(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】IBDにおける治療標的及びバイオマーカー
(51)【国際特許分類】
A61K 31/7088 20060101AFI20220128BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20220128BHJP
A61K 38/19 20060101ALI20220128BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220128BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20220128BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220128BHJP
G01N 33/53 20060101ALN20220128BHJP
C12Q 1/68 20180101ALN20220128BHJP
C07K 16/24 20060101ALN20220128BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20220128BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20220128BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20220128BHJP
【FI】
A61K31/7088
A61K31/7105
A61K38/19
A61K39/395 N
A61P1/04
A61P43/00 111
G01N33/53 D
C12Q1/68
C07K16/24 ZNA
C07K16/28
C07K19/00
C12N15/113 120Z
C12N15/113 140Z
(21)【出願番号】P 2017540056
(86)(22)【出願日】2016-01-28
(86)【国際出願番号】 GB2016050185
(87)【国際公開番号】W WO2016120625
(87)【国際公開日】2016-08-04
【審査請求日】2019-01-24
(32)【優先日】2015-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2015-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2015-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507226592
【氏名又は名称】オックスフォード ユニヴァーシティ イノヴェーション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100196966
【氏名又は名称】植田 渉
(72)【発明者】
【氏名】ウェスト,ナタニエル リチャード
(72)【発明者】
【氏名】オーウェンズ,ベンジャミン マイケル ジョゼフ
(72)【発明者】
【氏名】ヘガジー,アフメド ナビル
(72)【発明者】
【氏名】ポーリー,フィオナ マーガレット
【審査官】柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-507373(JP,A)
【文献】特表2009-526756(JP,A)
【文献】BMC Biotechnol., (2011), 11:3(doi:10.1186/1472-6750-11-3)
【文献】PLoS One, (2014), 9, [4], p.e93498
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00-38/58
A61K 39/00-39/44
A61K 45/00-45/06
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体における慢性腸炎および/または炎症性腸疾患(IBD)を処置または予防する方法において使用するための、オンコスタチン-M(OSM)活性またはOSMシグナリングのアンタゴニストを含む医薬組成物であって、前記アンタゴニストが、抗OSMもしくは抗OSMR抗体、
OSMもしくはOSMRのmRNAに相補的であるアンチセンス
オリゴヌクレオチド、
OSMもしくはOSMRのmRNAに結合する干渉RNA、もしくは
OSMもしくはOSMRのデコイ結合パートナーとして作用するOSMもしくはOSMR融合タンパク質、または抗OSMもしくは抗OSMR抗体をコードするポリ核酸、
OSMもしくはOSMRのmRNAに相補的であるアンチセンス
オリゴヌクレオチドをコードするポリ核酸、
OSMもしくはOSMRのmRNAに結合する干渉RNAをコードするポリ核酸、もしくは
OSMもしくはOSMRのデコイ結合パートナーとして作用するOSMもしくはOSMR融合タンパク質をコードするポリ核酸である、医薬組成物。
【請求項2】
前記個体が、個体におけるOSMおよび/またはOSMRを測定し、それにより個体における慢性腸炎および/またはIBDを診断または予後診断することを含む方法により、診断または予後診断されている、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
診断または予後診断方法が、前記個体におけるOSMおよびOSMRを測定すること、前記OSMおよびOSMRレベルを参照OSMおよびOSMRレベルまたは参照試料のOSMおよびOSMRレベルと比較すること、ならびにOSMインデックス(OSMi)を決定することを含む、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
診断または予後診断方法が、慢性腸炎および/またはIBDから寛解した個体が再発するか否かを予測する方法である、請求項2または3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
診断または予後診断方法が、個体が手術を必要とする可能性を決定する方法である、請求項2または3に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記アンタゴニストが、Th17 CD4+T細胞またはTh17経路の発生を阻害する、請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
処置方法が、
(i)個体におけるOSMおよび/またはOSMRを測定し、それにより個体における慢性腸炎および/またはIBDを診断または予後診断することを含む方法を用いて個体における慢性腸炎および/またはIBDを診断または予後診断すること;ならびに
(ii)OSM活性またはOSMシグナリングのアンタゴニストを前記個体に投与すること
を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記個体が哺乳動物であり、場合により前記哺乳動物がヒトである、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
(i)慢性腸炎および/またはIBDを有する、または有すると疑われる、または発症するリスクがある個体におけるOSMおよび/またはOSMRのレベルを決定するための手段であって、場合により、前記個体が哺乳動物であり、場合により前記哺乳動物がヒトである手段;ならびに
(ii)請求項1~8のいずれか一項に記載の医薬組成物
を含有する、個体における慢性腸炎および/または炎症性腸疾患(IBD)を処置または予防する方法において使用するための製品。
【請求項10】
前記IBDが結腸直腸癌に関連し、および/または前記IBDがクローン病(CD)または潰瘍性大腸炎(UC)であり、さらに場合により、前記CDが結腸CDまたは回腸CDである、請求項1~8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記IBDが結腸直腸癌に関連し、および/または前記IBDがクローン病(CD)または潰瘍性大腸炎(UC)であり、さらに場合により、前記CDが結腸CDまたは回腸CDである、請求項9に記載の製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
これらの成果を導く研究は、REA助成承認第330621号の下、欧州連合の第七フレームワークプログラム(FP7/2007-2013)の人民プログラム(Marie Curie Actions)からの資金提供を受けている。
【0002】
本発明は、慢性腸炎および/または炎症性腸疾患(IBD)の処置、診断または予後診断のための、ならびに個体が抗腫瘍壊死因子α(TNFα)療法による処置に反応するか否かを予測するための方法および製品に関する。
【背景技術】
【0003】
クローン病(CD)および潰瘍性大腸炎(UC)を含む炎症性腸疾患などの炎症性疾患は、再発寛解型の経過を有する胃腸管の衰弱性慢性炎症状態である。処置は、疾患を引き起こす免疫プロセスを損なうことを目的とし、歴史的にコルチコステロイドなどの広範な抑制性抗炎症剤を使用してきた。ごく最近では、インフリキシマブなどの抗腫瘍壊死因子-α(TNFα)抗体の臨床的成功によって大きく影響を受け、炎症経路の特定の成分を標的とすることへの関心が高まっている。
【0004】
抗TNFα抗体は、多数のIBD患者において寛解を誘発し、維持することができるが、40%までは初期の非反応性を示し、残りの3分の1は、時間の経過とともに反応性を失う(Ben-Horin and Chowers, Nat. Rev. Gastroenterol. Hepatol., 2014)。現在、処置の失敗を満足に予測するために利用可能な方法はなく、実行可能な臨床標的として代替のサイトカインは明らかにされていない。例えば、Th1免疫反応の一次エフェクターサイトカインであるインターフェロン-γ(IFNγ)の中和は、臨床効果がほとんどないようである。IL-10およびIFNβなどの抗炎症性サイトカインの投与は同様に不成功であった(Neurath, Nat. Rev. Immunol., 2014)。したがって、緊急性の2つの満たされていない要求があり、それは、(a)IBDおよび他のTNFα媒介性状態のための抗TNFα療法に対する臨床反応の可能性を正確に予測する有効なバイオマーカーを特定すること;(b)TNFαを超えるIBD管理のための代替の処置標的を特定し、臨床的に検証することである。
【0005】
IL-6は、エフェクターCD4+T細胞のTh17サブセットの分化を引き起こすために重要である周知の炎症性サイトカインである。第II相試験では、IL-6受容体の遮断が、CDに対して穏やかな処置有効性を示した(Neurath, Nat. Rev. Immunol., 2014)。IL-6は、gp130受容体サブユニットの共用によって定義されるサイトカインファミリーのプロトタイプメンバーである。
【0006】
オンコスタチン-M(OSM)は、このサイトカインファミリーのメンバーである。gp130だけを介してシグナルを伝達するIL-6とは異なり、OSMは、gp130、および両者がgp130とは異なるシグナルを伝達することができるOSM受容体-β(OSMR)またはLIF受容体(LIFR)のいずれかを含む2つの可能なヘテロ二量体受容体に関与する(Heinrich et al, Biochemistry, 2003)。例えば、OSMは、様々な細胞型において、IL-6よりも強力なマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)シグナル伝達を誘発する(West and Watson, Oncogene, 2010;Hintzen et al, Arthritis Rheum., 2009)。LIFRは大部分の成人組織では弱く発現するが、OSMRは、内皮細胞、上皮細胞、間質細胞、グリア細胞および造血細胞を含むほとんどの臓器において多数の細胞型によって広範に発現される(Richards, ISRN Inflam., 2013)。
【0007】
OSMの撹乱は、いくつかの炎症性障害(乾癬および気道炎症など)および複数の癌タイプにおいて特定されている(Richards, ISRN Inflam., 2013)。これらの各条件において、実験モデルは、OSMがOSMRを介してシグナル伝達することによって炎症プロセスに直接寄与することを実証している。OSMは、最近、ゲノムワイド関連研究において、CDおよびUCの両方に関連付けられた(Jostins et al, Nature, 2012)。しかしながら、OSMシグナル伝達がIBDの病因に関与するかどうかを含めて、IBDにおけるOSMシグナル伝達の役割についてはほとんど知られていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、大多数のIBD患者において、疾患の活動期にOSMおよびOSMRが腸粘膜において高度に発現されることを発見した。OSMおよびOSMRはまた、少なくとも4つの異なる大腸炎マウスモデルにおいてアップレギュレートされ、それらの発現は疾患の重症度と相関する。混乱したTh1およびTh17ヘルパー細胞活性は、IBDの病因において重要であると考えられ、本発明者らは、初めてTh17誘導経路の成分としてOSMを特定した。さらに、OSMの全身投与はマウス大腸炎を悪化させるが、OSMの処置的遮断またはOSMの遺伝子欠損は免疫病理を改善する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、第1の態様において、本発明は、個体における慢性腸炎および/またはIBDを処置または予防する方法であって、個体にOSMおよび/またはOSMRのアンタゴニストを投与し、それにより個体における慢性腸炎および/またはIBDを処置または予防することを含む方法を提供する。
【0010】
さらに、本発明は、
- 個体における慢性腸炎および/またはIBDを処置または予防する方法において使用するためのOSMおよび/またはOSMRのアンタゴニスト;ならびに
- 個体における慢性腸炎および/またはIBDを処置または予防する方法において使用するための医薬の製造におけるOSMおよび/またはOSMRのアンタゴニストの使用
を提供する。
【0011】
個体は、以下に示される方法に従って診断または予後診断されている場合がある。
【0012】
さらなる態様において、本発明は、個体における慢性腸炎および/またはIBDを診断または予後診断する方法であって、個体におけるOSMおよび/またはOSMRを測定し、それにより個体における慢性腸炎および/またはIBD診断または予後診断することを含む方法を提供する。
【0013】
サイトカインシグナル伝達経路の潜在的な強さは、リガンドと受容体の両方の相対存在量によって決定される。したがって、個体におけるOSMとOSMRの両方を測定し、OSM指標(OSMi)(相対的なOSMおよびOSMRの積)を決定することが有用である場合がある。
【0014】
本発明者らは、OSMRが疾患寛解中に高度に発現されたままであることを示した。さらに、抗TNFα療法が成功した後、OSMは抑制される。これは、OSMシグナル伝達が疾患の再発において役割を果たすことを示唆している。したがって、慢性腸炎および/またはIBDを診断または予後診断する方法は、慢性腸炎および/またはIBDから寛解した個体が再発するか否かを予測する方法である場合がある。
【0015】
参照試料または参照レベルと比較した、OSM、OSMR、および/またはOSMiレベルの上昇は、陽性の診断、陰性の予後診断、および/または個体が再発することを示す場合がある。参照試料または参照レベルと比較した、OSM、OSMR、および/またはOSMiレベルの低下は、陰性の診断、陽性の予後診断、および/または個体が再発しないことを示す場合もある。
【0016】
別の態様において、本発明は、個体における慢性腸炎および/またはIBDを処置または予防する方法であって、
(a)上記の方法に従って個体における慢性腸炎および/またはIBDを診断または予後診断すること;ならびに
(b)慢性腸炎および/またはIBDの処置に有用な薬剤を個体に投与すること
を含む方法を提供する。
【0017】
薬剤は、OSMおよび/またはOSMRのアンタゴニストである場合がある。OSMおよび/またはOSMRアンタゴニストは、抗OSM抗体または抗OSMR抗体などのOSMまたはOSMR活性または発現のアンタゴニスト、もしくはOSMまたはOSMR融合タンパク質であり得る。
【0018】
さらに、本発明は、
- 個体における慢性腸炎および/またはIBDが上記の方法に従って診断または予後診断されている個体において慢性腸炎および/またはIBDを処置または予防する方法において使用するための薬剤;
- 個体における慢性腸炎および/またはIBDが上記の方法に従って診断または予後診断されている個体において慢性腸炎および/またはIBDを処置または予防する方法において使用するための医薬の製造における薬剤の使用;
慢性腸炎および/またはIBDを有する、または有すると疑われる、または発症するリスクがある個体におけるOSMおよび/またはOSMRのレベルを決定するための手段;ならびに
慢性腸炎および/またはIBDを処置するための薬剤
を含有する製品
を提供する。
【0019】
本発明者らは、さらに、腸粘膜におけるOSMおよびOSMRの発現が、抗TNFα療法に対する非反応性を予測することを示している。
【0020】
したがって、さらなる態様において、本発明は、個体が抗TNFα療法に反応するか否かを予測するための方法であって、個体においてOSMおよび/またはOSMRを測定し、それにより個体が抗TNFα療法に反応するか否かを予測することを含む方法を提供する。抗TNFα療法は、インフリキシマブなどの抗TNFα抗体であり得る。
【0021】
参照試料または参照レベルと比較した、OSM、OSMR、および/またはOSMiレベルの低下は、個体が抗TNFα療法に反応することを示す場合がある。次に、この方法は、個体の処置のために抗TNFα療法を選択または推奨することをさらに含み得る。次に、個体に抗TNFα療法を施す場合がある。本発明は、抗TNFα療法が、例えば第一選択の処置として、そうでなければ抗TNFα療法を受けないであろう個体に対して適切な処置として特定されることを可能にする場合がある。インフリキシマブなどの抗TNFα療法は、IBDなどの病状に対する「ゴールドスタンダード」処置である。しかしながら、概して、抗TNFα療法は、一次および二次の非反応性が一般的であるため、強力な免疫抑制などの副作用のため、および/または処置が高価であるため、第一選択の処置として選択されない。本発明の方法は、抗TNFα療法に反応し、抗TNFα療法が最も有益であろう個体を特定するために使用することができる。次に、抗TNFα療法は、それらの疾患の処置の初期段階で個体に選択または推奨され得る。抗TNFα療法は、第一選択の処置として選択または推奨され得る。
【0022】
参照試料または参照レベルと比較して、OSM、OSMR、および/またはOSMiレベルの上昇は、個体が抗TNFα療法に反応しないことを示す場合がある。次に、この方法はさらに、個体の処置のために抗TNFα療法以外の治療的処置を選択または推奨することを含むことができる。次に、抗TNFα療法以外の治療的処置を個体に投与する場合がある。
【0023】
別の態様において、本発明は、個体におけるTNFα媒介性疾患または状態を処置または予防する方法であって、個体にTNFαアンタゴニストを投与し、それによりTNFα媒介性疾患または状態を処置または予防することを含み、個体は上記の方法に従ってTNFαアンタゴニストに反応することが予測されている、方法を提供する。
【0024】
本方法はまた、
- 上記の方法に従ってTNFαアンタゴニストに反応することが予測されている個体においてTNFα媒介性疾患または状態を処置または予防する方法において使用するためのTNFαアンタゴニスト;
- 上記の方法に従ってTNFαアンタゴニストに反応することが予測されている個体においてTNFα媒介性疾患または状態を処置または予防する方法において使用するための医薬を製造するためのTNFαアンタゴニストの使用
を提供する。
【0025】
さらなる態様は、TNFα媒介性疾患、慢性腸炎および/またはIBDを有する、または有すると疑われる、または発症するリスクがある個体におけるOSMおよび/またはOSMRのレベルを測定するためのアッセイであって、個体由来の生物学的試料をOSMまたはOSMRに結合する薬剤と接触させること、薬剤とOSMまたはOSMRの間の複合体形成を測定すること、場合によりOSMiを計算すること、測定された値またはOSMi値を参照値と比較し、それによりTNFα媒介性疾患を有する個体が抗TNFα療法に反応するか否かを予測すること、または個体における慢性腸炎および/またはIBDを診断または予後診断することを含むアッセイを提供する。
【0026】
さらなる態様は、
(a)TNFα媒介性疾患、慢性腸炎および/またはIBDを有する個体由来の生物学的試料におけるOSMおよび/またはOSMRのレベルを定量するための測定モジュール、
(b)測定モジュールから出力されたデータ、ならびに参照および/または対照データを記憶するように構成された記憶モジュール、
(c)測定モジュールから出力されたデータ、および参照または対照データの値をコンピュータ計算するように構成されたコンピュータ計算モジュール、ならびに
(d)出力データの値に基づいて、慢性腸炎および/またはIBDを有する個体の診断または予後診断を表示するように構成された出力モジュール
を含むシステムを提供する。
【0027】
本発明のさらなる態様は、本発明の診断方法または予後診断方法のいずれにおいて使用するための試験キットであって、個体におけるOSMおよび/またはOSMRのレベルを決定するための手段、ならびに方法において使用するための指示書を含む試験キットを提供する。
【0028】
別の態様において、本発明は、個体における慢性腸炎および/またはIBDの重症度を決定する方法であって、個体におけるOSMおよび/またはOSMRを測定し、それにより個体における慢性腸炎および/またはIBDの重症度を決定することを含む方法を提供する。
【0029】
別の態様において、本発明は、慢性腸炎および/またはIBDを有する個体が外科手術を必要とする可能性を決定する方法であって、個体においてOSMおよび/またはOSMRを測定し、それにより個体が外科手術を必要とする可能性を決定することを含む方法を提供する。
【0030】
本発明は、ここで、例として、限定ではなく、添付の図面を参照することにより、さらに詳細に記載される。当業者には、この開示が与えられたときに、多数の同等な修飾および変形が明らかとなる。したがって、記載された本発明の例示的な実施形態は、例示的なものであり、限定的なものではないと考えられる。記載された実施形態に対する様々な変更が、本発明の範囲から逸脱することなくなされ得る。本明細書において引用された全ての文献は、上記または下記のいずれの文献であっても、それら全体が参照により明示的に組み込まれる。
【0031】
本発明は、記載された態様および好ましい特徴の組み合わせが明確に許容できない、または明示的に回避されると述べられている場合を除いて、このような組み合わせを含む。本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、その内容が明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「1つの(an)アンタゴニスト」への言及は、2つ以上のこのようなアンタゴニストを含む。
【0032】
本明細書で使用されるセクションの見出しは、便宜上のものであり、決して限定するものとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】健常なマウスと大腸炎のマウスの間の結腸組織全体で示差的に発現するサイトカインを3種のモデル系において特定した:C57B1/6マウスにおける経口DSS(デキストラン硫酸ナトリウム)投与、BALB/cマウスにおけるTNBS(トリニトロベンゼンスルホン酸)の直腸投与、およびAbcb1a遺伝子を欠損しているFVB.129P2マウスの経口ヘリコバクター・ビリス(Helicobacter bilis)感染。全トランスクリプトームデータは公開されており、それぞれ、以下のGene Expression Omnibus(GEO)エントリー:GSE34553、GSE35609、およびGSE72212に由来する。分析のために、各データセットに利用可能なデータを有する45個の候補サイトカインを選択した。次に、それらの発現レベルを評価し、大腸炎中に有意に変化したもの(誤発見率補正を伴うt検定に基づく)を特定した。これらはVenn図に列挙されている。大腸炎マウスの結腸では、Il1a、Il1b、Il6、TnfおよびOsmのみが3つのモデル系のすべてにおいて有意に増加した。
【
図2】Hh+αIL10Rモデルを用いて作成したデータであり、これは、方法に記載されているように、免疫調節不全を共存する病原体(ヘリコバクター・ヘパチカス(Helicobacter hepaticus))感染と組み合わせる。(A)野生型C57B1/6マウス(n=19対照、およびn=35大腸炎マウス、3回を超える実験からプールされた)由来の全結腸組織におけるOsmおよびOsmrのmRNA発現。(B)マウスOSMに特異的なELISAを用いて定量した近位結腸外植片(左)または盲腸内容物(右)の24時間培養からのOSM産生。OSM濃度は、外植片/盲腸内容物の質量(3つの代表的な実験のうちの1つからのn=4の未処置およびn=10の処置マウス)に対して標準化される。(C)定常状態のマウスおよびHh+αIL10R大腸炎(3回を超えるプールされた実験からのn=63)を有するマウス由来の全結腸組織における、Osm mRNA対Il1b、Il6およびTnfのピアソン相関。非パラメトリックのMann-Whitney検定またはKruskal-Wallis検定を適宜用いて計算した。*p=0.01-0.05、**p=0.001-0.01、***p=0.0001-0.001、****p<0.0001。
【
図3】(A)Hh+αIL10R大腸炎の誘導後の全結腸組織におけるOsmおよびOsmr発現の時間経過動態、(B)における関連する組織学的疾患の重症度(n>4マウス/時間点)。(C)組織学的重症度バンド(健常、スコア=0~1;軽度/中程度、スコア=>1~7、重症度、スコア>7)を有する全結腸組織におけるOsmおよびOsmr発現の相関。3回の別個の実験からプールされた1群あたりn>15のマウス。
*p=0.01-0.05、
**p=0.001-0.01、
***p=0.0001-0.001、
****p<0.0001、Kruskal-Wallis検定を用いて計算した。
【
図4】(A-B)OSMおよびOSMRのmRNA発現は、Oxford IBD患者または健常対照由来の腸切除試料からの腸粘膜ピンチ生検または粘膜の定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)分析を介して評価された。(A)健常対照(n=13)、活動性疾患を有するIBD患者(n=44)、活動性疾患を有する腸内位置が関与していないIBD患者(n=21)、および活動性炎症の証拠のないIBD患者(n=14)のOSM、OSMR、およびOSM指標(OSMi、相対的OSMおよびOSMRの産物)発現。疾患活動性/腸炎症は、試料採取時の内視鏡検査によって決定された。(B)パネル(A)におけるように行われた分析であり、日常的な臨床病理学的評価中に決定された炎症の組織学的グレードによって分類された試料は以下の通りであった:健常対照(全休止)(n=13)、休止IBD(n=27)、軽度から中程度の活性IBD(n=29)、および重度の活性IBD(n=9)。Tukeyの多重比較検定とともに一元配置ANOVAを用いて有意性を決定した。
*p=0.01-0.05、
**p=0.001-0.01、
***p=0.0001-0.001、
****p<0.0001。
【
図5】OSM発現とS100A8およびS100A9(臨床的に確認された粘膜炎症バイオマーカーカルプロテクチンの成分)とのピアソン相関。データは、CD(GSE57945、n=220)およびUC患者(GSE23597、n=112)から得られる。
【
図6】(A)健常対照(n=13)対オックスフォードIBDコホートからの活動性CD(n=19)または活動性UC(n=24)患者におけるOSMおよびOSMRの発現。Tukeyの多重比較検定とともに一元配置ANOVAを用いて有意性を決定した。(B)処置未経験の小児回腸CD患者(n=162)からの回腸粘膜生検と、年齢が一致した健常対照(n=42)との比較。データポイントは、誤発見率補正(Q=1%)を用いたt検定によって決定された統計的有意差(x軸)に対する63個の異なるサイトカイン遺伝子(y軸)に対する平均(±s.e.m.)倍数のIBD濃縮を反映する。GEOエントリーGSE57945から得られたデータ。
*p=0.01-0.05、
**p=0.001~0.01、
***p=0.0001~0.001、
****p<0.0001。
【
図7】回腸嚢肛門吻合組織から採取された嚢生検におけるOSMおよびOSMRの発現。データには、嚢炎(嚢組織の炎症)のないUC患者、活動性嚢炎を有するUC患者、および嚢炎のない家族性腺腫様ポリポーシス患者が含まれる。
*p=0.01~0.05、
**p=0.001~0.01、Dunnの多重比較検定とともにKruskal-Wallis検定を用いて決定した。GEOエントリーGSE65270から得られたデータ。
【
図8】(A-C)オックスフォードIBD患者由来の腸粘膜生検におけるqPCRによって評価されたOSMおよびOSMR発現。(A)患者の性別による発現。(B)診断時の患者の年齢による発現。(C)疾患の期間(すなわち、診断日から生検採取時までの年期間)による発現。有意性は、t検定(パネルA)および一元配置ANOVA(パネルBおよびC)を用いて決定した。
【
図9】オックスフォードIBD患者由来の腸粘膜生検におけるqPCRによって評価されたOSMおよびOSMR発現。血清採取時の(A)血清CRP(C-反応性タンパク質)レベル、および(B)末梢血の白血球数と相関した発現。有意性は、一元配置ANOVAを用いて決定した。
【
図10】処置歴によって分類された患者におけるレベルを比較した、オックスフォードIBD患者由来の腸粘膜生検におけるqPCRによって評価されたOSMおよびOSMR発現。「外科手術」とは、外科的切除標本から直接採取された粘膜生検、または次いで外科的介入を必要とする患者から内視鏡的に採取された生検を指す。
**p=0.001~0.01、
***p=0.0001~0.001、t検定を用いて決定した。
【
図11】(A-D)公的に利用可能な遺伝子発現データセットGSE16879の分析。(A)コホート(上段)またはCD患者単独(下段)のすべての患者は、インフリキシマブ治療前の腸生検において相対的OSM発現レベル(三分位にグループ化した)に従って分類された。次に、各群をインフリキシマブに対する臨床反応性の頻度について評価し、反応率を円グラフとして示した。処置に対する反応は、内視鏡的および組織学的な評価に基づく完全腸粘膜治癒と定義された。有意性をχ
2分析を用いて決定した。(B)治療前生検において示された遺伝子の高発現(上三分位)対低発現(低三分位)を有する患者におけるインフリキシマブ反応率を比較するフィッシャーの正確な検定によって決定されたオッズ比および有意水準。高いオッズ比の値はインフリキシマブに対する臨床的反応性の可能性が低いことを示す。
*p=0.01~0.05、
***p=0.0001~0.001、
****p<0.0001。
【
図12】公的に利用可能な遺伝子発現データセットGSE16879の解析。(A)全員がインフリキシマブ治療前に高いOSM指標発現を有するUS患者における、インフリキシマブ前とインフリキシマブ後の生検のOSM指標発現の比較。OSM指数発現は、処置反応性患者においてのみインフリキシマブ治療後に一貫して低下する。有意性を対応のあるt検定を用いて決定した。(B)インフリキシマブ反応性のUC患者由来のインフリキシマブ前対後の生検における、示された遺伝子の腸内発現における平均倍数変化(±95%CI)。有意性を対応のあるt検定を用いて決定した。
****p<0.0001。
【
図13】GSE16879データセット(合わせたコホートおよびCDのみを示す)におけるOSM指標発現およびインフリキシマブ反応性の可能性に関する受信者動作特性(ROC)解析、ならびにUC(GSE23597およびGSE12251)におけるインフリキシマブ反応性に関する他の2つの研究。全てのプロットは、治療前生検からの遺伝子発現データを用いて生じさせた。
【
図14】インフリキシマブ治療(GEOデータセットGSE23597)後の0、8および30週目の結腸生検におけるOSMおよびOSMR発現の関連。患者は、8週目に臨床反応がない患者(黒)、8週目に最初に反応するが30週目には難治性である患者(灰色)、および8週目および30週目で持続的反応性である患者(白色)に分類される。Holm-Sidakの多重比較検定とともに一元配置ANOVAを用いて有意性を決定した。
*p=0.01~0.05、
**p=0.001~0.01、
***p=0.0001~0.001、
****p<0.0001。
【
図15】GSE16879データセットにおけるOSM、OSMRおよびサイトカインmRNA発現の階層的クラスタリング分析。OSMおよびOSMRを含む一般的な遺伝子クラスタは陰影で示され、Th17 Tヘルパー細胞分化を誘導するサイトカイン、ならびにTh17とTh1免疫反応の両方のエフェクターサイトカインを富化にすることは注目に値する。対照およびインフリキシマブ難治性または反応性IBD患者由来の標本をヒートマップ下の陰影バーで特定する。全てのデータはインフリキシマブ前の検体由来である。
【
図16】(A)GSE16879におけるOSM高対OSM低の標本における代表的なTh17、Th1およびTh2サイトカインの平均遺伝子発現の差異。各ドットは、UC、結腸CD、または回腸CDの平均差を表す。差異が(t検定に基づいて)統計的に有意である疾患のサブタイプ数は、記号(関連する凡例に定義されている)によって示される。(B)Oxfordコホート由来のOSM高(上半分)対OSM低(下半分)のIBD粘膜生検における遺伝子発現の差異。データは、Holm-Sidakの多重比較補正とともにt検定を用いて決定された、統計的有意性に対してプロットされた倍数差として表される。
【
図17】(A)指示された微生物リガンドを100ng/mlで16時間刺激された2人の健常なヒトドナー由来の単球において、ELISAによって決定したOSM分泌。(B)加熱殺菌された細菌(16時間のインキュベーション)に反応する2人の健常なドナー由来の末梢血単球によるOSM分泌を測定する代表的な実験。AIEC、接着性侵襲性大腸菌(Escherichia coli)。
【
図18】(A)細菌により刺激された単球におけるOSMと他のサイトカイン(qPCRによるアッセイ)とのスピアマン相関(
図17)。(B)ヒト腸内抗原提示細胞におけるOSM発現。データは、ヒト腸組織から単離されたFACS選別による抗原提示細胞サブセット由来の公的に入手可能な遺伝子発現データセット(GSE49066)に由来する。細胞は、系統(CD3/19/20/56)
-HLA-DR
highプラス/マイナス示された表面マーカーとして選別された。CD14
+CD163
lowサブセットは、他の示されたAPCサブセットと比較して優れたTh17誘導能を有することが示されている。(C)2セットの健常なドナー単球における細菌により刺激後の平均サイトカイン発現(qPCRによるアッセイ)の階層的クラスタリング。OSMおよびOSMRを含むクラスタを陰影で示す。
【
図19】OSMおよびOSMRの発現は、PMA(ホルボールミリステートアセテート)およびイオノマイシンによる刺激後に、エクスビボで直接、末梢血ナイーブおよび記憶CD4
+T細胞において評価された。(A)総CD4
+CD25
-生T細胞を2人の代表的なドナーからFACS精製し、8時間刺激した。qPCRによって定量化されたOSMおよびOSMRの遺伝子発現が示される。(B)(A)に記載されるように、刺激後の上清中のOSMタンパク質をELISAによって定量した。(C)総PBMC(末梢血単核細胞)をPMA/イオノマイシンで再刺激し、ゲーティングしたCD4
+CD45RA
+およびCD4
+CD45RO
+集団内のOSM
+細胞の頻度は、ヒトOSMに特異的な抗体を用いた細胞内サイトカイン染色によって分析された。
【
図20】(A)総CD45RO
+またはCCR6
+CD45RO
+記憶CD4
+T細胞をFACS精製し、Th0、Th1、Th2および/またはTh17条件下で抗CD3/CD28ビーズと共に培養した。CCR6
+T細胞集団は、Th17細胞において富化されていると考えられる。培養7日後のOSMR遺伝子発現を示す。抗CD3/CD28刺激を受けていない細胞では発現は検出されなかった。(B-C)Th0、Th1、Th2、Th22、Th9、Treg、またはTh17極性化条件下で5日間、OSMの有無により、抗CD3/CD28とともに培養された健常なヒトドナー由来のナイーブCD4
+CD45RA
+T細胞。(B)OSM不含条件と比較した、OSM処置条件(20ng/mlのOSM)における相対的細胞増殖。
**p<0.01、対応のあるt検定。(C)ヘルパーT細胞の重要な転写因子(左)およびエフェクターサイトカイン(右)のmRNA発現。示されたデータは、OSMを伴うTh17条件対OSMを伴わないTh17条件の相対的発現を表す。
*p=0.01~0.05、
**p<0.01、1標本t検定。
【
図21】Hh+αIL10R大腸炎プロトコール(方法を参照)に供されたマウスからの中間-大腸切片の代表的なヘマトキシリン&エオシン染色した断面。比較された2つの遺伝子型は、野生型C57BL/6マウスおよびOSMノックアウト(Osm
-/-)同腹仔である。スケールバーは、0.5mm(上段)および0.25mm(下段)を示す。矢印は、粘膜下浮腫(両頭)および陰窩膿瘍(片頭)を含む重度の炎症の顕著な特徴を示す。
【
図22】野生型C57BL/6マウスおよびHh+αIL10R大腸炎プロトコールに供されたOsm
-/-同腹仔における大腸炎の重症度の比較。(A)2つの独立した実験からプールされたマウスの組織病理学的スコア(方法に記載されたように決定した)。(B)全体的な組織学的スコアが異なる成分に分割された、パネル(A)からの大腸炎マウスであり、それぞれを0~3の重症度スケールで定量化した。(C)マウス(パネルAおよびBと同じ動物)の全結腸組織における前炎症性サイトカインであるIl6およびIl1b対Il10(抗炎症性)の発現。
*p=0.01~0.05、
**p=0.001~0.01、
***p=0.0001~0.001、
****p<0.0001、Mann-Whitney検定を用いて決定した。
【
図23】マウスOSMを中和するように設計された新規組換えタンパク質(O-RFP、出典:Brolund et al, BMC Biotechnology, 2011)は、市販のヤギポリクローナル抗OSM抗体と比較して、インビトロでのOSM中和能について試験された。このアッセイは、中和剤のモル比の増加とともに、10ng/mlの組換えマウスOSMを用いてエクスビボで培養されたマウス結腸線維芽細胞を処置することを伴う。OSM標的遺伝子の発現を2時間後に評価した;ここに示されるのは、STAT3転写標的SOCS3の結果である。(A)50%中和(12.1:1)に必要とされる計算されたモル比を有する市販のポリクローナル抗体の中和曲線。(B)パネル(A)と同様に、50%中和のために1.7:1のモル比だけを必要とするO-RFPを使用する。 O-RFPはマウスタンパク質をコードし、マウスOSMに対して標的化される。この構築物は、Brolund et al., BMC Biotechnology, 2011に記載されている「mOSM-RFP」の改変である。簡単に言うと、組換え受容体は、N末端からC末端に(a)マウスOSMRのドメイン1、2、3および4;(b)フレキシブルリンカーペプチド;(c)マウスgp130のドメイン2および3;(d)Fcタグ(マウスIgG2A)で構成された融合タンパク質である。構築物をHEK-293細胞において発現させ、標準的なプロテインGカラム精製を用いて精製し、Lonzaによって提供される試験サービスを用いてエンドトキシン不含であることを確認した。この薬剤を用いたインビボ実験について、IgG2A-Fcタンパク質を処置対照と同一の条件下で調製した。
【
図24】腸の炎症を処置するための関連する標的としてのOSMの確立。(A)ヒトCD切除(n=5)からの粘膜外植片培養におけるIL1B発現。外植片は、20μg/mlの抗OSM中和抗体(R&D Systems、クローン17022)、適合アイソタイプ対照抗体、またはインフリキシマブ(抗TNF)を用いて24時間処置された。データポイントは、未処置試料に対して標準化された、全外植片mRNAにおけるIL1Bの平均(±s.e.m.)変化を表す。これらのデータは、エクスビボのヒト組織におけるOSM遮断の抗炎症効果がインフリキシマブ(抗TNF)のものに匹敵し得ることを示唆している。log変換前の1の仮説平均に対して1試料t検定を用いて有意性を計算した。(B)Hh+αIL10R大腸炎プロトコールに供され、7日目から開始して、抗TNFモノクローナル抗体、IgG-Fc対照タンパク質、またはO-RFPを用いて処置された野生型C57BL/6マウスの全組織病理学スコア。(C)パネル(B)に示されたマウスの組織病理学的成分スコア。(D)パネル(B/C)において処置され、屠殺の1日前に生存している麻酔動物の内視鏡的評価によって決定されたマウスの代表的な大腸炎スコア。これは、標準的なプロトコール(Becker et al, Nature Protocols, 2007)に従って実施された。
*p=0.01~0.05、
**p=0.001~0.01、
***p=0.0001~0.001、
****p<0.0001、Mann-Whitney検定を用いて決定した。
【
図25】マウス腸組織におけるOSMおよびOSMRの重要な細胞供給源の特定。生存可能なFACS精製された細胞集団を定常状態(n=4)の消化された結腸組織およびHh+αIL10Rプロトコール(n=10)に供された大腸炎マウスから単離した。細胞集団を同定および単離するために使用されたマーカーは、以下の通りである:上皮細胞(CD45
-EpCAM
+);内皮細胞(CD45
-EpCAM
-CD31
+);gp38
-間質(CD45
-EpCAM
-CD31
-gp38
-);gp38
+間質(CD45
-EpCAM
-CD31
-gp38
+);顆粒球(CD45
+FSC
int/hiSSC
hi);CD4
+T細胞(CD45
+CD3
+CD4
+);CD8
+T細胞(CD45
+CD3
+CD4
-);B細胞(CD45
+CD3
-CD19
+);他の単核細胞(CD45
+CD3
-CD19
-SSC
lo)。単離された細胞をRNA抽出のために処理し、OsmおよびOsmr発現をqPCRによって評価した。
*p=0.01~0.05、
**p=0.001~0.01、t検定によって決定した。
【
図26】ヒト腸切除標本(n=10)からの粘膜細胞集団のフローサイトメトリー分析。(A)白血球(CD45
+)、上皮細胞(CD45
-EpCAM
+)、内皮細胞(CD45
-EpCAM
-CD31
+)、gp38
-ICAM-1
lo間質(CD45
-EpCAM
-CD31
-gp38
-ICAM-1
lo)およびgp38
+ICAM-1
hi間質(CD45
-EpCAM
-CD31
-gp38
+ICAM-1
hi)による代表的なOSMR表面発現。OSMR
+頻度は、パネル(B)の全ての集団について提供される。Tukeyの多重比較検定とともに一元配置ANOVAを用いて有意性を決定した。
【
図27】(A)qPCRによって決定される初代ヒト結腸間質細胞(CCD18Co)における様々なサイトカイン受容体遺伝子のベースライン発現。OSMRファミリーの受容体が示される。(B)組換えOSM、IL-6、TNF、またはIL-1β(10ng/ml)を用いたCCD18Co細胞の20分間の刺激後の重要なシグナル伝達経路の活性化についてのウェスタンブロット分析。β-アクチンは充填対照として提供される。
【
図28】(A)Hh+αIL10Rプロトコールに従って野生型C57BL/6マウスにおいて大腸炎を誘導し、実験群はPBSまたは0.04mg/kgの組換えOSMの腹腔内注射を受けた(方法を参照)。結腸薄層固有の細胞集団は、間質および内皮細胞活性化の証拠のためにフローサイトメトリーによって分析された。具体的には、CD45
-EpCAM
-gp38
+CD31
-間質細胞およびCD45
-EpCAM
-gp38
-CD31
+内皮細胞を表面ICAM-1発現(炎症性活性化のマーカー)および細胞内Ki-67(増殖のマーカー)について染色した。群あたりn=4~6。(B)対照Fcタンパク質またはO-RFPを用いて処置されたマウスにおけるHh+αIL10R大腸炎の定常状態または誘導後における結腸内皮細胞およびgp38
+間質細胞上のICAM-1表面発現のフローサイトメトリー分析(群あたりn=4~9、2つの独立した実験のうちの代表のもの)。大腸炎Osm
-/-マウス対野生型同腹仔において同様の結果が見られた。
*p=0.01~0.05、
**p=0.001~0.01、Mann-Whitney検定を用いて決定した。
【
図29】エクスビボで培養したマウス結腸間質細胞の処置であり、(A)において10ng/mlのマウスOSM、10ng/mlのTNF、または両方の組み合わせによる処置の、2時間後の代表的な遺伝子の発現における影響を示す(群あたりn=6~7個の独立した培養物)。Dunnの多重比較検定とともにKruskal-Wallis検定によって決定された有意性。(B)OSMファミリーの3つの主要メンバー:OSM、IL-6、およびLIF(すべて10ng/ml;群あたりn=2~4、7つの独立した培養からプールされた)によって誘発されたマウス間質細胞における反応の相対強度(Il6発現の誘導によって測定)。有意性は、Dunnettの多重比較検定とともに一元配置ANOVAによって決定された。
*p=0.01~0.05、
**p=0.001~0.01、
****p<0.0001。
【
図30】(A)公的に入手可能なトランスクリプトームデータセットGSE57945(回腸CDおよび対照粘膜)におけるヒトサイトカインおよびケモカイン遺伝子発現の階層的クラスタリング。OSMの発現に最も強く関連する遺伝子セットは、下部パネルで強調され、好中球(例えば、CXCL1)、単球(例えば、CCL2/CCL7)、およびTh1細胞(CXCL9/10/11)を誘引するTh1/Th17反応およびケモカインに関連する広範囲のサイトカインを特徴とする。
【
図31】(A)10ng/mlの組換えヒトOSMを用いて刺激されたCCD18Co細胞(ヒト結腸間質細胞)における遺伝子発現動態。ここに示されているのは、
図30において強調された異なる機能的クラスからの代表的な遺伝子である:CCL2(単球走化性物質);CXCL9(Th1細胞走化性物質);CXCL1(好中球化学誘引物質);およびICAM1(白血球組織の浸潤および保持に必要とされる重要な細胞接着分子)。データポイントは、三連の培養物における平均(±s.e.m.)誘導レベルを表す。(B)CCD18Co細胞はLIF(OSMの最も近い同族体)に反応せず、OSMはLIFR(OSMの代替の受容体サブユニット)を介して結腸間質細胞を刺激しない。三連培養物を10ng/mlのLIFまたは10ng/mlのOSM単独で、または15μg/mlヤギIgG対照もしくは15μg/ml抗LIFRポリクローナルヤギIgGの存在下で2時間刺激した。有意性は、Tukeyの多重比較検定とともに一元配置ANOVAを用いて決定された。
****p<0.0001。
【
図32】10ng/mlのOSM、IL-6、TNF、またはそれらの組み合わせを用いて三連のCCD18Co培養物を2時間処理して、これらのサイトカインからの刺激の相対強度および可能性のある相乗作用を評価する。OSMおよびTNFは、分析された反応遺伝子に依存して、相加的効果と相乗的効果の両方を発揮する。
【
図33】10ng/mlのOSM、IL-1β、またはOSMとIL-1βの両方を用いて三連のCCD18Co培養物を2時間処理して、これらのサイトカイン間の機能的相乗作用を評価する。OSMおよびIL-βは、分析された反応遺伝子に依存して、相加的効果と相乗的効果の両方を発揮する。有意性は、Tukeyの多重比較検定とともに一元配置ANOVAを用いて決定された。
***p=0.0001~0.001、
****p<0.0001。
【
図34】非炎症性外科的切除標本(条件ごとにn=3~4の独立した培養物)から単離および増殖したヒト結腸間質細胞の一次エクスビボ培養を用いて、
図32に記載したものと同じ処置および分析戦略を展開した。有意性は、対照標準化の前に対応のあるt検定を用いて決定した。
【発明を実施するための形態】
【0034】
治療
本発明は、いくつかの態様において、抗TNFα療法、TNFαのアンタゴニスト、またはOSMおよび/もしくはOSMRのアンタゴニストによる処置方法に関する。「抗TNFα療法」は、TNFαに対して指向され、またはTNFαに拮抗する、例えば、TNFαのアンタゴニストを投与する治療的処置である。TNFα、OSMまたはOSMRのアンタゴニストは、TNFα、OSMまたはOSMR機能を低下させる薬剤である。アンタゴニストは、任意の治療上または予防上有効な量までTNFα、OSMまたはOSMRの機能を減少させることができる。例えば、機能は、適宜、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも95%減少させることができる。アンタゴニストは、TNFα、OSMまたはOSMRの機能を無効にし得る(すなわち、機能が100%低下する)。TNFα、OSMまたはOSMR機能は、任意の適切な技術によって測定することができる。
【0035】
アンタゴニストは、TNFα、OSMもしくはOSMR活性のアンタゴニストまたはTNFα、OSMもしくはOSMR発現のアンタゴニストであってもよい。アンタゴニストは、例えば、TNFα、OSMもしくはOSMRの産生もしくは発現を減少させることによって、またはTNFα、OSMもしくはOSMRの分解を増加させることによって、TNFα、OSMまたはOSMRの量を減少させることができる。アンタゴニストは、細胞からの可溶性TNFαまたはOSMの放出を減少させることができる。アンタゴニストは、可溶性もしくは細胞外TNFαもしくはOSMおよび/または受容体に結合したTNFαもしくはOSMおよび/または膜貫通TNFαを中和または除去することができる。アンタゴニストは、TNFαまたはOSMと1つ以上の受容体との有効な結合を阻害または防止することができる。アンタゴニストは、TNFα、OSMまたはOSMRの転写を低下させることができる。アンタゴニストは、例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼなどの方法を用いた部位特異的突然変異誘発によって、TNFα、OSMまたはOSMRのDNAを破壊し得る。アンタゴニストは、例えばアンチセンスRNAまたはRNA干渉によって、TNFα、OSMもしくはOSMRのmRNAレベルを低下させ、またはTNFα、OSMもしくはOSMRのmRNAのプロセッシングを干渉し得る。アンタゴニストは、TNFα、OSMまたはOSMRのタンパク質分解を増加させることができる。アンタゴニストは、TNFα、OSMまたはOSMRの天然の阻害物質のレベルを増加させることができる。アンタゴニストは、リン酸化、ユビキチン化、SUMO化などの翻訳後修飾によって、TNFα、OSMまたはOSMRの機能を低下させることができる。
【0036】
TNFα、OSMまたはOSMRアンタゴニストは、TNFα、OSMまたはOSMRに特異的であり得、すなわち、それは、TNFα、OSMもしくはOSMRに対して主にもしくは排他的に作用し、または他の分子に優先してTNFα、OSMもしくはOSMRに作用する。例えば、抗TNFα療法は、2種類のTNFが同じ受容体を利用することができるとしても、好ましくはTNFαに作用するが、TNFβには作用しない。
【0037】
OSMおよび/またはOSMRのアンタゴニストは、Th17ヘルパーT細胞もしくはTh17 CD4+T細胞、またはTh17経路の発生を阻害し得る。アンタゴニストは、Th17条件下で活性化されたナイーブCD4+T細胞の増殖を阻害することができる。アンタゴニストは、Th17条件下で活性化されたナイーブCD4+T細胞の生存を低下させ、または阻害することができる。アンタゴニストは、Th17細胞におけるTh2サイトカインの発現を増加させることができる。
【0038】
代替的にまたは加えて、OSMおよび/またはOSMRのアンタゴニストは、間質および/または病原性線維症の異常な活性化を阻害し得る。OSMおよび/またはOSMRのアンタゴニストは、組織の血管分布、白血球の動員および保持、ならびに/または局所的炎症過程を阻害し得る。OSMおよび/またはOSMRのアンタゴニストは、上皮増殖を阻害し得る。OSMおよび/またはOSMRのアンタゴニストは、慢性腸炎に関連する重症な有害事象である形成異常および新生組織形成の発症を阻害し得る。
【0039】
いくつかの実施形態において、アンタゴニストは、抗体、小分子、タンパク質、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、アンチセンス分子(例えば、アンチセンスRNAもしくはモルホリノ)、または干渉RNA(例えば、低分子干渉RNA(siRNA)、小型ヘアピンRNA(shRNA)もしくは改変されたRNAi治療的プロドラッグ、例えば、短鎖干渉リボ核酸中性(siRNN))である。
【0040】
抗体
アンタゴニストは、抗TNFα、抗OSMもしくは抗OSMR抗体、またはその抗原結合フラグメントであり、すなわち、TNFα、OSMまたはOSMRに特異的に結合し(以下に定義される)、およびTNFα、OSMまたはOSMR活性を中和または阻害する抗体またはそのフラグメントである場合がある。例えば、アンタゴニストは、単離もしくは複合体化されたナノボディ(単一ドメイン抗体;sdAb)もしくはFab’フラグメントであってもよく、または二重特異的治療薬(mAb2)としての代替標的に対する特異的Fabドメインを有する、単離もしくは複合体化された修飾Fc領域、例えばFcabであってもよい。抗体は、二重特異性抗体、例えば、OSMとTNFαの両方を標的とする二重特異性抗体である場合がある。本発明に従って使用するための抗体はまた、以下にさらに記載される。アンタゴニストは、合成の抗原結合スキャホールドまたは合成抗体であってもよく、例えば、TNFα、OSMまたはOSMRに特異的なアルファボディ、アフィボディ、アフィチン、アンチカリン、モノボディまたはアドネクチンが挙げられる。
【0041】
抗TNFα抗体の例は、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブまたはゴリムマブである。
【0042】
インフリキシマブおよびアダリムマブは、TNFαの全ての形態(細胞外、膜貫通および受容体結合)を中和することができる抗体の例である。インフリキシマブ(Remicade(登録商標)という商品名で販売されている)は、炎症性疾患および自己免疫疾患を処置するために使用される薬物である。インフリキシマブは、マウス結合性VKおよびVHドメインならびにヒト定常Fc領域を含むキメラモノクローナル抗体である。インフリキシマブは、TNFαの可溶性形態(血液中の遊離浮遊性)および膜貫通形態(T細胞および同様の免疫細胞の外膜上に配置される)に高親和性で結合することによってTNFαの生物活性を中和し、TNFαの有効な結合をその受容体により阻害または防止する。インフリキシマブはTNFαに対して高い特異性を有し、TNFβを中和しないが、TNFβはTNFαと同じ受容体を利用する。インフリキシマブは、例えば、乾癬、小児性クローン病、強直性脊椎炎、クローン病、乾癬性関節炎、関節リウマチおよび潰瘍性大腸炎の処置に関して、米国食品医薬品局によって承認されている。
【0043】
また、アダリムマブ(Humira(登録商標)の商品名で販売されている)は、TNFαに結合し、TNFαがTNF受容体を活性化するのを防止する。アダリムマブは完全なヒトモノクローナル抗体から構築され、一方、インフリキシマブはマウス-ヒトキメラ抗体である。アダリムマブは、例えば、関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、乾癬および若年性特発性関節炎の処置に関して、米国食品医薬品局(FDA)によって承認されている。
【0044】
抗TNF療法は、TNF受容体に対する中和抗体の投与を含み得る。典型的には、TNF受容体に対する中和抗体は、TNFR1受容体に対する中和抗体であり、例えば、ヒト野生型TNFR1受容体である。TNFR1受容体に対する中和抗体の例としては、限定されないが、アトロサブが含まれる。アトロサブは、ヒトTNFR1のアミノ酸1~70に結合し、TNFR1媒介性のシグナル伝達を選択的に阻害する。
【0045】
抗OSM抗体の例は、米国特許出願公開第2014/099315号明細書および国際公開第2012/069433号パンフレットに記載されている。
【0046】
抗OSMR抗体の例は、国際公開第2014/194274号パンフレットおよび国際公開第2013/168829号パンフレットに記載されている。
【0047】
非機能性形態および融合タンパク質
アンタゴニストは、天然(すなわち野生型)のTNFα、OSMまたはOSMRと競合し、それにより天然のTNFα、OSMまたはOSMR機能を拮抗するTNFα、OSMまたはOSMRの機能低下性形態または非機能性形態であり得る。機能低下性形態の機能は、任意の量まで低下/減少させることができる。例えば、機能は、野生型TNFα、OSMまたはOSMRと比較して、少なくとも10%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも95%低下/減少させることができる。
【0048】
ヒトTNFαのmRNA(GenBank受託番号NM_000594.3)のmRNA配列を配列番号1に示す。アミノ酸配列を配列番号2(NP_000585.2)に示す。ヒトOSMのmRNAのmRNA配列(GenBank受託番号NM_020530.4)を配列番号3に示す。アミノ酸配列を配列番号4(NM_020530.4)に示す。ヒトOSMRのmRNA(GenBank受託番号NM_003999.2)のmRNA配列を配列番号5に示す。アミノ酸配列を配列番号6(NP_003990.1)に示す。アンタゴニストは、配列番号2、4もしくは6の機能低下性変異体もしくは非機能性変異体またはその任意のアイソフォームであり得る。機能低下性変異体は、配列番号2、4もしくは6のアミノ酸配列またはその任意のアイソフォームから変化し、TNFα、OSMまたはOSMRとして機能する能力が低下したアミノ酸配列を有するタンパク質である。非機能性変異体は、配列番号2、4もしくは6のアミノ酸配列またはその任意のアイソフォームから変化し、TNFα、OSMまたはOSMRとして機能する能力を持たないアミノ酸配列を有するタンパク質である。
【0049】
例えば、OSMRの非機能性変異体は、二量体受容体を形成し、またはシグナル伝達経路と相互作用する部位において1つ以上の突然変異を有し得る。OSMRの非機能性変異体はまた、OSMを隔離する切断形態であってもよい。非機能性変異体はまた、OSMを隔離する受容体の可溶性形態であり得る。
【0050】
TNFα、OSMまたはOSMRとして機能する変異体の能力は、当該技術分野において公知である任意の方法を用いてアッセイすることができる。機能低下性変異体および非機能性変異体の対比機能能力は、典型的には、配列番号2、4または6などの野生型TNFα、OSMまたはOSMRと対比して測定される。
【0051】
配列番号2、4もしくは6のアミノ酸配列またはその任意のアイソフォームの全長にわたって、変異体は、アミノ酸同一性に基づいて、その配列に対して少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%または少なくとも99%相同であり得る。200以上のストレッチ、例えば、300、400、500、600、700、800、1000、1500もしくは2000またはそれを超える連続したアミノ酸にわたって、少なくとも80%、例えば、少なくとも85%、90%または95%のアミノ酸同一性が存在し得る(「ハード相同性」)。
【0052】
当該技術分野における標準的な方法を用いて相同性を決定することができる。例えば、UWGCGパッケージは、デフォルト設定で使用される、相同性を計算するために使用可能なBESTFITプログラムを提供する(Devereux et al (1984) Nucleic Acids Research 12, p387-395)。例えば、Altschul S. F. (1993) J Mol Evol 36:290-300;Altschul, S.F et al (1990) J Mol Biol 215:403-10に記載されているように、PILEUPおよびBLASTアルゴリズムを用いて、相同性またはラインアップ配列(例えば、同等残基または対応する配列を(典型的には、それらのデフォルト設定で)特定すること)を計算することができる。BLAST分析を行うためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を通じて公的に入手可能である。
【0053】
変異体は、配列番号2、4もしくは6のフラグメントまたはその任意のアイソフォームを含み得る。このようなフラグメントは、典型的には、配列番号2、4もしくは6またはその任意のアイソフォームの少なくとも1つの機能的ドメイン、例えば、結合ドメインを保持するが、非機能性である。フラグメントは、長さが少なくとも600、700、800または900アミノ酸であってもよい。上記ポリペプチドに、1つ以上のアミノ酸を代替的にまたは付加的に加えてもよい。
【0054】
アンタゴニストは、TNFα、OSMまたはOSMR(または上記のTNFα、OSMもしくはOSMRタンパク質のフラグメント)および異種タンパク質配列を含む融合タンパク質またはキメラであり得る。融合タンパク質は、TNFα、OSMまたはOSMRのデコイ結合パートナーとして作用し、それによりTNFα、OSMまたはOSMR活性を阻害し得る。一実施形態において、アンタゴニストは、OSMR、gp30および免疫グロブリンFc領域、例えばIgG2AのFc領域を含むOSM受容体融合タンパク質である。
【0055】
一実施形態において、キメラは、可溶性TNFαまたはOSM受容体キメラである。可溶性TNF受容体キメラの例としては、限定されないが、レネルセプトおよびエタネルセプトが挙げられる。エタネルセプトは、TNFαに結合し、強直性脊椎炎、若年性関節リウマチ、乾癬、乾癬性関節炎、関節リウマチなどの自己免疫疾患を含むヒトおよび他の動物における過剰な炎症を伴う疾患において、および潜在的には、過剰なTNFαによって媒介される様々な他の疾患においてTNFαの役割を低減させる。
【0056】
核酸
アンタゴニストは、TNFα、OSMまたはOSMRに対する修飾核酸、例えばアプタマーであってもよい。アンタゴニストは、TNFα、OSMまたはOSMRのアンタゴニストまたは非機能性変異体をコードするポリヌクレオチドであり得る。アンタゴニストまたは非機能性変異体は、本明細書において検討されているもののいずれかであり得る。
【0057】
核酸などのポリヌクレオチドは、2つ以上のヌクレオチドを含むポリマーである。ヌクレオチドは天然に存在するか、または人工的であってもよい。ヌクレオチドは、典型的には、核酸塩基、糖、およびリン酸、2’O-メチル、2’-メトキシ-エチル、ホスホラミデート、メチルホスホネートまたはホスホロチオエート基などの少なくとも1つの連結基を含有する。核酸塩基は、典型的には複素環式である。核酸塩基としては、限定されないが、プリンおよびピリミジン、より具体的にはアデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、ウラシル(U)およびシトシン(C)が挙げられる。糖は、典型的にはペントース糖である。ヌクレオチド糖には、限定されないが、リボースおよびデオキシリボースが含まれる。ヌクレオチドは、典型的には、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドである。ヌクレオチドは、典型的には、一リン酸、二リン酸または三リン酸を含む。リン酸は、ヌクレオチドの5’または3’側に結合していてもよい。
【0058】
ヌクレオチドには、限定されないが、アデノシン一リン酸(AMP)、アデノシン二リン酸(ADP)、アデノシン三リン酸(ATP)、グアノシン一リン酸(GMP)、グアノシン二リン酸(GDP)、グアノシン三リン酸(GTP)、チミジン一リン酸(TMP)、チミジン二リン酸(TDP)、チミジン三リン酸(TTP)、ウリジン一リン酸(UMP)、ウリジン二リン酸(UDP)、ウリジン三リン酸(UTP)、シチジン一リン酸(CMP)、シチジン二リン酸(CDP)、シチジン三リン酸(CTP)、5-メチルシチジン一リン酸、5-メチルシチジン二リン酸、5-メチルシチジン三リン酸、5-ヒドロキシメチルシチジン一リン酸、5-ヒドロキシメチルシチジン二リン酸、5-ヒドロキシメチルシチジン三リン酸、環状アデノシン一リン酸(cAMP)、環状グアノシン一リン酸(cGMP)、デオキシアデノシン一リン酸(dAMP)、デオキシアデノシン二リン酸(dADP)、デオキシアデノシン三リン酸(dATP)、デオキシグアノシン一リン酸(dGMP)、デオキシグアノシン二リン酸(dGDP)、デオキシグアノシン三リン酸(dGTP)、デオキシチミジン一リン酸(dTMP)、デオキシチミジン二リン酸(dTDP)、デオキシチミジン三リン酸(dTTP)、デオキシウリジン一リン酸(dUMP)、デオキシウリジン二リン酸(dUDP)、デオキシウリジン三リン酸(dUTP)、デオキシシチジン一リン酸(dCMP)、デオキシシチジン二リン酸(dCDP)およびデオキシシチジン三リン酸(dCTP)、5-メチル-2’-デオキシシチジン一リン酸、5-メチル-2’-デオキシシチジン二リン酸、5-メチル-2’-デオキシシチジン三リン酸、5-ヒドロキシメチル-2’-デオキシシチジン一リン酸、5-ヒドロキシメチル-2’-デオキシシチジン二リン酸、および5-ヒドロキシメチル-2’-デオキシシチジン二リン酸が含まれる。ヌクレオチドは、好ましくは、AMP、TMP、GMP、UMP、dAMP、dTMP、dGMPまたはdCMPから選択される。
【0059】
ヌクレオチドは追加の修飾を含有することができる。特に、適切な修飾ヌクレオチドには、限定されないが、2’-アミノピリミジン(例えば、2’-アミノシチジンおよび2’-アミノウリジン)、2’-ヒドロキシルプリン(例えば、2’-フルオロピリミジン(例えば、2’-フルオロシチジンおよび2’-フルオロウリジン)、ヒドロキシルピリミジン(例えば、5’-α-P-ボラノウリジン)、2’-O-メチルヌクレオチド(例えば、2’-O-メチルアデノシン、2’-O-メチルグアノシン、2’-O-メチルシチジンおよび2’-O-メチルウリジン)、4’-チオピリミジン(例えば、4’-チオウリジンおよび4’-チオシチジン)が含まれ、ヌクレオチドは、核酸塩基の修飾を有する(5-ペンチニル-2’-デオキシウリジン、5-(3-アミノプロピル)-ウリジンおよび1,6-ジアミノヘキシル-N-5-カルバモイルメチルウリジン)。
【0060】
ポリヌクレオチド中の1つ以上のヌクレオチドは、酸化またはメチル化され得る。ポリヌクレオチド中の1つ以上のヌクレオチドが損傷され得る。例えば、ポリヌクレオチドは、ピリミジン二量体を含み得る。このような二量体は、典型的には、紫外線による損傷に関連する。
【0061】
ポリヌクレオチド中のヌクレオチドは、任意の様式で互いに結合することができる。ヌクレオチドは、リン酸、2’O-メチル、2’メトキシ-エチル、ホスホラミデート、メチルホスホネートまたはホスホロチオエート結合によって連結されていてもよい。ヌクレオチドは、典型的には、核酸の場合のように糖およびリン酸基によって結合される。ヌクレオチドは、ピリミジン二量体の場合のように核酸塩基を介して連結されていてもよい。
【0062】
ポリヌクレオチドは、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)などの核酸であり得る。ポリヌクレオチドは、当該技術分野において公知である任意の合成核酸であってもよく、例えば、ペプチド核酸(PNA)、グリセロール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、ロックド核酸(LNA)、モルホリノ核酸、またはヌクレオチド側鎖を有する他の合成ポリマーが挙げられる。ポリヌクレオチドは、一本鎖または二本鎖であってもよい。
【0063】
ポリヌクレオチド配列は、例えば、特異的プライマーを伴うPCR、組換え複製可能な(クローニング)ベクターおよび適切な宿主細胞を使用して、当該技術分野における標準的方法を用いて誘導および複製することができる。このような標準的技術を用いてポリヌクレオチド配列を生成することは、一般に容易である。
【0064】
アンチセンスとRNAi
TNFα、OSMまたはOSMRのアンタゴニストは、例えば、TNFα、OSMまたはOSMRの発現をノックダウンすることによって、個体に存在するTNFα、OSMまたはOSMRの量を低下させることができる。タンパク質発現をノックダウンするためのアンチセンスおよびRNA干渉(RNAi)技術は、当該技術分野において周知であり、標準的方法を用いて、TNFα、OSMまたはOSMRの発現をノックダウンすることができる。
【0065】
アンチセンス技術とsiRNA技術の両方はmRNAに干渉する。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、mRNAの一セクションに結合する(ハイブリッド形成する)ことによってmRNAと干渉する。したがって、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、mRNAに相補的であるように設計される(オリゴヌクレオチドは、以下に検討するように100%相補的である必要はない)。換言すれば、アンチセンスオリゴヌクレオチドはcDNAの一セクションであってもよい。さらに、オリゴヌクレオチド配列は、cDNA配列に対して100%同一でなくてもよい。これについてはまた以下に検討される。
【0066】
RNAiは、mRNAに結合し、タンパク質発現を阻害することができる、低分子干渉RNA(siRNA)または小型ヘアピンRNA(shRNA)などの二本鎖RNAの使用を伴う。
【0067】
したがって、アンタゴニストは、以降標的配列と呼ばれる、TNFα、OSMまたはOSMRのmRNAの特定の配列に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを含み得る。オリゴヌクレオチドは、典型的には、50個以下のヌクレオチド、例えば、40個以下、30個以下、22個以下、21個以下、20個以下、10個以下または5個以下のヌクレオチドを有する短鎖ヌクレオチドポリマーである。本発明に用いられるオリゴヌクレオチドは、好ましくは長さが20~25ヌクレオチドであり、より好ましくは長さが21または22ヌクレオチドである。ヌクレオチドは天然に存在するか、または人工的であってもよい。ヌクレオチドは、上述されたもののいずれかであり得る。
【0068】
標的配列の長さは、典型的には、オリゴヌクレオチドの長さに対応する。例えば、21または22ヌクレオチドのオリゴヌクレオチドは、典型的には、21または22ヌクレオチドの標的配列に特異的にハイブリダイズする。したがって、標的配列は、オリゴヌクレオチドの長さに関連して上記で検討された長さのいずれかであり得る。標的配列は、典型的には、標的ポリヌクレオチド内の連続したヌクレオチドである。
【0069】
オリゴヌクレオチドは、標的配列に対して優先的または高親和性でハイブリダイズするが、実質的にハイブリダイズせず、他の配列に対してハイブリダイズしないかまたはごく低親和性でハイブリダイズする場合、標的配列に「特異的にハイブリダイズする」。
【0070】
オリゴヌクレオチドは、少なくとも2℃、例えば、少なくとも3℃、少なくとも4℃、少なくとも5℃、少なくとも6℃、少なくとも7℃、少なくとも8℃、少なくとも9℃または少なくとも10℃であり、他の配列についてその融解温度(Tm)より高いTmを有する標的配列にハイブリダイズする場合、「特異的にハイブリダイズする」。より好ましくは、オリゴヌクレオチドは、少なくとも2℃、例えば、少なくとも3℃、少なくとも4℃、少なくとも5℃、少なくとも6℃、少なくとも7℃、少なくとも8℃、少なくとも9℃、少なくとも10℃、少なくとも20℃、少なくとも30℃または少なくとも40℃であり、他の核酸についてそのTmより高いTmを有する標的配列にハイブリダイズする。好ましくは、部分は、少なくとも2℃、例えば、少なくとも3℃、少なくとも4℃、少なくとも5℃、少なくとも6℃、少なくとも7℃、少なくとも8℃、少なくとも9℃、少なくとも10℃、少なくとも20℃、少なくとも30℃または少なくとも40℃であり、標的配列と1つ以上のヌクレオチドで、例えば、1、2、3、4、または5個以上のヌクレオチドで異なる配列についてそのTmより高いTmを有する標的配列にハイブリダイズする。この部分は、典型的には、少なくとも90℃、例えば、少なくとも92℃または少なくとも95℃のTmを有する標的配列にハイブリダイズする。Tmは、DNAマイクロアレイの使用を含む公知の技術を用いて実験的に測定することができるか、またはインターネット上で入手可能なものなどの公的に利用可能なTm計算機を使用して計算することができる。
【0071】
ハイブリダイゼーションを可能にする条件は、当該技術分野において周知である(例えば、Sambrook et al., 2001, Molecular Cloning: a laboratory manual, 3rd edition, Cold Spring Harbour Laboratory Press;およびCurrent Protocols in Molecular Biology, Chapter 2, Ausubel et al., Eds., Greene Publishing and Wiley-lnterscience, New York (1995))。ハイブリダイゼーションは、低ストリンジェントな条件下で、例えば、37℃で30~35%ホルムアミド、1MのNaClおよび1%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)の緩衝溶液の存在下で、続いて50℃で1×(0.1650MのNa+)から2×(0.33MのNa+)SSC(標準クエン酸ナトリウム)中で20回の洗浄を用いて行うことができる。ハイブリダイゼーションは、中程度のストリンジェントな条件下で、例えば、37℃で40~45%ホルムアミド、1MのNaClおよび1%SDSの緩衝液の存在下で、続いて55℃で0.5×(0.0825MのNa+)から1×(0.1650MのNa+)SSC中での洗浄を用いて行うことができる。ハイブリダイゼーションは、高ストリンジェントな条件下で、例えば、37℃で50%ホルムアミド、1MのNaCl、1%SDSの緩衝溶液の存在下で、続いて60℃で0.1×(0.0165MのNa+)SSC中で洗浄を用いて行うことができる。
【0072】
オリゴヌクレオチドは、標的配列と実質的に相補的である配列を含み得る。典型的には、オリゴヌクレオチドは100%相補的である。しかしながら、95%、90%、85%、さらには80%などのより低いレベルの相補性もまた許容され得る。オリゴヌクレオチドが標的配列に特異的にハイブリダイズする限り、100%未満の相補性が許容され得る。したがって、オリゴヌクレオチドは、5、10、15、20、21、22、30、40または50ヌクレオチドの領域にわたって、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個以上のミスマッチを有し得る。
【0073】
オリゴヌクレオチドは、修飾ヌクレオチドなどの上記のヌクレオチドのいずれかを含み得る。オリゴヌクレオチドは、上記で検討した核酸のいずれかのものなどの核酸であり得る。オリゴヌクレオチドは、好ましくはRNAである。オリゴヌクレオチドは一本鎖であってもよい。オリゴヌクレオチドは二本鎖であってもよい。オリゴヌクレオチドはヘアピンを含むことができる。オリゴヌクレオチドは、当該技術分野において公知である標準的な技術を用いて合成することができる。あるいは、オリゴヌクレオチドを購入してもよい。
【0074】
本発明は、抗TNFα療法以外の治療的処置に関する場合がある。個体は、炎症性疾患または状態を有し、処置は、抗炎症剤、例えばコルチコステロイドの投与である場合がある。
【0075】
個体は、以下に記載される本発明の方法に従って診断されるかまたは予後診断されている場合がある。
【0076】
「TNFα媒介性の疾患または状態」は、抗TNFα療法を用いて処置され得て、または抗TNFα療法に一般的に反応性である疾患または状態であり、すなわち、該療法は、その特定の疾患または状態を処置するための標準的な医学的知識および/または実施に従う。疾患または状態は、抗TNFα療法が、一般に、その疾患もしくは状態に対する共通または第一選択の処置ではない場合でも、またはその疾患もしくは状態を有する高い割合の個体が非反応性であることが分かっている場合でも、療法が一部の患者において効果的な処置であるものとして認識される限り、その用語に含まれる。TNFα媒介性の疾患または状態は、抗TNFα療法またはTNFαアンタゴニストが疾患または状態の処置に関する規制承認を有する疾患または状態であり得る。TNFα媒介性の疾患または状態は、慢性腸炎、自己免疫疾患または炎症性疾患であり得る。TNFα媒介性の疾患または状態の例は、IBD、関節リウマチ、若年性特発性関節炎、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、炎症性皮膚疾患、例えば、乾癬(例えば、慢性重症プラーク乾癬)、腹水炎および喘息である。TNFα媒介性の疾患または状態は乾癬である場合がある。
【0077】
IBDは、結腸および小腸の一群の炎症状態を指し、ときには消化管の他の領域にも影響を及ぼす。クローン病(結腸および回腸のクローン病を含む)および潰瘍性大腸炎は、IBDの最も一般的な形態である。他の形態には、コラーゲン蓄積大腸炎、リンパ球性大腸炎、便流変更性大腸炎、ベーチェット大腸炎、不確定大腸炎および急性重症大腸炎、例えば免疫チェックポイントインヒビターの生物学的療法を用いる処置によって誘導される急性重症大腸炎、例えば癌が含まれる。IBDはまた、結腸直腸癌の発症に関して危険因子である。本発明に関しては、IBDは大腸癌と関連している場合がある。本発明は、疾患の重症度または兆候にかかわらず、重症潰瘍性大腸炎、劇症性潰瘍性大腸炎、もしくは毒性メガコロンを有する患者、またはシクロスポリンもしくはインフリキシマブなどの従来の療法(生物学的または非生物学的のいずれか)に失敗した患者の処置、診断または予後診断において使用するためのものである場合がある。
【0078】
慢性腸炎は、再発寛解型経路を伴う異常な炎症反応および組織損傷を伴う胃腸管を患う状態の範囲である。慢性腸炎状態には、潰瘍性大腸炎、クローン病、不確定大腸炎、顕微鏡下大腸炎(コラーゲン蓄積およびリンパ性大腸炎を含む)、難治性セリアック病(スプルー)、難治性好酸球性胃腸炎、好酸球性食道炎、慢性憩室疾および便流変更性大腸炎が含まれる。
【0079】
実施例に示されるように、OSMは、ヒト腸間質細胞に同時投与された場合、TNFαおよびIL-1βの相乗作用を実証している。OSMおよび/またはOSMRのアンタゴニストは、好ましくは、抗TNFα療法および/またはIL-1βのアンタゴニストを組み合わせて投与される。抗TNFα療法は、以下においてより詳細に検討される。IL-1βのアンタゴニストは、OSMおよび/またはOSMRについて上記で定義されたアンタゴニストのいずれかのタイプであり得る。IL-1βの承認されたアンタゴニストの例としては、限定されないが、アナキンラ(組換えIL-1受容体アンタゴニスト)、リロナセプト(可溶性IL-1受容体)、およびカナキヌマブ(抗IL-1β mAb)が挙げられる。IL-1βの種々の他のアンタゴニストは臨床開発中である(Dinarello et al, Nat Rev Drug Discovery, 2012を参照されたい)。方法は、二重特異性抗体、例えば、OSMまたはOSMRとIL-1βの両方を標的とする二重特異性抗体の使用を含み得る。本発明による使用のための抗体はまた、以下にさらに記載される。
【0080】
組み合わせとは、治療薬が個体に同時に投与され得ることを意味する。治療薬は、同じ治療レジメンの一部として、個体に別々にまたは任意の順序で逐次的に投与することができる。
【0081】
本発明はまた、個体における慢性腸炎および/またはIBDの処置において、同時、別々または逐次使用のための、(a)OSMおよび/またはOSMRのアンタゴニスト、ならびに(b)抗TNFα療法および/またはIL-1βのアンタゴニストを含有する製品を提供する。
【0082】
診断/予後診断
本発明は、いくつかの態様において、診断または予後診断の方法に関する。診断には、個体が疾患もしくは状態を有するか否かを決定すること、および/または疾患もしくは状態の重症度を決定することが含まれる。予後診断には、個体が疾患もしくは状態を発症するか否か、処置を必要とするか否か、個体が必要とする処置のタイプ、処置に反応するか否か、疾患のエピソード、再発もしくは再燃を起こすか否かおよび/またはいつ起こすか、ならびに症状もしくは疾患のエピソード、再発もしくは再燃の重症度または持続期間を予測することを含む。
【0083】
この方法は、個体におけるOSMおよび/またはOSMRを測定することを含む。OSMとOSMRの両方を測定し、参照OSMおよびOSMRレベルまたは参照試料のOSMおよびOSMRレベルと比較して、OSM指標(OSMi)を決定する場合がある。OSMiは、2つ以上の直接比較することができる試料における活性なOSM-OSMRシグナル伝達の相対的確率に近似する。OSMiの理論的根拠は以下の通りである:公開された文献に基づいて、ヒト組織におけるOSMに対する優性受容体は、1つのgp130鎖および1つのOSMR鎖からなるヘテロ二量体である。Gp130は、ほとんどのヒト細胞型および組織において無差別的におよび高度に発現される;対照的に、OSMR発現は、より厳密に制御され、特定の細胞型および条件に限定される。したがって、OSMRは、OSM受容体複合体における制限因子である。OSMは、同様に、制御された形で表現される;したがって、1:1の化学量論で相互作用するOSMおよびOSMRは、OSM経路活性を制御する主要な制限因子である。組織試料中の相対的なOSMまたはOSMR発現は、その系における活性なOSMシグナル伝達の理論的可能性に直接対応する。OSMiは、直接比較することができる試料を含むデータセット内の試料中のOSMおよびOSMRの相対的発現の産物である。
【0084】
OSMiの計算の例は、以下の通りである:本発明者らは、対照患者由来のものとIBD患者由来のものとの2つの腸粘膜生検を有する。定量的PCRを用いて、試料中のOSMとOSMRの両方のmRNAレベルを、対応するハウスキーピング遺伝子レベル(例えば、RPLP0)と比較して見出す。これらの数値は以下の通りである:
対照:
OSM-0.000058;OSMR-0.00083
IBD:
OSM-0.0022;OSMR-0.0073。
【0085】
IBD検体におけるOSMの発現は、対照試料のものより38倍高い。IBD検体におけるOSMRの発現は、対照試料のものより8.8倍高い。したがって、対照試料のOSMiを1と指定すると、IBD検体のOSMiは、2つの有効数字=38×8.8=330に丸められる。
【0086】
OSMiを正しく解釈するために、入力値(すなわち、相対的なOSMおよびOSMR式)を適切な基準値に対して計算しなければならない。これは、状況に応じていくつかの形態をとる。ここでの例では、IBD検体の論理コンパレーターが健常対照試料である。以下の例に含まれるデータでは、OSMi値は、与えられたデータセット内の中央値をコンパレーターとして用いて計算される。臨床シナリオにおいてOSMiを計算するために、不死化細胞株のパネルにおける平均OSM/OSMR発現などの一貫した参照試料を各アッセイに使用することができる。
【0087】
本発明の診断方法または予後診断方法は、診断または予後診断を改善するための1つ以上の他のアッセイまたは試験と併せて実施することができる。例えば、他のマーカーを分析に含めることができる。例としては、IBDの診断/予後診断のための血清C-反応性タンパク質(CRP)である。S100A8は、腸の炎症の重症度のバイオマーカーである。糞便カルプロテクチンは、一般に、粘膜炎症の指標として病院においてアッセイされる。
【0088】
診断または予後診断の方法は、慢性腸炎および/またはIBDから寛解した個体が疾患再発を有するか否かを予測する方法である場合がある。個体が再発するか否かの予測には、個体が再発する可能性を判断すること、および/またはいつ再発するかを予測することが含まれる。個体は、抗TNFα療法、例えば、本明細書に記載される抗TNFα療法を用いた処置後、寛解している場合がある。
【0089】
予後診断の方法は、個体が抗TNFα療法または抗OSMもしくは抗OSMR療法に、例えば、OSMおよび/もしくはOSMRのアンタゴニストに反応するか否かを予測する方法である場合がある。個体が反応するか否かの予測は、個体が反応する可能性を決定すること、および/または個体が反応する程度、例えば、個体の症状が処置によって緩和される程度を予測すること含む。
【0090】
個体における抗TNFαまたは抗OSM/OSMR療法に対する予測された反応性とは、個体が抗TNFαまたは抗OSM/OSMR療法を受けることから利益または十分な程度の利益を得ることが期待されることを意味する。個体における抗TNFαまたは抗OSM/OSMR療法に対する予測される非反応性とは、個体が抗TNFαまたは抗OSM/OSMR療法を受けることから利益または十分な程度の利益を得ることが期待されないことを意味する。反応を予測する方法は、抗TNFαまたは抗OSM/OSMR療法の投与前に行うことができる。次に、予測は、個体に適切な処置を選択または推奨するときに考慮され得る。あるいは、この方法は、抗TNFαまたは抗OSM/OSMR療法による処置後に実施され、処置に対する個体の反応をモニターおよび予測するために使用され得る。典型的には、この方法は、個体が抗TNFαまたは抗OSM/OSMR療法による処置に対する一次反応を有するか否か、すなわち、最初に処置を受けたときに個体が反応するか否かを予測するためのものである。この方法は、二次的な非反応性、すなわち、処置に最初に反応する個体が、後に処置に対する反応を停止しまたは処置にほとんど反応しないか否かを予測するための方法である場合がある。
【0091】
本発明によれば、参照試料または参照レベルと比較して、個体におけるOSM、OSMRおよび/またはOSMiのレベルの上昇は、疾患の存在に関する陽性の診断を示し、例えば、個体が関連疾患もしくは状態を有するまたはより重症な疾患を有することを示す。OSM、OSMRおよび/またはOSMiのレベルの上昇は、陰性の診断を示し、すなわち、例えば、個体が抗TNFα療法に反応せず、疾患から寛解した個体が再発を有し、または個体が疾患もしくは状態を発症するリスクが高いという個体の予後不良を示す。逆に、OSM、OSMR、および/またはOSMiのレベルの低下は、例えば、個体が関連疾患もしくは状態を有していない、または重症疾患をほとんど有さないという陰性の診断を示す。OSM、OSMR、および/またはOSMiのレベルの低下は、陽性の診断を示し、すなわち、例えば、個体が抗TNFα療法に反応し、または疾患から寛解した個体が再発を有さず、もしくは疾患および状態を発症するリスクの増加がないという患者の予後良好を示す。個体が疾患または状態を有するか否かの診断について、参照試料またはレベルは、典型的には、関連する疾患もしくは状態を有さない、または疾患もしくは状態を有することが疑われるが、その後、疾患および状態を有さないことが確認される個体におけるOSM、OSMRまたはOSMiのベースラインレベルを表す。適切な参照試料またはレベルは、本明細書に記載される診断または予後診断の他の方法について同様に選択することができる。
【0092】
診断または予後診断の方法は、個体に適切な処置、すなわち診断または予後診断に基づく処置を選択または推奨することを含むことができる。次に、選択または推奨される処置は、個体に投与され得る。例えば、参照試料または参照レベルと比較して、OSM、OSMRおよび/またはOSMiのレベルの低下は、個体が抗TNFα療法に反応することを示す場合がある。その後、抗TNFα療法を選択または推奨してもよく、次に、個体にさらに投与されてもよい。参照試料または参照レベルと比較して、OSM、OSMRおよび/またはOSMiのレベルの上昇は、個体が抗TNFα療法に反応しないことを示す場合もある。その後、抗TNFα療法は個体に投与されない。さらに、個体の処置のために、抗TNFα療法以外の治療的処置が選択または推奨され得、次に個体にさらに施されてもよい。
【0093】
本発明の全ての態様において、疾患または状態(例えば、IBDまたは慢性腸炎)を有する個体は、疾患もしくは状態を有することが疑われる個体、および/または疾患もしくは状態を発症するリスクがある個体を含む。例えば、個体は、正式に診断されていないが、1つ以上の症状の存在のために疾患または状態を有することが疑われる場合がある。IBDおよび/または慢性腸炎の症状には、腹痛または骨盤痛、痙攣または筋肉痙攣、嘔吐、下痢、直腸出血、体重減少、発熱および貧血が含まれる。個体は、疾患もしくは状態に関連する1つ以上の危険因子、および/または疾患もしくは状態に対する感受性を増加させる1つ以上の素因を有する場合、疾患または状態を発症するリスクがあるとみなされ得る。IBDおよび/または慢性腸炎の危険因子には、遺伝的素因および抗生物質による処置が含まれる。
【0094】
本方法は、好ましくは、個体におけるTNFαおよび/またはIL-1βを測定し、それにより個体における慢性腸炎および/もしくはIBDを診断または予後診断することをさらに含む。方法は、好ましくは、TNFαとIL-1βの両方を測定することをさらに含む。TNFαおよび/またはIL-1βは、OSMおよび/またはOSMRについて以下に検討される方法のいずれかにおいて測定することができる。この方法は、好ましくは、個体におけるTNFαおよび/またはIL-1βを測定すること、TNFαおよび/またはIL-1βレベルを参照TNFαおよび/もしくはIL-1βレベルまたは参照試料のTNFαおよび/もしくはIL-1βレベルと比較すること、ならびにTNFαおよび/またはIL-1β(TNFαiおよび/またはIL-1βi)を決定することをさらに含む。参照試料もしくは参照レベルと比較した、または参照試料もしくは参照レベルを用いて計算した、TNFαおよび/もしくはIL-1βまたはTNFαiおよび/もしくはIL-1βiのレベルの上昇は、典型的には、陽性の診断、陰性の予後診断、および/または個体は再発することを示す。参照試料もしくは参照レベルと比較した、または参照試料もしくは参照レベルを用いて計算した、TNFαおよび/もしくはIL-1βまたはTNFαiおよび/もしくはIL-1βiのレベルの低下は、陰性の診断、陽性の予後診断、および/または個体が再発しないことを示す。
【0095】
本発明はまた、個体における慢性腸炎および/またはIBDの重症度を決定する方法を提供する。本発明はまた、慢性腸炎および/またはIBDを有する個体が外科手術を必要とする可能性を決定する方法を提供する。これらの方法の両方は、個体におけるOSMおよび/またはOSMRの測定することを含む。この方法は、典型的には、個体におけるOSMおよびOSMRを測定すること、OSMおよびOSMRレベルを参照OSMおよびOSMRレベルまたは参照試料のOSMおよびOSMRレベルと比較すること、ならびにOSM指標(OSMi)を決定することを含む。これは、上述のように達成することができる。参照試料もしくは参照レベルと比較した、または参照試料もしくは参照レベルを用いて計算した、OSM、OSMRおよび/またはOSMiのレベルの上昇は、疾患が重症であり、および/または個体が外科手術を必要とする可能性があることを示す。参照試料もしくは参照レベルと比較した、または参照試料もしくは参照レベルを用いて計算した、OSM、OSMRおよび/またはOSMiのレベルの低下は、疾患が重症でなく、および/または個体が外科手術を必要とする可能性がないことを示す。
【0096】
この文脈における重症度は、現在、標準的な内視鏡的および組織病理学的評価によって決定される疾患の強さを指す。これは、患者における処置難治性状況に関連しており、より大きな疾患重症度を有する患者は、薬理学的介入に反応する可能性が低く、したがって、外科的介入を必要とするリスクがより高い。外科手術は、一般的に、胃腸管の患部の除去および関連する合併症の修復を含み、これは特定の状況に応じて変わる。例えば、クローン病(CD)の患者は、しばしば、腸の別個の線維性領域の除去を必要とするが、一部の潰瘍性大腸炎(UC)の患者は、結腸の完全な除去を必要とする場合がある。一部の患者は、瘻孔(fistula)の矯正またはストーマ(stoma)の構築などの追加の外科的介入を必要とする。
【0097】
疾患の重症度または外科手術の可能性を決定するために、参照試料またはレベルは、典型的には、外科手術を必要としない軽度の形態の疾患または状態を有する個体におけるOSM、OSMRまたはOSMiのベースラインレベルを表す。参照試料またはレベルは、関連する疾患もしくは状態を有していない、または疾患もしくは状態を有する疑いがあるが、その後に疾患もしくは状態を有していないことが確認される個体におけるOSM、OSMRまたはOSMiのベースラインレベルを表すことができる。
【0098】
対象とする個体は、典型的には、哺乳動物、例えば、霊長類、齧歯類(マウスおよびラットを含む)、または他の一般的な研究室、家畜または農業用の動物、例えば、限定されないが、ウサギ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタなどが挙げられる。個体はヒトであってもよい。
【0099】
OSMおよび/またはOSMRの検出
OSMまたはOSMRのレベルは、典型的には、個体から得られた生物学的試料においてインビトロで測定される。試料は、個体の体液を含むことができる。流体試料は、例えば、血液、血漿、血清、便、尿、脳脊髄液または関節液の試料であり得る。
【0100】
あるいは、試料は、組織試料を含んでもよい。典型的には、組織試料は、疾患または状態によって影響される身体の一部に由来する。例えば、疾患または状態がIBDまたは慢性腸炎である場合、組織試料は、腸生検(例えば、腸粘膜生検)または外科的切除試料であり得る。
【0101】
試料は、例えば、DNA、RNAもしくはタンパク質の遠心分離または抽出によって、アッセイさせる前に処理することができる。試料はまた、アッセイ前に、好ましくは-70℃未満で保存することができる。
【0102】
当該技術分野において公知である標準的な方法を用いて、OSMまたはOSMRのレベルをアッセイすることができる。これらの方法は、典型的には、関連するタンパク質に結合する、またはそれと反応する薬剤を使用することを伴う。薬剤を個体由来の試料と接触させ、薬剤と関連タンパク質の間の複合体形成または反応を測定する。薬剤は、典型的には、タンパク質に特異的に結合する。薬剤は、タンパク質に特異的な抗体であってもよく、またはタンパク質に結合するアプタマーであってもよい。本明細書に記載される抗体または他の薬剤は、そのタンパク質と優先的にまたは高親和性で結合するが、他のタンパク質と実質的に結合しない、結合しない、または低親和性でのみ結合する場合、タンパク質に「特異的に結合する」。例えば、抗体または類似の薬剤は、1×10-7M以下、より好ましくは5×10-8M以下、より好ましくは1×10-8M以下、またはより好ましくは5×10-9M以下のKdで結合する場合、優先的にまたは高親和性で結合する。抗体は、1×10-6M以上、より好ましくは1×10-5M以上、より好ましくは1×10-4M以上、より好ましくは1×10-3M以上、さらにより好ましくは1×10-2M以上のKdで結合する場合、低親和性で結合する。抗体または抗体構築物およびオリゴヌクレオチドなどの化合物の特異的な結合能を決定するための競合結合または免疫放射線測定アッセイのための様々なプロトコールが、当該技術分野において周知である(例えば、Maddox et al, J. Exp. Med. 158, 1211-1226, 1993を参照されたい)。
【0103】
OSMまたはOSMRレベルを評価する方法には、抗原捕捉ディップスティックアッセイおよび酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)が含まれる。ELISAは、典型的には、当業者に公知であるサンドイッチ技術または競合技術を用いて行われる。本発明はまた、直接検出技術においてOSMまたはOSMRに対する抗体を使用することができ、例えば、限定されないが、表面プラズモン共鳴、表面音波、水晶マイクロバランス、マイクロ熱量測定または電気化学インピーダンス分光法に基づくものが含まれる。特定のOSM mAbは、体液中のOSMレベルを検出するためのモノクローナル抗体ベースの免疫クロマトグラフィーストリップ試験において使用することができる。修飾されたオリゴヌクレオチドアプタマーは、ソマロジックプラットフォームを用いた多重検体検出システムの一部として使用することができる。OSMR発現レベルは、例えば、フローサイトメトリーまたは患者の腸組織の組織学的切片に関する定量的免疫組織化学分析によって決定することができる。OSRとOSMRのmRNAレベルは、qRT-PCRおよび次世代シーケンシングを含むRNA分析法によって正確に定量することができる。
【0104】
抗体
本発明の方法において使用される抗体は、関連するタンパク質に結合することができる全抗体またはそのフラグメントのいずれかであり得る。抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルであり得る。抗体は、当該技術分野において公知である任意の適切な方法によって生成され得る。例えば、ポリクローナル抗体は、適切な条件下で哺乳動物、典型的にはウサギまたはマウスをHBPで免疫すること、例えば、前記哺乳動物の血清から抗体分子を単離することによって得ることができる。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法または組換え法によって得ることができる。
【0105】
典型的には、抗体は、霊長類、ヒト、齧歯類(例えば、マウスもしくはラット)、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウマまたはラクダ抗体などの哺乳動物抗体である。抗体は、ラクダ化抗体またはサメ抗体であってもよい。抗体は、ナノボディ(単一ドメイン抗体;sdAb)であってもよい。抗体は、抗体の任意のクラスまたはアイソタイプ、例えば、IgMであってもよいが、好ましくはIgGである。この方法において使用することができる全抗体のフラグメントは、抗原結合部位、例えば、FabもしくはF(ab)2フラグメントまたはScFVを含む。全抗体またはフラグメントは、単離された抗体もしくはそのフラグメントであり得、または他の部分と会合しもしくは複合体化され得、または融合タンパク質の形態であり得る。一実施形態において、抗体は、異なる天然抗体由来の配列を含むキメラ抗体、例えば、ヒト化抗体である。
【0106】
医薬組成物および投与様式
本明細書に記載される処置方法において使用するための薬剤は、医薬組成物に製剤化することができる。これらの組成物は、治療有効成分に加えて、薬学的に許容される賦形剤、担体、希釈剤、緩衝剤、安定剤または当業者に周知である他の物質を含み得る。このような物質は無毒でなければならず、有効成分の有効性を妨げてはならない。医薬的担体または希釈剤は、例えば、等張溶液であってもよい。
【0107】
担体または他の物質の正確な性質は、投与経路、例えば、経口、静脈内、皮膚または皮下、経鼻、筋肉内および腹腔内経路に依存し得る。適切な組成物および投与方法の例は、EssekuおよびAdeyeye(2011)ならびにVan den Mooter G.(2006)に提供されている。例えば、固体経口形態は、活性物質とともに、希釈剤、例えば、ラクトース、デキストロース、サッカロース、セルロース、コーンデンプンまたはジャガイモデンプン;潤滑剤、例えば、シリカ、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウムもしくはカルシウム、および/またはポリエチレングリコール;結合剤;例えば、デンプン、アラビアゴム、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはポリビニルピロリドン;脱凝集剤、例えば、デンプン、アルギン酸、アルギン酸塩またはグリコール酸ナトリウムデンプン;発泡性混合物;染料;甘味料;湿潤剤、例えば、レシチン、ポリソルベート、ラウリルスルフェート;一般的に、医薬製剤に使用される非毒性および薬理学的に不活性な物質を含有し得る。このような医薬製剤は、公知の方法、例えば、混合、造粒、打錠、糖衣またはフィルムコーティング法によって製造することができる。
【0108】
経口製剤には、例えば、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの通常使用される賦形剤が含まれる。これらの組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、丸剤、カプセル、徐放性製剤または散剤の形態をとり、10%~95%、好ましくは25%~70%の有効成分を含有する。医薬組成物が凍結乾燥される場合、凍結乾燥された材料は投与前に再構成されてもよく、懸濁液であってもよい。再構成は、好ましくは緩衝液中で行われる。
【0109】
個体への経口投与用のカプセル、錠剤および丸剤には、例えば、Eudragit「S」、Eudragit「L」、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む腸溶性コーティングを施してもよい。
【0110】
経口投与用の液体分散液は、シロップ、エマルジョンまたは懸濁液であってもよい。シロップは、担体として、例えば、サッカロース、またはグリセリンおよび/もしくはマンニトールおよび/もしくはソルビトールとともにサッカロースを含むことができる。
【0111】
懸濁液およびエマルジョンは、担体として、例えば、天然ゴム、寒天、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはポリビニルアルコールを含有してもよい。筋肉内注射用の懸濁液または溶液は、活性物質とともに、薬学的に許容される担体、例えば、滅菌水、オリーブ油、オレイン酸エチル、グリコール、例えば、プロピレングリコール、および必要に応じて適量の塩酸リドカインを含有してもよい。
【0112】
静脈内投与または輸液用の溶液は、担体として、例えば、滅菌水を含有してもよく、好ましくは滅菌した水性の等張性生理食塩水の形態であってもよい。
【0113】
坐剤の場合、伝統的な結合剤および担体は、例えば、ポリアルキレングリコールまたはトリグリセリドを含んでもよく;このような坐剤は、0.5%~10%、好ましくは1%~2%の範囲の有効成分を含有する混合物から形成されてもよい。
【0114】
ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド阻害剤は、裸のヌクレオチド配列であってもよく、またはカチオン性脂質、ポリマーまたは標的系と組み合わせてもよい。それらは、利用可能な技術によって送達されてもよい。例えば、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドは、針注射によって、好ましくは皮内、皮下または筋肉内に導入され得る。あるいは、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドは、粒子媒介性の遺伝子送達などの送達デバイスを用いて皮膚を介して直接送達されてもよい。ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドは、典型的には、皮膚に、または、例えば、鼻腔内、経口または直腸内投与によって粘膜表面に投与されてもよい。
【0115】
ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド構築物の取り込みは、いくつかの公知のトランスフェクション技術、例えば、トランスフェクション剤の使用を含むものによって増強することができる。これらの薬剤の例には、カチオン性薬剤、例えば、リン酸カルシウムおよびDEAE-デキストランおよびリポフェクタント、例えば、リポフェクタムおよびトランスフェクタムが含まれる。投与されるポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドの投薬量を変更することができる。
【0116】
投与は、典型的には、「予防的有効量」または「治療的有効量」(場合によっては、予防は治療と見なすことができる)であり、これは個体に利益を示すのに十分であり、疾患もしくは状態の開始を妨げまたは遅延させ、1つ以上の症状を改善させ、寛解を誘発または延長させ、あるいは再燃または再発を遅延させるのに有効な量である。
【0117】
投与量は、特に、使用される物質;処置されるべき個体の年齢、体重および状態;投与経路;ならびに必要とされるレジメンに応じて、様々なパラメータに従って決定され得る。医師は、任意の特定の個体の必要とされる投与経路および投薬量を決定することができる。典型的な1日投薬量は、上記の条件に依存して、体重1kgあたり約0.1~50mgである。投与量は、単回投与として提供されてもよく、または複数回の投与として提供されてもよく、例えば、定期的な間隔で、例えば、2、3または4回の投与が毎時投与されてもよい。典型的には、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド阻害剤は、粒子媒介性の送達については1pg~1mg、好ましくは1pg~10μgの範囲、および他の経路については10μg~1mgの範囲で投与される。
【0118】
上記の技術およびプロトコールの例は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 20th Edition, 2000, pub. Lippincott, Williams & Wilkinsに見出すことができる。
【0119】
組成物は、単独で、または他の治療用組成物もしくは処置、例えば補助療法と組み合わせて投与されてもよい。他の治療用組成物または処置は、例えば、本明細書において検討されているものの1つ以上であってもよく、本発明の組成物もしくは処置と同時にまたは連続して投与されてもよい。
【0120】
慢性腸炎の標準的な現在の治療薬としては、5-ASA(アミノサリチル酸)、種々の抗生物質、コルチコステロイド(例えば、ブデソニド、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、およびプレドニゾン)、アザチオプリン、6-メルカプトプリン、メトトレキサート、シクロスポリン、抗TNF抗体(例えば、インフリキシマブ、アダリムマブ、セツリズマブ、ゴリムマブ)、抗α4β7インテグリン抗体(例えば、ベドリズマブ)が挙げられる。OSMおよび/もしくはOSMRを標的とする薬剤またはOSMおよび/もしくはOSMRのアンタゴニストは、上記薬剤のいずれかと組み合わせて使用されてもよい。臨床データは、抗TNF療法および非生物学的療法の組合せを受けているIBD患者が、抗TNFまたは非生物学的製剤単独を受けている患者より高い臨床反応性を経験することを示唆している(Colombel et al, 2010, N Engl J Med; 1383-95およびPanaccione et al, 2014, Gastroenterology; 392-400)。異なった生物学的療法を組み合わせたデータは限られているが、抗OSM/OSMR剤を抗TNF療法と組み合わせることは、OSMおよびTNFが標的細胞に相乗効果を及ぼすことができる点で有益であり得ると考える科学的理由がある(例えば、OSMおよびTNFは結腸間質細胞によるIL-6発現を相乗的に誘導する)。あるいは、2つ以上の標的特異性を有する単剤生物学的療法(例えば、OSMとTNFの両方を標的とする二重特異性抗体)が使用され得る。OSM標的化治療薬はまた、他の種類の治療薬、例えば、小分子またはオリゴヌクレオチド治療薬と組み合わせて使用することができる。
【0121】
キット
本発明はさらに、個体におけるOSMおよび/またはOSMRレベルを測定するための手段(例えば、試薬)、ならびに本発明の方法によるキットを使用するための説明書を含む診断キットを提供する。キットはまた、上記方法をどの個体に実施するかに関しての詳細を含むことができる。キットは、典型的には、OSMまたはOSMRに特異的に結合する1つ以上の薬剤、例えば、抗体を含有する。キットは、他の実験室または臨床パラメータの測定手段をさらに含んでもよい。例えば、キットは、C-反応性タンパク質(CRP)を測定するための手段を含んでもよい。
【0122】
キットは、上記方法を実施することを可能にする1つ以上の他の試薬または装置を追加的に含んでもよい。このような試薬または装置は、以下のうちの1つ以上を含む:適切な緩衝液(水溶液)、試料からOSMおよび/もしくはOSMRを単離する手段、個体から試料を得る手段(例えば、容器もしくは針を含む装置)、または定量的反応を行うことができるウェルを含む支持体。
【0123】
他の態様
したがって、第1の態様において、本発明は、個体における乾癬またはTh17媒介性の疾患もしくは状態を処置または予防する方法であって、OSMおよび/またはOSMRのアンタゴニストを個体に投与し、それにより個体における乾癬またはTh17媒介性の疾患もしくは状態を処置または予防することを含む方法を提供する。
【0124】
さらに、本発明は、
- 個体における乾癬またはTh17媒介性の疾患もしくは状態を処置または予防する方法において使用するためのOSMおよび/またはOSMRのアンタゴニスト;ならびに
- 個体における乾癬またはTh17媒介性の疾患もしくは状態を処置または予防する方法における使用のための医薬の製造におけるOSMおよび/またはOSMRのアンタゴニストの使用
を提供する。
【0125】
個体は、以下に示される方法に従って診断または予後診断されている場合がある。
【0126】
さらなる態様において、本発明は、個体における乾癬またはTh17媒介性の疾患もしくは状態を診断または予後診断する方法であって、個体においてOSMおよび/またはOSMRを測定し、それにより個体における乾癬またはTh17媒介性の疾患もしくは状態を診断または予後診断することを含む方法を提供する。
【0127】
サイトカインのシグナル伝達経路の潜在的な強さは、リガンドと受容体の両方の相対存在量によって決定される。したがって、個体におけるOSMとOSMRの両方を測定し、OSM指標(OSMi)(相対的なOSMおよびOSMRの積)を決定することが有用である場合がある。
【0128】
本発明者らは、OSMRが疾患寛解中に高度に発現されたままであることを示した。さらに、抗TNFα療法が成功した後、OSMは抑制される。これは、OSMシグナル伝達が疾患再発において役割を果たすことを示唆している。したがって、乾癬またはTh17媒介性の疾患もしくは状態を診断または予後診断する方法は、乾癬またはTh17媒介性の疾患もしくは状態から寛解した個体が再発するか否かを予測する方法である場合がある。
【0129】
参照試料または参照レベルと比較した、OSM、OSMR、および/またはOSMiのレベルの上昇は、陽性の診断、陰性の予後診断、および/または個体が再発することを示す場合がある。参照試料または参照レベルと比較した、OSM、OSMR、および/またはOSMiのレベルの低下は、陰性の診断、陽性の予後診断、および/または個体が再発しないことを示す場合もある。
【0130】
別の態様において、本発明は、個体における乾癬またはTh17媒介性の疾患もしくは状態を処置または予防する方法であって、
(c)上記の方法に従って個体における乾癬またはTh17媒介性の疾患もしくは状態を診断または予後診断すること;および
(d)乾癬またはTh17媒介性の疾患もしくは状態の処置に有用な薬剤を個体に投与すること
を含む方法を提供する。
【0131】
薬剤は、OSMおよび/またはOSMRのアンタゴニストである場合がある。OSMおよび/またはOSMRアンタゴニストは、抗OSMもしくは抗OSMR抗体、またはOSMもしくはOSMR融合タンパク質などのOSMもしくはOSMR活性または発現のアンタゴニストであってもよい。
【0132】
さらに、本発明は、
- 個体における乾癬またはTh17媒介性の疾患もしくは状態が上記方法に従って診断または予後診断されている個体における乾癬またはTh17媒介性の疾患もしくは状態を処置または予防する方法において使用するための薬剤;
- 個体における乾癬またはTh17媒介性の疾患もしくは状態が上記方法に従って診断または予後診断されている個体における乾癬またはTh17媒介性の疾患もしくは状態を処置または予防する方法において使用するための医薬の製造における薬剤の使用;
乾癬またはTh17媒介性の疾患もしくは状態を有する、または有すると疑われる、または発症するリスクがある個体におけるOSMおよび/またはOSMRのレベルを決定するための手段;ならびに
乾癬またはTh17媒介性の疾患もしくは状態を処置するための薬剤
を含有する製品
を提供する。
【0133】
さらなる態様は、乾癬またはTh17媒介性の疾患もしくは状態を有する、または有すると疑われる、または発症するリスクがある個体におけるOSMおよび/またはOSMRのレベルを測定するためのアッセイであって、個体由来の生物学的試料をOSMまたはOSMRに結合する薬剤と接触させること、薬剤とOSMまたはOSMRの間の複合体形成を測定すること、場合によりOSMiを計算すること、測定された値またはOSMi値を参照値と比較し、それにより個体における乾癬またはTh17媒介性の疾患もしくは状態を診断または予後診断することを含むアッセイを提供する。
【0134】
さらなる態様は、
(e)乾癬またはTh17媒介性の疾患もしくは状態を有する個体由来の生物学的試料におけるOSMおよび/またはOSMRのレベルを定量するための測定モジュール;
(f)上記測定モジュールから出力されたデータ、および参照および/または対照データを記憶するように構成された記憶モジュール;
(g)上記測定モジュールから出力されたデータの値、および参照または対照データをコンピュータ計算するように構成されたコンピュータ計算モジュール;ならびに
(h)出力データの値に基づいて、乾癬またはTh17媒介性の疾患もしくは状態を有する個体の診断または予後診断を表示するように構成された出力モジュール
を含むシステムを提供する。
【0135】
慢性腸炎および/またはIBDおよびTNFα療法に関連して上記で検討した実施形態のいずれかは、乾癬またはTh17媒介性の疾患もしくは状態に関する実施形態に等しく適用される。Th17媒介性の疾患または状態は、例えば、IBD、乾癬、アトピー性皮膚炎、関節リウマチ、若年特発性関節炎、強直性脊椎炎、多発性硬化症、I型糖尿病、自己免疫ブドウ膜炎、または癌であり得る。
[実施例]
【0136】
方法
ヒトコホートにおける遺伝子発現分析
全てのヒト組織の回収は、Oxford Gastrointestinal Illness Biobank(参照番号11/YH/0020)からの倫理的承認の下で行われた。本発明者らは、ジョンラドクリフ病院(Oxford、UK)で処置された、同意を受けたIBD患者または健常対照(非IBD状態の内視鏡検査を受けている)から腸粘膜検体を採取し、cDNA合成および定量的リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)分析のためにRNAを抽出した。相補的アプローチとして、Gene Expression Omnibusウェブサイト(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/geo/)を介してアクセス可能な公的に利用可能な遺伝子発現研究から得られたデータを評価した。このような研究が利用される場合、関連する受託番号が参照される。いくつかの図において、本発明者らは、OSM指標(OSMi)を測定可能なものとして含めている。これは、データセット内の相対的なOSMおよびOSMR発現の積として計算される。サイトカインのシグナル伝達経路の潜在的な強さが、リガンドおよび受容体の相対存在量によって決定されるため(OSMおよびOSMRが1:1の化学量論と相互作用するため)、相対的なOSMiは、この受容体-リガンド対に潜在的な理論的シグナル伝達に対応する。
【0137】
ヒト単球分析
健常なヒトドナー由来の末梢血単球は、標準的なフィコール勾配遠心分離、続いてCD14+細胞について磁気活性化細胞選別(MACS)を用いて単離した。これは、通常、フローサイトメトリー分析に基づいて≧95%の単球純度をもたらした。単球は、10%ウシ胎仔血清を含むRPMI培地で培養した。具体的な処置は、図の説明に記載されている。単球反応は、分泌産物についてqPCR(mRNAについて)または酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)のいずれかによって評価した。
【0138】
ヒトCD4+T細胞分析
末梢血白血球は、フィコール勾配遠心分離を用いて健常なヒトの血液から単離した。次に、非CD4+T細胞は、MACSを用いて枯渇させ、残りの画分は、蛍光活性化細胞選別(FACS)を用いてナイーブCD4+CD45RA+CD45RO-CCR7+および記憶CD4+CD45RA-CD45RO+ヘルパーT細胞画分に精製した。T細胞を活性化し、抗CD3/抗CD28ビーズを用いて異なる極性化サイトカインの存在下で5~7日間増殖させた。使用した極性化サイトカインの組み合わせは以下の通りである:Th0(中性、サイトカインなし)、Th1(IFNγ+IL-12)、Th2(IL-4)、Th9(TGFβ+IL-4)、Th22(TNFα+IL-6)、Treg(TGFβ)、およびTh17(IL-1β+TGFβ+IL-6+IL-23)。IFNγおよび/またはIL-4に対する中和抗体を必要に応じてナイーブT細胞増殖に使用した。Th17条件のための基本培地はIMDM+5%ヒト血清であった;全ての他の条件のための培地はRPMI+5%ヒト血清であった。T細胞は、図の説明に示されるようにqPCRまたはフローサイトメトリーによって分析した。
【0139】
マウス
オックスフォード大学の認可された動物施設において、野生型C57BL/6、C57BL/6.Rag-/-、Il23rgfpレポーターマウス、およびC57BL/6.Osm-/-マウスを飼育し、特定の病原体のない条件下で維持した。C57BL/6.Osm-/-は、元々、Jackson Laboratory(ストック#022338)から得られた。すべての手順は、1986年の英国科学手順に従って行った。マウスは、ヘリコバクター(Helicobacter)種および他の公知の腸内病原体に対して陰性であり、年齢および性別が一致し、最初に使用されたときには6週間を超えていた。雄性と雌性マウスの両方を、すべての実験についてほぼ等しい割合で使用した。マウスを異なる処置に無作為化し、全ての処置を動物の所定のケージに示した。
【0140】
ヘリコバクター・ヘパチカス(Helicobacter hepaticus)/抗IL-10R大腸炎モデル
このT細胞依存性大腸炎のモデルは、大腸炎において生じる正常な免疫調節機能を損なうIL-10受容体(IL-10R)の抗体遮断と併せて共生細菌ヘリコバクター・ヘパチカス(Helicobacter hepaticus)(Hh)を用いてマウスに経口感染させることを伴う(Schiering and Krausgruber et al, Nature, 2014)。薬理学的または遺伝学的手段によるTNF、IL-6またはIL-1βの減弱は、このモデルにおいては無視できる程度の治療有効性を有し(未公開の観察および
図24)、これを抗TNF療法に対して感受性ではない高度処置難治性疾患のモデルとする。簡単には、6~12週齢のC57BL/6マウスは、実験の0日目および1日目に、22Gの湾曲した鈍い針で送達される経口胃管栄養法において、1×10
8コロニー形成単位(cfu)のHhが与えられる。IL-10R遮断抗体は、0日目および7日目に腹腔内(IP)1mg注射として投与する。マウスは、疾患の重症度のピークに対応する14日目に屠殺する。いくつかの実験において、マウスは、追加のOSMが疾患の経過に影響を及ぼし得るか否かを評価するために、組換えマウスOSM(7日目から13日目まで毎日、1μg(およそ0.04mg/kg相当)のIP注射)を追加的に投与された。これは、模擬処置としてPBS単独の注射を受けたマウスと比較した。他の実験において、マウスは、OSMR、gp130、およびマウスIgG2AのFc領域を組み込んだ組換えマウスOSM受容体融合タンパク質(O-RFP)を用いて処置した。O-RFPは、7日目から13日目まで2日ごとに150μg(およそ6mg/kg相当)のIP注射として投与した。対照処置として、マウスは、O-RFPと同じ条件で製造されたモル当量のIgG2A-Fcを用いて同じスケジュールに従って処置した。最後に、何匹かのマウスはまた、動物あたり1週間に600μgの合計投与量で抗TNFα中和抗体を用いて処置した。本発明者らの経験では、この投与量は、他のHh誘発性の大腸炎モデルにおいて疾患を完全に中和するのに十分である。
【0141】
微生物フローラは、前臨床研究の結果に大きな影響を及ぼし、動物と施設の間で変化する可能性があるため、すべての実験におけるマウスは、異なる処置群に無作為に割り振り、実験期間前とその期間中に共存させた。Osmノックアウトマウスを伴う実験において、ノックアウト動物を野生型の同腹仔と共存させ、比較した。最後に、治療実験とOsmノックアウト実験の両方を、異なる微生物叢、動物飼料および濃縮物を含む環境間の再現性を実証するために、2つの異なる動物収容施設において複製した。
【0142】
実験的大腸炎の組織学的評価
マウスは、記載されているように(Izcue et al, Immunity, 2008)、疾患の重症度について採点された。簡単には、近位、中位および遠位の結腸のホルマリン固定したパラフィン包埋切片をヘマトキシリンおよびエオシンで染色し、上皮肥厚および杯細胞枯渇、白血球浸潤、罹患した領域、および重篤な疾患活動の特徴の4つのパラメータについて0~3の尺度で等級分けされる。共通の重症度の特徴には、陰窩膿瘍形成、粘膜下白血球浸潤、および間質性浮腫が含まれる。各基準のスコアを加え、結腸切片あたり0~12の総合スコアを与える。3つの結腸領域からのデータを平均して、結腸炎症の総合スコアを得る。採点は、盲検で行われ、独立した盲検の観察者によって確認された。観察者間のピアソン相関係数は0.90~0.95の範囲であった。
【0143】
腸組織の調製および細胞の単離
マウス結腸をEDTAで洗浄して、上皮を除去し、コラゲナーゼVIIIで消化して、記載のように細胞集団を遊離させた(Uhlig et al, J. Immunol, 2006)。組織消化物は、30%/40%/70%のパーコール勾配による遠心分離によって分離した。30/40界面の細胞を間質/上皮富化画分として収集し、40/70界面の細胞を薄層特異性白血球富化画分として回収し、図の凡例に示されるように培養またはフローサイトメトリー分析のために調製した。エクスビボでの間質培養に関して、間質画分を記載されるように播種し、培養した(Schiering and Krausgruber et al, Nature, 2014)。
【0144】
ヒトの腸生検または外科的切除物は、最初に、粘液を除去するために1mMのDTT(ジチオスレイトール)溶液を用いて室温で15分間洗浄した。必要に応じて、外科的切除標本は、最初に、粘膜を下層組織から分離し、可能な限り多くの残留粘膜下組織を除去することによって調製した。次に、切除組織は、(HBSS(ハンクス平衡塩類溶液))中の0.75mMのEDTA(エチレンジアミン四酢酸)溶液において、それぞれ30分間室温で3回洗浄して、上皮細胞の大部分を除去した。残りの組織をHBSS中で洗浄して、残留EDTAを除去し、小片に切断し、RPMI培地+10%ウシ胎仔血清中の0.1mg/mlコラゲナーゼA溶液中で一晩消化した。生検調製について、組織は、少量の1mg/mlコラゲナーゼA溶液を用いて1時間のDTT洗浄の直後に消化した。全ての溶液は、記載されるように抗生物質を含有した(Owens et al, Front Immunol, 2013)。記載されるように、消化された細胞をろ過し、パーコール勾配により分離した(Geremia et al, J Exp Med, 2011)。以前に記載されたプロトコール(Owens et al, Front Immunol, 2013)に従って、間質細胞を播種し、培養した。
【0145】
統計
全ての統計は、Graphpad Prismソフトウェアを用いて計算した。パラメトリック分析とノンパラメトリック分析は、複数のテスト矯正とともに、適宜使用され、図の凡例に示される。全てのテストについてα=0.05である。特に明記しない限り、エラーバーを有する全ての棒グラフは、平均±標準誤差を表す。
【実施例1】
【0146】
強力な疾患としてのOSMの特定はIBDの前臨床モデルにおいて相関する
図1に示されるデータは、TNF(いくつかの成功したIBD薬物の標的、例えばインフリキシマブ)およびOSMを含む、IBDの機構的に異なるモデルにおいて、少数のサイトカインだけが一貫して過剰発現されることを実証する。DSSモデルは、腸粘膜を刺激し、ヒトUCに似た病理学を生じるデキストラン硫酸ナトリウムによる経口強制飼養を含む。TNBS(2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸)は、化学物質を直腸内に投与し、ヒトCDに似た病理学を生じる代替の化学的な大腸炎モデルである。最後に、Abcb1a
-/-マウスは、ヘリコバクター・ビリス(Helicobacter bilis)による腸内でのコロニー形成を促進する自発的な大腸炎を発症する。このモデルにおいて得られた大腸炎は、UCとCDの両方に類似した特徴を有する(Maggio-Price et al, Am J Path, 2002)。重要なことに、この分析に使用された各データセットは、異なる遺伝的背景を有する動物に由来し、異なる分析プラットフォームを伴う。したがって、OSMは、動物株または分析戦略とは独立して、ヒトIBDの全ての主要なサブタイプを代表する異なる作用機序を有する大腸炎モデルにおいて、再現可能であり、強く増加される。
【実施例2】
【0147】
Hh+αIL10R大腸炎モデルにおけるOSMおよびOSMR発現
図2に示されるデータは、Hh+αIL10Rモデルにおいて、OSMおよびその受容体OSMRの両方の発現が、mRNAレベルとタンパク質レベル(組織と糞便物質の両方で容易に検出可能)で大腸炎動物において増加することを実証している。OSM発現は、IL-1β、IL-6、およびTNFの発現と密接に相関しており、これは、OSMは、同時調節される炎症性サイトカインのコアグループの、以前には認識されていないメンバーであることを示唆している。
図3に示されるデータは、このモデルにおけるOSMおよびOSMR発現の誘導が、病理学的進行の動力学、および全体的な病理学的な重症度と相関することを実証している。したがって、OSMおよびOSMRの発現は、この状況では疾患と密接に関連している。
【実施例3】
【0148】
ヒトIBD腸粘膜におけるOSMおよびOSMR発現
図4に示されるデータは、OSM、OSMR、およびOSM指標が、大多数のIBD患者において活動性疾患中に腸粘膜において高度に富化されることを実証している。これは、疾患活動の内視鏡的と組織学的測定の両方に基づいて明らかである。特に、OSMおよびOSMR発現は、組織学的な疾患重症度の上昇と直接的に相関して増加する。
図5は、OSMが、腸粘膜炎症の公知のバイオマーカーである、ともに糞便タンパク質バイオマーカーカルプロテクチンを形成するS100A8およびS100A9の発現と密接に相関することを実証している。
図6は、OSMおよびOSMRの発現が、UC患者とCD患者の両方で同等であることを実証している。さらに、OSMはおそらく、IBDにおける古典的サイトカインファミリーのうちで最も一貫して過剰発現しているメンバーである。最後に、OSMおよびOSMRはともに、嚢胞性炎症が外科手術の一般的であり、問題のある合併症である、炎症性の回腸嚢肛門吻合部を有する患者の嚢組織に富化される(
図7)。
【実施例4】
【0149】
独立したIBDコホートにおけるOSMおよびOSMR発現
表1は、IBD患者対健常対照からの腸粘膜生検におけるOSMおよびOSMR発現の倍数変化および有意性をまとめたものである。全体として、表1は、UC、CD、および成人と小児IBDにわたる、地理的に異なる5つの患者群からのデータを示す。全試料サイズは、健常対照が118人であり、IBD患者が370人である。これらのデータは、OSMおよびOSMRが、異なる患者集団において高程度の再現性でIBD患者の腸粘膜において過剰発現されることを実証している。
【0150】
【実施例5】
【0151】
OSMおよびOSMRとIBDの臨床的特徴との相関
図8および
図9に示されるデータは、OSDおよびOSMRが、患者の性別、診断時の年齢、疾患の持続時間、または血清CRP(C-反応性タンパク質)などの全身性疾患バイオマーカーおよび末梢血白血球数にかかわらず、IBD患者の粘膜において同等レベルで発現することを実証している。この研究において患者に与えられた様々な処置クラスのうち、OSMとOSMRの発現は、外科的介入の高い必要性(ステロイド使用の増加傾向を伴う)だけに有意に関連し、これは、OSM経路の活性化が侵攻性の処置難治性疾患と関連することを示唆している(
図10)。総合すると、これらのデータは、OSMおよびOSMRが、血清CRPなどの従来のバイオマーカーよりも優れている可能性がある組織病理のマーカーであることを示唆している。さらに、OSMおよびOSMRの発現は、IBD患者の特定のサブグループに限定されない。
【実施例6】
【0152】
OSM経路はヒトIBDにおける抗TNFα療法に対する臨床的反応と関連する
図11、
図12および
図13に示されるデータは、腸粘膜におけるOSMおよびOSMRの高発現が、IBDにおけるゴールドスタンダードの生物療法(インフリキシマブ)に対する主要な非反応性を強く予測することを実証している。さらに、OSMは、臨床的に関心のある他のサイトカインよりも処置失敗のより強い予測因子であり、成功した抗TNFα療法後に再現性よく抑制される唯一のサイトカインのうちの1つである。特に、
図14は、OSMおよびOSMRが短期インフリキシマブ反応に関連するだけでなく、30週までの時点で持続的反応の予測因子でもあることを実証している。したがって、OSM、OSMRおよびOSM指標は、現行のレジメン、特に抗TNFα療法による治療結果を予測するため有用なバイオマーカーであり得る。さらに、OSMは、抗TNF難治性患者に対する治療標的として役立つ可能性がある。
【実施例7】
【0153】
OSMはIBDにおける混合Th17/Th1サイトカイン特性と関連して発現される
混乱したTh1およびTh17のTヘルパー細胞活性は、IBDの病因にとって重要であると考えられる。
図15および
図16のデータは、OSMおよびOSMRの発現が、i)Th17発生に寄与するサイトカイン(IL6、IL1B、IL23)、またはii)Th1および/もしくはTh17細胞によって産生されるサイトカイン(IL17A、IFNG、CSF2、IL22)の発現に密接に関連することを実証している。これは、複数のコホートおよびIBDの全てのサブタイプにおいて一貫している。したがって、OSMは、ヒトの腸における病原性免疫反応であると考えられるものと関連して発現される。
【実施例8】
【0154】
OSMは細菌により刺激されたヒト単球によるTh17極性化サイトカインと結合して発現される
単球を含む抗原提示細胞は、ナイーブCD4
+T細胞の活性化および分化に対して、ならびに記憶CD4
+T細胞の再刺激において重要である。抗原提示との関連で上記細胞が発現するサイトカインは、分化経路の主要な決定因子であり、したがって、ヘルパーT細胞のエフェクター機能である。
図17のデータは、OSM発現が、種々の細菌分子、および病原性と共生種の両方を含む、ヒト粘膜表面上に見出される多様な属を表す広範囲の全細菌への曝露により、ヒト単球によって強く誘導されることを示す。
図18は、OSMは、細菌チャレンジ後の単球においてTh17極性化サイトカインであるIL-6、IL-1β、およびIL-23に関連して発現されることを実証している。さらに、OSMは、強力なTh17誘発能を有する、ヒト腸に見出される抗原提示細胞サブタイプによって高度に発現される。まとめると、これらのデータは、微生物による刺激に曝露された場合、ヒト抗原提示細胞によって強く誘導されるTh17誘導経路の以前には未知である成分としてOSMを暗示し、プロセスは、IBD患者の腸組織において増加したレベルで生じると考えられる。
【実施例9】
【0155】
OSMはヒト記憶CD4
+T細胞において発現される
図19のデータは、OSMが、刺激後にCD4
+T細胞によってmRNAおよびタンパク質レベルで発現されることを実証している。さらに、休止CD4
+T細胞は検出可能なOSMRを発現しないが、活性化するとOSMR発現を誘導する。OSM発現は、主として、記憶(CD45RO
+)細胞の特徴である。したがって、CD4
+T細胞は、ヒトにおけるOSMの起源と潜在的標的細胞の両方である。
【実施例10】
【0156】
OSMはヒトTh17の分化および増殖を促進する
図20のデータは、Th17極性化されたCD4
+T細胞が上昇したレベルのOSMRを発現し、OSMがTh17条件下で活性化されたナイーブCD4
+T細胞の増殖を増強することを示す。CFSE(カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル)およびPI(ヨウ化プロピジウム)染色は、これが増殖よりむしろ細胞生存の増強に起因するものであることを示唆する(図示しない)。OSMは、Th17細胞におけるマスターTh2転写因子GATA3、および特性Th2サイトカインIL-4の発現を抑制し、したがって、結果として生じるTh17表現型の純度を高める。さらに、OSMは、Th17細胞におけるIL-23受容体の発現を増強し、IL-23依存性の病原性機能をより発症し易くする可能性がある。これらのデータは、OSMがヒトにおける病原性Th17反応を増強する上で重要な役割を果たす可能性があることを示唆している。
【実施例11】
【0157】
OSMはインビボでの侵襲性大腸炎に必要である
図21および
図22のデータは、OSMの遺伝子欠損を有するマウスにおいて、Hh+αIL10R大腸炎プロトコールが、野生型の同腹仔対照と比較して、実質的に弱毒化された疾患をもたらすことを実証している。これは、組織学的評価(上皮/杯細胞の破壊および白血球浸潤を含む)の全ての主要なパラメータについて明らかであるが、これは、膿瘍形成、粘膜下の炎症および間質性浮腫などの重症な疾患兆候のレベルで特に明らかである。さらに、OSMの非存在は、抗炎症性サイトカインIL-10の誘導を損なうことなく、腸における他の炎症性サイトカイン、特にIL-6およびIL-1βの発現を減弱させる。したがって、OSMは、IL-6などのより古典的な前炎症性経路の上流の駆動源であるようであるが、有益な免疫調節経路の誘導には必要ではない。重要なことに、複数のリンパ系および末梢器官の詳細な検査により、Osm
-/-マウスが定常状態で明白な免疫学的表現型を示さず、腸構造も異常ではないことが明らかにされた(未公開、図示しない)。さらに、Osm
-/-および野生型の同腹仔は、腸内で同等のH.ヘパチカス(H. hepaticus)のコロニー形成を示し、これは、この大腸炎モデルにおけるOsm欠失の保護効果が、細菌の取り扱いの変更によるものではないことを実証している(未公開、図示しない)。
【実施例12】
【0158】
新規マウスOSM遮断試薬であるO-RFPの中和効率
図23のデータは、インビトロでマウスOSMを中和するO-RFP能(方法および
図23の説明を参照)を実証している。このタンパク質は、市販のポリクローナル抗血清と比較して優れた中和能を有する。
【実施例13】
【0159】
治療的OSM遮断はインビボで大腸炎を弱める
図24のデータは、確立された大腸炎を有するマウスにおけるO-RFPを用いたOSMの治療的遮断(Hh+αIL10Rプロトコールの7日目に開始された処置)が、内視鏡的と組織学的基準の両方によって決定される疾患重症度を低下させることを実証している。この治療効果は、TNF遮断よりも優れている。OSMノックアウトマウスから得られた結果と一致して(実施例11参照)、これらの実験における最も明白なOSM依存性パラメータは、重症な疾患特徴の兆候であった。さらに、5人の異なるヒトCD患者由来の腸粘膜外植片培養物中の特定のモノクローナル抗体を用いたヒトOSMの遮断は、IL-1β発現の低下によって示されるように組織炎症を有意に減弱させる。この効果はインフリキシマブに匹敵する。総合すると、これらのデータは、OSMがIBD、特に抗TNF療法に耐性のある侵攻性疾患の表現型に対して潜在的に価値のある臨床標的であることを示唆している。
【0160】
したがって、IBDに対する治療的介入との関連でOSMの標的化は有効な戦略である。
【実施例14】
【0161】
OSMは造血集団によって広く発現されるが、非造血系間質細胞は腸内の主要なOSM反応性細胞型である
図25のデータは、野生型マウスにおいて、腸におけるOSM産生が、CD4
+T細胞および抗原提示細胞などの様々な白血球サブタイプに起因し得ることを示す。特に、OSMRの最高発現レベルは、腸間質細胞および内皮細胞上で観察される。対照的に、OSMRは、造血集団および上皮細胞において非常に低いレベルで発現される。
図26のデータは、ヒト腸細胞集団においても同様の結果を示し、この場合、フローサイトメトリー分析によるOSMR染色は、間質細胞とより少ない程度で内皮細胞だけを含む制限された染色パターンを示す。OSMR
+間質細胞はまた、免疫学的に活性な「リンパ系組織様」間質集団のマーカーであるgp38およびICAM-1を有する(Owens, Front Immunol, 2015)。この間質細胞サブセットは、組織の内皮細胞数を実質的に上回っているため、本発明者らは、gp38
+ICAM-1
+間質細胞がマウスとヒトの腸の両方において優性のOSM反応性細胞型であると結論付ける。予期した通り、ヒト腸組織におけるOSMタンパク質発現についての染色は、T細胞および抗原提示細胞を含む多様な造血集団による産生を示した(図示しない)。
【実施例15】
【0162】
腸間質細胞はOSMに対して高度に反応性である
図27に示されるデータは、他のサイトカイン受容体と比較して、OSMRが初代ヒト腸間質細胞によって高レベルで発現されることを実証している。同様に、OSMRのヘテロ二量体パートナー(gp130)は非常に高度に発現される。対照的に、OSMRファミリーの他の受容体であるIL-6受容体およびLIF受容体などは低レベルで発現される。高いOSMR/gp130発現と一致して、OSMは、腸間質細胞の多様な経路を介して迅速であり、強力なシグナル伝達反応を刺激するが、IL-6に対する反応は非常に低い。したがって、OSMは、腸間質細胞生物学に関して、そのファミリーの重要なメンバーであると考えられる。
【実施例16】
【0163】
腸間質細胞および内皮細胞はインビボでOSMによって調節される
図28のデータは、i)腸間質細胞および内皮細胞が活性化され(ICAM-1表面発現に基づく)、マウス大腸炎中に増強された増殖を示し、ii)OSMが、Hh+αIL10R大腸炎の経過中に全身投与された場合、それらの活性化および増殖をさらに促進することを示す。全身性OSM処置はまた、悪化した白血球動員および悪化した組織学的疾患の重症度を特徴とする、より強い大腸炎表現型をもたらす(図示しない)。マウスをHh+αIL10R大腸炎に供した場合、O-RFPを用いたOSM遮断は、内皮細胞とgp38
+ICAM-1
+間質細胞の両方の表面上のICAM-1の蓄積を有意に減弱させる。OSMノックアウトマウスを用いて同様の結果が観察される(図示しない)。したがって、OSMは、インビボでの間質/内皮集団の炎症活性化状態を調節し、OSMが大腸炎の重症度を促進する重要な機序であり得る。
【実施例17】
【0164】
OSMはTNFとの相乗作用においてマウス腸間質細胞におけるサイトカインおよびケモカイン発現を活性化する
図29のデータは、エクスビボで培養されたマウス結腸の腸間質細胞がOSMに反応性であり、OSM刺激に反応していくつかの関連する炎症性因子を発現することを実証している。特に、細胞がOSMおよびTNFと共刺激されると、いくつかの反応遺伝子が非常に高レベルで誘導され、これは、OSMおよびTNFが腸内で機能性の炎症を促進する軸を構成することを示唆している。腸間質細胞はOSMに対して高度に反応性であるが、OSM:IL-6およびLIFの最も近い同族体にほとんど反応しない。
【実施例18】
【0165】
ヒト腸間質細胞のOSM刺激は臨床的に関連する炎症性徴候の活性化を誘発する
図30~33は、OSMが、IBD患者の大きなコホートにおけるサイトカインおよびケモカインの個別の群と密接に相関することを示す(
図30)。この遺伝子特性の富化は、一般的に、深い腸潰瘍などの重症疾患の特徴を有する患者を示し、インフリキシマブに対して難治性の患者において富化される。T細胞および骨髄細胞の動員および保持に関連する様々な生物学的機能を実行する特性中のいくつかの遺伝子は、腸間質細胞における様々な動力学を用いてOSMによって直接的に調節される(
図31)。マウス間質細胞と同様に、本発明者らは、特に、Th1細胞動員を促進するケモカイン(CXCL9/10/11)に関して、OSMとTNFの間の機能的相乗作用の明らかな証拠を観察する(
図32)。本発明者らは、OSMとIL-1βの間に同様の相乗作用を観察する(
図33)。特に、腸間質細胞に対するOSMの効果は、LIFR経路によって媒介されず、これは、gp130-OSMRヘテロ二量体が腸間質細胞において、関連するOSM受容体複合体であることを示している(
図31B)。
図34に示されるデータは、いくつかのドナー由来の初代腸間質培養を用いて、OSMが臨床発現特性において見出されるいくつかの遺伝子の発現を直接調節することを確認するが(
図30)、IL-6は、概して非常に弱い効果を有する。まとめると、これらのデータは、腸内のOSM/OSMR軸の重要な局面が、腸組織における白血球浸潤および保持の増加、および炎症の治癒の遅延の可能性がある結果とともに、ケモカインおよびサイトカイン産生の増大を含む炎症性間質の活性化を維持または増幅する可能性であることを示す。
【0166】
OSMRは、様々なレベルでいくつかの細胞型によって発現され、したがって、OSMは多面発現効果を発揮する。例えば、OSMRは、内皮細胞および間葉系間質細胞、例えば、腸内に存在するものによって、健常な条件下で高度に発現される。OSMRレベルはまた、これらの細胞型における炎症中に増加し得る。これらの細胞型のOSM刺激は、ICAM-1などの白血球接着受容体の発現/活性化、増殖の増加、ならびにIL-6およびCCL2などの前炎症性サイトカインまたはケモカインの発現を含む様々な反応を生じる。間質系集団の異常な活性化および数的な増殖は、病原性線維症の重要な側面であり、したがって、OSM-OSMRシグナル伝達は、クローン病において観察されるものなどの有害な線維性反応を促進し得る。同様に、これらの細胞型におけるサイトカイン/ケモカイン産生、増殖および接着受容体発現を促進するその能力により、OSMは、組織の血管新生、白血球の動員および保持、ならびに局所的炎症過程を増強することができる。さらに、直接的または間接的にOSMによる上皮増殖の増強は、慢性腸炎に関連する重症な有害事象である異形成および新生組織形成の発症を促進し得る。
【0167】
造血細胞型は、一般的に、定常状態の条件下で高レベルのOSMRを発現しない。しかしながら、OSMR発現は、細胞が適切な刺激に曝露された場合に、これらの細胞型において誘導性である。T細胞の場合、OSMR発現は、IL-6などの適切な極性化サイトカインと組み合わせたT細胞受容体(TCR)を介した活性化を必要とする。IL-6は、IBD、多発性硬化症、関節炎、乾癬および癌を含む様々な障害における病原性炎症反応を促進すると考えられる炎症性Th17 CD4+T細胞の発生にとって重要である。Th17極性化条件下で活性化されると、CD4+T細胞は、OSMの存在下でより効率的に増殖し(数が増加し)、Th2細胞の産物であるサイトカインIL-4などの別の極性化状態に関連する低レベルの遺伝子を発現する。炎症を起こしたヒトの腸において、OSMは、IL-6およびIL-1βを含むTh17の発生を促進することが知られているサイトカインと一緒になって発現される。興味深いことに、T細胞は、活性化すると高レベルのOSMを発現するが、刺激された抗原提示細胞との相互作用と関連して起こるように、これはOSMの外因性供給源の曝露によってさらに増強される。したがって、OSMは、Th17駆動による免疫反応の増大を介して病原性炎症に寄与し得る。
【0168】
T細胞と同様に、単球などの単核食細胞は、安静中にOSMR発現が低レベルであるが、細菌全体または精製された細菌分子などの活性化刺激に曝露されると、OSMRを10~100倍増加させることがある。それらはまた、活性化の際に高レベルのOSMを産生する。腸組織からの観察と一致して、微生物刺激された単球によるOSM発現は、IL-6、IL-1βおよびIL-23などのTh17極性化サイトカインの発現と高度に相関する。さらに、OSMを用いた細菌により刺激された単球の刺激は、IL-23などの炎症性サイトカインの発現を増加させることができる。
【0169】
したがって、まとめると、ヒト組織、インビトロ実験、および前臨床インビボモデルの分析に基づくいくつかの系統の証拠は、OSMが広範囲に作用して、特に、微生物刺激が顕著である粘膜表面と関連して、IBDおよび他の胃腸障害などの病原性炎症を促進することができるという概念を支持する。この研究で用いられた一次インビボ大腸炎モデル(Hh+αIL10R)は、TNF遮断(ならびにIL-6およびIL-1βの遮断)に難治性であるため、OSMは、生物学的療法が現在承認されていない患者にとって特に価値のある臨床標的であり得る。
本発明は、以下の実施形態を包含する。
1.個体における慢性腸炎および/または炎症性腸疾患(IBD)を処置または予防する方法であって、オンコスタチン-M(OSM)および/またはOSM受容体-β(OSMR)のアンタゴニストを前記個体に投与し、それにより前記個体における慢性腸炎および/またはIBDを処置または予防することを含む方法。
2.前記アンタゴニストが、Th17 CD4+T細胞またはTh17経路の発生を阻害する、上記1に記載の方法。
3.個体における慢性腸炎および/またはIBDを診断または予後診断する方法であって、個体におけるOSMおよび/またはOSMRを測定し、それにより個体における慢性腸炎および/またはIBDを診断または予後診断することを含む方法。
4.前記個体におけるOSMおよびOSMRを測定すること、前記OSMおよびOSMRレベルを参照OSMおよびOSMRレベルまたは参照試料のOSMおよびOSMRレベルと比較すること、ならびにOSMインデックス(OSMi)を決定することを含む、上記3に記載の方法。
5.慢性腸炎および/またはIBDから寛解した個体が再発するか否かを予測する方法である、上記3に記載の方法。
6.参照試料もしくは参照レベルと比較した、または参照試料もしくは参照レベルを用いて計算した、OSM、OSMR、および/またはOSMiレベルの上昇が、陽性の診断、陰性の予後診断、および/または前記個体が再発することを示す、上記3~5のいずれかに記載の方法。
7.参照試料もしくは参照レベルと比較した、または参照試料もしくは参照レベルを用いて計算した、OSM、OSMR、および/またはOSMiレベルの低下が、陰性の診断、陽性の予後診断、および/または前記個体が再発しないことを示す、上記3~5のいずれかに記載の方法。
8.前記個体が、上記3~6のいずれかに記載の方法に従って診断または予後診断されている、上記1に記載の慢性腸炎および/またはIBDを処置または予防する方法。
9.個体における慢性腸炎および/またはIBDを処置または予防する方法であって、(a)上記3~6のいずれかに記載の方法に従って前記個体における慢性腸炎および/またはIBDを診断または予後診断すること;ならびに(b)慢性腸炎および/またはIBDの処置に有用な薬剤を前記個体に投与することを含む方法。
10.前記薬剤が、OSMおよび/またはOSMRのアンタゴニストである、上記9に記載の方法。
11.前記アンタゴニストが、OSMまたはOSMRの活性または発現のアンタゴニストである、上記1、8および9のいずれかに記載の方法。
12.前記アンタゴニストが、抗OSM抗体もしくは抗OSMR抗体、またはOSMもしくはOSMR融合タンパク質である、上記11に記載の方法。
13.(i)慢性腸炎および/またはIBDを有する、または有すると疑われる、または発症するリスクがある個体におけるOSMおよび/またはOSMRのレベルを決定するための手段;ならびに
(ii)慢性腸炎および/またはIBDを処置または予防するための薬剤
を含有する製品。
14.個体が抗腫瘍壊死因子α(TNFα)療法に反応するか否かを予測するための方法であって、前記個体においてOSMおよび/またはOSMRを測定し、それにより前記個体が前記抗TNFα療法に反応するか否かを予測することを含む方法。
15.前記抗TNFα療法が抗TNFα抗体による処置である、上記14に記載の方法。
16.前記抗TNFα抗体が、インフリキシマブ、アダリムマブ、セトリズマブまたはゴリムマブである、上記15に記載の方法。
17.参照試料もしくは参照レベルと比較した、または参照試料もしくは参照レベルを用いて計算した、OSM、OSMR、および/またはOSMiレベルの低下が、前記個体が前記抗TNFα療法に反応することを示す、上記14~16のいずれかに記載の方法。
18.前記個体の処置のために抗TNFα療法を選択または推奨することをさらに含む、上記17に記載の方法。
19.前記抗TNFα療法が、前記個体に対する第一選択の処置方法として選択または推奨される、上記18に記載の方法。
20.前記個体に抗TNFα療法を施すことをさらに含む、上記18または上記18に記載の方法。
21.参照試料もしくは参照レベルと比較した、または参照試料もしくは参照レベルを用いて計算した、OSM、OSMR、および/またはOSMiレベルの上昇が、前記個体が、前記抗TNFα療法に反応しないことを示す、上記13~15のいずれかに記載の方法。
22.前記個体の処置のために抗TNFα療法以外の治療的処置を選択または推奨することをさらに含む、上記20に記載の方法。
23.前記個体に抗TNFα療法以外の治療的処置を施すことをさらに含む、上記21に記載の方法。
24.抗TNFα療法以外の前記治療的処置が抗炎症剤の投与である、上記22に記載の方法。
25.前記抗炎症剤がコルチコステロイドである、上記23に記載の方法。
26.個体におけるTNFα媒介性疾患または状態を処置または予防する方法であって、前記個体にTNFαアンタゴニストを投与し、それにより前記TNFα媒介性疾患または状態を処置または予防することを含み、前記個体が、上記13~18のいずれかに記載の方法に従って前記TNFαアンタゴニストに反応することが予測されている、方法。
27.TNFα媒介性疾患、慢性腸炎および/またはIBDを有する、または有すると疑われる、または発症するリスクがある個体におけるOSMおよび/またはOSMRのレベルを測定するためのアッセイであって、前記個体由来の生物学的試料をOSMまたはOSMRに結合する薬剤と接触させること、前記薬剤とOSMまたはOSMRの間の複合体形成を測定すること、場合によりOSMiを計算すること、前記測定された値またはOSMi値を参照値と比較し、それによりTNFα媒介性疾患を有する前記個体が抗TNFα療法に反応するか否かを予測すること、または前記個体における慢性腸炎および/またはIBDを診断または予後診断することを含むアッセイ。
28.(a)TNFα媒介性疾患、慢性腸炎および/またはIBDを有する個体由来の生物学的試料におけるOSMおよび/またはOSMRのレベルを定量するための測定モジュール;
(b)前記測定モジュールから出力されたデータ、ならびに参照および/または対照データを記憶するように構成された記憶モジュール;
(c)前記測定モジュールから出力されたデータ、ならびに前記参照または対照データの値をコンピュータ計算するように構成されたコンピュータ計算モジュール;ならびに
(d)出力データの値に基づいて、TNFα媒介性疾患を有する前記個体が、前記個体の処置のための抗TNFα療法もしくは推奨療法に反応するか否かの予測、または慢性腸炎および/もしくはIBDを有する前記個体についての診断もしくは予後診断を表示するように構成された出力モジュール
を含むシステム。
29.前記個体由来の生物学的試料について実施される、上記2~6および13~24のいずれかに記載の方法。
30.前記生物学的試料が、血液試料、血清試料、便試料、腸生検、または外科的切除試料である、上記26に記載のアッセイ、上記27に記載のシステム、または上記28に記載の方法。
31.前記生物学的試料が血清試料である、上記29に記載のアッセイ、システムまたは方法。
32.上記2~6、13~24および28~30のいずれかに記載の方法において使用するための試験キットであって、前記個体におけるOSMおよび/またはOSMRのレベルを決定するための手段、ならびに前記方法において使用するための指示書を含む試験キット。
33.前記個体が慢性腸炎、自己免疫疾患または炎症性疾患を有する、上記13~31のいずれかに記載の方法、アッセイ、システムまたは試験キット。
34.自己免疫疾患または炎症性疾患がIBDである、上記32に記載の方法、アッセイ、システムまたは試験キット。
35.前記IBDが結腸直腸癌に関連する、上記1~12、26~31および33のいずれかに記載の方法、製品、アッセイ、システムまたは試験キット。
36.前記IBDがクローン病(CD)または潰瘍性大腸炎(UC)である、上記1~12、26~31、33および34のいずれかに記載の方法、製品、アッセイ、システムまたは試験キット。
37.前記CDが結腸CDまたは回腸CDである、上記35に記載の方法、製品、アッセイ、システムまたは試験キット。
38.前記個体が哺乳動物である、上記1~37のいずれかに記載の方法、製品、アッセイ、システムまたは試験キット。
39.前記哺乳動物がヒトである、上記37に記載の方法、製品、アッセイ、システムまたは試験キット。
40.慢性腸炎および/またはIBDを有する個体が手術を必要とする可能性を決定する方法であって、前記個体においてOSMおよび/またはOSMRを測定し、それにより個体が手術を必要とする可能性を決定することを含む方法。
【配列表】