(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】自転車のフロントディレイラ
(51)【国際特許分類】
B62M 9/131 20100101AFI20220111BHJP
【FI】
B62M9/131
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018021705
(22)【出願日】2018-02-09
【審査請求日】2020-12-14
(31)【優先権主張番号】102017000015324
(32)【優先日】2017-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】592072182
【氏名又は名称】カンパニョーロ・ソシエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
【氏名又は名称原語表記】CAMPAGNOLO SOCIETA A RESPONSABILITA LIMITATA
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【氏名又は名称】金子 大輔
(72)【発明者】
【氏名】ミント・マルコ
【審査官】伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開昭51-069845(JP,A)
【文献】特開2005-239139(JP,A)
【文献】特開昭53-083246(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0165054(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 9/131
B62M 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車のフロントディレイラ(10)であって、
-チェーンガイド(11)が設けられた可動体(17)であって、前記チェーンガイド(11)が、前記自転車の伝動チェーンと相互作用するように構成されていて且つ内側位置と外側位置との間に含まれる複数の位置間で移動可能である、可動体(17)と、
-前記自転車のフレームのうちの一部に固定されるように構成された固定体(16)と、
-前記固定体(16)へと第1の関節接続軸心(A)回りにヒンジ接続されていて且つ前記可動体(17)へと第2の関節接続軸心(B)回りにヒンジ接続されている、外側の接続エレメント(15)と、
-前記固定体(16)へと第3の関節接続軸心(C)回りにヒンジ接続されていて且つ前記可動体(17)へと第4の関節接続軸心(D)回りにヒンジ接続されている、内側の接続エレメント(14)と、
-前記チェーンガイド(11)を前記内側位置にプッシュするように前記可動体(17)と前記内側の接続エレメント(14)との間で動作するリターン部材と、
-前記固定体(16)へと前記第1の関節接続軸心(A)回りにヒンジ接続されていて且つ制御ケーブル(100)のための締結具(24)を具備している作動アーム(23)であって、前記締結具(24)が、前記第1の関節接続軸心(A)から前記第2の関節接続軸心(B)の方とは反対側に離れるように配置されている、作動アーム(23)と、
を備え、
-前記締結具(24)に加えられる力が前記チェーンガイド(11)の前記内側位置と前記外側位置との間での移動を決定するような力であるときには、前記作動アーム(23)と前記外側の接続エレメント(15)とがロッカーアームを形成するように剛的に連結されたものとなり、前記締結具(24)に加えられる力が前記チェーンガイド(11)を前記外側位置に保持するのに必要な力を上回るときには、前記作動アーム(23)が前記外側の接続エレメント(15)に対して回転
し、
前記固定体(16)、前記可動体(17)、前記内側の接続エレメント(14)および前記外側の接続エレメント(15)が関節接続型の四辺形機構(13)を形成しており、当該関節接続型の四辺形機構(13)は、前記チェーンガイド(11)を前記外側位置から前記内側位置へと移動させるように弾性の前記リターン部材によって変形可能であり、且つ前記チェーンガイド(11)を前記内側位置から前記外側位置へと移動させるように前記作動アーム(23)によって変形可能であり、
さらに、前記外側の接続エレメント(15)と前記作動アーム(23)との間で動作する弾性部材であって、当該弾性部材は、前記作動アーム(23)に加えられる力が前記関節接続型の四辺形機構(13)を変形させて前記チェーンガイド(11)を前記外側位置に移動させるのに必要な力を上回るときに弾性変形し、
前記弾性部材が、前記第2の関節接続軸心(B)の箇所に配置されたトーションスプリング(26)を含む、フロントディレイラ(10)。
【請求項2】
請求項
1に記載のフロントディレイラ(10)において、前記弾性部材の前記トーションスプリング(26)が、前記作動アーム(23)と前記外側の接続エレメント(15)との間にねじりプリロードをもって取り付けられており、前記トーションスプリング(26)の当該プリロードは、前記制御ケーブル(100)の牽引力に曝されたときの前記作動アーム(23)の前記第1の関節接続軸心(A)回りの回転とは反対の角度方向で当該作動アーム(23)を前記第1の関節接続軸心(A)回りに回転させる傾向の力を当該作動アーム(23)に加える、フロントディレイラ(10)。
【請求項3】
請求項
2に記載のフロントディレイラ(10)において、前記外側の接続エレメント(15)が、前記作動アーム(23)の凸部(29)により当接係合可能であるショルダー部(28)を有しており、前記ショルダー部(28)及び前記凸部(29)は、前記第1の関節接続軸心(A)を基準として前記トーションスプリング(26)とは反対側に配置されている、フロントディレイラ(10)。
【請求項4】
請求項
1から3のいずれか一項に記載のフロントディレイラ(10)において、前記リターン部材がリターントーションスプリング(32)を含み、前記作動アーム(23)の前記外側の接続エレメント(15)に対する回転を引き起こすのに前記弾性部材の前記トーションスプリング(26)に加えられるトルクが、前記可動体(17)の前記内側の接続エレメント(15)に対する回転を引き起こすのに前記リターントーションスプリング(32)に加えられるトルクよりも大きい、フロントディレイラ(10)。
【請求項5】
請求項
1から4のいずれか一項に記載のフロントディレイラ(10)において、さらに、前記第1の関節接続軸心(A)の箇所に配置された関節接続ピン(25)、を備え、前記外側の接続エレメント(15)と前記作動アーム(23)とに前記関節接続ピン(25)が交差しており、前記作動アーム(23)は、当該関節接続ピン(25)から前記第2の関節接続軸心(B)に向かって遠ざかるようにして延びる突出部(30)を有している、フロントディレイラ(10)。
【請求項6】
請求項
5に記載のフロントディレイラ(10)において、前記弾性部材の前記トーションスプリング(26)が、前記作動アーム(23)の前記突出部(30)に当接する第1の端部(26a)および前記外側の接続エレメントにおける座部(31)に当接する第2の端部(26b)を有している、フロントディレイラ(10)。
【請求項7】
請求項
4に記載のフロントディレイラ(10)において、前記弾性部材の前記トーションスプリング(26)が、前記作動アーム(23)と前記外側の接続エレメント(15)との間にねじりプリロードをもって取り付けられており、当該ねじりプリロードは、前記チェーンガイド(11)を前記外側位置に移動させるのに前記リターン部材の前記トーションスプリング(26)に加えられるねじり荷重よりも大きい、フロントディレイラ(10)。
【請求項8】
請求項
5に記載のフロントディレイラ(10)において、前記作動アーム(23)の前記突出部(30)が、前記外側の接続エレメント(15)側に面する突起(30a)を含み、当該突起(30a)が、前記作動アーム(23)の前記外側の接続エレメント(15)に対する回転のエンドストップブロックを形成している、フロントディレイラ(10)。
【請求項9】
請求項1から
8のいずれか一項に記載のフロントディレイラ(10)において、前記チェーンガイド(11)を前記内側位置から前記外側位置へと移動させるのに前記作動アーム(23)の前記締結具(24)に加えられる力が、前記第1の関節接続軸心(A)と直交する平面内に含まれる、フロントディレイラ(10)。
【請求項10】
請求項1から
9のいずれか一項に記載のフロントディレイラ(10)において、前記作動アーム(23)の前記締結具(24)と前記第1の関節接続軸心(A)との間の距離が、前記作動アーム(23)の前記外側の接続エレメント(15)に対する回転時の間、一定のままである、フロントディレイラ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車のフロントディレイラに関する。好ましくは、前記自転車は、競走用自転車である。
【背景技術】
【0002】
既知のとおり、伝動チェーンをクランクセットのうちのあるクラウンギヤから異なる径を有する別のクラウンギヤに移動させることによって、ギヤ比を変更することによりギアシフト動作を実行するのに、フロントディレイラが使用される。
【0003】
ダウンシフト動作(downward gearshifting)とは、上記チェーンが大径側のクラウンギヤから小径側のクラウンギヤに移行するときであり、アップシフト動作(upward gearshifting)とは、上記チェーンが小径側のクラウンギヤから大径側のクラウンギヤに移動するときである。つまり、ダウンシフト動作はより低いギヤ比への移行に相当し、アップシフト動作はより高いギヤ比への移行に相当する。
【0004】
フロントディレイラのこのような動きは、ハンドルバーにおいて運転者が操作し易いように装着された作動装置により実現される。
具体的に述べると、メカニカル・ギアシフト装置でのフロントディレイラは、上記クランクセットのクラウンギヤ間で、通常はシースが付いている非伸長性の制御ケーブル(一般的には、ボーデンケーブルと称される)により加えられる牽引動作によってアップシフト方向に、さらには、この制御ケーブルの牽引の解除によってダウンシフト方向に動かされる。
【0005】
このディレイラは、上記伝動チェーンの上方に配置されるチェーンガイド(又はケージ)および当該チェーンガイドの位置決め機構を備え、当該位置決め機構は、ボトムブラケットとサドル(シートチューブ)とを繋ぐチューブに沿って、自転車のフレームに固定される。
上記チェーンガイドは、互いに対向し且つ略平行である内側プレートと外側プレートとから形成されている。上記内側プレートは上記チェーンを押圧することによって当該チェーンの小径側のクラウンから大径側のクラウンへの移行(アップシフト動作)を実行するように機能し、上記外側プレートは上記チェーンを押圧することによって当該チェーンの大径側のクラウンから小径側のクラウンへの移行(ダウンシフト動作)を実行するように機能する。
【0006】
上記チェーンガイドの上記位置決め機構は、通常、変形可能な関節接続型の四辺形機構から形成されている。このような関節接続型の四辺形機構は、シートチューブ周りへの連結用のストラップに固定的に接続されている固定体(上記四辺形機構のうちの第1の辺)、当該固定体へと2つのそれぞれの軸心回りに回転可能に接続された2つのコネクティングロッド(上記四辺形機構のうちの他の2つの辺を形成している内側のコネクティングロッド及び外側のコネクティングロッド)、ならびに上記2つのコネクティングロッドのそれぞれへと2つのそれぞれのさらなる軸心回りに回転可能に接続された(第4の辺を形成して上記関節接続型の四辺形機構を完成させる)上記チェーンガイド自体の本体を含む。これら4つの軸心は、互いに平行である。
【0007】
上記外側のコネクティングロッドは、上部が上記固定体へと上記4つの軸心のうちの第1の軸心回りにヒンジ接続されていると共に、当該上部にはその軸心よりも上に作動アームが延設されていて、当該作動アームの端部にディレイラの上記制御ケーブルが接続されている。上記制御ケーブルは通常、当該ケーブルがその下にある上記位置決め機構と干渉しないように上記作動アームの上記端部へと側方から接続されている。
【0008】
上記制御ケーブルが牽引されると、上記作動アームが引っ張られて上記外側のコネクティングロッドが上記第1の軸心回りに回転する。このようにして上記四辺形機構が変形されて上記チェーンガイドが自転車の外側に向かって動かされることにより、ギアシフト動作を実行する。
通常、上記チェーンガイドの上記本体と上記内側のコネクティングロッドとの間には、上記制御ケーブルのテンションに抵抗するように且つ当該制御ケーブルのテンションが解除されると上記チェーンガイドを並進させるようにリターンばねが動作している。
【0009】
上記作動装置内では、上記制御ケーブルが回転体エレメント(一般的には、ケーブル巻取りブッシュと称される)上での巻取りや巻出しによって牽引作動又は解除作動される。当該回転体エレメントの回転は、運転者により単一の適切な制御レバー又は2つの制御レバー(アップシフト動作用の第1のレバーおよびダウンシフト動作用の第2のレバー)を用いて作動される。
いずれにせよ、上記作動装置は、上記ケーブル巻取りブッシュが第1のインデクシング位置と最後のインデクシング位置との間のうちの、所定のインデクシング角度で角度方向に互いに離間している複数の所定の角度方向位置に保持されることを想定する必要がある。この機能は、上記ケーブル巻取りブッシュと上記装置のうちの固定側部材であるケーシングとの間で可変動作する、いわゆるインデクサによって実現される。数多くの種類のインデクサが、当該技術分野において知られている。
【0010】
上記ディレイラが上記チェーンを上記フレーム側に変位させ過ぎたり、上記チェーンを上記フレームから遠くに変位させ過ぎたりするのを防ぐために、一対の機械的なエンドストップ、具体的には内側のエンドストップと外側のエンドストップとが、上記ディレイラの可動域を制限する(これにより、上記チェーンが上記クラウンギヤを越えて変位しないことを確実にする)。
【0011】
上記ディレイラの幾何形状は例えば上記の説明で要約したようなもの等のように予め決まっているが、上記作動装置の作動を受けての当該ディレイラの実際の可動域は当該ディレイラ及び上記作動装置の実際の取付け形態(このような取付け形態は、予め決められている取付け公差内で実施されたとしてもその時々で差が生じる)によって異なる。例えば、上記ケーブル巻取りブッシュの回転量が同じであっても、上記制御ケーブルが伝える実際の力(又はテンション)は、当該制御ケーブルが上記ディレイラに達するまでに辿る特定の経路、当該制御ケーブルがどのように上記外側のコネクティングロッドの上記作動アームに拘束されているのか、さらには、自転車への上記ディレイラ及び当該作動装置の装着に関連するその他の数多くの要因にも依存する。
【0012】
上記ディレイラの実効的な可動域のこのような差異は明らかに小さいが、当該ディレイラの(全ギアシフト動作を実行するのに利用可能な)可動域(excursion)全体と上記第1および上記最後のインデクシング位置間の上記ケーブル巻取りブッシュの角度方向可動域との厳密な合致を確保不能にするには確実に十分である。
そのため、インデクシング位置および関連する制御手段は、最も都合の悪い取付け状態であっても正確なギアシフト動作を確保できるように寸法決めされており、これは、上記第1および上記最後のインデクシング位置間の角度方向距離が、上記ディレイラの実際に必要とされるよりも長い利用可能ストロークに相当することを意味する。
【0013】
この理由から、上記ディレイラの上記機械的なエンドストップは通常、上記ケーブル巻取りブッシュが上記最後のインデクシング位置に保持されたとき、すなわち、最後のアップシフト動作後に到達するインデクシング位置に保持されたときに上記外側のエンドストップが上記ディレイラの可動域のストップ手段として機能するように調節されている。
このようにして、上記制御ケーブルの最大テンションに対応する最後のアップシフト動作が実施され且つ安定に維持されることを運転者にとって確実なものとすることが可能となる。
【0014】
上記内側のエンドストップは、上記伝動チェーンがリア・カセットのうちの最大寸法の歯車に係合しているときでも、上記ディレイラが上記クランクセットのうちの最小寸法の歯車上に配置されて且つ上記伝動チェーンがこのときの当該ディレイラからスライドしないことを確実にするように調節される。
【0015】
この構成によれば、上記ケーブル巻取りブッシュが上記第1のインデクシング位置に到達するよりも先に上記ディレイラの可動域が終了することになる。ただし、運転者が上記制御手段に対して加え続ける動作により、上記ケーブル巻取りブッシュがいずれにせよ上記第1のインデクシング位置へと運ばれることから、ギアシフト動作は安定に行われる。事実、この状況(ダウンシフト動作)では上記第1のインデクシング位置への上記ケーブル巻取りブッシュの回転によって上記制御ケーブルが緩むので、当該ケーブル巻取りブッシュのその回転の妨げにならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本出願人は、前述したディレイラの上記機械的なエンドストップのこのような調節が、少なくとも第1のアップシフト動作において応答性の低下を招くことを見出した。これは、第1のアップシフト動作のうちの最初の部分が上記ディレイラの運動を引き起こすことなく、上記制御ケーブルのテンションを取り戻すことを唯一の目的としているからである。
【0017】
本出願人は、上記内側の機械的なエンドストップをちょうど上記第1のインデクシング位置の箇所に調節することにより、最後のダウンシフト動作でも上記制御ケーブルが緩まないので、第1のアップシフト動作において即座で且つ高速な応答が得られることを見出した。
しかし、本出願人は、この場合には上記外側の機械的なエンドストップを、上記ケーブル巻取りブッシュが上記最後のインデクシング位置に到達する前に当該ケーブル巻取りブッシュの回転を中断させるように調節しなければならないことを見出した。上記ケーブル巻取りブッシュを上記最後のインデクシング位置という安定した位置に到達させようとすることは、上記ディレイラがそれ以上の並進の実行を上記外側のエンドストップによって妨げられた状態のままで上記制御ケーブルが当該ケーブル巻取りブッシュになおいっそう巻き取られなければならないことから、強い抵抗を受けることになる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
したがって、本発明は、自転車のフロントディレイラであって、
-チェーンガイドが設けられた可動体であって、前記チェーンガイドが、前記自転車の伝動チェーンと相互作用するように構成されていて且つ内側位置と外側位置との間に含まれる複数の位置間で移動可能である、可動体と、
-前記自転車のフレームのうちの一部に固定されるように構成された固定体と、
-前記固定体へと第1の関節接続軸心回りにヒンジ接続されていて且つ前記可動体へと第2の関節接続軸心回りにヒンジ接続されている、外側の接続エレメント(outer connection element)と、
-前記固定体へと第3の関節接続軸心回りにヒンジ接続されていて且つ前記可動体へと第4の関節接続軸心回りにヒンジ接続されている、内側の接続エレメント(inner connection element)と、
-前記チェーンガイドを前記内側位置にプッシュするように前記可動体と前記内側の接続エレメントとの間で動作するリターン部材と、
-前記固定体へと前記第1の関節接続軸心回りにヒンジ接続されていて且つ制御ケーブルのための締結具を具備している作動アームであって、前記締結具が、前記第1の関節接続軸心から前記第2の関節接続軸心とは反対側に離れて配置されている、作動アームと、
を備え、
-前記締結具に加えられる力が前記チェーンガイドの前記内側位置と前記外側位置との間での移動を決定する(determine)ような力であるときには、前記作動アームと前記外側の接続エレメントとがロッカーアーム(locker arm)を形成するように剛的に連結されたものとなり、前記締結具に加えられる力が前記チェーンガイドを前記外側位置に保持するのに必要な力を上回るときには、前記作動アームが前記外側の接続エレメントに対して回転する、フロントディレイラに関する。
【0019】
前記締結具に加えられる力が前記チェーンガイドを前記外側位置に移動させるのに必要な力を上回るときにのみ、前記作動アームの前記外側の接続エレメントに対する回転が発生する。
前記チェーンガイドを前記外側位置に移動させるのに必要な力以下の力が前記締結具に伝達されたときには、前記作動アームが前記外側の接続エレメントに固定的に連結された状態となり、当該外側の接続エレメントに対して回転しない。
【0020】
前記チェーンガイドの前記外側位置は、前記クランクセットのうちの最大寸法の歯車の箇所への前記伝動チェーンの位置決め動作に対応する。
前記チェーンガイドの前記内側位置は、前記クランクセットのうちの最小寸法の歯車の箇所への前記伝動チェーンの位置決め動作に対応する。
前記チェーンガイドの前記内側位置から前記外側位置への移行が、アップシフト動作を決定する。
【0021】
前記作動アームと前記外側の接続エレメントとが剛的に連結されていることにより、前記制御ケーブルの牽引によって前記作動アームに加えられた力が前記チェーンガイドを、当該チェーンガイドの前記外側位置に向かって確実に移動させる。
前記制御ケーブルの牽引力が大きければ大きいほど、前記チェーンガイドの前記外側位置への移動量も多くなる結果、前記伝動チェーンがアップシフト動作を実行するように移動する。
【0022】
本出願人は、前記作動アームを前記外側の接続エレメントに対して回転することが可能なものとすることにより、前記牽引ケーブルにより前記作動アームに加えられる力が前記チェーンガイドの移動に影響を及ぼさなくなるが、いずれにせよ前記ケーブル巻取りブッシュの回転を作動させることを見出した。
【0023】
本出願人は、前記制御ケーブルにより前記作動アームに加えられる力が前記チェーンガイドを前記外側位置に保持するのに必要な力を上回るときにのみ前記作動アームを前記外側の接続エレメントに対して回転することが可能なものとすることにより、前記ディレイラの取付け・調節段階において前記チェーンガイドの前記内側位置を前記ケーブル巻取りブッシュの前記第1のインデクシング位置に厳密に合致させることが可能となることを見出した。これにより、前記ケーブル巻取りブッシュが前記第1のインデクシング位置にあるときに、ごく僅かであるとしてもテンションを維持することができ、即座で且つ高い応答性の第1のアップシフト動作を行うことが可能となる。
【0024】
事実、本出願人は、前記チェーンガイドを前記外側位置まで移動させるように前記ケーブル巻取りブッシュを回転させても前記最後のインデクシング位置に到達しないときには、前記作動アームを前記外側の接続エレメントに対して回転させることにより、前記チェーンガイドのそれ以上の移動を引き起こさずに当該ケーブル巻取りブッシュをなおいっそう回転させて前記最後のインデクシング位置に到達させることが可能であることを見出した。
事実、前記ケーブル巻取りブッシュのこのようななおいっそうの回転が前記制御ケーブルのさらなる牽引を決定し、当該さらなる牽引が前記作動アームの前記外側の接続エレメントに対する回転だけを引き起こす。このようにして、前記ケーブル巻取りブッシュのなおいっそうの回転が、ジャミング(jamming)や機械的障害によって妨げられることなく且つ前記チェーンガイドを前記外側位置に移動させるのに必要な仕事量よりも僅かに大きい運転者の仕事量によって簡単に且つシンプルに作動されることが可能となる。
【0025】
本発明にかかる自転車のフロントディレイラは、少なくとも1つの下記の好適な構成を、単独で又は複数の組合せとして備えるものとされてもよい。
【0026】
好ましくは、前記固定体、前記可動体、前記内側の接続エレメントおよび前記外側の接続エレメントが関節接続型の四辺形機構を形成しており、当該関節接続型の四辺形機構は、前記チェーンガイドを前記外側位置から前記内側位置へと移動させるように弾力性のある前記リターン部材によって変形可能であり且つ前記チェーンガイドを前記内側位置から前記外側位置へと移動させるように前記作動アームによって変形可能である。
前記チェーンガイドのこのような運動リンク機構はシンプルで且つ信頼性が高く、前記ディレイラの正確な動作を長期にわたって可能にする。
【0027】
前記制御ケーブルが前記作動アームの前記締結具上を牽引されると、(前記外側の接続エレメントに固定的に連結されているときの)前記作動アームと当該外側の接続エレメントとが前記第1の関節接続軸心回りに回転するロッカーアームとして機能するので、前記関節接続型の四辺形機構を変形させて前記第2の関節接続軸心を動かし、これによって当該関節接続型の四辺形機構を前記チェーンガイドの前記外側位置へと変形させる。
【0028】
好ましくは、前記外側の接続エレメントと前記作動アームとの間で弾性部材が動作しており、当該弾性部材は、前記作動アームに加えられる力が前記関節接続型の四辺形機構を変形させて前記チェーンガイドを前記外側位置に移動させるのに必要な力を上回るときに弾性変形する。
このようにして、自身に働く力が所定の閾値を上回るときにのみ自身の弾性変形を可能にする(且つ前記作動のアームの前記外側の接続エレメントに対する回転を引き起こす)弾性特性を有する弾性部材が選択され得る。そのような所定の閾値は、前記関節接続型の四辺形機構を変形させて前記チェーンガイドを前記外側位置に移動させるのに必要な力を表す。
【0029】
本明細書および添付の特許請求の範囲において「弾性変形」という文言は、応力がなくなると消失する変形のことを指す。「累積」や「蓄積」弾性エネルギーなどの文言は、弾性変形時の前記弾性部材の位置エネルギーの増加のことを指す。同じく、「解放」弾性エネルギーなどの文言は、前記弾性部材を変形開始前の状態に戻すための当該弾性部材の位置エネルギーの減少のことを指す。
【0030】
好ましくは、前記弾性部材は、前記第2の関節接続軸心の箇所に配置されたトーションスプリング(torsion spring:ねじりばね)を含む。
好ましくは、前記弾性部材の前記トーションスプリングは、前記作動アームと前記外側の接続エレメントとの間にねじりプリロードをもって取り付けられており、前記トーションスプリングの当該プリロードは、前記制御ケーブルの牽引力に曝されたときの前記作動アームの前記第1の関節接続軸心回りの回転とは反対の角度方向で当該作動アームを前記第1の関節接続軸心回りに回転させる傾向の力を当該作動アームに加える。
【0031】
本明細書および添付の特許請求の範囲において「プリロード」という文言は、操作荷重の印加前、すなわち、前記制御ケーブルのテンションによって伝わるトルクの印加前に前記トーションスプリングに加えられている不変荷重(permanent load)のことを指す。
【0032】
このようにして、前記トーションスプリングのプリロードによって伝えられる力は、前記ディレイラが作動されるときに前記作動アームが前記外側の接続エレメントに対して回転するのを妨害するように働く。
好ましくは、前記外側の接続エレメントは、前記作動アームの凸部により当接係合可能であるショルダー部を有しており、当該ショルダー部及び前記凸部は、前記第1の関節接続軸心を基準として前記トーションスプリングとは反対側に配置されている。
この構成によれば、前記トーションスプリングのプリロードにより加わる押圧がショルダー部と凸部との機械的な相互作用によって補償されて、前記作動アームと前記外側の接続エレメントとは、前記トーションスプリングが弾性変形するまで互いに固定的に連結された状態となる。
事実、前記スプリングのプリロードの押圧による前記作動アームの回転は、前記制御ケーブルにより前記作動アームの前記締結具に加えられた牽引力によって前記トーションスプリングが弾性変形するときに前記作動アームが前記外側の接続エレメントに対して回転する角度方向とは反対の角度方向の回転である。
【0033】
好ましくは、前記リターン部材がリターントーションスプリング(torsional return spring)を含み、前記作動アームの前記外側の接続エレメントに対する回転を引き起こすのに前記弾性部材の前記トーションスプリングに加えられるトルクが、前記可動体の前記内側の接続エレメントに対する回転を引き起こすのに前記リターントーションスプリングに加えられるトルクよりも大きい。
これにより、前記可動体及び当該可動体と共に前記チェーンガイドが前記内側の接続エレメントに対して回転されたときにのみ、より好ましくは前記可動体が前記内側の接続エレメントに対する自身の最大回転を完了したときにのみ、前記作動アームが前記外側の接続エレメントに対して回転することが可能となる。
【0034】
好ましくは、関節接続ピンが前記第1の関節接続軸心に配置されていて、前記外側の接続エレメントと前記作動アームとに当該関節接続ピンが交差しており、前記作動アームは、当該関節接続ピンから遠ざかって前記第2の関節接続軸心側に向かう突出部(appendage)を有している。
好ましくは、前記弾性部材の前記トーションスプリングは、前記作動アームの前記突出部に当接する第1の端部および前記外側の接続エレメントにおける座部に当接する第2の端部を有している。
この構成によれば、好ましくは、前記弾性部材の前記トーションスプリングは、前記作動アームと前記外側の接続エレメントとの両方に対して直接的に作用する。
【0035】
好ましくは、前記弾性部材の前記トーションスプリングは、前記作動アームと前記外側の接続エレメントとの間にねじりプリロードをもって取り付けられており、当該トーションプリロードは、前記チェーンガイドを前記外側位置に移動させるのに前記リターントーションスプリングに加えられるねじり荷重よりも大きい。
いずれにせよ、前記弾性部材の前記トーションスプリングは、前記関節接続型の四辺形機構が前記チェーンガイドを前記外側位置に移動させてからでしか変形しないものでなければならない。
【0036】
好ましくは、前記作動アームの前記突出部は、前記外側の接続エレメント側に面する当接面を有する突起を含み、当該当接面が、前記弾性部材の前記トーションスプリングが弾性変形したときの前記作動アームの前記外側の接続エレメントに対する回転のエンドストップを形成している。
好ましくは、前記作動アームおよび前記外側の接続エレメントは、前記第1の関節接続軸心の箇所で前記固定体のうちのフォーク内に含まれている。
このようにして、前記固定体のうちの前記フォークが、前記作動アーム及び前記外側の接続エレメントを抱持して自身のかさ内にこれらを含んでいる。
【0037】
好ましくは、前記固定体のうちの前記フォークと前記作動アームと前記外側の接続エレメントとの間には、前記第1の関節接続軸心の方向にクリアランスが存在していない。
好ましくは、前記チェーンガイドを前記内側位置から前記外側位置へと移動させるのに前記作動アームの前記締結具に加えられる力が、前記第1の関節接続軸心と直交する平面内に含まれて且つ前記第1の関節接続軸心の方向に向いている。
前記作動アームの前記締結具に加えられる力は、前記作動アームに対して直交する成分と前記作動アームに対して平行である成分とを含む。
好ましくは、前記作動アームに対して直交する成分は前記チェーンガイドが前記外側位置に向かって移動するにつれて徐々に増加し、前記作動アームに対して平行である成分は前記チェーンガイドが前記外側位置に向かって移動するにつれて徐々に減少する。
【0038】
好ましくは、前記作動アームの前記締結具と前記第1の関節接続軸心との間の距離が、前記作動アームの前記外側の接続エレメントに対する回転時のあいだ一定のままである。
このようにして、前記制御ケーブルは、前記チェーンガイドが前記外側位置に移動するにつれて徐々に増加するトルクを前記弾性部材に伝達する。
【0039】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図面を参照しながら行う、本発明の好適な実施形態についての以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本発明にかかる自転車のフロントディレイラの斜視図である。
【
図2】
図1のディレイラが自転車のチューブに取り付けられている様子を示す側面図である。
【
図3】
図1のディレイラの細部を示す斜視図である。
【
図5】
図1のディレイラの幾つかの細部を示す部分分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
添付の図面を参照する。同図には、本発明にかかる自転車のフロントディレイラの好適な一実施形態が示されている。当該ディレイラの全体に符号10を付す。
好ましくは、フロントディレイラ10はメカニカル・ディレイラであり、すなわち、自身の動作に電気装置および/または電子装置を必要としない。
【0042】
ディレイラ10はチェーンガイド11を備える。チェーンガイド11は、自転車の伝動チェーン(図示せず)にスライド係合して、当該伝動チェーンを内側位置から外側位置へと、当該内側位置と当該外側位置との間に介在する複数の位置を経由して移動させるように構成されている。
チェーンガイド11の予め決められた位置は、前記クランクセットのクラウンギヤ上での前記伝動チェーンの所定の位置に対応している。
具体的に述べると、チェーンガイド11の前記内側位置は前記クランクセットのうちの最小寸法のクラウンギヤ上への前記伝動チェーンの位置に対応し、前記外側位置は前記クランクセットのうちの最大寸法のクラウンギヤ上への前記伝動チェーンの位置に対応する。
【0043】
ディレイラ10は、チェーンガイド11の可動域を制限する内側のエンドストップ(図示せず)及び外側のエンドストップ(図示せず)を備える。これら内側および外側のエンドストップは、(
図4に示すように)ディレイラ10に設けられたねじ12を操作することによって調節可能である。具体的に述べると、チェーンガイド11が前記内側位置にあるときの当該チェーンガイド11の内側方向へのそれ以上の移動が、前記内側のエンドストップによって機械的に妨げられる。チェーンガイド11が前記外側位置にあるときの当該チェーンガイド11の外側方向へのそれ以上の移動が、前記外側のエンドストップによって機械的に妨げられる。
【0044】
チェーンガイド11の移動は、変形可能な四辺形機構13によって作動される。変形可能な四辺形機構13は、内側の接続エレメント14、外側の接続エレメント15、固定体16および可動体17を含む。変形可能な四辺形機構13のうちの可動体17に、チェーンガイド11が固定的に接続されている。
固定体16と可動体17と2つの接続エレメント14,15とは、互いに平行な4つの関節接続軸心A,B,C,Dに沿って互いに関節接続されている。具体的に述べると、固定体16と外側の接続エレメント15とは、第1の関節接続軸心Aに従って互いに関節接続されている。外側の接続エレメント15と可動体17とは、第2の関節接続軸心Bに従って互いに関節接続されている。固定体16と内側の接続エレメント14とは、第3の関節接続軸心Cに従って互いに関節接続されている。内側の接続エレメント14と可動体17とは、第4の関節接続軸心Dに従って互いに関節接続されている。
【0045】
可動体17は、外側プレート19と対向する内側プレート18を具備する。これら内側プレート18と外側プレート19とが、前記チェーンガイド11を形成している。可動体17には、さらに、内側の接続エレメント14との接続用の(前記第4の関節接続軸心Dに沿って孔が開けられている)第1のフランジ20および外側の接続エレメント15との接続用の第2のフランジ21が設けられている。
運動学的にみて、内側および外側の接続エレメント14,15はコネクティングロッドであり、すなわち、自身とそれぞれの関節接続軸心に沿って接続されている部品に対してトルクを伝えることのできない部品である。
【0046】
固定体16は、
図2に概略的に示すように、自転車のフレームのシートチューブのうちの一部に取り付けるためのカラー部22を有している。カラー部22は、ディレイラ10が前記クランクセットに対して所定の位置を取って当該所定の位置を維持することを可能にする。
図示しない実施形態では、例えば前記固定体16を前記フレームのシートチューブに溶接する、固定体16を前記フレームのシートチューブに直接形成された突出部に拘束する等により、カラー部22を用いずに固定体16が自転車の前記フレームのシートチューブに固定的に連結されることが可能である。
【0047】
ディレイラ10は、さらに、固定体16へと第1の関節接続軸心A回りにヒンジ接続された作動アーム23を備える。
作動アーム23は第1の自由端部23aに、制御ケーブル100のための締結具24を具備している(
図1)。作動アーム23の第2の端部23bは、第1の関節接続軸心Aを基準として締結具24とは反対側に配置されている。
【0048】
第1の関節接続軸心Aの箇所には、固定体16と外側の接続エレメント15と作動アーム23とに挿通された関節接続ピン25が存在している。
これに関して言えば、固定体16が第1の関節接続軸心Aの箇所にフォーク16aを有しており、当該フォーク16aが外側の接続エレメント15と作動アーム23とを、当該外側の接続エレメント15及び当該作動アーム23が第1の関節接続軸心Aの方向に拘束されて且つ当該方向に動けないように受入れ・抱持している。
【0049】
作動アーム23と外側の接続エレメント15との間には、作動アーム23の第2の端部23bに押圧(スラスト)を加えるようにプリロードをもって取り付けられたトーションスプリング26が存在している。
トーションスプリング26のプリロードによって加えられる押圧は、作動アーム23を第1の関節接続軸心A回りに第1の角度方向に回転させる傾向がある。
【0050】
外側の接続エレメント15は、溝27を有している。溝27には、第1の関節接続軸心Aよりも上に、すなわち、第1の関節接続軸心Aを基準として第2の関節接続軸心Bとは反対側に配置されたショルダー部28が備え付けられている(
図3および
図5)。
溝27には、作動アーム23の凸部29が係合している。
トーションスプリング26によって加えられる押圧が、凸部29をショルダー部28へと当接させる。
【0051】
作動アーム23の外側の接続エレメント15に対する前記第1の関節接続軸心A回りの回転は、前記第1の角度方向ではショルダー部28への凸部29の当接によって妨げられ、前記第1の角度方向とは反対の第2の角度方向ではトーションスプリング26の弾性抵抗により妨げられる。
つまり、作動アーム23は、トーションスプリング26が弾性変形したときにのみ外側の接続エレメント15に対して前記第2の角度方向に沿って回転することができる。
これに関して言えば、トーションスプリング26を弾性変形させて作動アーム23を前記第2の角度方向に回転させる傾向を持つ力は、制御ケーブル100が運転者によって牽引されたときに作動アーム23に伝えられる。
【0052】
制御ケーブル100により伝えられるこのような力がトーションスプリング26を弾性変形するのに十分でないときには、作動アーム23と外側の接続エレメント15とが互いに回転することなくロッカーアームを形成し、当該ロッカーアームが第1の関節接続軸心A回りに回転することが可能となる。
このような状態では、前記ロッカーアームの回転によって関節接続型の四辺形機構13が変形し、チェーンガイド11を前記外側位置に向かって移動させる。
【0053】
制御ケーブル100によって伝えられる力が所定の限度を上回ると、トーションスプリング26が弾性変形し、作動アーム23が外側の接続エレメント15に対して第1の関節接続軸心A回りに前記第2の角度方向に回転する。
制御ケーブル100によって伝えられる力がトーションスプリング26を弾性変形させる境界となる前記限度は、制御ケーブル100によって伝えられる力であって、前記ロッカーアームを回転させてチェーンガイド11を前記外側位置まで移動させるのに必要となる力により与えられる。
【0054】
トーションスプリング26は、
図3に示すように、作動アーム23のうちの当該作動アーム23の第2の端部23bに設けられた突出部30に当接する第1のステム部26aを有している。
突出部30は突起30aを含み、当該突起30aは外側の接続エレメント15側に面する当接面を有している。
トーションスプリング26の第2のステム部26bは、外側の接続エレメント15における座部31に当接している。
トーションスプリング26には、第2の関節接続軸心Bを定めるピンが通されている。
【0055】
制御ケーブル100の解放時にチェーンガイド11を前記内側位置へと戻すために、第4の関節接続軸心Dの箇所に配置されたリターントーションスプリング32であって、可動体17と内側の接続エレメント14との間で動作するリターントーションスプリング32が想定されている(
図1)。
このようなリターントーションスプリング32は、チェーンガイド11の前記内側位置から前記外側位置への移行時に弾性変形して抵抗を生じさせるものなので、チェーンガイド11を前記内側位置から前記外側位置へと移動させるには制御ケーブル100によって所定の力が、作動アーム23に伝えられなければならない。リターントーションスプリング32の弾性変形は、チェーンガイド11の前記外側位置から前記内側位置への移行時に元に戻る。
【0056】
トーションスプリング26は、チェーンガイド11の前記内側位置から前記外側位置への移行時にリターントーションスプリング32は変形しても自身は変形しないように選択されている。
これにより、チェーンガイド11の前記内側位置から前記外側位置への可動域全体において作動アーム23と外側の接続エレメント15とがロッカーアームのように振る舞うことが確実となる。
【0057】
運転者がアップシフト動作を実行したいときには、当該運転者が自転車のハンドルバーに設置された前記制御手段を作動することによって、前記ケーブル巻取りブッシュを回転させて制御ケーブル100を緊張させる。
制御ケーブル100のテンションが作動アーム23に伝えられて、当該作動アーム23及び外側の接続エレメント15が第1の関節接続軸心Aを中心として回転する。
【0058】
このような回転が変形可能な四辺形機構13の変形を決定し、前記チェーンガイドを前記外側位置に向かって移動させる。
この状態では、前記制御ケーブルにより加わるテンションがトーションスプリング26を変形させることができないので、作動アーム23と外側の接続エレメント15とは固定的に連結された状態となる。
【0059】
前記変形可能な四辺形機構の変形はリターントーションスプリング32に抗して発生し、当該リターントーションスプリング32が変形して弾性エネルギーを蓄積する。
前記ケーブル巻取りブッシュが前記インデクサ上の安定した位置に到達し、この到達した位置に当該システムがロックされる。
【0060】
最後のアップシフト動作が終わって、チェーンガイド11が前記外側位置にあるときの前記制御手段のさらなる作動が、前記ケーブル巻取りブッシュのなおいっそうの回転であって、当該ケーブル巻取りブッシュが安定した最後のインデクシング位置に配置されるための回転を決定する。このように(前記ケーブル巻取りブッシュのなおいっそうの回転によって引き起こされて)制御ケーブル100により作動アーム23に加えられるさらなる牽引力が、トーションスプリング26の弾性変形を決定する結果、作動アーム23が外側の接続エレメント15に対して前記第2の角度方向に回転する。
なお、作動アーム23の外側の接続エレメント15に対する回転は、関節接続型の四辺形機構13の位置に変化を引き起こさない。
【0061】
作動アーム23の外側の接続エレメント15に対する回転は、作動アーム23の前記突出部30の前記突起30aが、外側の接続エレメント15のうちの当該突出部30に(
図5に示すように)直接面している当接面31aに当接することによって制限される。
いずれにせよ、作動アーム23の外側の接続エレメント15に対する回転についてのこのような制限は、前記ケーブル巻取りブッシュを前記インデクサ上の安定した最後の位置へと到達させるのに十分な回転を当該ケーブル巻取りブッシュに実行させるには十分なものとされる。
【0062】
最後のアップシフト動作で到達した前記安定した位置からの第1のダウンシフト動作時には、制御ケーブル100の解放がトーションスプリング26に蓄積された弾性エネルギーの解放を決定し、当該弾性エネルギーが作動アーム23を外側の接続エレメント15に対して前記第1の角度方向へと、凸部29がショルダー部28に再び当接するまで回転させる。
【0063】
制御ケーブル100のなおいっそうの解放が、ダウンシフト動作、あるいは、同じクラウンギヤ上での前記伝動チェーンの位置をより良好に調節するための当該同じクラウンギヤ上へのチェーンガイド11の再配置動作を決定する。このようなダウンシフト動作時には、作動アーム23と外側の接続エレメント15とが、第1の関節接続軸心A回りの回転のあいだ固定的に連結された状態のまま維持される。
【0064】
当然ながら、当業者であれば、その時々の要件や偶発的な要件を満足するために、前述した本発明に様々な変更や変形(例えば、トーションスプリング26の位置を異ならせる等)を施すことが可能であり、いずれにせよ、これら変更や変形の全ては添付の特許請求の範囲により定まる本発明の保護範囲に含まれる。
以下、本発明に含まれる態様を記す。
〔態様1〕自転車のフロントディレイラ(10)であって、
-チェーンガイド(11)が設けられた可動体(17)であって、前記チェーンガイド(11)が、前記自転車の伝動チェーンと相互作用するように構成されていて且つ内側位置と外側位置との間に含まれる複数の位置間で移動可能である、可動体(17)と、
-前記自転車のフレームのうちの一部に固定されるように構成された固定体(16)と、
-前記固定体(16)へと第1の関節接続軸心(A)回りにヒンジ接続されていて且つ前記可動体(17)へと第2の関節接続軸心(B)回りにヒンジ接続されている、外側の接続エレメント(15)と、
-前記固定体(16)へと第3の関節接続軸心(C)回りにヒンジ接続されていて且つ前記可動体(17)へと第4の関節接続軸心(D)回りにヒンジ接続されている、内側の接続エレメント(14)と、
-前記チェーンガイド(11)を前記内側位置にプッシュするように前記可動体(17)と前記内側の接続エレメント(14)との間で動作するリターン部材と、
-前記固定体(16)へと前記第1の関節接続軸心(A)回りにヒンジ接続されていて且つ制御ケーブル(100)のための締結具(24)を具備している作動アーム(23)であって、前記締結具(24)が、前記第1の関節接続軸心(A)から前記第2の関節接続軸心(B)の方とは反対側に離れるように配置されている、作動アーム(23)と、を備え、
-前記締結具(24)に加えられる力が前記チェーンガイド(11)の前記内側位置と前記外側位置との間での移動を決定するような力であるときには、前記作動アーム(23)と前記外側の接続エレメント(15)とがロッカーアームを形成するように剛的に連結されたものとなり、前記締結具(24)に加えられる力が前記チェーンガイド(11)を前記外側位置に保持するのに必要な力を上回るときには、前記作動アーム(23)が前記外側の接続エレメント(15)に対して回転する、フロントディレイラ(10)。
〔態様2〕態様1に記載のフロントディレイラ(10)において、前記固定体(16)、前記可動体(17)、前記内側の接続エレメント(14)および前記外側の接続エレメント(15)が関節接続型の四辺形機構(13)を形成しており、当該関節接続型の四辺形機構(13)は、前記チェーンガイド(11)を前記外側位置から前記内側位置へと移動させるように弾性の前記リターン部材によって変形可能であり、且つ前記チェーンガイド(11)を前記内側位置から前記外側位置へと移動させるように前記作動アーム(23)によって変形可能である、フロントディレイラ(10)。
〔態様3〕態様2に記載のフロントディレイラ(10)において、さらに、
前記外側の接続エレメント(15)と前記作動アーム(23)との間で動作する弾性部材であって、当該弾性部材は、前記作動アーム(23)に加えられる力が前記関節接続型の四辺形機構(13)を変形させて前記チェーンガイド(11)を前記外側位置に移動させるのに必要な力を上回るときに弾性変形する、フロントディレイラ(10)。
〔態様4〕態様3に記載のフロントディレイラ(10)において、前記弾性部材が、前記第2の関節接続軸心(B)の箇所に配置されたトーションスプリング(26)を含む、フロントディレイラ(10)。
〔態様5〕態様4に記載のフロントディレイラ(10)において、前記弾性部材の前記トーションスプリング(26)が、前記作動アーム(23)と前記外側の接続エレメント(15)との間にねじりプリロードをもって取り付けられており、前記トーションスプリング(26)の当該プリロードは、前記制御ケーブル(100)の牽引力に曝されたときの前記作動アーム(23)の前記第1の関節接続軸心(A)回りの回転とは反対の角度方向で当該作動アーム(23)を前記第1の関節接続軸心(A)回りに回転させる傾向の力を当該作動アーム(23)に加える、フロントディレイラ(10)。
〔態様6〕態様5に記載のフロントディレイラ(10)において、前記外側の接続エレメント(15)が、前記作動アーム(23)の凸部(29)により当接係合可能であるショルダー部(28)を有しており、前記ショルダー部(28)及び前記凸部(29)は、前記第1の関節接続軸心(A)を基準として前記トーションスプリング(26)とは反対側に配置されている、フロントディレイラ(10)。
〔態様7〕態様4から6のいずれか一態様に記載のフロントディレイラ(10)において、前記リターン部材がリターントーションスプリング(32)を含み、前記作動アーム(23)の前記外側の接続エレメント(15)に対する回転を引き起こすのに前記弾性部材の前記トーションスプリング(26)に加えられるトルクが、前記可動体(17)の前記内側の接続エレメント(15)に対する回転を引き起こすのに前記リターントーションスプリング(32)に加えられるトルクよりも大きい、フロントディレイラ(10)。
〔態様8〕態様4から7のいずれか一態様に記載のフロントディレイラ(10)において、さらに、前記第1の関節接続軸心(A)の箇所に配置された関節接続ピン(25)、
を備え、前記外側の接続エレメント(15)と前記作動アーム(23)とに前記関節接続ピン(25)が交差しており、前記作動アーム(23)は、当該関節接続ピン(25)から前記第2の関節接続軸心(B)に向かって遠ざかるようにして延びる突出部(30)を有している、フロントディレイラ(10)。
〔態様9〕態様8に記載のフロントディレイラ(10)において、前記弾性部材の前記トーションスプリング(26)が、前記作動アーム(23)の前記突出部(30)に当接する第1の端部(26a)および前記外側の接続エレメントにおける座部(31)に当接する第2の端部(26b)を有している、フロントディレイラ(10)。
〔態様10〕態様7に記載のフロントディレイラ(10)において、前記弾性部材の前記トーションスプリング(26)が、前記作動アーム(23)と前記外側の接続エレメント(15)との間にねじりプリロードをもって取り付けられており、当該ねじりプリロードは、前記チェーンガイド(11)を前記外側位置に移動させるのに前記リターン部材の前記トーションスプリング(26)に加えられるねじり荷重よりも大きい、フロントディレイラ(10)。
〔態様11〕態様7に記載のフロントディレイラ(10)において、前記作動アーム(23)の前記突出部(30)が、前記外側の接続エレメント(15)側に面する突起(30a)を含み、当該突起(30a)が、前記作動アーム(23)の前記外側の接続エレメント(15)に対する回転のエンドストップブロックを形成している、フロントディレイラ(10)。
〔態様12〕態様1から11のいずれか一態様に記載のフロントディレイラ(10)において、前記チェーンガイド(11)を前記内側位置から前記外側位置へと移動させるのに前記作動アーム(23)の前記締結具(24)に加えられる力が、前記第1の関節接続軸心(A)と直交する平面内に含まれる、フロントディレイラ(10)。
〔態様13〕態様1から12のいずれか一態様に記載のフロントディレイラ(10)において、前記作動アーム(23)の前記締結具(24)と前記第1の関節接続軸心(A)との間の距離が、前記作動アーム(23)の前記外側の接続エレメント(15)に対する回転時の間、一定のままである、フロントディレイラ(10)。
【符号の説明】
【0065】
10 フロントディレイラ
11 チェーンガイド
12 ねじ
13 四辺形機構
14 内側の接続エレメント
15 外側の接続エレメント
16 固定体
16a フォーク
17 可動体
18 内側プレート
19 外側プレート
20 第1のフランジ
21 第2のフランジ
22 カラー部
23 作動アーム
23a 第1の自由端部
23b 第2の端部
24 締結具
25 関節接続ピン
26 トーションスプリング
26a 第1の端部
26b 第2の端部
27 溝
28 ショルダー部
29 凸部
30 突出部
30a 突起
31 座部
31a 当接面
32 リターントーションスプリング
100 制御テーブル
A 関節接続軸心
B 関節接続軸心
C 関節接続軸心
D 関節接続軸心