、樹脂製のハンドル本体2の一端部2a側に、ハンドル本体1の長さ方向と交差する方向に突出する軸部3を有する。軸部3は、操作ハンドル1の回転軸となる部位であり、ハンドル本体2の内部に一体にインサート成形された金属部品からなる。ハンドル本体2は、軸部3を有する一端部2a側が、他端部2b側に比べて幅広に形成された幅広部21となっている。
【0019】
ハンドル本体2は、保護カバー4で被覆されている。保護カバー4は、ハンドル本体2の外周を被覆する外周被覆部41と、ハンドル本体2の一端部2a側の先端面22を被覆する先端面被覆部42と、ハンドル本体2の軸部3を露出させるように切り欠かれた切り欠き部43と、を有する。従って、操作ハンドル1は、軸部3及び軸部3の周囲、具体的には、軸部3及び軸部3の周囲の幅広部21の底面側の一部が切り欠き部43から露出している以外、保護カバー4によって被覆されている。これにより、保護カバー4の先端面被覆部42が、ハンドル本体2の先端面22に引っ掛かるように操作ハンドル1を被覆している。なお、軸部3及び軸部3の周囲は、後述する組み付け作業に関わる操作ハンドル1の部位である。
【0020】
本実施形態に示す保護カバー4は、一般にシュリンクフィルムとも呼ばれるPET樹脂等の熱収縮性フィルムからなり、ハンドル本体2の外周面に密着している。熱収縮性フィルムからなる保護カバー4は、加熱によって収縮することにより密着するため、ハンドル本体2が複雑な形状であっても、保護カバー4はその外周面に密着して被覆することができる。
【0021】
図4は、操作ハンドル1に取り付けられる前(熱収縮する前)の保護カバー4を示す斜視図である。保護カバー4は、熱収縮性フィルムによって全体として袋状に形成されている。即ち、ハンドル本体2の一端部2a側に対応する保護カバー4の一端側は、シールされた封鎖部4aとなっている。この封鎖部4aによって先端面被覆部42が形成されている。一方、他端側は封鎖されておらず、操作ハンドル1を挿入するための挿入口4bとなっている。これにより、保護カバー4の他端側は、筒状に形成され、ハンドル本体2の外周を被覆する外周被覆部41を構成している。
【0022】
切り欠き部43は、保護カバー4の幅方向の半分が、封鎖部4aから外周被覆部41の途中までに亘って切り欠かれている。これにより、保護カバー4は、封鎖部4a側の幅方向の略半分が切り欠かれた形となっている。この切り欠き部43によって、操作ハンドル1が保護カバー4内に収容された際、操作ハンドル1の軸部3及び軸部3の周囲の幅広部21の底面側の一部が、保護カバー4から露出するようになっている。
【0023】
保護カバー4において、切り欠き部43と封鎖部4aは、どちらを先に形成してもよい。筒状のフィルムに封鎖部4aを形成した後に、切り欠き部43aを形成してもよいし、筒状のフィルムに切り欠き部43を形成した後に、封鎖部4aを形成してもよい。また、切り欠き部43と封鎖部4aは同時に形成してもよい。
【0024】
このように、操作ハンドル1を被覆している保護カバー4の先端面被覆部42は、ハンドル本体2の先端面22に引っ掛かるように被覆していることにより、保護カバー4が、ハンドル本体2の長さ方向に沿って他端部2b側へズレ移動することが防止される。このため、保護カバー4が輸送中や施工中に不意に外れてしまうことはなく、輸送中や施工中のキズ・汚れから保護される。しかも、本実施形態に示す保護カバー4は、加熱によって収縮する熱収縮性フィルムからなるため、操作ハンドル1の外周面に対して密着し、ハンドル本体2と保護カバー4との相対的なズレも生じにくい。
【0025】
操作ハンドル1の軸部3及び幅広部21の底面側の一部は、切り欠き部43から露出しているため、後述するクレセント錠の台座部に操作ハンドル1を取り付ける際に、保護カバー4が邪魔になることがない。このため、操作ハンドル1の生産から最終的な建物引き渡しまでの間、操作ハンドル1を保護カバー4で被覆したままにしておくことが可能となり、生産から組み立てまでの間のキズ・汚れからも操作ハンドル1を保護することができる。
【0026】
次に、この操作ハンドル1の製造方法について、
図1~
図7を用いて説明する。
先ず、ハンドル本体2の内部に軸部3が一体に埋設されるように、ハンドル本体2と軸部3をインサート成形し、操作ハンドル1を作製する。
【0027】
一方、保護カバー4が別途用意される。保護カバー4は、
図4に示したように、ハンドル本体2の外周を被覆する筒状の外周被覆部41と、ハンドル本体2の一端部2a側の先端面22を被覆する先端面被覆部42と、軸部3及び軸部3の周囲を露出させるように切り欠かれた切り欠き部43と、を有する熱収縮性フィルムからなる。保護カバー4の一端側はシールされた封鎖部4aであり、他端側は、シールされていない挿入口4bとなっている。
【0028】
次いで、
図5に示すように、保護カバー4の挿入口4bに、操作ハンドル1を、その一端部2a側から挿入する。保護カバー4内に挿入された操作ハンドル1の幅広部21が保護カバー4の切り欠き部43に至ると、軸部3及び軸部3の周囲の幅広部21の底面側の一部が切り欠き部43から露出する。
【0029】
その後、保護カバー4によって包囲された操作ハンドル1を、例えばオーブン等の加熱装置を用いて所定温度に加熱し、保護カバー4を収縮させる。これにより、
図1~
図3に示したように、保護カバー4は操作ハンドル1の外周面に密着し、先端面被覆部42が操作ハンドル1の先端面22に引っ掛かるように被覆する。しかし、操作ハンドル1の軸部3及び軸部3の周囲の幅広部21の一部は、保護カバー4の切り欠き部43から露出する。
【0030】
次いで、
図6に示すように、保護カバー4によって被覆された操作ハンドル1が、クレセント錠の台座部50に取り付けられる。具体的には、操作ハンドル1の軸部3に、クレセント部51の軸穴51aが嵌合して固定され、その後、軸穴51aから突出する軸部3が、台座部50に対して取り付けられる。これにより、
図7に示すクレセント錠5が構成される。
【0031】
操作ハンドル1は、組み立て作業前から保護カバー4で被覆されているため、組み立て前のキズ・汚れから保護されるのみならず、組み立て作業時のキズ・汚れからも保護される。また、この組み立て作業に関わる操作ハンドル1の部位は、保護カバー4の切り欠き部43から露出しているため、組み立て作業時に保護カバー4が邪魔になることがない。
【0032】
このようにして製造されたクレセント錠5は、操作ハンドル1が保護カバー4によって保護された状態で、工場出荷される。保護カバー4は、先端面被覆部42によって操作ハンドル1に引っ掛かるように被覆しているため、輸送中に容易に外れてしまうことがなく、輸送時のキズ・汚れからも保護される。その後、建築現場における施工から建物引き渡しまでの間、保護カバー4は操作ハンドル1から外れることなく被覆状態を維持できる。
【0033】
建物引き渡し後は、保護カバー4を引き抜いたり、引き破ることにより、容易に取り外すことができる。保護カバー4には、容易に引き破ることができるように、
図3に示すように、予めミシン目44を形成しておいてもよい。また、保護カバー4には、文字、図柄等の印刷が施されていてもよい。
【0034】
以上の実施形態では、熱収縮性フィルムのみからなる保護カバー4を例示したが、保護カバー4はこれに限定されず、台紙付きの熱収縮性フィルムからなるものであってもよい。台紙付きの熱収縮性フィルムは、台紙と共に操作ハンドル1を被覆するものである。台紙には文字や図柄等の印刷を施してもよい。
【0035】
その他、保護カバー4は、ポリエチレン等の樹脂フィルムによって養生テープからなるものであってもよいし、予めハンドル本体2の形状に合わせて形成されたシリコンカバーや、ポリスチレン系樹脂等の樹脂シートによって真空成形されたものであってもよい。いずれの場合も、上述した切り欠き部が形成される。
【0036】
また、本発明に係る建具ハンドルは、以上説明したクレセント錠の操作ハンドルに限定されず、例えば開閉ドアや扉の開閉ハンドル等であってもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 操作ハンドル(建具ハンドル)
2 ハンドル本体
2a 一端部
22 先端面
3 軸部
4 保護カバー
41 外周被覆部
42 先端面被覆部
43 切り欠き部
5 クレセント錠
50 台座部