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  • 特許-表面欠陥を減少させる方法 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】表面欠陥を減少させる方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 21/00 20060101AFI20220128BHJP
   C03C 3/083 20060101ALI20220128BHJP
   C03C 3/085 20060101ALI20220128BHJP
   C03C 3/091 20060101ALI20220128BHJP
   C03C 3/093 20060101ALI20220128BHJP
   C03C 3/097 20060101ALI20220128BHJP
【FI】
C03C21/00 101
C03C3/083
C03C3/085
C03C3/091
C03C3/093
C03C3/097
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2018541190
(86)(22)【出願日】2017-08-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-05
(86)【国際出願番号】 US2017046179
(87)【国際公開番号】W WO2018031706
(87)【国際公開日】2018-02-15
【審査請求日】2019-05-17
(31)【優先権主張番号】62/373,025
(32)【優先日】2016-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】アミン,ジェイミン
(72)【発明者】
【氏名】ジン,ユフィ
(72)【発明者】
【氏名】スミス,クリスティ リン
【審査官】青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-527661(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 21/00
C03C 3/083
C03C 3/085
C03C 3/091
C03C 3/093
C03C 3/097
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化基板における欠陥区域を除去する方法において、
少なくとも1種類の一価塩を含む塩浴を95℃以上の温度に加熱する工程、
強化基板であって、該強化基板が該塩浴と接触させられる前に、一価金属陽イオンの平均濃度を有する1つ以上の無欠陥区域、および該1つ以上の無欠陥区域の平均濃度から10モル%以上外れる一価金属陽イオンの平均濃度を有する少なくとも1つの欠陥区域を有する強化基板の少なくとも一部を前記塩浴と接触させる工程、および
前記強化基板の少なくとも一部を前記塩浴から取り出す工程であって、前記少なくとも1つの欠陥区域が、取出し後に、前記1つ以上の無欠陥区域の一価金属陽イオンの平均から10モル%未満しか外れない一価金属陽イオンの平均濃度を有する工程、
を有してなり、
前記一価金属陽イオンの平均濃度を有する少なくとも1つの無欠陥区域は、無欠陥区域が1つの場合は、一価金属陽イオンの内の各一価金属陽イオンの所定の濃度を有する無欠陥区域、無欠陥区域が2つ以上の場合は、該2つ以上の無欠陥区域における一価金属陽イオンの内の各一価金属陽イオンの所定の濃度同士の平均濃度を有する2つ以上の無欠陥区域であり、
前記1つ以上の無欠陥区域の平均濃度から10モル%以上外れる一価金属陽イオンの平均濃度を有する少なくとも1つの欠陥区域は、欠陥区域が1つの場合は、一価金属陽イオンの内の各一価金属陽イオンの所定の濃度を有する欠陥区域、欠陥区域が2つ以上の場合は、該2つ以上の欠陥区域における一価金属陽イオンの内の各一価金属陽イオンの所定の濃度同士の平均濃度を有する2つ以上の欠陥区域であり、
前記強化基板が、ガラス、ガラスセラミック、またはその組合せから作られている、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの欠陥区域の平均濃度が、前記強化基板が前記塩浴と接触させられる前に、60モル%以上の第1の一価金属陽イオンを含み、該強化基板の前記少なくとも一部がその塩浴から取り出された後に、該少なくとも1つの欠陥区域の平均濃度が60モル%未満の該第1の一価金属陽イオンを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1の一価金属陽イオンがアルカリ金属を含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの欠陥区域が、前記強化基板が前記塩浴と接触させられる前に、前記1つ以上の無欠陥区域の平均一価金属陽イオン濃度から20%以上外れる第1の一価金属陽イオン濃度を有する、請求項1から3いずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記強化基板の少なくとも一部を前記塩浴から取り出した際に、前記少なくとも1つの欠陥区域が、前記1つ以上の無欠陥区域の一価金属陽イオンの平均一価金属陽イオン濃度から5%未満しか外れていない第2の一価金属陽イオン濃度を有する、請求項1から4いずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記強化基板が、0.18mm×0.13mmの寸法を有する区域に亘り測定して、前記塩浴との接触前に、0.002μm以上の算術平均粗さ(Ra)を、該塩浴から取り出した後に、0.002μm未満のRaを有する、請求項1から5いずれか1項記載の方法。
【請求項7】
欠陥のないイオン交換済み基板を製造する方法において、
少なくとも1種類の一価塩を含む塩浴を95℃以上かつ430℃以下の温度に加熱する工程、
欠陥のあるイオン交換済み基板であって、0.18mm×0.13mmの寸法を有する区域に亘り測定して、約0.002μm以上の算術平均粗さ(Ra)を有する欠陥のあるイオン交換済み基板の少なくとも一部を前記塩浴と接触させる工程、および
前記イオン交換済み基板の少なくとも一部を前記塩浴から取り出して、0.002μm未満のRaを有する欠陥のないイオン交換済み基板を製造する工程、
を有してなり、
前記欠陥のあるイオン交換済み基板が、ガラス、ガラスセラミック、またはその組合せから作られている、方法。
【請求項8】
前記欠陥のあるイオン交換済み基板が、少なくとも1.2nm以上の高さまたは深さおよび5μm以上の幅または長さを有する欠陥を少なくとも1つ含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記欠陥のないイオン交換済み基板が、少なくとも8nm以上の高さまたは深さおよび0.01mm以上の幅または長さを有する欠陥を含まない、請求項7または8記載の方法。
【請求項10】
前記欠陥のあるイオン交換済み基板の少なくとも一部が、10分から40時間に亘り前記塩浴と接触させられる、請求項7から9いずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記欠陥のあるイオン交換済み基板が、
50モル%以上かつ80モル%以下のSiO
0モル%以上かつ5モル%以下のB
5モル%以上かつ30モル%以下のAl
2モル%以上かつ25モル%以下のLiO、
0モル%以上かつ15モル%以下のNaO、
0モル%以上かつ5モル%以下のMgO、
0モル%以上かつ5モル%以下のZnO、
0モル%以上かつ5モル%以下のSnO、および
0モル%以上かつ10モル%以下のP
を含む、請求項7から10いずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記塩浴が飽和塩を含まない、請求項1から11いずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記塩浴がリン酸塩またはカルシウムを含まない、請求項1から12いずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記塩浴が、溶融塩浴であり、360℃以上かつ430℃以下の温度で加熱される、請求項1から13いずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記塩浴が、水性塩浴であり、95℃以上かつ350℃以下の温度に加熱される、請求項1から13いずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記塩浴が、Li、Na、K、Rb、Cs、Fr、Ag(I)、Au(I)、Cu(I)、およびそれらの組合せの少なくとも1つを含む、請求項1から15いずれか1項記載の方法。
【請求項17】
前記塩浴が、KNOおよびNaNOの少なくとも一方を含む、請求項1から16いずれか1項記載の方法。
【請求項18】
前記塩浴が、約45モル%から約55モル%のNaNOおよび約45モル%から約55モル%のKNOを含む、請求項1から17いずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、その内容が依拠され、ここに全て引用される、2016年8月10日に出願された米国仮特許出願第62/373025号の米国法典第35編第119条の下での優先権の恩恵を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本開示は、広く、表面欠陥を減少させる方法に関する。より詳しくは、本開示は、イオン交換されたかまたは他のやり方で強化された基板における表面欠陥を減少させる方法に関する。
【背景技術】
【0003】
テンパリングされたまたは強化されたガラスが、その物理的および化学的耐久性のために、スマートフォンやタブレットなどの家庭用電子機器にしばしば使用されている。しかしながら、強化過程はガラスを著しい応力下に置き、それにより、表面むらまたは他の欠陥が伝播することがある。表面欠陥は、ガラスの外観と強度の両方を変えることがある。ガラス物品が、表面欠陥のために電子機器に要求される美的または機能的要求を満たせない場合、そのガラスは、使用に適さないであろうし、廃品材料として廃棄しなければならないであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、基板における表面欠陥を減少させるまたは除去する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ここに記載された実施の形態は、欠陥のある基板を、少なくとも1種類の一価塩を含む加熱された塩浴と接触させることによって、イオン交換されたかまたは他のやり方で強化された基板における表面欠陥を減少させる方法を提供することにより、これらの必要性に対処する。
【0006】
いくつかの実施の形態において、少なくとも1種類の一価塩を含む塩浴を95℃以上の温度に加熱し、強化基板を加熱された塩浴と接触させ、その強化基板を加熱された塩浴から取り出すことによって、強化基板における欠陥区域を除去する方法が提供される。その強化基板は、加熱された浴と接触される前は、少なくとも1つの欠陥区域および1つ以上の無欠陥区域を有し、その無欠陥区域は平均一価金属陽イオン濃度を有し、欠陥区域はその平均から少なくとも10モル%外れている。基板が加熱された塩浴から取り出される際に、その欠陥区域はその平均から10モル%未満しか外れておらず、欠陥区域が効果的に除去される。ここに用いたように、「外れる」という用語は、少なくとも1つの欠陥区域と1つ以上の無欠陥区域との間の濃度差の絶対値を意味する。
【0007】
いくつかの実施の形態において、少なくとも1種類の一価塩を含む塩浴を95℃以上かつ430℃以下の温度に加熱し、イオン交換済み基板を加熱された塩浴と接触させ、そのイオン交換済み基板を加熱された塩浴から取り出すことによって、欠陥のないイオン交換済み基板を製造する方法が提供される。そのイオン交換済み基板は、加熱された塩浴と接触される前は、0.18mm×0.13mmの寸法を有する区域に亘り測定して、約0.002μm以上の算術平均粗さ(Ra)を有する欠陥のあるイオン交換済み基板である。そのイオン交換済み基板は、加熱された塩浴から取り出された際に、0.002μm未満のRaを有する欠陥のないイオン交換済み基板である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】ここに開示され説明される実施の形態による、欠陥のあるイオン交換済み基板の概略図
図1B】ここに開示され説明される実施の形態による、欠陥のないイオン交換済み基板の概略図
図2A】ここに開示され説明される実施の形態による、表面上に塩結晶を有するイオン交換済み基板の概略図
図2B】ここに開示され説明される実施の形態による、塩結晶とイオン交換済み基板との間で生じるイオン交換反応を示す概略図
図2C】ここに開示され説明される実施の形態による、イオン交換済み基板における表面欠陥を表す塩結晶の除去を示す概略図
図3】ここに開示され説明される実施の形態による、Zygo 3D画像化および表面計測学を使用して測定した、欠陥のあるイオン交換済み基板の表面形状を示すグラフ
図4】ここに開示され説明される実施の形態による、Zygo 3D画像化および表面計測学を使用して測定した、欠陥のないイオン交換済み基板の表面形状を示すグラフ
図5A】ここに開示され説明される実施の形態による、Zygo 3D画像化および表面計測学を使用して測定した、欠陥のあるイオン交換済み基板の表面形状を示すグラフ
図5B】ここに開示され説明される実施の形態による、Zygo 3D画像化および表面計測学を使用して測定した、今では欠陥のないイオン交換済み基板である、以前は欠陥があったイオン交換済み基板の表面形状を示すグラフ
図6】ここに示され説明される実施の形態による、KNO、NaNO、および少量のリン酸リチウムナトリウムを含有する溶融塩浴の高温X線回折解析のグラフ
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここに記載された実施の形態は、イオン交換されたかまたは他のやり方で強化されたガラス基板における表面欠陥を減少させる方法に関する。本開示のいくつかの実施の形態は、欠陥のある基板を、少なくとも1種類の一価塩を含む加熱された塩浴と接触させることによって、イオン交換されたかまたは他のやり方で強化された基板における表面欠陥を減少させる方法を提供する。
【0010】
一般に、テンパリングされたガラスおよびガラスセラミック基板の耐久性は、そのガラスまたはガラスセラミック基板の圧縮応力(CS)の量および圧縮深さ(DOC)を増加させることによって増す。より大きいCSを与え、DOCを増加させるために、ガラスまたはガラスセラミック基板の強化過程として、イオン交換過程を使用してよい。ここに用いたように、DOCは、ここに記載された化学強化済みのアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品における応力が圧縮から引張に変化する深さを意味する。DOCは、イオン交換処理に応じて、FSMまたは散乱光偏光器(SCALP)により測定できる。ガラス物品における応力が、ガラス物品中にカリウムイオンを交換して入れることによって生じた場合には、DOCを測定するためにFSMが使用される。その応力が、ガラス物品中にナトリウムイオンを交換して入れることによって生じた場合には、DOCを測定するためにSCALPが使用される。ガラス物品における応力が、ガラス物品中にカリウムイオンとナトリウムイオンの両方を交換して入れることによって生じた場合には、DOCを測定するためにSCALPが使用される。何故ならば、ナトリウムの交換深さがDOCを表し、カリウムイオンの交換深さが圧縮応力の大きさの変化(しかし、圧縮から引張への応力の変化ではない)を表すと考えられるからである;そのようなガラス物品中のカリウムイオンの交換深さは、FSMにより測定され、カリウムの層の深さ(DOL)と呼ばれる。
【0011】
イオン交換過程において、少なくとも1種類のより小さいアルカリ金属イオンを含有するガラスまたはガラスセラミック基板が、少なくとも1種類のより大きいアルカリ金属イオンを含有する塩と接触させられる。そのより小さいアルカリ金属イオンがガラス表面から塩中に拡散し、一方で、塩からのより大きいアルカリ金属イオンがガラスの表面にあるこれらのより小さいイオンを置き換える。ガラス中のより小さいイオンのより大きいイオンによるこの置換で、ガラス表面に圧縮応力層が生じ、それゆえ、ガラスの耐破損性が増す。イオン交換過程が進行するにつれて、塩中のより小さいアルカリ金属イオン(すなわち、ガラスから塩中に拡散するイオン)の濃度が増し、一方で、塩中のより大きいアルカリ金属イオン(すなわち、塩からガラス中に移動するイオン)の濃度が低下する。
【0012】
イオン交換過程などの強化過程中、ガラスの表面に亘り圧縮応力の均一な層が生じることが理想的である。しかしながら、誘発される応力は、ときには、不均一に分布されることがあり、それどころか、1つの局所区域に高度の応力が集中することがあり、これにより、ガラスの表面に欠陥が生じることがある。より大きいイオンを置き換えるより小さいイオンは、基板の表面に空隙または窪みを残すであろうから、イオンが交換されるときのイオン体積の相違のために、窪みや突起などの表面欠陥が形成することがある。その上、塩浴中に存在する塩のあるものは、イオン交換過程後に、ガラスの表面で結晶化することがある。基板が一旦冷めたら、その結晶を表面から除去することは難しいであろうし、これにより、ガラスに窪みと突起が生じ得る。窪みがあり、斑点があるガラスは、大抵、商業的に望ましくなく、ある業界では使用に適さないであろう。
【0013】
いくつかの実施の形態において、強化基板を加熱された塩浴と接触させ、その強化基板をその浴から取り出すことによって、強化基板における欠陥区域を減少させる方法が提供される。その強化基板は、加熱された塩と接触される前は、少なくとも1つの欠陥区域および1つ以上の無欠陥区域を有する。その少なくとも1つの欠陥区域は、その浴から取り出された際に、除去されているかまたは実質的に減少している。
【0014】
いくつかの実施の形態において、イオン交換済み基板を加熱された塩浴と接触させ、そのイオン交換済み基板をその浴から取り出すことによって、欠陥のないイオン交換済み基板を製造する方法が提供される。そのイオン交換済み基板は、加熱された塩浴と接触される前は、約0.002μm以上のRaを有する欠陥のあるイオン交換済み基板である。そのイオン交換済み基板は、塩浴から取り出された際に、0.002μm未満のRaを有する欠陥のないイオン交換済み基板である。
【0015】
ここに用いたように、名詞は、文脈がそうではないと明白に示していない限り、複数の対象を指す。それゆえ、例えば、「成分」に対する言及は、文脈がそうではないと明白に示していない限り、そのような成分を2つ以上有する態様を含む。
【0016】
ここに用いたように、「基板」および「物品」という用語は、特に明記のない限り、以下に限られないが、シート、バイアル、および三次元ガラス物品を含む任意の形状または形態のガラスまたはガラスセラミック材料を称する等価語である。
【0017】
ここに用いたように、「陽イオン」および「イオン」という用語は、特に明記のない限り、等価語と考えられる。「陽イオン」および「イオン」という用語は、1種類以上の陽イオンも称することができる。
【0018】
ここに用いたように、「イオン交換浴」、「塩浴」、および「加熱された塩浴」という用語は、特に明記のない限り、等価語であり、ガラスまたはガラスセラミック基板の表面内のイオンが、溶融塩浴または水性塩浴であることがある、塩浴中に存在するイオンと置換または交換される、ガラスまたはガラスセラミック基板にイオン交換過程を行うために使用される溶液または媒体を称する。
【0019】
ここに用いたように、「選択的に」および「選択的」という用語は、特定の生成物または反応機構が他の潜在的な生成物または反応を上回って生じるような、促進すべき生成物または反応機構の親和性を称するために使用される。
【0020】
ここで、具体的な実施の形態を、図面を参照して記載する。実施の形態の以下の記載は、事実上説明であり、決して、その用途または使途において限定する意図はない。さらに、適用できる場合には、同様の参照番号は、様々な図面において対応するまたは関連する部品を指す。図1Aは、欠陥のあるイオン交換済み基板108を概略示している。いくつかの実施の形態において、欠陥のあるイオン交換済み基板108は、0.002μm以上のRaを有することがある。ここに用いたように、Raは、局所表面高さと平均表面高さとの間の差の算術平均として定義され、以下の式:
【0021】
【数1】
【0022】
によって記載することができ、式中、yは、平均表面高さに対する局所表面高さである。いくつかの実施の形態において、欠陥のあるイオン交換済み基板108は、0.005μm以上、または0.01μm以上、または0.05μm以上のRaを有することがある。これらの値は、0.18mm×0.13mmの寸法を有する区域に亘り測定される。欠陥のあるイオン交換済み基板108は、いくつかの実施の形態において、ガラス、ガラスセラミック、または他の適切な組成物から作られることがある。図1Aはイオン交換済み基板を示しているが、他の強化基板を使用してもよいことが理解されよう。
【0023】
図1Aにおいて、欠陥のあるイオン交換済み基板108は欠陥440を有する。図1Aに示された欠陥440は窪みであるが、欠陥440は突起であってもよいことが理解されよう。いくつかの実施の形態において、欠陥のあるイオン交換済み基板108は、多数の窪みおよび/または突起などの1つ以上の欠陥440を含むことがある。いくつかの実施の形態において、基板の一方の表面に生じる窪みは、その基板の反対の表面に突起を生じることがある。このことは、特に、150μm以下、例えば、100μm以下、または75μm以下、または50μm以下の厚さを有する基板などの薄い基板に生じるであろう。
【0024】
いくつかの実施の形態において、欠陥440は、少なくとも1.2nm以上の高さまたは深さおよび少なくとも0.005mm以上の幅または長さを有する窪みまたは突起であることがある。欠陥440は、1nmから200nm、または1nmから100nm、または1nmから10nmの高さまたは深さを有することがある。いくつかの実施の形態において、欠陥440は、約10nmから約50nm、または約100nmから約50nm、または100nmから200nmの高さまたは深さを有することがある。欠陥440は、0.1μmから5μm、または0.1μmから50μm、または0.1μmから0.5mmの幅または長さを有することがある。いくつかの実施の形態において、欠陥440は、0.1から0.5mm、または0.05から0.1mm、または0.05から0.5mm、または0.001から0.5mmの幅または長さを有することがある。いくつかの実施の形態において、欠陥440は、裸眼に見えることがある。他の実施の形態において、欠陥440は、緑色光の下に配置した場合、もしくは顕微鏡または別の拡大鏡を使用した場合にしか見えないことがある。
【0025】
どの特定の理論によっても束縛されるものでもないが、欠陥440は、欠陥のあるイオン交換済み基板108の特定の区域における陽イオンの不均衡な濃度により生じるであろう。大きい一価金属陽イオン120および小さい一価金属陽イオン130を含む様々なイオンが、欠陥のあるイオン交換済み基板108に存在する。いくつかの実施の形態において、大きい一価金属陽イオン120、小さい一価金属陽イオン130、またはその両方は、ナトリウム、リチウム、カリウム、ルビジウム、セシウムまたはフランシウムなどのアルカリ金属であることがある。いくつかの実施の形態において、大きい一価金属陽イオン120、小さい一価金属陽イオン130、またはその両方は、銀(Ag(I))、均(Au(I))、または銅(Cu(I))であることがある。
【0026】
いくつかの実施の形態において、欠陥のあるイオン交換済み基板108は、図1Aに示されるように、中位の大きさの一価金属陽イオン140をさらに含むことがある。中位の大きさの一価金属陽イオン140は、大きい一価金属陽イオン120および小さい一価金属陽イオン130のように、アルカリ金属、他の一価金属、またはその組合せを含むことがある。欠陥のあるイオン交換済み基板108は一価金属陽イオンを2種類以上、または3種類以上、もしくはいくつかの実施の形態において、さらには4種類以上含むことがある。
【0027】
いくつかの実施の形態において、欠陥のあるイオン交換済み基板108の特定の区域における少なくとも1種類の陽イオンの不均衡な濃度が欠陥区域を構成し、一方で、特定の区域における陽イオンの均一な分布が無欠陥区域を構成する。欠陥のあるイオン交換済み基板108は、少なくとも1つの欠陥区域および1つ以上の無欠陥区域を含むことがある。その欠陥区域は、1つの欠陥440であっても、多数の欠陥440を含んでもよく、一方で、無欠陥区域は欠陥440を含まない。
【0028】
いくつかの実施の形態において、前記少なくとも1つの欠陥区域は、図1Aに示された中位の大きさの一価金属陽イオン140などの、1種類の一価金属陽イオンの大半(少なくとも51%)を含むことがある。いくつかの実施の形態において、その少なくとも1つの欠陥区域は、均一濃度の1種類の一価金属陽イオンを含むことがある。反対に、前記無欠陥区域は、1種類の一価金属陽イオンの大半(少なくとも51%)を含むのではなく、3種類以上の一価金属陽イオンのより均一に分布した寄せ集めを有する不均一組成からなることがある。2種類の一価金属陽イオンを含有する実施の形態において、欠陥区域は、少なくとも60モル%の1種類の一価金属陽イオンを含むことがあり、一方で、無欠陥区域は、60モル%未満のいずれか1種類の一価金属陽イオンを含むことがある。
【0029】
いくつかの実施の形態において、1つ以上の無欠陥区域は平均金属濃度により特徴付けられ、少なくとも1つの欠陥区域は、その平均金属濃度から10モル%以上外れることがある。ここに用いたように、「平均金属濃度」は、既定区域における個々の一価金属陽イオンの総計量と比べたその既定区域に存在する個々の種類の一価金属陽イオンの平均濃度を称する。
【0030】
非限定例として、1つ以上の無欠陥区域は、例えば、第1の無欠陥区域が、34モル%のリチウム陽イオン、31モル%のカリウム陽イオン、および35モル%のナトリウム陽イオンを含有し、第2の無欠陥区域が、35モル%のリチウム陽イオン、32モル%のカリウムイオン、および33モル%のナトリウム陽イオンを含有する、2つ区域からなることがある。この例における1つ以上の無欠陥区域の平均一価金属陽イオン濃度は、34.5モル%のリチウム、31.5モル%のカリウム、および34モル%のナトリウムであろう。少なくとも1つの欠陥区域は、無欠陥区域から少なくとも10モル%だけ外れるであろう。例えば、その欠陥区域は、そのリチウム濃度から少なくとも10モル%(24.5モル%以下、または44.5モル%以上のリチウムを有する)、および/またはカリウム含有量から少なくとも10モル%(21.5モル%以下、または41.5モル%以上のカリウムを有する)、および/またはナトリウム含有量から少なくとも10モル%(24モル%以下、または44モル%以上のナトリウムを有する)外れ得る。ここに示され説明された実施の形態において、リチウムイオン、カリウムイオンおよびナトリウムイオンが使用されているが、本開示の実施の形態は、これらの種に限定されないことを理解すべきである。
【0031】
いくつかの実施の形態において、少なくとも1つの欠陥区域の平均一価金属陽イオン濃度は、組成において、1つ以上の無欠陥区域の濃度から少なくとも15モル%、または少なくとも20モル%、または少なくとも25モル%、または少なくとも30モル%異なることがある。いくつかの実施の形態において、その濃度は、少なくとも45モル%、または少なくとも60モル%、または少なくとも75モル%異なることがある。
【0032】
いくつかの実施の形態において、アルカリ土類金属(Be、Mg、Ca、Sr、Ba、およびRa)などのイオン交換できない陽イオンが、欠陥440の形成に寄与することがある。どの特定の理論によって束縛されるものでもないが、塩浴、欠陥のあるイオン交換済み基板108、またはその両方の中に存在するイオン交換できない陽イオンは、一価金属陽イオンの交換を妨害するかまたは他のやり方で阻むことがある。いくつかの実施の形態において、イオン交換できない陽イオンにより行われる妨害は、先に述べたように、欠陥区域における1種類の一価金属陽イオンの余剰濃度を生じて、欠陥440を作り出すことがある。
【0033】
いくつかの実施の形態において、欠陥区域は、60モル%以上の第1の一価金属陽イオンを含むことがあり、無欠陥区域は、60モル%未満のいずれかの一価金属陽イオン(アルカリ金属:リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、ルビジウム、およびフランシウムを含む)を含むことがある。先に述べたように、欠陥区域中の濃度は、均一であっても、または中位の大きさの一価金属陽イオン140などの第1の一価金属陽イオンの大半(少なくとも51%)を含んでもよい。
【0034】
いくつかの実施の形態において、欠陥のあるイオン交換済み基板108は、ガラスまたはガラスセラミック基板または物品であることがある。いくつかの実施の形態において、欠陥のあるイオン交換済み基板108は、アルカリアルミノケイ酸塩またはアルカリアルミノホウケイ酸塩ガラスから作られることがある。例えば、いくつかの実施の形態において、欠陥のあるイオン交換済み基板108は、50モル%以上かつ80モル%以下のSiO、0モル%以上かつ5モル%以下のB、5モル%以上かつ30モル%以下のAl、2モル%以上かつ25モル%以下のLiO、0モル%以上かつ15モル%以下のNaO、0モル%以上かつ5モル%以下のMgO、0モル%以上かつ5モル%以下のZnO、0モル%以上かつ5モル%以下のSnO、および0モル%以上かつ10モル%以下のPを含むガラス組成物から形成されることがある。
【0035】
あるいは、欠陥のあるイオン交換済み基板108は、60モル%以上かつ75モル%以下のSiO、0モル%以上かつ3モル%以下のB、10モル%以上かつ25モル%以下のAl、2モル%以上かつ15モル%以下のLiO、0モル%以上かつ12モル%以下のNaO、0モル%以上かつ5モル%以下のMgO、0モル%以上かつ5モル%以下のZnO、0モル%以上かつ1モル%以下のSnO、および0モル%以上かつ5モル%以下のPを含むことがある。いくつかの実施の形態において、欠陥のあるイオン交換済み基板108が、B、P、MgO、ZnO、SnO、またはその組合せを含まないことがあることを理解すべきである。
【0036】
いくつかの実施の形態において、欠陥のあるイオン交換済み基板108は、55モル%以上かつ70モル%以下のSiO、0モル%以上かつ5モル%以下のB、10モル%以上かつ20モル%以下のAl、2モル%以上かつ10モル%以下のLiO、1モル%以上かつ15モル%以下のNaO、0モル%以上かつ5モル%以下のMgO、0モル%以上かつ5モル%以下のZnO、0モル%以上かつ5モル%以下のSnO、および0.5モル%以上かつ10モル%以下のPを含むことがある。
【0037】
先のガラス組成物は、イオン交換過程に使用できるガラス組成物の1つの実施の形態であり、ここに記載された方法に使用するための他のガラス組成物が考えられ、可能であることを理解すべきである。
【0038】
ここで図1Bを参照すると、欠陥のないイオン交換済み基板105が概略示されている。いくつかの実施の形態において、欠陥のないイオン交換済み基板105は、0.002μm未満のRaを有することがある。いくつかの実施の形態において、欠陥のないイオン交換済み基板105は、0.0015μm以下、または0.001μm以下、または0.0005μm以下のRaを有することがある。いくつかの実施の形態において、欠陥のないイオン交換済み基板105は、無欠陥区域から実質的になることがある。欠陥のないイオン交換済み基板105は、2種類以上の一価金属陽イオンを含むことがある。いくつかの実施の形態において、欠陥のないイオン交換済み基板105における一価金属陽イオンの濃度は、不均一であることがあり、先に記載された実施の形態によることがある。欠陥のないイオン交換済み基板105は、欠陥のあるイオン交換済み基板108について先に記載されたものと同じまたは類似の組成を有することがある。
【0039】
いくつかの実施の形態において、欠陥のないイオン交換済み基板105は、欠陥のあるイオン交換済み基板108を、少なくとも1種類の一価塩を含む加熱された塩と接触させることによって作られることがある。どの特定の理論によって束縛されるものでもないが、加熱された塩浴は、大きい一価金属陽イオン120および小さい一価金属陽イオン130などの、大きいまたは中位の一価金属陽イオンを欠陥区域に再び導入し、欠陥のないイオン交換済み基板105に不均一な陽イオン組成を生じて、欠陥440を平坦化することがある。欠陥440は平坦化されることがあり、これは、欠陥440が、長さまたは幅、もしくは高さまたは深さ、もしくはその両方の減少を経ることがあることを意味する。いくつかの実施の形態において、欠陥440は、平坦化されることがあり、完全に除去されることがある。どの特定の理論によって束縛されるものでもないが、欠陥440は、一価金属陽イオンのサイズの差により生じる応力を非局在化することによって、減少するまたはなくなるであろう。
【0040】
欠陥のあるイオン交換済み基板108は、浸漬、吹き付け、ディッピング、または他の類似の手段によって、塩浴と接触させてよい。他の実施の形態において、欠陥のあるイオン交換済み基板108は塩浴中に完全に沈められることがある。欠陥のあるイオン交換済み基板108は、以下に限られないが、欠陥のあるイオン交換済み基板108を塩浴中に浸すことを含め、塩浴と何回も接触させてよい。欠陥440を完全になくすために、何回も接触させる必要があるであろう。
【0041】
いくつかの実施の形態において、欠陥のあるイオン交換済み基板108の少なくとも一部は、1分から60時間の期間に亘り、加熱された塩浴と接触させられることがある。欠陥のあるイオン交換済み基板108の少なくとも一部は、1分から48時間、または10分から40時間、10分から24時間、または30分から24時間、または1時間から24時間の期間に亘り、加熱された塩浴と接触させられることがある。いくつかの実施の形態において、欠陥のあるイオン交換済み基板108の少なくとも一部は、10分から1時間、または10分から30分、または30分から2時間、または30分から3時間の期間に亘り、加熱された塩浴と接触させられることがある。いくつかの実施の形態において、選択された時間は、イオンが、欠陥のあるイオン交換済み基板108の表面から少なくとも1μmの深さまでずっと交換されるのに十分な時間であることがある。いくつかの実施の形態において、選択された時間は、イオンが、欠陥のあるイオン交換済み基板108の表面から少なくとも0.05μm、または少なくとも0.75μm、または少なくとも1.5μm、または少なくとも2μm、または少なくとも2.5μmの深さまでずっと交換されるのに十分な時間であることがある。
【0042】
いくつかの実施の形態において、前記塩浴は、少なくとも1種類の一価塩を含むことがある。いくつかの実施の形態において、その一価塩は、アルカリ金属などの一価金属を含むことがある。例えば、いくつかの実施の形態において、その塩浴は、KNOおよびNaNOの少なくとも一方を含むことがある。その塩浴は、100%のKNO、100%のNaNO、またはKNOとNaNOの組合せを含むことがある。これらの実施の形態において、塩浴中のKNOおよびNaNOの濃度は、CSおよびDOCの両方を増加させるイオン交換を行うために欠陥のないイオン交換済み基板105の組成に基づいて、釣り合わせられることがある。どの特定の理論によって束縛されるものでもないが、KNOは-NaNOと比べて-ガラス基板中の中位のアルカリ金属イオン(Naなど)とより容易に交換するであろうより大きいアルカリ金属イオン(すなわち、K)を含む。同様に、NaNOは-KNOと比べた場合-ガラス基板中のより小さいアルカリ金属イオン(Liなど)とより容易に交換する中位のアルカリ金属イオン(すなわち、Na)を含む。いくつかの実施の形態において、その塩浴は、5モル%以上かつ95モル%以下のKNO、および5モル%以上かつ95モル%以下のNaNOを含むことがある。例えば、その塩浴は、45モル%以上かつ55モル%以下のKNO、および45モル%以上かつ55モル%以下のNaNOを含むことがある。いくつかの実施の形態において、その塩浴は、25モル%以上かつ75モル%以下のKNO、および25モル%以上かつ75モル%以下のNaNOを含むことがある。いくつかの実施の形態において、その塩浴は、49モル%のKNOおよび51モル%のNaNO、または51モル%のKNOおよび49モル%のNaNOを含むことがある。
【0043】
イオン交換過程は、塩浴を加熱することによって促進されることがある。いくつかの実施の形態において、その塩浴は、加熱された塩浴を生じるために、95℃以上の温度に加熱されることがある。他の実施の形態において、加熱された塩浴は、水性塩浴であることがあり、これは、その塩浴が水を含むことがあることを意味する。いくつかの実施の形態において、その水性塩浴は、95℃以上かつ350℃以下の温度に加熱されることがある。いくつかの実施の形態において、加熱された塩浴は、溶融塩浴であることがある。いくつかの実施の形態において、その溶融塩浴は、360℃から420℃の温度に加熱されることがある。いくつかの実施の形態において、塩浴の温度が高すぎるまで上昇させられると、イオン交換過程を適切に制御するのが難しくなるであろうし、良好なCSを得ずに、DOCが急速に増加し得る。したがって、その塩浴は、いくつかの実施の形態において、95℃以上かつ430℃以下、または360℃以上かつ430℃以下の温度などのように430℃以下の温度に加熱されるであろう。いくつかの実施の形態において、その塩浴は、360℃以上から390℃以下、または95℃以上から400℃以下、または150℃以上から385℃以下、または100℃以上から400℃以下の温度に加熱されることがある。
【0044】
いくつかの実施の形態において、塩の結晶247が欠陥のあるイオン交換済み基板108の表面上に形成されるのを防ぐために、新しいまたは未使用の加熱された塩が定期的に使用されることがある。いくつかの実施の形態において、その塩浴は、塩の結晶247が欠陥のあるイオン交換済み基板108の表面上に形成されるのを防ぐために、リン酸塩またはカルシウムを含有しないことがある。いくつかの実施の形態において、その塩浴は、以下に限られないが、リン酸カルシウム(KPO)、リン酸ナトリウム(NaPO)、リン酸リチウム(LiPO)、混合アルカリ金属リン酸塩(LiNaPO)、塩化カルシウム(CaCl)、またはそれらの組合せを含む、リン酸系またはカルシウム系の塩を10モル%未満しか含有しないことがある。いくつかの実施の形態において、その塩浴は、15モル%未満、または8モル%未満、または5モル%未満、または3モル%未満しかリン酸系またはカルシウム系の塩を含有しないことがある。
【0045】
図2Aは、欠陥のないイオン交換済み基板105の表面上に形成している塩の結晶247を概略示している。先に述べたように、イオン交換過程の最中と直後に、塩の結晶247が、加熱された塩浴中に形成することがあり、欠陥のないイオン交換済み基板105に結合するかまたは他に付着することがある。塩の結晶247は、カルシウムイオン、リン酸イオン、またはその組合せを含むことがある。塩の結晶247は、イオン交換過程中に使用されるイオンおよび生成されるイオンからなるどの潜在的な汚染物質でもあり得る。塩の結晶247は、大きい一価金属陽イオン、中位の大きさの一価金属陽イオン、または小さい一価金属陽イオンを含むことがある。塩の結晶247は、矢印249で示されるように、加熱された塩浴中に存在するイオン間の引力のために形成されることがある。塩の結晶247は、リン酸三ナトリウム(TSP、NaPO)またはリン酸三カリウム(KPO)などの均質塩246を含むことがある。いくつかの実施の形態において、均質塩246は、塩化カルシウム(CaCl)などのカルシウムイオンを含むことがある。均質塩246は、小さい一価金属陽イオン、大きい一価金属陽イオン、または中位の大きさの一価金属陽イオンを含むことがある。均質塩246は、加熱された塩浴中に形成することがあり、イオン交換可能な基板の表面に付着することがある。
【0046】
非限定例として、いくつかの実施の形態において、リン酸三ナトリウムが塩浴に加えられて、リチウム陽イオンを沈殿させることがある。リチウム陽イオンの沈殿後、塩浴中に存在する過剰のリン酸三ナトリウムが塩の結晶247を形成することがあり、これが、イオン交換可能な基板の表面に付着することがある。リン酸三ナトリウムの結晶は、イオン交換可能な基板と相互作用し、カリウム陽イオン(リン酸陰イオンと反応することが好ましいであろう)を、ナトリウム陽イオンがイオン交換可能な基板中に拡散される間にイオン交換可能な基板から拡散させることがある。イオン交換可能な基板中のナトリウム陽イオンの濃度の上昇により、ナトリウム陽イオンとカリウム陽イオンとの間の体積差により生じる窪みがイオン交換済み基板に生じることがある。
【0047】
図2Bは、その表面に塩の結晶247が付着した欠陥のないイオン交換済み基板105を示す。どの特定の理論によって束縛されるものでもないが、塩の結晶247は、欠陥のないイオン交換済み基板105の表面に付着することがあり、塩の結晶247中に存在する陽イオンが、欠陥のないイオン交換済み基板105中に存在するイオンと交換し始めることがある。このイオンの交換により、欠陥のないイオン交換済み基板105の特定の局所区域に応力が集中することがあり、これにより、先に述べ、図2Cに示されるように、欠陥440が形成することがある。
【0048】
いくつかの実施の形態において、塩の結晶247は、不均質塩242を含むことがある。不均質塩242は、2種類以上の小さい一価金属陽イオン130、大きい一価金属陽イオン120、または中位の大きさの一価金属陽イオン140の組合せから形成されることがある。リン酸イオンが、塩の結晶247中に存在する陰イオンである実施の形態において、均質塩246は、例えば、リン酸三リチウムLiPO、リン酸三ナトリウムNaPO、またはリン酸三カリウムKPOを含むことがあり、不均質塩242は、リン酸リチウムナトリウムLiNaPO、リン酸ナトリウムカリウムKNaPO、またはその組合せを含むことがある。
【0049】
図2Bに示されるように、塩の結晶247と欠陥のないイオン交換済み基板105との間でイオンが交換されるにつれて、大きい一価金属陽イオン120、中位の大きさの一価金属陽イオン140、および小さい一価金属陽イオン130の濃度は、一旦不均質であり、今では基板105内で釣り合わされた組成が(特定の区域において)、図2Bに示された中位の大きさの一価金属陽イオン140などの1種類の一価金属陽イオンの複数または大半(少なくとも51%)の濃度を有するように、変えられるであろう。
【0050】
どの特定の理論によって束縛されるものでもないが、いくつかの実施の形態において、塩の結晶247は、最初に、中位の大きさの一価金属陽イオン140などの1種類の一価金属陽イオンのみを含む均質塩246を含有することがある。欠陥のないイオン交換済み基板105の表面に付着する際に、塩の結晶247中に存在する中位の大きさの一価金属陽イオン140および小さい一価金属陽イオン130は、欠陥のないイオン交換済み基板105中に存在する大きい一価金属陽イオン120と交換して、不均質塩242を形成するであろう。塩の結晶247中に存在する陰イオンは、中位の大きさの一価金属陽イオン140および小さい一価金属陽イオン130よりも、大きい一価金属陽イオン120と選択的に結合するであろう。
【0051】
図2Cにおいて、塩の結晶247が除去されるときに、基板の表面に欠陥440が現れて、欠陥のあるイオン交換済み基板108がもたらされることがある。いくつかの実施の形態において、欠陥のないイオン交換済み基板105を、表面上に塩の結晶247が存在する状態で、加熱された塩浴から取り出し、冷却されることがある。次に、塩の結晶247を、脱イオン水などの水で洗浄して、欠陥のあるイオン交換済み基板108の表面から塩の結晶247を除去することがある。いくつかの実施の形態において、塩の結晶247を除去するのが難しいことがある。
【実施例
【0052】
以下の実施例は、先に開示された1つ以上の実施の形態をさらに説明する。それらの実施例は、事実上、説明的であり、本開示の範囲を決して限定する意図はない。
【0053】
実施例1
49質量%のNaNOおよび51質量%のKNOを含有する3キログラム(kg)の塩浴を加熱して、溶融塩浴を形成し、次いで、約380℃の温度に維持した。その組成が下記の表1に列挙されている、ガラス基板の実施例ガラス1を3.75時間に亘り溶融塩浴と接触させた。イオン交換過程が行われているときに、リチウムイオンがガラス基板から溶融塩浴中に拡散した。基板のCSおよびDOCを低下させるであろう、リチウムによる浴汚染を防ぐために、その浴に0.5質量%のリン酸三ナトリウムを加えた。リン酸リチウムが浴から沈殿する間に、過剰な濃度のリン酸イオンがリン酸リチウムナトリウムLiNaPOおよびリン酸ナトリウムカリウムKNaPOを形成し始めた。実施例ガラス1を溶融塩浴から取り出し、7分未満で100℃の温度に冷却した。ガラスを脱イオン水で洗浄し、洗浄の際に、実施例ガラス1の表面に表面欠陥に気付くことができた。図3は、Zygo特徴付けにより決定された表面形状のグラフである。
【0054】
【表1】
【0055】
図3は、その組成が表1において先に列挙された、ガラス基板の実施例ガラス1上に存在する表面欠陥の特徴付けのグラフである。図3は、その三次元(3D)画像化および表面計測ツールがガラスシートの表面形状を表す、Zygo測定のグラフである。
【0056】
図3に示されるように、実施例ガラス1は多数の窪み(点線の下の測定値)を示した。それらの窪みは、0.0001μmから0.006μm超の深さ(Y軸に沿ったマイクロメートルで表された高さ)に及び、長さ/幅(X軸に沿ったミリメートルで表された距離)は0.001mmから0.01mm超に及んだ。ほとんどの窪みは、数マイクロメートルの長さおよび数ナノメートルの深さを有した。それらの欠陥は、多数濃度のナトリウムイオンを含有し、リチウムイオンとカリウムイオンは不足していた。
【0057】
図4は、ここに記載された実施の形態による処理後の同じ実施例ガラス1のZygo画像を示す。先に記載した処理にしたがって、実施例ガラス1を、30分間に亘り380℃で100%のKNOを含む溶融塩浴中に入れた。次に、実施例ガラス1を取り出し、冷却し、脱イオン水で洗浄した。浴から取り出した後、表面欠陥は、実施例ガラス1においてもはや観察できなかった。その基板は、ナトリウム、リチウム、およびカリウムのイオンの釣り合いのとれた濃度で不均質イオン組成を示した。欠陥のない実施例ガラス1の基板のZygo画像が、図4に示されている。特に、実施例ガラス1の基板は、深さまたは高さが約0.0005μmより大きい、もしくは長さ/幅が約0.0050mmより大きい、欠陥を含まなかった。
【0058】
実施例2
49質量%のNaNOおよび51質量%のKNOを含有する3キログラム(kg)の塩浴を加熱して、溶融塩浴を形成し、次いで、約380℃の温度に維持した。その組成が下記の表2に列挙されている、ガラス基板の実施例ガラス2を3.75時間に亘り溶融塩浴と接触させた。イオン交換過程が行われているときに、リチウムイオンがガラス基板から溶融塩浴中に拡散した。リチウムによる浴汚染を防ぐために、その浴に0.5質量%のリン酸三ナトリウムを加えた。リン酸リチウムが浴から沈殿するときに、過剰な濃度のリン酸イオンがリン酸リチウムナトリウムLiNaPOおよびリン酸ナトリウムカリウムKNaPOを形成した。実施例ガラス2を溶融塩浴から取り出し、7分未満で100℃の温度に冷却した。ガラスを脱イオン水で洗浄し、洗浄の際に、表面欠陥が目に見えた。
【0059】
図5Aは、欠陥のあるイオン交換済みの実施例ガラス2のZygo表面粗さである。図5Aに示されるように、実施例ガラス2に多数の欠陥が存在し、1つの特に大きい窪みは、深さが約10nm、幅が数マイクロメートルであった。図5Bは、30分間に亘り380℃で100%のKNOからなる溶融塩浴中に入れられた後の同じ実施例ガラス2の基板を示す。その溶融塩浴によるイオン交換処理後、実施例ガラス2を取り出し、冷却し、脱イオン水で洗浄した。図5Bに示されるように、その方法により、表面欠陥の大半が除去され、減少した。実施例ガラス2は、0.2mm幅に亘る約10nmの窪みをもはや含んでおらず、存在する最大の欠陥は、深さが約0.6nm、長さが0.05mm未満であった。図5Aにおいて、大きい表面欠陥が裸眼に観察できたのに対し、図5Bにおいて、小さい表面欠陥は観察されなかった。
【0060】
【表2】
【0061】
図6は、溶融したKNO、NaNO、および少量のLiNaPOを含有する加熱された塩浴に関する強度および温度の関数としてのその場の高温X線回折(XRD)パターンを示す。図6に示されるように、約380℃などのより高い浴温度では、結晶形態のままであるリン酸リチウムナトリウムLiNaPOが、溶融塩浴中に存在する唯一の結晶であった。より低い温度では、他の塩(KNO、NaNOおよびLiPOなど)からの結晶がより優勢であった。その塩浴を380℃の温度に加熱し、次に、室温に冷却したときに、300℃より高い温度では、リン酸リチウムナトリウムのみが結晶状態で依然として存在していた。300℃未満では、塩が380℃から冷却されているとき、および塩浴が室温から加熱されているときの両方で、塩浴中に存在する結晶塩からの他の結晶相も存在した。
【0062】
請求項の主題の精神および範囲から逸脱せずに、この中に記載された実施の形態に、様々な改変および変更を行ってよいことが当業者に明白であろう。それゆえ、本明細書は、様々な実施の形態の改変および変更が付随の特許請求の範囲およびそれらの等価物の範囲に入るという条件で、そのような改変および変更を網羅することが意図されている。いくつかの非限定的実施の形態が以下に挙げられる。
【0063】
実施の形態1。強化基板における欠陥区域を除去する方法において、
少なくとも1種類の一価塩を含む塩浴を95℃以上の温度に加熱する工程、
強化基板であって、その強化基板がその塩浴と接触させられる前に、平均濃度の全一価金属陽イオンを有する1つ以上の無欠陥区域、およびその1つ以上の無欠陥区域の平均濃度から10モル%以上外れる平均濃度の全一価金属陽イオンを有する少なくとも1つの欠陥区域を有する強化基板の少なくとも一部をその塩浴と接触させる工程、および
その強化基板の少なくとも一部をその塩浴から取り出す工程であって、その少なくとも1つの欠陥区域が、取出し後に、その1つ以上の無欠陥区域の全一価金属陽イオンの平均から10モル%未満しか外れない平均濃度の全一価金属陽イオンを有する工程、
を有してなる方法。
【0064】
実施の形態2。前記少なくとも1つの欠陥区域の平均濃度が、その強化基板がその塩浴と接触させられる前に、60モル%以上の第1の一価金属陽イオンを含み、その強化基板の少なくとも一部がその塩浴から取り出された後に、その少なくとも1つの欠陥区域の平均濃度が60モル%未満の第1の一価金属陽イオンを含む、実施の形態1の方法。
【0065】
実施の形態3。その第1の一価金属陽イオンがアルカリ金属を含む、実施の形態2の方法。
【0066】
実施の形態4。その少なくとも1つの欠陥区域は、強化基板が塩浴と接触させられる前に、1つ以上の無欠陥区域の平均一価金属陽イオン濃度から20%以上外れる第1の一価金属陽イオン濃度を有する、実施の形態1から3いずれか1つの方法。
【0067】
実施の形態5。その強化基板の少なくとも一部を塩浴から取り出した際に、少なくとも1つの欠陥区域が、1つ以上の無欠陥区域の全一価金属陽イオンの平均一価金属陽イオン濃度から5%未満しか外れていない第2の一価金属陽イオン濃度を有する、実施の形態1から4いずれか1つの方法。
【0068】
実施の形態6。その強化基板が、0.18mm×0.13mmの寸法を有する区域に亘り測定して、塩浴との接触前に、0.002μm以上の算術平均粗さ(Ra)を、塩浴から取り出した後に、0.002μm未満のRaを有する、実施の形態1から5いずれか1つの方法。
【0069】
実施の形態7。欠陥のないイオン交換済み基板を製造する方法において、
少なくとも1種類の一価塩を含む塩浴を95℃以上かつ430℃以下の温度に加熱する工程、
欠陥のあるイオン交換済み基板であって、0.18mm×0.13mmの寸法を有する区域に亘り測定して、約0.002μm以上の算術平均粗さ(Ra)を有する欠陥のあるイオン交換済み基板の少なくとも一部をその塩浴と接触させる工程、および
そのイオン交換済み基板の少なくとも一部を塩浴から取り出して、0.002μm未満のRaを有する欠陥のないイオン交換済み基板を製造する工程、
を有してなる方法。
【0070】
実施の形態8。その欠陥のあるイオン交換済み基板が、少なくとも1.2nm以上の高さまたは深さおよび5μm以上の幅または長さを有する欠陥を少なくとも1つ含む、実施の形態7の方法。
【0071】
実施の形態9。その欠陥のないイオン交換済み基板が、少なくとも8nm以上の高さまたは深さおよび0.01mm以上の幅または長さを有する欠陥を含まない、実施の形態7または8の方法。
【0072】
実施の形態10。その塩浴が飽和塩を含まない、実施の形態1から9いずれか1つの方法。
【0073】
実施の形態11。その塩浴がリン酸塩またはカルシウムを含まない、実施の形態1から10いずれか1つの方法。
【0074】
実施の形態12。その欠陥のあるイオン交換済み基板の少なくとも一部が、10分から40時間に亘り塩浴と接触させられる、実施の形態1から11いずれか1つの方法。
【0075】
実施の形態13。その塩浴が、溶融塩浴であり、360℃以上かつ430℃以下の温度で加熱される、実施の形態1から12いずれか1つの方法。
【0076】
実施の形態14。その塩浴が、水性塩浴であり、95℃以上かつ350℃以下の温度に加熱される、実施の形態1から12いずれか1つの方法。
【0077】
実施の形態15。その塩浴が、Li、Na、K、Rb、Cs、Fr、Ag(I)、Au(I)、Cu(I)、およびそれらの組合せの少なくとも1つを含む、実施の形態1から14いずれか1つの方法。
【0078】
実施の形態16。その塩浴が、KNOおよびNaNOの少なくとも一方を含む、実施の形態1から15いずれか1つの方法。
【0079】
実施の形態17。その塩浴が、約45モル%から約55モル%のNaNOおよび約45モル%から約55モル%のKNOを含む、実施の形態1から16いずれか1つの方法。
【0080】
実施の形態18。その欠陥のあるイオン交換済み基板が、ガラス、ガラスセラミック、またはその組合せから作られている、実施の形態1から17いずれか1つの方法。
【0081】
実施の形態19。その欠陥のあるイオン交換済み基板が、
50モル%以上かつ80モル%以下のSiO
0モル%以上かつ5モル%以下のB
5モル%以上かつ30モル%以下のAl
2モル%以上かつ25モル%以下のLiO、
0モル%以上かつ15モル%以下のNaO、
0モル%以上かつ5モル%以下のMgO、
0モル%以上かつ5モル%以下のZnO、
0モル%以上かつ5モル%以下のSnO、および
0モル%以上かつ10モル%以下のP
を含む、実施の形態1から18いずれか1つの方法。
【0082】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0083】
実施形態1
強化基板における欠陥区域を除去する方法において、
少なくとも1種類の一価塩を含む塩浴を95℃以上の温度に加熱する工程、
強化基板であって、該強化基板が該塩浴と接触させられる前に、平均濃度の全一価金属陽イオンを有する1つ以上の無欠陥区域、および該1つ以上の無欠陥区域の平均濃度から10モル%以上外れる平均濃度の全一価金属陽イオンを有する少なくとも1つの欠陥区域を有する強化基板の少なくとも一部を前記塩浴と接触させる工程、および
前記強化基板の少なくとも一部を前記塩浴から取り出す工程であって、前記少なくとも1つの欠陥区域が、取出し後に、前記1つ以上の無欠陥区域の全一価金属陽イオンの平均から10モル%未満しか外れない平均濃度の全一価金属陽イオンを有する工程、
を有してなる方法。
【0084】
実施形態2
前記少なくとも1つの欠陥区域の平均濃度が、前記強化基板が前記塩浴と接触させられる前に、60モル%以上の第1の一価金属陽イオンを含み、該強化基板の前記少なくとも一部がその塩浴から取り出された後に、該少なくとも1つの欠陥区域の平均濃度が60モル%未満の該第1の一価金属陽イオンを含む、実施形態1に記載の方法。
【0085】
実施形態3
前記第1の一価金属陽イオンがアルカリ金属を含む、実施形態2に記載の方法。
【0086】
実施形態4
前記少なくとも1つの欠陥区域が、前記強化基板が前記塩浴と接触させられる前に、前記1つ以上の無欠陥区域の平均一価金属陽イオン濃度から20%以上外れる第1の一価金属陽イオン濃度を有する、実施形態1から3いずれか1つに記載の方法。
【0087】
実施形態5
前記強化基板の少なくとも一部を前記塩浴から取り出した際に、前記少なくとも1つの欠陥区域が、前記1つ以上の無欠陥区域の全一価金属陽イオンの平均一価金属陽イオン濃度から5%未満しか外れていない第2の一価金属陽イオン濃度を有する、実施形態1から4いずれか1つに記載の方法。
【0088】
実施形態6
前記強化基板が、0.18mm×0.13mmの寸法を有する区域に亘り測定して、前記塩浴との接触前に、0.002μm以上の算術平均粗さ(Ra)を、該塩浴から取り出した後に、0.002μm未満のRaを有する、実施形態1から5いずれか1つに記載の方法。
【0089】
実施形態7
欠陥のないイオン交換済み基板を製造する方法において、
少なくとも1種類の一価塩を含む塩浴を95℃以上かつ430℃以下の温度に加熱する工程、
欠陥のあるイオン交換済み基板であって、0.18mm×0.13mmの寸法を有する区域に亘り測定して、約0.002μm以上の算術平均粗さ(Ra)を有する欠陥のあるイオン交換済み基板の少なくとも一部を前記塩浴と接触させる工程、および
前記イオン交換済み基板の少なくとも一部を前記塩浴から取り出して、0.002μm未満のRaを有する欠陥のないイオン交換済み基板を製造する工程、
を有してなる方法。
【0090】
実施形態8
前記欠陥のあるイオン交換済み基板が、少なくとも1.2nm以上の高さまたは深さおよび5μm以上の幅または長さを有する欠陥を少なくとも1つ含む、実施形態7に記載の方法。
【0091】
実施形態9
前記欠陥のないイオン交換済み基板が、少なくとも8nm以上の高さまたは深さおよび0.01mm以上の幅または長さを有する欠陥を含まない、実施形態7または8に記載の方法。
【0092】
実施形態10
前記塩浴が飽和塩を含まない、実施形態1から9いずれか1つに記載の方法。
【0093】
実施形態11
前記塩浴がリン酸塩またはカルシウムを含まない、実施形態1から10いずれか1つに記載の方法。
【0094】
実施形態12
前記欠陥のあるイオン交換済み基板の少なくとも一部が、10分から40時間に亘り前記塩浴と接触させられる、実施形態1から11いずれか1つに記載の方法。
【0095】
実施形態13
前記塩浴が、溶融塩浴であり、360℃以上かつ430℃以下の温度で加熱される、実施形態1から12いずれか1つに記載の方法。
【0096】
実施形態14
前記塩浴が、水性塩浴であり、95℃以上かつ350℃以下の温度に加熱される、実施形態1から12いずれか1つに記載の方法。
【0097】
実施形態15
前記塩浴が、Li、Na、K、Rb、Cs、Fr、Ag(I)、Au(I)、Cu(I)、およびそれらの組合せの少なくとも1つを含む、実施形態1から14いずれか1つに記載の方法。
【0098】
実施形態16
前記塩浴が、KNOおよびNaNOの少なくとも一方を含む、実施形態1から15いずれか1つに記載の方法。
【0099】
実施形態17
前記塩浴が、約45モル%から約55モル%のNaNOおよび約45モル%から約55モル%のKNOを含む、実施形態1から16いずれか1つに記載の方法。
【0100】
実施形態18
前記欠陥のあるイオン交換済み基板が、ガラス、ガラスセラミック、またはその組合せから作られている、実施形態1から17いずれか1つに記載の方法。
【0101】
実施形態19
前記欠陥のあるイオン交換済み基板が、
50モル%以上かつ80モル%以下のSiO
0モル%以上かつ5モル%以下のB
5モル%以上かつ30モル%以下のAl
2モル%以上かつ25モル%以下のLiO、
0モル%以上かつ15モル%以下のNaO、
0モル%以上かつ5モル%以下のMgO、
0モル%以上かつ5モル%以下のZnO、
0モル%以上かつ5モル%以下のSnO、および
0モル%以上かつ10モル%以下のP
を含む、実施形態1から18いずれか1つに記載の方法。
【符号の説明】
【0102】
105 欠陥のないイオン交換済み基板
108 欠陥のあるイオン交換済み基板
120 大きい一価金属陽イオン
130 小さい一価金属陽イオン
140 中位の大きさの一価金属陽イオン
242 不均質塩
246 均質塩
247 塩の結晶
440 欠陥
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5A
図5B
図6