(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】ハニカム構造体
(51)【国際特許分類】
F01N 3/24 20060101AFI20220111BHJP
F01N 3/20 20060101ALI20220111BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20220111BHJP
C04B 38/00 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
F01N3/24 L
F01N3/20 K
F01N3/28 301P
C04B38/00 303Z
(21)【出願番号】P 2018063072
(22)【出願日】2018-03-28
【審査請求日】2020-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 尚哉
【審査官】稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/151823(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/043749(WO,A1)
【文献】特開2014-198318(JP,A)
【文献】特開2014-198320(JP,A)
【文献】特開平8-28250(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00-3/38
C04B 38/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流路となり流体の流入側の端面である流入端面から流体の流出側の端面である流出端面まで延びる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と、最外周に位置する外周壁とを有する円柱状のハニカム構造部、及び前記ハニカム構造部の側面に配設された一対の電極部とを備え、
前記一対の電極部のそれぞれが、前記ハニカム構造部のセルの延びる方向に延びる帯状に形成され、
前記セルの延びる方向に直交する断面において、前記一対の電極部における一方の前記電極部が、前記一対の電極部における他方の前記電極部に対して、前記ハニカム構造部の中心を挟んで対向するように配設されるハニカム構造体であって、
前記ハニカム構造部が、側面を含む外周領域、中央の領域である中央領域、及び前記外周領域と中央領域を除いた中間領域から構成され、
前記外周領域を構成する材料の平均電気抵抗率Aと、前記中央領域を構成する材料の平均電気抵抗率Bと、前記中間領域を構成する材料の平均電気抵抗率Cとが、A≦B<Cの関係を満たすハニカム構造体。
【請求項2】
前記ハニカム構造部が、珪素-炭化珪素複合材又は炭化珪素を主成分とする請求項
1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
前記ハニカム構造部の電気抵抗率が、0.1~100Ωcmであり、前記電極部の電気抵抗率が、0.001~1.0Ωcmである請求項1
又は2に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
前記電極部の中心角が60~120°である請求項1~
3のいずれかに記載のハニカム構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体に関する。とりわけ、均一に(発熱分布の偏り無く)発熱させることができるハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コージェライトや炭化珪素を材料とするハニカム構造体に触媒を担持したものが、自動車エンジンから排出された排ガス中の有害物質の処理に用いられている(例えば、特許文献1を参照)。このようなハニカム構造体は、排ガスの流路となり一方の底面から他方の底面まで延びる複数のセルを区画形成する隔壁を有する柱状のハニカム構造体を一般に有する。
【0003】
ハニカム構造体に担持した触媒によって排ガスを処理する場合、触媒を所定の温度まで昇温する必要があるが、エンジン始動時には、触媒温度が低いため、排ガスが十分に浄化されないという問題が従来生じていた。そこで、導電性セラミックスからなるハニカム構造体に電極を配設し、通電によりハニカム構造体自体を発熱させることで、ハニカム構造体に担持された触媒をエンジン始動前又はエンジン始動時に活性温度まで昇温する電気加熱触媒(EHC)と呼ばれるシステムが開発されてきた。
【0004】
例えば、特許文献1においては、触媒担体であると共に電圧を印加することによりヒーターとしても機能し、電圧を印加したときの温度分布の偏りを抑制することができるハニカム構造体が提案されている。具体的には、柱状のハニカム構造体の側面に一対の電極部をハニカム構造体のセルの延びる方向に延びる帯状に配設し、セルの延びる方向に直交する断面において、一対の電極部における一方の電極部を、一対の電極部における他方の電極部に対して、ハニカム構造体の中心を挟んで対向するように配設することで電圧を印加したときの温度分布の偏りを抑制することが提案されている。
【0005】
ハニカム構造を有する部分(すなわち、触媒の担体となる部分。以下「ハニカム構造部」という。)は、通常、電極部より電気抵抗が高いため、電極部に接続される端子からの電流は当該電極部において広げられてからハニカム構造部に流れる傾向がある。しかしながら、ハニカム構造体内部の電気抵抗が均一である場合、ハニカム構造部を通過する距離が短い電極部の端部付近に多くの電流が流れ、ハニカム構造部の発熱分布が偏り触媒の加熱にばらつきが生じるという問題があった。
【0006】
この問題に対して、特許文献2はではその方策として「外装をなす中空のケースと・・・前記端子間のすべての電流経路の電気抵抗が等しくなるように前記担体の隔壁の厚さが設定される」ことを開示している(特許文献2の明細書段落0009)。
【0007】
また、特許文献3はその方策として「流体の流路となり・・・外周領域を構成する材料の電気抵抗率が、前記中央領域を構成する材料の電気抵抗率より低いハニカム構造体とある」ことを開示している(特許文献3の明細書段落0013)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2013/146955号
【文献】特開2011-99405号公報
【文献】特開2014-198321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2では、ハニカム構造部の隔壁の厚さを、所定の条件を満たすように設定することでハニカム構造部を均等に加熱しようとするものだが、ハニカム構造部の隔壁の厚さを電流に合わせて設定すると部分的に機械的強度が低い場所ができ、触媒担体としての強度が低下するという問題がある。
【0010】
また、特許文献3では、ハニカム構造部の電気抵抗率を中央領域より外周領域の方を低く設定することでハニカム構造部を均等に加熱しようとするものだが、外周領域の電気抵抗率が低いと外周部を電流が流れ中央領域が加熱されにくいという問題がある。
【0011】
本発明は以上の問題を勘案してされたものであり、従来技術よりも均一に(発熱分布の偏り無く)発熱させることができるハニカム構造体を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は鋭意検討の結果、ハニカム構造部のセルの延びる方向に直交する断面における電気抵抗率の分布を制御することにより、上記課題を解決できることを見出した。すなわち、本発明は以下のように特定される。
(1)流体の流路となり流体の流入側の端面である流入端面から流体の流出側の端面である流出端面まで延びる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と、最外周に位置する外周壁とを有する円柱状のハニカム構造部、及び前記ハニカム構造部の側面に配設された一対の電極部とを備え、
前記一対の電極部のそれぞれが、前記ハニカム構造部のセルの延びる方向に延びる帯状に形成され、
前記セルの延びる方向に直交する断面において、前記一対の電極部における一方の前記電極部が、前記一対の電極部における他方の前記電極部に対して、前記ハニカム構造部の中心を挟んで対向するように配設されるハニカム構造体であって、
前記ハニカム構造部が、側面を含む外周領域、中央の領域である中央領域、及び前記外周領域と中央領域を除いた中間領域から構成され、
前記外周領域を構成する材料の平均電気抵抗率Aと、前記中央領域を構成する材料の平均電気抵抗率Bと、前記中間領域を構成する材料の平均電気抵抗率Cとが、A≦B<Cの関係を満たすハニカム構造体。
(2)前記ハニカム構造部が、珪素-炭化珪素複合材又は炭化珪素を主成分とする(1)に記載のハニカム構造体。
(3)前記ハニカム構造部の電気抵抗率が、0.1~100Ωcmであり、前記電極部の電気抵抗率が、0.001~1.0Ωcmである(1)又は(2)に記載のハニカム構造体。
(4)前記電極部の中心角が60~120°である(1)~(3)のいずれかに記載のハニカム構造体。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来技術よりも均一に発熱させることができるハニカム構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明におけるハニカム構造部の一例を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態におけるハニカム構造体の断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態における電極部の中心角を示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態における外周領域、中央領域及び中間領域を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態における電流パスの概略を示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態における外周領域、中央領域及び中間領域の温度及び電気抵抗率の測定箇所を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の電気加熱型触媒用担体の実施の形態について説明するが、本発明は、これに限定されて解釈されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものである。
【0016】
(1.ハニカム構造部)
図1は本実施形態におけるハニカム構造体100のハニカム構造部の一例を示すものである。ハニカム構造部10は、流体の流路となり流体の流入側の端面である流入端面から流体の流出側の端面である流出端面まで延びる複数のセル12を区画形成する多孔質の隔壁11と、最外周に位置する外周壁とを有する。セル12の数、配置、形状等及び隔壁11の厚み等は制限されず、必要に応じて適宜設計することができる。
【0017】
ハニカム構造部10は導電性を有する限り特に材質に制限はなく、金属やセラミックス等を使用可能である。特に、耐熱性と導電性の両立の観点から、ハニカム構造部10の材質は、珪素-炭化珪素複合材又は炭化珪素を主成分とするものであることが好ましく、珪素-炭化珪素複合材又は炭化珪素であることが更に好ましい。ハニカム構造部の電気抵抗率を下げるために、ケイ化タンタル(TaSi2)、ケイ化クロム(CrSi2)を配合することもできる。ハニカム構造部10が珪素-炭化珪素複合材を主成分とするというのは、ハニカム構造部10が珪素-炭化珪素複合材(合計質量)を、ハニカム構造部全体の90質量%以上含有していることを意味する。ここで、珪素-炭化珪素複合材は、骨材としての炭化珪素粒子、及び炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素を含有するものであり、複数の炭化珪素粒子が、炭化珪素粒子間に細孔を形成するようにして、珪素によって結合されていることが好ましい。また、ハニカム構造部10が炭化珪素を主成分とするというのは、ハニカム構造部10が炭化珪素(合計質量)を、ハニカム構造部全体の90質量%以上含有していることを意味する。
【0018】
ハニカム構造部10の電気抵抗率は、印加する電圧に応じて適宜設定すればよく、特段の制限はないが、例えば0.01~100Ω・cmとすることができる。64V以上の高電圧用には2~200Ω・cmとすることができ、典型的には5~100Ω・cmとすることができる。また、64V未満の低電圧用には0.001~2Ω・cmとすることができ、典型的には0.001~1Ω・cmとすることができ、より典型的には0.01~1Ω・cmとすることができる。ここでハニカム構造部10の電気抵抗率とは、マルチメーターにて4端子法で測定した場合の電気抵抗率をいう。
また、外周領域、中央領域及び中間領域におけるハニカム構造部10の電気抵抗率の分布は後述する。
【0019】
ハニカム構造部10の隔壁11の気孔率は、35~60%であることが好ましく、35~45%であることが更に好ましい。気孔率が、35%未満であると、焼成時の変形が大きくなってしまうことがある。気孔率が60%を超えるとハニカム構造部の強度が低下することがある。気孔率は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0020】
ハニカム構造部10の隔壁11の平均細孔径は、2~15μmであることが好ましく、4~8μmであることが更に好ましい。平均細孔径が2μmより小さいと、電気抵抗率が大きくなりすぎることがある。平均細孔径が15μmより大きいと、電気抵抗率が小さくなりすぎることがある。平均細孔径は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0021】
セル12の流路方向に直交する断面におけるセル12の形状に制限はないが、四角形、六角形、八角形、又はこれらの組み合わせであることが好ましい。これ等のなかでも、正方形及び六角形が好ましい。セル形状をこのようにすることにより、ハニカム構造部10に排ガスを流したときの圧力損失が小さくなり、触媒の浄化性能が優れたものとなる。
【0022】
ハニカム構造部10の外形は円柱状である限り特に限定されない。また、ハニカム構造部10の大きさは、耐熱性を高める(外周側壁の周方向に入るクラックを防止する)という観点から、底面の面積が2000~20000mm2であることが好ましく、4000~10000mm2であることが更に好ましい。また、ハニカム構造部10の軸方向の長さは、耐熱性を高める(外周側壁において中心軸方向に平行に入るクラックを防止する)という観点から、50~200mmであることが好ましく、75~150mmであることが更に好ましい。
【0023】
また、本実施形態のハニカム構造体100のハニカム構造部10の最外周を構成する外周壁3の厚さは、0.1~2mmであることが好ましい。0.1mmより薄いと、ハニカム構造体100の強度が低下することがある。2mmより厚いと、触媒を担持する隔壁の面積が小さくなることがある。
【0024】
また、ハニカム構造部10に触媒を担持することにより、ハニカム構造部10を触媒用担体として使用することが可能である。
【0025】
本実施形態において、ハニカム構造部10を、セル12の延びる方向に直交する断面において、側面を含む外周領域、中央の領域である中央領域、及び前記外周領域と中央領域を除いた中間領域に分けて考察するとき、外周領域を構成する材料の平均電気抵抗率Aと、中央領域を構成する材料の平均電気抵抗率Bと、中間領域を構成する材料の平均電気抵抗率Cとが、A≦B<Cの関係を満たすことが肝要である。
【0026】
ここで、外周領域、中央領域及び中間領域は、以下のように定義される。ハニカム構造部10の半径をrとして、当該ハニカム構造部10の中心O(すなわち、当該円形断面の円心)から、0から1/3rまでの距離にある領域を中央領域とし、1/3rを超えて2/3rまでの距離にある領域を中間領域とし、2/3rを超えてrまでの距離にある領域を外周領域とする。
【0027】
A≦B<Cの関係を満たす場合、中央領域及び外周領域の電気抵抗率はいずれも中央領域の電気抵抗率より低いから、電極部21、21に電圧が印加された際、電流は当該電極部において広げられてから、ハニカム構造部10の外周と中央の両パスで多く流れることになる(
図5参照)。そのため、ハニカム構造部10の外周領域のみに電流が流れる場合に比べて、ハニカム構造部10の中央領域も加熱され、これによりハニカム構造部10の全体は電流熱又は隔壁の熱伝導によって加熱され、温度分布がより均一になる。
【0028】
また、A、B及びCのそれぞれの好ましい範囲は前述と同様である。
【0032】
(2.電極部)
図2に示されるように、本実施形態に係るハニカム構造部10は、ハニカム構造部10の中心Oを挟んで、外周側壁の外面に接触する状態でハニカム構造部の対向するように設けられた一対の電極部21を備える。一対の電極部21,21のそれぞれが、ハニカム構造部10のセル12の延びる方向に延びる「帯状」に形成されている。このように、本実施形態のハニカム構造体100は、電極部21が帯状に形成され、電極部21の長手方向が、ハニカム構造部10のセル12の延びる方向であり、一対の電極部21,21がハニカム構造部10の中心Oを挟んで対向するように配設されている。
【0033】
そして、更に、セル12の延びる方向に直交する断面において、それぞれの電極部21、21の中心角αが、60~120°であることが好ましい。更に、セル12の延びる方向に直交する断面において、電極部21,21の中心角αの上限値は、110が好ましく、100が更に好ましい。また、セル12の延びる方向に直交する断面において、電極部21,21の中心角αの下限値は、70が好ましく、80が更に好ましい。また、一方の電極部21の中心角αは、他方の電極部21の中心角αに対して、0.8~1.2倍の大きさであることが好ましく、1.0倍の大きさ(同じ大きさ)であることが更に好ましい。これにより、一対の電極部21、21間に電圧を印加した時に、ハニカム構造部の外周と中央領域のそれぞれを流れる電流の偏りを抑制することができる。そして、ハニカム構造部の外周と中央領域のそれぞれにおいて、発熱の偏りを抑制することができる。
ここで中心角αとは、セル12の延びる方向に直交する断面において、電極部21の両端部とハニカム構造部の中心Oを結ぶ直線がなす角度をいう(
図3参照)。なお、
図3では、一対の電極部21のそれぞれの中心角αが同じ大きさである。
【0034】
本実施形態のハニカム構造体100においては、電極部21の電気抵抗率は、ハニカム構造部10の外周壁の電気抵抗率より低いものであることが好ましい。更に、電極部21の電気抵抗率は、ハニカム構造部10の外周壁の電気抵抗率の、0.1~10%であることが更に好ましく、0.5~5%であることが特に好ましい。0.1%より低いと、電極部21に電圧を印加したときに、電極部21内を「電極部の端部」まで流れる電流の量が多くなり、ハニカム構造部10に流れる電流に偏りが生じ易くなることがある。そして、ハニカム構造部10が均一に発熱し難くなることがある。10%より高いと、電極部21に電圧を印加したとき、電極部21内を広がる電流の量が少なくなり、ハニカム構造部10に流れる電流に偏りが生じ易くなることがある。そして、ハニカム構造部10が均一に発熱し難くなることがある。
【0035】
電極部21の厚さは、0.01~5mmであることが好ましく、0.01~3mmであることが更に好ましい。このような範囲とすることにより、ハニカム構造部の均一的な発熱に寄与することができる。電極部21の厚さが0.01mmより薄いと、電気抵抗率が高くなり均一に発熱できないことがある。電極部21の厚さが5mmより厚いと、キャニング時に破損することがある。
【0036】
図1に示されるように、本実施形態のハニカム構造体100は、電極部21、21のそれぞれが、ハニカム構造部10のセル12の延びる方向に延びると共に「両端部間(両端面13、14間)に亘る」帯状に形成されている。このように、本実施形態のハニカム構造体100は、一対の電極部21、21が、ハニカム構造部10の両端部間に亘るように配設されている。これにより、一対の電極部21,21間に電圧を印加した時に、ハニカム構造部の軸方向(すなわち、セル12が延びる方向)における電流の偏りを、より効果的に抑制することができる。ここで、「電極部21が、ハニカム構造部10の両端部間に亘るように形成(配設)されている」というときは、以下のことを意味する。つまり、電極部21の一方の端部がハニカム構造部10の一方の端部(一方の端面)に接し、電極部21の他方の端部がハニカム構造部10の他方の端部(他方の端面)に接していることを意味する。
【0037】
一方、電極部21の「ハニカム構造部10のセル12の延びる方向」における少なくとも一方の端部が、ハニカム構造部10の端部(端面)に接していない(到達していない)状態も好ましい態様である。これにより、ハニカム構造体の耐熱衝撃性を向上させることができる。
【0038】
本実施形態のハニカム構造体100においては、例えば、
図1~
図3に示されるように、電極部21は、平面状の長方形の部材を、円柱形状の外周に沿って湾曲させたような形状となっている。ここで、湾曲した電極部21を、湾曲していない平面状の部材に変形したときの形状を、電極部21の「平面形状」と称することにする。上記、
図1~
図3に示される電極部21の「平面形状」は、長方形になる。そして、「電極部の外周形状」というときは、「電極部の平面形状における外周形状」を意味する。
【0039】
本実施形態のハニカム構造体100においては、帯状の電極部の外周形状が、長方形の角部が曲線状に形成された形状であってもよい。このような形状にすることにより、ハニカム構造体の耐熱衝撃性を向上させることができる。また、帯状の電極部の外周形状が、長方形の角部が直線状に面取りされた形状であることも好ましい態様である。このような形状にすることにより、ハニカム構造体の耐熱衝撃性を向上させることができる。
【0040】
本実施形態のハニカム構造体100においては、セルの延びる方向に直交する断面において、電流経路の長さが、ハニカム構造部の直径の1.6倍以下であることが好ましい。1.6倍を超えると、不必要にエネルギーを消費してしまうことがある。ここで、「電流経路」とは、電流が流れる経路のことである。また、「電流経路の長さ」とは、ハニカム構造体の「セルの延びる方向に直交する断面」における、電流が流れる「外周」の長さの0.5倍の長さのことである。これは、ハニカム構造体の「セルの延びる方向に直交する断面」における「電流の流れる経路」の中の、最大の長さであることを意味する。「電流経路の長さ」は、外周に凹凸が形成されたり、ハニカム構造部に、外周に開口するスリットが形成されていたりしたときには、当該凹凸やスリット内の表面に沿って測定した値である。そのため、例えば、ハニカム構造部に、外周に開口するスリットが形成されている場合には、スリットの深さの略2倍の長さ分だけ、「電流経路の長さ」は長くなる。
【0041】
電極部21の電気抵抗率は、0.01~1.0Ωcmであることが好ましい。電極部21の電気抵抗率をこのような範囲にすることにより、一対の電極部21、21が、高温の排ガスが流れる配管内において、効果的に電極の役割を果たす。電極部21の電気抵抗率が0.01Ωcmより小さいと、セルの延びる方向に直交する断面において、電極部21の両端付近のハニカム部の温度が上昇し易くなることがある。電極部21の電気抵抗率が1.0Ωcmより大きいと、電流が流れ難くなるため、電極としての役割を果たし難くなることがある。電極部の電気抵抗率は、室温(25℃)における値である。
【0042】
電極部21は、気孔率が30~60%であることが好ましく、30~55%であることが更に好ましい。電極部21の気孔率がこのような範囲であることにより、好適な電気抵抗率が得られる。電極部21の気孔率が、30%より低いと、製造時に変形してしまうことがある。電極部21の気孔率が、60%より高いと、電気抵抗率が高くなりすぎることがある。気孔率は、水銀ポロシメータで測定した値である。
【0043】
電極部21は、平均細孔径が5~45μmであることが好ましく、7~40μmであることが更に好ましい。電極部21の平均細孔径がこのような範囲であることにより、好適な電気抵抗率が得られる。電極部21の平均細孔径が、5μmより小さいと、電気抵抗率が高くなりすぎることがある。電極部21の平均細孔径が、45μmより大きいと、電極部21の強度が弱くなり破損し易くなることがある。平均細孔径は、水銀ポロシメータで測定した値である。
【0044】
電極部21の主成分が「珪素-炭化珪素複合材料」である場合に、電極部21に含有される炭化珪素粒子の平均粒子径が10~60μmであることが好ましく、20~60μmであることが更に好ましい。電極部21に含有される炭化珪素粒子の平均粒子径がこのような範囲であることにより、電極部21の電気抵抗率を0.1~100Ωcmの範囲で制御することができる。電極部21に含有される炭化珪素粒子の平均粒子径が、10μmより小さいと、電極部21の電気抵抗率が大きくなり過ぎることがある。電極部21に含有される炭化珪素粒子の平均粒子径が、60μmより大きいと、電極部21の強度が弱くなり破損し易くなることがある。電極部21に含有される炭化珪素粒子の平均粒子径は、レーザー回折法で測定した値である。
【0045】
電極部21の主成分が「珪素-炭化珪素複合材料」である場合に、電極部21に含有される「炭化珪素粒子と珪素のそれぞれの質量の合計」に対する、電極部21に含有される珪素の質量の比率が、20~40質量%であることが好ましい。そして、電極部21に含有される、「炭化珪素粒子と珪素のそれぞれの質量の合計」に対する珪素の質量の比率が、25~35質量%であることが更に好ましい。電極部21に含有される、「炭化珪素粒子と珪素のそれぞれの質量の合計」に対する珪素の質量の比率が、このような範囲であることにより、電極部21の電気抵抗率を0.1~100Ωcmの範囲にすることができる。電極部21に含有される、「炭化珪素粒子と珪素のそれぞれの質量の合計」に対する珪素の質量の比率が、20質量%より小さいと、電気抵抗率が大きくなりすぎることがあり、40質量%より大きいと、製造時に変形し易くなることがある。
【0046】
本実施形態のハニカム構造体100のアイソスタティック強度は、1MPa以上であることが好ましく、3MPa以上であることが更に好ましい。アイソスタティック強度は、値が大きいほど好ましいが、ハニカム構造体100の材質、構造等を考慮すると、6MPa程度が上限となる。アイソスタティック強度が1MPa未満であると、ハニカム構造体を触媒担体等として使用する際に、破損し易くなることがある。アイソスタティック強度は水中にて静水圧をかけて測定した値である。
【0047】
(3.製造方法)
ハニカム構造部の作製は、公知のハニカム構造部の製造方法におけるハニカム構造部の作製方法に準じて行うことができる。例えば、まず、炭化珪素粉末(炭化珪素)に、金属珪素粉末(金属珪素)、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を添加して成形原料を作製する。炭化珪素粉末の質量と金属珪素の質量との合計に対して、金属珪素の質量が10~40質量%となるようにすることが好ましい。炭化珪素粉末における炭化珪素粒子の平均粒子径は、3~50μmが好ましく、3~40μmが更に好ましい。金属珪素粉末における金属珪素粒子の平均粒子径は、2~35μmであることが好ましい。炭化珪素粒子及び金属珪素粒子の平均粒子径はレーザー回折法で粒度の頻度分布を測定したときの、体積基準による算術平均径を指す。炭化珪素粒子は、炭化珪素粉末を構成する炭化珪素の微粒子であり、金属珪素粒子は、金属珪素粉末を構成する金属珪素の微粒子である。尚、これは、ハニカム構造部の材質を、珪素-炭化珪素系複合材とする場合の成形原料の配合であり、ハニカム構造部の材質を炭化珪素とする場合には、金属珪素は添加しない。
【0048】
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダの含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、2.0~10.0質量部であることが好ましい。
【0049】
水の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、20~60質量部であることが好ましい。
【0050】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.1~2.0質量部であることが好ましい。
【0051】
造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、グラファイト、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を挙げることができる。造孔材の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.5~10.0質量部であることが好ましい。造孔材の平均粒子径は、10~30μmであることが好ましい。10μmより小さいと、気孔を十分形成できないことがある。30μmより大きいと、成形時に口金に詰まることがある。造孔材の平均粒子径はレーザー回折法で粒度の頻度分布を測定したときの、体積基準による算術平均径を指す。造孔材が吸水性樹脂の場合には、造孔材の平均粒子径は吸水後の平均粒子径のことである。
【0052】
次に、得られた成形原料を混練して坏土を形成した後、坏土を押出成形してハニカム構造部を作製する。押出成形に際しては、所望の全体形状、セル形状、隔壁厚み、セル密度等を有する口金を用いることができる。次に、得られたハニカム構造部について、乾燥を行うことが好ましい。乾燥の方法は特に限定されず、例えば、マイクロ波加熱乾燥、高周波誘電加熱乾燥等の電磁波加熱方式と、熱風乾燥、過熱水蒸気乾燥等の外部加熱方式とを挙げることができる。これらの中でも、成形体全体を迅速かつ均一に、クラックが生じないように乾燥することができる点で、電磁波加熱方式で一定量の水分を乾燥させた後、残りの水分を外部加熱方式により乾燥させることが好ましい。乾燥の条件として、電磁波加熱方式にて、乾燥前の水分量に対して、30~99質量%の水分を除いた後、外部加熱方式にて、3質量%以下の水分にすることが好ましい。電磁波加熱方式としては、誘電加熱乾燥が好ましく、外部加熱方式としては、熱風乾燥が好ましい。乾燥温度は、50~100℃とすることが好ましい。
【0053】
ハニカム構造部の中心軸方向長さが、所望の長さではない場合は、ハニカム構造部の両底部を切断して所望の長さとすることができる。切断方法は特に限定されないが、丸鋸切断機等を用いる方法を挙げることができる。
【0054】
次に、ハニカム乾燥体を焼成して、ハニカム焼成体を作製する。焼成の際には、例えばAr雰囲気にて1400℃x3hで焼成後、N2濃度2~25%のN2/Ar雰囲気にて1200℃で5~20hで熱処理を行うことで、本発明が規定する電気抵抗率分布をより容易に達成できる。
なお、本発明の電気抵抗率分布の達成手段は特に限定されず、上記手段以外、ハニカム構造部の材質、壁厚など、電気抵抗率に影響する要素を適宜変更しても本発明の電気抵抗率分布を得ることが可能である。
【0055】
焼成の前に、バインダ等を除去するため、仮焼成を行うことが好ましい。仮焼成は大気雰囲気において、400~500℃で、0.5~20時間行うことが好ましい。仮焼成及び焼成の方法は特に限定されず、電気炉、ガス炉等を用いて焼成することができる。焼成条件は、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気において、1300~1500℃で、1~20時間加熱することが好ましい。また、焼成後、耐久性向上のために、1000~1250℃で、1~10時間、酸素化処理を行うことが好ましい。
【0056】
次に、ハニカム乾燥体に対して電極部を形成するが、電極部を形成するための電極部形成原料を調合することが好ましい。電極部の主成分を、「珪素-炭化珪素複合材料」とする場合、電極部形成原料は、炭化珪素粉末及び珪素粉末に、所定の添加物を添加し、混練して形成することが好ましい。
【0057】
具体的には、炭化珪素粉末(炭化珪素)に、金属珪素粉末(金属珪素)、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を添加して、混練して電極部形成原料を作製することが好ましい。炭化珪素粉末及び金属珪素の合計質量を100質量部としたときに、金属珪素の質量が20~40質量部となるようにすることが好ましい。炭化珪素粉末における炭化珪素粒子の平均粒子径は、10~60μmが好ましい。金属珪素粉末(金属珪素)の平均粒子径は、2~20μmであることが好ましい。金属珪素粉末(金属珪素)の平均粒子径が、2μmより小さいと、電気抵抗率が小さくなりすぎることがある。金属珪素粉末(金属珪素)の平均粒子径が、20μmより大きいと、電気抵抗率が大きくなりすぎることがある。炭化珪素粒子及び金属珪素(金属珪素粒子)の平均粒子径はレーザー回折法で測定した値である。炭化珪素粒子は、炭化珪素粉末を構成する炭化珪素の微粒子であり、金属珪素粒子は、金属珪素粉末を構成する金属珪素の微粒子である。
【0058】
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダの含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.1~5.0質量部であることが好ましい。
【0059】
水の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、15~60質量部であることが好ましい。
【0060】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.1~2.0質量部であることが好ましい。
【0061】
造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、グラファイト、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を挙げることができる。造孔材の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.1~5.0質量部であることが好ましい。造孔材の平均粒子径は、10~30μmであることが好ましい。10μmより小さいと、気孔を十分形成できないことがある。30μmより大きいと、大気孔ができやすくなり、強度低下を起こすことがある。造孔材の平均粒子径はレーザー回折法で測定した値である。
【0062】
次に、炭化珪素粉末(炭化珪素)、金属珪素(金属珪素粉末)、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を混合して得られた混合物を混練して、ペースト状又はスラリー状の電極部形成原料とすることが好ましい。混練の方法は特に限定されず、例えば、縦型の撹拌機を用いることができる。
【0063】
次に、得られた電極部形成原料を、ハニカム焼成体の側面に塗布することが好ましい。電極部形成原料をハニカム焼成体の側面に塗布する方法は、特に限定されないが、例えば、印刷方法を用いることができる。また、電極部形成原料は、上記本発明のハニカム構造体における電極部の形状になるように、ハニカム焼成体の側面に塗布することが好ましい。電極部の厚さは、電極部形成原料を塗布するときの厚さを調整することにより、所望の厚さとすることができる。このように、電極部形成原料をハニカム焼成体の側面に塗布し、乾燥、焼成するだけで電極部を形成することができるため、非常に容易に電極部を形成することができる。
【0064】
次に、ハニカム焼成体の側面に塗布した電極部形成原料を乾燥させて、未焼成電極を形成し、未焼成電極付きハニカム焼成体を作製することが好ましい。乾燥条件は、50~100℃とすることが好ましい。
【0065】
次に、未焼成電極付きハニカム焼成体を焼成して、ハニカム構造体を作製する。このとき、主として、未焼成電極が焼成される。焼成の前に、バインダ等を除去するため、仮焼成を行うことが好ましい。仮焼成は大気雰囲気において、400~500℃で、0.5~20時間行うことが好ましい。仮焼成及び焼成の方法は特に限定されず、電気炉、ガス炉等を用いて焼成することができる。焼成条件は、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気において、1400~1500℃で、1~20時間加熱することが好ましい。また、焼成後、耐久性向上のために、1200~1350℃で、1~10時間、酸素化処理を行うことが好ましい。
【実施例】
【0066】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0067】
金属珪素(Si)粉末をセラミック原料とした。そして、セラミック原料に、バインダとしてヒドロキシプロピルメチルセルロース、造孔材として吸水性樹脂を添加すると共に、水を添加して成形原料とした。そして、成形原料を真空土練機により混練し、円柱状の坏土を作製した。バインダの含有量は金属珪素(Si)粉末を100質量部としたときに7質量部であった。造孔材の含有量は金属珪素(Si)粉末を100質量部としたときに3質量部であった。水の含有量は金属珪素(Si)粉末を100質量部としたときに42質量部であった。金属珪素(Si)粉末の平均粒子径は6μmであった。また、造孔材の平均粒子径は、20μmであった。金属珪素(Si)及び造孔材の平均粒子径は、レーザー回折法で測定した値である。
【0068】
得られた円柱状の坏土を押出成形機を用いて成形し、直径80mmのハニカム成形体を得た。得られたハニカム成形体を高周波誘電加熱乾燥した後、熱風乾燥機を用いて120℃で2時間乾燥し、両端面を所定量切断して、長さ75mmのハニカム乾燥体を作製した。
【0069】
その後、ハニカム乾燥体を、脱脂(仮焼)した後、焼成した。焼成の際の条件は比較例1、2はAr雰囲気にて1370℃x3h、実施例1~3はAr雰囲気にて1400℃x3hrで焼成後、N2濃度2~25%のN2/Ar雰囲気にて1200℃で5~20hr熱処理を行った。
【0070】
焼成後のハニカム焼成体を更に酸化処理してハニカム焼成体を得た。脱脂の条件は、550℃で3時間とした。酸化処理の条件は、1300℃で1時間とした。
【0071】
次に、金属珪素(Si)粉末に、バインダとしてヒドロキシプロピルメチルセルロース、保湿剤としてグリセリン、分散剤として界面活性剤を添加すると共に、水を添加して、混合した。混合物を混練して電極部形成原料とした。バインダの含有量は金属珪素(Si)粉末を100質量部としたときに0.5質量部であり、グリセリンの含有量は金属珪素(Si)粉末を100質量部としたときに10質量部であり、界面活性剤の含有量は金属珪素(Si)粉末を100質量部としたときに0.3質量部であり、水の含有量は金属珪素(Si)粉末を100質量部としたときに42質量部であった。金属珪素(Si)粉末の平均粒子径は6μmであった。金属珪素(Si)の平均粒子径は、レーザー回折法で測定した値である。混練は、縦型の撹拌機で行った。
【0072】
次に、電極部形成原料を、ハニカム焼成体の側面に、厚さが1.5mm、「セルの延びる方向に直交する断面において中心角の0.5倍が50°」になるようにして、ハニカム焼成体の両端面間に亘るように帯状に塗布した。電極部形成原料は、ハニカム焼成体の側面に、2箇所塗布した。そして、セルの延びる方向に直交する断面において、2箇所の電極部形成原料を塗布した部分の中の一方が、他方に対して、ハニカム焼成体の中心を挟んで反対側に配置されるようにした。
【0073】
次に、ハニカム焼成体に塗布した電極部形成原料を乾燥させて、未焼成電極付きハニカム焼成体を得た。乾燥温度は、70℃とした。
【0074】
その後、未焼成電極付きハニカム焼成体を、脱脂(仮焼)し、焼成し、更に酸化処理してハニカム構造体を得た。脱脂の条件は、550℃で3時間とした。焼成の条件は、アルゴン雰囲気下で、1450℃、2時間とした。酸化処理の条件は、1300℃で1時間とした。
【0075】
得られたハニカム構造体の隔壁の平均細孔径(気孔径)は8.6μmであり、気孔率は45%であった。平均細孔径および気孔率は、水銀ポロシメータにより測定した値である。また、ハニカム構造体の、隔壁の厚さは90μmであり、セル密度は90セル/cm2であった。また、ハニカム構造体の底面は直径93mmの円形であり、ハニカム構造体のセルの延びる方向における長さは75mmであった。また、得られたハニカム構造体のアイソスタティック強度は2.5MPaであった。アイソスタティック強度は水中で静水圧をかけて測定した破壊強度である。また、ハニカム構造体の、2つの電極部の、セルの延びる方向に直交する断面における中心角は表1に示される。
【0076】
また、各比較例及び実施例のハニカム構造体の電極部の電気抵抗率を室温(25℃)で測定したところ、いずれも、1.0Ω・cmであった。
【0077】
上記の手順で得られたハニカム構造体の通電試験を行った。通電試験は、一対の端子接続部に端子を接続して1.5kWの投入電力で電圧を印加したしたときの20秒後の外周領域、中央領域及び中間領域の温度を以下のように計測した。ハニカム構造部のセルが延びる方向に直交する断面において、
図6に示されるように、その中央(円心)からハニカム構造部の外周まで、互いに垂直する2本の直線を引き、それぞれの直線を8等分する点(中心O及びハニカム構造部の外周に位置する点を含む)における温度を計測した。結果を表1に示す。
【0078】
各比較例及び実施例のハニカム構造部10の外周領域、中央領域及び中間領域の電気抵抗率は以下のように測定した。ハニカム構造部のセルが延びる方向に直交する断面において、
図6に示されるように、その中央(円心)からハニカム構造部の外周まで、垂直する2本の直線を引き、それぞれの直線を8等分する点における電気抵抗率をマルチメーターを用いて4端子法で測定した。各領域内の測定点の平均値を計算し、各領域の電気抵抗率とした。測定結果は表1に示される。
【0079】
【0080】
(考察)
表1に示す結果から、本発明の実施例では、比較例に比べて均一発熱性に優れていることが理解される。比較例1及び2はA≦B<Cの関係を満たさないため、発熱のバラつきが大きかった。
【符号の説明】
【0081】
100…ハニカム構造体
10…ハニカム構造部
11…隔壁
12…セル
13、14…ハニカム構造部の両端面
21…電極部