(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】洗浄装置及び洗浄方法
(51)【国際特許分類】
B08B 1/02 20060101AFI20220111BHJP
B08B 3/04 20060101ALI20220111BHJP
B08B 1/04 20060101ALI20220111BHJP
F16C 33/32 20060101ALI20220111BHJP
A63F 7/02 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
B08B1/02
B08B3/04 B
B08B1/04
F16C33/32
A63F7/02 351Z
(21)【出願番号】P 2017236016
(22)【出願日】2017-12-08
【審査請求日】2020-11-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 則秀
【審査官】大内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-080735(JP,A)
【文献】特開昭63-162148(JP,A)
【文献】特開2005-342815(JP,A)
【文献】特開平05-042467(JP,A)
【文献】特開平01-183353(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 1/00~13/00
B24B 1/00~ 1/04
B24B 9/00~19/28
F16C 33/32
A63F 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
球体を洗浄するための洗浄装置であって、
第1面を有する第1部材と、
第2面を有し、前記第2面が前記第1面に対向するように配置される第2部材とを備え、
前記第1部材は、前記第1面と前記第2面とが対向した状態で、前記第2部材に対して相対的に回転可能に構成されており、
前記第1面には、平面視においてらせん形状を有する第1溝が設けられ、
前記球体は、前記第1溝と前記第2面との間に挟持され、
前記第1溝は、前記第1面に連なる第1側壁と、前記第1面に連なり、かつ前記第1側壁に対向して配置される第2側壁とを有し、
前記第1側壁と前記第2側壁との間隔は、前記第1面から遠ざかるにつれて狭くな
り、
前記第1溝は、第1端と、前記第1端の反対側の端である第2端とを有し、
前記第1溝の延在方向に直交する断面における前記第1側壁と前記第2側壁とがなす角度は、前記第1溝上における前記第1端からの距離に応じて変化する、洗浄装置。
【請求項2】
前記第1溝の延在方向に直交する断面における前記第1側壁の延長線と前記第2側壁の延長線とが交差する位置は、前記第1溝上における前記第1端からの距離に応じて上下に変化する、請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記第2面には、前記第1溝と対向するように第2溝が設けられ、
前記第2溝は、前記第2面に連なる第3側壁と、前記第2面に連なり、かつ前記第3側壁に対向して配置される第4側壁とを有し、
前記第3側壁と前記第4側壁との間隔は、前記第2面から遠ざかるにつれて狭くなり、
前記球体は、前記第1溝と前記第2溝との間に挟持され、
前記第1溝の延在方向に直交する断面において、前記第1溝の断面形状は、前記第2溝の断面形状と異なる、請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記第1部材は、前記第2部材の下方に配置される、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項5】
球体を洗浄するための洗浄方法であって、
前記球体を準備する工程と、
前記球体を洗浄するための洗浄装置を準備する工程とを備え、
前記洗浄装置は、
第1面を有する第1部材と、
第2面を有し、前記第2面が前記第1面に対向するように配置される第2部材とを備え、
前記第1面には、平面視においてらせん形状を有する第1溝が設けられ、
前記第1溝は、前記第1面に連なる第1側壁と、前記第1面に連なり、かつ前記第1側壁に対向して配置される第2側壁とを有し、
前記第1側壁と前記第2側壁との間隔は、前記第1面から遠ざかるにつれて狭くなり、
前記洗浄方法は、前記第1溝と前記第2面との間に挟持されるように、前記洗浄装置に前記球体を供給する工程と、
前記第1面が前記第2面と対向した状態で、前記第2部材に対して前記第1部材を相対的に回転することにより、前記球体を洗浄する工程とをさらに備え、
前記第1溝は、第1端と、前記第1端の反対側の端である第2端とを有し、
前記第1溝の延在方向に直交する断面における前記第1側壁と前記第2側壁とがなす角度は、前記第1溝上における前記第1端からの距離に応じて変化する、洗浄方法。
【請求項6】
前記第1溝の延在方向に直交する断面における前記第1側壁の延長線と前記第2側壁の延長線とが交差する位置は、前記第1溝上における前記第1端からの距離に応じて上下に
変化する、請求項5に記載の洗浄方法。
【請求項7】
前記第2面には、前記第1溝と対向するように第2溝が設けられ、
前記第2溝は、前記第2面に連なる第3側壁と、前記第2面に連なり、かつ前記第3側壁に対向して配置される第4側壁とを有し、
前記第3側壁と前記第4側壁との間隔は、前記第2面から遠ざかるにつれて狭くなり、
前記球体は、前記第1溝と前記第2溝との間に挟持され、
前記第1溝の延在方向に直交する断面において、前記第1溝の断面形状は、前記第2溝の断面形状と異なる、請求項5に記載の洗浄方法。
【請求項8】
前記第1部材は、前記第2部材の下方に配置される、請求項5~請求項7のいずれか1項に記載の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄装置及び洗浄方法に関する。より特定的には、本発明は、球体を洗浄するための洗浄装置及び球体の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、球体の洗浄方法としては、例えば、キャビテーション内に配置した球体に衝撃波を印加することにより球体を洗浄する方法(第1の方法)、円盤状の保持器内に球体を配置し、ブラシで球体を擦ることにより球体を洗浄する方法(第2の方法)、球体をスポンジ上で転がすことにより球体を洗浄する方法(第3の方法)及び手もみやスポンジを用いて人力で球体を洗浄する方法(第4の方法)が知られている。
【0003】
その他の球体の洗浄装置及び洗浄方法としては、例えば特開平7-100229号公報(特許文献1)、特開2003-144889号公報(特許文献2)、特開2006-159088号公報(特許文献3)及び特開2012-029850号公報(特許文献4)に記載の構成が、従来から知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-100229号公報
【文献】特開2003-144889号公報
【文献】特開2006-159088号公報
【文献】特開2012-029850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の第1ないし第4の方法においては、洗浄後における球体の清浄度が不十分となるおそれがある。なお、特許文献1ないし特許文献4に記載の洗浄装置及び洗浄方法によると、洗浄中に洗浄対象となる球体に傷がつくおそれがある。
【0006】
本発明は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものである。より具体的には、本発明は、洗浄対象となる球体の洗浄後における清浄度を改善することができる洗浄装置及び洗浄方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る洗浄装置は、球体を洗浄するための洗浄装置である。本発明の一態様に係る洗浄装置は、第1面を有する第1部材と、第2面を有する第2部材とを備える。第2部材は、第2面が第1面に対向するように配置される。第1部材は、第1面と第2面とが対向した状態で、第2部材に対して相対的に回転可能に構成される。第1面には、第1溝が設けられる。球体は、第1溝と第2面との間に挟持される。第1溝は、平面視において、らせん形状を有する。第1溝は、第1面に連なる第1側壁と、第1面に連なり、かつ第1側壁に対向して配置される第2側壁とを有する。第1側壁と第2側壁との間隔は、第1面から遠ざかるにつれて狭くなる。
【0008】
本発明の一態様に係る洗浄装置によると、洗浄対象となる球体の洗浄後における清浄度を改善することができる。
【0009】
上記の洗浄装置において、第1溝は、第1端と、第1端と反対側の端である第2端とを
有し、第1溝の延在方向に直交する断面における第1側壁の延長線と第2側壁の延長線とが交差する位置は、第1溝上における第1端からの距離に応じて上下に変化してもよい。
【0010】
この場合には、洗浄対象となる球体の洗浄後における清浄度をさらに改善することができる。
【0011】
上記の洗浄装置において、第1部材は、第2部材の下方に配置されていてもよい。この場合には、洗浄中に球体に傷がつくことを抑制できる。
【0012】
上記の洗浄装置において、第2面には、第1溝と対向するように第2溝が設けられていてもよい。第2溝は、第2面に連なる第3側壁と、第2面に連なり、かつ第3側壁に対向して配置される第4側壁とを有し、第3側壁と第4側壁との間隔は、前記第2面から遠ざかるにつれて狭くなっていてもよい。球体は、第1溝と第2溝との間に挟持されていてもよい。第1溝の延在方向に直交する断面において、第1溝の断面形状は、第2溝の断面形状と異なっていてもよい。
【0013】
この場合には、洗浄対象となる球体の洗浄後における清浄度をさらに改善することができる。
【0014】
本発明の一態様に係る洗浄方法は、球体を洗浄するための洗浄方法である。本発明の一態様に係る洗浄方法は、球体を準備する工程と、球体を洗浄するための洗浄装置を準備する工程とを備える。洗浄装置は、第1面を有する第1部材と、第2面を有し、かつ第2面が第1面に対向するように配置される第2部材とを備える。第1面には、平面視においてらせん形状を有する第1溝が設けられる。第1溝は、第1面に連なる第1側壁と、第1面に連なり、かつ第1側壁に対向して配置される第2側壁とを有する。第1側壁と第2側壁との間隔は、第1面から遠ざかるにつれて狭くなる。本発明の一態様に係る洗浄方法は、第1溝と第2面との間に挟持されるように、洗浄装置に球体を供給する工程と、第1面が第2面と対向した状態で、第2部材に対して第1部材を相対的に回転することにより、球体を洗浄する工程とをさらに備える。
【0015】
本発明の一態様に係る洗浄方法によると、洗浄対象となる球体の洗浄後における清浄度を改善することができる。
【0016】
上記の洗浄方法において、第1溝は、第1端と、第1端と反対側の端である第2端とを有し、第1溝の延在方向に直交する断面における第1側壁の延長線と第2側壁の延長線とが交差する位置は、第1溝上における第1端からの距離に応じて上下に変化してもよい。
【0017】
この場合には、洗浄対象となる球体の洗浄後における清浄度をさらに改善することができる。
【0018】
上記の洗浄方法において、第1部材は、第2部材の下方に配置されていてもよい。この場合には、洗浄中に球体に傷がつくことを抑制できる。
【0019】
上記の洗浄方法において、第2面には、第1溝と対向するように第2溝が設けられていてもよい。第2溝は、第2面に連なる第3側壁と、第2面に連なり、かつ第3側壁に対向して配置される第4側壁とを有し、第3側壁と第4側壁との間隔は、前記第2面から遠ざかるにつれて狭くなっていてもよい。球体は、第1溝と第2溝との間に挟持されていてもよい。第1溝の延在方向に直交する断面において、第1溝の断面形状は、第2溝の断面形状と異なっていてもよい。
【0020】
この場合には、洗浄対象となる球体の洗浄後における清浄度をさらに改善することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一態様に係る洗浄装置及び洗浄方法によると、洗浄対象となる球体の洗浄後における清浄度を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第1実施形態に係る洗浄装置の斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る洗浄装置の上面図である。
【
図3】
図2のIII-III断面における断面図である。
【
図4】
図2のIV-IV断面における断面図である。
【
図5】第1実施形態に係る洗浄方法を示す工程図である。
【
図6】球体5が第1溝11の第1端11a近傍に位置している際の球体5の自転状態を示す模式図である。
【
図7】球体5が第1溝11の第1端11aと第2端11bの中間に位置している際の球体5の自転状態を示す模式図である。
【
図8】球体5が第1溝11の第2端11b近傍に位置している際の球体5の自転状態を示す模式図である。
【
図9】第2実施形態に係る洗浄装置の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の図面においては、同一又は相当する部分に同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さないものとする。
【0024】
なお、以下において、下方とは、重力方向に沿う方向をいい、上方とは、下方の反対方向をいう。
【0025】
(第1実施形態)
以下に、第1実施形態に係る洗浄装置の構成について説明する。
図1は、第1実施形態に係る洗浄装置の斜視図である。
図2は、第1実施形態に係る洗浄装置の上面図である。
図3は、
図2のIII-III断面における断面図である。
図4は、
図2のIV-IV断面における断面図である。なお、
図2においては、第1部材1の平面形状を明らかにするため、第2部材2の図示は省略してある。
【0026】
第1実施形態に係る洗浄装置は、第1部材1と、第2部材2とを有している。第1部材1は、第1面1aを有している。第2部材2は、第2面2aを有している。第1部材1は、第2部材2よりも下方に配置されていることが好ましい。第2部材2は、第2面2aが第1面1aに対向するように配置されている。
【0027】
第1部材1は、平面視において(第1面1aに直交する方向からみて)、円形となっている。第2部材2は、平面視において(第2面2aに直交する方向からみて)、円形となっている。第1部材1の平面視における直径は、第2部材2の平面視における直径と同一であってもよいし、異なっていてもよい。第1部材1は、平面視における中心が、第2部材2の平面視における中心と一致していてもよいし、異なっていてもよい。
【0028】
第1部材1は、第1面1aと第2面2aとが対向している状態において、第2部材2に対して相対的に回転可能に構成されている。より具体的には、第1部材1には、回転軸3が取り付けられている。回転軸3は、第1部材1の第1面1aとは反対側の面に取り付け
られている。回転軸3は、中心軸が第1面1aと直交するように取り付けられている。第2部材2には、回転軸4が取り付けられている。回転軸4は、第2部材2の第2面2aと反対側の面に、中心軸が第2面2aと直交するように取り付けられている。
【0029】
回転軸3を中心軸周りに回転させるとともに、回転軸4を回転軸3と反対方向に中心軸周りに回転させることにより、第1部材1は、第1面1aと第2面2aとが対向している状態において、第2部材2に対して相対的に回転することができる。なお、回転軸3及び回転軸4のいずれか一方を中心軸周りに回転させるとともに、回転軸3及び回転軸4の他方の固定することによっても、第1面1aと第2面2aとが対向している状態において、第1部材1は第2部材2に対して相対的に回転することができる。
【0030】
第1部材1の第1面1aには、第1溝11が設けられている。第1溝11は、第1端11aと、第2端11bとを有している。第2端11bは、第1溝11の第1端11aの反対側の端である。第1端11aは、第1面1aの中心付近に位置していることが好ましい。第2端11bは、第1面1aの外周に達している。
【0031】
第1溝11は、平面視において(第1面1aに直交する方向からみて)、らせん状に設けられている。らせん状とは、第1溝11上における第1端11aからの距離が増加するにつれ、第1溝11と第1部材1の平面視における中心との距離が長くなるような形状をいう。らせん状の形状は、例えば、代数らせん(アルキメデスらせん)又は対数らせん(ベルヌーイらせん)である。らせん状の形状は、数学的に規則正しく形成されるものでなくてもよい。らせん状の形状は、曲線によって構成されるものでなくてもよい。
【0032】
第1溝11のらせん形状の回転方向は、平面視において(第1面1aに直交する方向からみて)、時計回りであってもよく、反時計回りであってもよい。
【0033】
第1溝11は、第1側壁11cと、第2側壁11dとを有している。第1溝11は、底壁11eをさらに有していてもよい。第1側壁11c及び第2側壁11dは、第1面1aに連なっている。底壁11eは、第1側壁11c及び第2側壁11dに連なっている。
【0034】
第1側壁11cと第2側壁11dとは、第1溝11の延在方向に垂直な断面視において、互いに間隔を置いて対向している。第1溝11の延在方向に垂直な断面視における第1溝11の形状は、V字型となっている。すなわち、第1溝11の延在方向に垂直な断面視において、第1側壁11cと第2側壁11dとの間隔は、第1面1aから遠ざかるにつれて狭くなっている。
【0035】
第1側壁11cと第2側壁11dとは、角度θをなしている。角度θは、第1溝11上における第1端11aからの距離に応じて変化していてもよい。なお、第1端11aにおける角度θはθ1であり、第2端11bにおける角度θはθ2である。このことを別の観点からいえば、第1溝11の延在方向に垂直な断面視において、第1側壁11cの延長線と第2側壁11dの延長線とが交差する位置C1が、第1溝11上における第1端11aからの距離に応じて、上下方向に変化していてもよい。
【0036】
なお、第1溝11が底壁11eを有しない場合、第1側壁11cと第2側壁11dとが、第1面1aに連なっている側とは反対側の端において、互いに連なることになる。
【0037】
第2部材2には、穴2bが設けられている。穴2bは、第2面2aから第2面2aの反対側の面に向かって設けられている。穴2bは、第2部材2を貫通している。穴2bは、第1溝11の第1端11aと対向する位置に設けられている。穴2bからは、洗浄対象となる球体5が、第1面1aと第2面2aとの間に供給される。より具体的には、洗浄対象
となる球体5は、第1溝11と第2面2aとの間に供給される。洗浄対象となる球体5は、洗浄後に、第1溝11の第2端11bから外部に排出される。なお、球体5は、例えば軸受に用いられる鋼球等の金属球又は窒化珪素球等のセラミックス球である。
【0038】
第1部材1には、例えば金属材料、樹脂材料等が用いられる。第1部材1に用いられる樹脂材料は、例えばポリ塩化ビニル(PVC)である。第2部材2は、例えば第1層21と、第2層22とを有している。第1層21は、第2面2aを構成している。第2層22は、第1層21の第2面2aを構成している側とは反対側の面の上に配置されている。第1層21には、不織布等の布が用いられる。第1層21には、球体5を洗浄するための洗浄液が含浸されている。なお、洗浄液には、白灯油等が用いられる。第2層22には、例えばスポンジ等の多孔質の弾性部材が用いられる。
【0039】
以下に、第1実施形態に係る洗浄方法について説明する。
図5は、第1実施形態に係る洗浄方法を示す工程図である。
図5に示すように、第1実施形態に係る洗浄方法は、第1工程S1と、第2工程S2と、第3工程S3と、第4工程S4とを有している。
【0040】
第1工程S1においては、球体5の準備が行われる。第1工程S1において準備される球体5は、研磨加工を終えた後の状態である。この研磨加工は、例えば砥粒及び水系又は油系のクーラント液を用いて行われる。そのため、第1工程S1における球体5の表面には、砥粒やクーラント液が付着している場合がある。
【0041】
第2工程S2においては、洗浄装置の準備が行われる。第2工程S2は、第1工程S1と並行して行われる。この洗浄装置は、上記の第1実施形態に係る洗浄装置である。
【0042】
第1工程S1及び第2工程S2が行われた後、第3工程S3が行われる。第3工程S3においては、第1工程S1において準備された球体5が、第2工程S2で準備された洗浄装置内に供給される。より具体的には、第1工程S1において準備された球体5が、穴2bに供給される。その結果、第1工程S1において準備された球体5は、第1溝11と第2面2aとの間に挟持された状態となる。
【0043】
なお、複数の球体5を連続して洗浄する場合、各々の球体5相互の衝突を避けるため、各々の球体5は、所定の間隔を置いて洗浄装置内に供給される。この所定の間隔は、例えば0.5秒である。
【0044】
第3工程S3が行われた後、第4工程S4が行われる。第4工程S4においては、球体5の洗浄が行われる。より具体的には、第4工程S4においては、第1部材1が、第1面1aと第2面2aとが対向し、かつ第1溝11と第2面2aとの間に球体5を挟持された状態で、第2部材2に対して相対的に回転される。これにより、球体5は、第1端11a側から第2端11b側に向かって、第1溝11内で移送される。この際、球体5は、球体5と第2面2a、第1側壁11c及び第2側壁11dとの間に差動滑りが発生する。この差動滑りで球体5の表面が第2面2a、第1側壁11c及び第2側壁11dに擦りつけられることにより、球体5の表面の洗浄が行われる。
【0045】
図6は、球体5が第1溝11の第1端11a近傍に位置している際の球体5の自転状態を示す模式図である。
図7は、球体5が第1溝11の第1端11aと第2端11bの中間に位置している際の球体5の自転状態を示す模式図である。
図8は、球体5が第1溝11の第2端11b近傍に位置している際の球体5の自転状態を示す模式図である。
図6に示すように、球体5が第1溝11の第1溝11の第1端11a近傍に位置している際、球体5の自転軸Pは、第2面2aに対して略直交している。
【0046】
球体5は、第1溝11内において第1端11a側から第2端11b側へと移送されている際に、第1側壁11c及び第2側壁11dから摩擦力を受ける。
図7及び
図8に示すように、球体5の自転軸Pは、この摩擦力に起因して、第1溝11内において第11a側から第2端11b側へ移送されていくにしたがい、第2面2aに対して略水平となるように傾いていく。
【0047】
上記のとおり、第1溝11の第2端11bは、第1部材1の外周面まで達している。そのため、第4工程S4を終えた後には、球体5は、第1溝11の第2端11bから洗浄装置の外部へと排出される。
【0048】
以下に、第1実施形態に係る洗浄装置及び洗浄方法の効果について説明する。第1実施形態に係る洗浄装置においては、第1溝11がらせん状に設けられているため、球体5の自転軸Pの傾きは、第1溝11中において第1端11a側から第2端11b側に向かって移送されるにつれて変化する。そのため、球体5の表面は、第2面2a、第1側壁11c及び第2側壁11dに対してまんべんなく擦りつけられる。
【0049】
第1実施形態に係る洗浄装置においては、第1溝11の断面形状がV字形状となっているため、球体5の表面が、第2面2a、第1側壁11c及び第2側壁11dの3点で接触する。なお、例えば第1溝11の断面形状が矩形形状である場合、球体5の表面は、第1溝11の底壁と第2面2aの2点にしか接触しない。したがって、第1実施形態に係る洗浄装置及び洗浄方法によると、洗浄対象となる球体5の表面をより均一かつ効率的に清浄にすることができる。
【0050】
表1に、第1実施形態に係る洗浄装置における洗浄試験の結果を示す。なお、洗浄試験の条件は、表2に示されるとおりである。
【0051】
【0052】
【0053】
なお、表1における「OK」は、レーザ検査機を用いた測定の結果、球体5の表面から50μm以上の異物が検出されなかった場合をいい、「NG」は、レーザ検査機を用いた測定の結果、球体5の表面から50μm以上の異物が1つ以上検出された場合をいう。
【0054】
表1に示すように、比較例においては、洗浄を2回行った段階においても「NG」となる球体5があり、全ての球体5が「OK」となるためには3回の洗浄を要した。他方、実施例においては、洗浄を1回行った段階において、既に全ての球体5が「OK」となった。このような試験結果から、第1実施形態に係る洗浄装置及び洗浄装置によると、洗浄対象となる球体5の表面をより均一かつ効率的に洗浄することができることが実験的にも明らかとされた。
【0055】
上記のとおり、第1溝11中を移送される球体5の自転軸Pは第1側壁11c及び第2側壁11dから受ける摩擦力に起因して変化する。この摩擦力が球体5に作用する方向は、第1側壁11c及び第2側壁11dの傾きによって決定される。
【0056】
そのため、角度θが第1溝11上における第1端11aからの距離に応じて変化させることにより、すなわち、位置C1が第1溝11上における第1端11aからの距離に応じて上下方向に変化させることにより、第2面2a、第1側壁11c及び第2側壁11dが球体5の表面とより均一に接触するように、自転軸Pの傾きを変化させることができる。すなわち、この場合には、洗浄対象となる球体5の表面をさらに均一に清浄にすることができる。
【0057】
上記のとおり、第1工程S1を終えた段階における球体5の表面には、砥粒が残留している場合がある。この砥粒は、一旦球体5の表面から離脱した後に球体5の表面と第2面2a、第1側壁11c及び第2側壁11dとの間に噛み込まれることにより、球体5の表面を傷つける可能性がある。
【0058】
第1実施形態に係る洗浄装置において、第1部材1が第2部材2よりも下方に配置されている場合、球体5の表面から離脱した砥粒は、重力の影響により、球体5の下方に位置する第1溝11の底にたまりやすい。そのため、一旦球体5の表面から離脱した砥粒が、球体5の表面と第2面2a、第1側壁11c及び第2側壁11dとの間に噛み込まれる可能性が低下する。したがって、この場合、洗浄対象となる球体5の表面に傷がつくことを抑制できる。
【0059】
(第2実施形態)
以下に、第2実施形態について説明する。なお、以下においては、第1実施形態と異な
る点について主に説明し、重複する説明は繰り返さない。
【0060】
第2実施形態に係る洗浄装置は、第1面1aを有する第1部材1と、第2面2aを有し、第2面2aが第1面1aに対向するように配置される第2部材2とを有している。第1部材1は、第1面1aと第2面2aとが対向した状態で、第2部材2に対して相対的に回転するように構成されている。
【0061】
第1面1aには、平面視において、らせん状に第1溝11が設けられている。第1溝11は、第1側壁11cと、第2側壁11dとを有している。これらの点において、第2実施形態に係る洗浄装置の構成は、第1実施形態に係る洗浄装置の構成と共通している。
【0062】
第2実施形態に係る洗浄装置においては、第2面2aに、第2溝23が設けられている。この点において、第2実施形態に係る洗浄装置の構成は、第1実施形態に係る洗浄装置の構成と異なっている。
【0063】
図9は、第2実施形態に係る洗浄装置の底面図である。
図10は、
図9のX-X断面における断面図である。なお、
図9においては、第2部材2の平面形状を明らかにするため、第1部材1の図示を省略している。
図9及び
図10に示すように、第2溝23は、平面視においてらせん状に設けられている。すなわち、第2溝23は、第1溝11と対向するように設けられている。第2溝23は、第3端23aと、第4端23bとを有している。第4端23bは、第2溝23の第3端23aとは反対側の端である。第3端23aの位置は、第1端11aの位置と一致し、第4端23bの位置は、第2端11bの位置と一致している。
【0064】
第2溝23は、第3側壁23cと、第4側壁23dとを有している。第2溝23は、底壁23eをさらに有していてもよい。底壁23eは、第3側壁23c及び第4側壁23dに連なっている。第3側壁23c及び第4側壁23dは、第2面2aに連なっている。第2溝23の延在方向に垂直な断面視において、第3側壁23cと第4側壁23dとは、互いに間隔を置いて対向している。なお、第2溝23は、第1溝11と対向するように配置されているため、第2溝23の延在方向と第1溝11の延在方向とは、一致している。
【0065】
第2溝23の延在方向に垂直な断面視において、第3側壁23cと第4側壁23dとの間隔は、第2面2aから遠ざかるにつれて狭くなっている。すなわち、第2溝23の延在方向に垂直な断面視において、第2溝23は、V字形状を有している。
【0066】
第2溝23の延在方向に垂直な断面視において、第3側壁23cと第4側壁23dとは、角度φをなしている。角度φは、第2溝23上における第3端23aからの距離に応じて、変化していてもよい。このことを別の観点からいえば、第2溝23の延在方向に垂直な断面視において、第3側壁23cの延長線と第4側壁23dの延長線とが交差する位置C2が、第2溝23上における第3端23aからの距離に応じて、上下方向に変化していてもよい。
【0067】
第2溝23の延在方向(第1溝11の延在方向)に垂直な断面視において、第2溝23は、第1溝11と形状が異なっている。より具体的には、角度φは、角度θと異なっている。
【0068】
第2実施形態に係る洗浄方法は、第1工程S1と、第2工程S2と、第3工程S3と、第4工程S4とを有している。第2実施形態に係る洗浄方法は、第2工程S2において準備される洗浄装置が上記の第2実施形態に係る洗浄装置である点を除いて、第1実施形態に係る洗浄装置と共通している。
【0069】
第2実施形態に係る洗浄装置においては、第2面2aにV字形状の断面形状を有する第2溝23が形成されている。そのため、洗浄対象となる球体5は、第1溝11及び第2溝23内において、第1側壁11c、第2側壁11d、第3側壁23c及び第4側壁23dの4点で接触する。
【0070】
第2実施形態に係る洗浄装置においては、角度θと角度φとが異なっている。そのため、球体5が自転軸P周りに回転する際、第3側壁23c及び第4側壁23dは、第1側壁11c及び第2側壁11dが擦りつけられる部分とは異なる球体5の表面に擦りつけられる。
【0071】
したがって、第2実施形態に係る洗浄装置及び洗浄方法によると、洗浄対象となる球体5の表面をさらに均一かつ効率的に清浄にすることができる。
【0072】
以上のように本発明の実施形態について説明を行ったが、上述の実施形態を様々に変形することも可能である。また、本発明の範囲は上述の実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含むことが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0073】
上記の各実施形態は、球体の洗浄装置及び洗浄方法に特に有利に適用される。
【符号の説明】
【0074】
1 第1部材、1a 第1面、11 第1溝、11a 第1端、11b 第2端、11c 第1側壁、11d 第2側壁、11e 底壁、2 第2部材、2a 第2面、2b 穴、21 第1層、22 第2層、23 第2溝、23a 第3端、23b 第4端、23c 第3側壁、23d 第4側壁、23e 底壁、3,4 回転軸、5 球体、C1,C2 位置、P 自転軸、S1 第1工程、S2 第2工程、S3 第3工程、S4 第4工程、θ,φ 角度。