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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】自転車のリアディレイラ
(51)【国際特許分類】
   B62M 9/1242 20100101AFI20220111BHJP
【FI】
B62M9/1242
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017242358
(22)【出願日】2017-12-19
(65)【公開番号】P2018150030
(43)【公開日】2018-09-27
【審査請求日】2020-09-28
(31)【優先権主張番号】102016000128989
(32)【優先日】2016-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】592072182
【氏名又は名称】カンパニョーロ・ソシエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
【氏名又は名称原語表記】CAMPAGNOLO SOCIETA A RESPONSABILITA LIMITATA
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(72)【発明者】
【氏名】パスカ・パオロ
【審査官】伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-162478(JP,A)
【文献】特開2014-162477(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0004079(US,A1)
【文献】特開2001-163285(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 9/1242
B62M 9/124
B62M 9/125
B62M 9/121
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車のリアディレイラ(10)であって、
-ベース体(12)と、可動体(14)と、4つのピン要素(16,17,18,19)において関節接続軸に沿って前記ベース体(12)および前記可動体(14)に関節接続された一対のコネクティングロッド(13,15)と、を有する4バー・リンク機構(11)と、
連結ピン(30)においてチェーンガイド(21)に連結されている、可動体(14)と、
-前記ベース体(12)のブラインド内側空間(12b)内に収納された固定ピン(40)であって、前記自転車のフレーム(200)に直接的または間接的に拘束された取付けねじ(41)と、前記ブラインド内側空間(12b)内に配置されたばね荷重挿入体(42)とを備え、前記ベース体(12)が前記ばね荷重挿入体(42)に対して回転可能である、固定ピン(40)と、
-前記取付けねじ(41)および前記ばね荷重挿入体(42)の上に形成された座部(45,46)に挿入されて、前記取付けねじ(41)および前記ばね荷重挿入体(42)を軸方向に拘束する連結部材(60)と、
-前記チェーンガイド(21)の制御移動に応じて、前記ベース体(12)と前記フレーム(200)との間の相対角度方向位置を変更するように構成された適合リンク機構(80)の一部である、歯付きセクタ(81)およびスプロケット(82)であって、前記歯付きセクタ(81)は、前記ばね荷重挿入体(42)と同軸に取り付けられ、前記スプロケット(82)に作用し、前記スプロケット(82)は前記ベース体(12)に直接的または間接的に作用する、歯付きセクタ(81)およびスプロケット(82)と、
-前記ばね荷重挿入体(42)と前記歯付きセクタ(81)との間に作用し、前記チェーンガイド(21)の制御移動の間、前記ばね荷重挿入体(42)および前記歯付きセクタ(81)を回転自在に拘束するように構成されたトーションスプリング(90)と、を備えるリアディレイラ(10)。
【請求項2】
請求項1に記載のディレイラ(10)において、前記ばね荷重挿入体(42)に対して同軸かつ径方向外側にある調節挿入体(50)であって、軸方向軸(R)を中心とした回転のために直接的または間接的に前記フレーム(200)に拘束されており、かつ軸方向かつ回転可能に前記ばね荷重挿入体(42)に拘束されている調節挿入体(50)を備え、前記調節挿入体(50)は、前記フレーム(200)に対してその角度方向位置を調節するための調節部材(52)を備える、ディレイラ。
【請求項3】
請求項2に記載のディレイラ(10)において、前記ばね荷重挿入体(42)が、前記取付けねじ(41)と同軸かつ前記取付けねじ(41)に対して径方向外側にあり、前記連結部材(60)は、さらに、前記ばね荷重挿入体(42)を前記調節挿入体(50)に軸方向に拘束する、ディレイラ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のディレイラ(10)において、前記取付けねじ(41)が径方向外側の環状溝(45)を備え、前記ばね荷重挿入体(42)が、前記軸方向と直交する方向に前記ばね荷重挿入体を貫通する孔(46)を備え、前記連結部材(60)が、前記ばね荷重挿入体(42)の前記孔(46)に挿入されかつ前記取付けねじ(41)の前記径方向外側の環状溝(45)に干渉する一対のピン(61)を備える、ディレイラ。
【請求項5】
請求項3に従属する場合の請求項4に記載のディレイラ(10)において、前記調節挿入体(50)が、前記軸方向と直交する方向に前記調節挿入体(50)を貫通する貫通孔(53)を備え、前記ピン(61)が、さらに、前記調節挿入体(50)の前記貫通孔(53)を貫通する
、ディレイラ。
【請求項6】
請求項5に記載のディレイラ(10)において、前記調節挿入体(50)が、さらに、前記貫通孔(53)と整合するねじ付き座部を備え、前記ピン(61)が、前記調節挿入体(50)の前記ねじ付き座部に螺合するためのそれぞれのねじ付き端(61a)を備える、ディレイラ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のディレイラ(10)において、前記ばね荷重挿入体(42)が、第1の肩部(48)および第2の肩部(49)によって角度方向に画定された径方向突出部(47)を備え、前記径方向突出部(47)は、第1当接部(85)および第2当接部(86)によって角度方向に画定された前記歯付きセクタ(81)の径方向座部(84)に挿入されており、前記径方向座部(84)は、前記径方向突出部(47)の角度方向寸法よりも大きい角度方向寸法を有する、ディレイラ。
【請求項8】
請求項7に記載のディレイラ(10)において、前記トーションスプリング(90)が、前記ばね荷重挿入体(42)の前記径方向突出部(47)の前記第1の肩部(48)を、前記歯付きセクタ(81)の前記第1当接部(85)に対して当接した状態に保持する、ディレイラ。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のディレイラ(10)において、前記ばね荷重挿入体(42)が、トーションキーを収納するように構成された成形孔(43a)を具備する頭部(43)を備える、ディレイラ。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載のディレイラ(10)において、前記ばね荷重挿入体(42)が、前記ベース体(12)の前記ブラインド内側空間(12b)に内蔵され、前記フレーム(200)に向かって前記軸方向に並進するための前記ベース体(12)の当接部として作用するように構成された頭部(43)を備える、ディレイラ。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載のディレイラ(10)において、前記固定ピン(40)と同軸に挿入された閉塞体(70)であって、前記固定ピン(40)に対して回転可能であり、かつ前記ベース体(12)に拘束された閉塞体(70)を備え、前記閉塞体(70)は、前記ベース体(12)の前記ブラインド内側空間(12b)のための閉塞壁を形成する、ディレイラ。
【請求項12】
請求項10に従属する場合の請求項11に記載のディレイラ(10)において、前記ばね荷重挿入体(42)の前記頭部(43)に向かう軸方向並進のために、前記閉塞体(70)に、前記固定ピン(40)に軸方向に拘束されたシール要素(71)が軸方向に当接している、ディレイラ。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載のディレイラ(10)において、前記自転車の前記フレーム(200)に強固に拘束可能な伝動要素(20)を備え、前記取付けねじ(41)を受けて係合するためのねじ孔(20a)を備える、ディレイラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車のリアディレイラ、特に、制御の精密性を向上させた型のものに関する。
【背景技術】
【0002】
リアディレイラは、チェーンが係合されるチェーンガイドを移動させて、スプロケットアセンブリの異なる歯車の間で伝動チェーンを移動させる機械式または電気機械式の装置である。
【0003】
通常、リアディレイラは4バー・リンク機構(通常、関節接続型の平行四辺形のもの)を備え、4バー・リンク機構内にベース体とこのベース体に対向する可動体とを有し、ベース体および可動体は、4つのピン要素を介して4つのピン軸に沿ってベース体および可動体にヒンジ接続された一対のコネクティングロッドを介して共に連結されており、ベース体は自転車のフレームに固定され、可動体はチェーンガイドに固定されている。
【0004】
4バー・リンク機構の変形により、スプロケットアセンブリに対する軸方向において、フレームに対するチェーンガイドの移動が決定され、これにより、ギアシフト動作が決定される。
4バー・リンク機構の変形は、制御レバーを移動させて、その動きを、ボーデンケーブルを介して4バー・リンク機構へと伝達することによって手動操作で、または、運転者によって行われる然るべき制御の後に然るべき機構を介して、4バー・リンク機構の異なる部分を互いに移動させて、4バー・リンク機構を変形させ、チェーンガイドを移動させる電気モータによってモータ作動で実現することが可能である。
【0005】
モータ作動される自転車のギアシフト装置は、例えば、特許文献1に記載されている。こうしたギアシフト装置において、リンク機構は、4バー・リンク機構の対向するピンを互いに離したり近づけたりすることで作用する。
【0006】
リアディレイラの制御を正確に行うために、自転車の初期調整は、フレームの形態および構造、ならびに後輪に関連付けられたスプロケットアセンブリの形態および構造に応じて、チェーンの張力を最適化するという目的で行われる。
このような調整は、さらに、チェーンガイドをスプロケットアセンブリの歯車に向かって移動させるという目的も有している。
【0007】
実際のところ、チェーンガイドと歯車との間の距離を縮めることによって、こうした状態においては、スプロケットアセンブリの軸と平行なチェーンガイドの移動成分が、1つのスプロケットから他のスプロケットへの移動を生じさせるために十分なチェーンに与えられる傾きと一致するので、制御感度が高まる。
【0008】
しかしながら、最も大径の歯車の最も近くにある形態であっても、チェーンガイドとより小径の歯車との間には依然として上下方向にかなりの距離があるので、歯車に向かってチェーンガイドを上昇させることは、最も大径のスプロケットによって制限されている。この欠点を解消するために、出願人は、4バー・リンク機構の制御変形の間、フレームに対するベース体の角度方向位置が変化する、制御精度を向上させたリアディレイラを提案する。
【0009】
本出願人による特許文献2には、フレームに対してベース体の角度方向位置を変更するためのリンク機構が提案されており、このリンク機構は、チェーンガイドが最も大きい歯車に向かって駆動されると、作動してベース体を自転車のフレームに対して反時計回り方向に回転させる、または、その逆も同様に、チェーンガイドが最も小さい歯車に向かって駆動されると、ベース体を時計回り方向に回転させる。
【0010】
この文献の教示内容によれば、ピン体はベース体を自転車のフレームに連結する。ベース体とフレームとの間の角度方向位置を変更するための当該リンク機構は、ピン体に連結された回転可能な歯付きセクタを備え、この回転体の回転によってピン体とベース体との間の相対回転が決定される。ギアシフト装置の作動手段によって回転駆動される、歯付きセクタと係合したスプロケットは、制御回転を歯付きセクタに伝達する。
【0011】
ピン体は、ベース体の軸方向外側開口を通過するように適合され、かつベース体に対する外側位置においてベース体の開口の縁に当接する拡大ヘッドを具備する閉塞ねじを備える。
ピン体の円筒状のブッシュは、自転車のフレームに螺合しており、閉塞ねじを受けて係合する。円筒状のブッシュおよび閉塞ねじは互いに螺合して、ベース体と閉塞ねじとの間に回転スライド手段が配置されている位置に、ベース体を軸方向に保持する。
【0012】
したがって、閉塞ねじは、円筒状のブッシュに螺合されたとき、ベース体の上方開口を閉塞しつつも、ベース体、ピン体および歯付きセクタからなるアセンブリを軸方向に保持することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】欧州特許出願公開第1357023号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2769907号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
出願人は、これまでに略述した制御精度を向上させたリアディレイラには、従来のリアディレイラ(すなわち、フレームに対するベース体の角度方向位置を変更するためのリンク機構を具備していないもの)よりも更に、閉塞ねじとベース体の上方開口との間を埃や水、泥、土が通過することを防ぐための特別な対策が必要であるということに気付いた。
【0015】
出願人は、実際のところ、ベース体の角度方向位置を変更するためのリンク機構の歯付きセクタおよび係合スプロケットは、いずれもベース体に内蔵されたものであるが、埃や水、土が存在すると特に悪影響を受けるということを発見した。
出願人は、例えば、米国特許第7963870号明細書に図示されているように、ベース体にブラインド内側空間(blind inner cavity)を設けることによって、ベース体の上方開口をなくして、侵入が生じないようにすることが好都合であるということに気付いた。
【0016】
しかしながら、出願人は、フレームに対してベース体の角度方向位置を変更するためのリンク機構(例えば、特許文献2に記載された型のもの)を有するリアディレイラ構造においてブラインド・ベース体(blind base body)を採用すると、ピン体を、フレーム、歯付きセクタおよびベース体に拘束することができないということを発見した。
【課題を解決するための手段】
【0017】
したがって、本発明は、自転車のリアディレイラであって、
-ベース体と、可動体と、4つのピン要素において関節接続軸(articulation axis)
に沿って前記ベース体および前記可動体に関節接続された一対のコネクティングロッドと、を有する4バー・リンク機構であって、前記可動体が連結ピンにおいてチェーンガイドに連結されている、4バー・リンク機構と、
-前記ベース体のブラインド・内側空間内に収納された固定ピンであって、前記自転車の前記フレームに直接的または間接的に拘束された取付けねじと、前記ブラインド・内側空間内に配置されたばね荷重挿入体(spring loading insert)とを備え、前記ベース体が前記ばね荷重挿入体に対して回転可能である、固定ピンと、
-前記取付けねじおよび前記ばね荷重挿入体の上に形成された座部に挿入されて、前記取付けねじおよび前記ばね荷重挿入体を軸方向に拘束する連結部材と、
-前記チェーンガイドの制御移動に応じて、前記ベース体と前記フレームとの間の相対角度方向位置を変更するように構成された適合リンク機構の一部である、歯付きセクタおよびスプロケットであって、前記歯付きセクタは、前記ばね荷重挿入体と同軸に取り付けられ、前記スプロケットに作用し、前記スプロケットは、前記ベース体に直接的または間接的に作用する、歯付きセクタおよびスプロケットと、
-前記ばね荷重挿入体と前記歯付きセクタとの間に作用し、前記チェーンガイドの制御移動の間、前記ばね荷重挿入体および前記歯付きセクタを回転自在に拘束する(constrain……in rotation)ように構成されたトーションスプリングと、を備えるリアディレイラに関する。
【0018】
前記チェーンガイドの制御移動は、前記ディレイラの制御部に運転者が作用することで決定される前記4バー・リンク機構の変形によってなされる。このような制御移動によって、前記チェーンガイドを軸方向に並進させることが可能であり、したがって、スプロケットアセンブリの異なる歯車へと伝動チェーンを移動(derail)させることが可能である。
【0019】
出願人は、取付けねじとばね荷重挿入体との間のインターフェースにおいて直接的に一体化されていない専用の連結部材を用いて前記取付けねじを前記ばね荷重挿入体に連結することによって、また、トーションスプリングを用いて前記ばね荷重挿入体および前記歯付きセクタを連結することによって、前記ベース体の角度方向位置を変更するための前記リンク機構をなくすことなく、またはその機能性を損なうことなく、ブラインド・ベース体を使用することが可能であるということに気付いた。
【0020】
実際のところ、前記チェーンガイドの制御移動の間、前記ばね荷重挿入体および前記歯付きセクタは、前記トーションスプリングを介して互いに一体で回転し、また、特に、前記フレームに対して固定されている。
【0021】
これにより、前記チェーンガイドの制御移動が行われるとき、前記歯付きセクタは前記適合リンク機構の前記スプロケットを回転させることが可能である。前記スプロケットの回転によって、前記フレームに対する前記ベース体の角度方向移動をなす前記歯付きセクタに対して前記ベース体が回転される。
前記取付けねじを前記ばね荷重挿入体に連結する前記連結部材は、前記固定ピンへの前記ベース体の軸方向の連結から独立して、これら2つの要素を連結する。
【0022】
これにより、前記ベース体を前記固定ピンに連結し、かつ前記固定体の2つの構成品を互いに一体にさせるいかなる「ねじ」も、前記ベース体を貫通する必要がない。したがって、前記ベース体はブラインドであるもの、換言すれば、上部が閉塞されたものであってもよく、そのブラインド内側空間内に前記固定ピンを収納することが可能である。
【0023】
前記ベース体が中心として回転する軸は、本発明のディレイラの一部を成す要素の主基準軸である。「軸方向」、「径方向」、「周方向」および「直径方向」などの方向についての記載の全ては、この軸を基準としている。また、径方向を基準とした「外側に向かって」および「内側に向かって」といった記載は、この軸から離れる方向およびこの軸に向かう方向と理解されたい。軸方向は、自転車のスプロケットアセンブリが展開する方向と平行であり、後輪のハブの回転軸と一致する。
【0024】
本発明のリアディレイラは、以下の好適な構成の一つ以上を、単独でまたは互いに組み合わせて備えていてもよい。
【0025】
好ましくは、前記ばね荷重挿入体に対して同軸かつ径方向外側にある調節挿入体が、軸方向軸を中心とした回転のために直接的または間接的に前記フレームに拘束されており、軸方向かつ回転可能に前記ばね荷重挿入体に拘束されている。前記調節挿入体は、前記フレームに対してその角度方向位置を調節するための調節部材を備える。
これにより、前記自転車の前記フレームに対する前記ベース体の、したがって、4バー・リンク機構全体の初期位置を調節することが可能である。
【0026】
好ましくは、前記ばね荷重挿入体が、前記取付けねじと同軸かつ前記取付けねじに対して径方向外側にある。前記連結部材は、さらに、前記ばね荷重挿入体を前記調節挿入体に軸方向に拘束する。
これにより、前記取付けねじ、前記ばね荷重挿入体および前記調節挿入体を、前記ベース体と前記固定ピンの間の軸方向の拘束から独立して、互いに軸方向に拘束することが可能である。
さらに、前記取付けねじ、前記ばね荷重挿入体および前記調節挿入体を同一の前記連結部材で拘束することによって、前記ディレイラの取付操作が簡易化される。
【0027】
好ましくは、前記取付けねじが径方向外側の環状溝を備え、前記ばね荷重挿入体が、前記軸方向と直交する方向に前記ばね荷重挿入体を貫通する孔を備え、前記連結部材が、前記ばね荷重挿入体の前記孔に挿入されかつ前記取付けねじの前記径方向溝に干渉する一対のピンを備える。
これにより、前記一対のピンは、前記取付けねじに対する前記ばね荷重挿入体の軸方向移動を防止しつつも、前記取付けねじに対する前記ばね荷重挿入体の回転を可能とする。
【0028】
前記スプロケットに係合している前記歯付きセクタは、前記スプロケットが前記4バー・リンク機構の制御変形の間にのみ回転可能であるので、取付操作の間、前記固定ピンに対して回転不能である。取付中に、前記取付けねじに対する、したがって、前記歯付きセクタに対する前記ばね荷重挿入体の回転を可能にすることで、ばね荷重挿入体と歯付きセクタとの間の予荷重を用いた前記トーションスプリングの挿入を促進する。
【0029】
好ましくは、前記調節挿入体が、前記軸方向と直交する方向に前記調節挿入体を貫通する貫通孔を備え、また、前記ピンが前記調節挿入体の前記貫通孔を貫通する。
これにより、前記ピンが前記調節挿入体に挿入されたとき、前記ピンは、前記調節挿入体および前記ばね荷重挿入体を軸方向に一体化させる。
前記調節挿入体が前記フレームと一体で回転させられると、前記ばね荷重挿入体も前記フレームと一体で回転する。
これにより、前記固定ピン全体が、前記自転車の前記フレームと軸方向かつ回転可能に一体化されたままとなる。
【0030】
好ましくは、前記調節挿入体が、さらに、前記貫通孔と整列するねじ付き座部を備え、前記ピンが、前記調節挿入体の前記ねじ付き座部に螺合するそれぞれのねじ付き端を備える。
これにより、前記連結部材の前記ピンは、前記ディレイラの通常使用時に抜け落ちてしまうことなく操作位置において安定している。
【0031】
好ましくは、前記ばね荷重挿入体が、第1の肩部および第2の肩部によって角度方向に画定された径方向突出部を備え、前記径方向突出部は、第1当接部および第2当接部によって角度方向に画定された前記歯付きセクタの径方向座部に挿入されており、前記径方向座部は、前記径方向突出部の角度方向寸法よりも大きい角度方向寸法を有する。
これにより、取付中に、前記ばね自体に予荷重を加えることによって、前記歯付きセクタに対して前記ばね荷重挿入体を回転させて、前記トーションスプリングを前記ばね荷重挿入体と前記歯付きセクタとの間の位置に配置することが可能である。
さらに、前記ばね荷重挿入体と前記歯付きセクタの間のこうした接続により、前記4バー・リンク機構が突発的な衝撃を受けた場合または前記伝動チェーンに異常な張力がかかった場合に、前記トーションスプリングを変形させることが可能である。
【0032】
前記4バー・リンク機構が突発的な衝撃を受けた場合または前記伝動チェーンに異常な張力がかかった場合、力は、前記固定ピンを中心とした一対の力を発生させるような構成品を有する前記ディレイラに伝達される。
【0033】
出願人は、前記歯付きセクタと前記スプロケットが、前記固定ピンと前記4バー・リンク機構との間の唯一の接触面であるので、こうした一対の力は、前記歯付きセクタと前記スプロケットの間の接触面が与える拘束によって完全に相殺されるということに気付いた。
【0034】
出願人は、前記歯付きセクタおよび前記スプロケットが、このような応力を受けたとき、機械的に降伏する可能性があるということに気付いた。
このような場合、前記トーションスプリングが変形して、前記固定ピンに対して前記歯付きセクタを回転可能にし、したがって、それ自体の弾性変形によって衝撃の力の少なくとも一部を相殺する。
【0035】
好ましくは、前記トーションスプリングが、前記ばね荷重挿入体の前記突出部の前記第1の肩部を、前記歯付きセクタの前記第1当接部に対して当接した状態に保持する。
これにより、前記ディレイラが通常用いられるとき、前記トーションスプリングは、その予荷重によって前記ばね荷重挿入体と前記歯付きセクタとを一体化させる。
【0036】
好ましくは、前記ばね荷重挿入体が、トーションキーを収納するように構成された成形孔を有する頭部を備える。
これにより、前記ディレイラの取付操作の間、前記ばねの前記予荷重とは反対方向に、前記歯付きセクタに対して前記ばね荷重挿入体を回転させることが可能である。
【0037】
好ましくは、前記ばね荷重挿入体が、前記ベース体の前記内側空間に内蔵され、前記フレームに向かって前記軸方向に並進するための前記ベース体の当接部として作用するように構成された頭部を備える。
これにより、前記ベース体は、前記フレームに向かって軸方向に並進不能である。
【0038】
好ましくは、閉塞体が前記固定ピンに同軸に挿入され、前記固定ピンに対して回転可能であり、かつ前記ベース体に拘束されており、前記閉塞体は、前記ベース体の前記内側空間のための閉塞壁を形成する。
これにより、前記ベース体の前記ブラインド内側空間は、前記フレームに面する側においても閉塞されており、土や泥、水が前記ブラインド内側空間に入り込み、前記歯付きセクタに到達することを防止する。
【0039】
好ましくは、前記ばね荷重挿入体の前記頭部に向かう軸方向並進のために、前記閉塞体に、前記固定ピンに軸方向に拘束されたシール要素が軸方向に当接している。
これにより、前記フレームの反対方向への前記ベース体の軸方向並進も防止され、前記フレームに対して(また、前記固定ピンに対して)前記ベース体を軸方向に拘束することが可能である。
【0040】
好ましくは、伝動要素が前記自転車の前記フレームに強固に拘束可能であり、前記取付けねじを受けて係合するためのねじ孔を備える。
前記伝動要素によって、前記リアディレイラの前記固定ピンを受けて係合するための前記フレームの正確な位置に関わらず、前記フレームに対して予め選択された位置に前記リアディレイラを取り付けることが可能である。
【0041】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図面を参照しながら行う、本発明の好適な実施形態についての以下の詳細な説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】使用時の形態における、本発明に係るリアディレイラの概略図である。
図2図1のディレイラの斜視図である。
図3図2のディレイラの軸線III-IIIに沿った断面図である。
図4図2のディレイラの一部の構成品の拡大図である。
図5】他の部分をより良く強調するために、一部の部品を取り除いた図2のディレイラの斜視図である。
図6】他の部分をより良く強調するために、一部の部品を取り除いた図2のディレイラの更なる斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図面を参照しながら、自転車のリアディレイラを説明する。リアディレイラ全体を符号10で示す。
リアディレイラ10は、自転車のフレーム200の後輪と関連付けられた複数のスプロケット100の間で伝動チェーン(図示せず)を移動させるように適合されている。スプロケット100は(図1に示されているように)互いに異なる大きさであり、軸方向に沿って整列している。
【0044】
リアディレイラ10は、一対のコネクティングロッド13,15を介して共に連結されたベース体12および可動体14を有する4バー・リンク機構11を備え、この一対のコネクティングロッドのうち、フロントコネクティングロッド13は、第1のピン軸において第1のピン要素16を介してベース体12に、および第2のピン軸において第2のピン要素17を介して可動体14に関節接続されており、後側コネクティングロッド15は、第3のピン軸において第3のピン要素18を介してベース体12に、および第4のピン軸において第4のピン要素19を介して可動体14に関節接続されている(図2)。
【0045】
ベース体12は、図1に示されているように、自転車のフレーム200に固定されるように意図されている。
本発明の好適な実施形態において、ベース体12はジョイント要素20に固定され、そして、このジョイント要素は自転車のフレーム200に直接連結されている。
可動体14は、4バー・リンク機構11におけるベース体12に対向して、チェーンガイド21と関連付けられている。
チェーンガイド21は、伝動チェーンのための上方伝動輪22および下方伝動輪23を備える。
【0046】
可動体14は、軸方向を中心として回転可能にチェーンガイド21と結合されている。このため、第1の端31aにおいて可動体14との接続インターフェースが設けられ、かつ第1の端に対向する第2の端31bにおいてチェーンガイド21に一体的に連結された第5のピン要素31を備える連結ピン30が設けられている(図4)。
【0047】
チェーンテンションスプリング32が第5のピン要素31と同軸に取り付けられており、当該ばね32は、伝動チェーンに作用して、フレーム200に対してチェーンガイド21が取ることができる位置を定める平衡状態を決定する。
チェーンテンションスプリング32は、第1の端32aにおいて可動体14との接続インターフェースと係合して、可動体14とチェーンガイド21との間の相対回転に反作用/制限を加え、伝動チェーンを張力下に保つ。
第5のピン要素31の第2の端31bには、チェーンテンションスプリング32の予荷重を調節するためのシステムが設けられている。
【0048】
4バー・リンク機構11の形態を変更するように適合されたギアシフト装置の作動手段も設けられており、可動体14とベース体12との間の相対移動を決定して、結果的に、フレーム200に対するチェーンガイド21の軸方向移動を決定する。
該作動手段は、ボーデン型の制御ケーブル(図示せず)、すなわち、内側のケーブルコアがスライド自在である外側のシースを備える制御ケーブルを介して4バー・リンク機構11と連結状態で配置された少なくとも1つの制御レバー(図示せず)を備える。
【0049】
4バー・リンク機構11には、制御ケーブルを支持し、その外側のシースを固定するためのシース座部33が設けられており、ケーブルの内側のコアが外側のシースに対して相対的にスライド可能である。シース座部33は、ベース体12と一体である。
【0050】
制御ケーブルのコアの端部の固定クランプ34も、フロントコネクティングロッド13の上に配置されており、ケーブルのシースとコアの間の相対移動によって加えられる牽引により4バー・リンク機構11の変形が決定される。
ケーブルのシースとコアの間の相対移動によって加えられる牽引作用は、図示された特定の実施形態において、第4のピン要素19に配置されたリターンスプリング35によって反作用を受ける。
【0051】
ベース体12とフレーム200との間の結合、または、好ましくはジョイント要素20との結合のために、固定ピン40が設けられている。
固定ピン40は、ジョイント要素20のねじ孔20aに螺合可能な第1のねじ付き端41aを有する取付けねじ(fixing screw)41を備える。
取付けねじ41はジョイント要素20から軸方向に現れる。
固定ピン40は、さらに、取付けねじ41と同軸になるように取付けねじ41に嵌合されたばね荷重挿入体42を備える。
このため、ばね荷重挿入体42は、ジョイント要素20から現れる取付けねじ41の部分を径方向に囲むように内側が中空である。
【0052】
フレーム200と連結するためにジョイント要素20から現れる取付けねじ41の部分がねじ付きでないように、ばね荷重挿入体42の空間(cavity)はねじ付きでない。
ばね荷重挿入体42は、軸方向に当接しているベース体12の上方ブラインド端(blind end)を収納する、ばね荷重挿入体自体の第1の端42aに配置された頭部43を備えており、これにより、ベース体12は、ばね荷重挿入体42に対して互いに対向する角度方向に回転可能である。ばね荷重挿入体42に対するベース体12の回転の中心となる回転軸Rは、軸方向を向いている。
【0053】
図3に示されているように、ベース体12は、ベース体の軸方向端部12aにおいて、
ばね荷重挿入体42の頭部43と軸方向に当接する。こうした軸方向端部12aはブラインド(blind)、すなわち、貫通孔を有しておらず、ベース体12の内側空間12bの上方壁を形成する。換言すれば、軸方向端部12aは、ばね荷重挿入体42の頭部43を完全に覆っている。
【0054】
ばね荷重挿入体42の頭部43とベース体との間のカップリングは、ベース体12の軸方向突起12cを軸方向に収納する、頭部43から軸方向に現れるスリーブ要素44を介して実現される。
【0055】
スリーブ要素44の直径は軸方向突起12cの直径よりも大きく、軸方向突起12cはスリーブ要素44の内側で回転軸Rを中心として回転自在である。こうした軸方向突起12cは、図3に示されているように、ベース体12の内側空間12bの内側に突出している。
固定ピン40は、ベース体のこうした内側空間12bの内部に部分的に収容されている。
【0056】
ばね荷重挿入体42の外側で、かつ頭部43に対向する端の近くに、ばね荷重挿入体42と同軸の調節挿入体50が設けられている。調節挿入体50は、略環状形状であり、フレーム200に、または、好ましくはジョイント要素20に当接可能なストーク(stalk)51を有する。ストーク51により、軸方向における移動および回転軸Rを中心とした回転のために、調節挿入体50がフレーム200と一体化される。
【0057】
フレーム200に対する調節挿入体の角度方向位置は調節可能であり、これにより、フレーム200に対する固定ピン40の位置を調節することができる。
このため、ストーク51と径方向に係合し、かつフレーム200の、または、好ましくはジョイント要素20の突出部と当接する調節ねじ52が設けられている。
【0058】
ばね荷重挿入体42および取付けねじ41を互いに軸方向に拘束するために、取付けねじ41とばね荷重挿入体42との間に連結部材60が挿入されている。
連結部材60は、ばね荷重挿入体42と取付けねじ41との間において、互いに平行かつ回転軸Rと直交する方向に沿って挿入された一対のピン61を備える。
これに関して、取付けねじ41は、取付けねじ41の外側表面全体に沿って周方向に延びる径方向外側の環状溝45を備える。
【0059】
ばね荷重挿入体42は、互いに平行かつ回転軸Rと直交する方向に沿ってばね荷重挿入体を貫通する一対の孔46を備える。こうした孔46は、孔46が溝45に直接面するように、取付けねじ41の溝45に径方向および軸方向に配置されている。ピン61の直径は孔46の直径と略同一であり、ピン61は孔46を貫通することができる。
図3に示されているように、ピン61が孔46に挿入されたとき、ピン61は、溝45に干渉して係合する。
これにより、ピン61は、取付けねじ41をばね荷重挿入体42に軸方向に拘束する。
【0060】
調節挿入体50は、互いに平行かつ回転軸Rと直交するそれぞれの孔53も具備している。調節挿入体の孔53は、ばね荷重挿入体42の孔46と整合しており、また、ピン61によって貫通されている。
これにより、ピンが(フレーム200と一体である)調節挿入体とばね荷重挿入体42との間の相互回転(reciprocal rotation)を防止するので、ピン61は、ばね荷重挿入体42をフレーム200に回転自在に拘束する。
ピン61を確実に上記の位置に留めるために、ピンは、調節挿入体50のねじ付き端に螺合され、かつ上記の孔53と整合するそれぞれのねじ付き端部61aを備える。
【0061】
フレーム200に対する調節挿入体50の角度方向位置を調節することによって、固定ピン40、および、特に、ばね荷重挿入体42は、調節挿入体50が到達した角度方向位置をコピー(copy)する。
【0062】
ベース体12を固定ピン40に軸方向に拘束するために、固定ピン40に同軸に挿入され、かつ固定ピンに対して回転可能である閉塞体70が設けられている。
閉塞体70は、ばね荷重挿入体42の外側表面に嵌合されかつ閉塞体の内側空間12bに内蔵された軸方向のシール要素71(図3)によって、ばね荷重挿入体42の頭部43に向かっての軸方向における並進が防止される。
こうしたシール要素71は、例えば、ばね荷重挿入体42上に形成された周方向かつ径方向外側の溝に挿入されたシーガー(Seeger)である。
【0063】
閉塞体70は、然るべき座部において機械的に干渉するねじ又は歯を介してベース体12に拘束されている。
ベース体12は、フレームに対して回転自在であり、ばね荷重挿入体42の頭部43とのカップリングによって、また、閉塞体70によってフレーム上で軸方向に保持されている。固定ピン40は、フレーム200に軸方向にかつ回転可能に拘束されているので、ベース体12は回転軸Rを中心として固定ピン40に対して回転可能である。
【0064】
ディレイラ10は、さらに、ベース体12とフレーム200との間の相対位置をチェーンガイド21の制御移動に応じて適応させるリンク機構80を備え、チェーンガイド21の形態の変更を決定する。
リンク機構80は、歯付きセクタ81と、歯付きセクタ81に係合したスプロケット82とを備える(図3)。
スプロケット82は、同時にチェーンガイド21の移動を決定する制御回転が与えられるピン要素83に一体的に装着されている。
これに関して、ピン要素83は、フロントコネクティングロッド13とベース体12との間に設けられた第1のピン要素16と一体形成されている又は一致する。
【0065】
固定プレート83aは、スプロケット82においてピン要素83と回転可能に結合されており、ピン要素83の撓みを防止する。
固定プレート83aは、図6に示されているように、ピン要素83の端を回転可能に受けて係合し、(例えば、ねじによって)ベース体12に拘束されている。
【0066】
チェーンガイド21の制御移動の間に行われるベース体12に対するフロントコネクティングロッド13の回転により、ピン要素83の回転、したがって、スプロケット82の回転が決定される。
歯付きセクタ81は、ばね荷重挿入体42と同軸に取り付けられており、ばね荷重挿入体の頭部43と閉塞体70との間に軸方向に配置されている。
歯付きセクタ81は、取付けねじ41の第1の端41aに向かって軸方向に並進不能であるように、軸方向のシール要素71によって軸方向に保持されている。
歯付きセクタ81は、図3に図示されているように、ベース体12の内側空間12bに完全に内蔵されている。
【0067】
ばね荷重挿入体42の頭部43と歯付きセクタ81との間には、これら2つの要素の間において予荷重で作用するトーションスプリング90が設けられている。トーションスプリング90は、トーションスプリング90の両端から軸方向に突出する一対のストーク(図示せず)を備え、第1のストークは、ばね荷重挿入体42の頭部43に形成された軸方向孔(図示せず)に挿入されており、第2のストークは、歯付きセクタ81の軸方向孔に挿入されている。
トーションスプリング90は、取付工程時の予荷重によって、歯付きセクタ81をばね荷重挿入体42に、したがって、歯付きセクタ81を固定ピン40に回転自在に拘束する。
こうした回転拘束は、チェーンガイド21のいかなる制御移動の間においても、歯付きセクタ81に伝達される回転力に作用する。
【0068】
こうした制御移動の間に、上述したように、4バー・リンク機構11は変形し、特に、フロントコネクティングロッド13は、ベース体12に対して回転する。このような回転によって、ピン要素83の回転および歯付きセクタ81に係合したスプロケット82の回転が生じる。
歯付きセクタ81は、固定ピン40に対して回転自在に拘束されて(フレーム200に対して回転自在に拘束されて)おり、歯付きセクタ81自体を中心としたスプロケット82の回転を生じさせる。
【0069】
この回転は、ピン要素83がスプロケット82に堅固に連結され、かつフロントコネクティングロッド13をベース体12に連結する第1のピン要素16に配置されていることから、回転軸Rを中心としたベース体12の対応する回転を決定する。
したがって、(チェーンガイドをスプロケットアセンブリの新たな歯車に配置する)軸方向におけるチェーンガイド21の各制御移動は、スプロケットアセンブリから離れる方向またはスプロケットアセンブリに向かう方向へのチェーンガイド21の上下方向(換言すれば、軸方向と直交する方向へ)の移動を決定する、(軸方向に向かっての)回転軸Rを中心としたベース体12の回転に対応する。
【0070】
トーションスプリング90によって、また、チェーンガイド21の制御回転の間、歯付きセクタ81を固定ピン40と一体化させることによって、4バー・リンク機構11が突発的な衝撃を受けた場合または自転車の伝動チェーンに異常な牽引が加わった場合に、ベース体12および内側の4バー・リンク機構11を回転させることが可能である。
これらの場合において、歯付きセクタ81によってトーションスプリング90に伝達される回転力は、チェーンガイドの制御移動の間にトーションスプリング90に伝達される回転力よりも大きい。
【0071】
これらの場合において、トーションスプリング90は変形し、ばね荷重挿入体42の頭部43に対して、したがって、固定ピン40に対して歯付きセクタ81を回転可能にする。
固定ピン40に対する歯付きセクタ81の回転は、固定ピン40に対する、したがって、フレーム200に対するベース体12の回転および4バー・リンク機構11全体の回転を(歯付きセクタ81とスプロケット82とのインターフェースを介して)決定し、衝撃または伝動チェーンの異常な張力のエネルギーを(変形する)トーションスプリング90に少なくとも部分的に伝達する。
【0072】
特に激しい衝撃を受けた場合、ベース体12の回転は、4バー・リンク機構を自転車のフレーム200に接触させて、トーションスプリング90の変形によってのみではなく、フレーム200に4バー・リンク機構11をぶつけることによって、衝撃のエネルギーを確実に消散させる。この部分が、フレームに衝撃を与える4バー・リンク機構の特に頑丈な部分となるような取り付け形状および距離とすることで、ディレイラ10に対する損傷を防止することが可能である。
【0073】
これに関して、トーションスプリング90は、(作動形態において、ディレイラを正面から見たとき)反時計回りの角度方向に沿った固定ピン40に対する歯付きセクタ81の回転のために変形する(yield for rotations of the toothed sector)。
上記の状態において、ばね荷重挿入体42に対して歯付きセクタ81を回転可能にするために、ばね荷重挿入体42は径方向突出部47を備える(図5)。径方向突出部47は、第1の肩部48および第2の肩部49によって画定された角度方向長さを有する。径方向突出部47は、ばね荷重挿入体42の頭部43から軸方向に離れるように配置されている。
【0074】
歯付きセクタ81は、肩部48,49のための第1当接部85および第2当接部86によって角度方向に画定された径方向座部84を備える。
径方向突出部47は、径方向座部84に挿入されている。
【0075】
第1の肩部48を第2の肩部49から分離する角度方向距離は、第1当接部85を第2当接部86から分離する角度方向距離よりも小さいので、径方向座部84は、当接部85,86の間の径方向距離と、肩部48,49の間の径方向距離との間の差と等しい大きさの径方向突出部47に対して角度方向回転をなすことができる。
トーションスプリング90は、第1の肩部48が第1当接部85に対して保持されるように、予荷重作用を加える。
【0076】
径方向座部47の回転は、トーションスプリング90とは反対の方向に生じ、第2当接部86が第2の肩部49と接触するまで(または、4バー・リンク機構がフレームにぶつかるまで)行われ、ベース体12をフレーム200に対して回転させることが可能である。
ディレイラ10の取付け工程において、径方向突出部47が(トーションスプリング90に予荷重を加える)径方向座部84に挿入可能であるように、ばね荷重挿入体42の頭部43は、トーションキーを収納するように構成された成形孔43aを有する(図3)。
【0077】
リアディレイラには様々な変更や変形を施すことができ、例えば、上述の完全機械式の4バー・リンク機構の代わりに、電気機械式の4バー・リンク機構を変形させる手段が可能であるが、これらの変更や変形の全ては添付の特許請求の範囲により定まる本発明の保護範囲内に含まれる。
以下、本発明に含まれる態様を記す。
〔態様1〕自転車のリアディレイラ(10)であって、
-ベース体(12)と、可動体(14)と、4つのピン要素(16,17,18,19)において関節接続軸に沿って前記ベース体(12)および前記可動体(14)に関節接続された一対のコネクティングロッド(13,15)と、を有する4バー・リンク機構(11)と、
連結ピン(30)においてチェーンガイド(21)に連結されている、可動体(14)と、
-前記ベース体(12)のブラインド内側空間(12b)内に収納された固定ピン(40)であって、前記自転車の前記フレーム(200)に直接的または間接的に拘束された取付けねじ(41)と、前記ブラインド内側空間(12b)内に配置されたばね荷重挿入体(42)とを備え、前記ベース体(12)が前記ばね荷重挿入体(42)に対して回転可能である、固定ピン(40)と、
-前記取付けねじ(41)および前記ばね荷重挿入体(42)の上に形成された座部(45,46)に挿入されて、前記取付けねじ(41)および前記ばね荷重挿入体(42)を軸方向に拘束する連結部材(60)と、
-前記チェーンガイド(21)の制御移動に応じて、前記ベース体(12)と前記フレーム(200)との間の相対角度方向位置を変更するように構成された適合リンク機構(80)の一部である、歯付きセクタ(81)およびスプロケット(82)であって、前記歯付きセクタ(81)は、前記ばね荷重挿入体(42)と同軸に取り付けられ、前記スプロケット(82)に作用し、前記スプロケット(82)は前記ベース体(12)に直接的または間接的に作用する、歯付きセクタ(81)およびスプロケット(82)と、
-前記ばね荷重挿入体(42)と前記歯付きセクタ(81)との間に作用し、前記チェーンガイド(21)の制御移動の間、前記ばね荷重挿入体(42)および前記歯付きセクタ(81)を回転自在に拘束するように構成されたトーションスプリング(90)と、を備えるリアディレイラ(10)。
〔態様2〕態様1に記載のディレイラ(10)において、前記ばね荷重挿入体(42)に対して同軸かつ径方向外側にある調節挿入体(50)であって、軸方向軸(R)を中心とした回転のために直接的または間接的に前記フレーム(200)に拘束されており、かつ軸方向かつ回転可能に前記ばね荷重挿入体(42)に拘束されている調節挿入体(50)を備え、前記調節挿入体(50)は、前記フレーム(200)に対してその角度方向位置を調節するための調節部材(52)を備える、ディレイラ。
〔態様3〕態様2に記載のディレイラ(10)において、前記ばね荷重挿入体(42)が、前記取付けねじ(41)と同軸かつ前記取付けねじ(41)に対して径方向外側にあり、前記連結部材(60)は、さらに、前記ばね荷重挿入体(42)を前記調節挿入体(50)に軸方向に拘束する、ディレイラ。
〔態様4〕態様1から3のいずれか一態様に記載のディレイラ(10)において、前記取付けねじ(41)が径方向外側の環状溝(45)を備え、前記ばね荷重挿入体(42)が、前記軸方向と直交する方向に前記ばね荷重挿入体を貫通する孔(46)を備え、前記連結部材(60)が、前記ばね荷重挿入体(42)の前記孔(46)に挿入されかつ前記取付けねじ(41)の前記径方向外側の環状溝(45)に干渉する一対のピン(61)を備える、ディレイラ。
〔態様5〕態様3および4に記載のディレイラ(10)において、前記調節挿入体(50が、前記軸方向と直交する方向に前記調節挿入体(50)を貫通する貫通孔(53)を備え、前記ピン(61)が、さらに、前記調節挿入体(50)の前記貫通孔(53)を貫通する、ディレイラ。
〔態様6〕態様5に記載のディレイラ(10)において、前記調節挿入体(50)が、さらに、前記貫通孔(53)と整合するねじ付き座部を備え、前記ピン(61)が、前記調節挿入体(50)の前記ねじ付き座部に螺合するためのそれぞれのねじ付き端(61a)を備える、ディレイラ。
〔態様7〕態様1から6のいずれか一態様に記載のディレイラ(10)において、前記ばね荷重挿入体(42)が、第1の肩部(48)および第2の肩部(49)によって角度方向に画定された径方向突出部(47)を備え、前記径方向突出部(47)は、第1当接部(85)および第2当接部(86)によって角度方向に画定された前記歯付きセクタ(81)の径方向座部(84)に挿入されており、前記径方向座部(84)は、前記径方向突出部(47)の角度方向寸法よりも大きい角度方向寸法を有する、ディレイラ。
〔態様8〕態様7に記載のディレイラ(10)において、前記トーションスプリング(90)が、前記ばね荷重挿入体(42)の前記径方向突出部(47)の前記第1の肩部(48)を、前記歯付きセクタ(81)の前記第1当接部(85)に対して当接した状態に保持する、ディレイラ。
〔態様9〕態様1から8のいずれか一態様に記載のディレイラ(10)において、前記ばね荷重挿入体(42)が、トーションキーを収納するように構成された成形孔(43a)を具備する頭部(43)を備える、ディレイラ。
〔態様10〕態様1から9のいずれか一態様に記載のディレイラ(10)において、前記ばね荷重挿入体(42)が、前記ベース体(12)の前記内側空間(12b)に内蔵され、前記フレーム(200)に向かって前記軸方向に並進するための前記ベース体(12)の当接部として作用するように構成された頭部(43)を備える、ディレイラ。
〔態様11〕態様1から10のいずれか一態様に記載のディレイラ(10)において、前記固定ピン(40)と同軸に挿入された閉塞体(70)であって、前記固定ピン(40)に対して回転可能であり、かつ前記ベース体(12)に拘束された閉塞体(70)を備え、前記閉塞体(70)は、前記ベース体(12)の前記内側空間(12b)のための閉塞壁を形成する、ディレイラ。
〔態様12〕態様10および11に記載のディレイラ(10)において、前記ばね荷重挿入体(42)の前記頭部(43)に向かう軸方向並進のために、前記閉塞体(70)に、前記固定ピン(40)に軸方向に拘束されたシール要素(71)が軸方向に当接している、ディレイラ。
〔態様13〕態様1から12のいずれか一態様に記載のディレイラ(10)において、前記自転車の前記フレーム(200)に強固に拘束可能な伝動要素(20)を備え、前記取付けねじ(41)を受けて係合するためのねじ孔(20a)を備える、ディレイラ。
【符号の説明】
【0078】
10 リアディレイラ
11 4バー・リンク機構
12 ベース体
12a ベース体軸方向端部
12b ブラインド内側空間
12c ベース体軸方向突起
13 コネクティングロッド
14 可動体
15 コネクティングロッド
16 ピン要素
17 ピン要素
18 ピン要素
19 ピン要素
20 伝動要素
20a ねじ孔
21 チェーンガイド
30 連結ピン
31 ピン要素
31a ピン要素第1の端
31b ピン要素第2の端
32 チェーンテンションスプリング
32a テンションスプリング第1の端
32b テンションスプリング第2の端
33 シース座部
34 固定クランプ
35 リターンスプリング
40 固定ピン
41 固定ねじ
41a ねじ付き端
42 ばね荷重挿入体
43 頭部
43a 成形孔
44 スリーブ要素
45 環状溝
46 孔
47 径方向突出部
48 肩部
49 肩部
50 調節挿入体
51 ストーク
52 調節部材
53 貫通孔
60 連結部材
61 ピン
61a ねじ付き端
70 閉塞体
71 閉塞要素
80 適合リンク機構
81 歯付きセクタ
82 スプロケット
83 ピン要素
84 径方向座部
85 第1当接部
86 第2当接部
90 トーションスプリング
100 スプロケット
200 フレーム
R 軸方向軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6