(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】迅速に再位置付け可能な動力式支持体アーム
(51)【国際特許分類】
A61B 90/50 20160101AFI20220203BHJP
【FI】
A61B90/50
(21)【出願番号】P 2018501138
(86)(22)【出願日】2016-03-04
(86)【国際出願番号】 US2016021076
(87)【国際公開番号】W WO2016160272
(87)【国際公開日】2016-10-06
【審査請求日】2018-12-26
(32)【優先日】2015-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517338135
【氏名又は名称】ソニトラック システムズ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー シュロッサー
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー エー.タックリンド
【審査官】宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-144399(JP,A)
【文献】特開昭63-280911(JP,A)
【文献】特開2001-187064(JP,A)
【文献】特開昭50-16563(JP,A)
【文献】米国特許第5779209(US,A)
【文献】欧州特許出願公開第1327814(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 90/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下位端部および上位端部を有するベースアームと、
近位端部および遠位端部を有する遠位アームと、
前記ベースアームの前記上位端部を前記遠位アームの前記近位端部に直接的または間接的にリンクさせる中央継手と、
前記ベースアームの前記下位端部にある下位継手と、
前記遠位アームの前記遠位端部にある上位継手と、
前記下位継手より上方の場所で前記ベースアームに結合され、前記下位継手と前記中央継手との間
に設けられ、前記下位継手、前記中央継手および前記上位継手に対してロッキング力を同時に送出するように構成されているロッキング機構と、
を含み、
前記ベースアームは、前記ロッキング機構の一端を前記中央継手に結合するベースアームセグメントを備え、前記ロッキング機構の他端に前記下位継手が結合され、
該ロッキング機構は、一方の軸方向では前記下位継手に対し、反対の軸方向では前記中央継手および前記上位継手に対し、ロッキング力を伝達する双方向力発生器を含
み、該双方向力発生器が、モータにより駆動されるリードスクリュと前記リードスクリュ上を走行するフォロアとを含む、
ことを特徴とするロッキング可能な支持体アセンブリ。
【請求項2】
前記ロッキング機構がさらに、前記双方向力発生器の一方の側から前記中央継手まで前記ロッキング力を伝達する上位ベースロッドと、前記中央継手から前記上位継手まで前記ロッキング力を伝達する遠位ロッドとを含む、請求項1に記載のロッキング可能な支持体アセンブリ。
【請求項3】
前記双方向力発生器が、上位ベースロッドと一列に並んで取付けられた3本のピンと共に結合された2つのリンクを内含する機械的リンケージを含む、請求項1に記載のロッキング可能な支持体アセンブリ。
【請求項4】
前記中央継手が、前記ベースアームの前記上位端部を前記遠位アームの前記近位端部に接合する心棒を有する回転継手を含み、前記ベースアームの前記上位端部にある界面表面が前記遠位アームの前記近位端部上の界面表面と摩擦係合し、こうして前記ロッキング機構は、前記ベースアームおよび前記遠位アームの相対的運動を防止するために前記界面表面を共に駆動するようになっている、請求項1に記載のロッキング可能な支持体アセンブリ。
【請求項5】
前記回転継手がさらに、上位ベースロッドから力を受け取る第1の傾斜表面と遠位ロッドに力を伝達する第2の傾斜表面とを含み、整列した前記第1の傾斜表面と前記第2の傾斜表面とは、(1)前記界面表面を共にロックすると同時に、(2)前記上位ベースロッドが前記第1の傾斜表面と係合したことに応答して前記第2の傾斜表面を並進運動させる前記心棒によって結合されている、請求項
4に記載のロッキング可能な支持体アセンブリ。
【請求項6】
前記下位継手および上位継手は、前記双方向力発生器がロッキング力を生成するときに球面継手をロックするため前記双方向力発生器に結合されている摩擦ブロックを含む球面継手を各々含む、請求項1に記載のロッキング可能な支持体アセンブリ。
【請求項7】
前記ベースアームは、前記ベースアーム、前記遠位アーム、前記中央継手および前記上位継手を滅菌または交換できるように、前記ベースアーム、前記遠位アーム、前記中央継手および前記上位継手の取外しを可能にするために、前記ロッキング機構から分離可能である、請求項1に記載のロッキング可能な支持体アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、以下の仮特許出願の利益を主張するものである;(1)2015年3月27日出願の第621139,535号(代理人整理番号49053-703.101);(2)2015年9月2日出願の第62/169,440号(代理人整理番号49053-703.102);(3)2015年9月2日出願の第62/213,509号(代理人整理番号49053-703.103);および(4)2016年1月19日出願の第62/280,631号(代理人整理番号49053-703.104)。これらの先行仮特許出願の各々の全開示が、参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、概して、外科用および他のツールを支持するための装置およびシステムに関する。詳細には、本発明は、外科用および他のツールを支持するためのロッキング可能な多関節アームに関する。
【背景技術】
【0003】
多くの工業的および医療的利用分野において、物体を空間内でしっかりと固定し支持することのできる再位置付け可能な薄型アームを得ることが望まれている。例えば、外科手術の分野においては、外科的部位の露出および視覚化ならびに所望される手順の実施を含めた異なる目的のために同時に多数の器具および開創器が同時に使用されることが一般的である。外科医は、典型的には各々の手で1つの器具しか保持および操作することができないことから、追加の器具を保持するためには、外科助手および/または再位置付け可能な支持アームを使用することが多い。追加の人材はコストが高く、作業部域を混雑させ、長時間にわたり器具を安定して保持するのが困難であることから、再位置付け可能な支持アームは、魅力的な選択肢である。
【0004】
外科手術で使用される大部分の再位置付け可能な支持アームは、1つ以上のスクリュ式ノブまたはレバーを用いて外科医または助手によりロックおよびロック解除される継手によって共に保持される2つ以上のアームセグメントを含む。継手が充分に締まっていない場合、器具は「ドリフト」する可能性があり、これは最低でも不便さを与え、時として患者にとっての多大なリスクを呈する可能性がある。器具を所望の場所および向きに揺るぎなく同時に保持しながらロック用ノブまたはレバーに必要な力を加えることは、理論的には簡単であるものの、実践上は困難であり得る。従来の再位置付け可能な支持アームを使用する上での別の課題は、器具を保持するためおよびノブまたはレバーを締付けるために2つの手が必要となるということにある。第3の課題は、アームをロック解除し器具を再位置付けしアームを再締付けするプロセスが煩わしく、手術中に貴重な時間が失われるという点にある。
【0005】
これらの課題に部分的に対処する目的で、アーム継手をロックするために動力供給または蓄積エネルギー源(例えば圧縮気体)を制御するのに押しボタンまたはスイッチを使用する再位置付け可能な支持アームが提案されてきた。このようなアームは、迅速にロックおよびロック解除され得、器具再位置付けタスクの煩わしさを軽減する。しかしながら、今までのところ、このような動力式で再位置付け可能な支持アームは、嵩高く、高価で、滅菌がむずかしく、継手ロッキング力が低いため、継手が滑脱する傾向がある。
【0006】
したがって、迅速な調整可能性および器具の設置、片手操作、高い継手ロッキング力および器具の安定性、コンパクトな断面形状、簡易な滅菌、および低コストのうちの1つ以上を提供する外科用および他の用途用の再位置付け可能でロッキング可能な支持アームを提供することが有用であると思われる。本発明は、好ましくは、これらの目的のうちの少なくともいくつかを提供する。
【0007】
関連する背景特許文献としては、以下のものが含まれる。すなわち、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6および特許文献7。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第4,402,481号明細書
【文献】米国特許第4,606,522号明細書
【文献】米国特許第6,491,273号明細書
【文献】米国特許第3,910,538号明細書
【文献】米国特許第6,575,653号明細書
【文献】米国特許第3,858,578号明細書
【文献】米国特許第5,020,933号明細書
【発明の概要】
【0009】
第1の態様において、本発明は、下位端部および上位端部を有するベースアームと、近位端部および遠位端部を有する遠位アームと、ベースアームの上位端部を遠位アームの近位端部に直接的または間接的にリンクさせる中央継手と、ベースアームの下位端部にある下位継手と、遠位アームの遠位端部にある上位継手と、下位継手より上方の場所でベースアームに結合され、下位継手、中央継手および上位継手に対してロッキング力を同時に送出するように構成されている(典型的には以下で説明するアクチュエータを含む)ロッキング機構と、を含む、ロッキング可能で再位置付け可能な支持体アセンブリを提供している。「上方」とは、ロッキング機構が、下位継手に対し遠位にある下位継手の側、すなわち、中央継手に向かう方向にあることを意味する。ロッキング可能な支持体アセンブリの下位継手は、典型的に、多くの場合ポールあるいは他の中間支持要素によって間接的に、手術台上のサイドレールなどの表面に取外し可能な形で取付けられるように構成される。上位継手は、典型的に、外科手術または他の目的のためツールまたはツールホルダーを取外し可能な形で取付けるように構成される。
【0010】
継手は、ロッキング可能で再位置付け可能な支持体アセンブリ内で使用されるタイプの任意の構成を有していてよく、典型的には、3次元空間内で「自在な」枢動動作を提供する球面継手または玉継手、1本の軸との関係において一平面内での回転を提供する回転継手、直線、曲線または他のラインに沿った運動を可能にする並進継手などである。特定の実施形態において、中央継手は通常、回転継手であり、一方上位継手および下位継手は典型的に球面継手である。
【0011】
本発明のロッキング機構は、同様に、さまざまな構成を有することもできる。好適なロッキング機構は典型的に、圧縮(例えば押圧)、張力(例えば引張り)、回転またはそれらの組合せのうちの少なくとも1つによってロッキング力を送出する。ロッキング力は継手と係合するかまたは相互作用して継手を選択的に不動化し、これらの継手が今度は継手およびアームを所望の位置で保持しロックする。継手がロッキング力から解放されている場合、継手およびアームは手動式に再位置付け可能となり、こうしてユーザーは、遠位アームの遠位端部に保持されたツール、器具または他の物品を、所望の場所および向きに置くことができ、位置が満足のいくものとなった後、ロッキング力を加えてアームを不動化し、アームが解放されるまで所定の場所にツールまたは器具を保持することができる。
【0012】
特定の実施形態において、ロッキング機構は、一方の軸方向で下位継手に対して、反対の軸方向で中央継手および上位継手に対して、ロッキング力を伝達する動力式双方向力発生器を含む。ロッキング機構は通常、双方向力発生器の一方の側から中央継手までロッキング力を伝達する上位ベースロッドと、中央継手から上位継手までロッキング力を伝達する遠位ロッドとを含む。ロッキング機構は通常、双方向力発生器の反対の側から下位継手まで力を伝達する下位ベースロッドまたはエクステンダを含んでいてよい。代替的には、下位玉継手は双方向力発生器の反対の側に直接結合されていてよい。例示された実施形態において、双方向力発生は、流体的に、例えば油圧式および/または空気圧式に動力供給されてよく、あるいは、電動式であってもよい。
【0013】
本明細書中で使用される「ロッド」なる用語は、1本の軸を有し、圧縮(例えば軸方向の押圧)、張力(例えば軸方向の引張り)、および/または軸を中心とする回転を介して機械的力を伝達する能力を有する任意の細長い構造または部材を含む。ロッドは、単なる円筒形の細長い要素として例示されているが、例えば矩形または他の非円形横断面を有する梁などの他の幾何形状を有していてよい。ロッドは通常、モノブロックで形成されるが、所望の力を伝達するために共に接合される2つ以上のセグメントを伴って形成されることも可能である。通常ロッドは剛性であるが、一部のケースでは、例えば継手または他の要素間で張力を加えるために使用される場合、非剛性であることができる。
【0014】
流体的実施形態において、双方向力発生器は、第1の軸方向に走行するピストンおよび第2の軸方向に走行するシリンダまたは第2のピストンを伴う油圧式または空気圧式駆動機構を含む。駆動機構は、ピストンが、例えば中央継手までベースアームに沿って一方の軸方向でロッキング力を伝達するように配置され、シリンダまたは第2のピストンが、例えば下位継手までベースアームに沿ってもう一方の軸方向でロッキング力を伝達するように配置されるように、ベースアームと軸方向に整列されている。流体的双方向力発生器は、通常、同様に、流体的発生器、例えば加圧された油圧または空気圧流体を生成する発生器を含む。流体的発生器は、典型的に、油圧式または空気圧式駆動機構から離れた所に位置設定され、流体的連結ラインによって駆動機構に連結される。
【0015】
電動式の実施形態において、双方向力発生器は、電動モータおよび増力手段を含んでいてよい。増力手段は、モータにより駆動されるリードスクリュおよびスクリュ上を走行するフォロワを含んでいてよい。代替的には、増力手段は、上位ベースロッドと一列に並んで取付けられた3本のピンで共に結合された2つのリンクを内含する機械的リンケージを含んでいてよい。他の増力手段は、ギヤ減速、スクリュ駆動、ラックエンドピニオン駆動またはローラウエッジ機構の組合せを含む。
【0016】
他の特定の実施形態において、中央継手は、ベースアームの上位端部を遠位アームの近位端部に接合する心棒を有する回転継手を含み、ベースアームの上位端部にある界面表面が遠位アームの近位端部上の界面表面と摩擦係合し、こうしてロッキング機構は、アームの相対的運動を防止するために界面表面を共に駆動するようになっている。このような回転継手はさらに、上位ベースロッドから力を受け取る第1の傾斜表面と遠位ロッドに力を伝達する第2の傾斜表面とを含んでいてよく、整列した表面は、(1)界面表面を共にロックすると同時に、(2)上位ベースロッドが第1の傾斜表面と係合したことに応答して第2の傾斜表面を並進運動させる心棒によって結合されている。上位継手および下位継手は、発生器がロッキング力を生成するときに球面継手をロックするため双方向力発生器に結合されている摩擦ブロックを含む球面継手を各々含んでいてよい。
【0017】
本発明のロッキング可能で再位置付け可能な支持体アセンブリは、同様に、滅菌された構成要素のドレーピング、滅菌および交換も便利にする。詳細には、本発明のロッキング可能な支持体アセンブリは、ベースアーム、遠位アーム、および中央継手および上位継手の滅菌または交換を可能にすることを目的としてベースアーム、遠位アームおよび中央継手および上位継手を取外しできるようにしロッキング機構から分離可能であるベースアームを含むことができる。
【0018】
ロッキンが可能な支持体システムは、ベースアーム、遠位アームおよび継手がロッキング機構に連結されているときロッキング機構をカバーするように構成された無菌ドレープを伴うロッキング可能な支持体を含むことができる。
【0019】
第2の態様において、本発明は、下位端部および上位端部を有するベースアームと、近位端部および遠位端部を有する遠位アームと、ベースアームの上位端部を遠位アームの近位端部に直接的または間接的にリンクさせる中央継手と、ベースアームの下位端部にある下位継手と、遠位アームの遠位端部にある上位継手と、下位継手、中央継手および上位継手を同時に係合して、前記アームの相対的動作を防止するために前記継手に対してロッキング力を送出するように構成されている動力式ロッキング機構と、アームが移動するのを防ぎおよび/またはロッキング機構に対する動力の喪失時点でロッキング機構が継手を係合解除するのを防ぐラッチング機構と、を含む、アセンブリを提供する。
【0020】
ロッキング機構は、典型的に、ベースアームおよび遠位アームを通してロッキング力を伝達して継手をロックする力発生器を含み、力発生器は通常、ロッキング力を伝達するために第1の方向に走行する少なくとも1つの第1のピストンおよび反対方向に走行する第2のピストンまたはシリンダを伴う、例えば油圧式または空気圧式の流体駆動機構を含む。代替的には、力発生器は、中央継手、下位継手および上位継手に力を送出するために増力器によって結合されているモータを含むことができる。
【0021】
ラッチング機構は、アセンブリが動力を受け取っている間制約され、動力を喪失した時点でロッキング機構および/またはアームをラッチするため制約から解放されるバネ式要素を含んでいてよい。代替的には、ラッチング機構は、増力器の非可逆的性質により提供され得る。
【0022】
第3の態様において、本発明は、下位端部および上位端部を有するベースアームと、近位端部および遠位端部を有する遠位アームと、ベースアームの上位端部を遠位アームの近位端部に直接的または間接的にリンクさせる中央継手と、ベースアームの下位端部にある下位継手と、遠位アームの遠位端部にある上位継手と、下位継手、中央継手および上位継手を同時に係合して、前記アームの相対的動作を防止するために前記継手に対してロッキング力を送出するように構成されている動力式ロッキング機構(ここで、動力式ロッキング機構が動きを喪失したとき、アームはロック状態にとどまる)と、ロッキング機構に対する動力喪失時点で、アームの手動式再位置付けを可能するためのオーバーライド機構と、を含む、ロッキング可能な支持体アセンブリを提供している。
【0023】
オーバーライド機構は、動力式ロッキング機構が動力を喪失した時点でアームの手動式再位置付けおよび再ロッキングを可能にするため、ロッキング機構を一時的に係合解除する。力発生器は、ロッキング力を伝達するために反対方向に走行する少なくとも1つの第1のピストンおよび第2のピストンまたはシリンダを伴う油圧または空気圧シリンダを含むことができる。力発生器は、中央継手、下位継手および上位継手に力を送出するために増力器によって結合されているモータを含むことができ、オーバーライド機構はリードスクリュを係合解除する。
【0024】
第4の態様において、本発明は、下位端部および上位端部を有するベースアームと、近位端部および遠位端部を有する遠位アームと、ベースアームの上位端部を遠位アームの近位端部に直接的または間接的にリンクさせる中央継手と、ベースアームの下位端部にある下位継手と、遠位アームの遠位端部にある上位継手と、下位継手、中央継手および上位継手を同時に係合して、前記アームの相対的動作を防止するために前記継手に対してロッキング力を送出するように構成されている動力式ロッキング機構と、を含む、ロッキング可能な支持体アセンブリにおいて、継手の少なくともいくつかは、ロッキング機構が継手を係合した時点のアームの位置の非意図的な変更を防ぐために、ロッキング力の不在下で継手またはロッキング機構の隙間を削除または削減するようにバイアスされている、ロッキング可能な支持体アセンブリを提供する。
【0025】
ロッキング機構は、ベースアームおよび遠位アームを通してロッキング力を伝達して継手をロックする力発生器を含んでいてよく、力発生器は、ロッキング力を伝達するために反対方向に走行する少なくとも1つの第1のピストンおよび第2のピストンまたはシリンダを伴う流体的(油圧または空気圧)シリンダを含む。代替的には、力発生器は、中央継手、下位継手および上位継手に力を送出するために増力器によって結合されているモータを含んでいてよい。
【0026】
本発明の別の態様において、ロックキングアームアセンブリは、器具の片手操作およびロック解除/ロック作業を可能にするため遠位アームの遠位端部近くに配置されたロック/ロック解除ボタンまたはスイッチをさらに含んでいてよい。ロック/ロック解除ボタンまたはスイッチは、本明細書中に記載され請求されているロッキング機構のいずれかの作動を開始または有効化するように構成されていてよい。
【0027】
本発明のさらに別の態様において、ロッキング力は、機械的要素を用いて、下位継手、中央継手および上位継手に対し実質的に同時に伝達され得る。
【0028】
本発明のさらに別の態様において、ベース、遠位アーム、中央継手、下位継手、および上位継手は、唯一ロッキング機構によってのみ駆動されるように構成されており、ロッキング機構は単一のコネクタにより動力供給されている。これは、ロッキング可能な支持体アセンブリがアセンブリの外の他の動力源とインターフェースする必要がないため、有利である。このようなインターフェースの削除は、臨床的ワークフローを改善するために有益であり、本発明のロッキング可能なアームの効率の良い動力利用によって可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】電動ロッキング機構を内蔵する本発明の原理にしたがって構築された再位置付け可能でロッキング可能な支持アームを示す図である。
【
図2】流体を動力とするロッキング機構を内蔵する本発明の原理にしたがって構築された再位置付け可能でロッキング可能な支持アームを示す図である。
【
図3】
図2の一部分の中の構成要素の拡大図である。
【
図5】
図1~4の遠位アームの遠位端部上の遠位継手の詳細な横断面図である。
【
図6a】
図1~4の中央回転継手の詳細な横断面図を示す。
【
図6b】
図1~4の中央回転継手の詳細な横断面図を示す。
【
図7】
図1の電動ロッキング機構の詳細な横断面図である。
【
図8】
図2の流体ロッキング機構の詳細な横断面図である。
【
図9】
図8の流体ロッキング機構を駆動する、マスター流体シリンダアセンブリの横断面図を示す。
【
図10】
図9のマスター流体シリンダアセンブリに動力を提供する空気圧システムの概略図を示す。
【
図11】流体ピストンに隣接する起動バルブを伴う加圧流体によって直接動力供給される代替的な双方向ロッキング機構の実施形態の横断面図を示す。
【
図12】2つの対面するピストンにより動力供給される代替的双方向ロッキング機構の横断面図を示す。
【
図13】単一のピストンおよび可動シリンダにより動力供給される、代替的双方向ロッキング機構の横断面図を示す。
【
図14(a)】
図8および
図11~13のロッキング機構内でのピストンの使用に対する代替案としての、2つの本体を強制的に分離するための機械的手段を提供するローラ玉継手を示す図である。
【
図14(b)】
図8および
図11~13のロッキング機構内でのピストンの使用に対する代替案としての、2つの本体を強制的に分離するための機械的手段を提供するローラ玉継手を示す図である。
【
図15】機械的利点を生み出すために、リンケージ部材および偏心ハブを用いる代替的双方向ロッキング機構の実施形態の横断面図を示す。
【
図16】機械的利点を生み出すために、ローラウエッジを使用する代替的双方向ロッキング機構の実施形態の横断面図を示す。
【
図17】(a)~(d)はロッキング機構がロッキング力をアーム継手に分配する方法の概念的をそれぞれ示す図である。
【
図18】(a)は中央回転継手から離れる方向に上位ベースロッドを引張ることによりロックされる中央回転継手の横断面図を示し、(b)は上位ベースロッドを回転させることによってロックされる中央回転継手の横断面図を示す。
【
図19】球面継手から離れる方向に内側ロッドを引張ることによりロックされる球面継手の横断面図を示す。
【
図20】外側アームセグメントに対しロック用張力を加える代替的ロッキング機構の横断面図を示す。
【
図21】(a)~(d)は
図1~4の中央回転継手の代替的実施形態の横断面図をそれぞれ示す。
【
図22a】ロッキング機構がアームのベースをラッチしこのアームのスペースに位置設定されている、再位置付け可能でロッキング可能な支持アームの近位部分の変形実施形態を示す斜視図である。
【
図22b】ロッキング機構がアームのベースをラッチしこのアームのスペースに位置設定されている、再位置付け可能でロッキング可能な支持アームの近位部分の変形実施形態を示す横断面図である。
【
図23】摩擦エネルギー損失を削減するために転動要素が使用される、
図1~4の中央回転継手の変形実施形態の横断面図である。
【
図24】摩擦エネルギー損失を削減し機械的利点を生み出すためにローラウエッジが使用されている、
図1~4の中央回転継手の変形実施形態の横断面図である。
【
図25a-d】再位置付け可能でロッキング可能な支持アームの継手を予備負荷するためのさまざまな実施形態の横断面図を示し、(a)~(d)はバネが中央回転継手に位置設定された状態の予備負荷実施形態をそれぞれ示す。
【
図25e-f】再位置付け可能でロッキング可能な支持アームの継手を予備負荷するためのさまざまな実施形態の横断面図を示し、バネが中央回転継手に位置設定された状態の予備負荷実施形態をそれぞれ示す。
【
図25g-h】再位置付け可能でロッキング可能な支持アームの継手を予備負荷するためのさまざまな実施形態の横断面図を示し、バネがベース球面継手および/または遠位球面継手に位置設定された状態の予備負荷実施形態をそれぞれ示す。
【
図26a】再位置付け可能でロッキング可能な支持アームのための機械的オーバーライドロック/解除システムについての変形実施形態の横断面図を示す。
【
図26b】再位置付け可能でロッキング可能な支持アームのための機械的オーバーライドロック/解除システムについての変形実施形態の横断面図を示す。
【
図27a-b】本発明にしたがって再位置付け可能でロッキング可能な支持アームと組み合わせることのできる、動作範囲が増大したロック用球面継手についての一変形実施形態を示し、(a)は3D図を示し、(b)は横断面図を示す。
【
図28a】本発明に係る再位置付け可能でロッキング可能な支持アームのための滅菌システムの実施形態を示す。
【
図28b】本発明に係る再位置付け可能でロッキング可能な支持アームのための滅菌システムの実施形態を示す。
【
図29a-b】
図28bに描かれたロッキング機構に遠位アームを取付け、それを取外すための界面の詳細な実施形態をそれぞれ示す図である。
【
図30】本発明に係る再位置付け可能でロッキング可能な支持アーム内で使用するための近位アームリンケージカウンタバランスシステムの一実施形態を示す図である。
【
図31】本発明に係る再位置付け可能でロッキング可能な支持アーム内で使用するための近位アームリンケージカウンタバランスシステムの代替的な8面体実施形態を示す図である。
【
図32a】本発明に係る多数の再位置付け可能でロッキング可能な開創器支持アームで構成された開創システムを示す図である。
【
図32b】本発明に係る多数の再位置付け可能でロッキング可能な開創器支持アームで構成された開創システムを示す図である。
【
図33】多数の再位置付け可能でロッキング可能な支持アームを並行して作動させることにより、強度および安定性が増大した器具位置付けシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、患者(11)に対する外科的処置において使用されている本発明の原理にしたがって構築された再位置付け可能でロッキング可能な支持アームを示す。電動ベースユニット(1)が、手術台(3)のサイドレール(2)に挟持される。ベースユニット上の手動式クランプ(4)が、サイドレール(2)に対しベースユニット(1)を締め付け、手術台の上方のアームの高さを決定するボール(5)の調整を可能にする。アーム自体は、近位ベース近傍の電動アクチュエータユニット(6)、ベースアームセグメント(7)および遠位アームセグメント(8)で構成されている。器具ホルダー(9)が器具(10)をアームの遠位端部に連結する。ロック/ロック解除ボタン(12)が器具ホルダー上またはその近傍に具備され、こうしてユーザーは、患者(11)との関係における所望の場所および向きで器具を位置付けおよび/または保持するのと同じ手でアームの動力ロッキング/ロッキング解除を開始することができるようになっている。
図1では、継手は、以下で
図7を参照しながらさらに説明するように、電動ベースユニット(1)および電動双方向アクチュエータ(6)を用いて、ロックおよびロック解除される。
図2では、アームの継手は、以下で
図8~10を参照しながらさらに説明するように、流体ベースユニット(20)および流体双方向アクチュエータ(21)からなる流体システムを用いてロックおよびロック解除される。
【0031】
図1および
図2のロッキングアームは、球面継手と回転継手により接合されたアームセグメントの直列リンケージを含む。
図3により詳しく示されているように、ベースアームセグメント(7)および遠位アームセグメント(8)は、中央回転継手(30)を用いて連結されている。ベース球面継手(31)は、ベースアームセグメント(7)の近位端部に連結されているアクチュエータユニット(400)の近位または「ベース」端部に位置設定されたベース球体リテーナ(35)の中に保持される。遠位球面継手(32)は、遠位アームセグメント(8)の遠位端部に位置設定された遠位球体リテーナ(36)内に保持される。遠位アームセグメント(8)との関係における遠位球体リテイナ(36)の回転を可能にするため、遠位球面継手(32)と中央回転継手(30)の間に、追加の遠位回転継手(33)を具備することができる。同様にして、ベースアームセグメント(7)の近位端部とアクチュエータ(400)の間には、ベース球体リテイナ(35)との関係におけるベースアームセグメント(7)の回転を可能にするため、回転可能なベース継手(34)を具備することができる。いくつかの好ましい実施形態において、球体リテイナは、スロット内の球面継手の拡張枢動を可能にするスロット(37)を有する。
【0032】
図1~3には、ベースおよび遠位アームセグメントのみが例示されているものの、中央回転継手がベースアームの上位端部を遠位アームの近位端部に「直接的または間接的にリンクするように、中央回転継手(30)と遠位球体リテイナ(36)の間に、追加の「中間」アームセグメントを具備することができると考えられる。各追加アームセグメントには通常、再位置付け可能でロッキング可能な支持アーム構造を形成するために、通常は1つの追加回転継手である少なくとも1つの追加の継手を付加する必要がある。このような追加のアームセグメントは、より広いカバレッジと、アームにとってより大きな手術野内の自由度を伴って位置付けされる能力とを提供することができる。
【0033】
ここで特に
図4および
図5を参照すると、矢印(6a)により示されている通り、双方向アクチュエータ(400)から近位および遠位方向に「両側的に」ロッキング力が伝達される。遠位ロッド(41)および上位ベースロッド(40)が、それぞれベースアームセグメント(7)および遠位アームセグメント(8)内で軸方向通路を通って延在し、中央回転継手(30)および遠位球面継手(32)に対して遠位方向にロッキング力を伝達する。アクチュエータ(400)からの近位力は、アクチュエータ(400)の近位またはベース端部においてエクステンダー(6e)によって伝達されベースをロックする。遠位ロッド(41)、上位ベースロッド(42)およびエクステンダ(6e)上の圧縮負荷が、球面継手摩擦ブロック(43)(44)を押し、これらのブロックが、実質的に同時に、両方の球面継手(31)および(32)に圧力を加える。エクステンダ(6e)上の圧縮負荷は、エクステンダと接触しているアクチュエータ(400)の伸長の結果である。内側ロッド上への圧縮負荷は、ベースおよび遠位アームセグメント(7)、(8)を通した反動力(拡張負荷)をひき起こす。これらの反動力は、アームセグメント(7)(8)と球体リテイナ(35)(36)の間のベースおよび遠位ランプ付き界面(39)(38)を通して伝達されて、ランプ付き界面において摩擦力を適用し、ベースおよび遠位回転継手(34)(33)をロックする。
図5では、遠位つまり上位球面継手(32)が示されているものの、詳細はベース球面継手(31)についても同様である。
【0034】
図6aは、中央継手(30)をより詳細に示し、ロッキング力がベースアームセグメント(7)内の上位ベースロッド(42)から遠位アームセグメント(8)内の遠位内側ロッド(41)までどのように伝達されるかを例示する。中央継手(30)は、上位ベースロッド(42)からロッキング力を受け取ると同時に中央継手自体および遠位ロッド(41)に対してロッキング力を加える動作/力移送機構を画定する。この移送機構には、ベーススラグ(60)と遠位スラグ(61)が含まれる。上位ベースロッド(42)の遠位端部上のランプ界面(42r)は、上位ベースロッド(42)がアクチュエータ(400)によって上向きに押される(
図4)につれて、ベーススラグ部材(60)上のランプ界面表面(60r)に対して押圧する。ランプ界面表面(60r)の角度は、ベーススラグ(60)を、矢印(60a)の方向でアームのベース側から離れるように外側に並進運動させる。ベーススラグ(60)と遠位スラグ(61)を連結するキャップ付き心棒部材(63)が、遠位スラグ(61)を矢印(61a)の方向でアームのベース側に向かって内側に並進運動させる。遠位スラグ(61)が内側に並進運動するにつれて、遠位ランプ界面(60r)は、遠位ロッド(41)上のランプ界面(41r)と係合して、ロッドを遠位球面継手(32)の方向に押す。遠位ロッド(41)の遠位端部は、摩擦ブロックを遠位球面継手(32)のボールに対して押し、遠位球面継手(32)を所定の場所にロックする。
図6bは、遠位ランプ界面の詳細な横断面図である。
【0035】
ここで再び
図6aを参照すると、遠位スラグ(61)が内側に並進運動した場合遠位傾斜路界面(61r)は、内側に向けられた力を遠位内側ロッド(41)と遠位アームセグメント(8)の間に加えさせる。この力は、アームの遠位半分全体に、中央回転継手界面においてアームのベース半分上に力を加えさせ、こうして中央回転継手(30)に対しロッキング力を加える。中央回転継手にある摩擦座金(67)が、中央回転継手ロック用トルクを増大させる。ここで、設計上、システムが移動部品の間に小さい隙間を有するということに留意されたい。その結果、アクチュエータの小規模な動作(典型的には2mm未満)だけで、システムをロック状態と解放状態の間で移動させることができる。
【0036】
図6aに描かれている別の特徴部は、アクチュエータが故障した場合に使用するための手動式ロックおよびロック解除バックアップまたはオーバーライド機構である。スクリュ付きノブ(66)が、心棒部材(63)のスクリュ付き胴部全体にわたって設置されている。それ自体中央継手を締付けるかまたは伸長させてアクチュエータの状態とは独立してアーム全体を手動式にロックまたはロック解除するベーススラグ(60)および遠位スラグ(61)上のロッキング力を増減させるために、ノブを回すことができる。このような手動式ロッキング特徴部は、挟持経路内のいずれの部材に沿ったいずれの場所にでも設置することができる(先の
図26を参照)。心棒部材(63)は、ベーススラグ(60)との関係におけるその回転を制限するキーを有することができる。図示された実施形態においては、ロックナット(68)が心棒に固定されている。ノブ(66)とナット(68)の間の軸方向の隙間(68c)は、制限されたノブの動作範囲を提供する。この動作は、継手が過度に緩まず過度に締付けられ得ないことを保証する起動範囲に対応する。別の実施形態では、ノブ(66)の代りに、ツールの作動を必要とする界面が存在してもよい。こうして、ノブの偶発的な作動が防止される。
【0037】
多くの種類のアクチュエータが、当業者にとって公知である。本発明の好ましい実施形態においては、アクチュエータ(400)は、「通常オン」であるという特性を有する。すなわち、医療処置中にアームがロックされている間にアクチュエータの動力が喪失された場合、アームは、保持されている器具がその位置を失なわないようにロック状態にとどまる。アームの予想外のロック解除は、保持されている器具が患者に対して微妙なまたは傷付きやすい位置にある場合(例えば、下垂体脳外科手術中に可視化のために使用される経鼻内視鏡など)、重大な医療的帰結をもたらす可能性がある。したがって本発明の一実施形態において、アクチュエータは、バックドライブ不能な増力器を用いて電子的に動力供給される。
【0038】
図7を参照すると、電動双方向アクチュエータ(6)は概して、モータにより駆動されるリードスクリュまたはドライブスクリュ、およびスクリュ上を走行するナットまたは他のフォロワを含む。遊星歯車ヘッド(71)を伴うモータ(70)が、リードスクリュ(72)に剛結されたギアボックスシャフト(71s)結合器を回転させる。リードスクリュの回転は、リードナット(73)をシャフトアセンブリとの関係において並進運動させ、上位ベースロッド(42)およびモータケージ(75)を圧縮する。リードナットおよびモータマウント上のフランジ(図示せず)が、動作を純粋に並進運動だけに制約し、リードナットがアセンブリとの関係において回転するのを防ぐ。スラスト軸受(74)が、大きい圧縮負荷を支持する。モータのトランスミッションの設計(ギヤボックスおよびリードスクリュ)は、ギヤの「バックドライブ」を防止するように選択でき、このことは、動力またはモータの不具合の場合にアクチュエータはその現状態にとどまり、こうしてアームはその現状態(ロックまたはロック解除状態)にとどまることから、有利である。変形実施形態において、リードスクリュは、ギヤ減速、差動スクリュ駆動、ラックアンドピニオン駆動、ウォームギヤ駆動、ローラウエッジ機構、ローラボール機構(
図14)または他の手段の組合せを含み得る代替的増力手段で置換されてよい。
【0039】
特定の力でシステムを駆動しロックするためには、モータに対し特定のトルクを適用しなければならない。電流はトルクに正比例することから、ロッキング段階の間に最大電流を精確に制限することにより、特定の継手ロッキング力を達成することができる。最大電流は、電流センサーを用いてソフトウェアで選択可能であり得ることから、この実施形態において、ロッキング力をソフトウェアで選択することができる。電流は、アーム(1)のベースユニット内に位置設定されたバッテリから都合よく引込むことができ、こうして、システムは、内蔵型のユニットとなり、外部コードをプラグ接続する必要はなくなる。
【0040】
ナット(73)がその近位「ホーム」位置(76)に戻るとき、ホーム位置で「ハードストップ」を打撃する前にモータを切って、モータの損傷を防ぎシステムに対する「衝撃負荷」を制限するために、接点スイッチ(図示せず)を使用することができる。別の実施形態において、ホーム位置(76)に堅い「衝突バネ」(図示せず)を具備することができる。このバネは、ゴム製ディスク、セラミックブレーキディスク、皿バネまたは他の材料であってよい。
【0041】
本発明の別の実施形態において、双方向アクチュエータは、流体(好ましくは油圧油)により動力供給される。これは、
図8中に横断面図で描かれている。アクチュエータは、ベース球体リテイナに剛結された外部ケース(81)を含む。このケースの内部には、ケース内部を軸方向に自由に移動できるアクチュエータシリンダ本体(82)がある。アクチュエータ本体は、上位キャップ(83)および下位キャップ(84)により端部において、剛性的にキャッピングされている。アクチュエータ本体の内部に配置されているのは、ピストンエクステンダロッド(87)に剛性的に固定されたピストン(85)である。ピストン(85)の底面と下位キャップ(84)の上面の間の体積は、小さい油圧空隙(86)を形成する。流体がホース(98)を通って油圧取付け具(88)までそしてこの空隙内に圧送された時点で、ピストンエクステンダロッド(87)は、アクチュエータ本体(82)に向かって引込む。こうして、摩擦ブロック(43)から力が除去され、ベース球面継手を解放する。好ましい実施形態において、この小さな動作は、同様に、アームリンケージ連鎖全体をも解除する。油圧力は、バネ(80)の堅いスタックに対し作用する。スタックは、組立て体が通常ロックされているリンケージ内で剛性圧縮要素のように作用するのに充分な堅さを有することが好ましい。この実施形態は、流体圧力の喪失、動力喪失または他の機能低下シナリオに起因してアクチュエータが不活動状態になった場合にシステムをロック解除しないという利点を有する。
【0042】
流体アクチュエータ(21)を起動させるための圧力は、流体ベースユニット(20)によって生成される。ベースユニット(20)内部に格納されているのは、マスターシリンダアセンブリ(90)である。マスターシリンダアセンブリの横断面図が
図9に示されている。加圧気体が、外部シリンダケーシング(99)内のポート(91)の中に入り、気体ピストン(92)を押圧する。ピストン上の力は、コネクティングロッド(93)を通って油圧ピストン(94)まで移送される。油圧ピストンの変位が、ホース(98)を介して
図8に示されているスレーブ取付け具(88)に連結する油圧取付け具(95)から、油圧油を圧送する。
【0043】
気体圧力が放出されると、剛性ピストンアセンブリと外部シリンダケーシング(99)の間に連結されたバネ(96)が、気体および油圧ピストンをそのベース位置まで戻す。流体タンク(97)が、必要に応じてシステムに追加の油圧油を供給する。油圧ピストン(94)は概して、供給空気圧力に比べて油圧ライン内にはるかに高い圧力を作り出すために、空気圧ピストン(92)よりも小さい有効面積を有する。油圧マスターピストン(94)は概して、マスターシステムに比べてスレーブ起動システム内により大きな力を実現するため、油圧スレーブピストン(85)よりも小さい有効面積を有する。
【0044】
マスターシリンダアセンブリ(90)に供給される気体圧力を制御するため、
図10に概略的に示されている空気圧システムが使用される。好ましい実施形態において、高い圧力は、アームベースユニット(20)に直接取付けられる小型ガスボンベ(例えばCO
2)によって提供される。このようにして、ユニットは内蔵型となり、いかなる外部プラグも必要としない。一変形実施形態においては、高圧供給は、外部圧力源(例えば手術室内の圧縮空気または窒素)に由来するものであり得る。いずれの場合でも、高圧供給(100)は、圧力調節器(101)を用いて、定圧まで下がるよう調節される。調節器は、交互に加圧空気をマスターシリンダ(90)に供給するかまたはマスターシリンダをベントする三方パイロット駆動弁(102)に補給を行なう。三方パイロット駆動弁(102)は、パイロットに調節器(101)からの高圧空気を供給するかまたは大気へとパイロットをベントする三方トグルまたは押しボタン弁(103)を用いて制御される。三方トグルまたは押しボタン弁(103)は、アームがロックされるかまたはロック解除されるかを決定する役目を担当し、したがって、片手での器具の再位置付けを可能にするため、アームの端部エフェクター(遠位端部)の近傍に設置されるのが好ましい。最後の三方弁(104)は、調節器(101)を通して高圧供給(100)をベントするために使用される。これは、高圧供給が小型シリンダである場合に特に有用であり、シリンダの内容物をシリンダを取外す前に急速にベントすることを可能にする。
【0045】
当業者にとっては明白であるように、油圧マスターシリンダ(94)は、空気圧シリンダ以外の手段によって起動され得る。例えば、マスターシリンダは、代って、電動モータを用いて起動され得る。電動モータは、マスター油圧シリンダ(94)を起動するため、リードスクリュ、偏心ハブ、および/またはレバーなどの機械的増力器システムに結合され得る。
【0046】
別の実施形態において、双方向アクチュエータは、
図11に横断面図で描かれているように、CO
2などの高圧ガスを用いて直接作動できる。例えば加圧液体CO
2ボンベは、気体ピストン(111)にベントされた場合に高い力を提供できるおよそ850psi(8.51×10
7Pa)の蒸気圧を有する。単純な実施形態においては、アクチュエータの近くで、アームに対しボンベを直接取付けることができる。押しボタン「Y字形」弁(112)が、取付けられたボンベからの気体流量を制御する。「Y字形」弁が押されると、シリンダチャンバ(113)は、排気口(116)を通って大気にベントし、ボンベ入口(115)は遮断され、ピストン(111)上には全く圧力が及ぼされない。この位置において、アクチュエータは、上位ベースロッド(42)またはベース摩擦ブロック(43)に力を加えず、アーム継手はロック解除されている。「Y字形」弁が解放された場合、ベント(116)が遮断されボンベ入口(115)がシリンダチャンバ(113)に連結されているような位置まで、バネ(114)が弁を自動的に戻す。この位置で、加圧ガスは、ピストン(111)に力を加え、ベース摩擦ブロック(43)および上位ベースロッド(42)に対してアクチュエータを伸長させ、アーム継手をロックする。気体圧力がアクチュエータを伸長させる代りにアクチュエータを収縮させるような形で気体アクチュエータを「逆転させる」ために強力なバネが用いられる実施形態(
図8の油圧式実施形態に類似)を含め、変形形態が可能であるという点に留意されたい。
【0047】
図12および
図13は、双方向アクチュエータのための他の実施形態を示す。これらの実施形態において、油圧取付け具(88)を通ってホース(98)を介して送出される油圧油の加圧は、アームのロックをひき起こし、流体を減圧すると、アーム継手はロック解除されることになる。
図12において、シリンダ(122)が加圧された時点で油圧シリンダ(122)との関係において反対方向に2つのピストン(120)(121)が起動する。
図13では、単一のピストン(130)が油圧シリンダの空隙(132)内で変位させられ、その結果アクチュエータシリンダ本体は、外部ケーシング(81)との関係において伸長する。
【0048】
当業者にとっては、本発明の中心的課題が、短時間で充分なロッキング力を発生させそれを迅速に解放することにある、ということは明白である。機械的応力および歪みが選択された材料の限界内に入るように、各構成要素について好適な寸法および仕様を選択する上で、多大な注意を払う必要がある。油圧および電気的解決法は、卓越した2つの部類の解決法である。コンパクトに効率良く所要の力を発生させるために使用することのできる潜在的な機序は、他にも存在する。
【0049】
代替的な一組の実施形態においては、先に記述されたアクチュエータ実施形態のいずれかの中の1つ以上のピストンを置換するべく、ケーブル起動型のローラボールディスク(
図14a、b)を使用することができる。この設定では、中央シャフト(143)を用いて、2つのディスク(140)および(141)が共に結合される。
図14aは、完全なローラボールディスクを示し、
図14bは、上面ディスク無しのアセンブリを示す。各ディスクは、転がり軸受(142)を収容する一連のランプ付きスロット(144)(ランプ角θ)を有する。一方のディスク(140)が他方のディスク(141)との関係において回転された場合、ボール(142)は、上面および底面のランプ付きスロット(144)の関係において回転する。ランプ角度θにしたがって、ディスクは、相対的ディスク回転の一機能として中央シャフト(143)に沿って離隔する。ディスクは、外部ケーブルシース(147)の関係において引張られる(例えば並進運動する)機械的ケーブル(146)を用いて、互いの関係において回転させられてよい。機械的ケーブル(146)は、空気圧シリンダ、モータまたは他の手段を用いて、アームベースユニット上でシース(147)の関係において並進運動することができる。角度θは任意に小さくすることができるため、この機序を用いることによって任意の大きな機械的利点が生み出され、こうして、ディスクを互いの関係において膨張させるために、非常に強い力を発生させることができる。この機序の別の利点は、強力な接点が転がり接触であり、摩擦が最小限に抑えられ、エネルギー損失も最小限に抑えられる、という点にある。この機序の別の利点は、アクチュエータアセンブリおよび機械的ケーブルおよびシース(146)(147)が医療の利用分野用として容易に滅菌される、という点にある。
【0050】
双方向アクチュエータの別の実施形態(
図15に横断面で示されてる)においては、3本のピン(154)で共に結合された2つのリンク(150)(151)からなる機械的リンケージが、上位ベースロッド(42)と一列に並んで設置されている。この実施形態においては、2つのリンク(150)(151)が内側方向に向かって整列するように押込まれることから、大きな機械的利点が達成される。この実施形態において、内側方向の押圧は、システムをロックするためにさらなる機械的利点を作り出すべく、偏心駆動輪(152)によって達成される。偏心駆動輪(153)の軸は、モータシャフト、油圧手段または他の手段によって回転させられてよい。
【0051】
双方向アクチュエータの別の実施形態においては、
図16に示されているように、1組のローラウエッジ(160)(161)が使用されてよい。2つの刻み目(162)を伴うブロックが、2つのローラウエッジの先端を収納し、矢印(163)によって示されているように、力で内側に押される。ウエッジの転がり表面は、ベース摩擦ブロック(43)に剛性的に固定されたスペーサブロック(164)と上位ベースロッド(42)の動作に対する遮断動作の所望される機械的利点を生み出す目的で、カスタマイズすることができる。内側方向力(163)は、偏心ハブ、油圧ピストン、空気圧ピストンまたは他の手段を含めたあらゆる合理的手段によって適用可能である。
【0052】
図17(a)~(d)は、さまざまなロッキング起動手段を概念的に描いている。
図17aは、上位ベースロッドに対してロック用圧縮を加える双方向力発生器を表わす。
図17bは、内部ロッドに対しロック用張力を加える双方向力発生器を表わす。
図17cは、単一の方向に内部ロッドを強制する一方向力発生器を表わす。
図17dは、内部ロッドを回転させるロッキング機構を表わす。これらは、上位ベースロッド(42)を通した起動をさまざまな手段のうちの任意の1つを通して行なうことができるということを概略的に示している。これらの手段には、非限定的に、(a)本出願中で先に説明されている通り、双方向伸長アクチュエータを用いて内部ロッド長を伸長させて、上位ベースロッド(42)の圧縮をひき起こすこと;(b)上位ベースロッド(42)を張力下に置く双方向圧縮アクチュエータを用いて、内部ロッドを強制的に短縮させること;(c)内部ロッドを近位でまたは遠位で強制的にシフトさせて、上位ベースロッド(42)の異なるセグメントを圧縮および張力下に置くこと;(d)内部ロッドを回転させること、が含まれる。
図17に示された上位ベースロッド起動概念の各々について、継手ロッキング手段を相応して選択する必要がある。
【0053】
上位ベースロッド(42)がアームをロックするために遠位で起動している
図17aならびに
図17cに描かれている概念については、中央回転継手(30)は、
図6に示されているように、上位ベースロッド(42)上に圧縮力を適用することによってロックされる。上位ベースロッド(42)がアームをロックするために近位で起動している
図17bならびに
図17cに描かれている概念については、中央回転継手(30)は、上位ベースロッド(42)に対し張力を適用することによってロックされる。
図18aは、上位ベースロッド(42)に適用された張力を介して起動する中央回転継手(30)の横断面図を示す。心棒部材(185)内に切削されたランプ付き界面(180)が、ブリッジ部材(182)を介して、上位ベースロッド(42)に取付けられたピン(181)を収容する。上位ベースロッド(42)が近位に並進運動する場合、ピン(181)は、心棒(185)をベースアームセグメント(7)に向かって引張る。心棒(185)の端部上のナット(66)が遠位スラグ(61)をベースアームセグメント(7)に向かって押し、これにより、遠位内部ロッド(41)は遠位継手を起動し、それと共に、中央回転継手(30)は摩擦座金(67)において圧縮力を介してロックすることになる。
図18aでは、ナット(66)は、中央回転継手(30)のベース側に修正された特徴部を収容するため、アームの遠位側に位置設定されている(それがベース側にある先の実施形態とは異なる)という点に留意されたい。
【0054】
図17dに描かれている概念については、中央回転継手(30)およびベース球面継手(31)は、上位ベースロッド(42)上に回転トルクを適用することによってロックされる。
図18bは、上位ベースロッド(42)に適用されるトルクを介して起動する中央回転継手(30)の横断面図を示す。上位ベースロッド(42)に剛性的に固定された偏心ハブ(183)が、心棒部材(186)内に切削されたスロット(42)と係合する。上位ベースロッド(42)が回転すると、偏心ハブ(183)は心棒部材(186)をベースアームセグメント(7)に向かって押す。心棒(186)の端部にあるナット(66)が遠位スラグ(61)をベースアームセグメント(7)に向かって押し、これにより、遠位ロッド(41)は遠位継手を起動し、それと共に中央回転継手(30)は摩擦座金(67)において圧縮力を介してロックすることになる。
図18bでは、ナット(66)は、中央回転継手(30)のベース側に修正された特徴部を収容するためにアームの遠位側に位置設定されているという点に留意されたい。
【0055】
上位ベースロッド(42)がアームをロックするために近位で起動している
図17aならびに
図17cに描かれている概念については、ベース球面継手(31)は、
図5に示されているように、上位ベースロッド(42)上に圧縮力を適用することによってロックされる。上位ベースロッド(42)がアームをロックするために遠位で起動している
図17bならびに
図17cに描かれている概念については、ベース球面継手(31)は、上位ベースロッド(42)に対し張力を適用することによってロックされる。
図19は、内部ロッド(42)に適用された張力を介して起動する球面継手(31)の横断面図を示す。ブリッジ部材(190)が上位ベースロッド(42)を、ベース球体(31)の近位側と接触する近位摩擦カップ(191)と連結する。上位ベースロッド(42)が遠位に引っ張られた場合、ベース球体(31)は、近位摩擦カップ(191)とベース摩擦ブロック(43)の間の圧縮を用いてロックされる。
【0056】
先の実施例は、内部ロッドがロッキング力を加える解決法に集中しているものの、
図20に概略的に示されているように、ベースアームセグメント(7)を操作することによってアーム継手をロックすることも同様に可能である。この実施形態においては、ベース上位ベースロッド(42)は連続しており、ロッキング部材による作用を受けない。その代り、ベースアームセグメント(7)の2つの半分(200)(201)を強制的に共に引張るために、1つの力または1組の力(203)が提供される。この実施例では、起動手段は、内向きに強制されるテーパー付きクランプ(202)のリングである。この起動型式は、効果的に内部ロッドを圧縮下に置きベースアームセグメント(7)を張力下に置く、
図17aに描かれた双方向力発生器の概念と同じ効果をベース継手(30)(34)および中央継手(30)に対して有する。
図17bに描かれている双方向力発生器の概念と同じ効果を有するアクチュエータによってベースアームセグメント(7)が強制的に張力下に置かれる関連実施形態も可能である(図示せず)、という点に留意されたい。
【0057】
以上の実施形態において、中央継手(30)の内部の構成要素は、多種多様な形で構成され得る。
図21には、複数の変形形態が示されている。
図21aは、ベーススラグが継手の中心から離れるように外側に押されている
図1~4の基礎的な実施形態を示す。
図21bは、ベーススラグが継手の中心に向かって内側に押されている一変形実施形態を示す。
図21cは、増大した摩擦を発生させるために円錐継手界面が使用されている
図21aの一変形実施形態を示す。
図21dは、増大した摩擦を発生させるために円錐継手界面が使用される、
図21bの一変形実施形態を示す。
図18(a)および(c)の実施形態において、起動された内部ベースロッド(42)は、スラグ(60)(61)をベースアームセグメント(7)に向かって強制し、一方シナリオ(b)および(d)においては、内部ベースロッド(42)は、スラグ(215)(216)を遠位アームセグメント(8)に向かって強制する。各ケースにおいて、スラグランプ界面は、特定のスラグ動作の方向を達成するように選択される。
図21a、bにおいて、回転継手界面(210)(211)は平坦であり、一方(c)および(d)では、界面(212)(213)は、角度θ(214)(217)で円錐(212)(213)である。3度から85度のおおよその範囲内の円錐角θ(214)(217)について、回転ロッキングの利点が達成され、アームのベース側(7)および遠位側(8)の相対的回転を防止するために必要な力は少ない。円錐角のもつ他の利点は、それが継手を共に同心的に自動的に整列させ、継手内のあらゆるあそびおよびバックラッシュを最小限に抑えるという点にある。
図21bでは、継手界面は平坦であり、心棒(63)エンドキャップが、ベースアームおよび遠位アームの分離を防止する。ここでは、スラグは、継手の一次ロッキング力がスラグ間の摩擦界面(211)に由来することから、大きい直径(215)(216)を有する。
図21dでは、円錐界面が継手を角度θ(217)で保持し、有利な摩擦力を発生させる。
【0058】
以上の実施形態において、アクチュエータ(6)は、ベース球面継手(31)と中央回転継手(30)の間に位置付けされた状態で示されている。一部の変形実施形態において、アクチュエータは、ベース継手(31)に対し遠位に位置設定され得る。
図22aに示された一実施形態において、アクチュエータは、ベースユニット(220)と組合わされている。第1の回転可能なベース継手(221)および第2の直交する回転可能なベース継手(222)は、ベース回転継手(34)の近位で2つの回転自由度を可能にする。ポール(5)に対するクランプは、割りクランプまたは内部移動スラグであり得る。
【0059】
図22bは、組合わされたベースアクチュエータ(220)とその内部構成要素の横断面図を示す。この実施形態は、バッテリパック223および電動モータ(70)を含む。電動モータシャフトに結合されたウォーム(222W)および噛合うウォームギヤ(222g)で構成された増力器が実装される。締付けられた場合、ウォームギヤ(222g)は、スクリュ式心棒部材(224)をモータ(70)に向かって引っ張るにつれてスラスト軸受(225)により軸方向に所定の場所で保持される。この引張りが、回転可能なクランプ継手(222)および回転可能なベース継手(221)をロックする。回転可能なベース継手(221)のロッキング力は、摩擦座金(221W)によって増強される。心棒(224)上の引張りは同様に上位ベースロッド(42)の底面と係合するランプ表面(224r)をも引張り、こうしてロッキング力をアーム内で遠位にある継手に対し転送する。
【0060】
先の実施形態においておよび一般的に実践される先行技術において、アームの機械的要素は、実質的負荷を受ける可能性がある。要素のうちの複数のものが、適用された負荷の下で滑動しなければならない。これらの要素をドラグすることで行われ力学的仕事量は、各サイクル毎に回復されない。したがって、このエネルギーは、バッテリまたはCO
2カートリッジなどの供給源により供給されなければならない。バッテリ、カートリッジおよび他のエネルギー関連要素のサイズは、部分的に、喪失エネルギーの規模により決定される。喪失エネルギーを最小限に抑えるために、滑り接触の一部または全てを転がり接触で置換してもよい。
図23は、中央継手(3)の細部に至るまでこの概念を概略的に描いている。円筒ローラ(230)および(231)が、ロッド界面(41r)および(42r)の滑り接触に置換するために具備されている。スラグ(60)および(61)上の滑り負荷も同様に、ローラ(234)および(235)を具備することによって軽減される。アームセグメント(7)および(8)の内部ロッド(42)および(41)の滑り接触も同様に、ローラ(232)(233)で置換される。
【0061】
中央継手(30)の別の変形形態(
図24)においては、内部ロッド(41)(42)とスラグ(60)(61)の間を結び付けるために、ローラウエッジ(240)および(241)が使用される。このようなウエッジは同様に、
図23の場合のようなローラ(図示せず)と併せて使用されてもよい。この実施形態では、一対の刻み目(243)が上位ベースロッド(42)内に切削されている。上位ベースロッド(42)が押し上げられるにつれて、ベースローラウエッジ(241)および刻み目(243)の配置のため、ベーススラグ(60)に対する外側並進運動が発生する。キャップ付き心棒部材(63)を通して、別個の刻み目(244)を格納する遠位スラグ(61)に並進運動が付与される。遠位スラグの刻み目(244)の動作は、遠位転がりウエッジ(240)を回転させる。遠位転がりウエッジ(240)の円弧は、遠位内部ロッド(41)の端部に押圧し、遠位アーム継手を起動する。このシステムには、ローラウエッジと圧縮ロッドの間に転がり接触を生成し、摩擦損失を減少させるという利点がある。さらに、このアプローチは、転がり表面の形状にしたがったカスタマイズ可能な機械的利点を可能にする。転がり表面の形状は、スラグと内部ロッドの間の動作比を決定し、こうしてカスタマイズ可能な機械的利点を達成することができる。
図24において、スクリュ式ノブ(66)が近位スラグ(60)として効果的に作用するという点に留意されたい。
【0062】
アームの各継手内の「スロップ(溢れ)」を最小限に抑えて、アームがロック解除状態からロック状態に進んだ時点で器具の位置が変化しないようにすることが重要である。この「飛越し」を最小限に抑えるために、当該技術分野では、各継手における隙間を最小限に抑えることが一般的である。各継手には、隙間を無くするために好適なバネで予備負荷が加えられていてよい。
【0063】
中央回転継手(30)のスロップを最小限に抑えるため、1つ以上の入念に選択された場所にバネを追加することができる。
図25aは、キャップ付き心棒部材(63)と遠位スラグ(61)の間のバネ(250)を示す。アームがロックされた場合(例えば、アクチュエータ(400)を用いて上位ベースロッド(42)に圧縮負荷が加えられた場合)、バネ(250)は完全に圧縮され、剛性要素のように作用する。アクチュエータ(400)がロッキング位置にない場合、バネ(250)は上位ベースロッド(42)、遠位ロッド(41)および中央継手(30)に負荷を加え、アーム内の全ての継手隙間を取り除く。このことにより、アーム動作の感触を増強させるように選択されてよい小さな摩擦負荷も同様に各継手に加わることになる。
図25bは、類似の配置を示すが、バネ(251)は近位スラグ(60)とスクリュ式ノブ(66)の間に位置設定されている。ここでもまた、この配置において、バネ(251)は、上位ベースロッド(42)、遠位ロッド(41)および中央継手(30)に負荷を加え、アクチュエータがロッキング構成にない場合、アーム内の全ての継手隙間を取り除く。
【0064】
いくつかの実施形態においては、一部の継手では予備負荷を加え他の継手では予備負荷を加えないことが望ましい。
図25cおよび
図25dに、2つの例示的配置が示されている。
図25cにおいては、バネ(252)が、遠位アームセグメント(8)との関係においてキャップ付き心棒部材(63)に負荷を加える。この構成は、中央回転継手(30)および上位ベースロッド(42)に負荷を加えるが、遠位ロッド(41)に負荷を加えず、したがって、遠位回転継手(33)および遠位球面継手(32)には負荷を加えない。
図25dにおいては、状況が逆転している。スクリュ式ノブ(66)とベースアームセグメント(7)の間に位置設定されたバネ(253)は、中央回転継手(30)および遠位ロッド(41)に負荷を加えるが、上位ベースロッド(42)には負荷を加えず、したがってベース回転継手(34)およびベース球面継手(31)には負荷を加えない。
【0065】
他の実施形態において、中央継手のバネは、ベースまたは遠位ロッド(41、42)またはスラグ(60)(61)上にいかなる圧力も加えることなく、独立して作用することができる。これを達成する一つの方法(
図25e)は、内部両キャップ付き心棒部材(256)の関係において滑動する外部キャップ付き心棒(255)と、遠位アームセグメント(8)の関係において両キャップ付き心棒部材(256)を押圧するバネ(254)とを有することである。こうして、ベースおよび遠位アームセグメント(7)(8)の間に圧縮負荷が加わり、この負荷は、スラグ(60)(61)と干渉することなく中央回転継手(30)に予備負荷を与える。この目標を達成するための代替的方法は、磁石を使用することである。一例として、
図25fは、ベースおよび遠位アームセグメント(7)(8)の間に引力を及ぼして、スラグまたはロッドと干渉することなく中央回転継手(30)に予備負荷を加える1組のリング磁石(257)を示す。
【0066】
上述の予備負荷設計の代替として、またはそれと併用して、ベースおよび遠位球面継手(30)(31)に、バネで予備負荷を加えることができる。
図25eは、上位ベースロッド(42)とベース摩擦ブロック(43)の間の皿バネ(258)を描いている。皿バネ(258)は、アクチュエータ(400)がロッキング構成にない場合に上位ベースロッド(42)に予備負荷を加え、こうしてアーム内の全ての継手に同時に効果的に予備負荷を加える。皿バネは、強い力で負荷を加えられた場合に「平担」に押圧され得、したがってアクチュエータ(400)がロッキング構成にありアーム継手がロックされている場合剛性要素として作用し得る、という特性を有する。ベース球面継手(31)およびベース回転継手(34)のみに予備負荷を加えるために、
図25hは、環状バネ(259)がベース摩擦ブロック(43)とベース球面継手リテイナ(35)の間に負荷を提供している別の実施形態を示している。上位ベースロッド(42)は、負荷を伝達することなく、このバネ(259)を通過し、したがって、中央回転継手(30)および遠位継手は、予備負荷を全く受けない。同等の設計は、遠位球面継手(32)および遠位回転継手(33)のみに予備負荷を加えるためにも応用可能である。
【0067】
図6では中央回転継手(30)の詳細な特徴部を紹介した。機能の1つは、アクチュエータの不具合の場合に手動式機械的オーバーライドノブ(66)を提供することであった。
図26aおよび
図26bは、代替的な機械的オーバーライド方法を示す。
図26aでは、スクリュ式結合器(260)が、ベースアームセグメント(7)を遠位球体リテイナ本体(35)に連結している。これにより、アクチュエータユニット(400)と上位ベースロッド(42)の間の圧力を解放または適用するための方法が効果的に得られ、こうしてアームの継手は、アクチュエータ(400)の状態とは独立してロックされ解除され得る。
図26bは、ベースアームセグメント(7)と連結用ベースアームセグメント(7a)の間に位置設定された代替的スクリュ式結合(261)を示す。代替的螺入結合の目的は、ベースアームセグメント(7)の長さ全体を効果的に伸縮させ、こうしてアクチュエータ(400)の状態とは独立して手動式にアーム継手をロックしロック解除することにある。
【0068】
図27に示されている別の実施形態においては、ダブルスロット付きロック用球面継手(280)を、典型的なロック用球面ベース継手(31)または遠位継手32の代りに使用することができる。この継手(280)の利点は、スロット(37)と球面ステム(37s)を整合させるように球体リテイナ(36)を手動式に回転させる必要なく、典型的な球面継手に比較して動作範囲が増大される、ということにある(
図5参照)。ここで
図27を参照すると、ベース(286)との関係においてカップ部分(287c)のプッシュロッド(287)を起動し、球面部分(282)を外部ケーシング(283)とカップ部分(287c)の間に挟持させ、こうしてベース(286)との関係において球体(282)と球体ステム(281)をロックすることによって、ダブルスロット付きロック用球面継手(280)は所定の場所にロックできる。外部ケーシング(283)上のリッジ特徴部(283r)が、ベース(286)上のリップ特徴部(286l)と係合し、外部ケーシング(283)を、第1の回転自由度でベース(286)と連結する。下位スロット(284l)は、プッシュロッド(287)用の隙間を提供する。上位スロット(284u)は、球体ステム(281)が、第1の回転に実質的に直交して回転することができるようにする。各スロット(284l)(284u)は、球体ステム(281)およびプッシュロッド(287)が、スロットの縁部と接触するまでに大きい動作範囲を有するように充分な長さで切削されている。
【0069】
本明細書中に記載の全てのロッキングシステムにおいて、「完全ロック状態」と「完全解除状態」の間の中間摩擦状態を生み出すようにシステムを「部分的に」起動することが可能である、という点に留意されたい。油圧式および空気圧式起動システムにおいては、これは、油圧または空気圧シリンダに可変的圧力を適用することによって達成可能である。機械的起動システムにおいて、これは、モータまたは機械的システムを部分的に展開することによって達成される。部分的ロック状態を使用すると、アーム継手に抵抗を追加することで手作業での制御のためのアームの細かい動作がより容易になることから、アームの微細な位置付けが可能になる。1つのワークフローの中では、アームによって保持されている器具がその最終位置に近くなった時点で、アームは、完全ロック解除状態から部分的ロック状態に変更することができる。アームの部分的抵抗状態を用いて器具を精密調整した後、アームを完全な力で最終位置にロックすることができる。
【0070】
先に言及した通り、片手による器具操作およびロック解除/ロックを可能にするために、好ましくはアームの遠位端部の近傍にアームのロック/ロック解除ボタンまたはスイッチ(12、
図1)が設置される。床(足踏みペダル)上、アームの近位ベースの近傍、または他の場所に、代替的に、ボタンまたはスイッチを設置することもできる。ボタンを設置する別の有利な場所は、中央回転継手(30)上またはその近傍である。このようにして、ユーザーは、アームがロック解除された場合つねに重力のためアームが倒壊するのを防ぐため、アームをロック解除するときアームの中央回転継手(30)に確実に触れていることになる。
【0071】
多くの医療環境において、機器の滅菌が望ましい場合が多い。いくつかのアームの実施形態において、
図11に示された直接CO
2を動力とする実施形態またはケーブル起動式ロールボールディスクで起動される実施形態(
図14)など、アームシステム全体を滅菌することが実現可能である。他の実施形態では、アームの一定の要素(油圧油、シールなど)を厳しい滅菌プロセスに曝露しないことが望まれる。
図28aおよび
図28bは、手術環境内でアームを無菌状態に保つための2つの代替的方法を示している。
図28aでは、アクチュエータ(400)、ベースアームセグメント(7)、遠位アームセグメント(8)およびベースユニット((1)または(20))を含むアーム全体が、薄い無菌スリーブ(290)でドレーピングされている。ドレープは、ドレープ界面(図示せず)にある無菌器具ホルダー(9)で終結でき、器具(10)は無菌状態とすることができる。
図28bでは、ベースユニット((1)または(2))とアクチュエータロッキング機構(400)のみがドレープ(291)でカバーされている。ベースアームセグメント(7)、遠位アームセグメント(8)および器具ホルダー(9)を含むアクチュエータ(400)から遠位にあるアームの部分は、蒸気、化学薬品、または他の方法を用いて滅菌可能である。
図28bの実施形態は、手術部位に最も近いアームの部分はドレーピングされておらず、したがって空間が重要な意味をもつ場合に非常にコンパクトで細身の状態を維持できることから、望ましい。この実施形態(
図28b)は、アームの遠位部分がアクチュエータ(400)から切り離し可能であるという事実に依存している。
【0072】
図26aおよび
図26bに示されているものなどのネジ山を、アームの遠位部分をアクチュエータから切り離すために使用することができる。
図29aおよび
図29bは、ベースアームドレープ(291)に適切なものである近位ベースと遠位アーム部分との間の切り離し機序の別の実施形態を詳細に示している。ベースアームセグメント(7)上の一連のタブ(301)が、アクチュエータユニット(400)上の一連のスロット(302)と整合する。ベースアームセグメント(7)は、アクチュエータ(6)に向かって押され、ひとたびタブ(301)がスロット(302)を通過した時点でベースアームセグメント(7)およびアクチュエータ(400)は互いとの関係において回転させられる。回転は、バネ式プッシュリリースレバー(303)上のピン(303p)が1つのタブ(301)上の刻み目(301n)に嵌合するまで可能である。この時点で、さらなる回転は妨げられ、アクチュエータ(400)およびベースアームセグメント(7)は共にロックされる。アクチュエータ(400)とベースアームセグメント(7)の間の嵌合プロセスにおいて、過度の力を展開させる必要がないように、アクチュエータ拡張部分(6e)を引込むことが有利である。アクチュエータ(400)をベースアームセグメント(7)から解放するためには、ピン(303p)が刻み目(301n)から解放されるように、リリースタブ(303r)が押される。このとき、ベースアームセグメント(7)およびアクチュエータ(400)は、タブ(301)およびスロット(302)が並ぶように互いとの関係において回転させられ、その後、ベースアームセグメント(7)は、アクチュエータ(400)から抜き出され得る。この実施形態では、
図29bを見ればわかるように、ベースアームセグメント(7)をアクチュエータ(400)に取付ける前に遠位タブ(301)の上方でベースアームセグメント(7)に対し無菌ドレープ(291)をテープで固定(300)してもよい。無菌ドレープ(291)は、他の手段によってベースアームセグメント(7)またはアクチュエータ(400)に取付けられてもよい。
【0073】
アクチュエータ(400)に対し遠位にあるアームの部分を滅菌する能力以外に、
図28bおよび
図29に示されているように、アクチュエータ(400)から取外し可能なアームの遠位部分を有するという他の有利な側面もある。アクチュエータ(400)に対して遠位にあるアームの部分は、機械的部品(管、ロッド、スラグ、継手など)のみを含み、したがって、手術室内での一回限りの使用(あるいは限定回数の使用)のために使い捨てのプラスチック材料から製造され得る。このことは、ロックおよびロック解除用動力を提供するアクチュエータ400およびベース(1)(20)を保持し/再利用しながら毎回使用後にアームの遠位部分を廃棄することが望まれる一部の外科手術において有用であり得る。別の有利な側面は、異なる長さおよびサイズの遠位アームリンケージを同じアクチュエータ(400)およびベース(1)(20)に取付けることができ、こうしてユーザーは特定の外科的利用分野のためにアームシステムをカスタマイズすることができるようになっている、という点にある。
【0074】
アクチュエータ(400)に対して遠位にあるアームの部分が、X線透過性であることも可能である。これは、器具を安定して保持しなければならない手術と併用して、X線画像診断法が使用され得る医療上の利用分野において、特に有用である。X線と干渉しないカーボンファイバなどの材料を使用して、アクチュエータ(400)に対し遠位にあるアームの部分を製造することができる。アクチュエータ(400)およびアクチュエータに対して近位にある部品は、金属製または高密度構成要素をなおも格納することができるが、それはこのような要素が、画像化標的(および保持されている器具)の近傍になく、したがってX線画像化と干渉しないからである。例えば、
図28bおよび
図29において、アクチュエータ(400)から遠位にあるアームの部分全体が、X線透過性材料の選択肢で作製され得る。代替的には、中央回転継手(30)はX線不透過性材料を含有することができ、遠位アームセグメント(8)、遠位球面継手(32)、遠位回転継手(33)、器具ホルダー(10)および中央回転継手(30)から遠位にある他の構成要素のみをX線透過性材料で作製することができる。
【0075】
いくつかの実施形態において、アームの重量および/または器具(10)の重量の少なくとも一部を補償するためにカウンタバランスを含むことが有用である場合がある。これは、器具を位置付けし操作するときにアームおよび/または器具の重量と苦闘することからユーザーを解放する一助となる。一般的な問題は、アームの位置が変化するにつれてポテンシャルエネルギーの変化を補償するためにバネから蓄積エネルギーを取り出すことにある。アームおよび/または器具の重量全体を補償する完全なカウンタバランスの設計が可能である一方で、より単純でなおかつ有用である実装は、アクチュエータ(400)およびベースアームセグメント(7)を含めた近位アームリンケージ(335)のみを平衡させることである。その理由は、公称アーム実施形態(
図1~4)が、少なくとも7つの自由度を有し、これはすなわち、3D空間内の器具(10)の任意配置について、中央回転継手(30)がなおも自由に旋回できるということを意味している、ということにある。近位アームリンケージ(335)の重量を補償するためにカウンタバランスを追加することにより、近位アームリンケージ(335)および中央回転継手(30)を空間内の任意位置に「浮動させ」、手で支えられていない場合に重力の作用下で「落下しない」ことを可能にすることができる。
【0076】
図30を参照すると、近位アームリンケージ(335)を平衡させる1つの方法は、ベース球面継手(31)に跨る1組の圧縮バネ(330)を使用することである。ポール(5)の軸を中心としたベース球面継手33の回転に対応するためには、継手(33)が回転するにつれてバネ(330)を位置付けするための手段が具備されなければならない。これは、リング(332)によって示されている。図示されていないのは、アームが移動するにつれてこのリングを回転させるのに必要とされる要素である。
【0077】
別の新規のカウンタバランス手段は、
図31に描かれているようにポール(5)の周囲に圧縮バネ要素(340)を置くことである。バネ(340)の底面は、ポールに固定された下部リング(341)を押す。上位リング(342)はポール上を自由に上下に並進運動でき、バネの変位にしたがってバネ(340)を圧縮する。バネ(340)は、近位アームリンケージ(335)が垂直から逸脱した直接的結果として圧縮される。近位アームリンケージ(335)の角運動は、ベース球面継手(31)の上方で近位アームリンケージ(335)に取付けられたリング(343)に連結された6本のリンク部材(344)によって伝達される。このリンクセット(344)は、垂直に対するベース球面継手(31)の角度に基づいて近位アームリンケージ(335)上の重力を補償する8面体を形成する。
【0078】
長時間にわたり開創を適用すると結果として組織損傷または壊死をもたらす可能性があるということは、外科手術において周知の問題である。したがって、外科手術全体を通して開創器のブレードを定期的に解放することが提案される。しかしながら、既存の開創システムでは、開創器のブレードの解放には多大な時間がかかり、これは、手術室内では非常にコストがかかることである。本明細書中では、ロッキングアーム技術を利用する
図32中のシステムが、各開創器のブレードをほんの数秒で独立して解放し再位置付けできるため、この問題に対処するものである。開創システムの一実施形態において、1つ以上のアームが1つ以上のブレード(352)を保持するために展開されており(350)、各アームは、好ましくはアームの遠位端部の近傍に位置設定された独立したロック/ロック解除ボタンまたはスイッチ(351)を伴っている。外科医(353)および助手(354)が手術を行なう広々とした空間を有するように、図示されているテーブル(3)の上部または下部方向から各アーム(350)を展開させることが有利である。単一のポール(5)に2つ以上のアーム(350)を取付けることができ、応用可能である通りに、多数のアームが同じベースユニット(1)(20)を共有することができる。
【0079】
図35に示された開創システムの一実施形態においては、電子システムコントローラ(図示せず)が、一定の時間(例えば20~30分)の経過後にそれぞれのアーム各々(350)を移動するように、ユーザーに警告する。警告は、音、点滅光、安定した光、または他の手段の形をとることができる。各アームは、好ましくはロック/ロック解除ボタン(351)と同一の場所に配置されて、このアームに取付けられた1つ以上のLEDライト(355)を有することができる。コントローラは、各々のそれぞれのアームについての開創時間が閾値に達した時点で、ライト(355)の状態を、例えば緑から赤へまたはオフからオンに変更することができる。ひとたびアーム(350)が解放、再位置付けされ、再ロッキングされたならば、コントローラは、タイマーおよびライトの状態をリセット(例えば赤から緑、またはオンからオフへ)することができる。別の実施形態においては、力センサー、血流量センサーまたは、アームに取付けられ力または組織の状態を標示する他のセンサー(図示せず)が存在してよい。ひとたびこれらのセンサーが、組織が危険な状態にある(例えば血流量低下、または一定の時間にわたる過度の力)ことを標示したならば、コントローラはユーザーに対し、上述の手段を用いて開創器のブレード(352)を移動させるよう警告することができる。ひとたび移動されたならば、アーム(350)は、組織が再び安全な状態であることをコントローラに警告し、監視/タイマーはリセットできる。ここで、本明細書中で説明された開創警告システムが、本出願中に記載されていない自動ロッキングアームを使用しない開創システムにも同様に適用され得るという点に留意されたい。
【0080】
ロッキングアームシステムの別の実施形態(
図36)においては、同じ器具(10)を保持するために、並行して2つ以上のアーム(360)が使用される。並行する2つ以上のアームは、アームシステムの全体的な剛性を有意に増大させ、負荷下に保持されている器具類(10)のあらゆる動作をさらに最小化させる。2つのアームは、使用を容易にするため両方のアーム(360)を同時にロックおよびロック解除する同一の起動ボタンまたはスイッチ(361)を用いて制御可能である。
図36に示されている特定のシナリオにおいて、2つのアームは、脊椎外科手術中に椎弓根スクリュを設置するために単一の管(362)を保持することができ、こうしてスクリュ用の穴開け、タップ立ておよび挿入中の最大の強度および剛性を保証することができる。
【0081】
当業者にとって明白である本発明を実施するための上述のアセンブリおよび方法の修正、実践可能な場合の異なる変形形態間の組合せ、および本発明の態様の変形形態は、本発明の開示範囲内に入るものとして意図されている。
なお、本願発明の参考態様として以下のものがある。
[参考態様9]
下位端部および上位端部を有するベースアームと、
近位端部および遠位端部を有する遠位アームと、
前記ベースアームの前記上位端部を前記遠位アームの前記近位端部に直接的または間接的にリンクさせる中央継手と、
前記ベースアームの前記下位端部にある下位継手と、
前記遠位アームの前記遠位端部にある上位継手と、
前記下位継手と前記中央継手との間の場所で前記ベースアーム内に設けられ、前記下位継手、前記中央継手および前記上位継手を同時に係合して、前記ベースアームおよび前記遠位アームの相対的動作を防止するために、前記下位継手、前記中央継手及び前記上位継手に対して機械的要素を用いてロッキング力を実質的に同時に送出するように構成されている動力式ロッキング機構と、
を含む、ことを特徴とするロッキング可能な支持体アセンブリ。
[参考態様10]
前記ベースアームおよび前記遠位アームが移動するのを防ぎおよび/または前記動力式ロッキング機構に対する動力の喪失時点で前記動力式ロッキング機構が前記下位継手、前記中央継手および前記上位継手を係合解除するのを防ぐラッチング機構をさらに含む、参考態様9に記載のロッキング可能な支持体アセンブリ。
[参考態様11]
前記ラッチング機構は、動力を喪失した時点で、その位置を保持するバックドライブ不能のリードスクリュ機構を含む、参考態様10に記載のロッキング可能な支持体アセンブリ。
[参考態様12]
前記動力式ロッキング機構が、前記中央継手、前記下位継手および前記上位継手に力を送出するためにリードスクリュによって結合されているモータを備える力発生器を含む、参考態様9に記載のロッキング可能な支持体アセンブリ。
[参考態様13]
下位端部および上位端部を有するベースアームと、
近位端部および遠位端部を有する遠位アームと、
前記ベースアームの前記上位端部を前記遠位アームの前記近位端部に直接的または間接的にリンクさせる中央継手と、
前記ベースアームの前記下位端部にある下位継手と、
前記遠位アームの前記遠位端部にある上位継手と、
前記下位継手と前記中央継手との間の場所で前記ベースアーム内に設けられ、前記下位継手、前記中央継手および前記上位継手を同時に係合して、前記ベースアームおよび前記遠位アームの相対的動作を防止するために前記下位継手、前記中央継手および前記上位継手に対してロッキング力を送出するように構成されている動力式ロッキング機構と、
を含む、ロッキング可能な支持体アセンブリにおいて、
前記下位継手、前記中央継手および前記上位継手の少なくともいくつかは、前記動力式ロッキング機構が前記下位継手、前記中央継手および前記上位継手に係合した時点のアームの位置の非意図的な変更を防ぐためにロッキング力の不在下で前記下位継手、前記中央継手および前記上位継手、または前記動力式ロッキング機構の隙間を削除または削減するようにバイアスされている、ことを特徴とするロッキング可能な支持体アセンブリ。
[参考態様14]
前記動力式ロッキング機構が、前記ベースアームおよび前記遠位アームを通してロッキング力を伝達して前記下位継手、前記中央継手および前記上位継手をロックする力発生器を含む、参考態様13に記載のロッキング可能な支持体アセンブリ。
[参考態様15]
前記力発生器が、前記中央継手、前記下位継手および前記上位継手に力を送出するためにリードスクリュによって結合されているモータを含む、参考態様14に記載のロッキング可能な支持体アセンブリ。
[参考態様16]
器具の片手操作およびロック解除/ロック作業を可能にするため前記遠位アームの遠位端部近くに配置されたロック/ロック解除ボタンまたはスイッチをさらに含む、請求項1に記載のロッキング可能な支持体アセンブリ。
[参考態様17]
器具の片手操作およびロック解除/ロック作業を可能にするため前記遠位アームの遠位端部近くに配置されたロック/ロック解除ボタンまたはスイッチをさらに含む、参考態様9に記載のロッキング可能な支持体アセンブリ。
[参考態様18]
器具の片手操作およびロック解除/ロック作業を可能にするため前記遠位アームの遠位端部近くに配置されたロック/ロック解除ボタンまたはスイッチをさらに含む、参考態様13に記載のロッキング可能な支持体アセンブリ。
[参考態様19]
ロッキング力が、機械的要素を用いて、前記下位継手、前記中央継手および前記上位継手に対し実質的に同時に伝達される、請求項1に記載のロッキング可能な支持体アセンブリ。