(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】ポリマーコーティングされた金属帯の製造方法および該方法により製造されたポリマーコーティングされた金属帯
(51)【国際特許分類】
B29C 63/02 20060101AFI20220111BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20220111BHJP
B32B 15/085 20060101ALI20220111BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20220111BHJP
C23C 26/00 20060101ALI20220111BHJP
C23C 28/00 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
B29C63/02
B32B15/08 A
B32B15/085 Z
B65D65/40 D
C23C26/00 A
C23C28/00 C
(21)【出願番号】P 2018552036
(86)(22)【出願日】2017-03-21
(86)【国際出願番号】 EP2017056618
(87)【国際公開番号】W WO2017174345
(87)【国際公開日】2017-10-12
【審査請求日】2020-03-23
(32)【優先日】2016-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500252006
【氏名又は名称】タタ、スティール、アイモイデン、ベスローテン、フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】TATA STEEL IJMUIDEN BV
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、ポール、ペニング
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル、ロイ、オーステルマン
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-332527(JP,A)
【文献】特表平02-501644(JP,A)
【文献】特開2000-043190(JP,A)
【文献】特開2001-121647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 63/00-63/48
B29C 65/00-65/82
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティングラインにおいてラミネートを製造する方法であって、
金属帯を準備する工程、
前記金属帯を、少なくとも100℃以上の温度まで予熱する工程、
前記金属帯の一方の主表面に第一の熱可塑性ポリマーコーティング層を接着し、前記金属帯の他方の主表面に第二の熱可塑性ポリマーコーティング層を接着することにより、ラミネートを製造する工程、
少なくとも前記第二のポリマーコーティング層におけるポリマーの融点以上、かつ少なくとも220℃以上まで、加熱後処理工程における非酸化性ガス雰囲気において、前記ラミネートを加熱する工程、
前記ラミネートを、50℃以下の温度へ、急速冷却またはクエンチする工程、
を含み、
前記第一の熱可塑性ポリマーコーティング層は、200℃以下の融点のポリマーを含むか、または前記ポリマーから成る、方法。
【請求項2】
前記第一のポリマーコーティング層は、単数もしくは複数のポリオレフィン層を含むか該ポリオレフィン層から成り、または前記第一および第二のポリマーコーティング層は、単数もしくは複数のポリオレフィン層を含むか該ポリオレフィン層から成る、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第一のポリマーコーティング層は、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはエチレンとプロピレンとのコポリマー、またはポリエチレンとポリプロピレンとのブレンドを含むかそれらから成り、および/または、前記第二のポリマーコーティング層は、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはエチレンとプロピレンとのコポリマー、またはポリエチレンとポリプロピレンとのブレンドを含むかそれらから成る、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第二のポリマーコーティング層は、200℃超の融点を有する熱可塑性ポリマーを含むかそれから成る、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記第二のポリマーコーティング層は、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(トリメチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンナフタレート)およびポリ(ブチレンナフタレート)などの芳香族ポリエステル;イソフタレートを含む酸修飾ポリ(エチレンテレフタレート)コポリエステル;シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオールまたはイソソルビドを含むグリコール修飾ポリ(エチレンテレフタレート)コポリエステル;ならびに上記リストのホモまたはコポリマーのうちの2つ以上を含むブレンドを含むか、またはそれらから成る、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第二のポリマーコーティング層は、ポリカプロラクタン(ポリアミド-6)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)(ポリアミド-6,6)、ポリ(テトラメチレンアジパミド)(ポリアミド-4,6)、ポリ(ヘキサメチレンドデカノアミド)(ポリアミド-6,12)、ポリ(m-キシレンアジパミド)(MXD6)およびそれらのブレンドなどのポリアミドを含むか、それらから成る、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記第二のポリマーコーティング層は、ポリ乳酸またはポリラクチド(PLA);ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシ吉草酸塩およびポリ(ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシ吉草酸塩(PCL)などのポリヒドロキシアルカノエート(PHA)を含むかそれらから成る、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
a.前記ラミネートは、前記第一および第二のポリマーコーティング層フィルムを、ラミネートロールにより前記金属帯上にプレスし、前記ラミネートロール間のニップ中で前記ラミネートに印圧することにより製造されるか、または
b.前記ラミネートは、前記第一および第二のポリマーコーティング層を前記金属帯上へ押し出し、所望によりその後、前記ラミネートロール間のニップ中において、前記押出されたポリマーコーティング層へ印圧することにより製造されるか、または
c.前記ラミネートの一方の側は、前記工程aの方法により製造され、前記ラミネートの他方の側は、前記工程bの方法により製造される、
請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記非酸化性ガス雰囲気は、窒素などの不活性ガスから成り、少なくとも1体積%(10000ppm)の酸素を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記金属帯は、ブリキ、ブリキ原板、ECCS(TFS)または、ポリマーコーティングを適用する前にCr-CrOxコーティング層を施した鋼基材などの、それによりパッケージングを製造するための鋼帯である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ラミネートを、延伸操作へ供することにより更に加工し、前記延伸操作は、
a.材料を調質圧延機へ通過させ、0~3%の厚さ低減を適用すること、
b.前記材料をストレッチャーレベラーへ通過させること、
により達成される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
鋼帯の一方の主表面上に第一の熱可塑性ポリマーコーティングを備え、前記鋼帯の他方の主表面上に第二の熱可塑性ポリマーコーティングを備えるラミネートであって、前記第一の熱可塑性ポリマーコーティング層はポリオレフィンを含むかそれから成り、前記第二のポリマーコーティング層は、芳香族ポリエステルを含むかそれから成り、前記ポリエステルの結晶度は最大20質量%であり、
前記ポリオレフィンコーティング層の多孔度は1mA以下であ
る、ラミネート。
【請求項13】
前記ラミネートは、降伏点伸びが無い、請求項12に記載のラミネート。
【請求項14】
食品、ペットフードまたは飲料缶などの缶または容器を製造するための、請求項12または13に記載のラミネートの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーコーティングされた金属帯、および該方法により製造されたポリマーコーティングされた金属帯に関する。
【背景技術】
【0002】
包装産業において、ポリマーコーティングされた基材の使用は、缶の製造においてますます一般的になってきている。ポリマーコーティングされた基材は、溶融ポリマーフィルムを金属基材上に直接押出するか、あるいは一体化されたまたは別個のラミネート加工工程により、金属基材上に固体フィルムとして、その後積層される熱可塑性ポリマーフィルムを作製することによって製造することができる。
【0003】
ラミネート加工は、通常、2つ以上のロールにより形成されるラミネーションニップへポリマーフィルムおよび基材を導入して、コーティングを金属帯上にプレスすることにより行われる。あるいは、押出コーティングまたはフィルムキャスティングとラミネート加工との組合せなどの処理を使用することもできる。これらのプロセスにおいて、しばしば、このコーティングを適用した後に、熱可塑性ポリマーコーティングへ加熱後処理または焼鈍処理(本明細書では、これらを併せて加熱後処理と呼ぶ)を適用する必要がある。そのような加熱後処理を、完全に熱可塑性コーティングを溶融するために、最も高い溶融ポリマーの融点より高い温度で行うことが好ましい。溶融を完了することにより、ポリマーおよび金属基材間の良好な接着性が達成され、成形性や魅力的な外観など、ポリマー-金属ラミネートの他の好ましい特性を得ることができる。しかしながら、熱処理の間、コーティング材料の熱分解が生じることがあり、これは、バリア性、接着性、成形性および外観の損失などの、コーティング特性の望ましくない損失につながる。本明細書において、一方または両方の主表面上にポリマーコーティングが施された金属帯は、ラミネートと呼ばれる。
【0004】
欧州特許出願第0312302A1号公報は、金属帯を、一方の面は熱可塑性ポリマーコーティングにより被覆し、他方の面は熱可塑性ポリオレフィンコーティングにより被覆する、方法を開示している。高い頻度で金属コーティングに用いられる、周知の熱可塑性ポリマーコーティング材料は、約260℃の融点を有するポリ(エチレンテレフタレート)である。この種類のコーティングの加熱後処理は、典型的には、270~300℃の範囲の温度を含む。一方、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどのポリオレフィンの熱安定性は、短時間の曝露であっても、最大約250℃に限られる。したがって、ポリエステルコーティングにより必要とされる加熱後処理温度は、ポリオレフィンコーティングの過度の分解につながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、加熱後処理を含み、ポリマーコーティングの熱分解の程度を最小限にしながら、最終製品の良好な接着性、成形性および外観を達成することができる、両側が熱可塑性ポリマーコーティングにより被覆されている金属帯の製造方法を提供することである。
【0007】
また、本発明の目的は、加熱後処理を含み、ポリマーコーティングの熱分解の程度を最小限にしながら、最終製品の良好な接着性、成形性および外観を達成することができ、両側のコーティング面は実質的に異なる融点を有する熱可塑性ポリマーコーティングにより被覆されている金属帯の製造方法を提供することである。
【0008】
これらの目的の一つ以上は、以下の工程、
金属帯を準備する工程、
少なくとも100℃以上の温度まで、前記金属帯を予熱する工程、
第一の熱可塑性ポリマーコーティング層を前記金属帯の一方の主表面へ接着し、第二の熱可塑性ポリマーコーティング層を前記金属帯の他方の主表面へ接着することによりラミネートを製造する工程であって、前記第一の熱可塑性ポリマーコーティング層は、200℃未満の融点を有するポリマーを含むかまたは該ポリマーから成る、工程、
加熱後工程において非酸化性ガス雰囲気中の前記ラミネートを、少なくとも前記第二のポリマーコーティング層中におけるポリマーの融点以上であり、かつ220℃以上まで加熱する工程、
50℃以下の温度まで、前記ラミネートを急速冷却またはクエンチする工程、
を含む、コーティングラインにおけるラミネートの製造方法により達成される。
【0009】
第一および第二のポリマーコーティング層に含まれる、(単数または複数の)ポリマーに関して、用語「非酸化性」が用いられることに留意すべきである。発明者らは、加熱後処理が行われる雰囲気が酸素を殆ど含まないか、全く含んでいない場合に、ラミネート加工後の加熱後処理の間に生じ得るコーティング材料の熱分解を防ぐことができることを見出した。第一のコーティング層が低融点のポリマーを含むかまたは該ポリマーから成り、第二のコーティング層が比較的高い融点のポリマーを含むかまたは該ポリマーから成る場合には、熱分解の危険性がある。良好な接着性、成形性および外観などの所望のラミネート特性を達成するために、第一のコーティング層のみならず、比較的高い融点を有する第二のコーティング層が、加熱後処理において完全に溶融していることが必要である。溶融ならびに急速冷却またはクエンチが完了した後、第二のコーティング層の結晶化度は、好ましくは最大20質量%、好ましくは最大15質量%、より好ましくは最大10質量%である。本発明による方法によれば、第二のコーティング層における低い結晶性を得ながら、熱分解の危険性を回避することができる。
【0010】
加熱後処理後のラミネートの急速な冷却は、少なくとも部分的に、溶融ポリマーの結晶化を防ぐことを意図している。少なくとも部分的なアモルファスポリマー層は、基材への改良された接着性を示す。急速な冷却は、加熱後処理後にラミネートを冷却装置へ導入することにより達成することができ、該冷却装置は水浴であってもよい。この方法により、例えば、アモルファス構造がポリエステルにおいて形成されるか、または最小結晶構造がポリオレフィン中に形成される。クエンチ中の冷却速度は、少なくとも100℃/秒である。
【0011】
本発明の実施態様において、前記第一のポリマーコーティング層は、(単数または複数の)ポリオレフィン層を含むかもしくは該ポリオレフィン層から成るか、または前記第一および第二のポリマーコーティング層は、(単数または複数の)ポリオレフィン層を含むかもしくは該ポリオレフィン層から成る。ポリオレフィンは、比較的低い融点を有する。さらに、それらは、金属帯の両面がポリオレフィンで被覆されている場合、熱分解に比較的影響を受けやすいため、この危険性が生じ得る。ポリオレフィンは、通常、高い分子量を有し、結果として溶融状態において比較的緩慢に流動する。したがって、ポリオレフィンの加熱後は、それぞれの融点よりも相対的に高くなければならず、少なくとも220℃以上の加熱後温度が必要となり得る。これらの比較的高い加熱後温度で、ポリオレフィンの流動挙動は非常に加速され、非酸化性雰囲気は熱分解を防ぐ。熱分解は、ポリオレフィンの分子量の低減や多孔化につながり、結果として滅菌耐性に劣ることとなる。熱分解を防ぐことは、したがって、缶製造材料としての良好な性能を得るために極めて重要である。
【0012】
ポリオレフィン層は、カルボキシル基もしくは無水物基を含む酸もしくは無水官能化ポリオレフィン、またはカルボキシル基もしくは無水物基を含むオレフィンコポリマーなどの、接着用樹脂を含む少なくとも一つの接着層を含むことに留意すべきである。接着用樹脂を含む層は、ラミネート層中で金属基材と接触している。接着層を、別々に適用してもよく、または、例えば、予め共押出などにより得られているポリマーコーティング系の一部として適用してもよい。
【0013】
本発明の一実施形態において、第一のポリマーコーティング層は、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはエチレンとプロピレンとのコポリマー、またはポリエチレンとポリプロピレンとのブレンドを含むかそれらから成り、および/または、第二のポリマーコーティング層は、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはエチレンとプロピレンとのコポリマー、またはポリエチレンとポリプロピレンのブレンドを含むかそれらから成る。これらのポリオレフィンの流動挙動は、熱分解のリスク無しで、本発明による方法において許容される加熱後温度により、大いに刺激される。再び、接着用樹脂を含む層が存在し得る。本発明のこの特定の実施形態において、少なくとも220℃以上の加熱後温度は、第二のポリマーコーティング層の結晶化を低減するためというよりはむしろ、流動挙動を刺激するために所望される。従来の雰囲気において加熱後処理が行われる場合、高温によって、第一および第二のコーティング層の両方に深刻な熱分解がもたらされる。したがって、これは、本発明の第二の利点である。
【0014】
好ましい実施形態において、第二のポリマーコーティング層は、200℃超の融点を有する熱可塑性ポリマーを含むかそれから成る。これらのコーティング層の例は、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(トリメチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンナフタレート)およびポリ(ブチレンナフタレート)などの芳香族ポリエステル;イソフタレートを含む酸修飾ポリ(エチレンテレフタレート);シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオールまたはイソソルビドを含むグリコール修飾ポリ(エチレンテレフタレート)コポリエステル;および上記リストのホモまたはコポリマーのうちの2つ以上を含むブレンドを含むかそれらから成る。200℃超の融点を有するコーティング層の更なる例は、ポリカプロラクタン(ポリアミド-6)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)(ポリアミド-6,6)、ポリ(テトラメチレンアジパミド)(ポリアミド-4,6)、ポリ(ヘキサメチレンドデカノアミド)(ポリアミド-6,12)、ポリ(m-キシレンアジパミド)(MXD6)およびそれらのブレンドを含むかそれらから成る。
【0015】
金属帯の、一方側の主な面上のポリマー層の融点と、他方側の主な面上のポリマー層の融点との差は、ここでは顕著に大きく、本発明による方法により、第一のポリマーコーティング層の熱分解無しで、それらの融点よりも高い温度に第二のポリマーコーティング層を加熱することが可能になるが、またそれと同時に、第二のポリマーコーティング層へのいかなるリスクも低減することができる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の実施形態において、ポリマーコーティング層は、以下のように適用される。
a.ラミネートは、第一および第二のポリマーコーティング層フィルムを、ラミネートロールにより金属帯上にプレスし、ラミネートロール間のニップ中でラミネートへ印圧することにより製造されるか、または
b.ラミネートは、第一および第二のポリマーコーティング層を金属帯上へ押し出し、所望によりその後、ラミネートロール間のニップ中において、押出されたポリマーコーティング層へ印圧することにより製造されるか、または
c.ラミネートの一方の側は、工程aの方法により製造され、ラミネートの他方の側は、工程bの方法により製造される。
【0017】
本発明の実施形態において、非酸化性ガス雰囲気は、最大1体積%の酸素を含む、窒素などの不活性ガスから成る。このレベルで、熱分解の程度は、既に大幅に低減されている。酸素の含有量は、酸素とポリマーとの間の相互反応を防ぐために低いことが好ましい。したがって、好ましくは不活性ガス中の酸素含有量は0.5体積%であり、より好ましくは0.25体積%であり、更により好ましくは0.1体積%(1000ppm)である。非酸化性ガス雰囲気の維持には、設備と多くの適切なメンテナンスが必要である。酸素含有量が低い程、費用は高くなる。これらのコストと得られるラミネートの品質の間のバランスを取らなければならない。
【0018】
本発明の実施形態において、金属帯は、パッケージング(例えば、缶、容器類)を製造するための鋼帯であり、例えば、ブリキ板、スズ原板、ECCS(TFS)または、ポリマーコーティングの適用前に、Cr-CrOxコーティング層を施された鋼基材などである。本発明による方法はまた、家具、壁パネルなどの、パッケージング用途ではないラミネートを製造するためにも使用することができる。
【0019】
本発明の別の実施形態において、第二のポリマーコーティング層は、ポリ乳酸またはポリラクチド(PLA)、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシ吉草酸塩、およびポリ(ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシ吉草酸塩)、ポリカプロラクタン(PCL)などのポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、などの脂肪族熱可塑性ポリエステルを含むか、それらから成る。これらのポリマーは、低い融点を有し、また熱分解の影響を受けやすい。非酸化性雰囲気は、この熱分解に対して保護を提供する。
【0020】
高い加熱後温度は、特に鋼基材において、金属基材の時効を生じさせ得る。この時効プロセスは、機械特性を変化させ、温度が高い程これは早く生じる。220℃以上の温度は、低炭素鋼または極低炭素鋼などの、マトリックス中に遊離炭素および/または窒素を含む鋼グレードにおいて、時効を生じさせやすい。これらの時効基材をパッケージング用途へ形成する際に、リューダース線が生じ得る。リューダース線は、引き延ばされた表面の模様または陥没であり、しばしば、積載軸に対して約45°の角度で、試料の長手方向に沿って形成しているのを視認することができる。局所的なプラスチックの変形により、不連続(不均質)降伏がもたらされる。これらのリューダース線は、審美的に好ましくなく、最終製品において避けられるべきである。本発明の実施形態において、ラミネート(すなわち、ポリマー層による被覆後)は、更にラミネートを延伸操作へ供することにより処理され、該延伸操作は以下により達成される。
a.材料を調質圧延機へ通過させ、0~3%、好ましくは少なくとも0.2%の厚さ低減を適用すること、
b.前記材料をストレッチャーレベラーへ通過させること。
【発明の効果】
【0021】
本発明者らは、驚くべきことに、ポリマーコーティングを基材へ適用する前に、基材が調質圧延またはストレッチャーレベラー処理される従来のプロセスと対照的に、基材が既にポリマーコーティングを適用された後であっても、基材を調質圧延またはストレッチャーレベラー処理することができる。本発明のプロセスは、ラミネートの加熱後処理の結果として不連続降伏現象の危険性が再発または生じる恐れを排除する。延伸操作は、ポリマーコーティング自体には有害な効果も、基材へのその接着性への有害な効果も有していない。ひびも損傷も生じない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1はPETおよびPPフィルムの鋼帯へのラミネート方法を示す。
【
図2】加熱処理後処理の間に用いられるガス雰囲気の、PPコーティングの分子量および分子量分布への影響を示す。
【
図3】加熱処理後処理の間に用いられるガス雰囲気の、PPコーティングの分子量および分子量分布への影響を示す。
【
図4】Steel for packaging applications-Produxt range&technical specificationsカタログによるパッケージング鋼を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
鋼帯は、スズ原板、ブリキ板、ECCSまたはTFSであってよく、スズ原板の、基本的な成分はスズおよびECCSであり、コーティングなしの鋼板または鋼帯である。鋼帯はそのまま使用するか、または金属もしくは有機コーティングで被覆して使用することができる。金属帯の表面を活性化するために、ラミネーションの直前に表面処理を行う必要がある。ブリキ板は、電気的にスズ層が両面に被覆された軟鋼の薄い鋼板または鋼帯である。クロム被覆鋼は、クロムの薄い層で電気的に被覆された鋼板または鋼帯である。当初TFS(ティンフリースチール)と呼ばれていたが、現在は、頭文字でECCS(電界クロムめっき鋼板)として知られている。ECCSへのコーティングのクロム含有量は、好ましくは50~150mg/m2であり、より好ましくは70~110mg/m2である。有機被膜は、一般に、ECCSへの良好な接着性を有し、したがって、特にめっきした缶および標準的な食品缶の底のために使用される。鋼基材はまた、国際公開第2012/045791号パンフレット(FeSn)、国際公開第2014/079909号パンフレット(Cr-CrOx-層を有するブリキ板)、または国際公開第2014/079910号パンフレット(Cr-CrOx-層を有するスズ原板)に従って被覆された基材も含み得る。Cr-CrOx-層のクロム含有量は、好ましくは、少なくとも50mg/m2、好ましくは少なくとも100mg/m2、好ましくは最大200mg/m2である。
【0024】
好ましくは、鋼基材は炭素鋼、好ましくは低炭素鋼、極低炭素鋼、超低炭素鋼、またはHSLA-鋼である。鋼基材の厚さは、通常、0.10~0.49nmである。これらの合金ではない(ULC、LCおよびELC)鋼、またはマイクロ合金化(HSLA)鋼は、比較的安価な基材であり、良好な強度および成形性を提供する。鋼は、鋳造、熱間圧延および冷間圧延などの一般的に知られている方法により製造される。低炭素鋼は典型的には0.05~0.15質量%のCを含み、極低炭素鋼は典型的には0.02~0.05質量%のCを含む。超低炭素鋼は、典型的には0.01質量%未満のCを含む。合金ではない鋼として考えられるのはどの程度まで特定の元素が存在していてもよいかについて記載している英国特許第10020-2000号明細書に従って、炭素に加えて他の元素は存在していてもよい。
【0025】
本発明の第二の態様によると、本発明により製造されたラミネート、および本発明によるラミネートから製造された製品を含む。これらの製品は、例えば、缶もしくは容器などのパッケージング製品、またはパネルなどの非パッケージング製品であってもよい。これらの製品は、これらが比較的高い温度で予熱されており、従来のラミネートと比較して、多孔性(低い)および滅菌耐性(高い)の点から、良好な性能および改善された被覆特性を有する点において、従来品とは異なる。これは、本発明による方法において熱分解が存在しないことによる直接の結果である。このような従来品と発明品との違いは、実施例および特に
図2および3に明確に実証されている。
【0026】
一実施形態において、鋼帯の一方の主表面上に第一の熱可塑性ポリマーコーティングを備え、該鋼帯の他の主表面上に第二の熱可塑性ポリマーコーティングを備えるラミネートが提供され、前記第一の熱可塑性ポリマーコーティング層はポリオレフィンを含むかそれから成り、前記第二のポリマーコーティング層は、芳香族ポリエステルを含むかそれから成り、前記ポリエステルの結晶度は最大20質量%、好ましくは最大15質量%、より好ましくは最大10質量%であり、
前記ポリオレフィンコーティング層の多孔度は1mA以下であり、および/または
前記比率(Mw、加熱後処理後/Mw、加熱後処理後前)は、少なくとも0.9以上、好ましくは少なくとも0.93以上、より好ましくは少なくとも0.95以上である。
【0027】
本発明の方法により製造されたラミネートは、220℃超の温度で焼鈍されると多孔性が顕著になり熱分解の程度も大きくなり、これは、0.1程度に低い比率(Mw、加熱処理後/Mw、加熱処理前)を見れば明確に観察することができ、または、ポリエステルの高すぎる結晶性を示す(表4を参照)。
【実施例】
【0028】
ここで、本発明を以下の非限定的な実施例により更に説明する。
【0029】
以下の実施例において、ECCS帯を使用し、これは両側に金属クロムコーティング層および酸化クロム層が施されており、それぞれの側のコーティング中のクロムの総量は、約90mg/m2である。本発明は、国際公開第2014079910A1号パンプレットの方法により製造される金属帯についても、同様に良好に機能する。
【0030】
金属帯の一方の側は、ポリエステル(PET)フィルムで被覆されている。これは、市販されているPETフィルムであり、三菱ポリエステルフィルムGmbHから、Hostaphan(登録商標)RHSL20として販売されている。RHSL20は、高い結晶性および20μmの厚さを有する、二軸配向ポリエステルフィルムである。
【0031】
鋼帯の他の側は、三層ポリプロピレン(PP)フィルムで被覆されている。該フィルムは、フィードブロックおよびダイへの特定のポリマー組成物のそれぞれを供給する、三つの別個の押出機を使用する、キャスト膜法により得られる。押出された膜は、A/B/C層構造を有し、膜圧の比率はA:B:C=4:17:4であり、160m/分で成形して、25μmの最終全体厚さを得た。二つの異なるフィルム組成物を、現在の実施例では使用し、それぞれ、表1に示されるように、PP1およびPP2と記載した。
【0032】
【0033】
・樹脂1は、マレイン酸無水修飾PP樹脂であり、Toy-Tac M-100の商品名で、東洋紡株式会社から市販されている(MFI=7.0g/10分*)。
・樹脂2は、アイソタクチックPPホモポリマーであり、PPH7060の商品名で、Total Petrochemicalsから市販されている(MFI=12g/10分*)。
・添加剤1は、抗酸化剤、A.Schulman,Incから市販されている製品名T8823AQを含む、マスターバッチである(MFI=5.0g/10分*)。
・添加剤2は、抗ブロック添加剤、A.Schulman,Incから市販されている製品名ABPP10を含む、マスターバッチである(MFI=5.0g/10分*)。
*MFI=230℃/2.16kgでのISO1133による、メルトフローインデックス
【0034】
表1から分かるように、二つのフィルム間の主な違いは、PP2フィルムは、抗酸化剤を含む一方、PP1フィルムは含まないことである。PPフィルムは、A層に相当するフィルムの側が、ラミネート後に鋼表面に接触する方法で、鋼帯にラミネートされる。
【0035】
PETおよびPPフィルムは、
図1に図式的に示される方法により、鋼帯へラミネートされる。金属帯(1)を、第一の加熱装置(2)へ通過させ、該装置において、該金属帯の温度は、ラミネートに適した値であるT1まで上昇する。本実施例において、T1は、190℃になるように選択するが、この温度は、製造される製品により、広い範囲で変化し得る。PETフィルムコイル(3a)およびPPフィルムコイル(3b)を同時に解反し、予熱した金属帯とともに、一対のラミネートローラー(4a、4b)へ通過させる。ラミネートされた製品(5)を、第二の加熱装置(予熱6)へ通過させ、該装置は、ガス雰囲気(7)によりパージして、ガス雰囲気(7)を充填することができる。本実施例において、空気および窒素を、第二の加熱装置のためのガス雰囲気として使用した。予熱装置の後に、ラミネート製品を、冷水を充填したタンクなどのクエンチング装置(8、図示せず)により急速に冷却する。第一の加熱装置による金属帯の予熱方法は、特に限定されるものではないが、加熱されたロールへの該帯の通過、伝導加温、誘導加温、放射加温などを含んでいてもよい。第二の加熱装置におけるラミネート製品の予熱方法は、好ましくは、高温ガス雰囲気または誘導加温による加熱など、非接触法が好ましい。
【0036】
本発明を実証するために、表2に概説される様々な設定を用いて、実験を行った。全ての場合において、帯の一方をPETフィルムRHSL20によりラミネートし、一方で、帯の他方を、上記に概説したPP1またはPP2であるPPフィルムによりラミネートした。第二の加熱装置によるラミネートした製品の加熱後処理は、二つの異なる種類のガス雰囲気、空気および0.1体積%未満の酸素を含む窒素の下で、それぞれ行った。第二の加熱装置における加熱後処理の温度T2は、ポリエステルフィルムの融点よりも低い200℃、またはポリエステルフィルムの融点よりも高い280℃のいずれかから選択した。
【0037】
【0038】
仕上げ金属ポリマーラミネートを、以下に概説する方法により特徴付けた。いくつかの方法について、金属基質から遊離した独立被覆フィルムを分析する必要がある。独立被覆フィルムは、仕上げ金属ポリマーラミネートパネルを18%HCl濃度の塩酸に入れて、金属基材を溶解することにより得た。金属基材の溶解後、被覆フィルムを完全にすすいで乾燥させた。
【0039】
<ポリエステルコーティングの結晶化度>
金属ポリマーラミネートのための、接着性、成形性および外観などの、所望の製品特性を達成するために、ポリエステルコーティングは、基本的にアモルファスであることが重要であり、特に、ポリエステルコーティングは、10質量%未満の結晶化度値を有することが重要である。ポリエステルコーティングの結晶化度は、メトラートレドDSC821e機器を用いて示差走査熱量測定(DSC)を実施することにより決定することができる。独立ポリマーフィルムの一部である約4~10gを、40μLのアルミニウム製サンプルパンに入れることにより、DSCサンプルを作製する。DSCサーモグラムを、10℃/分の加熱速度で、-10℃から300℃へサンプルを加熱することにより記録する。この方法により得られる典型的なDSCスペクトルは、80℃~130℃の温度で、(発熱)再結晶ピークを示し、240~260℃の温度で、吸熱溶融ピークを示す。次に、ポリエステルフィルムの結晶度Xを、下式により計算する。
【0040】
【0041】
式中、ΔHrおよびΔHmは、それぞれ、再結晶化および溶融ピーク(即ち、それぞれ、再結晶化および溶融の加熱)下での、各領域に相当し、ΔHoは、完全結晶ポリマーの溶解熱である。PETについてのΔH0値=115J/gを、この計算において使用する(「Polumer Handbook」、J.Brandrup,E.H.Immergut and E.A.Grulke eds.,Wikkey Interscience,4th ed(1999)、セクションVI、表7を参照)。
【0042】
<PPコーティングのモル質量>
様々な処理条件後のPPコーティングのモル質量およびモル質量分散を決定するために、独立PPフィルムを、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による分析へ供した。SEC分析を、PL BV-400粘度計、屈折率検出器、およびPolymer Char IR5 赤外検出器を備えた、Polymer Laboratory社のPL-GPC220を用いて実施した。直鎖状ポリエチレン(PE)スタンダードを、系のキャリブレーションのために使用した。PEおよびPPのMark-Houwink定数を用いたPEからPPへの変換の後に、PPモル質量キャリブレーションを得た。SEC分析結果を、PPコーティングの数平均モル質量(Mn)および質量平均モル質量(Mw)の観点から取得し、kg/molで示す。
【0043】
<PPコーティングの多孔性>
金属-ポリマーラミネート中のPPコーティングの多孔度を、電気化学的多孔性試験により測定した。この試験のために、5mmのErichsenドームを、PPコーティングがドームの凸面側であるような方法で、金属-ポリマーラミネートへ適用する。サンプルをドームの凸面側が電解槽の内側になるように電解槽へ入れ、金属床をアノードとして結合する。電解槽は、20g/Lの無水硫酸ナトリウム、および0.25g/Lのスルホコハク酸ジオクチルナトリウム(C20H37NaO7S、CAS 577-11-7)を含む水溶液で充填され、次に、ステンレス鋼対電極(カソード)をサンプルの反対側の水溶液へ入れる。サンプルの露出した表面積は12.5cm2である。4秒間、6.3Vの直流を適用し、電流を記録する。電流が1mA未満である場合、サンプルは試験を通過する。
【0044】
<PPコーティングの滅菌耐性>
この試験のために、約1mmの曲げ半径を有する一連のビーズを、サンプルのPPコーティング側がビーズの凸面側に相当するように、金属ポリマーラミネートのサンプルへ適用する。サンプルを、密閉容器中の、1体積%の酢酸を含む水溶液中に入れ、その後、60分間、120℃で滅菌する。滅菌後、サンプルを冷却し、洗い流し、乾燥させ、サンプルのPP被覆側のビーズ状面積を、10倍の拡大鏡を用いて視覚的に検査する。腐食の程度は、表3に概説した滅菌後のサンプルにおける、ブリスターおよび/または腐食スポットの量およびサイズを特徴付ける評価系により表す。
【0045】
【0046】
ラミネーションプロセスの加熱後処理工程の間に、空気をガス媒体として使用する比較例1~4の結果を、表4に記載する。ラミネーションプロセスの加熱後処理工程の間に、窒素をガス媒体として使用した実施例1~4の結果を、表5に記載する。比較例1および3から分かるように、空気雰囲気でT2=200度で加熱後処理を行うことにより、約50kg/molのMnおよび約250kg/molのMwを有する十分に高いモル質量を有するPPコーティングが得られる。これらのPPコーティングの性能は、多孔度および滅菌耐性の観点から優れている。しかしながら、PETコーティングの結晶度は非常に高く、全ての場合において40質量%以上であり、一方、ポリマーコーティングされた最終製品の適切な接着性、成形性および外観を達成するためには、10質量%以下の結晶性値が必要である。したがって、これらのプロセス設定は、PET/PP-被覆された製品の受け入れられない全体製品品質につながる。
【0047】
予熱温度を、PETコーティングの融点よりも上、すなわち、比較例2および4におけるT2=280℃超へ上げることにより、PETコーティングは、完全に再溶融され、実質的に結晶度が明確に10質量%以下である、アモルファス化される。比較例2および4は、そのような加熱後処理工程を、空気中で行う場合、よくあることに、PPの強い熱分解が生じる。Mn値は5kg/mol以下、Mw値は26kg/mok以下までの、ポリマーの顕著な分子量減少がある。コーティングの多孔度の値は、数十または数百mAまで劇的に増加する。酢酸中の滅菌性能は、表面の40%以上が大きなブリスターで被覆されており、極めて不十分である。PPコーティングの顕著な分解は、PP膜レシピ(膜PP2、比較例4)における抗酸化剤の使用による注目に値する方法により、緩和する。
【0048】
本発明(実施例2および4)と一致する不活性ガス雰囲気下で、T2=280℃の高温加熱後処理を行った場合、PPコーティングの相当量の分子分解は生じなかった。これらの実施例において、PPコーティングの分子量は、Mn=50kg/mol以上、Mw=240kg/mol以上に相当し、すなわち、200℃の温度T2よりも非常に低い温度で(空気または窒素雰囲気中のいずれかにおいて)加熱した後のPPコーティングの分子量に相当する。これらの実施例におけるPPコーティングの性能は良好であり、多孔度の値はゼロであり、酢酸中で非常に良好な滅菌耐性を有する。高いT2温度のために、PETコーティングは完全に再溶融され、本質的に、明確に10質量%未満である結晶性値を有するアモルファスとなっている。
【0049】
加熱処理後処理の間に用いられるガス雰囲気の、PPコーティングの分子量および分子量分布への影響を、
図2および3へ示す。
【0050】
結論として、高温での加熱後処理の間に、不活性ガス雰囲気を適用することにより、(PPコーティングと組み合わせた、本質的にアモルファスPETコーティングを含む、有益なコーティング特性の組合せにつながり、これによって分子量は維持され、多孔度および滅菌耐性の観点からは、良好なコーティング特性を示す。不活性ガス雰囲気の使用により、非常に広範な、PET/PP二重コート製品の加熱後処理のための処理ウィンドウを提供し、PETまたはPPコーティングのいずれのコーティング形成も制限しない。
【0051】
【0052】
図2において、200℃および280℃で、空気中において加熱後処理した後のPPコーティングの分子量分布をそれぞれ示す。フィルムタイプPP2は、抗酸化剤を含む。
図3において、200℃および280℃でそれぞれ、0.1体積%未満の酸素を含む窒素雰囲気中で加熱後処理した後のPPコーティングの分子量分布を示す。フィルムタイプPP2は、抗酸化剤を含む。
図4(Tata Steel(www.tatasteeleurope.com)による「Steel for packaging applications-Produxt range&technical specifications」というカタログより引用)において、基準に従って様々な種類のパッケージング鋼が存在する。これらの鋼を全て本発明における金属帯として使用することができる。