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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】光検出装置及びレーザ装置
(51)【国際特許分類】
   G01J 1/02 20060101AFI20220111BHJP
   H01S 3/067 20060101ALI20220111BHJP
   H01S 3/00 20060101ALI20220111BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20220111BHJP
   G02B 6/26 20060101ALI20220111BHJP
   G02B 6/036 20060101ALI20220111BHJP
   H01L 31/0232 20140101ALI20220111BHJP
【FI】
G01J1/02 K
H01S3/067
H01S3/00 G
G02B6/02 431
G02B6/26
G02B6/02 411
G02B6/036
H01L31/02 C
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2017197262
(22)【出願日】2017-10-10
(65)【公開番号】P2019070599
(43)【公開日】2019-05-09
【審査請求日】2020-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【弁理士】
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】阪本 真一
【審査官】平田 佳規
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-183622(JP,A)
【文献】特開2016-161867(JP,A)
【文献】特開2019-070600(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/02 - G01J 1/04
G01J 1/42
G01M 11/00 - G01M 11/02
G02B 6/26 - G02B 6/27
G02B 6/30 - G02B 6/34
G02B 6/42 - G02B 6/43
B23K 26/00 - B23K 26/70
H01S 3/00
H01S 3/067
H01L 31/00 - H01L 31/0248
H01L 31/08 - H01L 31/119
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1コア及び前記第1コアを囲う第1クラッドを有する第1光ファイバと、
前記第1コアに接続される第2コア及び前記第2コアを囲う第2クラッドを有する第2光ファイバと、
前記第1クラッドの外側に設けられる第1クラッドモードストリッパと、
前記第1光ファイバの長手方向において前記第1クラッドモードストリッパの一方側に配置されて前記第1光ファイバを伝搬する光のレイリー散乱を検出する第1光検出部と、
前記第1光ファイバの長手方向において前記第1クラッドモードストリッパの他方側に配置されて前記第1光ファイバまたは前記第2光ファイバを伝搬する光のレイリー散乱を検出する第2光検出部と、
を備え、
前記第1コアの直径と前記第2コアの直径とは互いに等しく、
前記第2コアは前記第1コアを伝搬する光よりも高次モードの光を伝搬する
ことを特徴とする光検出装置。
【請求項2】
前記第2光ファイバは、前記第1光ファイバを伝搬する光を出射する光源からの光の伝搬方向において前記第1光ファイバよりも下流側に配置され、
前記第1光検出部は、前記第1クラッドモードストリッパよりも前記光源からの光の伝搬方向の上流側に配置され、
前記第2光検出部は、前記第1クラッドモードストリッパよりも前記光源からの光の伝搬方向の下流側に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の光検出装置。
【請求項3】
前記第1光ファイバがシングルモードファイバである
ことを特徴とする請求項1または2に記載の光検出装置。
【請求項4】
前記第2クラッドの外側に第2クラッドモードストリッパが設けられる
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の光検出装置。
【請求項5】
前記第1光ファイバ及び前記第2光ファイバの長手方向において、前記第1光ファイバと前記第2光ファイバとの接続部を挟んで前記第1光検出部と前記第2光検出部とが配置され、
前記第2光検出部は前記第2光ファイバを伝搬する光のレイリー散乱を検出する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の光検出装置。
【請求項6】
前記第2光検出部は、前記第2クラッドの外側に設けられる第2クラッドモードストリッパよりも前記第1光ファイバ側とは反対側に配置される
ことを特徴とする請求項5に記載の光検出装置。
【請求項7】
前記第1コア及び前記第2コアにドーパントが非添加とされる
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の光検出装置。
【請求項8】
前記第1光ファイバと前記第2光ファイバとの接続部から前記第1クラッドモードストリッパまでは、前記第1クラッドより屈折率が低い低屈折率樹脂で前記第1クラッドが被覆される
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の光検出装置。
【請求項9】
前記第1クラッドの外径と前記第2クラッドの外径とが互いに等しい
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の光検出装置。
【請求項10】
前記第2コア内において伝搬するそれぞれのモードの光のエネルギー差を低減するモードスクランブラ部が設けられる
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の光検出装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の光検出装置と、
前記第1光ファイバ及び前記第2光ファイバを伝搬する光を出射する少なくとも一つの光源と、
を備える
ことを特徴とするレーザ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光検出装置及び当該光検出装置を備えるレーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ファイバレーザ装置は、集光性に優れ、パワー密度が高く、小さなビームスポットとなる光が得られることから、レーザ加工分野、医療分野等の様々な分野において用いられている。このような高効率なレーザ装置によって良好な加工品質を実現するためには、光ファイバを伝搬する光の強度を正確に検出することが求められる。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、光ファイバ同士の接続部から漏れる光を検出することによって光ファイバを伝搬する光の強度を推定し得るファイバレーザ装置が記載されている。また、下記特許文献2には、光ファイバを伝搬する光のレイリー散乱を検出することによって光ファイバを伝搬する光の強度を推定し得るセンサユニットが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2012/073952号公報
【文献】国際公開第2014/035505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載のファイバレーザ装置では、光ファイバ同士の接続部からの漏れ光を利用しており、その漏れ光を光ファイバの外に取り出す際に熱が生じる。このような発熱は、光ファイバを伝搬する光のエネルギーが高くなるにつれてより顕著になる。このため、上記特許文献1に記載のファイバレーザ装置では、光ファイバを伝搬する光のエネルギーが高くなるにつれて検出器、及び検出器まで至る経路で受ける熱の影響が大きくなり、検出結果と当該検出結果から推定される光ファイバを伝搬する光の強度との関係の線形性が失われる傾向にある。よって、光ファイバを伝搬する光の強度を正確に検出することが難しくなる。
【0006】
また、特許文献2に記載のセンサユニットでは、レイリー散乱を検出しており、レイリー散乱は全方位に生じるため、光ファイバのどちらの方向に伝搬する光のレイリー散乱であるかを判別することが難しい。このため、特許文献2に記載のセンサユニットでは、光ファイバを所定の方向に伝搬する光の強度を精度よく検出することが難しい。特に金属加工等の高反射材加工ではレーザの出力方向とは逆方向に伝搬する反射光が発生しうるため、光ファイバを所定の方向に伝搬する光の強度を精度よく検出することが難しくなる。
【0007】
そこで、本発明は、光ファイバの双方向に伝搬するそれぞれの光の強度の検出精度を向上し得る光検出装置、及び当該光検出装置を備えるレーザ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の光検出装置は、第1コア及び前記第1コアを囲う第1クラッドを有する第1光ファイバと、前記第1コアに接続される第2コア及び前記第2コアを囲う第2クラッドを有する第2光ファイバと、前記第1クラッドの外側に設けられる第1クラッドモードストリッパと、前記第1光ファイバの長手方向において前記第1クラッドモードストリッパの一方側に配置されて前記第1光ファイバを伝搬する光のレイリー散乱を検出する第1光検出部と、前記第1光ファイバの長手方向において前記第1クラッドモードストリッパの他方側に配置されて前記第1光ファイバまたは前記第2光ファイバを伝搬する光のレイリー散乱を検出する第2光検出部と、を備え、前記第1コアの直径と前記第2コアの直径とは互いに等しく、前記第2コアは前記第1コアを伝搬する光よりも高次モードの光を伝搬することを特徴とする。
【0009】
一般的に、高次モードの光は、低次モードの光よりもコアの中心より外側の位置においてエネルギーが高くなり易いため、光ファイバ同士の接続部においてクラッドモード光となり易い。上記本発明の光検出装置では、第2コアは、第1コアを伝搬する光よりも高次モードの光を伝搬する。よって、第2コアから第1コア側へ伝搬する光は、第1コアから第2コア側へ伝搬する光に比べて、第1光ファイバと第2光ファイバとの接続部においてクラッドモード光となり易い。このようにしてクラッドモード光となって第1クラッドを伝搬する光の少なくとも一部は、第1クラッドモードストリッパにおいて第1光ファイバの外側に放出される。よって、第1光ファイバの長手方向において第1クラッドモードストリッパの一方側に配置される第1光検出部の検出結果と他方側に配置される第2光検出部の検出結果とでは、少なくとも第1クラッドモードストリッパで放出された光の分の差が生じる。この差の大きさは、少なくとも第2コアから第1コア側へ伝搬する光の強度に依存する。このため、第1光検出部での検出結果と第2光検出部での検出結果との差を用いて、第2コアから第1コア側へ伝搬する光の強度を推定することができる。また、上記本発明の光検出装置では、第1光検出部は第1光ファイバを双方向に伝搬する光のレイリー散乱を検出し、第2光検出部は第1光ファイバまたは第2光ファイバを双方向に伝搬する光のレイリー散乱を検出する。ここで、上記のように第2コアを第1コア側へ伝搬する光の強度を推定することによって、第1光検出部または第2光検出部での検出結果から、第1コアから第2コア側へ伝搬する光の強度も推定することもできる。さらに、上記本発明の光検出装置では、第1光検出部及び第2光検出部はそれぞれレイリー散乱を検出している。このため、上記特許文献1に記載のファイバレーザ装置のように漏れ光を検出する場合に比べて、光ファイバを伝搬する光の強度が強い場合であっても検出結果と当該検出結果から推定される光ファイバを伝搬する光の強度との関係の線形性が保たれ得る。したがって、上記本発明の光検出装置は、光ファイバの双方向に伝搬するそれぞれの光の強度の検出精度を向上し得る。
【0010】
また、前記第2光ファイバは、前記第1光ファイバを伝搬する光を出射する光源からの光の伝搬方向において前記第1光ファイバよりも下流側に配置され、前記第1光検出部は、前記第1クラッドモードストリッパよりも前記光源からの光の伝搬方向の上流側に配置され、前記第2光検出部は、前記第1クラッドモードストリッパよりも前記光源からの光の伝搬方向の下流側に配置されることが好ましい。
【0011】
以下では、光源からの光の伝搬方向の上流側を単に上流側といい、光源からの光の伝搬方向の下流側を単に下流側という場合がある。また、上流側から下流側に向かう方向を順方向といい、下流側から上流側に向かう方向を逆方向という場合がある。
【0012】
第1光ファイバより高次モードの光を伝搬する第2光ファイバが第1光ファイバよりも下流側に配置されることによって、第1光ファイバから第2光ファイバ側に伝搬する光を出射する光源から基本モードなどの低次モードの光が出射される場合に好適である。第2光ファイバが第1光ファイバよりも下流側に配置されることによって、光源から出射される低次モードの光は低損失で第1光ファイバから第2光ファイバへと伝搬され得る。一方、光源から出射する光の伝搬方向とは反対側に伝搬する反射光は高次モードの光を含みやすい。そのため、反射光のうち高次モードの光は第2光ファイバと第1光ファイバとの接続部においてクラッドモード光とされて第1クラッドモードストリッパにおいて放出され得る。
【0013】
また、前記第1光ファイバがシングルモードファイバであることが好ましい。
【0014】
第1光ファイバがシングルモードファイバであることによって、マルチモードの光となって第2光ファイバから第1光ファイバへと伝搬する光は、第1光ファイバと第2光ファイバとの接続部においてよりクラッドモード光になり易くなる。そのため、第1光検出部での検出結果と第2光検出部での検出結果との上記差が大きくなり易く、光ファイバの双方向に伝搬するそれぞれの光の検出精度がより向上され得る。
【0015】
また、前記第2クラッドの外側に第2クラッドモードストリッパが設けられることが好ましい。
【0016】
第2クラッドを第1クラッド側に伝搬するクラッドモード光が除去されない場合、第2クラッドから第1クラッド側に伝搬するクラッドモード光の少なくとも一部は第1クラッドを伝搬し得る。よって、上記のように第2光ファイバに第2クラッドモードストリッパが設けられることによって、第2クラッドを第1クラッド側に伝搬するクラッドモード光が低減されると共に、第1クラッドを第2クラッドとは反対側に伝搬するクラッドモード光も低減され得る。このように第1クラッドを伝搬するクラッドモード光が低減されることによって、当該クラッドモード光が第1光検出部に与える影響が抑制され、第1光検出部によって第1光ファイバを伝搬する光の強度がより正確に検出され得る。また、クラッドモード光が第1クラッドを第2クラッド側に伝搬する場合、当該クラッドモード光の少なくとも一部は第2クラッドを第1クラッドとは反対側に伝搬し得る。上記のように第2クラッドモードストリッパが設けられることによって、このように第2クラッドを伝搬するクラッドモード光も低減され得る。
【0017】
また、前記第1光ファイバ及び前記第2光ファイバの長手方向において、前記第1光ファイバと前記第2光ファイバとの接続部を挟んで前記第1光検出部と前記第2光検出部とが配置され、前記第2光検出部は前記第2光ファイバを伝搬する光のレイリー散乱を検出することが好ましい。
【0018】
本発明の光検出装置では、上記のように第1光ファイバと第2光ファイバとの接続部で生じるクラッドモード光が第1クラッドモードストリッパで除去されることによって生じる第1光検出部での検出結果と第2光検出部での検出結果との差を利用する。ところで、クラッドとコアとでは添加物の濃度に差があるため、コアを伝搬する光とクラッドを伝搬する光とではレイリー散乱の割合が異なる。よって、第1光検出部及び第2光検出部は、それぞれコアまたはクラッドのいずれか一方を伝搬する光のレイリー散乱を検出することが好ましい。ここで、第2コアは第1コアよりも高次モードの光を伝搬するため、第1コアから第2コア側に伝搬する光は、接続部での損失が抑制されて第2コアを伝搬する。一方、第2コアから第1コア側に伝搬する光は、上記のように接続部において少なくとも一部が第1クラッドに入射する。このように第1クラッドに入射する光の少なくとも一部は、第1光検出部よりも手前で第1クラッドモードストリッパにおいて外部に放出される。よって、接続部を挟んで第1光検出部と第2光検出部とが配置されることにより、第1光検出部は主に第1コアを伝搬する光のレイリー散乱を検出し、第2光検出部は主に第2コアを伝搬する光のレイリー散乱を検出する。このように第1光検出部及び第2光検出部がそれぞれ主にコアを伝搬する光のレイリー散乱を検出することにより、光ファイバの双方向に伝搬するそれぞれの光の強度の検出精度がより向上され得る。
【0019】
また、前記第2光検出部は、前記第2クラッドの外側に設けられる第2クラッドモードストリッパよりも前記第1光ファイバ側とは反対側に配置されることが好ましい。
【0020】
このように第2光検出部及び第2クラッドモードストリッパが配置されることによって、第2クラッドを第1クラッド側とは反対側に伝搬するクラッドモード光の少なくとも一部は第2光検出部の手前で第2クラッドモードストリッパにおいて第2光ファイバの外側に放出される。よって、第2光検出部は第2コアを伝搬する光の強度をより正確に検出し得る。
【0021】
また、前記第1コア及び前記第2コアにドーパントが非添加とされることが好ましい。
【0022】
第1コア及び第2コアにドーパントが非添加とされることによって、ドーパントの濃度分布によって第1光検出部及び第2光検出部での検出結果に誤差が生じることが抑制され得る。
【0023】
また、前記第1光ファイバと前記第2光ファイバとの接続部から前記第1クラッドモードストリッパまでは、前記第1クラッドより屈折率が低い低屈折率樹脂で前記第1クラッドが被覆されることが好ましい。
【0024】
このように第1クラッドが低屈折率樹脂で被覆されることによって、第1光ファイバと第2光ファイバとの接続部で生じるクラッドモード光は、当該接続部近傍で漏れることが抑制され、第1クラッドモードストリッパまで伝搬し得る。このように接続部近傍で光が漏れることが抑制されることによって、接続部近傍での発熱が抑制され、接続部での光の損失量の変化が抑制され得る。よって、第1光検出部及び第2光検出部においてより正確に光の強度が検出され得る。
【0025】
また、前記第1クラッドの外径と前記第2クラッドの外径とが互いに等しいことが好ましい。
【0026】
第1クラッドの外径と第2クラッドの外径とが互いに等しいことによって、第1光ファイバと第2光ファイバとを融着接続させる際に、接続部において不均一な段差が形成されることが抑制され、接続部において曲げが生じることが抑制され得る。よって、第1光ファイバと第2光ファイバとの接続部における光の損失が抑制され得る。
【0027】
また、前記第2コア内において伝搬するそれぞれのモードの光のエネルギー差を低減するモードスクランブラ部が設けられることが好ましい。
【0028】
マルチモードで光を伝搬するコア内において伝搬する光を散乱させるモードスクランブラ部が設けられることによって、当該コア内において、伝搬する光のエネルギー密度分布の差を低減し得る。このため、第2コアと第1コアとの接続部において、伝搬する光の角度に因る損失量の差を低減し得る。よって、第1光検出部及び第2光検出部での検出結果のばらつきが抑制され得る。
【0029】
また、上記課題を解決するため、本発明のレーザ装置は、上記光検出装置と、前記第1光ファイバ及び前記第2光ファイバを伝搬する光を出射する少なくとも一つの光源と、を備えることを特徴とする。
【0030】
上記のように、上記本発明の光検出装置によれば、光ファイバの双方向に伝搬するそれぞれの光の強度の検出精度を向上し得る。よって、当該光検出装置を備えるレーザ装置によれば、光ファイバを伝搬する光の強度に基づく制御の正確性を向上し得る。
【発明の効果】
【0031】
以上のように、本発明によれば、光ファイバの双方向に伝搬するそれぞれの光の強度の検出精度を向上し得る光検出装置、及び当該光検出装置を備えるレーザ装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の実施形態に係るレーザ装置の構成を概略的に示す図である。
図2図1に示す光検出装置の一部を概略的に示す断面図である。
図3】本発明の変形例に係る光検出装置の一部を概略的に示す断面図である。
図4】本発明の他の変形例に係る光検出装置の一部を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明に係る光検出装置及びレーザ装置の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0034】
図1は、本発明の実施形態に係るレーザ装置の構成を概略的に示す図である。図1に示すように、本実施形態のレーザ装置1は、光検出装置2、光源5、及び制御部CPを主な構成として備える。
【0035】
光源5は、励起光源50、光コンバイナ53、増幅用光ファイバ55、増幅用光ファイバ55の一方側に接続される光ファイバ54、光ファイバ54に設けられる第1FBG57、増幅用光ファイバ55の他方側に接続される光ファイバ56、及び光ファイバ56に設けられる第2FBG58を主な構成として備える。また、増幅用光ファイバ55と第1FBG57と第2FBG58とで共振器を構成している。
【0036】
励起光源50は、複数のレーザダイオード51から構成され、レーザダイオード51は、本実施形態においては、例えば、GaAs系半導体を材料としたファブリペロー型半導体レーザであり中心波長が915nmの励起光を出射する。また、励起光源50のそれぞれのレーザダイオード51は光ファイバ52に接続されており、レーザダイオード51から出射する励起光は光ファイバ52を伝播する。
【0037】
増幅用光ファイバ55は、コアと、コアの外周面を隙間なく囲む内側クラッドと、内側クラッドの外周面を被覆する外側クラッドと、外側クラッドを被覆する被覆層とを主な構成として備え、いわゆるダブルクラッド構造とされている。内側クラッドの屈折率はコアの屈折率よりも低く、外側クラッドの屈折率は内側クラッドの屈折率よりも低くされている。増幅用光ファイバ55のコアを構成する材料としては、例えば、屈折率を上昇させるゲルマニウム(Ge)等の元素、及び、励起光源50から出射される励起光により励起されるイッテルビウム(Yb)等の活性元素が添加された石英が挙げられる。増幅用光ファイバ55の内側クラッドを構成する材料としては、例えば、ドーパントが添加されていない純粋石英を挙げることができる。なお、内側クラッドの材料には、屈折率を低下させるフッ素(F)等の元素が添加されてもよい。外側クラッドは、樹脂または石英から成り、樹脂としては例えば紫外線硬化性樹脂が挙げられ、石英としては例えば内側クラッドよりもさらに屈折率が低くなるように屈折率を低下させるフッ素(F)等のドーパントが添加された石英が挙げられる。増幅用光ファイバ55の被覆層を構成する材料としては、例えば、紫外線硬化性樹脂が挙げられ、外側クラッドが樹脂の場合、外側クラッドを構成する樹脂とは異なる紫外線硬化性樹脂とされる。
【0038】
増幅用光ファイバ55の一方側に接続される光ファイバ54は、活性元素が添加されていないコアと、このコアの外周面を隙間なく囲む内側クラッドと、この内側クラッドの外周面を被覆する外側クラッドと、外側クラッドを被覆する被覆層とを主な構成として備える。光ファイバ54のコアは、活性元素が添加されていないことを除いて増幅用光ファイバ55のコアと略同様の構成とされる。光ファイバ54のコアは増幅用光ファイバ55のコアと接続され、光ファイバ54の内側クラッドは増幅用光ファイバ55の内側クラッドと接続されている。また、光ファイバ54のコアには、第1ミラーとしての第1FBG57が設けられている。こうして第1FBG57は、増幅用光ファイバ55の一方側に設けられている。第1FBG57は、光ファイバ54の長手方向に沿って周期的に屈折率が高くなる部分が繰り返されており、この周期が調整されることにより、励起状態とされた増幅用光ファイバ55の活性元素が放出する光うち少なくとも一部の波長の光を反射するように構成されている。第1FBG57の反射率は、後述の第2FBG58の反射率よりも高く、活性元素が放出する光うち所望の波長の光を90%以上で反射することが好ましく、99%以上で反射することがより好ましい。また第1FBG57が反射する光の波長は、上述のように活性元素がイッテルビウムである場合、例えば1090nmとされる。
【0039】
増幅用光ファイバ55の他方側に接続される光ファイバ56は、活性元素が添加されていないコアと、このコアの外周面を隙間なく囲むクラッドと、このクラッドの外周面を被覆する被覆層とを主な構成として備える。光ファイバ56のコアは増幅用光ファイバ55のコアと接続され、光ファイバ56のクラッドは増幅用光ファイバ55の内側クラッドと接続されている。また、光ファイバ56のコアには、第2ミラーとしての第2FBG58が設けられている。こうして第2FBG58は、増幅用光ファイバ55の他方側に設けられている。第2FBG58は、光ファイバ56の長手方向に沿って一定の周期で屈折率が高くなる部分が繰り返されており、第1FBG57が反射する光のうち少なくとも一部の波長の光を第1FBG57よりも低い反射率で反射するように構成される。第2FBG58は、第1FBG57が反射する光のうち少なくとも一部の波長の光を5%~50%の反射率で反射することが好ましく、5%~10%の反射率で反射することがより好ましい。
【0040】
光コンバイナ53では、それぞれの光ファイバ52のコアと光ファイバ54の内側クラッドとが接続されている。従って、それぞれのレーザダイオード51から出射する励起光が伝播する光ファイバ52と増幅用光ファイバ55の内側クラッドとは、光ファイバ54の内側クラッドを介して光学的に結合されている。
【0041】
図2は、図1に示す光検出装置2の一部を概略的に示す断面図である。図1及び図2に示すように、本実施形態の光検出装置2は、第1光ファイバ10、第2光ファイバ20、低屈折率樹脂層31、第1クラッドモードストリッパ15、第2クラッドモードストリッパ25、第1光検出部14、第2光検出部24、第1AD変換部16、第2AD変換部26、モードスクランブラ部35、及び計算部40を主な構成として備える。
【0042】
第1光ファイバ10は、上記光ファイバ56の一部であってもよく、光ファイバ56に接続される他の光ファイバであってもよい。第1光ファイバ10は、第1コア11、第1コア11を囲う第1クラッド12、第1クラッド12を囲う第1被覆層13を有する。また、第1コア11は、ドーパントが添加されていない純粋石英からなる。第1クラッド12は第1コア11より屈折率が低い材料からなる。第1クラッド12を構成する材料としては、例えば、屈折率を低下させるフッ素(F)等のドーパントが添加された石英を挙げることができる。第1被覆層13は第1クラッド12より屈折率が低い材料からなる。第1被覆層13を構成する材料としては、例えば、紫外線硬化性樹脂が挙げられる。
【0043】
第1クラッドモードストリッパ15は、第1光ファイバ10の第1クラッド12の外側に設けられている。第1クラッドモードストリッパ15は、第1クラッド12を伝搬するクラッドモード光を第1光ファイバ10の外側に放出できるように構成されるものであれば特に限定されない。本実施形態の第1クラッドモードストリッパ15は、第1クラッド12よりも屈折率が高い樹脂からなる高屈折率部15hが第1クラッド12の外側に断続的に複数設けられることによって構成される。
【0044】
第2光ファイバ20は、第1光ファイバ10よりも光源5からの光の伝搬方向の下流側に配置される。第2光ファイバ20は、第2コア21、第2コア21を囲う第2クラッド22、第2クラッド22を囲う第2被覆層23を有する。第2コア21は第1コア11を伝搬する光よりも高次モードの光を伝搬する。すなわち、第2光ファイバ20は、マルチモードファイバである。また、第2コア21は、ドーパントが添加されていない純粋石英からなる。第2クラッド22は第2コア21より屈折率が低い材料からなる。第2クラッド22を構成する材料としては、例えば、屈折率を低下させるフッ素(F)等のドーパントが添加された石英を挙げることができる。第2被覆層23は第2クラッド22より屈折率が低い材料からなる。第2被覆層23を構成する材料としては、例えば、紫外線硬化性樹脂が挙げられる。このような第2光ファイバ20は、第2コア21の直径が第1コアの直径と互いに等しく、第2クラッド22の外径が第1クラッド12の外径と互いに等しい。第1クラッド12の外径と第2クラッド22の外径とが等しいことによって、第1光ファイバ10と第2光ファイバ20とを融着接続させる際に、接続部30において不均一な段差が形成されることが抑制され、接続部30において曲げが生じることが抑制され得る。よって、第1光ファイバ10と第2光ファイバ20との接続部30における光の損失が抑制され得る。
【0045】
第2クラッドモードストリッパ25は、第2光ファイバ20の第2クラッド22の外側に設けられている。第2クラッドモードストリッパ25は、第2クラッド22を伝搬するクラッドモード光を第2光ファイバ20の外側に放出できるように構成されるものであれば特に限定されない。本実施形態の第2クラッドモードストリッパ25は、第2クラッド22よりも屈折率が高い樹脂からなる高屈折率部25hが第2クラッド22の外側に断続的に複数設けられることによって構成される。
【0046】
第1光ファイバ10と第2光ファイバ20とは互いに一方の端面が接続されており、第1コアと第2コアとは互いに接続され、第1クラッド12と第2クラッド22とが互いに接続されている。第1光ファイバ10と第2光ファイバ20と接続は、例えば互いの端面を酸水素バーナ等によって融着することによって行われる。また、第1光ファイバ10と第2光ファイバ20との接続部30の近傍では、第1被覆層13及び第2被覆層23が剥がされている。第1被覆層13及び第2被覆層23が剥がされている部位は、第1光ファイバ10と第2光ファイバ20とが接続された状態で、低屈折率樹脂層31により被覆される。低屈折率樹脂層31は、第1クラッド12の屈折率及び第2クラッド22の屈折率よりも屈折率が低い低屈折率樹脂で構成される。本実施形態の低屈折率樹脂層31は、第1クラッドモードストリッパ15から第2クラッドモードストリッパ25までの間に形成される。すなわち、接続部30から第1クラッドモードストリッパ15までの間及び接続部30から第2クラッドモードストリッパ25までの間では、第1クラッド12及び第2クラッド22が低屈折率樹脂層31に被覆される。このような低屈折率樹脂層31は、例えば、紫外線硬化性樹脂によって構成される。
【0047】
図1に示すモードスクランブラ部35は、第2光ファイバ20に形成される。モードスクランブラ部35は、第2コア21を伝搬する光を散乱させる。第2光ファイバ20はマルチモードファイバであり、モードスクランブラ部35は、第2コア21内において伝搬するそれぞれのモードの光のエネルギー差を低減する。本実施形態のモードスクランブラ部35は、図1に示すように第2光ファイバ20の一部を環状に曲げることによって形成される。
【0048】
本実施形態において、第1光検出部14は、第1光ファイバ10の外側に配置され、第1光ファイバ10を伝搬する光のレイリー散乱を検出する。また、第2光検出部24は、第2光ファイバ20の外側に配置され、第2光ファイバ20を伝搬する光のレイリー散乱を検出する。なお、レイリー散乱は全方位に生じるため、ただ単にレイリー散乱を検出するだけでは、光ファイバのどちらの方向に伝搬する光のレイリー散乱であるかを判別することが難しい。例えば、金属加工等の高反射材加工にレーザ装置を用いる場合、光ファイバには、レーザの出力方向とは逆方向に伝搬する反射光も伝搬する場合がある。このような場合において、本実施形態の光検出装置2では、後に詳述するように、光ファイバの双方向に伝搬するそれぞれの光の強度の検出精度を向上し得る。また、第1光検出部14は、第1クラッドモードストリッパ15よりも第2光ファイバ20側とは反対側に設けられ、第2光検出部24は、第2クラッドモードストリッパ25よりも第1光ファイバ10側とは反対側に設けられる。すなわち、第1光検出部14は、第1クラッドモードストリッパ15よりも光源5からの光の伝搬方向の上流側に配置され、第2光検出部24は、第2クラッドモードストリッパ25よりも光源5からの光の伝搬方向の下流側に配置される。第1光検出部14及び第2光検出部24は、それぞれ第1クラッドモードストリッパ15及び第2クラッドモードストリッパ25から離して配置されることが好ましい。第1光検出部14及び第2光検出部24が第1クラッドモードストリッパ15及び第2クラッドモードストリッパ25から離して配置されることによって、第1光検出部14及び第2光検出部24が第1クラッドモードストリッパ15及び第2クラッドモードストリッパ25で生じる熱の影響を受けることが抑制され得る。このような第1光検出部14及び第2光検出部24、それぞれ例えばフォトダイオードからなる。
【0049】
第1AD変換部16は、第1光検出部14からの信号をAD変換して計算部40へと送る部位である。また、第2AD変換部26は、第2光検出部24からの信号をAD変換して計算部40へと送る部位である。
【0050】
計算部40は、第1AD変換部16を介して送られる第1光検出部14での検出結果及び第2AD変換部26を介して送られる第2光検出部24での検出結果に基づく計算によって、後述するようにして第1コア11を伝搬する光の強度及び第2コア21を伝搬する光の強度を推定する部位である。
【0051】
図1に示す制御部CPは、計算部40からの信号に基づいて、後述するように光源5を制御する部位である。
【0052】
次に、本実施形態のレーザ装置1及び光検出装置2の動作および作用について説明する。
【0053】
まず、励起光源50のそれぞれのレーザダイオード51から励起光が出射されると、この励起光が光ファイバ54の内側クラッドを介して、増幅用光ファイバ55の内側クラッドに入射する。増幅用光ファイバ55の内側クラッドに入射した励起光は主に増幅用光ファイバ55の内側クラッドを伝播して、増幅用光ファイバ55のコアを通過する際に当該コアに添加されている活性元素を励起する。励起状態とされた活性元素は、特定の波長の自然放出光を放出する。このときの自然放出光は、例えば活性元素がイッテルビウムである場合、1090nmの波長を含み一定の波長帯域を有する光である。この自然放出光は、増幅用光ファイバ55のコアを伝播して、一部の波長の光が第1FBG57により反射され、反射された光のうち第2FBG58が反射する波長の光が第2FBG58で反射されて、共振器内を往復する。そして、第1FBG57及び第2FBG58で反射される光が増幅用光ファイバ55のコアを伝播するときに、誘導放出が生じてこの光が増幅され、共振器内における利得と損失が等しくなったところでレーザ発振状態となる。そして、第1FBG57と第2FBG58との間を共振する光のうち一部の光が第2FBG58を透過し、第1光ファイバ10及び第2光ファイバ20を介して出射する。第2光ファイバ20から出射した光は加工対象物等に照射される。また、加工対象物等に照射される光の一部は加工対象物等の表面で反射され、さらにその反射光の一部は第2光ファイバ20に戻ることがある。このようにして反射されて第2光ファイバ20に戻る光は、第2光ファイバ20を逆方向に伝搬する。
【0054】
光源5から出射されて第1光ファイバ10及び第2光ファイバ20を順方向に伝搬する光は、主に第1コア11及び第2コア21を伝搬する。また、上記のように、第1コア11では基本モードの光が高次モードの光よりも高いエネルギーで伝搬し、第2コア21ではマルチモードで光が伝搬し得る。そのため、順方向に伝搬する光は接続部30での損失が抑制されて第1コア11から第2コア21へと入射する。よって、第1コア11を順方向に伝搬する光の接続部30での損失を無視し、第1コア11を順方向で伝搬する光の強度をPf、第2コア21を逆方向で伝搬する光の強度をPrとすると、第2光検出部24で検出されるレイリー散乱から求められる光の強度M2は下記式(1)で表すことができる。
M2=Pf+Pr ・・・(1)
【0055】
また、上記のように第2光ファイバ20に戻る光は、第2コア21においてマルチモードに結合し易い。一般的に、光ファイバ同士の接続部では基本モードの光より高次モードの光の方がクラッドモード光となり易い。このため、第1光ファイバ10と第2光ファイバ20との接続部30では、順方向に伝搬する光よりも逆方向に伝搬する光の方がクラッドモード光になり易い。よって、第2コア21を逆方向に伝搬する光の少なくとも一部は接続部30において第1クラッド12に入射し易い。第1クラッド12に入射して第1クラッド12を伝搬するクラッドモード光の少なくとも一部は、第1クラッドモードストリッパ15において第1光ファイバの外側に放出される。よって、第2コア21から第1コア11へ入射する光は、第2コア21を逆方向に伝搬する光の一部である。第2コア21を逆方向に伝搬する光のうち第1コア11へ入射する光の割合をαとすると、第1光検出部14で検出されるレイリー散乱から求められる光の強度M1は下記式(2)で表すことができる。すなわち、第1コア11を逆方向に伝搬する光の強度をαPrとすることができる。
M1=Pf+αPr ・・・(2)
【0056】
第1光検出部14及び第2光検出部24での検出結果は第1AD変換部16及び第2AD変換部26を介して計算部40へと入力され、計算部40において上記式(1)、(2)の計算が行われる。さらに、上記式(1)、(2)から、第1コア11を順方向に伝搬する光の強度Pf及び第2コア21を逆方向に伝搬する光の強度Prが下記式(3)、(4)のように求められる。
Pr=(M2-M1)/(1-α) ・・・(3)
Pf=(αM2-M1)/(α-1) ・・・(4)
【0057】
また、第1コア11と第2コア21との接続部における双方向に伝搬する光の接続損失を考慮する場合は、第1光検出部14で検出されるレイリー散乱から求められる光の強度M1及び第2光検出部24で検出されるレイリー散乱から求められる光の強度M2は、それぞれ下記式(5)、(6)で表すことができる。ここで、βは、第1コア11を順方向に伝搬する光のうち第2コア21に入射して第2光検出部24で検出される位置まで達する光の割合であり、γは、第2コア21を逆方向に伝搬する光のうち第1コア11に入射して第1光検出部14で検出される位置まで達する光の割合である。すなわち、第1コア11を伝搬する逆方向の光の強度をγPr、第2コア21を伝搬する順方向の光の強度をβPfとすることができる。
M1=Pf+γPr ・・・(5)
M2=βPf+Pr ・・・(6)
【0058】
そして、上記式(5)、(6)から、第1コア11を順方向に伝搬する光の強度Pf及び第2コア21を逆方向に伝搬する光の強度Prが下記式(7)、(8)のように求められる。
Pr=(γM2-M1)/(γβ-1) ・・・(7)
Pf=(βM1-M2)/(γβ-1) ・・・(8)
【0059】
なお、上記β及びγは、事前に第1光ファイバ10及び第2光ファイバ20に順方向及び逆方向に光を伝搬させる試験を行うことによって求めることができる。具体的には、まず、第1光ファイバ10と第2光ファイバ20とを接続し、第2光ファイバ20の下流側の端面から出射する光のエネルギーを測定するカロリーメータを配置する。そして、第1光ファイバ10の上流側から順方向に光を伝搬させると、カロリーメータ、第1光検出部14及び第2光検出部24によって上記式(8)のPf、M1、M2が求められる。また、第1光ファイバ10の上流側の端面から出射する光のエネルギーを測定するカロリーメータを配置し、第2光ファイバ20の下流側から逆方向に光を伝搬させると、カロリーメータ、第1光検出部14及び第2光検出部24によって上記式(7)のPr、M1、M2が求められる。これらの結果から、βとγが求められる。
【0060】
上記のようにして計算部40で順方向の光の強度Pf及び逆方向の光の強度Prを求めた後、この計算結果に基づいて制御部CPによってレーザ装置1に対して所定の制御を行うことができる。例えば、順方向の光の強度Pfに応じて光源5からの出力を調整する制御を行ったり、逆方向の光の強度Pfが許容値を超える場合にレーザ装置1から出射されるレーザ光を止める制御を行ったりすることができる。
【0061】
以上のように、本実施形態の光検出装置2では、第2コア21は第1コア11を伝搬する光よりも高次モードの光を伝搬する。一般的に、高次モードの光は、低次モードの光よりもコアの中心より外側の位置においてエネルギーが高くなり易いため、光ファイバ同士の接続部においてクラッドモード光となり易い。よって、第2コア21から第1コア11側へと逆方向に伝搬する光は、第1コア11から第2コア21側へと順方向に伝搬する光に比べて、第1光ファイバ10と第2光ファイバ20との接続部30においてクラッドモード光となり易い。このようにしてクラッドモード光となって第1クラッド12を伝搬する光の少なくとも一部は、第1クラッドモードストリッパ15において第1光ファイバ10の外側に放出される。よって、第1クラッドモードストリッパ15より上流に配置される第1光検出部14の検出結果と第1クラッドモードストリッパ15より下流に配置される第2光検出部24の検出結果とでは、少なくとも第1クラッドモードストリッパ15で放出された光の分の差が生じる。この差の大きさは、少なくとも第2コア21を逆方向に伝搬する光の強度に依存する。このため、第1光検出部14での検出結果と第2光検出部24での検出結果との差を用いて、第2コア21を逆方向に伝搬する光の強度を推定することができる。また、本実施形態の光検出装置2では、第1光検出部14は第1光ファイバ10を双方向に伝搬する光のレイリー散乱を検出し、第2光検出部24は第2光ファイバ20を双方向に伝搬する光のレイリー散乱を検出する。ここで、上記のように逆方向に伝搬する光の強度を推定することによって、第1光検出部14または第2光検出部24での検出結果から、順方向に伝搬する光の強度も推定することもできる。さらに、本実施形態の光検出装置2では、第1光検出部14及び第2光検出部24はそれぞれレイリー散乱を検出している。このため、上記特許文献1に記載のファイバレーザ装置のように漏れ光を検出する場合に比べて、光ファイバを伝搬する光の強度が強い場合であっても検出結果と当該検出結果から推定される光ファイバを伝搬する光の強度との関係の線形性が保たれ得る。したがって、本実施形態の光検出装置2は、光ファイバの双方向に伝搬するそれぞれの光の強度の検出精度を向上し得る。
【0062】
また、本実施形態の光検出装置2では、第1光検出部14は、第1クラッドモードストリッパ15よりも光源5からの光の伝搬方向の上流側に配置され、第2光検出部24は、第2クラッドモードストリッパ25よりも光源5からの光の伝搬方向の下流側に配置される。このように第1光検出部14、第2光検出部24、第1クラッドモードストリッパ15及び第2クラッドモードストリッパ25が配置されることによって、上流側から下流側に伝搬するクラッドモード光の少なくとも一部は第2光検出部24の手前で第2クラッドモードストリッパ25において第2光ファイバ20の外側に放出される。また、下流側から上流側に伝搬するクラッドモード光の少なくとも一部は第1光検出部14の手前で第1クラッドモードストリッパ15において第1光ファイバ10の外側に放出される。よって、第1光検出部14では第1コア11を伝搬する光の強度をより正確に検出し得るようになり、第2光検出部24では第2コア21を伝搬する光の強度をより正確に検出し得るようになる。
【0063】
また、本実施形態の光検出装置2では、第1コア11及び第2コア21にドーパントが非添加とされることによって、ドーパントの濃度分布によって第1光検出部14及び第2光検出部24での検出結果に誤差が生じることが抑制され得る。
【0064】
また、本実施形態の光検出装置2では、第1光ファイバ10と第2光ファイバ20との接続部30から第1クラッドモードストリッパ15まで、第1クラッド12は低屈折率樹脂層31により被覆されている。このように第1クラッド12が低屈折率樹脂層31に被覆されることによって、接続部30で生じる逆方向に伝搬するクラッドモード光は、接続部30近傍で漏れることが抑制され、第1クラッドモードストリッパ15まで伝搬し得る。また、本実施形態の光検出装置2では、接続部30から第2クラッドモードストリッパ25までも、第2クラッド22が低屈折率樹脂層31により被覆されている。このように第2クラッド22が低屈折率樹脂層31に被覆されることによって、接続部30で生じる順方向に伝搬するクラッドモード光は、接続部30近傍で漏れることが抑制され、第2クラッドモードストリッパ25まで伝搬し得る。このように接続部30近傍で光が漏れることが抑制されることによって、接続部30近傍での発熱が抑制され、接続部30での光の損失量の変化が抑制され得る。よって、第1光検出部14及び第2光検出部24においてより正確に光の強度が検出され得る。
【0065】
また、本実施形態の光検出装置2では、第2光ファイバ20にモードスクランブラ部35が形成され、第2コア21内においてマルチモードで伝搬する光が散乱する。よって、第2コア21内において、伝搬する光のエネルギー密度分布の差が低減され得る。このため、第2コア21と第1コア11との接続部において、伝搬する光の角度に因る損失量の差が低減され得る。よって、第1光検出部14及び第2光検出部24での検出結果のばらつきが抑制され得る。
【0066】
また、本実施形態のレーザ装置1は、光検出装置2と、第1光ファイバ10及び第2光ファイバ20を伝搬する光を出射する光源5と、を備える。上記のように、光検出装置2によれば、光ファイバの双方向に伝搬するそれぞれの光の強度の検出精度を向上し得る。よって、光検出装置2を備えるレーザ装置1によれば、光ファイバを伝搬する光の強度に基づく制御の正確性を向上し得る。
【0067】
以上、本発明について、実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、第2光ファイバ20が第1光ファイバ10よりも下流側に配置される例を挙げて説明したが、第2光ファイバ20は第1光ファイバ10よりも上流側に配置されてもよい。ただし、第1光ファイバ10より高次モードの光を伝搬する第2光ファイバ20が第1光ファイバ10よりも下流側に配置されることによって、第1光ファイバ10から第2光ファイバ20側に伝搬する光を出射する光源から基本モードなどの低次モードの光が出射される場合に好適である。第2光ファイバ20が第1光ファイバ10よりも下流側に配置されることによって、光源5から出射される低次モードの光は低損失で第1光ファイバ10から第2光ファイバ20へと伝搬され得る。一方、光源5から出射する光の伝搬方向とは反対側に伝搬する反射光は高次モードの光を含みやすい。そのため、反射光のうち高次モードの光は第2光ファイバ20と第1光ファイバ10との接続部においてクラッドモード光とされて第1クラッドモードストリッパ15において放出され得る。
【0068】
また、上記実施形態では、第2光ファイバ20に第2クラッドモードストリッパ25が設けられる例を挙げて説明したが、第2クラッドモードストリッパ25は必須の構成ではない。ただし、第2光ファイバ20に第2クラッドモードストリッパ25が設けられることによって、以下に説明するように光ファイバを伝搬する光の強度をより正確に検出し得る。第2クラッド22を逆方向に伝搬するクラッドモード光が除去されない場合、第2クラッド22から第1クラッド12側に伝搬するクラッドモード光の少なくとも一部は第1クラッド12を伝搬し得る。よって、第2光ファイバ20に第2クラッドモードストリッパ25が設けられることによって、第2クラッド22を逆方向に伝搬するクラッドモード光が低減されると共に、第1クラッド12を逆方向に伝搬するクラッドモード光も低減され得る。このように第1クラッド12を逆方向に伝搬するクラッドモード光が低減されることによって、当該クラッドモード光が第1光検出部14に与える影響が抑制され、第1光検出部14によって第1光ファイバ10を伝搬する光の強度がより正確に検出され得る。また、クラッドモード光が第1クラッド12を順方向に伝搬する場合、当該クラッドモード光の少なくとも一部は第2クラッド22を順方向に伝搬し得る。第2クラッドモードストリッパ25が設けられることによって、このように第2クラッド22を順方向に伝搬するクラッドモード光も低減され得る。
【0069】
また、図3に示すように、第2光検出部24の下流側に更に他のクラッドモードストリッパ25aが設けられてもよい。図3は、本発明の変形例に係る光検出装置2aの一部を概略的に示す断面図である。本変形例において、上記実施形態と同様の構成には同じ参照符号を付して詳細な説明は省略する。第2光ファイバ20から出射されて第2光ファイバ20に戻ってくる反射光の一部はクラッドモード光となる場合がある。第2光検出部24の下流側にも他のクラッドモードストリッパ25aが設けられることによって、このような反射光に起因するクラッドモード光が第2光検出部24の手前で除去され得るため、第2光検出部24での検出結果の精度がより向上され得る。
【0070】
また、上記実施形態では第1光検出部14が第1光ファイバ10の外側に設けられ、第2光検出部24が第2光ファイバ20の外側に設けられる例を挙げて説明したが、本発明は当該形態に限定されない。図4は、本発明の他の変形例に係る光検出装置2bの一部を概略的に示す断面図である。本変形例において、上記実施形態と同様の構成には同じ参照符号を付して詳細な説明は省略する。第1光検出部14及び第2光検出部24は第1クラッドモードストリッパ15を挟むように配置されていればよく、図4に示すように第1光検出部14及び第2光検出部24がともに第1光ファイバ10の外側に設けられもよい。ただし、上記実施形態にように第1光ファイバ10と第2光ファイバ20との接続部30を挟んで第1光検出部14及び第2光検出部24が配置されることが好ましい。上記のように、光検出装置2では、第1光ファイバ10と第2光ファイバ20との接続部30で生じるクラッドモード光が第1クラッドモードストリッパ15で除去されることによって生じる第1光検出部14での検出結果と第2光検出部24での検出結果との差を利用する。ところで、クラッドとコアとでは添加物の濃度に差があるため、コアを伝搬する光とクラッドを伝搬する光とではレイリー散乱の割合が異なる。よって、第1光検出部14及び第2光検出部24は、それぞれコアまたはクラッドのいずれか一方を伝搬する光のレイリー散乱を検出することが好ましい。ここで、第2コア21は第1コア11よりも高次モードの光を伝搬するため、第1コア11から第2コア21側に伝搬する光は、接続部30での損失が抑制されて第2コア21を伝搬する。一方、第2コア21から第1コア11側に伝搬する光は、上記のように接続部30において少なくとも一部が第1クラッド12に入射する。このように第1クラッド12に入射する光の少なくとも一部は、第1光検出部14よりも手前で第1クラッドモードストリッパ15において外部に放出される。よって、接続部30を挟んで第1光検出部14と第2光検出部24とが配置されることにより、第1光検出部14は主に第1コア11を伝搬する光のレイリー散乱を検出し、第2光検出部24は主に第2コア21を伝搬する光のレイリー散乱を検出する。このように第1光検出部14及び第2光検出部24がそれぞれ主にコアを伝搬する光のレイリー散乱を検出することにより、光ファイバの双方向に伝搬するそれぞれの光の強度の検出精度がより向上され得る。
【0071】
また、上記実施形態では、単に第2コア21が第1コア11を伝搬する光より高次モードの光を伝搬すると説明したが、第1光ファイバ10がシングルモードファイバであってもよい。第1光ファイバ10がシングルモードファイバであることによって、上記のようにマルチモードの光となって第2光ファイバ20から第1光ファイバ10へと伝搬する光は、第1光ファイバ10と第2光ファイバ20との接続部30においてよりクラッドモード光になり易くなる。そのため、第1光検出部14での検出結果と第2光検出部24での検出結果との上記差が大きくなり易く、光ファイバの双方向に伝搬するそれぞれの光の検出精度がより向上され得る。
【0072】
また、上記実施形態では、第1クラッド12の外径と第2クラッド22の外径とが互いに等しい例を挙げて説明したが、第1クラッド12の外径と第2クラッド22の外径とは互いに異なっていてもよい。ただし、第1クラッド12の外径と第2クラッド22の外径とが互いに等しいことによって、第1光ファイバ10と第2光ファイバ20との接続部30における光の損失が抑制され得る。
【0073】
また、上記実施形態では第1コア11及び第2コア21にドーパントが添加されていない例を挙げて説明したが、第1コア11及び第2コア21にはゲルマニウム等の屈折率を高くするドーパント等が添加されていてもよい。
【0074】
また、上記実施形態では第2光ファイバ20にモードスクランブラ部35が設けられる例を挙げて説明したが、モードスクランブラ部35は必須の構成ではない。また、モードスクランブラ部35が設けられる場合、モードスクランブラ部35は上記実施形態にように光ファイバを環状に曲げる形態に限定されず、例えば光ファイバを螺旋状や波線状に折り曲げることによってモードスクランブラ部35が形成されてもよい。
【0075】
また、上記実施形態では光源5が共振器型のファイバレーザ装置である例を挙げて説明したが、光源5は、他のファイバレーザ装置や固体レーザ装置であってもよい。光源5がファイバレーザ装置とされる場合、MO-PA(Master Oscillator Power Amplifier)型のファイバレーザ装置であってもよい。また、光源5の数は特に限定されず、少なくとも1つ備えられていればよい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上説明したように、本発明によれば、光ファイバの双方向に伝搬する光の検出精度を向上し得る光検出装置及びレーザ装置が提供され、ファイバレーザ装置や光ファイバ通信等の分野で利用することが期待される。
【符号の説明】
【0077】
1・・・レーザ装置
2,2a,2b・・・光検出装置
5・・・光源
10・・・第1光ファイバ
11・・・第1コア
12・・・第1クラッド
14・・・第1光検出部
15・・・第1クラッドモードストリッパ
16・・・第1AD変換部
20・・・第2光ファイバ
21・・・第2コア
22・・・第2クラッド
24・・・第2光検出部
25・・・第2クラッドモードストリッパ
26・・・第2AD変換部
30・・・接続部
31・・・低屈折率樹脂層
35・・・モードスクランブラ部
40・・・計算部
CP・・・制御部
図1
図2
図3
図4