IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コーニング インコーポレイテッドの特許一覧

特許6999558ガラス形成装置の形成体を支持する方法および装置
<>
  • 特許-ガラス形成装置の形成体を支持する方法および装置 図1
  • 特許-ガラス形成装置の形成体を支持する方法および装置 図2
  • 特許-ガラス形成装置の形成体を支持する方法および装置 図3
  • 特許-ガラス形成装置の形成体を支持する方法および装置 図4
  • 特許-ガラス形成装置の形成体を支持する方法および装置 図5
  • 特許-ガラス形成装置の形成体を支持する方法および装置 図6
  • 特許-ガラス形成装置の形成体を支持する方法および装置 図7
  • 特許-ガラス形成装置の形成体を支持する方法および装置 図8
  • 特許-ガラス形成装置の形成体を支持する方法および装置 図9
  • 特許-ガラス形成装置の形成体を支持する方法および装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】ガラス形成装置の形成体を支持する方法および装置
(51)【国際特許分類】
   C03B 17/06 20060101AFI20220203BHJP
【FI】
C03B17/06
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018536182
(86)(22)【出願日】2017-01-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-01-17
(86)【国際出願番号】 US2017012439
(87)【国際公開番号】W WO2017123459
(87)【国際公開日】2017-07-20
【審査請求日】2020-01-06
(31)【優先権主張番号】14/992,532
(32)【優先日】2016-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】ランズベリー,ティモシー エル
(72)【発明者】
【氏名】ミリッロ,スティーヴン マイケル
【審査官】松本 瞳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/030649(WO,A1)
【文献】特開2009-035466(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0318523(US,A1)
【文献】特表2010-526761(JP,A)
【文献】特開2004-284843(JP,A)
【文献】特表2009-519884(JP,A)
【文献】特表2013-527121(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス形成装置において、
上部と、前記上部に位置するトラフ部と、根元部で収束する第1の形成面および第2の形成面とを含む形成体と、
互いにV字構成となるように向いて、上向き鉛直の力成分である拘束力成分を有する保持力を前記形成体に加えるものである、該形成体の前記第1の形成面と係合する第1の接触面、および、該形成体の前記第2の形成面と係合する第2の接触面を含む、少なくとも1つのクレイドルアセンブリと、
前記形成体の端面と係合し、圧縮力を、該形成体の長さ方向に平行で、かつ、前記拘束力成分に垂直である方向に、該形成体に対して加える少なくとも1つ端部ブロックと、
を含み、
前記第1の形成面および前記第2の形成面は、前記形成体の上部から、下流側方向に延伸するよう構成されており、
前記形成体の前記トラフ部を満たした溶融ガラスが、前記形成体の長さに沿って超えて、下流側方向に流れ、前記形成体の上部から前記第1の形成面および前記第2の形成面上へと流れ、前記根元部で合流して融着するよう構成されている、ガラス形成装置。
【請求項2】
前記根元部が、前記少なくとも1つのクレイドルアセンブリを通って延伸して、その下に位置するものである、請求項1に記載のガラス形成装置。
【請求項3】
前記第1の接触面は、第1のクレイドルブロック上に位置し、
前記第2の接触面は、前記第1のクレイドルブロックから独立した第2のクレイドルブロック上に位置するものである、請求項1または2に記載のガラス形成装置。
【請求項4】
前記第1のクレイドルブロックおよび前記第2のクレイドルブロックは、互いに近付くように付勢されて、それにより、それらの間の前記形成体に突き当たるものである、請求項3に記載のガラス形成装置。
【請求項5】
前記圧縮力を、前記形成体の質量中心より下で、該形成体の前記端面に加えるものである、請求項1から4のいずれか1項に記載のガラス形成装置。
【請求項6】
前記第1の接触面および前記第2の接触面は、クレイドルブロックに形成されたV字形切込みの対向する側である、請求項に記載のガラス形成装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つのクレイドルアセンブリは、第1のクレイドルアセンブリ、および、第2のクレイドルアセンブリを含み、
前記第1のクレイドルアセンブリは、前記形成体と、該形成体の第1の端部で係合し、
前記第2のクレイドルアセンブリは、前記形成体と、該形成体の第2の端部で係合するものである、請求項1から6のいずれか1項に記載のガラス形成装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの端部ブロックは、第1の端部ブロック、および、第2の端部ブロックを含み、
前記第1の端部ブロックは、前記形成体の第1の端面と係合し、
前記第2の端部ブロックは、前記形成体の第2の端面と係合し、
前記第1の端部ブロックおよび前記第2の端部ブロックは、互いに近付くように付勢されて、それにより、前記形成体に対して、該形成体の前記長さ方向に前記圧縮力を加えるものである、請求項7に記載のガラス形成装置。
【請求項9】
前記形成体の堰部領域は、前記第1のクレイドルアセンブリから前記第2のクレイドルアセンブリまで延伸し、該第1のクレイドルアセンブリおよび該第2のクレイドルアセンブリに接触するものである、請求項7に記載のガラス形成装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つのクレイドルアセンブリは、前記形成体と、該形成体の第1の端部で係合し、
前記形成体の第2の端部は、ピアブロック上に支持されたものである、請求項1から6のいずれか1項に記載のガラス形成装置。
【請求項11】
前記少なくとも1つの端部ブロックは、前記形成体の第1の端面と係合し、
前記ピアブロックは、前記形成体の第2の端面と係合し、
前記少なくとも1つの端部ブロックは、前記ピアブロックの方に付勢され、それにより、前記形成体に対して、該形成体の前記長さ方向に前記圧縮力を加えるものである、請求項10に記載のガラス形成装置。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、米国特許法第120条の下、2016年1月11日出願の米国特許出願第14/992532号の優先権の利益を主張し、その内容は依拠され、全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本明細書は、概して、ガラス形成装置に関し、特に、ガラス形成装置の形成体を支持する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0003】
溶融処理は、ガラスリボン形成技術の1つである。フロート、および、スロットドロー処理などの他のガラスリボン形成処理と比べて、溶融処理は、欠陥量が比較的低く、平坦性に優れた表面を有するガラスリボンを生成する。その結果、溶融処理は、LEDおよびLCD表示装置の製造で使用されるガラス基板、並びに、優れた平坦性および平滑性を必要とする他の基板を製造するために、広く採用されている。
【0004】
溶融処理において、溶融ガラスを、根元部で収束する形成面を有する(アイソパイプとも称される)形成体の中に供給する。溶融ガラスは、形成体の形成面を均一に流れて、形成体の根元部から引き出されたままの表面を有する平坦なガラスリボンを形成する。
【0005】
形成体は、概して、耐火性セラミックなど、比較的高温の溶融処理での耐久性が高い耐火性材料で作製される。しかしながら、最も温度安定性の高い耐火性セラミックでも、長い期間に亘って高温に曝されると、機械的特性が低下し、潜在的に、そこから製造されるガラスリボンの特性を低下させるか、または、形成体の破損さえ生じうる。いずれの場合にも、溶融処理の中断、製造歩留りの低下、および、製造コストの上昇を生じうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、ガラス形成装置の形成体の劣化を軽減するような代わりの方法および装置が、必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態によれば、ガラス形成装置は、根元部で収束する第1の形成面および第2の形成面を有する形成体を含みうる。ガラス形成装置は、互いにV字構成となるように向いた第1の接触面および第2の接触面を有する少なくとも1つのクレイドルアセンブリも含みうる。第1の接触面は、形成体の第1の形成面と係合し、第2の接触面は、形成体の第2の形成面と係合しうる。第1および第2の接触面は、上向き鉛直の力成分を有する保持力を、形成体に加えてもよい。形成体は、形成体の端面と係合する少なくとも1つ端部ブロックも含んでもよい。少なくとも1つ端部ブロックは、圧縮力を、形成体の長さ方向に平行で、かつ、拘束力成分に垂直である方向に、形成体に対して加えてもよい。
【0008】
他の実施形態によれば、根元部で収束する第1の形成面および第2の形成面を有する形成体の支持方法は、第1の形成面および第2の形成面に対して、上向き鉛直の力成分を有する保持力を加えて、それにより、形成体の下向き鉛直方向の移動を防ぐ工程を含みうる。更に、方法は、逆のモーメントを加える圧縮力を、形成体の長さ方向に平行な方向に、形成体の端面に対して加えて、形成体の長さに沿ったサグを軽減する工程を含みうる。
【0009】
本明細書に記載のガラス形成装置の更なる特徴および利点を、以下の詳細な記載に示し、部分的には、当業者には、その記載から明らかであるか、または、以下の詳細な記載、請求項、および図面を含む本明細書に記載の実施形態を実施することによって、分かるだろう。
【0010】
上記概略的記載、および、以下の詳細な記載の両方が、様々な実施形態を記載し、請求した主題の本質および特徴を理解するための概観または枠組みを提供することを意図すると理解すべきである。添付の図面は、様々な実施形態の更なる理解のために含められたものであり、本明細書に組み込まれ、その一部を構成する。図面は、本明細書に記載の様々な実施形態を示し、記載と共に、請求した主題の原理および動作を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本明細書に示し、記載した1つ以上の実施形態によるガラス形成装置の一実施形態を、概略的に示している。
図2】本明細書に示し、記載した1つ以上の実施形態によるクレイドルアセンブリによって支持されたガラス形成体を、概略的に示す斜視図である。
図3】本明細書に記載の1つ以上の実施形態によるクレイドルアセンブリによって支持されたガラス形成体を、概略的に示す断面図である。
図4】クレイドルアセンブリのクレイドルブロックを形成面から外した状態の形成体を、概略的に示す断面図である。
図5】本明細書に記載の1つ以上の実施形態によるクレイドルアセンブリによって支持された形成体を、概略的に示す断面図である。
図6】クレイドルアセンブリのクレイドルブロックを形成面から外した状態の形成体を、概略的に示す断面図である。
図7】従来の方法で、両端部においてピアブロックによって支持された形成体を、概略的に示している。
図8】1つの端部において、クレイドルアセンブリによって支持され、他方の端部において、ピアブロックによって支持された形成体を、概略的に示している。
図9】異なる支持条件下の3つの形成体について、モデル化した形成体の応力を、時間の関数としてグラフで示している。
図10】異なる支持条件下の3つの形成体について、モデル化した形成体の変形を、形成体の長さに沿った位置の関数としてグラフで示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここで、添付の図面に例を示したガラス形成装置の実施形態を、詳細に記載する。全図を通して、同じ、または、類似部分を称するには、可能な限り同じ参照番号を用いている。ガラス形成装置10の一実施形態を、図1(および2?)に、概略的に示している。ガラス形成装置10は、第1の形成面62および第2の形成面64を有する形成体60を含み、第1の形成面62と第2の形成面64は、根元部70で収束しうる。ガラス形成装置10は、少なくとも1つのクレイドルアセンブリ120も含み、それは、互いにV字構成となるように向いた第1の接触面132および第2の接触面134を有する。第1の接触面132は、形成体60の第1の形成面62と係合し、第2の接触面134は、形成体60の第2の形成面64と係合しうる。第1の接触面132および第2の接触面134は、形成体60に、上向き鉛直の力成分を有する保持力を加えうる。形成体60は、形成体60の端面と係合する少なくとも1つの端部ブロック170aも、含みうる。少なくとも1つの端部ブロック170aは、形成体60に、形成体60の長さに平行で、かつ、上記拘束力成分に垂直である方向に、圧縮力を加えうる。本明細書において、添付の図面を具体的に参照して、ガラス形成装置10の成形体60を支持するためのガラス形成装置10および方法の様々な実施形態を、更に詳細に記載する。
【0013】
本明細書において使用する、例えば、上、下、右、左、前、後ろ、上面、底面などの方向を表す用語は、図面に関連してのみ、使用しており、絶対的な向きを意味することを意図していない。
【0014】
別段の記載がない限り、本明細書に示した、いずれの方法も、工程を特定の順序で行うことを要すると解釈されること、いずれの装置も、特定の向きであることを要すると解釈されることを、意図していない。したがって、方法の請求項が、工程の順序を実際に記載しないか、または、装置の請求項が、個々の構成要素についての順序または向きを実際に記載しないか、若しくは、請求項または明細書で、そうではなく工程が特定の順序に限定されると、記載しないか、または、装置の構成要素の特定の順序または向きを記載しない場合には、順序または向きが推定されることを、全く意図していない。このことは、工程の配列、動作フロー、構成要素の順序、構成要素の向き、文法構造または句読点に由来する平易な意味、および、本明細書に記載した実施形態の数またはタイプについての論理事項を含む、明示されていないことに基づく全ての解釈に適用される。
【0015】
本明細書において用いたように、原文の英語で単数を表す不定冠詞および定冠詞は、文脈から、そうでないことが明らかでない限りは、複数のものに言及することを包含する。したがって、例えば、原文の英語で、不定冠詞の付いた構成要素を記載した場合には、文脈から、そうでないことが明らかでない限りは、そのような構成要素を2つ以上有する態様を含む。
【0016】
ここで、図1を参照すると、ガラスリボン12などのガラス物品を製作するためのガラス形成装置10を、概略的に示している。概して、ガラス形成装置10は、保存容器18からバッチ材料16を受け取るように構成された溶融槽15を含む。モータ22で動くバッチ送出装置20によって、バッチ材料16を、溶融槽15に導きうる。任意で、制御部24を設けて、モータ22を作動させてもよく、溶融ガラスレベルプローブ28を用いて、立て管30内の溶融ガラスレベルを測定して、測定した情報を制御部24に伝達しうる。
【0017】
ガラス形成装置10は、第1の接続管36によって溶融槽15に連結された、清澄管などの清澄槽38も含みうる。混合槽42は、第2の接続管40で、清澄槽38に連結されている。送出槽46は、送出路44で、混合槽42に連結されている。更に示すように、降下管48を配置して、溶融ガラスを、送出槽46から形成体60の投入部50へ送出する。本明細書において示し、記載した実施形態において、形成体60は、アイソパイプとも称されうる溶融形成槽である。
【0018】
溶融槽15は、典型的には、耐火性(例えば、セラミック)煉瓦などの耐火性材料で作られる。ガラス形成装置10は、典型的には、例えば、白金、若しくは、白金ロジウム、白金イリジウム、および、それらの組合せなどの白金含有金属などの電導耐火性金属で作られた構成要素を、更に含んでもよい。そのような耐火性金属は、モリブデン、パラジウム、レニウム、タンタル、チタン、タングステン、ルテニウム、オスミウム、ジルコニウム、および、それらの合金、並びに/若しくは、二酸化ジルコニウムも含みうる。白金含有構成要素は、第1の接続管36、清澄槽38、第2の接続管40、立て管30、混合槽42、送出路44、送出槽46、降下管48、および、投入部50の1つ以上を含みうる。
【0019】
図2および3を参照すると、概して、形成体60は、トラフ部61、第1の形成面62、および、第2の形成面64を含む。トラフ部61は、形成体60の上部65に位置する。第1の形成面62および第2の形成面64は、形成体60の上部65から、下流側方向に(つまり、図面に示した座標軸の-Z方向に)延伸して、互いに近付いて収束し、根元部70で一緒になる。根元部70は、形成体60の下縁部を形成する。したがって、第1の形成面62と第2の形成面64は、形成体60の上部65から延伸する逆二等辺(または、正)三角形を形成し、根元部70が、その三角形の下流側方向の最も低い頂点を形成すると、理解すべきである。概して、ドロー平面72は、図面に示した座標軸の+/-Y方向に、根元部70を二等分して、下流側に延伸する。
【0020】
ここで、図1~3を参照すると、動作中、バッチ材料16、具体的には、ガラスを形成するためのバッチ材料が、バッチ送出装置20によって、保存容器18から溶融槽15へ供給される。バッチ材料16は、溶融槽15で溶けて、溶融ガラスになる。溶融ガラスは、溶融槽15から清澄槽38へ、第1の接続管36を通って送られる。ガラスの欠陥を生じうる溶解した気体を、清澄槽38で、溶融ガラスから除去する。次に、溶融ガラスは、清澄槽38から混合槽42へと、第2の接続管40を通って送られる。混合槽42は、攪拌などによって、溶融ガラスを均質化し、均質化した溶融ガラスを、送出路44を通って、送出槽46に送る。送出槽46は、均質化した溶融ガラスを、降下管48を通って投入部50へと放出し、そこから、均質化した溶融ガラスを、形成体60のトラフ部61へと送る。
【0021】
均質化した溶融ガラスは、形成体60のトラフ部61を満たし、最終的には、形成体60の上部65を長さLに沿って越えて、下流側方向に流れる。均質化した溶融ガラスは、形成体の上部65から、第1の形成面62および第2の形成面64上へと流れる。第1の形成面62および第2の形成面64の上を流れる均質化した溶融ガラスの流れは、根元部70で合流して融着し(したがって、「溶融形成」し)、(不図示の)引張ロールによって、ドロー平面72上を下流側方向に引き出されるガラスリボン12を、形成する。更に、ガラスリボン12を別々のガラスシートに分ける、ガラスリボン12を、それ自体に巻き上げる、および/または、1つ以上の被膜をガラスリボン12に形成するなどによって、ガラスリボン12を、形成体60の下流側で処理してもよい。
【0022】
形成体60は、典型的には、溶融ガラスと化学反応を起こさず、溶融形成処理に関連した高温に耐えることが可能な耐火性セラミック材料から形成される。形成体を形成する典型的な材料は、ジルコン、炭化ケイ素、ゼノタイム、および/または、アルミナ系耐火性セラミックを含むが、それらに限定されない。形成体60と溶融ガラスの合計質量と、溶融形成処理の高い温度とにより、形成体60は、材料のクリープによるサグを、長さLに沿って下流側方向に生じる傾向がある。このサグは、形成体60の長さLのうち、支持されていない中点で、最も顕著でありうる。
【0023】
形成体60のサグは、形成面62、64を流れる均質化した溶融ガラスを再分配して、形成面62、64上に溶融ガラスの非均一な流れを生成し、結果的に得られるガラスリボン12の寸法属性を変化させる。例えば、ガラスリボン12の厚さは、サグにより、ガラスリボンの中心に近接した位置で増加する。更に、サグにより、溶融ガラスの流れが、長さLに沿って形成面62、64の中心に向かって再分配されることで、形成体60の端部に近接したガラスの流れが減少し、結果的に、ガラスリボン12の寸法を、図面に示した座標軸の+/-X方向に不均一にする。
【0024】
サグ軽減技術は、形成体60に応力を加え、それが材料クリープと組み合わさって、形成体の耐用寿命を短くしうると、判断された。本明細書に記載のガラス形成装置10および形成体60の実施形態は、形成体60の応力およびサグを軽減し、それにより、形成体の耐用寿命を延ばすと共に、ガラスリボン12の寸法特性を安定させる。
【0025】
ここで、図1~4を参照すると、本明細書に記載のガラス形成装置10の実施形態は、形成体60の形成面62、64と係合して形成体60のサグを軽減する、少なくとも1つのクレイドルアセンブリ120を含む。第1および第2のクレイドルアセンブリ120a、120bを、図1および2に示し、単一のクレイドルアセンブリ120を、図3および4に示している。一実施形態において、クレイドルアセンブリ120は、一対のクレイドルブロック(つまり、第1のクレイドルブロック122、および、第1のクレイドルブロック122とは分かれた独立の第2のクレイドルブロック124)を含む。図3は、形成体60の断面を概略的に示し、クレイドルアセンブリ120が、形成体の形成面62、64と係合している。図4は、クレイドルアセンブリ120を概略的に示し、記載を容易にするために、クレイドルブロック122、124を、形成体60の形成面62、64から外してある。
【0026】
クレイドルアセンブリ120の第1のクレイドルブロック122は、形成体60の第1の形成面62と係合する第1の接触面132を含む。実施形態において、第1のクレイドルブロック122の第1の接触面132は、第1のクレイドルブロック122の基部123に対して、α1の角度で傾いて、角度α1は、ドロー平面72と形成体60の第1の形成面62との間に形成される角度β1に対して、余角となる。
【0027】
同様に、クレイドルアセンブリ120の第2のクレイドルブロック124は、形成体60の第2の形成面64と係合する第2の接触面134を含む。実施形態において、第2のクレイドルブロック124の第2の接触面134は、第2のクレイドルブロック124の基部125に対して、α2の角度で傾いて、角度α2は、ドロー平面72と形成体60の第2の形成面64との間に形成される角度β2に対して、余角となる。本実施形態において、クレイドルアセンブリ120の第1の接触面132と第2の接触面134は、互いにV字構成となるように向いている。
【0028】
クレイドルアセンブリ120のクレイドルブロック122、124は、形成体60に対して、形成体60の根元部70が、クレイドルアセンブリ120を通って延伸して、クレイドルアセンブリ120の下に、下流側方向に位置するように配置される。しかしながら、代わりの配置も企図しており、可能であると理解すべきである。例えば、代わりの実施形態(不図示)において、クレイドルアセンブリ120のクレイドルブロック122、124は、形成体60に対して、根元部70が、クレイドルブロック122、124の各々の基部123、125と同じ平面に位置するように配置される。他の代わりの実施形態(不図示)において、根元部70を、クレイドルアセンブリ120のクレイドルブロック122、124の各々の基部123、125の上流側に配置してもよい。
【0029】
クレイドルアセンブリ120のクレイドルブロック122、124は、各々の構造部材302、304上に摺動自在に配置され、次に、構造部材302、304を、土台に静止して取り付けて、クレイドルブロック122、124が、図面に示した座標軸の+Z方向に支持されるようにしてもよい。
【0030】
図3および4に示したクレイドルアセンブリ120の実施形態において、クレイドルブロック122、124は付勢されて、各々、形成体60の形成面62、64に接触し、クレイドルブロック122、124の接触面132、134が、各々、形成体60の形成面62、64に保持力Fを加えるようにする。本明細書で用いたように、「付勢」および「付勢され」という用語は、クレイドルブロック122、124を、各々、形成体60の形成面62、64に対して押圧することを意味する。保持力Fは、第1のクレイドルブロック122と第2のクレイドルブロック124の間の形成体60に加わる。更に、クレイドルブロック122、124の接触面132、134に角度のついたことにより、クレイドルブロック122、124の各々によって形成体60の形成面62、64に対して加わる保持力Fは、図面に示した座標軸の+Z方向(つまり、上流側または上向き鉛直方向)の拘束力成分Fを含む。拘束力成分Fは、形成体の下流側方向の移動を制限し、それにより、図面に示した座標軸の-Z方向について、形成体の位置を維持する。
【0031】
更に図1~4を参照すると、クレイドルブロック122、124によって、形成体60の形成面62、64に対して加えられた保持力Fは、図面に示した座標軸の+Y方向(クレイドルブロック122から)、および、-Y方向(クレイドルブロック124から)の衝撃力成分Fも含みうる。衝撃力成分は、形成体60の横方向(つまり、+/-Y方向)の移動を制限する。
【0032】
実施形態において、衝撃力成分Fを操作して、形成体60の高さを、衝撃力成分Fの大きさの調節によって、上流側か下流側のいずれかの方向に調節してもよい。第1のクレイドルブロック122、および/または、第2のクレイドルブロック124を他方に向かって前進させて、衝撃力成分Fを増加または減少させることによって、衝撃力成分Fを、調節してもよい。例えば、第1のクレイドルブロック122と第2のクレイドルブロック124の1つを他方に向かって前進させると、衝撃力成分Fが増加する。クレイドルブロック122、124の第1と第2の接触面132、134の角度、および、形成体60の形成面62、64の角度により、衝撃力成分Fの増加は、形成体60を、クレイドルブロック122、124に対して上流側に摺動させて、それにより、形成体の高さを高める。
【0033】
第1のクレイドルブロック122、および/または、第2のクレイドルブロック124を、他方から離れるように移動させて、衝撃力成分Fを減少させてもよい。例えば、第1のクレイドルブロック122と第2のクレイドルブロック124の1つを、他方から離れるように移動すると、衝撃力成分Fは減少する。クレイドルブロック122、124の第1と第2の接触面132、134の角度、および、形成体60の形成面62、64の角度により、衝撃力成分Fの減少は、形成体60を、クレイドルブロック122、124に対して下流側に摺動させて、それにより、形成体の高さを下げる。
【0034】
本明細書に記載の実施形態において、第1のクレイドルブロック122と第2のクレイドルブロック124は、図3に示すようにラム352、354を用いて、他方に近づくように、または、離れるように付勢されてもよい。例えば、クレイドルアセンブリ120は、第1のクレイドルブロック122と係合した第1のラム352、および、第2のクレイドルブロック124と係合した第2のラム354を、更に含んでもよい。ラム352、354は、機械的ラムであっても、その代わりに、液圧ラムであってもよい。ラム352、354は、各々、クレイドルブロック122、124に連結されて、ラムが作動すると、クレイドルブロック122、124は、他方に向かって、または、離れるように進む。
【0035】
図3は、クレイドルブロック122、124と各々が係合した第1のラム352および第2のラム354を示しているが、他の構成も企図しており、可能であると理解すべきである。例えば、代わりの実施形態(不図示)において、クレイドルアセンブリ120は、単一のラム(例えば、第1のクレイドルブロック122と係合した第1のラム352)を含み、第2のクレイドルブロック124は、図面に示した座標軸の+/-Y方向の位置を固定される。本実施形態において、第1のクレイドルブロック122の相対的位置を第1のラム352で調節することで、(拘束力成分F、および、衝撃力成分Fを含む)保持力F、並びに、形成体60の高さを調節する。
【0036】
ここで、図5および6を参照すると、クレイドルアセンブリ120’の代わりの実施形態を概略的に示している。本実施形態において、クレイドルアセンブリ120’は、単一のクレイドルブロック150を含む。図5は、形成体60を、概略的に示す断面図であり、クレイドルアセンブリ120’が、形成体60の形成面62、64と係合している。図6は、記載を容易にするために、クレイドルアセンブリ120’のクレイドルブロック150を形成体60から取り外したクレイドルアセンブリ120’を、概略的に示している。
【0037】
図5および6に示した実施形態において、クレイドルアセンブリ120’のクレイドルブロック150は、形成体60の第1の形成面62と係合する第1の接触面132、および、形成体60の第2の形成面64と係合する第2の接触面134を有する。第1の接触面132と第2の接触面134は、互いにV字構成となるように向いている。本実施形態において、第1の接触面132と第2の接触面134は、クレイドルブロック150に形成されたV字形切込み135の対向する側である。
【0038】
実施形態において、クレイドルブロック150の第1の接触面132は、クレイドルブロック150の基部152に平行な平面151に対して、角度α1で傾いて、角度α1は、ドロー平面72と形成体60の第1の形成面62との間に形成される角度β1に対して、余角となる。同様に、クレイドルブロック150の第2の接触面134は、クレイドルブロック150の基部152に平行な平面151に対して、角度α2で傾いて、角度α2は、ドロー平面72と形成体60の第2の形成面64との間に形成される角度β2に対して、余角となる。
【0039】
形成体60をクレイドルアセンブリ120’のクレイドルブロック150と係合させた場合に、形成体60の根元部70が、V字形切込み135の頂点に形成された緩衝用切込み部155内に位置すると共に、形成体60の形成面62、64が、各々、クレイドルアセンブリ120’のクレイドルブロック150の接触面132、134に接触するように、形成体60をV字形切込み135内に配置する。したがって、本実施形態において、形成体60の根元部70は、クレイドルアセンブリ120’を通って延伸せず、クレイドルブロック150の基部152より高い固定位置にある。
【0040】
クレイドルアセンブリ120’のクレイドルブロック150を、土台に静止して取り付けた構造部材302、304上に配置して、クレイドルブロック150が、図面に示した座標軸の+Z方向に支持されるようにする。結果的に、クレイドルブロック150、特に、接触面132、134が、各々、保持力Fを形成体60の形成面62、64に加える。クレイドルブロック150の接触面132、134に角度がついていることにより、形成体60の形成面62、64に対して加わる保持力Fは、上流側または上向き鉛直方向の拘束力成分Fを有するものとなる。拘束力成分Fは、形成体の下流側方向への移動を制限し、それにより、図面に示した座標軸の+/-Z方向についての形成体の位置を維持する。形成体60の形成面62、64に対して加えられた保持力Fは、図面に示した座標軸における(接触面132から)+Y方向、および、(接触面134から)-Y方向の衝撃力成分Fも含んでもよい。衝撃力成分は、形成体60の横方向(つまり、+/-Y方向)の移動を制限する。
【0041】
図3~6に示したクレイドルアセンブリ120、120’の実施形態において、クレイドルブロック122、124、150は、比較的高温の溶融形成処理に耐えるのに適した耐火性セラミック材料から形成されてもよい。適した材料は、ジルコン、アルミナ、炭化ケイ素、および/または、ゼノタイムを含むが、それらに限定されない。いくつかの実施形態において、クレイドルブロック122、124、150を、形成体60と同じ材料で形成して、形成体の上を流れる溶融ガラスと化学反応を確実に起こさないようにしてもよい。他の実施形態において、クレイドルブロック122、124、150を、形成体60とは異なる材料から形成してもよい。
【0042】
図1および2を再び参照すると、図1に示したガラス形成装置10の実施形態、および、図2に示した形成体60の実施形態において、形成体60は、図3および4に示し、それについて記載したクレイドルアセンブリ120と同様の一対のクレイドルアセンブリ120a、120bを含む。本実施形態において、図1および2に示すように、第1のクレイドルアセンブリ120aは、形成体60と、形成体60の第1の端部で係合し、第2のクレイドルアセンブリ120bは、形成体60と、形成体の第1の端部と反対側の形成体の第2の端部で係合する。
【0043】
図1および2は、図3および4に示したクレイドルアセンブリ120と同様のクレイドルアセンブリ120a、120bを有するガラス形成装置10(図1)、および、形成体60(図2)を概略的に示しているが、その代わりに、クレイドルアセンブリ120a、120bは、図5および6に示したクレイドルアセンブリ120’と同様に構成されてもよいと理解すべきである。
【0044】
ここで、図2を参照すると、本明細書に記載の実施形態において、ガラス形成装置10は、形成体60の端面66a、66bと係合した少なくとも1つの端部ブロック(図2に示した端部ブロック170a、170b)を更に含む。端部ブロック170a、170bを、各々、土台に静止して取り付けた構造部材310、312上に摺動自在に配置して、端部ブロック170a、170bが、図面に示した座標軸の+Z方向に支持されるようにしてもよい。
【0045】
実施形態において、端部ブロック170a、170bを、比較的高温の溶融形成処理に耐えるのに適した耐火性セラミック材料から形成してもよい。適した材料は、ジルコン、アルミナ、炭化ケイ素、および/または、ゼノタイムを含むが、それらに限定されない。その代わりに、端部ブロックを、コバルト系、および/または、ニッケル系合金など、高温で用いるのに適した合金から形成してもよい。
【0046】
端部ブロック170a、170bを互いに近付くように付勢して、端部ブロック170a、170bが、圧縮力Fを、形成体60の長さLに平行な方向に、形成体60に加えるようにする。つまり、圧縮力Fは、図2に示した座標軸の+/-X方向に略平行である。実施形態において、圧縮力Fを、形成体60の質量中心か、それより下で、端面66a、66bに加えて、圧縮力Fが、形成体60の根元部70上か、または、隣接した位置に、直接作用するようにする。
【0047】
本明細書に記載の実施形態において、圧縮力Fは、本明細書で図3~6に示し、それについて記載した保持力Fの拘束力成分Fに略垂直である。実施形態において、図3に示し、本明細書において図3について記載したラム352、354と同様のラムなどのようなラムを用いて、圧縮力Fを、端面66a、66bに加えてもよい。
【0048】
形成体60の66a、66bで加えられた圧縮力Fは、形成体60の長さLに沿った中点で、上流側方向の曲げモーメントMを生成する。この曲げモーメントMは、形成体60の根元部70で、サグと逆に作用し、形成体60を用いて形成するガラスリボン12の寸法差異を軽減する。
【0049】
本明細書に記載の実施形態において、本明細書に記載のクレイドルアセンブリを用いて、圧縮力Fを形成体60の端面66a、66bに直接加えることと、それとは別の保持力Fを形成体60の形成面62、64に直接加えることを組み合わせて、形成体のサグを相殺するのに必要な圧縮力を、形成体を拘束する従来の技術と比べて低下させることを見出した。これは、形成体60上の応力を低下させる効果を有し、それは、形成体60の破損リスクを低下させ、静疲労寿命を延ばす。
【0050】
より具体的に、図7は、ガラス形成装置の形成体500を支持するための従来の技術を、概略的に示している。従来の技術において、形成体500を、形成体500の両端部に、フランジ502、504を有するように形成する。フランジ502、504は、形成体500の端面に当接するピアブロック506、508上に静止して支持される。形成体500の根元部570および形成面(1つの形成面562を図7に示している)が、ピアブロック506、508の間に延伸する。しかしながら、ピアブロック506、508は、根元部570にも、形成面562にも接触しない。そうではなく、形成体を上流側方向に拘束する保持力Fを、根元部570および形成面562より外側のフランジ502、504に対して、加える。この従来の技術において、圧縮力Fを、形成体の端面に直接加えるのではなく、圧縮ブロック510、512を用いて、ピアブロック506、508に対して加える。しかしながら、ピアブロック506、508、および、圧縮ブロック510、512を使用することで、フランジに近接した形成体500、特に、領域520、521で、形成体500の亀裂または破損にもつながりうる大きい応力を生じることを見出した。以下に示す実施例1は、本明細書に記載のクレイドルアセンブリを用いた形成体上の応力の低下を示すモデルデータを、図7に示した形成体を支持する従来の技術と比較して、提供している。更に、図7に示したサグを軽減するための従来の技術において、保持力F、および、圧縮力Fを、圧縮ブロック510、512がピアブロック506、508を介して形成体500に作用する連結構造の形成体に、加えている。この配置は、クレイドルブロックを用いる実施形態と比べて、同じ量のサグを軽減するのに、より大きい圧縮力を必要とすると判断された。以下に示す実施例2は、本明細書に記載のクレイドルアセンブリを用いたサグの改善を示すモデルデータを、図7に示した形成体を支持する従来の技術と比較して、提供している。
【0051】
更に、保持力Fを、形成体60の端面66a、66bから離れて、形成体60の形成面62、64に直接加えるので、圧縮力Fを形成体60の端面66a、66bに加える位置の自由度が高くなる。つまり、圧縮力Fを端面66a、66bに加える位置を調節して、最も大きい曲げモーメントを、根元部70で加えるようにし、それにより、形成体60のサグが最も軽減されるようにしうる。理論に固執することを望まないが、圧縮力Fを形成体の端面66a、66bに対して加える位置の自由度が高いほど、圧縮力Fを、形成体の質量中心に対して、より正確に加えることが可能になり、次に、曲げモーメントを最大にしながら、圧縮力Fの大きさを低下させることが可能であると考えられる。より詳しくは、図7に示したサグを軽減するための従来の技術において、保持力F、および、圧縮力Fを、圧縮ブロック510、512がピアブロック506、508を介して形成体500に作用する連結構造の形成体に加え、加えた圧縮力を、端面の大きな領域に効果的に広げる。しかしながら、本明細書に記載の実施形態においては、圧縮力を、端面に直接加え、加える位置を形成体の質量中心に対して鉛直方向に調節しうるので、最小の圧縮力で、サグを軽減するための曲げモーメントを最大にすることが可能であり、次に、それは、形成体の応力を削減する。
【0052】
更に、保持力Fを、形成体60の端面66a、66bから離れて、形成体60の形成面62、64に直接加えるので、形成体の端部に近接したフランジ(図7)を省いて、形成面の面積を増加させ、幅寸法がより大きいガラスリボンの形成を可能にする。
【0053】
更に、本明細書に記載の実施形態において、堰部領域Dは、形成体の長さLのうち、ガラスリボン12を形成するのに使用しうる部分のことを称する。本明細書に記載の実施形態において、クレイドルアセンブリ120a、120bの内側の形成体60の端面66a、66bから更にずらした別の堰部を有するのではなく、形成体60の形成面62、64に取り付けられたクレイドルアセンブリ120a、120bも、溶融ガラスが形成体60の端面66a、66bから流れるのを防ぐ堰部の代わりに使用してもよい。したがって、いくつかの実施形態において、クレイドルアセンブリ120a、120bを有する形成体60の堰部領域Dが、第1のクレイドルアセンブリ120aと第2のクレイドルアセンブリ120bの間に延伸し、第1のクレイドルアセンブリ120aおよび第2のクレイドルアセンブリ120bと接触すると理解すべきである。
【0054】
概して、図1および2は、形成体60を支持する一対のクレイドルアセンブリ120a、120bの使用を示しているが、形成体の応力を低下させて、次に、形成体60の破損リスクを低下させ、静疲労寿命を延ばしつつ、単一のクレイドルアセンブリを用いうると考えられる。例として図8を参照すると、一実施形態において、単一のクレイドルアセンブリ120を用いて、保持力を、形成面(図8に示した表面64)に、形成体60の1つの端部で加え、単一の端部ブロック170aを用いて、圧縮力Fを、単一のクレイドルアセンブリ120に隣接した形成体60の端面66aに加えてもよい。本実施形態において、形成体60の他方の端部を、ピアブロック508によって支持して、ピアブロック508を、端面66bに対して固定するようにしてもよい。端部ブロック170aを、他方の端面66bを固定するピアブロック508に向かう方向に、端面66aに対して直接付勢することによって、圧縮力を、形成体60の根元部70に加えてもよい。本実施形態は、ピアブロック508を形成体60の1つの端部で使用することを含むが、1つのクレイドルアセンブリ120を用いて、形成面に保持力Fを直接加えることを、形成体60の端面66aに圧縮力Fを(ピアブロックを介してではなく)直接加えることと組み合わせることで、結果的に、図7に示した形成体を支持する従来の技術と比較して、形成体の応力を低下させると共に、形成体の使用可能な形成領域を増加させると、考えられる。更に、図8に概略的に示した実施形態を用いて、形成体60を、よりよく方向付けてもよい。例えば、ピアブロック508と形成体60の間の界面を基準面として作用させて、形成体を、図8に示した座標軸の鉛直平面および水平平面について方向付けてもよい。
【実施例
【0055】
本明細書に記載の実施形態を、以下の実施例によって、更に明らかにする。
【0056】
実施例1
数学モデルを、形成体について、以下の3つの別々の支持条件で、開発した:(1)図7に示したような、従来の方法でピアブロックを用いて両端で支持された形成体であり、9000lb(4082.3kg-F(約40033.3N))の圧縮力が加えられている;(2)図2に示したような、形成体の形成面に、形成体の両端部で接触したクレイドルアセンブリ(2つのクレイドルブロック構成)を用いて支持された形成体であり、端部ブロックが、9000lb(4082.3kg-F(約40033.3N))の圧縮力を、形成体の端面に加えている;(3)図2に示したような、形成体の形成面に、形成体の両端部で接触したクレイドルアセンブリ(2つのクレイドルブロック構成)を用いて支持された形成体であり、端部ブロックが、8000lb(3628.7kg-F(約35585.0N)の圧縮力を、形成体の端面に加えている。モデル化した形成体は、溶融ガラスが、約2000lb/時(900kg/時)の速度で、約1300℃の温度で送られるジルコンの形成体に基づくものだった。形成体の端面での投入応力を、時間(日数)の関数として計算した。モデル化した1年の期間に亘って、形成面のその長さに沿った変形(つまり、サグ)も、確定された。
【0057】
図9は、上記のような支持条件の3つのモデル化した形成体について、形成体の投入端部での応力を示すグラフである。図9に示すように、図2に示したようなクレイドルアセンブリを用いて支持した形成体は、図7に示すようなピアブロックで支えられた形成体より、非常に低い応力を有した。確かに、曲線(2)は、同じ負荷条件下において、ピアブロックではなく、クレイドルアセンブリを用いることで、形成体の応力は、50PSI(約345kPa)より大きく低下することを示している。応力が低いほど、静疲労を軽減することによって、形成体の耐用寿命を延ばす。更に、概して、図9のデータは、ピアブロックではなく、クレイドルアセンブリを用いることで、より低い圧縮力で、同じサグ比を実現しうることを示している。より低い圧縮力を加えることで、形成体の応力が更に低下し、それは、静疲労を軽減する。
【0058】
図10は、上記のような支持条件を有する3つモデル化した形成体について、形成体の変形またはサグを、形成体の長さに沿った位置の関数として示すグラフである。曲線(5)は、同じ圧縮力の負荷条件(9000lb(約4082.3kg))下で、本明細書に記載のクレイドルアセンブリによって支持された形成体が、(曲線(4)に示す)ピアブロックによって支持された形成体より、非常に低いサグを、特に形成体の中心に近接して、有することを示している。曲線(6)は、より低い圧縮力(8000lb)を加えて、クレイドルアセンブリによって支持された形成体が、ピアブロックによって支持された形成体より、僅かに大きいサグを有しうることを示している。しかしながら、このデータを、図9のデータと合わせて読むと、サグの増加は、形成体の応力の低下を伴っており、それは、静疲労を軽減することによって、耐久寿命を延ばしうる。このデータに基づくと、サグの軽減、および、形成体の応力の低下の両方を実現するような大きさの、加えられる圧縮力があり、それにより、形成体の耐久寿命を延ばすと考えられる。例えば、この実施例において、サグを軽減し、形成体の応力を削減しうる、8000lb(約3628.7kg)と9000lb(約4082.3kg)の間の大きさの圧縮力があると考えられる。
【0059】
ここで、上記に基づいて、本明細書に記載のクレイドルアセンブリを用いて、ガラス形成装置の形成体を支持し、形成体のサグを削減しうると理解すべきである。形成体の形成面に連結されたクレイドルアセンブリを使用することで、保持力F、より具体的には、保持力Fの拘束力成分Fを、圧縮力Fから分けて、それにより、サグに逆に作用しつつ、形成体の応力量を削減する。形成体の応力の削減により、静疲労リスクを下げ、破損リスクを軽減して、形成体の耐久寿命を延ばす。
【0060】
当業者には、請求した主題の精神および範囲を逸脱することなく、本明細書に記載の実施形態に、様々な変更および変形が可能なことが明らかだろう。したがって、本明細書は、本明細書に記載の様々な実施形態の変更および変形も、そのような変更および変形が、請求項、および、その等価物の範囲である限りは、網羅することを企図している。
【0061】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0062】
実施形態1
ガラス形成装置において、
根元部で収束する第1の形成面および第2の形成面を含む形成体と、
互いにV字構成となるように向いて、上向き鉛直の力成分を有する保持力を前記形成体に加えるものである、該形成体の前記第1の形成面と係合する第1の接触面、および、該形成体の前記第2の形成面と係合する第2の接触面を含む、少なくとも1つのクレイドルアセンブリと、
前記形成体の端面と係合し、圧縮力を、該形成体の長さ方向に平行で、かつ、前記拘束力成分に垂直である方向に、該形成体に対して加える少なくとも1つ端部ブロックと、
を含む装置。
【0063】
実施形態2
前記根元部が、前記少なくとも1つのクレイドルアセンブリを通って延伸して、その下に位置するものである、実施形態1に記載のガラス形成装置。
【0064】
実施形態3
前記第1の接触面は、第1のクレイドルブロック上に位置し、
前記第2の接触面は、前記第1のクレイドルブロックから独立した第2のクレイドルブロック上に位置するものである、実施形態1に記載のガラス形成装置。
【0065】
実施形態4
前記第1のクレイドルブロックおよび前記第2のクレイドルブロックは、互いに近付くように付勢されて、それにより、それらの間の前記形成体に突き当たるものである、実施形態3に記載のガラス形成装置。
【0066】
実施形態5
前記圧縮力を、前記形成体の質量中心より下で、該形成体の前記端面に加えるものである、実施形態1に記載のガラス形成装置。
【0067】
実施形態6
前記第1の接触面および前記第2の接触面は、クレイドルブロックに形成されたV字形切込みの対向する側である、実施形態1に記載のガラス形成装置。
【0068】
実施形態7
前記少なくとも1つのクレイドルアセンブリは、第1のクレイドルアセンブリ、および、第2のクレイドルアセンブリを含み、
前記第1のクレイドルアセンブリは、前記形成体と、該形成体の第1の端部で係合し、
前記第2のクレイドルアセンブリは、前記形成体と、該形成体の第2の端部で係合するものである、実施形態1に記載のガラス形成装置。
【0069】
実施形態8
前記少なくとも1つの端部ブロックは、第1の端部ブロック、および、第2の端部ブロックを含み、
前記第1の端部ブロックは、前記形成体の第1の端面と係合し、
前記第2の端部ブロックは、前記形成体の第2の端面と係合し、
前記第1の端部ブロックおよび前記第2の端部ブロックは、互いに近付くように付勢されて、それにより、前記形成体に対して、該形成体の前記長さ方向に前記圧縮力を加えるものである、実施形態7に記載のガラス形成装置。
【0070】
実施形態9
前記形成体の堰部領域は、前記第1のクレイドルアセンブリから前記第2のクレイドルアセンブリまで延伸し、該第1のクレイドルアセンブリおよび該第2のクレイドルアセンブリに接触するものである、実施形態7に記載のガラス形成装置。
【0071】
実施形態10
前記少なくとも1つのクレイドルアセンブリは、前記形成体と、該形成体の第1の端部で係合し、
前記形成体の第2の端部は、ピアブロック上に支持されたものである、実施形態1に記載のガラス形成装置。
【0072】
実施形態11
前記少なくとも1つの端部ブロックは、前記形成体の第1の端面と係合し、
前記ピアブロックは、前記形成体の第2の端面と係合し、
前記少なくとも1つの端部ブロックは、前記ピアブロックの方に付勢され、それにより、前記形成体に対して、該形成体の前記長さ方向に前記圧縮力を加えるものである、実施形態10に記載のガラス形成装置。
【0073】
実施形態12
根元部で収束する第1の形成面および第2の形成面を有する形成体の支持方法において、
前記第1の形成面および前記第2の形成面に対して、上向き鉛直の力成分を有する保持力を加えて、前記形成体の下向き鉛直方向の移動を防ぐ工程と、
逆のモーメントを加える圧縮力を、前記形成体の長さ方向に平行な方向に、該形成体の端面に対して加えて、該形成体の前記長さに沿ったサグを軽減する工程と、
を含む方法。
【0074】
実施形態13
前記保持力を加える工程は、
クレイドルアセンブリの第1の接触面を、前記形成体の前記第1の形成面と係合させる工程と、
前記クレイドルアセンブリの第2の接触面を、前記形成体の前記第2の形成面と係合させる工程と、
を含み、
前記第1の接触面と前記第2の接触面は、互いにV字構成となるように向いたものである、実施形態12に記載の形成体支持方法。
【0075】
実施形態14
前記クレイドルアセンブリは、第1のクレイドルブロック、および、前記第1のクレイドルブロックから独立した第2のクレイドルブロックを含み、
前記第1の接触面は、前記第1のクレイドルブロック上に位置し、
前記第2の接触面は、前記第2のクレイドルブロック上に位置するものである、実施形態13に記載の形成体支持方法。
【0076】
実施形態15
前記第1の接触面を前記第1の形成面と係合させる工程、および、前記第2の接触面を前記第2の形成面と係合させる工程は、前記第1のクレイドルブロックと前記第2のクレイドルブロックを、互いに近付くように付勢する工程を含むものである、実施形態14に記載の形成体支持方法。
【0077】
実施形態16
前記根元部は、前記クレイドルアセンブリを通って延伸して、その下に位置するものである、実施形態13に記載の形成体支持方法。
【0078】
実施形態17
前記クレイドルアセンブリは、クレイドルブロックを含み、
前記第1の接触面と前記第2の接触面は、前記クレイドルブロックに形成されたV字形切込みの対向する側である、実施形態13に記載の形成体支持方法。
【0079】
実施形態18
前記圧縮力を加える工程は、少なくとも1つの端部ブロックを、前記形成体の端面と係合させる工程を含むものである、実施形態12に記載の形成体支持方法。
【0080】
実施形態19
前記圧縮力を、前記形成体の質量中心より下で加えるものである、実施形態12に記載の形成体支持方法。
【符号の説明】
【0081】
10 ガラス形成装置
12 ガラスリボン
15 溶融槽
24 制御部
30 立て管
36 第1の接続管
38 清澄槽
40 第2の接続管
42 混合槽
44 送出路
46 送出槽
48 降下管
50 投入部
60、500 形成体
61 トラフ部
62 第1の形成面
64 第2の形成面
70、570 根元部
120、120’、120a、120b クレイドルアセンブリ
122 第1のクレイドルブロック
124 第2のクレイドルブロック
132 第1の接触面
134 第2の接触面
150 クレイドルブロック
155 切込み
170a、170b 端部ブロック
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10