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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
   E06B 1/18 20060101AFI20220111BHJP
   E06B 1/34 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
E06B1/18 J
E06B1/34 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018068380
(22)【出願日】2018-03-30
(65)【公開番号】P2019178545
(43)【公開日】2019-10-17
【審査請求日】2021-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】本橋 成哲
【審査官】芝沼 隆太
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-137657(JP,A)
【文献】実開昭58-99480(JP,U)
【文献】特開平11-210323(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0212239(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/00- 1/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体と、
前記枠体の内側に見込方向で位置をずらして配置されるスライド移動可能な複数の障子と、
前記複数の障子のうち、室外側に位置する外障子の戸先と対向する縦枠と、
閉鎖位置の前記外障子よりも見込方向室内側で前記縦枠に固定される樹脂製カバーと、を備える建具であって、
前記樹脂製カバーは、
見込方向室内側に形成される室内側係合部と、
見込方向室外側に前記室内側係合部に係合可能な形状に形成される室外側係合部と、を有する建具。
【請求項2】
第1の前記樹脂製カバーと第2の前記樹脂製カバーが互いの前記室内側係合部と前記室外側係合部を係合した状態で前記縦枠に取り付けられ、
前記縦枠の見込面には、第1の前記樹脂製カバーの室外側端部が固定される第1固定部と第2の前記樹脂製カバーの室外側端部が固定される第2固定部が見込方向で間隔を空けて形成される請求項1に記載の建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライド移動可能な障子を備える建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、断熱性向上等のために、枠体の閉鎖位置の外障子よりも室内側に樹脂製カバーを取り付ける構成の建具が知られている。この種の技術を開示するものとして例えば、特許文献1がある。特許文献1には、縦枠のレール引寄部よりも室内側に取り付けられる樹脂製カバー材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-63848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、スライド移動可能な障子を備える建具は、外障子と内障子の2枚建の場合だけでなく、更に障子を追加した3枚建の場合がある。3枚建の場合、2枚建に比べて見込方向の長さが長くなるため、2枚建用の樹脂製のカバーをそのまま適用できない。そのため、2枚建用と3枚建用と複数種類の樹脂製のカバーを用意する必要があり、製造性の観点から改善の余地があった。
【0005】
本発明は、障子の枚数が異なっても、同形状の樹脂製カバーで対応することができる製造性の高い建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、枠体(例えば、後述の枠体2,2a)と、前記枠体の内側に見込方向で位置をずらして配置されるスライド移動可能な複数の障子(例えば、後述の外障子40、内障子60又は外障子40、中間障子60a、内障子80)と、前記複数の障子のうち、室外側に位置する外障子(例えば、後述の外障子40)の戸先と対向する縦枠(例えば、後述の縦枠10,10a)と、閉鎖位置の前記外障子よりも見込方向室内側で前記縦枠に固定される樹脂製カバー(例えば、後述の樹脂製カバー50)と、を備える建具(例えば、後述の建具1,1a)であって、前記樹脂製カバーは、見込方向室内側に形成される室内側係合部(例えば、後述の室内側係合突起部502)と、見込方向室外側に前記室内側係合部に係合可能な形状に形成される室外側係合部(例えば、後述の室外側係合凹部520)と、を有する建具に関する。
【0007】
第1の前記樹脂製カバー(例えば、後述の樹脂製カバー50a)と第2の前記樹脂製カバー(樹脂製カバー50b)が互いの前記室内側係合部と前記室外側係合部を係合した状態で前記縦枠に取り付けられ、前記縦枠の見込面(例えば、後述の見込面100)には、第1の前記樹脂製カバーの室外側端部が固定される第1固定部(例えば、後述の第1縦枠側係合部121)と第2の前記樹脂製カバーの室外側端部が固定される第2固定部(例えば、後述の第2縦枠側係合部122)が見込方向で間隔を空けて形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、障子の枚数が異なっても、同形状の樹脂製カバーで対応することができる製造性の高い建具を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る2枚建の建具を模式的に示す平面図である。
図2】本実施形態の2枚建の建具の縦枠に取り付けられた樹脂製カバー及びその周囲を示す拡大横断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る3枚建の建具を模式的に示す平面図である。
図4】本実施形態の3枚建の建具の縦枠に取り付けられた樹脂製カバー及びその周囲を示す拡大横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書において、「見付方向」とは、建物に形成された開口部に納められた建具における障子の面方向を意味し、「見込方向」とは、上記障子の厚み方向を意味する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る2枚建の建具1を模式的に示す平面図である。図1に示す建具1は、建物の開口部に固定される枠体2と、枠体2の内側にスライド移動可能に取り付けられる外障子40及び内障子60と、を備える引違い窓である。
【0012】
枠体2は、左右それぞれに配置される縦枠10と、上下それぞれに配置される横枠11と、を略矩形に枠組みして構成される。縦枠10及び横枠11は、アルミの押出し成形品である金属製の枠材である。
【0013】
外障子40は室外側で左右方向に移動可能に枠体2に取り付けられており、内障子60は室内側で左右方向に移動可能に枠体2に取り付けられている。図1では、外障子40及び内障子60の両方が閉鎖位置にある状態が示されている。外障子40又は内障子60を閉鎖位置から移動させることで、開口部が開放される。
【0014】
図2は、本実施形態の2枚建の建具1の縦枠10に取り付けられた樹脂製カバー50及びその周囲を示す拡大横断面図である。図2に示すように、外障子40は、面材としての複層ガラス45の四周を囲う框41を備える。
【0015】
框41は、中空部を有する框本体部411と、框本体部411とガラス溝410を形成する押縁部材420と、を備える。框本体部411の戸先側には、クッション材42と、気密材415が配置される。
【0016】
框本体部411の室内側には、押縁部材420を嵌合する框側嵌合部412,413が形成されている。押縁部材420は、框側嵌合部412,413にそれぞれ嵌合する押縁側嵌合部422,423を備える。框側嵌合部412,413と押縁側嵌合部422,423がそれぞれ嵌合することで、框41に押縁部材420が固定される。
【0017】
図2に示す縦枠10は、アルミ製の金属部材により縦長に形成される。縦枠10の見込方向の幅は、外障子40及び内障子60の2枚建に対応できる幅となっている。
【0018】
縦枠10の見込面100における外障子40に対向する位置には、見付方向に延びる延出片110が形成される。外障子40が閉鎖位置にある状態で、延出片110の先端にクッション材42が接触するとともに、延出片110の室外側の見付面に気密材415が当接して縦枠10と外障子40の隙間が塞がれる。また、縦枠10の見込面100における内障子60に対向する位置には、内障子60の縦枠10への直接衝突を防止する衝突防止部材15が配置される。
【0019】
縦枠10の見込面100における延出片110の室内側には、第1縦枠側係合部121と第2縦枠側係合部122が見込方向で間隔を空けて形成される。第1縦枠側係合部121及び第2縦枠側係合部122は、何れも、縦枠10の見込面100から突出した後、見込方向室内側に屈曲するL字状に形成されている。
【0020】
縦枠10の室内側には、断面形状がクランク状に形成されるアングル16が嵌合固定される。アングル16は、その室外側が第2縦枠側係合部122に係合し、その室内側が縦枠10の室内側端部に係合する。アングル16における室外側を向く見付面には樹脂製カバー50を嵌合するための凹状の嵌合部161が形成される。
【0021】
樹脂製カバー50は、縦枠10の見込面100における延出片110よりも室内側であってアングル16よりも室外側に配置される。樹脂製カバー50は、縦枠10に沿って上下方向に延びる縦長の部材である。
【0022】
樹脂製カバー50の形状について説明する。本実施形態の樹脂製カバー50は、室内側で見込面550を形成するカバー本体部500と、カバー本体部500から縦枠10側に突出するカバー脚部530と、を備える。カバー本体部500とカバー脚部530は、樹脂材料により成形される一体的な部材であり、全体としては平面視で縦枠10の見込面100に向かって突出する凸状に形成される。
【0023】
カバー本体部500は、見込方向に細長い板状に形成されており、室内側に露出する見込面550を有する。カバー本体部500の内側には、見込方向に並ぶ中空部511,513が形成される。カバー脚部530は、カバー本体部500の見込面550の反対側の面から縦枠10の見込面100に向って突出している。カバー脚部530の内側にも中空部512が形成される。
【0024】
また、本実施形態のカバー本体部500には、室外側延出部501、室内側係合突起部502及び突出片505が一体的に形成される。
【0025】
室外側延出部501は、カバー本体部500の室外側に形成される。室外側延出部501は、平面視において、カバー本体部500から縦枠10の見込面100に近づきながら室外側に向かって斜めに延出した後、縦枠10の見込面100に沿って室外側に延出している。この室外側延出部501の先端部が縦枠10の第1縦枠側係合部121の内側に入り込み、樹脂製カバー50の室外側が縦枠10に係合される。なお、樹脂製カバー50は、この建具1のように、直接的に縦枠10に嵌合される場合に限られず、別部材を介して縦枠10に固定される構成であってもよい。
【0026】
室外側延出部501の傾斜部分と見込面100に沿って延びる部分の間には、室内側に凹む室外側係合凹部520が形成される。室外側係合凹部520は、後述する樹脂製カバー50を見込方向で複数連結する場合に使用される嵌合部である。
【0027】
室内側係合突起部502は、カバー本体部500の室内側に形成される。室内側係合突起部502は、カバー本体部500から縦枠10の見込面100に向って見付方向で延出しており、その先端が鉤状に形成される。この建具1の例では、室内側係合突起部502の先端に位置する鉤状部分がアングル16の嵌合部161に嵌合し、樹脂製カバー50の室内側が縦枠10にアングル16を介して固定される。なお、室内側係合突起部502が縦枠10に直接嵌合する構成であってもよい。
【0028】
突出片505は、カバー本体部500の室外側に形成される。突出片505は、平面視において、カバー本体部500から縦枠10の見込面100に近づきながら室外側に向かって斜めに延出するヒレ状に形成される。突出片505は、閉鎖位置の外障子40に向かって延出しており、押縁部材420の室内側見付面421に接触又は対向している。突出片505によって閉鎖位置における外障子40と樹脂製カバー50(縦枠10)の間の隙間が塞がれる又は隙間が小さくなっている。
【0029】
以上、説明したように、図1及び図2を参照した2枚建の建具1では、1つの樹脂製カバー50によって縦枠10の断熱部分を形成している。次に、図3及び図4を参照して3枚建の建具1aの場合における樹脂製カバー50の適用について説明する。
【0030】
図3は、本発明の一実施形態に係る3枚建の建具1aを模式的に示す平面図である。図4は、本実施形態の3枚建の建具1aの縦枠10aに取り付けられた樹脂製カバー50及びその周囲を示す拡大横断面図である。なお、以下の説明において、上述の2枚建の建具1で説明した構成と共通又は同様の構成ついては、同じ符号を付してその説明を省略する場合がある。
【0031】
図3に示すように、建具1aは、外障子40、中間障子(第1内障子)60a及び内障子(第2内障子)80の3枚の障子を備える。外障子40、中間障子60a及び内障子80は、見込方向に位置をずらして枠体2aの内側にスライド移動可能に納められる。
【0032】
3枚建の建具1aでは、外障子40、中間障子60a及び内障子80を保持するため、枠体2aを構成する縦枠10a及び下枠11aの見込方向の長さも大きくなる。
【0033】
図4に示すように、縦枠10aの見込面100には、室外側から室内側の順で延出片110、第1縦枠側係合部121、第2縦枠側係合部122、第3縦枠側係合部123が間隔をあけて形成される。第1縦枠側係合部121、第2縦枠側係合部122及び第3縦枠側係合部123は、何れも、縦枠10aの見込面100から突出した後、見込方向室内側に屈曲するL字状に形成されている。縦枠10aの室内側の端部には、嵌合部161を有するアングル16が配置されている。
【0034】
本実施形態では、2枚建の建具1で用いた樹脂製カバー50を見込方向で連結して2つ用いることにより、見込方向の幅が大きくなった縦枠10aの見込面100をカバーしている。以下の説明において、閉鎖位置の外障子40に近い位置にある樹脂製カバー50を樹脂製カバー50aとし、この樹脂製カバー50aよりも相対的に室内側に位置する樹脂製カバー50を樹脂製カバー50bとして説明する。
【0035】
樹脂製カバー50aは、その室外側延出部501が第1縦枠側係合部121に係合するとともに、その室内側係合突起部502が樹脂製カバー50bの室外側係合凹部520に嵌合する。樹脂製カバー50aは、中間障子60aが係合されるレール112に重なる位置となる。
【0036】
樹脂製カバー50bは、その室外側延出部501が樹脂製カバー50aの裏側を通って第2縦枠側係合部122に係合するとともに、室内側係合突起部502がアングル16の嵌合部161に嵌合する。樹脂製カバー50bは、内障子80が係合されるレール113に重なる位置となる。
【0037】
以上説明したように、樹脂製カバー50aと樹脂製カバー50bは、同じ形状の別部材であり、互いに嵌合した状態で縦枠10aの見込面100に取り付けられることにより、断熱材として機能する。
【0038】
上記実施形態によれば、以下のような効果を奏する。
本実施形態で説明した建具1(又は建具1a)は、枠体2(又は枠体2a)と、枠体2(又は枠体2a)の内側に見込方向で位置をずらして配置されるスライド移動可能な外障子40及び内障子60(又は外障子40、中間障子60a及び内障子80)と、室外側に位置する外障子40の戸先と対向する縦枠10(又は縦枠10a)と、閉鎖位置の外障子40よりも見込方向室内側で縦枠10(又は縦枠10a)に固定される樹脂製カバー50と、を備える。そして、樹脂製カバー50は、見込方向室内側に形成される室内側係合突起部(室内側係合部)502と、見込方向室外側に室内側係合突起部502に係合可能な形状に形成される室外側係合凹部(室外側係合部)520と、を有する。同形状の樹脂製カバー50a,50bが見込方向で2つ以上連結可能に構成される。
【0039】
これにより、室内側係合突起部(室内側係合部)502と室外側係合凹部(室外側係合部)520によって同じ形状の樹脂製カバー50を見込方向で連結して使用できるので、2枚建の建具1と3枚建の建具1aとで樹脂製カバー50を共通化できる。より具体的には、2枚建の建具1では1つの樹脂製カバー50を縦枠10に取り付け、3枚建の建具1aでは2つの樹脂製カバー50a,50bを見込方向で連結して縦枠10aに取り付ければよい。建具1,1aの種類に応じて、異なる形状の樹脂製カバー50を準備する必要がなくなり、製造コストを低減するとともに製造性を向上させることができる。
【0040】
また、本実施形態では樹脂製カバー50aと樹脂製カバー50bが互いの室内側係合突起部502と室外側係合凹部520を係合した状態で縦枠10aに取り付けられ、縦枠10aの見込面100には、樹脂製カバー50aの室外側端部が固定される第1縦枠側係合部(第1固定部)121と樹脂製カバー50bの室外側端部が固定される第2縦枠側係合部(第2固定部)122が見込方向で間隔を空けて形成される。
【0041】
これにより、見込方向で複数連結される樹脂製カバー50a,50bを縦枠10aに容易に取り付けることができ、施工性もより向上させることができる。
【0042】
上記実施形態では、本発明を適用する例として2枚建の場合に1つの樹脂製カバー50を用いる場合と、3枚建の場合に樹脂製カバー50を連結して2つ用いる場合を説明したが、この構成に限定されるわけではない。例えば、2枚建の場合において、枠体の見込方向の長さが大きい場合、2つの樹脂製カバー50で対応することもできる。また、障子が4枚以上配置される構成にも適用できる。また、窓だけではなく、引違いドアにも適用できる。このように、本発明は、種々の建具に適用できる。
【符号の説明】
【0043】
1,1a 建具
2,2a 枠体
10,10a 縦枠
40 外障子
50 樹脂製カバー
50a 樹脂製カバー(第1の樹脂製カバー)
50b 樹脂製カバー(第2の樹脂製カバー)
60 内障子(障子)
60a 中間障子(障子)
80 内障子(障子)
121 第1縦枠側係合部
122 第2縦枠側係合部
502 室内側係合突起部(室内側係合部)
520 室外側係合凹部(室外側係合部)
図1
図2
図3
図4