(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】操作ユニット
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20220203BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20220203BHJP
H01H 13/02 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
G06F3/041 480
B60R16/02 630L
H01H13/02 B
G06F3/041 662
(21)【出願番号】P 2018548687
(86)(22)【出願日】2017-03-20
(86)【国際出願番号】 EP2017056555
(87)【国際公開番号】W WO2017162586
(87)【国際公開日】2017-09-28
【審査請求日】2020-03-19
(31)【優先権主張番号】102016204875.9
(32)【優先日】2016-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508066083
【氏名又は名称】ベーア-ヘラー サーモコントロール ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【氏名又は名称】天野 一規
(72)【発明者】
【氏名】パンクラッツ,ハリ
(72)【発明者】
【氏名】バンドロー,バスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ベシュニット,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】フォクト,フランク
【審査官】梅本 章子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0276878(US,A1)
【文献】特開2002-149312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/01
G06F 3/03 - 3/0489
B60R 16/02
H01H 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に用いられる操作ユニットであって、
操作パネルを含む操作要素(12)と、
車両のダッシュボード又は車両のセンターコンソールに取り付けられる筐体(10)と、
前記操作要素(12)の操作を検出するためのセンサ(19)と、
前記操作要素(12)の操作の検出時に前記操作要素(12)を機械的に励振するアクチュエータ(16)と、
補償錘(20)と、を含み、
前記操作要素(12)は前記筐体(10)に弾性設置され、
前記補償錘(20)は、前記操作要素(12)の操作の検出時に前記アクチュエータ(16)によって機械的に励振されるよう設計され、前記筐体(10)の内部に弾性設置され、
前記補償錘(20)は、前記アクチュエータ(16)が作動して前記操作要素(12)を機械的に励振する際の前記筐体(10)の移動を実質的に補償するように移動可能であ
り、
前記アクチュエータ(16)が、固定子(26)及び電機子(28)を含む電磁石として設計され、前記電機子(28)及び前記固定子(26)の一方が前記操作要素(12)に結合され、前記電機子(28)及び前記固定子(26)の他方が前記補償錘(20)に結合され、
前記固定子(26)又は前記電機子(28)が前記補償錘(20)の少なくとも一部を構成していることを特徴とする操作ユニット。
【請求項2】
前記補償錘(20)が、前記操作要素(12)を機械的に励振する前記アクチュエータ(16)とは独立した要素として設計されていることを特徴とする請求項1に記載の操作ユニット。
【請求項3】
前記補償錘(20)が、約180°の位相シフトで、すなわち前記操作要素(12)の作動移動と逆方向に移動可能であり、前記補償錘(20)の移動ストロークが、少なくとも前記補償錘(20)の質量に対する前記操作要素(12)の質量の関係を考慮して選択されることを特徴とする請求項1又は2に記載の操作ユニット。
【請求項4】
前記筐体(10)に弾性設置されている前記操作要素(12)と、前記筐体(10)に弾性設置されている前記補償錘(20)とが、各々固有振動数を有し、両固有振動数が等しい又は略等しいことを特徴とする請求項1、請求項2、又は請求項3に記載の操作ユニット。
【請求項5】
前記操作ユニットが表示操作ユニットとして設計されており、前記操作要素(12)が、操作機能以外に表示機能を有することを特徴とする請求項1から
4のいずれか一項に記載の操作ユニット。
【請求項6】
前記操作パネルが、タッチスクリーン、タッチパッド、又はディスプレイである請求項1から
5のいずれか一項に記載の操作ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特には車両部品である装置の操作ユニットに関する。特に、本発明は、操作ユニットの操作要素の機械的励振により発生する能動的触覚フィードバックにおける力補償を備えた操作ユニットであって、能動的触覚フィードバックによって発生する操作要素の振動が補償、もしくは少なくとも減衰され、操作ユニットの周囲(例えば装置のパネル)に影響を与えない、又はわずかな影響しか与えない操作ユニットに関する。
【0002】
車両の表示アセンブリはしばしば能動的触覚フィードバックを備えており、ユーザは、特に触覚を通じて、操作インプットの確認を受け取る。この観点から、フィードバックの作動において、例えば計器パネルや車両といった操作ユニットの周囲への許容不可能な動的力伝達が発生することは望ましくない。設置状況によっては、この力伝達が車両内で寄生ノイズ又は振動を発生しうるためである。機械的に励振される操作要素の質量が大きくなるほど、このような機械的デカップリングは重要になる。
【0003】
更に、触覚フィードバックは、車両内の設置部の弾性から高度に独立したものであるべきである。
【背景技術】
【0004】
能動的触覚フィードバックを備えた装置は、ばねシステムを介して装置筐体に弾性設置された操作フィールド(タッチスクリーン又はディスプレイ)を有する操作要素と、操作要素を撓ませるためのアクチュエータと、車両内に固定設置された筐体とから主に構成される。
図1において、このような装置構成内で働く力が図示されている。参照符号10は、質量m
2を有する筐体を示す。装置の周囲(例えば計器パネル)への筐体10の接続又は取り付けは、ばね減衰システムで表されている。アクチュエータは16で示されており、質量m
2を有する表示操作ユニット12を機械的に励振する。移動可能に設置された操作要素12は、ばね弾性的に筐体10に設置され、これはばね減衰システム14で表されている。センサ19は、操作要素12の作動を検出し(力検出機能)、アクチュエータ16を制御する評価制御ユニット21へ信号を送信する(力フィードバック機能)。
【0005】
触覚フィードバックを生成するために、ディスプレイは静止位置から特定の軌道x1(t)で撓む。本稿におけるディスプレイの加速a1(t)は、30m/s2超の値となり得て、すなわち0.5kg超の移動されるディスプレイの質量m1と、通常は少ない筐体の質量m2とによって、無視できない動的力F2(t)が車両内の筐体固定構造に加わり得る。
【0006】
例えば計器パネル上の筐体支持又は固定構造が剛性である場合(剛性ばねシステムc2、d2)、この時間的に高速変化する力が発生して許容できないノイズ又は振動を引き起こし得る。
【0007】
しかしながら、筐体が軟性固定されている場合(軟性ばねシステムc2、d2)には、装置を車両内に設置する際の許容誤差への適合が問題になる。また、システム内により高い自由度、すなわち筐体の移動x2(t)とそれによって増加した固有振動数が存在することによって、場合によっては、必要とされるアクチェータの力発生FAkt(t)の調整が不可能になるおそれがある。
【0008】
タッチパッド向けの触覚フィードバックを備えたラップトップが、米国特許出願第2004/0075676号から周知である。ここでは、ラップトップの筐体に弾性的に支持されているタッチパッドが圧電アクチュエータによって機械的に励振される。圧電アクチュエータは、圧電アクチュエータが駆動され膨張することにより、タッチパッドの移動とは反対方向に移動するカウンターウェイトを有する。しかしながら、このアプローチによって、ラップトップ筐体内でパルス補償と動的力の補償とを実現することは容易ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許出願第2004/0075676号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、寄生ノイズと振動とがそれぞれ改善された、触覚フィードバックを備えた操作ユニットの概念を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するために、本発明によれば、例えば車両部品である装置の操作ユニット、具体的にはマンマシンインターフェース(MMI又はHMI)、が提供され、操作ユニットは例えばタッチスクリーン、タッチパッド、又はディスプレイである操作パネルを有する操作要素を含み、装置内、特に車両のダッシュボード内又は車両のセンターコンソール内、に取り付けられる筐体と、前記操作要素の作動を検出するためのセンサと、前記操作要素の操作の検出時に発生する前記操作要素の機械的励振のためのアクチュエータと、補償錘と、を含み、操作要素は前記筐体内に弾性設置され、前記補償錘は、前記操作要素の操作の検出時に前記又は一のアクチュエータによって機械的に励振されるよう設計され、前記筐体の内部及び/又は上部に弾性設置され、及び/又は前記操作要素に弾性設置され、前記補償錘は、前記アクチュエータが作動して前記操作要素を機械的に励振する際の前記筐体の移動を実質的に補償するように移動可能である、もしくは、換言すれば、前記補償錘は、アクチュエータの作動時に発生する前記操作要素の移動によって筐体に加わる力を実質的に補償及び/又は防止及び/又は減衰させるよう、操作要素を励振させるアクチュエータ又は補償錘に割り当てられたアクチュエータによって特に能動的に移動可能である。
【0012】
したがって、本発明によれば、補償錘は筐体に弾性的に固定されている。補償錘は、操作要素を励振させるアクチュエータ、又は補償錘に割り当てられた別のアクチュエータによって移動される。
【0013】
補償錘は、操作要素を機械的に励振するアクチュエータの一部として、例えばタイロッド又はプランジャーコイル電磁石アクチュエータの固定子に一体化された構成要素として、設計されるのが好適である。このような電磁石アクチュエータとして設計されるほかに、圧電アクチュエータとして設計されてもよい。しかしながら、補償錘はアクチュエータとは独立した要素として設けられていてもよい。いずれの場合にも、補償錘は筐体に弾性的に支持されており、それによって筐体に対して弾性的に支えられる。
【0014】
特に、補償錘が、約180°の位相シフトで、すなわち操作要素の作動移動と逆方向に移動可能であり、補償錘の移動ストロークが、少なくとも補償錘の質量に対する操作要素の質量の関係を考慮して選択されると有利である。例えば、補償錘の質量が操作要素の半分である場合、補償錘の移動ストロークは操作要素の移動ストロークの2倍になる。実用上、操作要素は0.1mm又は0.数mm撓められる。操作要素の質量が0.5kgである場合、本発明においては、操作ユニットから外部へ加わる力を補償するために、例えば質量50gの補償錘を使用し、1mm又は数mmの移動ストロークを採用すればよい。
【0015】
更に、力補償を可能な限り大きくするためには、操作要素と筐体との弾性結合のばね-質量減衰システムの固有振動数と、補償錘と筐体又は操作要素との弾性結合のばね-質量減衰システムの固有振動数とが、等しい又は略等しいと有利である。本発明の枠組みの中では、本稿で用いられる「略等しい」とは、固有振動数からのずれが50%、特には40%、好ましくは30%、最も好ましくは20%又は10%であることを表すものとして理解される。
【0016】
本発明の操作ユニットは、表示操作ユニットとして設計されてよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、周辺に動的力を発生させることなく、質量を有する表面に触覚フィードバックを生成すること、及び、操作装置において、装置固定構造の弾性とは独立した触覚フィードバックを生成することが可能になる。
【0018】
以下、図面を参照し、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】従来技術の能動的触覚フィードバックを備えた操作ユニット内で発生する力の模式図である。
【
図2】本発明の方法により、補償質量として補償錘を用いた際に発生する力の模式図である。
【
図3】操作ユニットにおける、無反力触覚フィードバックの設計の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明によれば、筐体10に加わる力を平衡させるために、アクチュエータ16と筐体10との間に、弾性支持された(ばね-質量減衰システム22参照)移動可能なカウンターマス20を使用することが提案される。操作要素12の作動は、作動センサ19によって検出される。この際、作動センサ19から信号を受信しアクチュエータ16に制御信号を送信する評価制御ユニット21を経由して、アクチュエータ16が制御される。
【0021】
追加のばね-質量減衰システム22及びc3、d3、m3それぞれに対応する設計の場合には、車両に加わる力F2(t)を除去できる。(引力によって発生する静的力はノイズや振動の発生の原因とはならない。)
【0022】
予めランダムに決定されたディスプレイの撓みx
1(t)に関し、装置の筐体の撓みx
2(t)/motionならびに装置固定構造に加わる力F
2(t)は、以下の条件で除去できる。
【数1】
ここから、カウンターマス20の撓みが求められる。
【数2】
【0023】
これらの条件下では、装置固定構造18の弾性も、触覚フィードバックには影響しない。通常、カウンターマス20及びm3はそれぞれ、設置スペースに関連する要請によって制限され、ディスプレイの質量m1よりも小さい。理想的には、アクチュエータ16の一部として実現されるとよい。
【0024】
図3において、無反力触覚フィードバックを備えた装置が模式的に図示されている。
【0025】
図示の例において、アクチュエータ16はタイロッド電磁石として設計され、筐体10に弾性支持されアクチュエータコイルを有する積層構造の固定子(固定子26)と、操作要素12に強固に結合された電機子コア(電機子28)とを含む。固定子26は移動可能なカウンターマス20を形成する、又は含む。30で示される空隙をタイロッド電磁石に設ける際には、ディスプレイ10とカウンターマス20の互いに対する最大撓みを検討する必要がある。固定子26は筐体10上で弾性的に支持されている(ばね-質量減衰システム22)が、別法として、操作要素12に弾性的に結合されてもよい。操作要素誘導手段は32として模式的に示されている。筐体10は、車両24(例えば車両の計器パネル)に固定されている。
【0026】
車両用操作ユニットを例に本発明を説明してきたが、上述のとおり本発明は、あらゆる種類の装置又はシステムの操作ユニットにも一般的に適用可能である。触覚フィードバックを備えた操作面を複数有する装置では、各操作面を、一以上の他の操作面から独立して、本発明の方法により機械的に励振可能である。このように、操作面のいずれかの機械的励振によって引き起こされた装置の外向きの力と移動を補償可能とするために、各操作面は専用のバランスマスを含む。
【符号の説明】
【0027】
10:筐体
12:操作要素
14:操作要素と筐体との間の弾性結合のばね減衰システム
16:アクチュエータ
18:筐体と車両との間の(弾性)結合のばね減衰システム
19:作動センサ
20:カウンターウェイト
21:評価制御部
22:カウンターウェイトと筐体及び/又は操作要素との間の弾性結合のばね減衰システム
24:車両又は車両の操作パネル
26:アクチュエータとして設計されたタイロッド電磁石の固定子
28:タイロッド電磁石の電機子
30:タイロッド電磁石の空隙
32:触覚フィードバック時の移動のための操作パネルの誘導手段
m1:操作パネルの質量
x1(t):操作パネルの撓み
FAkt(t):アクチュエータの力発生
F1(t):操作パネルの励振時に筐体10に加わる操作パネルの力(F1(t)=FAkt-m1×a1)
c1:操作パネルの筐体への弾性結合のばね定数
d1:操作パネルの筐体への弾性結合の減衰
m2:筐体の質量
x2(t):機械的に励振された操作パネルによって発生した力による筐体の撓み
F2(t):筐体固定構造に加わる力
m3:カウンターウェイトの質量
x3(t):カウンターウェイトの撓み
F3:カウンターウェイトから筐体に加わる力
c3:カウンターウェイトの筐体への弾性結合のばね定数
d3:カウンターウェイトの筐体への弾性結合の減衰