(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】振れ補正機能付き光学ユニット
(51)【国際特許分類】
G03B 5/00 20210101AFI20220111BHJP
G03B 30/00 20210101ALI20220111BHJP
【FI】
G03B5/00 J
G03B30/00
(21)【出願番号】P 2018012984
(22)【出願日】2018-01-29
【審査請求日】2020-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【氏名又は名称】青山 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100104204
【氏名又は名称】峯岸 武司
(72)【発明者】
【氏名】南澤 伸司
【審査官】藏田 敦之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-016112(JP,A)
【文献】特開2017-016114(JP,A)
【文献】国際公開第2010/044212(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 5/00 - 5/06
G02B 7/02 - 7/16
H04N 5/222- 5/257
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定体と、光学素子を有する可動体と、前記固定体に対して前記可動体を揺動可能に支持する揺動支持機構と、前記可動体を揺動させる振れ補正用駆動機構とを備え、
前記可動体に、最大揺動時に前記固定体の第1ストッパ部に当接する第1当接部と、前記光学素子の光軸方向への移動時に前記固定体の第2ストッパ部に当接する第2当接部とが設けられ、
前記第2ストッパ部と前記第2当接部とは、前記可動体の揺動時に接触しない間隔をあけて離間しているとともに、これらの前記光軸方向に沿う離間距離は、前記第1当接部と前記固定体との間の前記光軸方向に沿う離間距離より小さく設定されて
おり、
前記第2当接部及び前記第2ストッパ部のそれぞれの対向部は、前記可動体の揺動支点を中心とする円弧面に形成され、
前記可動体は、前記光学素子を有する光学モジュールと、該光学モジュールにおける前記光軸方向の被写体側に設けられ、前記可動体の前記光軸方向における重心位置を調整するための重心調整部材とを備えており、前記重心調整部材に前記第2当接部が設けられている
ことを特徴とする振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項2】
前記第2当接部及び前記第2ストッパ部は、被写体側に向かうにしたがって光軸側に接近する方向に傾斜する傾斜面に形成されていることを特徴とする請求項1記載の振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項3】
前記第2当接部及び前記第2ストッパ部は前記光軸周りの周方向に沿う環状に設けられていることを特徴とする請求項1
又は2に記載の振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項4】
前記第2当接部及び前記第2ストッパ部は、前記振れ補正用駆動機構による最大揺動時において、少なくとも一部が前記光軸方向に重なって配置されていることを特徴とする請求項1から
3のいずれか一項記載の振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項5】
前記振れ補正用駆動機構は磁石とコイルとにより構成され、これら磁石とコイルとの一方が前記固定体に設けられ、いずれか他方が前記可動体に設けられ、前記第1当接部は、前記可動体に前記磁石又は前記コイルを保持するための保持部材に設けられることを特徴とする請求項1から
4のいずれか一項記載の振れ補正機能付き光学ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ付き携帯端末等に搭載される光学モジュールの振れ補正を行う振れ補正機能付き光学ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯端末、ドライブレコーダ、無人ヘリコプター等に搭載される撮像装置等の光学機器に用いられる光学ユニットにおいては、振れによる撮影画像の乱れを抑制するために、振れを打ち消すように光学モジュールを揺動させて振れを補正する機能が開発されている。この振れ補正機能においては、光学機器の筐体からなる固定体に対して、光学素子を備える光学モジュールを揺動可能に支持し、その光学モジュールを振れ補正用駆動機構により振れに応じて揺動させる構成が採用されている。
その振れ補正用駆動機構は、磁石とコイルとを備え、磁石の磁場内でコイルに電流を流すことにより光学モジュールに電磁力を作用させて駆動する構成とされている。
【0003】
そして、例えば特許文献1では、光学モジュールの光軸方向の後側に設けたピボットによって光学モジュールを揺動可能に支持し、ピボットを中心に光学モジュール(可動体)を揺動させることにより振れを補正する構成が提案されている。
一方、光学モジュールをジンバル機構によって揺動可能に支持する構成も提案されており、特許文献2では、光軸方向に対して直交する二方向に支点を設けた板状ばねを用いたジンバル機構が開示されている。
【0004】
ところで、この種の振れ補正機能付き光学ユニットにおいて、振れに応じて揺動する光学モジュールを備えた可動体が過度に揺動すると、ジンバル機構等の変形が生じて、その後の動作に支障が生じることがある。
そこで、特許文献2では、可動体の揺動許容範囲を規制するストッパが設けられている。この場合、コイルを保持するホルダの上端に上方に突出するように凸部が設けられるとともに、そのホルダ等を覆う固定体のカバーの裏面にクッション部材が設けられており、このクッション部材がホルダの凸部の上方に配置されることにより、可動体としてのホルダが揺動した際に、ホルダの凸部がクッション部材に当接して揺動許容範囲が規制される構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009‐294393号公報
【文献】特開2016‐61958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、可動体の揺動許容範囲としては、振れ補正用駆動機構の無励磁(コイルに電流を流していない状態)の際の姿勢に対して、例えば±10°に設定されるが、特許文献2記載のストッパ構造では、ホルダの凸部とカバーのクッション部材との間に、その揺動許容範囲に相当する光軸方向の高さ分の距離として、例えば1mm~2mm程度の隙間を開けておく必要がある。
この隙間が大きいため、落下衝撃等の際に、光学モジュールを備える可動体が隙間の距離だけ光軸方向に飛び出すおそれがある。このため、可動体がその前方に配置される固定体のカバーガラスに衝突しないように、これらのクリアランスを大きくしておく必要があり、装置が大型化する傾向にある。また、そのクリアランスが大きい分、ジンバル機構の撓み量も大きくなり、耐久性を損なうおそれもある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、揺動許容範囲を確実に規制しつつ、落下衝撃等の際の可動体の光軸方向の移動を小さくして、小型化を図るとともに、耐久性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の振れ補正機能付き光学ユニットは、固定体と、光学素子を有する可動体と、前記固定体に対して前記可動体を揺動可能に支持する揺動支持機構と、前記可動体を揺動させる振れ補正用駆動機構とを備え、前記可動体に、最大揺動時に前記固定体の第1ストッパ部に当接する第1当接部と、前記光学素子の光軸方向への移動時に前記固定体の第2ストッパ部に当接する第2当接部とが設けられ、前記第2ストッパ部と前記第2当接部とは、前記可動体の揺動時に接触しない間隔をあけて離間しているとともに、これらの前記光軸方向に沿う離間距離は、前記第1当接部と前記固定体との間の前記光軸方向に沿う離間距離より小さく設定されており、前記第2当接部及び前記第2ストッパ部のそれぞれの対向部は、前記可動体の揺動支点を中心とする円弧面に形成され、前記可動体は、前記光学素子を有する光学モジュールと、該光学モジュールにおける前記光軸方向の被写体側に設けられ、前記可動体の前記光軸方向における重心位置を調整するための重心調整部材とを備えており、前記重心調整部材に前記第2当接部が設けられている。
【0009】
落下等により衝撃が加わった際に可動体が光軸方向に移動しようとすると、可動体の第2当接部が固定体の第2ストッパ部に当接することにより、可動体の移動を小さい距離に規制することができ、揺動補正時は、可動体の第1当接部が固定体の第1ストッパ部に当接することにより、その揺動許容範囲を規制することができる。この揺動補正時において、第2当接部と第2ストッパ部とは接触しないので、可動体の揺動を阻害しない。
そして、第2ストッパ部と第2当接部との光軸方向に沿う離間距離を第1当接部と固定体との間の光軸方向に沿う離間距離より小さく設定したので、第2ストッパ部と第2当接部とを設けない場合に比べて、可動体の光軸方向の移動を小さくすることができ、その分、光軸方向の全体寸法を小さくして、小型化を図ることができる。
また、第2当接部と第2ストッパ部との間の距離が揺動補正中に一定にできるので、その離間距離をさらに小さくすることが可能である。
また、重心調整部材により、可動体の重心と揺動中心とを一致もしくは接近させることができ、効率的に可動体を揺動させることができる。また、この重心調整部材に第2当接部を設けたので、光学モジュールに第2当接部を設ける場合に比べて、衝撃時の光学モジュールへの影響を低減することができる。
【0010】
本発明の振れ補正機能付き光学ユニットの好ましい実施形態として、前記第2当接部及び前記第2ストッパ部は、被写体側に向かうにしたがって光軸側に接近する方向に傾斜する傾斜面に形成されているとよい。
【0011】
光軸方向の被写体側から視たときに、第2ストッパ部により第2当接部が隠れるので、これらの間からのゴミ等の異物が侵入することを防止できる。
【0014】
本発明の振れ補正機能付き光学ユニットの好ましい実施形態として、前記第2当接部及び前記第2ストッパ部は前記光軸周りの周方向に沿う環状に設けられているとよい。
可動体がどの方向に揺動したとしても、その移動範囲を適切に規制することができる。
第2当接部及び第1ストッパ部を傾斜面とすれば、光軸方向の被写体側から視たときに、固定体の第2ストッパ部により可動体の第2当接部の全周が隠れるので、意匠性に優れ、かつ、ゴミ等の異物の侵入を確実に防止できる。
【0015】
本発明の振れ補正機能付き光学ユニットの好ましい実施形態として、前記第2当接部及び前記第2ストッパ部は、前記振れ補正用駆動機構による最大揺動時において、少なくとも一部が前記光軸方向に重なって配置されているとよい。
【0016】
振れ補正による揺動時に、光軸方向に外力が作用した場合でも、第2当接部が第2ストッパ部に当接するので、可動体の移動範囲を適切に規制することができる。
【0019】
本発明の振れ補正機能付き光学ユニットの好ましい実施形態として、前記振れ補正用駆動機構は磁石とコイルとにより構成され、これら磁石とコイルとの一方が前記固定体に設けられ、いずれか他方が前記可動体に設けられ、前記第1当接部は、前記可動体に前記磁石又は前記コイルを保持するための保持部材に設けられる。
【0020】
可動体において振れ補正用駆動機構のコイル又は磁石を保持する部材が第1当接部を兼用するので、別途第1当接部を設ける場合に比べて部品点数を少なくできる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、揺動許容範囲を確実に規制しつつ、落下衝撃等の際の可動体の光軸方向の移動を小さくして、小型化を図るとともに、耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1実施形態の振れ補正機能付き光学ユニットの組立状態の斜視図である。
【
図2】第1実施形態の振れ補正機能付き光学ユニットの平面図である。
【
図3】第1実施形態の振れ補正機能付き光学ユニットの側面図である。
【
図4】第1実施形態の振れ補正機能付き光学ユニットの分解斜視図である。
【
図5】第1実施形態の振れ補正機能付き光学ユニットにおける可動体の可動体の斜視図である。
【
図6】第1実施形態の振れ補正機能付き光学ユニットの要部の被写体側から視た分解斜視図である。
【
図7】
図6に対して反対側から視た分解斜視図である。
【
図8】第1実施形態の振れ補正機能付き光学ユニットにおけるジンバル機構及びホルダフレームを示す斜視図である。
【
図11】
図9の要部の拡大断面図であり、(a)は無励磁状態、(b)は可動体の最大揺動時の状態を示す。
【
図12】
図11に対して、(a)は可動体の光軸方向移動時、(b)は可動体が光軸と直交する方向に移動した状態を示す。
【
図13】本発明の第2実施形態の振れ補正機能付き光学ユニットにおける
図11(a)同様の断面図である。
【
図14】
図13に示す状態に対して、(a)は可動体の最大揺動時の状態、(c)は可動体が光軸方向に移動した状態を示す断面図である。
【
図15】重心調整部材の取り付けの変形例を示す
図11(a)同様の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る振れ補正機能付き光学ユニットの実施形態について図面を参照しながら説明する。
以下の説明では、互いに直交する3方向を各々X軸方向、Y軸方向、Z軸方向とし、静置状態においては、Z軸方向に光軸L(レンズ光軸/光学素子の光軸)が配置されるものとする。また、各方向の振れのうち、X軸周りの回転は、いわゆるピッチング(縦揺れ)に相当し、Y軸周りの回転は、いわゆるヨーイング(横揺れ)に相当する。また、X軸方向の一方側には+Xを付し、他方側には-Xを付し、Y軸方向の一方側には+Yを付し、他方側には-Yを付し、Z軸方向の一方側(被写体側/光軸方向前側)には+Zを付し、他方側(被写体側とは反対側/光軸方向後側)には-Zを付して説明する。また、
図1~
図8では、Z軸の一方+Zを上方に向けて配置した状態を静置状態とする。以下では、特に断らない限り、この静置状態で説明する。
【0024】
[第1実施形態]
(振れ補正機能付き光学ユニット101の概略構成)
図1~
図3は振れ補正機能付き光学ユニット(以下、光学ユニットと省略する。)101の組立状態の外観を示している。
図4は光学ユニット101を光軸L方向に沿って分解して示す。
図5は光学ユニット101の後述する可動体20の分解斜視図である。
図6は、要部を被写体側から視た分解斜視図、
図7は反対側から視た分解斜視図である。
図8は、後述するジンバル機構30及びホルダフレーム220を示している。
図9は光軸Lを通るY‐Z平面での縦断面図、
図10はジンバル機構30付近のX‐Y平面での横断面図である。
【0025】
これらの図に示す光学ユニット101は、携帯端末、ドライブレコーダ、無人ヘリコプター等に搭載される撮像装置等の光学機器(図示略)に組み込まれる薄型カメラであって、光学機器のシャーシ(機器本体)に支持された状態で搭載される。この種の光学ユニット101では、撮影時に光学機器に手振れ等の振れが発生すると、撮像画像に乱れが発生する。そこで、本実施形態の光学ユニット101においては、Z軸方向に沿って光軸Lが延在する光学モジュール(光学素子)210を備えた可動体20を、ジャイロスコープ等の振れ検出センサ(図示略)によって振れを検出した結果に基づいて揺動させ、ピッチング及びヨーイングを補正できるようにしている。
【0026】
図1~
図4において、本実施形態の光学ユニット101は、固定体10と、光学モジュール210を備える可動体20と、固定体10に対して可動体20を揺動可能に支持された状態とする揺動支持機構としてのジンバル機構30と、可動体20を揺動させる振れ補正用駆動機構40とを備える。また、
図10に示すように、可動体20は、固定体10に対してジンバル機構30を介して光軸L方向と直交する2つの軸線R1,R2周りに揺動可能に支持されている。2つの軸線の一方を第1軸線R1、他方を第2軸線R2とする。これら第1軸線R1及び第2軸線R2は相互に直交しており、かつX軸及びY軸に対して45°の角度に配置されている。
なお、本実施形態の光学ユニット101では、固定体10は、光軸L方向(+Z方向)から視たときに、八角形状をなしている。
【0027】
(固定体10の構成)
図1~
図4等に示すように、固定体10は、可動体20の周りを囲む角筒状のケース110と、ケース110の上(Z軸方向の一方側+Z)に固定されたカバー枠120と、ケース110の下(Z軸方向の他端側-Z)に配置されたボトムカバー130とを有している。
本実施形態では、ケース110は、複数の側板部111,112により角筒状(図示例では横断面八角形の筒状)に形成され、その上端(Z軸方向の一方+Z)に内向きフランジ113が一体に形成されている。
【0028】
カバー枠120は、平面視の外形がケース110の外形に沿う八角形状に形成され、ケース110のZ軸方向の一方側+Zの端部から径方向内側に張り出した矩形枠形状に形成されている。そして、カバー枠120の中央部には円形の開口窓121が形成されており、開口窓121を通して被写体からの光を光学モジュール210に導くようになっている。また、
図7に示すように、カバー枠120の裏面、つまりZ軸方向の他方側-Zには環状に突出部122が設けられており、この突出部122において、180°対向する位置には、後述するジンバル機構30の接点用ばね330を取り付けるための支持板部123がそれぞれ一体に設けられている。これら支持板部123は、Z軸方向の他方側-Zに突出し、径方向(図示例ではX軸及びY軸に45°の方向)に対向する対向面に溝部124が形成されている。
なお、カバー枠120の突出部122の表面122aは、後述するホルダフレーム220の揺動許容範囲を規制する第1ストッパ部とされている。図示例の場合、突出部122には180°対向して支持板部123が設けられていることから、第1ストッパ部122aは両支持板部123を避けた2箇所の円弧状に形成される。
【0029】
ボトムカバー130は、
図4に示すように、平面視の外形がケース110の外形に沿う八角形状に形成されるとともに、ケース110内に嵌合する周壁部131が一体に設けられている。また、ケース110の下端に固定した状態で、ケース110内に配置される振れ補正用駆動機構40や光学モジュール210等のフレキシブル配線基板71,72を外部に引き出すための切欠部132が形成されている。フレキシブル配線基板71,72は、
図9に示すように、ボトムカバー130の切欠部132を経由して、ボトムカバー130の裏側(Z軸方向の他方側-Z)に引き出され、このボトムカバー130の裏面に固定されており、光学機器の本体側に設けられた上位の制御部等に電気的に接続される。
【0030】
(可動体20の構成)
図4及び
図5等に示すように、可動体20は、レンズ等の光学素子を備えた光学モジュール210と、光学モジュール210を保持するホルダフレーム220と、ホルダフレーム220に固定される円環状の重心調整部材230とを有している。
光学モジュール210は、
図9に示すように、レンズ(図示せず)や撮像素子(撮像部)212、フォーカシング駆動用のアクチュエータ(図示せず)等を保持するレンズホルダ213を有しており、このレンズホルダ213を介してホルダフレーム220に保持されている。
【0031】
レンズホルダ213は、レンズ群を囲む鏡筒部214と、鏡筒部214の下端に一体に形成され撮像素子等を保持する基台部215と、鏡筒部214の前面(被写体側の面)を覆うレンズカバー216とを有している。
ホルダフレーム220は、
図5及び
図6等に示すように可動体20の外周部分を構成しており、レンズホルダ213を内側に保持する筒状のホルダ保持部221と、このホルダ保持部221の下端部(Z軸方向の他方側-Zの端部)でフランジ状に拡径するベース部222とを有している。また、ベース部222の外周部上には、ホルダ保持部221よりも径方向外側に、後述する振れ補正用駆動機構40を構成する4つのコイル42をそれぞれ保持するコイル保持部223が設けられており、これらコイル保持部223とホルダ保持部221との間には、後述するジンバル機構30の可動枠310が配置される可動枠配置空間240が形成されている。
【0032】
4つのコイル保持部223は、Z軸周りに90°間隔で配置され、X軸方向の一方側+X及び他方側-Xと、Y軸方向の一方側+Y及び他方側-Yとにそれぞれ設けられている。各コイル保持部223は、ベース部222の周縁部からZ軸方向に立設する支持板部224と、この支持板部224の一部の外面から突出し、コイル42を保持したときにコイル42の背面に当接するコイル当接部225と、コイル当接部225よりもさらに突出しコイル42の内側に嵌合する凸部226とを有している。各コイル保持部223の支持板部224は、X軸方向又はY軸方向に直交して配置されていることにより、各支持板部224の外面のコイル当接部225及び凸部226が、X軸方向の一方側+X及び他方側-X、Y軸方向の一方側+Y及び他方側-Yに向けて配置されている。
そして、各コイル保持部223の凸部226に環状のコイル42が嵌合するように取り付けられ、コイル当接部225にコイル42の背面を当接することで、コイル42の取り付け姿勢が規制される。したがって、コイル42は、X軸方向の一方側+X及び他方側-X、Y軸方向の一方側+Y及び他方側-Yに向けてそれぞれ設けられている。
この場合、各コイル保持部223の凸部226は、コイル42が保持された状態で、コイル42の外面(後述の磁石41と対向する面)から更に外方に向けて突出する。一方、後述するように、固定体10のケース110内に設けられた磁石41が各コイル42と対向するので、可動体20が外力によってX軸方向またはY軸方向に変位した際、コイル保持部223の凸部226が磁石41に当接し、コイル42と磁石41とが接触することが防止される(
図12(b)参照)。
【0033】
また、周方向に隣接する2個ずつのコイル保持部223の支持板部224が連結部227により連結状態とされている。具体的には、X軸方向の一方側+XとY軸方向の一方側+Yとに設けられる2個のコイル保持部223の支持板部224が連結部227により連結状態とされ、X軸方向の他方側-XとY軸方向の他方側-Yとに設けられる2個のコイル保持部223の支持板部224が連結部227により連結状態とされている。これにより、二つの連結部227がX軸及びY軸に45°で交差する対角上、言い換えれば、第1軸線の延在する方向に180°対向した位置に配置され、その対向面に溝部228が形成される(
図5及び
図10参照)。
一方、X軸方向の一方側+XとY軸方向の他方側-Yとに設けられるコイル保持部223の間は離間しており、X軸方向の他方側-XとY軸方向の一方側+Yとに設けられるコイル保持部223の間も離間している。したがって、これらコイル保持部223の間の空所229も、X軸及びY軸に45°で交差する対角上、この場合は、第2軸線R2の延在する方向に180°対向した位置に配置されており、これら空所229に、カバー枠120の支持板部123が配置されるようになっている。
【0034】
そして、レンズホルダ213の基台部215がホルダフレーム220の下(Z軸方向の-Z)側に配置され、鏡筒部214がホルダフレーム220のホルダ保持部221を貫通してZ軸方向の+Z側に突出した状態でホルダフレーム220に保持されている。
また、ホルダフレーム220の筒状のホルダ保持部221の上端部(Z軸方向の一方側+Zの端部)に、その周りを囲むように環状の重心調整部材230が取り付けられている。この重心調整部材230は、可動体10の重心位置を光軸方向に調整するためのもので、可動体10の重心位置を後述する揺動支点35と一致させるように設けられる。
この場合、ホルダ保持部221の外周部には段部221aが形成されており、この段部221aの上に載置するように重心調整部材230が取り付けられ、接着等により固定される。
なお、本実施形態では、ホルダフレーム220が合成樹脂により形成されており、ホルダ保持部221、ベース部222、コイル保持部223が一体に形成されている。
【0035】
また、可動体20に設けられた撮像素子212やフォーカシング駆動用のアクチュエータ等は、信号出力(通信)用のフレキシブル配線基板71に接続されている。撮像素子212は、
図9に示すように、ジャイロスコープやキャパシタ等の電子部品が実装された実装基板73に接続され、その実装基板73に、前述したフレキシブル配線基板71が接続されている。
一方、振れ補正用駆動機構40を構成するコイル42は、給電用のフレキシブル配線基板72に接続されている。これらのフレキシブル配線基板71,72は、前述したようにボトムカバー130の切欠部132から外部に引き出され、光学機器の本体側に設けられた上位の制御部等に電気的に接続される。
【0036】
なお、これらのフレキシブル配線基板71,72は、
図9等に示すように、レンズホルダ213の下方(Z軸方向の他方側-Z)で複数回湾曲された後に外部に引き出されるようになっている。
図5に示すように、コイル42に接続されたフレキシブル配線基板72は、光学モジュール210に接続されたフレキシブル配線基板71の2本に分割された部分の間に配置されており、2つのフレキシブル配線基板71,72は外部への引き出し方向が揃えられている。また、フレキシブル配線基板71,72は、いずれも可撓性を有しており、振れ補正用駆動機構40によるホルダフレーム220及びこのホルダフレーム220に保持されている光学モジュール210の動きを阻害しないようになっている。
【0037】
(振れ補正用駆動機構40の構成)
振れ補正用駆動機構40は、
図4及び
図6等に示すように、板状の磁石41と、磁石41の磁界内で電磁力を作用させるコイル42とを利用した磁気駆動機構である。本実施形態では、磁石41とコイル42との組み合わせが、可動体20(ホルダフレーム220)の周方向に90°ずつ間隔をおいて4組設けられる。また、
図9及び
図10に示すように、各磁石41はケース110に保持され、各コイル42はホルダフレーム220に保持されており、本実施形態では、ケース110とホルダフレーム220との間に振れ補正用駆動機構40が構成されている。
【0038】
磁石41は、ケース110の周方向に90°ずつ間隔をおいて配置された4つの各側板部111の内面にそれぞれ保持されている。各側板部111はX軸方向の一方側+X、他方側-X、Y軸方向の一方側+Y、他方側-Yにそれぞれ配置されている。このため、ケース110とホルダフレーム220との間では、X軸方向の一方側+X、X軸方向の他方側-X、Y軸方向の一方側+Y、およびY軸方向の他方側-Yのいずれにおいても、磁石41とコイル42とが対向している。
【0039】
本実施形態において、4つの磁石41は、外面側及び内面側が異なる極に着磁されている。また、磁石41は、光軸L方向(Z軸方向)に2つに分離して着磁されており、コイル42側(内面側)に位置する磁極411、412が光軸L方向で異なるように着磁されている(
図6、
図7及び
図9参照)。したがって、両磁極411、412を分離する着磁分極線413は、光軸Lと直交する方向に沿って配置されている。X軸方向の一方側+X及びX軸方向の他方側-Xにそれぞれ配置されている2つの磁石41は、着磁分極線413がY軸方向に沿って配置され、Y軸方向の一方側+Y及びY軸方向の他方側-Yに配置されている2つの磁石41は、着磁分極線413がX軸方向に沿って配置される。
なお、4つの磁石41は、外面側および内面側に対する着磁パターンが同一である。このため、周方向で隣り合う磁石41同士が吸着し合うことがないので、組み立て等が容易である。また、ケース110は磁性材料から構成されており、磁石41に対するヨークとして機能する。
【0040】
コイル42は、磁心(コア)を有しない空芯コイルであり、前述したように、ホルダフレーム220のX軸方向の一方側+X、X軸方向の他方側-X、Y軸方向の一方側+Y、およびY軸方向の他方側-Yに保持されている。このうち、ホルダフレーム220のX軸方向の一方側+X、X軸方向の他方側-Xに配置される両コイル42は、巻き線によってX軸方向をコイルの軸心方向とする環状に形成されている。また、Y軸方向の一方側+Y、およびY軸方向の他方側-Yに配置される両コイル42は、巻き線によってY軸方向をコイルの軸心方向とする環状に形成されている。したがって、いずれのコイル42も光軸L方向に直交する方向をコイルの軸心方向とする環状に形成されている。また、これら4つのコイル42は、同じ平面形状、同じ厚さ(高さ)寸法に形成される。
【0041】
なお、4つのコイル42のうち、X軸方向をコイルの軸心方向とする2つのコイル42は、Y軸方向に延びる矩形状に形成される。また、Y軸方向をコイルの軸心方向とする2つのコイル42は、X軸方向に延びる矩形状に形成される。そして、いずれのコイル42も、上下に配置される長辺部が、各磁石41の磁極411,412に対峙する有効辺として利用され、このコイル42が励磁されていない状態では、両有効辺は、対向する磁石41の着磁分極線413と平行で、着磁分極線413から上下に等しい距離に配置される(
図6及び
図7参照)。
【0042】
(ジンバル機構30の構成)
本実施形態の光学ユニット101では、ピッチング方向およびヨーイング方向の振れを補正するため、可動体20を光軸L方向に交差する第1軸線R1周りに揺動可能に支持するとともに、光軸L方向および第1軸線R1に交差する第2軸線R2周りに揺動可能に支持する。このため、固定体10と可動体20との間には、ジンバル機構(揺動支持機構)30が構成されている。
本実施形態では、ジンバル機構30は円形環状の可動枠310を有している。可動枠310は、
図5等に示すように、ホルダフレーム220の可動枠配置空間240内に配置されており、Z軸方向の配置で視ると、固定体10のカバー枠120の下面(Z軸方向の他方側-Zの面)と可動体20のホルダフレーム220のベース部222の上面(Z軸方向の一方側+Zの面)との間に配置されている。
【0043】
本実施形態において、可動枠310はバネ性を有する金属材料等で構成されており、周方向に90°間隔をおいて4箇所に、可動枠310の環状の中心に対して半径方向外側に向けた突起部311が一体に形成され、各突起部311にさらに半径方向外側方向に半球状の凸面を向けるように球体320が溶接等によって固定されている。
この可動枠310は、4つの球体320のうち、対角に位置する2つの球体320が前述した第1軸線R1の延在する方向に配置され、他の対角に位置する2つの球体320が第2軸線R2の延在する方向に配置される。
そして、第1軸線R1の延在方向に配置された2つの球体320がホルダフレーム220に設けられた接点用ばね330に支持され、第2軸線R2の延在方向に配置された2つの球体320がカバー枠120に固定された接点用ばね330に支持される。
【0044】
ホルダフレーム220のベース部222の上面には、
図5に示したように、第1軸線R1が延在する方向の対角に位置する2箇所の連結部227に、Z軸方向の一方側+Zに向けて開口する溝部228がそれぞれ形成されている。各溝部228には、接点用ばね330がそれぞれ取り付けられ、これら接点用ばね330に、第2軸線R1が延在する方向の対角に位置する2つの球体320がそれぞれ支持される。
一方、カバー枠120には、その裏面の180°対向する対角上に、一対の支持板部123がZ軸方向の-Zに向けて突出して形成されており、その支持板部123の内側の溝部124内に接点用ばねが330それぞれ取り付けられている。そして、カバー枠120の支持板部123がホルダフレーム220のコイル保持部223間の空所229に配置されることにより、第2軸線R2が延在する方向の対角に位置する2箇所に接点用ばね330が配置され、これら接点用ばね330に、第2軸線R2が延在する方向の対角に位置する2つの球体320がそれぞれ支持される。
【0045】
各接点用ばね330は、弾性変形可能なステンレス鋼等の金属からなる板材をプレス成型することにより縦断面U字状となるように屈曲形成されており、可動枠310に設けられた球体320との接触点に径方向外側から内側側に向けて弾性的な荷重(弾性力)を作用させる。つまり、可動枠310の4箇所の突起部311に設けられた各球体320は、固定体10のカバー枠120又は可動体20のホルダフレーム220に取り付けられた各接点用ばね330に、径方向外側から弾性的に接触させられている。
【0046】
この場合、
図10に示すように、ホルダフレーム220に固定された接点用ばね330は、第1軸線R1方向で対をなすように対向し、可動枠310の球体320との間で第1揺動支点を構成する。一方、カバー枠120に固定された接点用ばね330は、第2軸線R2方向で対をなすように対向し、可動枠310の球体320との間で第2揺動支点を構成する。したがって、可動体20の揺動中心位置(揺動支点)35は、これらの第1揺動支点と第2揺動支点とが組み合わされた第1軸線R1と第2軸線R2との交点に配置される。
【0047】
このように、接点用ばね330に可動枠310の各球体320が揺動可能に接触していることにより、固定体10のカバー枠120に対して、可動体20のホルダフレーム220が揺動可能に支持されている。また、このように構成したジンバル機構30において、各接点用ばね330の付勢力は等しく設定される。なお、本実施形態では、振れ補正用駆動機構40に磁気駆動機構が用いられていることから、ジンバル機構30に用いた可動枠310、接点用ばね330はいずれも、非磁性材料からなる。
【0048】
また、本実施形態において、可動枠310は、コイル保持部223と同じ高さ位置(Z軸方向における同一の位置)に配置されている。このため、光軸L方向に対して直交する方向から視たとき、ジンバル機構30が振れ補正用駆動機構40と重なる位置に配置されている。特に本実施形態では、
図9に示すように、光軸L方向に対して直交する方向から視たときに、ジンバル機構30が、振れ補正用駆動機構40のZ軸方向の中心位置と重なる位置に配置されている。より詳細には、振れ補正用駆動機構40の無励磁状態においては、ジンバル機構30が、Z軸方向において磁石41の着磁分極線413と同じ高さ位置に設けられている。したがって、ジンバル機構30の第1揺動支点及び第2揺動支点は、Z軸方向において振れ補正用駆動機構40の中心位置と重なる位置に配置され、可動体20の揺動中心位置35も振れ補正用駆動機構40の中心位置と重なる位置に配置されている。
【0049】
(揺動許容範囲、光軸方向移動範囲の規制機構)
前述したように、本実施形態の光学ユニット101において、可動体20は、揺動支点35を中心として揺動可能であり、また、ジンバル機構30の可動枠310が弾性材料により形成されているので、その弾性範囲で光軸方向にも移動可能である。そして、その揺動又は光軸方向の移動に対する許容範囲を規制するための機構が設けられている。
具体的には、可動体20のホルダフレーム220の各コイル保持部223において、支持板部224は、コイル42が装着された状態で、コイル42よりもZ軸方向の一方+Zに突出する大きさに形成されている。その突出端部は、支持板部224の延在方向に沿って形成されており、その両端の角部224a,224bが揺動許容範囲の最大位置でカバー枠120の突出部122の表面122aに当接するようになっている。この場合、各支持板部224が4枚設けられていることにより、Z軸方向の+Z側から視た平面視で、第1軸線R1を挟んでその左右に4個ずつ、また第2軸線R2を挟んでその左右に4個ずつ、合計8個の角部224a,224bが配置される。これら各角部224a,224bはZ軸方向の位置が等しく設定されている。
【0050】
また、各支持板部224は、2枚ずつが連結部227により連結状態とされ、両連結部227を結ぶ方向の第1軸線R1及びこれと直交する方向の第2軸線R2に対して45°の配置で形成されているため、
図5に示すように、第1軸線R1を挟んで左右に配置される4個ずつの角部224a,224bのうち、第1軸線R1から遠い位置に配置される2個ずつの角部を符号224aで示し、第2軸線R2から遠い位置に配置される2個ずつの角部を符号224bで示すと、第1軸線R1から遠い位置に配置される2個ずつの角部224aは第1軸線R1からの距離が等しく、また、第2軸線R2から遠い位置に配置される2個ずつの角部224bは第2軸線R2からの距離が等しく設定される。
【0051】
そして、揺動許容範囲の最大位置において、第1軸線R1周りの揺動に対しては、第1軸線R1から遠い位置に配置される2個ずつの角部224aがカバー枠120の突出部122の表面122aに当接し、第2軸線R2周りの揺動に対しては、第2軸線R2から遠い位置に配置される2個ずつの角部224bがカバー枠120の突出部122の表面122aに当接する。
つまり、カバー枠120の突出部122の表面(Z軸方向の他方-Zの面)122aが最大揺動範囲で支持板部224の角部224a,224bを当接して、それ以上の揺動を規制するようになっている。つまり、この支持板部224の8個の角部224a,224bが本発明の第1当接部であり、カバー枠120の突出部122の表面122aが本発明の第1ストッパ部であり、これら第1当接部と第1ストッパ部とにより揺動許容範囲規制機構が構成される。
【0052】
一方、ホルダフレーム220におけるホルダ保持部221の上端部(Z軸方向の一方側+Zの端部)には、環状の重心調整部材230が設けられている。この重心調整部材230は、
図9に示すように、Z軸方向に沿う縦断面が五角形に形成され、Z軸方向の一方側+Zに、半径方向外側に向かうにしたがって漸次Z軸方向の厚みを小さくするように、言い換えれば、光軸方向に沿って被写体側に向かうにしたがって光軸Lに接近する方向に傾斜する傾斜面231が形成されている。また、固定体10におけるカバー枠120の内周部が重心調整部材230の外周面よりも半径方向内方に張り出しており、その内周部の裏面側、つまりZ軸方向の他方側-Zに、半径方向外側に向かうにしたがって漸次Z軸方向の厚みを大きくするように(光軸方向に沿って被写体側に向かうにしたがって光軸Lに接近する方向に傾斜する)傾斜面125が形成されている。そして、重心調整部材230の傾斜面231とカバー枠120の傾斜面125とが対向しており、その対向部間に、一様の厚さの隙間が形成されている。そして、重心調整部材230を含む可動体20が外力によってZ軸方向(光軸方向)の一方側+Zに移動した際に、重心調整部材230の傾斜面231がカバー枠120の傾斜面125に当接して、それ以上の移動を規制することができるようになっている。すなわち、重心調整部材230の傾斜面231が本発明の第2当接部を構成し、カバー枠120の傾斜面125が本発明の第2ストッパ部を構成しており、これら両傾斜面231,125により、可動体20に対する光軸方向移動規制機構を構成している。
【0053】
この場合、カバー枠120の傾斜面125と重心調整部材230の傾斜面231との間の隙間のZ軸方向(光軸方向)の離間距離H1は、前述したホルダフレーム220における支持板部224の角部224a,224bとカバー枠120の突出部122との間のZ軸方向(光軸方向)の離間距離H2よりも小さく設定されており、可動体20がZ軸方向に所定量以上移動した際には、ホルダフレーム220における支持板部224の角部224a,224bとカバー枠120の突出部122とが当接することなく、カバー枠120の傾斜面125と重心調整部材230の傾斜面231とが当接するようになっている。
また、カバー枠120の傾斜面125と重心調整部材230の傾斜面231とは、揺動時の接線方向にほぼ沿う傾斜形状に形成され、かつ、これらの離間距離H1及び両傾斜面125,231の対向面の大きさ等は、可動体20の揺動を阻害しない程度に設定されており、可動体20の揺動許容範囲の最大位置においても、両傾斜面231,125が接触しない寸法に設定されている。
【0054】
なお、ホルダフレーム220のZ軸方向の他方側-Zには、
図9に示すように、レンズホルダ213の基台部215より下方(Z軸方向の他方側-Z)に位置するスペーサ部材140が設けられており、そのスペーサ部材140にフレキシブル配線基板71,72が固定された後、外部に引き出されている。
【0055】
(作用効果)
以上のように構成した振れ補正機能付き光学ユニット101においては、ピッチング及びヨーイングに対して、ジンバル機構(揺動支持機構)30及び振れ補正用駆動機構40により、第1軸線R1又は第2軸線R2周りに可動体20を揺動させて振れを補正できる。この振れの補正制御において、可動体20が
図11(b)の矢印で示すように揺動してホルダフレーム220の各支持板部224における角部(第1当接部)224a,224bがカバー枠120の突出部122の表面(第1ストッパ部)122aに当接すると、それ以上の揺動が規制される。この支持板部224の角部224a,224bがカバー枠120の突出部122に当接したときの角度θは例えば10°に設定され、その角度範囲に揺動範囲が規制される。
このとき、ホルダフレーム220と一体に重心調整部材230も揺動するが、その外周の傾斜面231とカバー枠120の内周の傾斜面125とは、前述したように接触することがなく、揺動を阻害しない。また、固定体10の磁石41に対向しているホルダフレーム220の凸部226も磁石41との間に所定の間隔があけられており、揺動時に磁石41に接触することがないようになっている。
【0056】
一方、落下衝撃等の際に可動体20が光軸方向に移動する場合、
図12(a)に矢印で示すように移動して重心調整部材230の傾斜面(第2当接部)231がカバー枠120の内周の傾斜面(第2ストッパ部)125に当接すると、それ以上の移動が規制される。このとき、ホルダフレーム220の支持板部224の角部224a,224bを有する上端(Z軸方向の+Zの先端)はカバー枠120の突出部122の表面122aにまでは到達せず、突出部122の表面との間に隙間が空いた状態である。
また、落下衝撃等の際に可動体20が光軸Lと直交する方向に移動したとすると、
図12(b)に矢印で示すように移動して、ホルダフレーム220の凸部226が磁石41に当接すると、それ以上の移動が規制される。
【0057】
このように、この実施形態の振れ補正機能付き光学ユニット101は、ホルダフレーム220の支持板部224の角部(第1当接部)224a,224bとカバー枠120の突出部122の表面(第1ストッパ部)122aとにより可動体20の揺動許容範囲を規制し、また、落下等により衝撃が加わった際には、重心調整部材230の傾斜面(第2当接部)231とカバー枠120の傾斜面(第2ストッパ部)125とにより可動体20の光軸方向への飛び出しを規制し、ホルダフレーム220の凸部226と磁石41とにより可動体20の光軸Lと直交する方向への移動を規制することができる。したがって、ジンバル機構30の可動枠310等の過度の変形を防止し、耐久性を向上させることができる。
この場合、揺動許容範囲を規制するホルダフレーム220の支持板部224の角部(第1当接部)224a,224bとカバー枠120の突出部122との間の光軸方向の離間距離(言い換えれば、第1当接部と固定体との光軸方向の離間距離)H2よりも、光軸方向の移動を規制する重心調整部材230の傾斜面(第2当接部)231とカバー枠120の傾斜面(第2ストッパ部)125との間の光軸方向の距離H1を小さく設定したので、この光軸方向の移動規制機構を有しない場合に比べて、光軸方向の全体寸法を小さくすることができ、振れ補正機能付き光学ユニット101の小型化を図ることができる。
なお、カバー枠120の突出部122の表面122aや傾斜面125にクッションシートを貼付して、可動体20の衝突時の衝撃を吸収する構成としてもよい。
【0058】
また、この実施形態の場合、環状の重心調整部材230のZ軸方向の一方側+Zに張り出すようにカバー枠120の内周部を重ねて配置し、これらの間に傾斜面231,125を形成しているので、光軸方向の被写体側から視て、内部が隠れた状態となっており、両傾斜面231,125の間からゴミ等の異物が侵入することが防止されるとともに、意匠性にも優れている。
なお、両傾斜面231,125は、円錐面状に形成されているが、可動体20の揺動時の軌跡に沿うように円弧面状に形成してもよく、重心調整部材230の傾斜面(第2当接部)231を凸円弧面とし、カバー枠120の傾斜面(第2ストッパ部)125を凹円弧面として、これら凸円弧面と凹円弧面とが対向するように形成することができる。この場合、両傾斜面(円弧面)の対向面間の離間距離H1をさらに小さくすることができる。
【0059】
[第2実施形態]
図13及び
図14は、本発明の第2実施形態の振れ補正機能付き光学ユニットについて、第1実施形態の
図11(a)(b)及び
図12(a)と同様の断面図である。なお、この第2実施形態では、第1実施形態と共通する要素には同一符号を付してその説明を簡略化する。
第1実施形態では、第1当接部を、ホルダフレーム220における支持板部224の角部224a,224bにより構成し、第1ストッパ部をカバー枠120の突出部122の表面(Z軸方向の他方側-Zに向く面)122aにより構成したが、この第2実施形態では、第1当接部を第1実施形態と同様の角部224a,224bにより構成し、カバー枠120の内周部に筒状壁127をZ軸方向の他方側-Zに向けて一体に設け、その筒状壁127の外周面127aにより第1ストッパ部を構成している。
【0060】
なお、第1当接部と第1ストッパ部が点で当接する場合には、厳密には、第1実施形態では、第1当接部は、支持板部224の角部224a,224bのうち、コイル42側の頂点が第1ストッパ部に当接し、第2実施形態では、支持板部224のコイル42側とは反対側の頂点が第1ストッパ部に当接する。第1ストッパ部にクッションシートを貼付する場合には、衝突時にクッションシートが弾性変形することから、角部224a,224bのコイル42側からその反対側にかけた広い部分が第1ストッパ部に当接すると想定される。このため、本明細書では、角部224a,224bのコイル42、その反対側を含めて第1当接部とする。
【0061】
また、ホルダフレーム220における支持板部224のコイル42側の表面とは反対側に、支持板部224よりもZ軸方向の高さの小さい補助壁部25が設けられており(
図8にも符号を付した)、その補助壁部25の上端25aが第2当接部とされ、カバー枠120の筒状壁127の下端面(Z軸方向の他方-Zの端面)127bが第2ストッパ部として構成されている。
なお、この第2実施形態では、重心調整部材230は、縦断面が矩形状に形成されている。
この第2実施形態においても、無励磁時における第2当接部25aと第2ストッパ部127bとの光軸方向(Z軸方向)の離間距離H1は、第1当接部224a,224bとカバー枠120との間の光軸方向(Z軸方向)の離間距離H2よりも小さく設定される。
【0062】
また、前述の第1実施形態においては、第1ストッパ部がZ軸方向に直交する平面(カバー枠120の突出部122の表面122a)によって形成されていたため、第1ストッパ部122aに第1当接部224a,224bが当接すると、第1当接部224a,224bはZ軸方向の+Zへの移動も拘束される。これに対して、この第2実施形態においては、第1ストッパ部はカバー枠120の筒状壁127の外周面127aであり、Z軸方向に沿って形成されているため、第1当接部224a,224bが第1ストッパ部127aに当接した最大揺動位置においても、第1当接部224a,224bは第1ストッパ部127aに沿ってZ軸方向に移動することが可能であるが、その最大揺動位置において、第2当接部25aと第2ストッパ部127bとがZ軸方向(光軸方向)に重なった配置となっているため、この最大揺動位置で落下衝撃等により可動体20がZ軸方向に移動しようとしても、第2当接部25aが第2ストッパ部127bに当接して、その移動を規制することができる。
【0063】
[重心調整部材の取り付けの変形例]
第1実施形態では、重心調整部材230をホルダフレーム220の筒状のホルダ保持部221の外周に接着等により固定したが、ホルダフレーム220は合成樹脂により形成されるので、
図15に示すように、ホルダ保持部221の上端を二点鎖線で示すように高く形成しておき、重心調整部材230を段部221aに載置した後に、ホルダ保持部221の上端部221bを熱変形させながら重心調整部材230の上面に押し付け、この熱変形させた上端部221bと段部221aとの間でかしめるようにして固定してもよい。
【0064】
その他、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、ジンバル機構30では、可動枠310に固定した球体320を接点用ばね330に接触させる構造としたが、必ずしも球体でなくてもよく、棒状部材等の先端面を球状に形成してなる球状先端面を接点用ばねに接触させる構造としてもよい。
【0065】
また、本実施形態では、ピッチング及びヨーイングの補正機能を有する光学ユニットについて説明を行ったが、ピッチング及びヨーイングに加えて、ローリングに対する補正機能を有する構造としてもよい。
さらに、可動体20を固定体10に支持する支持機構として、揺動可能に支持する機構をジンバル機構30により構成したが、ほぼ光軸Lに沿う方向のピボット軸による支持機構としてもよく、その場合、ピボット軸の先端面が球状先端面に形成され、ピボット軸は、その球状先端面を中心に光軸Lと交差する方向に揺動する。
また、振れ補正用駆動機構40の磁石41を固定体10のケース110に、コイル42を可動体20のホルダフレーム220に設けたが、逆に、磁石41を可動体20のホルダフレーム220に、コイル42を固定体10のケース110に設けてもよい。この場合、ホルダフレーム220には、コイル保持部に代えて、磁石保持部が設けられる。本発明においては、コイル保持部及び磁石保持部を総合して保持部材と称す。
【符号の説明】
【0066】
10…固定体、20…可動体、25…補助壁部、25a…上端(第2当接部)、30…ジンバル機構、35…揺動中心位置、40…振れ補正用駆動機構、41…磁石、42…コイル、71,72…フレキシブル配線基板、73…実装基板、101…補正機能付き光学ユニット、110…ケース、111,112…側板部、113…フランジ、120…カバー枠、121…開口窓、122…突出部、122a…表面(第1ストッパ部)、123…支持板部、124…溝部、125…傾斜面(第2ストッパ部)、127…筒状壁、127a…外周面(第1ストッパ部)、127b…下端面(第2ストッパ部)130…ボトムカバー、131…周壁部、132…切欠部、140…スペーサ部材、210…光学モジュール、212…撮像素子、213…レンズホルダ、214…鏡筒部、215…基台部、216…レンズカバー、220…ホルダフレーム、221…ホルダ保持部、221a…段部、221b…上端部、222…ベース部、223…コイル保持部、224…支持板部、224a,224b…角部(第1当接部)、225…コイル当接部、226…凸部、227…連結部、228…溝部、229…空所、230…重心調整部材、231…傾斜面(第2当接部)、240…可動枠配置空間、310…可動枠、311…突起部、320…球体、330…接点用ばね、411,412…磁極、413…着磁分極線、L…光軸、R1…第1軸線、R2…第2軸線。