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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】足場吊上装置
(51)【国際特許分類】
   E04G 3/00 20060101AFI20220111BHJP
【FI】
E04G3/00 K
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017210713
(22)【出願日】2017-10-31
(65)【公開番号】P2019082071
(43)【公開日】2019-05-30
【審査請求日】2020-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000245852
【氏名又は名称】矢作建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】中村 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】小室 勇
(72)【発明者】
【氏名】相澤 治
(72)【発明者】
【氏名】杉政 敦史
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-152981(JP,A)
【文献】特開平06-002428(JP,A)
【文献】特開平09-296601(JP,A)
【文献】特開平09-158470(JP,A)
【文献】実開平02-129548(JP,U)
【文献】実開昭55-121843(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 3/00
E04G 3/30
E04G 1/17
E04G 1/20
E01D 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いの間隔が固定された状態で平行且つ水平に延びる複数のフレームと、
前記フレームに対し固定された状態で回転可能とされている滑車と、
前記滑車に対し前記フレームの延びる方向に離れた位置で同フレームに固定されているウインチと、を備えており、
前記ウインチから延びるワイヤが前記滑車に巻き掛けられるとともに前記フレームの上方に位置する作業位置に連結され、前記複数のフレームの上に足場を取り付けた状態で、前記ウインチにより前記ワイヤを巻き取ることにより、前記足場を前記作業位置まで吊り上げる足場吊上装置において、
前記フレームには、前記滑車の中心軸を支持する支持部材が固定されている一方、その支持部材を固定することが可能な固定部が前記フレームの延びる方向に間隔をおいて複数箇所に設けられており、
前記支持部材は、前記複数箇所の固定部のうちのいずれかを選択して固定することが可能とされており、
前記滑車は一つのフレームに同フレームの延びる方向に間隔をおいて二つ設けられており、それら滑車の間には各滑車に対応してそれぞれ前記ウインチが設けられており、
前記ウインチは、前記フレームに対する固定位置を同フレームの延びる方向に変更することが可能とされている
ことを特徴とする足場吊上装置。
【請求項2】
前記フレームは、複数の分割体を同フレームの延びる方向に接続することによって形成されており、それら分割体の数を変えることによって同フレームの延びる方向についての長さを調整可能なものである請求項1に記載の足場吊上装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の足場吊上装置において、
前記ワイヤを前記作業位置に設けられている支持具に対し連結するための連結具を備えており、
前記連結具は、前記支持具を挟み込むことが可能な一対の挟持片と、前記ワイヤによる下方への荷重を受けて同荷重に基づき前記一対の挟持片を互いに接近させる方向に変位させるリンク機構とを備えており、前記一対の挟持片で前記支持具を挟み込んで同支持具に対し前記一対の挟持片を係合させることにより、前記作業位置に連結されるものであることを特徴とする足場吊上装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足場吊上装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高架橋のメンテナンス作業など高所での作業を行う際には、その作業が行われる作業位置に足場を固定するため、足場吊上装置により上記足場を作業位置まで吊り上げることが行われている。こうした足場吊上装置は、互いの間隔が固定された状態で平行且つ水平に延びる複数のフレームを備えている。更に、同装置は、特許文献1に示されるように、上記フレームに対し固定された状態で回転可能とされている滑車と、その滑車に対し上記フレームの延びる方向に離れた位置で同フレームに固定されているウインチと、を備えている。
【0003】
上記吊上装置で足場を作業位置まで吊り上げる際には、その作業位置の下方に上記フレームを配置し、そのフレームのウインチから延びるワイヤを滑車に巻き掛けつつ上記作業位置に連結する。更に、上記複数のフレームの上に足場を取り付けた状態で、ウインチによってワイヤを巻き取ることにより足場を作業位置まで吊り上げ、その作業位置に足場を固定する。そして、このように足場を作業位置に固定した後には、その足場を上記フレームから取り外して同フレームを作業位置の下方に下ろすようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-152981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記吊上装置において、ウインチから延びたワイヤが滑車に巻き掛けられて上方に延びる位置は、回転可能に支持された上記滑車のフレームに対する固定位置ということになり、その固定位置によって決まるようになる。そして、フレームに対する滑車の上記固定位置については、滑車から上方に延びるワイヤとフレーム上に取り付けられる足場とが接触しないよう、その足場の大きさやフレーム上での位置などによって定められる。
【0006】
しかし、フレームに対する滑車の上記固定位置を一度決めてしまうと、同フレーム上に取り付けられる足場の大きさやフレーム上での位置などが、フレームに対する滑車の上記固定位置によって限定される。従って、フレーム上に取り付けられる足場を大きさの異なる別のものに取り替えたり、フレーム上における足場の取り付け位置を変更したりしようとしても、それらのことが大きく制限されるため、足場吊上装置の汎用性が著しく低下する。
【0007】
本発明の目的は、汎用性の低下を抑制することができる足場吊上装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する足場吊上装置は、互いの間隔が固定された状態で平行且つ水平に延びる複数のフレームと、そのフレームに対し固定された状態で回転可能とされている滑車と、その滑車に対し上記フレームの延びる方向に離れた位置で同フレームに固定されているウインチと、を備える。この足場吊上装置においては、ウインチから延びるワイヤが滑車に巻き掛けられるとともにフレームの上方に位置する作業位置に連結され、複数のフレームの上に足場を取り付けた状態で、ウインチにより上記ワイヤを巻き取ることにより、足場が上記作業位置まで吊り上げられる。また、同装置のフレームには、滑車の中心軸を支持する支持部材が固定されている一方、その支持部材を固定することが可能な固定部がフレームの延びる方向に間隔をおいて複数箇所に設けられている。更に、上記支持部材は、上記複数箇所の固定部のうちのいずれかを選択して固定することが可能とされている。
【0009】
上記構成によれば、ウインチから延びたワイヤは、フレームにおける滑車の固定位置(支持部材の固定位置)で、同滑車に巻き掛けられて上方に延びるようになる。この滑車の中心軸を支持する支持部材のフレームに対する固定は、同フレームの延びる方向に間隔をおいて複数箇所に設けられている固定部のうちのいずれかを選択して行われる。このため、フレームに対する支持部材(滑車)の固定位置を変更することができ、その固定位置の変更を通じてフレームにおいてワイヤが滑車から上方に延びる位置を変更することもできる。従って、フレーム上に取り付けられる足場を大きさの異なる別のものに取り替えたり、フレーム上における足場の取り付け位置を変更したりしようとするとき、上記滑車から上方に延びるワイヤとフレーム上に取り付けられる足場とが接触しないよう、滑車の中心軸を支持する支持部材のフレームに対する固定位置を変更することができる。その結果、フレーム上に取り付けられる足場を大きさの異なる別のものに取り替えたり、フレーム上における足場の取り付け位置を変更したりすることが、大きく制限されてしまうことはなくなり、その制限に伴って足場吊上装置の汎用性が低下することは抑制されるようになる。
【0010】
なお、上記足場吊上装置において、上記滑車は一つのフレームに同フレームの延びる方向に間隔をおいて二つ設けられるものとし、それら滑車の間に各滑車に対応してそれぞれ上記ウインチを設けることが考えられる。
【0011】
上記足場吊上装置において、上記ウインチは、フレームに対する固定位置を同フレームの延びる方向に変更することが可能なものとすることが考えられる。
フレームに対する支持部材(滑車)の固定位置を変更する際、滑車とウインチとの間の距離が短くなることに起因してウインチのフリートアングルが大きくなりすぎると、ウインチによるワイヤの巻き取りに支障を来すおそれがある。しかし、上記構成によれば、フレームに対する支持部材の固定位置を変更するとき、ウインチによるワイヤの巻き取りに支障を来すことのないレベルにフリートアングルが小さく抑えられるよう、フレームに対するウインチの固定位置を変更することができる。詳しくは、支持部材とウインチとの間の距離が、ウインチによるワイヤの巻き取りに支障を来すことのないレベルにフリートアングルが小さく抑えられる値となるよう、フレームに対するウインチの固定位置を変更することができる。
【0012】
なお、上記フレームは、複数の分割体を同フレームの延びる方向に接続することによって形成されており、それら分割体の数を変えることによって同フレームの延びる方向についての長さを調整可能なものとすることが考えられる。
【0013】
この構成によれば、フレーム上に取り付けられる足場の大きさやフレーム上での位置に応じて、フレームを形成する複数の分割体の数を変えることにより、同フレームの長さを調整することができる。
【0014】
上記足場吊上装置は、ワイヤを上記作業位置に連結するための連結具を備えるものとすることが考えられる。この連結具は、上記作業位置に設けられている支持具を挟み込むことが可能な一対の挟持片と、前記ワイヤによる下方への荷重を受けて同荷重に基づき一対の挟持片を互いに接近させる方向に変位させるリンク機構とを備える。この連結具は、一対の挟持片で上記支持具を挟み込んで同支持具に対し一対の挟持片を係合させることにより、上記作業位置に連結される。
【0015】
上記構成によれば、滑車から上方に延びるワイヤが連結具を用いて作業位置の支持具に対し連結される。詳しくは、上記連結具における一対の挟持片で上記支持具を挟み込んだ状態のもと、ウインチによるワイヤの巻き取りが行われると、上記連結具のリンク機構がワイヤからの下方への荷重を受けて一対の挟持片を互いに接近する方向に変位させる。これにより、連結具における一対の挟持片が上記支持具に対し係合された状態となり、フレームにおいて滑車から上方に延びるワイヤが、作業位置に設けられている上記支持具に対し上記連結具を介して容易に連結されるようになる。その後、ウインチによるワイヤの巻き取りによってフレームが作業位置まで吊り上げられる。一方、ウインチからワイヤを繰り出すことにより、フレームが地上(床面)に下ろされると、連結具のリンク機構に対しワイヤによる下方への荷重が作用しなくなるため、連結具における一対の挟持片を互いに離間する方向に変位させることが可能となる。そして、一対の挟持片を互いに離間する方向に変位させれば、支持具に対する上記挟持片の係合を容易に解除することができ、連結具を支持具から簡単に取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】足場吊上装置を示す側面図。
図2】足場吊上装置を示す平面図。
図3】足場吊上装置の使用状態を示す正面図。
図4】連結具を示す正面図。
図5】(a)、(b)、(c)は、トラスフレームを形成するための分割体を示す側面図。
図6】(a)及び(b)は、分割体同士を接続するためのフランジ部を示す側面図及び正面図。
図7】フランジ部同士の接続態様を示す斜視図。
図8】トラスフレームにおける長手方向の端部を示す側面図。
図9図8のトラスフレームのサポートジャッキが設けられている部分を、矢印A-A方向から見た状態を示す断面図。
図10図8のトラスフレームの滑車及びキャスタが設けられている部分を、矢印B-B方向から見た状態を示す断面図。
図11】トラスフレームを斜め下側から見た状態を示す斜視図。
図12】立板及び滑車を示す側面図。
図13図12の立板及び滑車を矢印C-C方向から見た状態を示す断面図。
図14】立板及び滑車を示す平面図。
図15】(a)~(f)は、トラスフレームの長さの調整例を示す側面図。
図16】滑車とウインチとの間の距離と、同ウインチのフリートアングルとの関係を示す略図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、足場吊上装置の一実施形態について、図1図15を参照して説明する。
図1に示す足場吊上装置1は、高架橋のメンテナンス作業など高所での作業を行う際の足場を、同作業が行われる作業位置まで吊り上げるためのものである。足場吊上装置1は、水平方向に延びる直方体状のトラスフレーム2と、そのトラスフレーム2に対し固定された状態で回転可能に支持されている滑車3と、その滑車3に対しトラスフレーム2の延びる方向に離れた位置で同トラスフレーム2に固定されているウインチ4と、を備えている。
【0018】
トラスフレーム2の下側には、複数のキャスタ11がトラスフレーム2の延びる方向に間隔をおいて設けられている。上記キャスタ11は、トラスフレーム2の下面に固定された取付台13に対し取り付けられている。また、キャスタ11は、トラスフレーム2を支持するための車輪11aを備えており、その車輪11aの回転を通じてトラスフレーム2の水平移動を可能としている。
【0019】
トラスフレーム2の下側には、複数のサポートジャッキ12もトラスフレーム2の延びる方向に間隔をおいて設けられている。これらサポートジャッキ12は、鉛直方向に変位することが可能な脚部12aを備えている。そして、サポートジャッキ12の脚部12aを下方に変位させることにより、キャスタ11の車輪11aが地上(床面)から離れるようトラスフレーム2が持ち上げられる。ちなみに、この状態のもとではトラスフレーム2が水平移動することはない。
【0020】
足場吊上装置1における上記滑車3は、図1の例では、トラスフレーム2における長手方向の両端部にそれぞれ設けられている。従って、一つのトラスフレーム2に対し、同トラスフレーム2の延びる方向に間隔をおいて二つの滑車3が設けられている。また、トラスフレーム2における長手方向の両端部には、上述した複数の取付台13のうちの二つが固定されている。そして、上記滑車3は、トラスフレーム2における長手方向の両端部に固定されている取付台13に取り付けられた立板14によって回転可能に支持されている。なお、これら立板14及び取付台13は、滑車3の中心軸を支持するとともにトラスフレーム2に対し固定された支持部材としての役割を担う。
【0021】
一方、トラスフレーム2における長手方向の中央部には、上記ウインチ4が各滑車3に対応して各滑車3毎に設けられている。このウインチ4からは水平方向に、同ウインチ4に対応する滑車3に向けてワイヤ6が延びている。更に、このワイヤ6は上記滑車3に巻き掛けられて上方に向けて延びている。そして、上方に向けて延びる上記ワイヤ6は、上記作業位置に設けられている支持具に対し係合可能な連結具7のローラ19に巻き掛けられており、その巻き掛けにより下方に向けて反転して延びている。このワイヤ6の連結具7で反転した端部(図1の下端部)は、上記立板14に対して接続されている。
【0022】
図2は、足場吊上装置1を上方から見た状態を示している。図2から分かるように、同装置1においては、複数(この例では二つ)の上記トラスフレーム2が平行に延びるように設けられている。これらトラスフレーム2の間には、水平且つ同トラスフレーム2と直交する方向に延びる複数のパイプ8が掛け渡されている。これらパイプ8同士は、互いに間隔をおいて平行に延びており、パイプ9によって上記間隔を保持した状態で互いに連結されている。また、この状態のもとで各パイプ8を複数のトラスフレーム2に対しそれぞれ固定することにより、平行に延びる各トラスフレーム2の互いの間隔が固定されている。
【0023】
足場吊上装置1において、各トラスフレーム2の上には高所(上記作業位置)での作業を行うための足場10が載せられており、その足場10は各トラスフレーム2に対し一体移動可能に取り付けられている。そして、トラスフレーム2における長手方向の両端部に設けられている滑車3は、足場10の下から水平方向にはみ出している。言い換えれば、上記滑車3は、足場10の下から水平方向にはみ出すようトラスフレーム2に設けられている。そして、それら滑車3に巻き掛けられているワイヤ6(図1)は、足場10と接触することなく上方に向けて延びている。
【0024】
図3は、足場吊上装置1を図2の左側から見た状態を示している。同装置1は、サポートジャッキ12(図1)における脚部12aの変位を通じて、水平移動を可能としたり同水平移動が禁止されたりする。そして、足場吊上装置1の水平移動を禁止した状態のもと、同装置1のトラスフレーム2上に上記足場10が取り付けられる。この足場10は、トラスフレーム2上に載せられている平板状の床部10aと、同床部10aの縁から上方に延びる側壁部10bと、を備えている。こうしてトラスフレーム2上に足場10が取り付けられると、足場吊上装置1における水平移動の禁止が解除される。その後、同装置1は、高架橋15のメンテナンス作業を行う際の作業位置の下方まで水平移動され、その作業位置の下方で水平移動を禁止した状態とされる。そして、同装置1における滑車3から上方に延びるワイヤ6が、高架橋15の上記作業位置に設けられている支持具16に対し、より詳しくは高架橋15の下面の主桁等の支持具16に対し、上記連結具7を介して連結される。
【0025】
図4は、上記支持具16及び上記連結具7を拡大して示している。図4に示されるように、上記支持具16の下端部には、水平方向に突出する一対の係合片16aが形成されている。一方、上記連結具7は、支持具16における一対の係合片16aを水平方向両側から挟み込むことが可能な一対の挟持片17と、それら挟持片17同士を繋ぐリンク機構18と、を備えている。また、リンク機構18は、ワイヤ6を巻き掛けるための上記ローラ19と繋がっており、同ローラ19を介してワイヤ6による下方への荷重を受けると、同荷重に基づき一対の挟持片17を互いに接近させる方向に変位させるよう動作する構造を有している。
【0026】
ローラ19にワイヤ6が巻き掛けられた連結具7は、高所作業車等を用いて作業者が上記支持具16の位置まで運ぶとともに、連結具7における一対の挟持片17を上記支持具16における一対の係合片16aに対し、それら係合片16aを水平方向に挟む位置に配置する。この状態のもと、ウインチ4(図1)によってワイヤ6を巻き取ると、ワイヤ6による下方への荷重(足場吊上装置1の質量に基づく荷重)が連結具7のローラ19及びリンク機構18に対し作用する。その結果、上記荷重に基づくリンク機構18の動作により、一対の挟持片17が互いに接近する方向に変位し、それによって支持具16における一対の係合片16aが連結具7における一対の挟持片17の対向する部分に形成された凹所17aに挿入されて同挟持片17と係合されるようになる。こうしてワイヤ6が支持具16に連結具7を介して連結される。
【0027】
この状態のもと、ウインチ4によるワイヤ6の巻き取りを続けると、図3に示すように足場10を取り付けたトラスフレーム2(足場吊上装置1)が、高架橋15の上記作業位まで吊り上げられる。このように足場10が上記作業位置まで吊り上げられると、高架橋15の下面に対し図示しない吊り下げ器具を用いて足場10が固定される。その後、同足場10が足場吊上装置1(トラスフレーム2)から取り外され、その状態でウインチ4からワイヤ6を繰り出すことにより、足場吊上装置1が地上(床面)に下ろされるようになる。
【0028】
足場吊上装置1が地上に下ろされると、連結具7のローラ19及びリンク機構18に対しワイヤ6による下方への荷重が作用しなくなるため、連結具7における一対の挟持片17を互いに離間する方向に変位させることが可能となる。そして、高所作業車等を用いて作業者が、一対の挟持片17を互いに離間する方向に変位させて支持具16における一対の係合片16aに対する上記挟持片17の係合を解除し、連結具7を支持具16から取り外す。なお、別の足場10を高架橋15における別の作業位置に続けて固定する場合には、その固定についても上述した手順と同様の手順で行われることとなる。
【0029】
次に、トラスフレーム2の構造について詳しく説明する。
図1に示すように、トラスフレーム2は、複数(この例では三つ)の分割体を同トラスフレーム2の延びる方向に接続することによって形成されており、それら分割体の数を変えることによって同トラスフレーム2の延びる方向についての長さを調整可能なものとされている。なお、この例では分割体20,21によってトラスフレーム2が形成されている。
【0030】
図5(a)は、図1におけるトラスフレーム2の長手方向中央部に位置する分割体20を拡大して示している。この分割体20における長手方向中央部には、上記ウインチ4をボルト及びナット等によって固定することが可能な複数の固定台26が、分割体20の長手方向に並列となるように形成されている。
【0031】
図5(b)は図1におけるトラスフレーム2の長手方向両端部にそれぞれ位置する分割体21を拡大して示している。なお、この分割体21の代わりに、図5(c)に示される分割体22を用いることも可能である。図5(c)の分割体22については、図5(b)の分割体21よりも長手方向の長さが短くされている。上記分割体20,21,22の長手方向両端部には、それら分割体20,21,22同士を接続するためのフランジ部23が形成されている。
【0032】
図6(a)及び図6(b)はそれぞれ、上記フランジ部23を側面及び正面から見た状態を拡大して示している。そして、トラスフレーム2は、分割体20,21,22のフランジ部23同士をボルト24及びナット25で互いに接続することによって形成される。なお、図7は、分割体20のフランジ部23と分割体21のフランジ部23とを互いに接続した状態を示している。
【0033】
トラスフレーム2においては、その長手方向の中央部が分割体20によって形成される一方、長手方向両端部がそれぞれ分割体21,22を適宜組み合わせて形成される。すなわち、分割体20の長手方向両端部に対し分割体21と分割体22との少なくとも一方を数の調整を適宜行ったうえで長手方向に接続することにより、トラスフレーム2が形成される。これにより、トラスフレーム2の長手方向についての長さを、足場10の大きさ等に応じて適宜調整することが可能となる。
【0034】
次に、トラスフレーム2に設けられる滑車3、キャスタ11、及びサポートジャッキ12について詳しく説明する。
図8は、トラスフレーム2における長手方向の端部であって、滑車3及びサポートジャッキ12が設けられている部分を示している。図9は、図8のトラスフレーム2のサポートジャッキ12が設けられている部分を、矢印A-A方向から見た状態を示している。図10は、図8のトラスフレーム2の滑車3及びキャスタ11が設けられている部分を、矢印B-B方向から見た状態を示している。図11は、トラスフレーム2における長手方向の端部を斜め下方から見た状態を示している。
【0035】
図11に示すように、トラスフレーム2における図11の左右方向両側部の下端には、トラスフレーム2の長手方向に延びる固定レール30が形成されている。この固定レール30は、図9に示すようにサポートジャッキ12をトラスフレーム2に対し固定するとともに、図10に示すようにキャスタ11と滑車3を支持する立板14とが取り付けられた取付台13をトラスフレーム2に対し固定するためのものである。固定レール30には、図11に示すように鉛直方向に延びる中心線を有する多数の貫通孔31が、トラスフレーム2の延びる方向に所定の間隔をおいて形成されている。
【0036】
なお、上記貫通孔31は上記サポートジャッキ12もしくは上記取付台13を固定するためのものであって、固定レール30において貫通孔31が形成されている部分は上記取付台13(支持部材)を固定することが可能な固定部としての役割を担う。ちなみに、図11は、固定レール30に対し上記取付台13が固定された状態を示している。
【0037】
図9に示すように、サポートジャッキ12は、トラスフレーム2の下側に位置する本体バー27を備えている。この本体バー27は、トラスフレーム2の長手方向と直交する方向、且つ、水平方向(図9の左右方向)に延びている。また、本体バー27の両端部には、上述したサポートジャッキ12の脚部12aが設けられている。サポートジャッキ12の本体バー27には、図9に二点鎖線で囲んだ部分に示されるように、鉛直方向に延びる中心線を有する貫通孔32が形成されている。この貫通孔32は、固定レール30の貫通孔31と連通させることが可能となっている。
【0038】
そして、本体バー27の貫通孔32と上記固定レール30の貫通孔31とを位置合わせし、それら貫通孔31,32にボルト28を通してナット29を用いて本体バー27と固定レール30とを締結することにより、サポートジャッキ12がトラスフレーム2に対し固定されている。従って、サポートジャッキ12については、固定レール30に形成された多数の貫通孔31のうちのいずれかを選択してトラスフレーム2に対する固定に用いることにより、トラスフレーム2に対する固定位置を同トラスフレーム2の長手方向において変更することができる。なお、図8においては、こうしたトラスフレーム2に対するサポートジャッキ12の固定位置の変更態様を、実線及び二点鎖線で示している。
【0039】
図10に示すように、キャスタ11及び立板14が取り付けられた上記取付台13は、トラスフレーム2の下側に設けられている。上記キャスタ11は取付台13の下面に取り付けられており、滑車3を支持する上記立板14は取付台13の上面13aに取り付けられている。また、取付台13には鉛直方向に延びる中心線を有する貫通孔33が形成されている。この貫通孔33は、図10に二点鎖線で囲んだ部分に示されるように、固定レール30の貫通孔31と連通させることが可能となっている。
【0040】
そして、取付台13の貫通孔33と上記固定レール30の貫通孔31とを位置合わせし、それら貫通孔31,33にボルト34を通してナット35を用いて取付台13と固定レール30とを締結することにより、取付台13(支持部材)がトラスフレーム2に対し固定されている。従って、取付台13については、固定レール30に形成された多数の貫通孔31のうちのいずれかを選択してトラスフレーム2に対する固定に用いることにより、トラスフレーム2に対する固定位置を同トラスフレーム2の長手方向において変更することができる。なお、図8においては、こうしたトラスフレーム2に対する取付台13、キャスタ11、及び滑車3の固定位置の変更態様を、実線及び二点鎖線で示している。
【0041】
ちなみに、図1に示すように、トラスフレーム2には滑車3及び立板14が取り付けられていない取付台13も設けられているが、そうした取付台13についてもトラスフレーム2に対する固定位置を上記と同様に変更することが可能である。
【0042】
次に、取付台13に対する立板14の取り付け構造、及び、その立板14における滑車3の支持構造について詳しく説明する。
図12は立板14及び滑車3を側方から見た状態を示しており、図13図12の立板14及び滑車3を矢印C-C方向から見た状態を示しており、図14は立板14及び滑車3を上方から見た状態を示している。
【0043】
図12図14に示すように、立板14は、滑車3をその厚さ方向(図14の上下方向)に挟むよう一対となっている。更に、一対の立板14は、立板14と直交する方向に延びる一対の取付板36により、滑車3の径方向両側(図14の左右方向両側)から挟まれており、それら取付板36に対し固定されている。一対の取付板36の下辺には滑車3の厚さ方向に延びる取付レール37が固定されており、同取付レール37には下方に突出する突出片38が形成されている。
【0044】
そして、取付レール37が取付台13の上面13aに対し第1ボルト39による締結を通じて取り外し可能に固定されているとともに、突出片38が取付台13の側面13bに対し第2ボルト40による締結を通じて取り外し可能に固定されている。なお、トラスフレーム2に対する取付台13の固定位置を、例えば図8に実線及び二点鎖線で示すように変更する際には、第1ボルト39及び第2ボルト40による締結が解除されて取付台13から取付レール37、取付板36、立板14、及び滑車3が取り外される。そして、トラスフレーム2に対する取付台13の固定位置が変更された後、第1ボルト39及び第2ボルト40による締結を通じて取付台13に対し取付レール37、取付板36、立板14、及び滑車3が固定される。
【0045】
図13に示すように一対の立板14には上記滑車3の中心部を貫通する中心軸41が固定されており、この中心軸41には上記滑車3を回転可能に支持する軸受42が取り付けられている。また、一対の立板14における滑車3よりも上側には、中心軸41と平行に延びる連結軸43が固定されている。この連結軸43には、図1に示すように、ウインチ4から延びて滑車3と連結具7のローラ19とに巻き掛けられたワイヤ6の端部(図1の下端部)が接続される。
【0046】
次に、足場吊上装置1の作用について説明する。
足場吊上装置1のトラスフレーム2は、複数の分割体20,21,22を同トラスフレーム2の延びる方向に接続することによって形成される。ちなみに、この例では、分割体20の長手方向両端部に対し分割体21と分割体22との少なくとも一方を数の調整を適宜行ったうえで長手方向に接続することにより、足場10の大きさ等に応じた長さのトラスフレーム2が形成されている。なお、図15の(a)~(f)はトラスフレーム2の長さの調整例を示している。
【0047】
また、足場吊上装置1において、トラスフレーム2に対する取付台13(滑車3)の固定は、トラスフレーム2の固定レール30に形成された多数の貫通孔31(図11)のうちのいずれかを選択して行われる。詳しくは、固定レール30に沿って間隔をおいて形成されている多数の貫通孔31のうち、取付台13を取り付けたい位置にある貫通孔31に対し取付台13の貫通孔33を位置合わせする。更に、図10に示すように、それら貫通孔31,33にボルト34を通してナット35を用いて取付台13と固定レール30とを締結することにより、取付台13がトラスフレーム2に対し固定される。
【0048】
トラスフレーム2に対する取付台13(滑車3)の固定位置については、例えば図8に実線及び二点鎖線で示すように変更することができる。また、図15に示されるように、トラスフレーム2の長さを足場10の大きさ等に合わせて調整した場合には、その足場10に合わせてトラスフレーム2に対する取付台13(滑車3)の固定位置を変更することもできる。すなわち、こうしたトラスフレーム2に対する取付台13の固定位置の変更を通じて、トラスフレーム2においてワイヤ6が滑車3から上方に延びる位置を変更し、そのワイヤ6が足場10に接触しないようにすることができる。
【0049】
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)足場吊上装置1においては、トラスフレーム2上に取り付けられる足場10を大きさの異なる別のものに取り替えたり、トラスフレーム2上における足場10の取り付け位置を変更したりしようとする場合がある。この場合、上記滑車3から上方に延びるワイヤ6とトラスフレーム2上に取り付けられる足場10とが接触しないよう、トラスフレーム2に対する取付台13(滑車3)の固定位置が変更される。これにより、足場吊上装置1のトラスフレーム2上に取り付けられる足場10を大きさの異なる別のものに取り替えたり、トラスフレーム2上における足場10の取り付け位置を変更したりすることが、大きく制限されてしまうことはなくなり、その制限に伴って足場吊上装置1の汎用性が低下することを抑制できるようになる。
【0050】
(2)足場吊上装置1のトラスフレーム2は、複数の分割体20,21,22を同トラスフレーム2の延びる方向に接続することによって形成される。そして、トラスフレーム2上に取り付けられる足場10の大きさやトラスフレーム2上での位置に応じて、トラスフレーム2を形成する分割体21,22の数を変えることにより、同トラスフレーム2の長さを調整することができる。
【0051】
(3)足場吊上装置1(トラスフレーム2)において、滑車3から上方に延びるワイヤ6が連結具7を用いて作業位置に設けられている支持具16に対し連結される。詳しくは、上記連結具7における一対の挟持片17で支持具16の係合片16aを挟み込んだ状態のもと、ウインチ4によるワイヤ6の巻き取りが行われると、上記連結具7のリンク機構18がワイヤ6からの下方への荷重を受けて一対の挟持片17を互いに接近する方向に変位させる。これにより、連結具7における一対の挟持片17が上記支持具16の係合片16aに対し係合された状態となり、トラスフレーム2において滑車3から上方に延びるワイヤ6が、作業位置に設けられている上記支持具16に対し上記連結具7を介して容易に連結されるようになる。その後、ウインチ4によるワイヤ6の巻き取りによってトラスフレーム2が作業位置まで吊り上げられる。一方、ウインチ4からワイヤ6を繰り出すことにより、足場吊上装置1(トラスフレーム2)が地上(床面)に下ろされると、連結具7のリンク機構18に対しワイヤ6による下方への荷重が作用しなくなるため、連結具7における一対の挟持片17を互いに離間する方向に変位させることが可能となる。そして、一対の挟持片17を互いに離間する方向に変位させれば、支持具16における一対の係合片16aに対する上記挟持片17の係合を容易に解除することができ、連結具7を支持具16から簡単に取り外すことができる。
【0052】
なお、上記実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
・連結具7については、ワイヤ6を支持具16に対し連結することの可能な他の構造のものを採用してもよい。
【0053】
・トラスフレーム2に対するウインチ4の固定位置を、同トラスフレーム2の長手方向に変更できるようにしてもよい。
トラスフレーム2の長手方向における滑車3とウインチ4との距離は同ウインチ4のフリートアングルに影響を及ぼす。詳しくは、図16に示すように、滑車3とウインチ4との上記距離(図16のL)が短くなるほど、ウインチ4のフリートアングル(図16のθ)が大きくなる。このため、トラスフレーム2に対する滑車3(取付台13)の固定位置をトラスフレーム2の長手方向に変更したとき、その変更態様によっては距離Lが短くなってフリートアングルθが大きくなりすぎるおそれがある。このようにフリートアングルθが大きくなりすぎると、ウインチ4によるワイヤ6の適正な巻き取りができなくなる。しかし、トラスフレーム2に対するウインチ4の固定位置を上述したように変更できれば、フリートアングルθがウインチ4によるワイヤ6の巻き取りに悪影響を及ぼすほど大きくなるとき、言い換えれば上記悪影響が生じるほど上記距離Lが短くなるとき、それを上記ウインチ4の固定位置の変更を通じて抑制することができる。
【0054】
また、足場吊上装置1において、ウインチ4は他の部品と比較して重い部品であるため、トラスフレーム2に対するウインチ4の固定位置を変更すると、足場吊上装置1における重心位置に影響を及ぼす。このため、トラスフレーム2に対するウインチ4の固定位置を変更可能とすれば、トラスフレーム2上に取り付ける足場10の形状等によって足場吊上装置1における重心位置が中央からトラスフレーム2の長手方向にずれるおそれがあるとき、そのずれを上記ウインチ4の固定位置の変更を通じて抑制することができる。
【0055】
・トラスフレーム2は、足場10を取り付けるために必要な長さを有する直方体状のものであればよく、必ずしも複数の分割体を接続して形成されるものである必要はない。
・足場吊上装置1において、三つ以上のトラスフレーム2が互いの間隔を固定した状態で平行となるように設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1…足場吊上装置、2…トラスフレーム、3…滑車、4…ウインチ、6…ワイヤ、7…連結具、8…パイプ、9…パイプ、10…足場、10a…床部、10b…側壁部、11…キャスタ、11a…車輪、12a…脚部、12…サポートジャッキ、13…取付台、13a…上面、13b…側面、14…立板、15…高架橋、16…支持具、16a…係合片、17…挟持片、17a…凹所、18…リンク機構、19…ローラ、20…分割体、21…分割体、22…分割体、23…フランジ部、24…ボルト、25…ナット、26…固定台、27…本体バー、28…ボルト、29…ナット、30…固定レール、31…貫通孔、32…貫通孔、33…貫通孔、34…ボルト、35…ナット、36…取付板、37…取付レール、38…突出片、39…第1ボルト、40…第2ボルト、41…中心軸、42…軸受、43…連結軸。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15
図16