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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】アイデア支援システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/10 20120101AFI20220203BHJP
【FI】
G06Q10/10
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018127480
(22)【出願日】2018-07-04
(65)【公開番号】P2020008987
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-02-02
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 集会名:JUNCTION TOKYO 2018発表会 開催日:平成年30月3日25日 公開者:鈴木 肖太
(73)【特許権者】
【識別番号】591057256
【氏名又は名称】株式会社エクサ
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 肖太
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼桑 美季
(72)【発明者】
【氏名】志田 篤
(72)【発明者】
【氏名】竹石 大祐
【審査官】青柳 光代
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-215931(JP,A)
【文献】特開2003-288352(JP,A)
【文献】特開2013-033346(JP,A)
【文献】特開2015-095181(JP,A)
【文献】国際公開第2004/097703(WO,A1)
【文献】特開2009-003888(JP,A)
【文献】特開2003-330946(JP,A)
【文献】特開2011-198137(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
G16H 10/00 - 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アイデア創出を支援するアイデア支援システムであって、
アイデアを表現した文字列を入力する1以上のクライアント端末、
前記クライアント端末が入力した文字列をネットワーク経由で受け取り、その文字列を前記クライアント端末の識別子とともに表示する画面を生成して前記クライアント端末に対して送信する、サーバコンピュータ、
を備え、
前記サーバコンピュータは、前記クライアント端末から前記文字列を受け取るごとに、その文字列を他の前記文字列から区別する区画を付与することによって1つのアイデアメモとして構成した上で、各前記アイデアメモを1以上のグループに区分して前記画面上に整列し、
前記クライアント端末は、前記画面上で前記アイデアメモを前記グループ間で移動させるかまたは前記画面上で新たな前記グループを追加するグループ変更操作を実施し、
前記サーバコンピュータは、前記クライアント端末から前記グループ変更操作を受け取る前の時点で前記クライアント端末から前記文字列を受け取った場合は、前記画面上に配置する各前記アイデアメモに対して文書クラスタリングを実施することにより、各前記アイデアメモを前記画面上で1以上のグループにグルーピングし、
前記サーバコンピュータは、前記クライアント端末から前記グループ変更操作を受け取ると、前記グループ変更操作によって作成された各前記グループと各前記アイデアメモとの間の対応関係を学習器に学習させる学習ステップを実施し、
前記サーバコンピュータは、前記学習ステップを実施した後に前記クライアント端末から新たな前記文字列を受け取った場合は、その文字列に対応する新たな前記アイデアメモを前記画面上で作成するとともに、前記学習器を用いてそのアイデアメモを前記グループのうちいずれかへ分類する新規追加ステップを実施する
ことを特徴とするアイデア支援システム。
【請求項2】
前記サーバコンピュータは、前記学習ステップにおいて、
各前記アイデアメモの特徴ベクトルを作成するステップ、
各前記グループの識別子と前記特徴ベクトルとの間の対応関係を学習器に学習させることにより、各前記アイデアメモと各前記グループを前記学習器において対応付けるステップ、
を実行する
ことを特徴とする請求項1記載のアイデア支援システム。
【請求項3】
前記サーバコンピュータは、各前記アイデアメモの特徴ベクトルを作成するステップにおいては、各前記アイデアメモに含まれる単語のTF値のリストを構成要素として有するベクトルを各前記アイデアメモの特徴ベクトルとして作成する
ことを特徴とする請求項2記載のアイデア支援システム。
【請求項4】
前記サーバコンピュータは、前記新規追加ステップにおいて、
前記新たなアイデアメモの特徴ベクトルを作成するステップ、
前記学習器に対して前記新たなアイデアメモの特徴ベクトルを投入することにより、前記新たなアイデアメモを前記グループのうちいずれかへ分類するステップ、
を実行する
ことを特徴とする請求項1記載のアイデア支援システム。
【請求項5】
前記サーバコンピュータは、前記グループに属する前記アイデアメモの内容を要約した単語によって構成されたタグを前記画面上で前記グループに対して付与するタグ付与ステップを実施し、
前記サーバコンピュータは、前記タグ付与ステップにおいて、
各前記グループを母集団として、各前記グループに属する前記アイデアメモに含まれる単語のTF-IDF値を計算するステップ、
各前記アイデアメモに含まれる単語のうち、前記TF-IDF値が大きいものから順に所定個数を、前記グループごとに抽出するステップ、
前記抽出した単語を、そのグループのタグとして決定するステップ、
を実行する
ことを特徴とする請求項1記載のアイデア支援システム。
【請求項6】
前記サーバコンピュータは、前記グループ間の相関関係をグラフ表現によって記述した関係性グラフを生成して前記クライアント端末に対して送信し、
前記サーバコンピュータは、前記関係性グラフを生成する際には、
前記グループに属する前記アイデアメモの全ての文言を連結した文字列から前記グループの特徴を表すグループ特徴ベクトルを生成するステップ、
前記グループ特徴ベクトルを座標空間上に配置することにより前記関係性グラフを生成するステップ、
を実行する
ことを特徴とする請求項1記載のアイデア支援システム。
【請求項7】
前記クライアント端末は、前記関係性グラフのうち前記グループが配置されていない座標を指定する座標指定入力を前記サーバコンピュータに対して送信し、
前記サーバコンピュータは、前記関係性グラフ上において前記座標指定入力に対応する位置の特徴ベクトルを特定するとともに、その特定した特徴ベクトルを前記グループ特徴ベクトルとして有する新たな前記グループを作成して前記画面上に配置する
ことを特徴とする請求項6記載のアイデア支援システム。
【請求項8】
前記クライアント端末は、前記関係性グラフのうち前記グループが配置されていない座標を指定する座標指定入力を前記サーバコンピュータに対して送信し、
前記サーバコンピュータは、前記関係性グラフ上において前記座標指定入力に対応する位置の特徴ベクトルを特定するとともに、その特定した特徴ベクトルを用いて新たな前記アイデアメモを作成して前記画面上に配置する
ことを特徴とする請求項6記載のアイデア支援システム。
【請求項9】
前記クライアント端末は、前記文字列を入力する期限を指定する期限指定入力を前記サーバコンピュータに対して送信し、
前記サーバコンピュータは、前記期限指定入力を受け取ると、その指定期限においてタイムアウトするタイマを起動し、
前記クライアント端末は、前記タイマのカウント値を前記サーバコンピュータに対して所定時間間隔ごとに照会するとともに、前記タイマがタイムアウトしたときはその旨のメッセージを前記画面上で表示する
ことを特徴とする請求項1記載のアイデア支援システム。
【請求項10】
前記サーバコンピュータは、前記文字列を前記サーバコンピュータに対して送信した個数を前記クライアント端末ごとに集計し、その集計結果を前記クライアント端末に対して送信する
ことを特徴とする請求項1記載のアイデア支援システム。
【請求項11】
前記サーバコンピュータは、各前記アイデアメモの特徴ベクトルを用いて、前記画面上に配置されている各前記アイデアメモの話題を推定するとともに、その推定した話題に関連するwebページを検索サイトから取得して前記画面上に表示する
ことを特徴とする請求項2記載のアイデア支援システム。
【請求項12】
前記サーバコンピュータは、前記画面上に配置されている各前記アイデアメモと各前記アイデアメモが属するグループを記述したセーブデータを作成して前記クライアント端末に対して送信する
ことを特徴とする請求項1記載のアイデア支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイデア創出を支援するアイデア支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ブレーンストーミングによってアイデア創出する際には、例えばアイデアを記載した付箋をホワイトボードに貼り付けて参加者がそのアイデアを共有する。参加者が物理的に離れた場所に存在している場合は、同様の仕組みを電子会議に類似する手法によって実現する場合もある。この場合は、付箋を電子的に模擬した電子付箋を画面上に貼り付けることによって、遠隔地間でその電子付箋が記載しているアイデアを共有することができる。
【0003】
下記特許文献1は、電子付箋を用いる電子会議システムについて記載している。同文献は、『画面解像度が低いもしくは画面サイズの小さい端末では、電子付箋会議で利用されている全ての電子付箋を一度に表示できず、ユーザが表示領域外の電子付箋の情報を認識しにくく、利便性が低下していた。』ことを課題として、『電子付箋会議端末であって、仮想的なボードにおける位置の情報を含む1または複数の電子付箋を保持し、電子付箋の位置に基づいてクラスタリングを行うことで電子付箋クラスタを生成し、前記仮想的なボードにおける前記電子付箋クラスタの位置を算出し、前記電子付箋および前記電子付箋クラスタに対応するオブジェクトを、設定された表示条件に従って、前記仮想的なボード上に配置し、前記仮想的なボードの一部の領域を表示する場合、前記電子付箋クラスタに対応するオブジェクトとして、当該表示されている領域の中に配置されていない電子付箋が属する電子付箋クラスタの位置へのショートカットオブジェクトを表示する。』という技術を記載している(要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-090607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
紙の付箋を用いてブレーンストーミングを実施する際には、類似するアイデアを記載した付箋をグルーピングすることによって、新たなアイデア創出を促す場合がある。他方で従来の電子付箋システムにおいては、電子付箋をグルーピングすることはないか、あるいはグルーピングするにしても参加者がマニュアル操作によってグルーピングするのが通常である。また上記特許文献1においては、電子付箋をクラスタリングしているものの、これは電子付箋の記述内容に着目するのではなく、電子付箋の配置位置にしたがってクラスタリングしているに過ぎない。
【0006】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、遠隔地間でアイデア創出のためのディスカッションを実施する際に、参加者が提示した各アイデアを、その内容にしたがって、マニュアル操作によらず自動的にグルーピングする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るアイデア支援システムは、クライアント端末がグループに対して変更操作を実施するまでは、クラスタリングによってアイデアメモをグルーピングし、クライアント端末がグループに対して変更操作を実施した以降は、アイデアメモとグループとの間の対応関係を学習した結果に基づきグルーピングを実施する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るアイデア支援システムによれば、遠隔地間でアイデア創出のためのディスカッションを実施する際に、アイデアの内容にしたがって自動的にアイデアをグルーピングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1に係るアイデア支援システム10の構成図である。
図2】アイデアボード画面111の画面例である。
図3】関係性グラフ生成部124が生成する関係性グラフの例である。
図4】カウントダウン機能について説明する図である。
図5】アイデアメモ1111を投稿した個数の統計を表示する例である。
図6】現在議論しているトピックに関連するwebページを表示する例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施の形態1>
図1は、本発明の実施形態1に係るアイデア支援システム10の構成図である。アイデア支援システム10は、遠隔地間でブレーンストーミングなどのアイデア創出活動を実施することを支援するシステムである。アイデア支援システム10は、クライアント端末とサーバ100がネットワーク300を介して接続された構成を有する。図1においては3つのクライアント端末201~203が接続されている例を示した。
【0011】
各クライアント端末は同じ構成を有するので、以下では特に明示しない限りクライアント端末201について説明する。クライアント端末201は、アイデア創出活動に参加する参加者が用いる端末である。参加者は、例えばサーバ100が提供する後述のアイデアボード画面上でディスカッションに参加することにより、その画面を介して他の参加者との間でディスカッションを共有する。
【0012】
サーバ100は、各クライアント端末が参加するディスカッションの場をオンライン上で提供するためのアイデアボード画面を生成する。各クライアント端末がその画面上で後述するアイデアメモを投稿することにより、参加者間でそのアイデアメモが共有され、ディスカッションが進行する。サーバ100は、画面生成部110、グルーピング部120を備える。グルーピング部120はさらに、特徴ベクトル算出部121、クラスタリング部122、学習器123、関係性グラフ生成部124を備える。
【0013】
画面生成部110は、アイデアボード画面を生成し、各クライアント端末に対して送信する。アイデアボード画面は、例えばwebページとして生成することができる。この場合、各クライアント端末はwebブラウザを用いてアイデアボード画面にアクセスする。アイデアボード画面の具体例については後述する。
【0014】
グルーピング部120は、アイデアボード画面上に投稿されたアイデアメモを、その内容にしたがってグルーピングする。画面生成部110は、そのグルーピングの結果にしたがって、アイデアボード画面上で各アイデアメモを配置する。グルーピング部120が備える各機能部については、グルーピング処理の具体例と併せて説明する。
【0015】
図2は、アイデアボード画面111の画面例である。画面生成部110は、図2に例示するようなアイデアボード画面111を各クライアント端末に対して送信する。各クライアント端末は、アイデアボード画面111上でアイデアを共有することにより、ディスカッションを進行する。
【0016】
参加者が、アイデアボード画面111上で新規メモボタン1114を押下すると、新たなアイデアメモを入力するためのダイアログ(図示せず)が画面上に表示される。参加者はそのダイアログ上で自身のアイデアを文字列として入力する。クライアント端末はその文字列をサーバ100に対して送信する。画面生成部110はその文字列を受け取り、その文字列を内容とするアイデアメモ1111をアイデアボード画面111上に作成する。アイデアメモ1111は、電子付箋のように用いることができる。アイデアメモ1111の右下にある番号は、そのアイデアメモを投稿したクライアント端末(すなわち参加者)を識別する識別子である。例えば「1」はクライアント端末201から投稿されたアイデアメモであることを表している。
【0017】
グルーピング部120は、各アイデアメモ1111の記載内容にしたがって各アイデアメモ1111をグルーピングする。図2の各列が1つのグループを表しており、図2においては3つのグループにグルーピングされている。画面生成部110は、そのグルーピング結果にしたがって、各アイデアメモ1111をアイデアボード画面111上の領域1112に配置する。グルーピング手順については後述する。
【0018】
グルーピング部120はさらに、各グループに属するアイデアメモ1111の記載内容の概略を表すタグ1113を定義する。画面生成部110はアイデアボード画面111上でそのタグを各グループに対応する適当な位置に配置する。図2においては各グループの上部に配置した。タグ1113を定義する手順については後述する。
【0019】
関係性グラフボタン1116は、後述する関係性グラフを画面表示するボタンである。参加者が関係性グラフボタン1116を押下すると、関係性グラフ生成部124は関係性グラフを生成し、画面生成部110はその関係性グラフを当該クライアント端末に対して送信する。関係性グラフを生成する手順については後述する。
【0020】
<実施の形態1:初期グルーピング>
参加者は、原則としては新たなアイデアメモ1111を順次投稿することにより、ディスカッションを進行する。ただし参加者は、アイデアボード画面111上でグループ構成を変更することもできる。例えばマニュアル操作によって新規グループを作成することもできるし(新規グループボタン1115)、あるグループに属するアイデアメモ1111をマウスドラッグ操作により別のグループに移動させることもできる。これらの操作のことをグループ変更操作と呼ぶことにする。
【0021】
グルーピング部120は、グループ変更操作が実施される前と、実施された以後とのそれぞれにおいて、互いに異なる手法により、アイデアメモ1111をグルーピングする。以下ではまずグループ変更操作が実施される前の時点におけるグルーピングについて説明する。
【0022】
グルーピング部120は、グループ変更操作が実施される前の時点においては、新たなアイデアメモ1111が投稿されるごとに、クラスタリング処理によって各アイデアメモ1111をグルーピングする。具体的には、特徴ベクトル算出部121はアイデアボード画面111上の全てのアイデアメモ1111を母集団として、各アイデアメモ1111内の単語のTF-IDF(Term Frequency-Inverse Document Frequency)値を算出し、そのTF-IDF値を適当な単語順にしたがって整列することにより、各アイデアメモ1111の特徴ベクトルを作成する。クラスタリング部122は、その特徴ベクトルに対してK-means法などのクラスタリング処理を実施することにより、各アイデアメモ1111を1以上のグループへグルーピングする。
【0023】
<実施の形態1:グループ変更操作後のグルーピング>
グループ変更操作が実施された以後の時点においては、グルーピング部120は学習器123を用いる。具体的には、アイデアボード画面111上における各アイデアメモ1111と各グループとの間の対応関係を学習器123に学習させる。新たなアイデアメモ1111が投稿されると、その新たなアイデアメモ1111の特徴ベクトルを学習器123に対して投入することにより、その新たなアイデアメモ1111を既存グループのうちいずれかへ分類する。学習器123による学習は、グループ変更操作が実施されるごとに実施する。
【0024】
学習器123による学習は、具体的には例えば以下のように実施することができる。特徴ベクトル算出部121は、各アイデアメモ1111に含まれる単語のTF値を適当な単語順にしたがって整列することにより、各アイデアメモ1111の特徴ベクトルを作成する。学習器123は、各アイデアメモ1111の特徴ベクトルと既存グループとの間の対応関係を学習することにより、各アイデアメモ1111と各グループを対応付ける。新たなアイデアメモ1111が投稿されたときは、その対応関係にしたがって、その新たなアイデアメモ1111を既存グループへ対応付ける。
【0025】
グループ変更操作の前後においてグルーピング手順を変えるのは、以下の理由による。参加者がマニュアル操作(グループ変更操作)によってグループ構成を変更していない段階においては、アイデアボード画面111上におけるディスカッションが充分に進行していない可能性がある。したがってクラスタリングによって機械的にグルーピングするのが望ましいと考えられる。他方で参加者がグループ構成を変更するのは、例えばディスカッションがある程度進行するなどによって、参加者自身がグループ構成を指定したい場面などが想定される。したがって、参加者自身が指定したグループ構成をそれ以後も踏襲することが望ましいので、参加者自身の指定するグループ構成を学習器123に学習させた上で、以後新たに追加されるアイデアメモ1111については学習器123が参加者による指定をグルーピング結果として自動的に反映することとした。
【0026】
グループ変更操作は、学習器123にとっては、学習すべき参加者意図を指定するものであるから、教師あり学習における教師信号と同様の作用を有する。他方でクラスタリングを実施する時点では参加者によるグループ変更操作が未だ発生していないので、クラスタリングによるグルーピングは、グループ構成について教師なし学習を実施しているのと同様の処理であるということができる。
【0027】
<実施の形態1:タグ付与>
グルーピング部120は、例えば以下の手順により、各グループのタグ1113を付与することができる。グルーピング部120は、各グループについて、そのグループに属する全てのアイデアメモ1111内の単語のTF-IDF値を計算する。グルーピング部120は、算出したTF-IDF値が大きい順に所定個数(図2においては2個)の単語をピックアップし、そのピックアップした単語を当該グループのタグ1113とする。グルーピング部120は、各グループについて同様の処理を実施する。
【0028】
<実施の形態1:関係性グラフ>
図3は、関係性グラフ生成部124が生成する関係性グラフの例である。関係性グラフ生成部124は、各グループに属する全てのアイデアメモ1111の文言を連結した文字列から、そのグループの特徴を表すグループ特徴ベクトルを生成する。関係性グラフ生成部124は、グループ特徴量ベクトルの各要素を各次元の値として、グループ特徴ベクトルを座標空間上に配置することにより、関係性グラフを生成する。
【0029】
グループ特徴ベクトルの次元数は多くの場合3次元以上となるので、関係性グラフの座標空間の次元数も3次元以上となる。図3に例示するように、2次元の関係性グラフを提示したい場合は、グループ特徴ベクトルの次元数を適当なアルゴリズムによって2次元まで圧縮した上で、圧縮後のグループ特徴ベクトルを2次元座標空間に配置すればよい。3次元以上の座標空間を用いる場合も同様である。
【0030】
関係性グラフを見た参加者は、その時点において議論されているトピック間の距離を視覚的に把握することができる。これにより例えば、未だ議論されていないトピックについてヒントを得て、新たな議論を展開するなどの契機とすることができる。例えば図3においてはグループ1とグループ2の間の距離が大きいので、その間の部分に相当するトピックが未だ充分議論されていないのではないか、などのヒントが得られる可能性がある。
【0031】
グルーピング部120は、関係性グラフを用いて、さらに以下の処理を実施することもできる。参加者は、関係性グラフ上の座標のうち、議論が充分ではないと想定される箇所(すなわち関係性グラフ上の空隙部分)を指定する。グルーピング部120は、その座標を受け取り、座標空間上におけるその座標に対応する特徴ベクトルを特定する。グルーピング部120は、その特定した特徴ベクトルをグループ特徴ベクトルとして有する新たなグループを新規作成し、アイデアボード画面111上に配置する。その新規グループは、特定したグループ特徴ベクトルから導かれるタグ1113を有し、アイデアメモ1111が空であるグループとなる。これにより、参加者がその新規グループに関連する議論を始めるよう促すことができる。
【0032】
グルーピング部120は、関係性グラフを用いて、さらに以下の処理を実施することもできる。上記のように参加者が関係性グラフ上の座標を指定したとき、グルーピング部120は、その座標に対応する特徴ベクトルを特定し、その特定した特徴ベクトルから新たなアイデアメモ1111を新規生成してアイデアボード画面111上に配置する。例えばその特徴ベクトルのうち特にTF-IDF値が大きい単語を用い、さらに助詞などを適宜補充することにより、その特徴ベクトルに対応する文章を自動生成する。その自動生成した文章を新たなアイデアメモ1111とすればよい。関係性グラフ上の座標に対応する特徴ベクトルを特定する手法としては、例えば以下のようなものが考えられる。
【0033】
(1)グループの特徴ベクトルを座標空間にマッピングする(座標値を得る)。
(2)各アイデアメモの文を形態素解析した結果の要素すべてを母集合とし、そこから1個以上任意の個数の要素を、例えば無作為に抽出し、それらを疑似的なグループとする。疑似的なグループを複数作成し、それらの特徴ベクトルを生成した上で、さらに座標空間にマッピングする
(3)ステップ(1)(2)の特徴ベクトルと関係性グラフ上の座標値との間の対応関係を記憶しておくことにより、座標値から特徴ベクトルを特定できるようにしておく。関係性グラフの次元数を圧縮する場合は、圧縮後の座標空間上における座標値と特徴ベクトルとの間の対応関係を記憶しておく。
(4)ユーザが関係性グラフ上で座標値を指定したとき、その座標値に対応付けられている特徴ベクトルを特定する。
【0034】
<実施の形態1:まとめ>
本実施形態1に係るアイデア支援システム10は、クライアント端末がグループ変更操作を実施する前の時点においては、クラスタリングによってアイデアメモ1111をグルーピングする。これにより、例えば参加者の議論が充分に進行していない段階においてもアイデアメモ1111を自動的にグルーピングすることができる。
【0035】
本実施形態1に係るアイデア支援システム10は、クライアント端末がグループ変更操作を実施した場合は、その変更後のグループ構成と各グループ所属のアイデアメモ1111との間の対応関係を学習器123に学習させ、新たなアイデアメモ1111はその学習結果にしたがって分類する。これにより、参加者が意図しているグループ構成を、それ以後に追加された新たなアイデアメモ1111に対して自動的に反映することができる。
【0036】
本実施形態1に係るアイデア支援システム10は、グループ間の関係性グラフを作成する。さらに、関係性グラフ上の座標を指定することにより、その座標に対応する新規グループや新規アイデアメモ1111を自動生成することもできる。これにより、参加者にとっては新たな議論の方向性についてのヒントを得ることができるとともに、新規グループや新規アイデアメモ1111を自動生成することによってこれをさらに促進することができる。
【0037】
<実施の形態2>
本発明の実施形態2では、アイデア支援システム10が備えることが望ましいその他機能について説明する。システム構成は実施形態1と同様であるので、以下では主に実施形態1で説明していないその他機能について説明する。
【0038】
図4は、カウントダウン機能について説明する図である。参加者がアイデアメモ1111を投稿するに際して、ある程度の期限を設けた方が、参加者に対して議論へ集中することを促すことになり望ましい場合がある。そこでアイデアボード画面111においてカウントダウン開始部1117aを設けてもよい。参加者がカウントダウン開始部1117aに数値を入力して開始ボタンを押下すると、サーバ100はカウントダウンを開始する。各クライアント端末は、サーバ100が保持しているカウント値を周期的に照会し、例えばカウント値が0になったとき、その旨を示すダイアログ1117bを表示する。これにより、いずれかの参加者がカウントダウンを指定したとき、全てのクライアント端末においてそのカウントダウン動作を共有することができる。なお図4においてアイデアメモ1111やグループは記載の便宜上省略した。以下の図面においても同様に適宜省略することとする。
【0039】
図5は、アイデアメモ1111を投稿した個数の統計を表示する例である。サーバ100は、参加者ごとに(すなわちクライアント端末ごとに)アイデアメモ1111を投稿した個数を集計し、それをアイデアボード画面111上で画面表示してもよい。例えば適当なボタン押下によって図5のような集計結果を表示すればよい。これにより、投稿数が少ない参加者に対して、より積極的な議論参加を促すことができる。
【0040】
図6は、現在議論しているトピックに関連するwebページを表示する例である。グルーピング部120は、アイデアメモ1111やグループの特徴ベクトルを算出することにより、アイデアボード画面111上で現在議論されている内容の大まかなトピックを把握することができる。画面生成部110は、そのトピックに関連するwebページ(例えばweb上のニュース記事など)を検索サイトなどから取得し、アイデアボード画面111上のダイアログ1118などに表示することにより、参加者に対して新たな気づきを得る契機を与えることができる。例えば、タグ1113を検索キーワードとして検索サイトに対してクエリを発行し、その結果から上位数件程度をダイアログ1118内に表示することにより、図6のような機能を実装することができる。
【0041】
アイデアボード画面111を用いたディスカッションを途中中断する場合、中断した時点におけるアイデアボード画面111の内容を後に再現できることが望ましい。そこでサーバ100は、アイデアボード画面111上に配置されているグループとこれに属するアイデアメモ1111の構成を、適当なファイル形式(例えばCSV形式)に保存してもよい。さらにその保存データを、クライアント端末からのリクエストに応じて送信してもよい。サーバ100またはクライアント端末は、ディスカッションを再開するとき、その保存データを用いて、中断時点におけるアイデアボード画面111の状態を再現することができる。
【0042】
<本発明の変形例について>
以上の実施形態において、サーバ100が備える各機能部は、例えばその機能を実装したソフトウェアをCPU(Central Processing Unit)などの演算装置が実行することにより、実装することができる。
【0043】
以上の実施形態において、学習器123としては、文書分類などの処理に適した適当な学習手法を実装したものを採用することができる。例えばロジスティック回帰によって学習器123を実装することができる。
【0044】
以上の実施形態において、特徴ベクトル算出部121はアイデアメモ1111やグループの特徴ベクトルとしてTF値やTF-IDF値を用いることを説明したが、その他適当な特徴量を特徴ベクトルとして用いてもよい。
【0045】
以上の実施形態において、クライアント端末をスマートフォンなどの携帯端末によって実装する場合、携帯端末が備える手書入力機能を用いてアイデアメモ1111を投稿するためのインターフェースを実装してもよい。この場合はその機能を実装したスマートフォンアプリなどを用いればよい。
【0046】
以上の実施形態において、サーバ100が画面生成部110とグルーピング部120を備えることとしているが、これら機能部は個別のサーバに実装した上で相互通信によってサーバ間で連携することにより同様の機能を実現してもよい。さらにサーバ100が保持するデータを別のサーバ上のデータベースなどに格納してもよい。例えば画面生成部110はwebアプリケーションサーバ上に実装し、グルーピング部120は文書処理サーバ上に実装し、データベースはデータベースサーバ上に実装することができる。
【符号の説明】
【0047】
10:アイデア支援システム
100:サーバ
110:画面生成部
120:グルーピング部
121:特徴ベクトル算出部
122:クラスタリング部
123:学習器
124:関係性グラフ生成部
201~203:クライアント端末
300:ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6