(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】ヒータークーラー装置
(51)【国際特許分類】
A61M 1/16 20060101AFI20220111BHJP
A61M 1/36 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
A61M1/16 120
A61M1/36 175
(21)【出願番号】P 2018568318
(86)(22)【出願日】2017-06-29
(86)【国際出願番号】 GB2017051898
(87)【国際公開番号】W WO2018002622
(87)【国際公開日】2018-01-04
【審査請求日】2020-04-10
(32)【優先日】2016-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2017-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2017-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】517165302
【氏名又は名称】スペクトラム メディカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】ターナー、 スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】ガーバット、 ベンジャミン
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03064649(US,A)
【文献】国際公開第2016/026525(WO,A1)
【文献】特表2012-524626(JP,A)
【文献】特開平06-237993(JP,A)
【文献】特開平04-218166(JP,A)
【文献】実開平04-095043(JP,U)
【文献】特開2013-017899(JP,A)
【文献】特開2014-061438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/16
A61M 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
灌流システム熱交換器のためのヒータークーラー装置であって、ヒータークーラー装置は、ヒータークーラーデバイス及び抗菌流体を含み、
前記ヒータークーラー装置は、前記ヒータークーラーデバイスと中間流路との間に介在する中間熱交換器をさらに含み、前記ヒータークーラーデバイスは、前記中間熱交換器にヒータークーラー流体を供給するように設けられ、前記中間流路は、灌流システム熱交換器に供給される中間流体のために設けられ、前記中間熱交換器は、前記ヒータークーラー流体と前記中間流体との間の熱交換を可能にし、前記ヒータークーラー流体は、前記灌流システム熱交換器から流体的に隔離され、
前記ヒータークーラー流体及び中間流体は、前記抗菌流体によって構成されたヒータークーラー装置。
【請求項2】
前記灌流システム熱交換器は、人工肺の一部である請求項
1に記載のヒータークーラー装置。
【請求項3】
前記灌流システム熱交換器は、心筋保護液送達システムの一部である請求項
1に記載のヒータークーラー装置。
【請求項4】
前記灌流システム熱交換器は、流体ライン内の体外流体の温度を制御するために設けられた請求項
1に記載のヒータークーラー装置。
【請求項5】
前記抗菌流体は、殺菌性を有する請求項1から4のいずれか一項に記載のヒータークーラー装置。
【請求項6】
前記抗菌流体は、グリコールを含む請求項1から5のいずれか一項に記載のヒータークーラー装置。
【請求項7】
前記グリコールは、プロピレングリコール又はエチレングリコールを含む請求項6に記載のヒータークーラー装置。
【請求項8】
前記ヒータークーラー流体は抗菌流体であり、前記中間流体は水である請求項6又は7に記載のヒータークーラー装置。
【請求項9】
前記灌流システム熱交換器は、大気圧より低い圧力で作動することができるシステムの一部である請求項1から8のいずれか一項に記載のヒータークーラー装置。
【請求項10】
前記中間熱交換器及び/又は前記中間流路は、使い捨てである請求項1から9のいずれか一項に記載のヒータークーラー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔産業上の利用分野〕
本発明は、血液供給システムなどの体外流体で使用するための熱交換機構に関する。特に、本発明は、体外灌流システムの処理装置を通る流体の温度を制御するための方法及びシステムに関する。これは、体外人工肺における血液の温度を制御するために、又は心筋保護液ポンプにおける心筋保護液の温度を制御するために使用してもよい。
【背景技術】
【0002】
外科的処置の間、ヒータークーラーシステムは、患者に戻す前に、体外循環流体の温度を設定するために使用される。例えば、手術中に、患者の身体は、代謝活動を低下させるために、摂氏37度の正常体温よりも低い、おそらく15℃も低い人工低体温法によって冷やされることがある。逆に、隔離された四肢又は腹腔などの身体の他の部分は、37度を超える、又は37度に達しない温度に選択的に温められることがある。
【0003】
従来のヒータークーラーシステムは、患者に投与される流体の温度を制御するために、人工肺を通る、心筋保護液ユニット(“cardioplegic”は、「心筋保護」を意味する)を通る、又はスタンドアロンの熱交換器を通るなどの医療機器を通るヒータークーラー伝達媒体として温度制御された水を供給する1つ以上の水槽を含んでいる。例えば、人工肺は、後で患者に投与する温度が適切であるように、人工肺で酸素が供給された血液の温度を設定するために、ヒータークーラーシステムからの熱伝達媒体としての温度制御された水を受け入れるコネクタを有する熱交換機構を含んでいる。同様に、心筋保護液、隔離された四肢灌流、左心バイパス及び他の処置は、熱交換器を使用して血液温度を制御している。
【0004】
本発明は、外科処置中の温度管理を改良することに関する。
【発明の概要】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、体外流体処理装置の灌流システム熱交換器における熱伝達を制御する方法が提供され、体外流体処理装置は、患者に投与する体外患者流体を調整する装置である。この方法は、灌流システム熱交換器を提供し、灌流システム熱交換器は、流体熱伝達媒体のための第1の流路と、熱伝達媒体との熱エネルギーの交換を介して温度制御される体外患者流体のための第2の流路とを含むステップと、第1の流路を介して熱伝達媒体を提供し、熱伝達媒体は抗菌性を有する成分を含むステップとを含んでいる。
【0006】
抗菌流体、すなわち抗菌性を有する流体の供給は、体外流体の細菌汚染のリスクを低減し、ひいては臨床上の合併症のリスクを低減する。
【0007】
有利なことに、抗菌流体の提供は、手間のかかる手作業による滅菌処置の必要性を低減する。
【0008】
WO2006/116603A2は、カテーテル内の循環のための冷却又は加熱流体の供給源を提供することによって、患者又は患者の身体の領域の温度を調節する熱交換カテーテルを開示している。WO/2006116603A2では、カテーテルの代わりに、加熱流体は患者の体外で使用するように設計された加熱又は冷却パッド又はブランケットを通って循環してもよいことが示唆されている。
【0009】
WO2006/116603A2に記載されているようなシステムは、身体又は身体領域の温度を間接的に制御するために使用される。本発明は、体外患者流体との直接の熱交換において抗菌流体を使用することが、前に行われたことから異なっている。本明細書で後述するように、「体外患者流体」によって、患者に投与するため、特にヒト患者の脈管系に投与するための温度制御された流体を意味し、それは血液と混ざって器官に直接に接触するようになる。
【0010】
体外患者流体は、例えば、血液、生理的食塩水、又は(例えば、抗凝固又は心拍を制御するための)薬物のためのキャリア流体であってもよい。体外患者流体は患者への投与を意図しているので、その調製は厳格な安全手順に従う。体外患者流体の様々な特性は、狭い安全マージン内に調整される。調整されることがある特性の指示を提供するために、これらは、流量、圧力、酸性度(pH)、(例えば、血小板で希釈又は濃縮された)組成などを含むことがある。体外患者流体は無菌である必要があり、害を避けて物質間の複雑な相互作用を避けるためにその組成を厳密に制御されるが、それは、複雑な相互作用が意図しない結果を招くことがあるからである。狭い安全マージン内で制御される特性の1つは、温度であってもよい。
【0011】
他の臨床装置用の熱交換器は、体外流体処理装置とは区別されるが、それは、体外流体処理装置が歴史的に水の使用のみが認可されてきた点においてである。例えば、熱交換器を有する人工肺又は心筋保護液ユニットは、水の使用のみ認可されることになる。結果として、製造業者は、水のみを熱交換媒体とみなしている。
【0012】
本出願人は、抗菌成分の使用がいくつかの利益を有することを認識している。1つの利益は、それが、汚染のリスクを低減することである。さらなる利益は、熱伝達流体との熱交換を管理するために使用してもよい他の構成要素の滅菌要件が、より厳格でない滅菌要件であり得ることである。これにより、好ましい熱交換特性を有することがある構成要素を使用することが可能になる。
【0013】
したがって、本発明の利益は、必ずしもヒト又は動物の身体のそのような処置に関連するとは限らない。1つの関心事は、細菌汚染のリスクを低減することである。他の関心事は、灌流システム熱交換器の熱伝達媒体側の熱伝達特性を最適化することである。このことは、エネルギー管理において、特に緊急時にバックアップ電源(例えばバッテリ)に依存する装置又は動作モードにおいて利益を有する。これに関連して、灌流システムは、単一の手押し車に複数の構成要素を含んだ統合灌流システムの形態で提供されてもよい。手押し車は、入力インターフェース、血液及びガス処理装置、血液タンク、いくつかのポンプ、及びバッテリーバックアップシステムを運んでもよく、バッテリーバックアップシステムによって、システムは停電時に動作することが可能になり、治療を続行するか、又は制御されたシャットダウンを保証する。加熱/冷却動作は電力を消費し、省エネルギーは非常に重要である。
【0014】
これに関連して、体外流体処理装置の第1の流路における熱伝達媒体の使用が特に有益である。
【0015】
いくつかの実施形態では、灌流システム熱交換器は、人工肺の一部である。
【0016】
いくつかの実施形態では、灌流システム熱交換器は、心筋保護液送達システムの一部である。
【0017】
いくつかの実施形態では、灌流システム熱交換器は、流体ライン内の体外の患者流体の温度を制御するために提供される。
【0018】
灌流システム熱交換器は、チューブの特定のセクション内の流体の温度を制御するように構成することができる「独立型」熱交換器であってもよい。
【0019】
いくつかの実施形態では、この方法は、第1の流路が第2の流路から流体的に隔離されていることを保証するステップを含んでいる。
【0020】
患者に投与することが意図された体外流体のための処理装置に抗菌性を有する流体を通すことは、材料が破損した場合に熱伝達流体が体外患者流体に漏れる可能性が増加するというリスクを伴っている。
【0021】
第1の流路が第2の流路から流体的に隔離されていることを保証するステップは、例えば、構造的損傷が存在しないという再保証を提供するための目視検査を含んでもよい。
【0022】
第1及び第2の流路の流体隔離を保証するステップは、繰り返し実行されてもよい。
【0023】
第1及び第2の流路の流体隔離を保証するステップは、より堅牢な材料による流路を設けることによって実施することができる。例えば、典型的な人工呼吸器はプラスチック製であり、人工呼吸器のハウジング及び熱交換流路を含む構成要素は、同じ材料から成形されていることがある。典型的な人工呼吸器の使用の態様から離脱して、流体の隔離を保証するステップは、金属を含む、又は金属からなる材料から第1の流路及び/又は第2の流路を提供するステップを含んでもよい。金属は、鋼、特にステンレス鋼であってもよい。したがって、本発明は、金属(例えば、ステンレス鋼)熱交換流路を含む人工肺の形態で提供されてもよい。
【0024】
いくつかの実施形態では、熱伝達媒体はヒータークーラー流体である。
【0025】
熱伝達媒体は、ヒータークーラーデバイスによって供給されるヒータークーラー流体であってもよい。例示的なヒータークーラーデバイスを以下に説明する。
【0026】
いくつかの実施形態では、熱伝達媒体は殺菌性を有している。
【0027】
いくつかの実施形態では、熱伝達媒体熱伝達媒体はグリコール、特にエチレングリコール及び/又はプロピレングリコールを含んでいる。
【0028】
例えば、いくつかの実施形態では、本発明は、ヒータークーラーによって人工肺及び/又は心筋保護液ユニットの熱交換器に熱伝達媒体として直接に供給されるグリコールを使用することを提供する。
【0029】
いくつかの実施形態では、灌流システム熱交換器は、大気圧より低い圧力で作動することが可能なシステムの一部である。
【0030】
この方法は、大気圧より低い条件で灌流システム熱交換器を動作させることを含んでもよい。例えば、人工肺は、低圧酸素化を提供するために低大気圧で作動させることができる。このように人工肺を操作する理由は、後述する。
【0031】
本発明の第2の態様によれば、請求項12に記載の灌流システム熱交換器のためのヒータークーラー装置が提供される。ヒータークーラー装置は、ヒータークーラーデバイスと抗菌液とを含んでいる。抗菌流体は、熱伝達流体であってもよい。
【0032】
抗菌流体の供給は、体外流体の細菌汚染のリスクを低減し、したがって臨床上の合併症のリスクを低減する。
【0033】
有利なことに、抗菌流体の供給は、手間のかかる手作業による滅菌手順の必要性を低減する。
【0034】
「抗菌」とは、流体が細菌増殖を遅らせること、例えば流体が1つ以上の細菌、ウイルス又は真菌の増殖を遅らせることであることが理解されよう。
【0035】
「細菌増殖を遅らせる」とは、細菌の死滅(殺菌性)及び/又は細菌増殖の阻害又は完全な防止(静菌性)を指すことが理解されよう。
【0036】
したがって、ある実施形態では、抗菌流体は殺菌性である。ある実施形態では、抗菌流体は静菌性である。
【0037】
いくつかの実施形態では、ヒータークーラー流体は、抗菌流体によって構成されている。
【0038】
いくつかの実施形態では、ヒータークーラー装置は、ヒータークーラーデバイスと中間流路との間に中間熱交換器をさらに含み、ヒータークーラーデバイスは、中間熱交換器にヒータークーラー流体を供給するように設けられ、中間流路は、灌流システム熱交換器に中間流体を供給するように備えられ、中間熱交換器は、ヒータークーラー流体と中間流体との間の熱交換を可能にし、ヒータークーラー流体は、灌流システム熱交換器から流体的に隔離されている。
【0039】
いくつかの実施形態では、中間流体は、抗菌流体によって構成されている。
【0040】
いくつかの実施形態では、抗菌流体は、ヒータークーラー流体及び中間流体の両方として使用される。これは、体外流体の細菌汚染のリスクをさらに低減する。
【0041】
いくつかの実施形態では、ヒータークーラー装置によって提供される流体は、抗菌流体からなる。
【0042】
いくつかの実施形態では、抗菌流体は静菌性である。いくつかの実施形態では、抗菌流体は殺菌性である。
【0043】
抗菌流体は、1つ以上の抗菌添加剤を含んでもよい。1つ以上の抗菌添加剤は、殺菌性であってもよい。
【0044】
抗菌流体は、グリコールを含んでもよい。グリコールは抗菌剤として作用することができ、有利なことに凍結防止剤としても機能する。これにより、抗菌流体に改善された熱特性がもたらされる。
【0045】
いくつかの実施形態では、グリコールはプロピレングリコールを含んでもよい。
【0046】
他の適切な凍結防止剤は当業者に知られているであろう。適切な凍結防止剤の1つ以上をグリコールと組み合わせて又はグリコールの代わりに使用してもよい。
【0047】
いくつかの実施形態において、抗菌流体は、水及び/又は塩水を含んでいる。
【0048】
抗菌流体は、1種以上の耐食添加剤を含んでもよい。
【0049】
いくつかの実施形態において、抗菌流体は、水及びグリコールを含んでいる。
【0050】
いくつかの実施形態では、抗菌流体は、水、グリコール及び抗菌添加剤を含むか、又はそれからなる。
【0051】
いくつかの実施形態では、抗菌流体は、水、グリコール、抗菌添加剤及び耐食添加剤を含むか又はそれらからなる。
【0052】
第2の態様の任意の実施形態は、第1の態様の実施形態と組み合わせることができる。ヒータークーラー装置は、第1の態様の実施形態で使用される抗菌流体を提供するために使用されてもよい。例えば、ヒータークーラー装置は、熱伝達流体のグリコールを人工肺及び/又は心臓保護液送達システムに供給するために使用されてもよい。同じヒータークーラー装置は、熱伝達流体を複数の灌流システム熱交換器に供給するために使用されてもよい。
【0053】
本発明の第3の態様によれば、請求項20に規定された体外灌流システムにおける熱伝達流体の抗菌流体の使用が提供される。
【0054】
本発明の第4の態様によれば、請求項21に規定された灌流システム熱交換器のためのヒータークーラー装置が提供される。この装置は、ヒータークーラーデバイスと中間流路との間に中間熱交換器を備え、ヒータークーラーデバイスは中間熱交換器にヒータークーラー流体を供給するように設けられ、中間流路は中間流体が灌流システム熱交換器に供給されるように設けられ、中間熱交換器がヒータークーラー流体と中間流体との間の熱交換を可能にし、それによってヒータークーラー流体が灌流システム熱交換器から流体的に隔離されている。
【0055】
ヒータークーラーデバイスは、典型的には、熱伝達流体のタンク、熱伝達流体を加熱するためのヒーター、及び/又は熱伝達流体を冷却するためのクーラー、灌流システム熱交換器に熱伝達流体を供給するための供給ポート、及びヒータークーラーデバイスに熱伝達流体を戻すための戻りポートを含むことが理解されるであろう。
【0056】
灌流システム熱交換器は、血液が体外灌流の過程で処理される血液処理装置などの処理装置と組み合わせて使用されてもよい。血液処理装置の例には、体外酸素療法器及び心筋保護液送達システムが含まれている。血液処理装置は、患者への投与のために血液又は他の流体を調製するために使用される。準備は、患者へのその後の投与に適するように、温度、駆動圧力、及び流速などの流体特性を設定することを含んでいる。熱交換器は、処理装置と一体であってもよく、又は独立した熱交換器として、例えば処理装置の下流に別個に配置されてもよい。
【0057】
従来、ヒータークーラー流体は、制御された温度で、人工肺ライン又は心筋保護液ラインの熱交換器、又は灌流システムの任意の他の構成要素の灌流システム熱交換器に供給される。これは、人工肺ライン又は心筋保護液ラインを通過する流体の温度を設定するためである。ヒータークーラーの流体はまた、所定の患者の体温を維持するのを助けるために、温度制御マットに提供されてもよい。
【0058】
ヒータークーラー流体から流体的に隔離された中間流路を設けることにより、ヒータークーラー流体以外の中間流体を中間流路に設けることができる。ヒータークーラー流体及び中間流体は、異なる物質であってもよい。これによって、中間熱交換器を介してヒータークーラー流体と中間流体との間の熱交換が可能になる。灌流システム熱交換器又はコイルなどの灌流システム熱交換器の構成要素をヒータークーラー流体と接触させることなく、中間流体を灌流システム熱交換器に循環させることができる。
【0059】
これは、ヒータークーラー流体として水を使用することよりも有利である。温水は潜在的に有害な生物の繁殖を促進することが示されている。灌流システムの血液から流体的に隔離されているが、ヒータークーラー水浴からの液滴の交差汚染は、臨床的な合併症につながるか、又はそれに寄与すると考えられる。
【0060】
ヒータークーラーデバイスの滅菌には、部品やコネクタごとに手動で拭き取り、数時間にわたることがある手順で消毒剤を使用してタンクをすすいだり、加熱したり、水洗いしたりする必要があるため、時間がかかる。さらに、手動滅菌手順は、ヒータークーラーデバイスを損傷する可能性がある。また、滅菌処置が十分に効果的でないリスクがある。
【0061】
この問題にさらに対処するために、ヒータークーラー流体の水に代わるものとして、微生物増殖を遅らせる液体(消毒剤又は抗菌液とも呼ばれる)を使用することが検討されている。一例として、プロピレングリコールをヒータークーラー流体として使用することができる。プロピレングリコールは抗菌性を有している。あるいは、ヒータークーラー流体としてエチレングリコールを使用してもよい。いくつかの微生物はエチレングリコール中で生存することができるので、追加の抗菌剤を加えてもよい。
【0062】
体外血液人工肺及び心筋保護液送達装置のように、既存のシステムは、熱伝達媒体として水を使用するので、既存のシステムは、関連する規制機関によって水との使用が承認されているだけである。これはまた、熱伝達媒体を灌流システム装置に供給するために使用されるヒータークーラーシステムが水のみを提供することを意味する。したがって、インセンティブはなく、当業者が他の移送媒体を考慮することも検討されていない。実際に利用可能な消毒剤は、しばしば腐食性であり、灌流システム装置の熱交換器コイルに損傷を与え、灌流システム熱交換器の寿命を低下させる。
【0063】
中間流路を設けることにより、中間流路に例えば水、又は滅菌水のようなより少ない腐食性の流体を使用しながら、例えば、プロピレングリコールのような消毒剤をヒータークーラー浴に使用することができる。これにより、熱交換コイルのような灌流システム装置の構成要素を維持することを補助しながら、ヒータークーラー浴から生じる相互汚染の危険性が低減される。
【0064】
いくつかの実施形態では、中間体流体は抗菌液である。いくつかの実施形態では、ヒータークーラー流体は抗菌流体である。いくつかの実施形態では、中間流体及びヒータークーラー流体は抗菌流体である。
【0065】
中間流路は流体的に隔離され、中間流体は灌流システム熱交換器及び中間熱交換器を通って閉ループで循環することができるので、このことは、いくつかの実施形態では、中間流路の回路は、一回の使用又は使い捨てユニットとして構築できることを意味している。このことは、流体の長期的に腐食性の可能性のある影響が懸念される必要はないことを意味している。
【0066】
いくつかの実施形態では、中間熱交換器は中間流路と一体である。
【0067】
このことによって、中間流路及び対応する中間熱交換器の設置、交換及び/又は除去が容易になる。例えば、このことによって、適切に寸法決めされた熱交換器を中間流路に使用することが保証される。中間流路は、中間熱交換器の導管によって構成されてもよいことが理解されよう。
【0068】
いくつかの実施形態では、中間熱交換器は、ヒータークーラーデバイスと一体化するための第1の熱交換要素と、中間流路と一体の第2の熱交換要素とを含んでいる。
【0069】
第1の熱交換要素及び第2の熱交換要素は、熱的に結合するように接続され、熱交換装置を構成することができる。例えば、第1の熱交換要素は、第1の放熱プレートによって構成されてもよく、第2の熱交換要素は、プレート間の熱交換を可能にするように結合することができる第2の放熱プレートによって構成されてもよい。
【0070】
いくつかの実施形態では、中間熱交換器及び/又は中間流路は、ヒータークーラーデバイスから取り外し可能である。
【0071】
取り外し可能な中間流路は、使い捨て可能な、すなわち「消耗品」の装置として使用することができる。このことは、中間流路が単一の処理コースに使用されると廃棄されるため、交差汚染リスクをさらに低減している。一体型の中間熱交換器を有する又は一体型の熱交換要素を有する実施形態では、これはまた、中間流路とともに取り外し可能である。
【0072】
「取り外し可能」とは、中間熱交換器及び/又は中間流路が、ヒータークーラーデバイスを損傷することなく、ヒータークーラーデバイスに取り付けられ、かつそこから取り外されることを意味することが理解される。したがって、中間熱交換器及び/又は中間流路は、取り付け可能及び取り外し可能である。
【0073】
このことは、ヒータークーラーデバイスが滅菌流体で操作されることができ、温水とともに使用される中間流路が各処理コースの後に廃棄されるため、不十分な滅菌手順が微生物増殖を起こすリスクをさらに低減している。
【0074】
使用された中間熱交換器及び/又は中間流路を廃棄した後、次の手順のために交換したものを使用することができ、一方、ヒータークーラーデバイスの滅菌要件は低減される。したがって、使い捨てデバイスを提供することは、微生物増殖のリスクをさらに低減している。
【0075】
いくつかの実施形態では、取り外し可能な中間熱交換器及び/又は中間流路は、ヒータークーラーデバイスへの再取り付けを防止する構成を備えている。
【0076】
再取り付けを防止する配置は、中間流路の一体構成要素を破壊する機構によって具体化してもよい。
【0077】
例えば、消耗品の中間流路は、ヒータークーラーデバイスへの一回の取り付けを可能にし、一旦取り外されると、同じ接続機構が再取り付けされないように、取り付け又は取り外し時にその構成を変える接続機構を含んでもよい。この作用のために、連結機構は、構成を変更するための特徴を構成する折りたたみ可能な要素又は予め設定された脆弱性の特徴を含んでもよい。
【0078】
再取り付け防止構成は、使用済み装置の意図しない再使用を防止し、それによって汚染のリスクを低減している。
【0079】
中間流路は、固有のシリアル番号を有するRFIDタグのようなタグを含んでもよい。ヒータークーラーシステムは、RFIDタグと通信するためのインターフェースを有してもよい。これは、中間流路の使用に関連する情報を格納するために使用してもよい。
【0080】
例えば、ヒータークーラー装置のコントローラは、中間流路の使用に関する情報をヒータークーラーデバイスに格納してもよい。ヒータークーラー装置は、以前に使用されたと識別された中間流路の使用を拒否する構成を備えていてもよい。ヒータークーラー装置は、中間流路が予め指定された時間より長く使用される場合に通知を発してもよい。例えば、ヒータークーラー装置は、中間流路が20時間以上使用されていると、通知信号を発するように構成されてもよい。
【0081】
同様に、中間流路に関連するコントローラ又はメモリ装置は、中間流路の使用に関する情報を記憶するように構成されてもよい。
【0082】
いくつかの実施形態では、中間熱交換器及び/又は中間流路は、ヒータークーラーデバイスとの流体接続及び/又は灌流システム熱交換器との流体接続のための迅速接続機構を備えている。
【0083】
これにより、ヒータークーラーデバイスと灌流システム熱交換器との間の中間流路の設置が容易になる。迅速接続機構とは、1つ又はわずかな手の動きで行われるプッシュフィット又はプッシュターンフィットによって液密接続が確立されるようにするメカニズムである。例えば、迅速機構はハンセン(Hansen)型迅速接続カップリング等であってもよい。
【0084】
いくつかの実施形態では、迅速接続機構は、自己封止膜を含むか、又はそれによって構成される。
【0085】
このことによって、液密接続を提供しながら装置の設置が容易になる。
【0086】
いくつかの実施形態では、ヒータークーラー装置は、ヒータークーラー流体及び中間流体のいずれか又は両方の流量を制御するための流量制御装置を備えている。
【0087】
ヒータークーラー流体及び中間流体の一方又は両方の流量を制御することにより、ヒータークーラー流体と中間流体との間の熱交換を改善することができる。流れ制御装置は、中間熱交換器と一体であってもよく、及び/又は中間流路と一体であってもよい。
【0088】
いくつかの実施形態では、流れ制御装置は、外部駆動装置とともに使用するためのローラーポンプ、遠心ポンプ、又は遠心分離機インペラー装置を含んでいる。
【0089】
ローラーポンプ、又は蠕動ポンプは、流体と接触することなくポンピングを可能にし、最大7又は8リットル/分の流速に対して実用的である。使い捨て可能な中間流路と関連して、異なる使い捨ての流路に同じローラーポンプを使用することができる。したがって、使い捨てシステムは、ローラーポンプとともに使用するのに十分な長さ及び可撓性を有するチューブ部分を備えてもよい。
【0090】
遠心ポンプは、標準的な構成のローラーポンプと比較して、より高い流速を可能にし、より高い潜在的な流出量を有している。遠心ポンプは、使い捨てシステムと一体化することができる。同様に、軸流ポンプ、指ポンプ、又はM型ポンプを使用してもよい。
【0091】
中間流路は、一体化されたインペラーを含んでもよい。一体化されたインペラーは磁石を含んでもよい。磁石は、流体的に隔離されるようにオーバーモールドされていてもよい。
【0092】
インペラーは、外部駆動機構とともに使用するための遠心分離機インペラーとして使用してもよい。例えば、中間流路は、外部磁気インペラー駆動用の一体型磁気インペラーを備えてもよい。
【0093】
流量制御機構を設けることにより、熱交換は、一方の流体の流量を他方の流体に対して制御することにより、より良好に調節することができるので、よりエネルギー効率の良い動作モードを実現してもよい。
【0094】
いくつかの実施形態では、ヒータークーラー装置は、中間流路内又はヒータークーラー流体を供給するヒータークーラー導管内に1つ以上の逆止弁を含んでいる。
【0095】
逆止弁は、中間熱交換器又は中間流路のコネクタの近傍又はその近傍に配置してもよい。このことは、中間熱交換器及び/又は取り外し後の中間流路にヒータークーラーの流体又は中間流体を収容するのに役立つ。このことによって、腐食性の性質を有するヒータークーラー剤流体及び/又は滅菌されない可能性のある中間体流体のこぼれの危険性が低減される。
【0096】
逆止弁は、ボール封止弁によって実現されてもよい。
【0097】
いくつかの実施形態では、ヒータークーラー装置は、ヒータークーラー流体、中間流体、及び/又は灌流システム熱交換器を通過する体外の患者流体の流量を決定するための流量センサー装置を備えている。
【0098】
「体外患者流体」とは、患者に投与するために温度制御される流体を意味している。これは、例えば、血液、生理食塩水、又はキャリア流体であり得る。
【0099】
流量センサー装置は、ヒータークーラーの流体、中間の流体、及び/又は体外の患者の流体の実際の流量を決定することを可能にしている。このことは、それぞれの流体の実際の流量のより良いフィードバックを提供し、それは、実際の流量に応答して各流体の1つ以上の流量を制御するために使用することができる。
【0100】
流量センサー装置は、流量制御装置の動作パラメータから流量値を導出する構成によって構成してもよい。例えば、流量(例えば、ポンプ速度、チューブ径など)を制御するためにポンプを使用する所与の設定では、毎分の回転数又はストロークを流量と相関させることができる。例えば、流量センサー装置は、遠心分離機インペラーを駆動するために使用される外部モータから動作パラメータを導出する構成によってもよい。
【0101】
このことによって、フィードバック制御ループが実現される。例えば、体外の患者の流体の例は、患者に戻される酸素化された血液である。例示的な例を提供するために、臨床的な理由から、酸素化された血液の患者への供給を増加させる必要があることがある。換言すれば、体外の患者の流体の流量を増加させてもよく、ひいては人工肺の熱交換器を通る流量も増加させてもよい。その場合、灌流システム熱交換器は、温度制御された中間熱伝達流体の適切な供給を必要としてもよい。このことは、適切な流量及び/又は温度を設定することによって適切な温度勾配を保証する閉ループ制御によって保証されてもよい。
【0102】
熱伝達要件を決定及び制御し得ることにより、より効率的な熱伝達手順を実施することができる。
【0103】
実施形態では、ヒータークーラー装置は、ヒータークーラー流体、中間流体、及び/又は灌流システム熱交換器を通過する体外の患者流体の温度を決定するための温度センサー装置を備えている。
【0104】
これによって、フィードバック制御ループが実現される。例えば、コントローラは、温度センサー装置の温度センサーによって読み取られた温度値を、設定温度閾値に対して解釈してもよい。制御装置は、灌流システム熱交換器における熱交換速度を増加又は減少させるために、必要に応じて、温度制御流体が循環する速度を減少又は増加させるように流量制御装置を動作させてもよい。
【0105】
温度センサーは、熱交換回路内の井戸内に置くことができるサーミスタプローブなどの任意の適切な温度センサーによって構成してもよい。他のオプションは、ライン内の流体の間接測定に適した赤外線温度センサーである。非接触センサーを使用して、使い捨て中間流路内の温度を測定してもよい。
【0106】
いくつかの実施形態では、中間流路は充填ポートを含んでいる。
【0107】
充填ポートは、使用前後の中間流路の充填及び排出を容易にしている。ポートは、充填及び排出のための流体封止接続を容易にするために、チューブ用のコネクタを備えてもよい。充填ポートは、容器から流体を吸引し、流体によって置換された空気を付随して排気するために設けられた吸引システムによって構成してもよい。
【0108】
本発明の第5の態様によれば、請求項36に規定されているように、中間流体を熱伝達媒体としてヒータークーラー流体と灌流システム熱交換器との間で循環させるための熱伝達装置が提供される。熱伝達装置は、第1の導管と熱交換要素とを備えている。第1の導管は、灌流システム熱交換器及び熱交換要素を通る中間流体のための中間流路を形成するために熱交換器入口及び熱交換器出口に接続するための付属物を含んでいる。熱交換要素は、ヒータークーラー流体と中間流体との間の熱伝達を可能にし、ヒータークーラー流体を中間流体及び灌流システム熱交換器から流体的に隔離するように構成されている。
【0109】
いくつかの実施形態では、中間体流体は抗菌流体である。
【0110】
いくつかの実施形態では、ヒータークーラー流体は抗菌流体である。
【0111】
いくつかの実施形態では、熱交換要素は、第2の導管を備え、第2の導管は、ヒータークーラーデバイスの供給ポート及び戻りポートに接続可能である。
【0112】
いくつかの実施形態では、熱交換要素は、ヒータークーラーデバイスの供給ポート及び戻りポートに取り付けられた熱交換プレートと結合するように構成されている。
【0113】
いくつかの実施形態では、熱伝達装置は、ヒータークーラーデバイスとの流体接続及び/又は灌流システム熱交換器との流体接続のための迅速接続機構をさらに含んでいる。
【0114】
いくつかの実施形態では、1つ以上のコネクタは、再接続を防止する構成を含んでいる。
【0115】
いくつかの実施形態では、熱伝達装置は、第1の導管及び/又は第2の導管に1つ以上の逆止弁をさらに備えている。
【0116】
いくつかの実施形態では、熱伝達装置は、外部駆動装置とともに使用するインペラー装置をさらに備えている。
【0117】
いくつかの実施形態では、熱伝達装置は、充填ポートをさらに備えている。
【0118】
第3の態様の熱伝達装置は、第2の態様の中間熱交換器及び/又は中間流路を形成するために使用してもよいことが理解されるであろう。したがって、第3の態様の実施形態は、第2の態様の実施形態のいずれか1つの中間要素に関連して説明された1つ又は複数の特徴を含んでもよい。例えば、第1の導管は、充填ポートを含んでもよい。第1の導管は、流量制御装置を備えていてもよい。例えば、流量制御装置は一体型ポンプを含んでもよい。流量制御装置は、遠心ポンプのインペラーとして外部駆動機構とともに使用するための一体型インペラーを備えていてもよい。インペラーは、外部磁気駆動機構とともに使用するために、磁気的(又は磁石と結合されている)なものであってもよい。流量制御装置は、ローラーポンプとともに使用するのに十分な長さの部分によって構成されてもよい。
【0119】
本発明の第6の態様によれば、請求項47に記載の灌流システム熱交換器を通過する体外流体の温度を設定する方法が提供される。
【0120】
この方法は、ヒータークーラーデバイスを提供するステップと、ヒータークーラーデバイスにヒータークーラー流体を提供するステップと、ヒータークーラーデバイスと灌流システム熱交換器との間に中間流路を提供するステップと、中間流路に中間流体を提供するステップと、中間流体をヒータークーラー流体から流体隔離しながらヒータークーラー流体と中間流体との間の熱交換を行うステップと、灌流システム熱交換器を通る体外流体の温度を制御するために灌流システム熱交換器に中間流体を供給するステップとを含んでいる。
【0121】
いくつかの実施形態では、ヒータークーラーデバイスに提供されるヒータークーラー流体は、水よりも強力な殺菌性を有する流体である。
【0122】
いくつかの実施形態では、ヒータークーラーデバイスに提供されるヒータークーラー流体は、抗菌流体である。
【0123】
いくつかの実施形態では、中間流路に提供される中間流体は水である。
【0124】
いくつかの実施形態では、中間流路に提供される中間流体は、抗菌流体である。
【0125】
いくつかの実施形態では、中間流路を提供するステップは、第1の導管を灌流システム熱交換器の入口及び出口に接続して、灌流システム熱交換器を通る中間流路を形成するステップを含んでいる。
【0126】
いくつかの実施形態では、ヒータークーラー流体と中間流体との間に熱伝達体を配置するステップは、第2の導管をヒータークーラーデバイスの供給ポート及び戻りポートに接続して、熱交換要素を通る流路を形成するステップを含んでいる。
【0127】
いくつかの実施形態では、中間流路を提供するステップは、中間流路の熱交換要素を、ヒータークーラーデバイスの供給ポート及び戻りポートに取り付けられた熱交換プレートと連結するステップを含んでいる。
【0128】
いくつかの実施形態では、この方法は、灌流システム熱交換器を通るヒータークーラー流体、中間流体、及び/又は体外流体の流量及び温度のうちの1つ又は複数を決定することを含んでいる。
【0129】
いくつかの実施形態では、この方法は、ヒータークーラー流体及び/又は中間流体の流量を制御することを含んでいる。
【0130】
第6の態様による方法は、第1から第5の態様のいずれかの態様の使用を含んでもよい。例えば、実施形態では、この方法は、使用される中間熱交換器を未使用の中間熱交換器で置き換えることを含むことができる。このような置換は、2つの処置手順の間に行ってもよい。
【0131】
上述の態様の実施形態では、灌流システム熱交換器を人工肺に組み込んでもよい。人工肺は、酸素化ガスに曝されることにより酸素低減(静脈)血液を酸素化するために設けられ、未使用の酸素化ガスは、人工肺のガス出口を介して排気ガスとして取り出される。
【0132】
人工肺は、人工肺の入口と人工肺の排気との間の酸素化ガスのためのガス経路が人工肺の外部の大気から圧力隔離されることを意味する閉鎖系であってもよい。このように、供給ガス入口から排気ガス出口への人工肺内の圧力は大気圧以下に維持されてもよい。このことは、低圧源を使用して排気ガス出口から流出させることによって達成されてもよい。閉鎖系は、人工肺の外側は大気圧であると予想することができるが、人工肺の大気圧より低い圧力レベルを可能にしている。
【0133】
閉鎖系として動作可能であるにもかかわらず、人工肺は、(例えば、酸素化ガスが供給ガス入口で供給され続ける間に排気ガスチューブの偶発的な遮断のために)過加圧に対するフェイルセーフ機構を必要とすることがある。例えば、本出願人による英国特許出願第GB1705556.7号は、閉鎖系の状態で、したがって大気圧より低い圧力で酸素化を行うことを可能にするために、人工肺の排気チャンバを人工肺の外部の環境から圧力隔離する圧力隔離装置及び方法を開示している。GB1705556.7に記載された圧力隔離装置は、排気ガス室の過加圧に対するフェイルセーフ機構を提供している。
【0134】
大気圧より低い圧力での酸素化、又は低圧酸素化は、下記の理由から興味深い。低圧酸素化をよりよく理解するために、中空繊維人工肺の例を使用して、通常の大気酸素化においてに起こる関連機構の要約が提供される。酸素化ガス(すなわち、空気に類似し、所望の酸素分圧及び動脈血中の二酸化炭素の分圧を達成するために必要な酸素及び窒素含有量に混合されたガス)は、チューブを介して導かれ、必要であれば、麻酔剤気化器を介して、人工肺のガス入口に達し、中空糸の束を通る(気相)ように導かれ、中空繊維の外側(血液相)にわたって血液が人工肺の内部を通っている。繊維壁はガス透過性であり、ガスの移動が繊維壁を介してより高い濃度(例えば、酸素化ガス中の酸素又は静脈血中の二酸化炭素)からより低い濃度(例えば、静脈血中の酸素又は酸素化ガス中の二酸化炭素)に起こる。
【0135】
人工肺から出る血液は、動脈血と呼ばれ、動脈血に必要な酸素分圧(PaO2)と、動脈血中の二酸化炭素分圧(PaCO2)とを有するように酸素化される。PaO2及びPaCO2は以下のように調整される。PaO2は、酸素化ガス(FiO2)中の窒素の割合に対する酸素化ガスの酸素含有量(吸気酸素の割合、FiO2)によって調整することによって影響され得る。混合空気の大部分は窒素からなる。PaCO2は、酸素化ガスの流量(一般に「スウィープ」と呼ばれる)を調整することによって影響され得る。気相中の窒素は、血相と比較して気相中の圧力が等しくなるようにそれ自身のバランスを取ろうとする。
【0136】
体外酸素化システムには、ガス状微小泡沫(GME)の形成のリスクを伴うという問題が存在し、それは、血液を循環系に入れることによって、特にGME泡沫が高い窒素含有量を有するときに推進されることがある。窒素を含むGMEは、空気が血液と接触すると生成される。このことは、例えば血液吸入のとき、心臓開室において、特定の薬物投与手順の間、ポンプ回路内の高負圧領域の間、又は血液の温度が現在の窒素の体積が溶液中に溶解したままである可能にしないときに温まっている間(そして、窒素が、それによって、「気泡の形で溶液から出る」)などの臨床シナリオで起こる機会がある。
【0137】
ひとたび血流に入ると、体内の窒素含有気泡と周囲の血液/組織との間に拡散勾配がほとんど又は全くない。したがって、ひとたび存在する窒素含有気泡は、溶液中に溶解しない傾向がある。血液中のGMEは、タンパク質を気泡表面に付着させ、比較的迅速にコーティングを発達させ、それは、気泡の中へ/気泡からの気体の拡散をさらに阻害する障壁として作用している。この窒素を含むタンパク質で覆われた気泡は、固体表面を有する中空粒子のように似ており、組織への血流の固体塞栓閉塞に関連するのと同じ潜在的な病的状態が伴っている。さらに、GMEは血管内層に損傷を与え、血管炎症を引き起こす可能性がある。これはまた、凝固経路を刺激し、出血/凝固の問題を引き起こし得る。
【0138】
体外換気の間のGMEを減少させる試みには、血液温度差の制限、回路への直接的な吸入戻りの最小化、遅い速度での血液への薬物注入の操作、術野のCO2による充満、静脈/心臓切開フィルター/リザーバー内の脱泡薬の利用、及び動脈バブルトラップ/パージ装置のようないくつかの技術が含まれる。これらの試みにもかかわらず、感知装置によって測定されるGMEの存在は、体外システムにおける動脈血中の共通事象である。
【0139】
上記のように、酸素化ガス中の窒素は、酸素化ガス(FiO2)中の酸素分圧を設定するために使用され、それは、人工肺を出る動脈血(PaO2)の酸素分圧に直接的に影響を及ぼしている。
【0140】
例えば、純粋な酸素(又は酸素と二酸化炭素の混合物)を使用するなどして、酸素化ガス中の窒素を減少又は排除することにより、血液中の窒素の分圧を、実用的な除去の点まで大きく低下させることができる。このことを例として説明すると、20から21%の領域(残りの79から80%はほとんどが窒素である)にある、空気と同様の酸素含有量の代わりに、人工肺の入口に入る酸素化ガス中の酸素含有量は100%に近くてもよい。しかし、体外血液換気のために大気圧で100%酸素を使用すると、動脈血中の酸素分圧(PaO2)が非常に高くなる。高いPaO2は、例えば、損傷する遊離酸素ラジカルを生成することがあり、患者に悪影響を及ぼすため、望ましくない。さらに、血液中のガスの高い分圧は、溶解阻害効果によるGME発生の傾向を増加させる逆効果を有している。
【0141】
しかし、大気圧より低い圧力でより高い酸素含有量が提供される場合、動脈血中の対応する分圧は、平衡時に血液中の酸素含有量を低下させる。このように、大気圧より低い圧力レベルでは、非ガス飽和動脈血環境が人工肺内に提供され、酸素の分圧PaO2は、酸素化ガス中の窒素を使用する必要なく低くなっている。
【0142】
さらに、非ガス飽和状態では、血液中の任意の気泡は、実質的に、気泡-血液界面にタンパク質コーティングが形成される前に、より迅速に溶解する傾向がある。したがって、酸素化ガスにおける窒素の必要性を回避することと、GME形成を防止することに加えて、非ガス飽和血液も既存の気泡の溶解を促進する低圧換気という2つの利点があると考えられている。
【0143】
低圧機能を有する人工肺での例えばグリコールのような抗菌熱伝達流体の使用は、熱伝達流体として水を使用するときとは異なる温度変化の速度を可能にしている。このことによって、エネルギー管理を改善することができ、そっれは、バックアップエネルギーに頼っているときに重要であり、細菌汚染のリスクを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0144】
本発明の例示的な実施形態を、図面を参照して説明する。
【
図1】従来のヒータークーラー装置の構成要素の概略構成を示す図である。
【
図2】本発明の例示的な実施形態によるヒータークーラー装置の構成要素の概略構成を示す図である。
【
図3】本発明の別の例示的な実施形態によるヒータークーラー装置の構成要素の概略構成を示す図である。
【
図4】本発明の例示的な実施形態による熱伝達装置の概略構成を示す図である。
【
図5】本発明の別の例示的な実施形態による熱伝達装置の概略構成を示す図である。
【
図6】本発明の別の例示的な実施形態による熱伝達装置の部分透視斜視図である
【
図7】本発明の別の例示的な実施形態による熱伝達装置の部分断面図である
【
図8】本発明の例示的な実施形態によるヒータークーラー装置の構成要素の等角図である。
【
図9】本発明の実施形態によるヒータークーラーシステムを使用して温度を制御するための制御方法の方法ステップの例示的なシーケンスのステップを示す図である。
【
図10】本発明の実施形態による灌流システム熱交換器における熱伝達を制御する方法の方法ステップの例示的なシーケンスのステップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0145】
図1は、灌流システムとともに使用するための先行技術のヒータークーラーシステムを概略的に示している。ヒータークーラーシステムは、ヒーター12及びクーラー14を有するヒータークーラーデバイス10を含んでいる。ヒーター12及びクーラー14は、ヒータークーラー流体11の温度を設定するために使用される。ヒータークーラー流体11は、供給ポート18を介して、灌流システム熱交換器に循環され、戻りポート16を介してヒータークーラーデバイスに戻される。
【0146】
灌流システム熱交換器は、人工肺20の一体的な構成要素として示されている。人工肺20は、酸素供給ライン24からの酸素化ガスに曝すために酸素化膜28を介して血液を流す血液ライン22を含んでいる。人工肺における酸素化の前に、血液は状態22Aにある。酸素化の後、血液は状態22Bで人工肺を離れる。状態22Bは、患者に投与するために血液が酸素化されている状態であってもよい。酸素供給ライン24の酸素化ガスは状態24Aで供給され、酸素化ガスは排気ガスとして状態24Bで排出される。
【0147】
人工肺20は、酸素化膜28の上流にあり、血液ライン22に沿って配置され、一体化された、又は関連する熱交換器26を備えている。ヒータークーラー流体11は、供給ポート18から入口32を介して熱交換器26に循環され、ライン22内の血液の温度を設定する。ヒータークーラー流体11は、出口34を介して熱交換器26を離れ、戻りポート16を介してヒータークーラーデバイス10に戻って循環される。
【0148】
図1のシステムは、ヒータークーラーデバイス10からのヒータークーラー流体11を熱交換器26を介して流すことによって、状態22Bにおける血液の温度を制御することができ、ヒータークーラー流体11が、熱交換器26を通過する。
【0149】
図2及び
図3はそれぞれ、本発明の例示的な実施形態を示している。
図2及び
図3では、
図1に記載された構成要素に対応する構成要素には同じ符号が使用されている。
【0150】
図2において、ヒータークーラーデバイス10は、供給ポート18を介して循環し、戻りポート16を介して戻されるヒータークーラー流体11の温度を設定するために使用されるヒーター12及びクーラー14を含むヒータークーラー装置10を含んでいる。人工肺20は、酸素化膜24を介して酸素供給ライン24に状態24Aで供給され、排気ガス24Bとして排出される酸素化ガスに、酸素化膜28を介して曝露することによって、血液ライン22の酸素減少血液22Aから酸素化ガス28を生成するために設けられている。
【0151】
状態22Bにおける血液の温度をその後の患者への投与に適するように制御するために、人工肺20は、熱伝達流体を受け取る入口32と熱伝達流体を循環させることを可能にする出口34とを含む灌流システム熱交換器を構成する熱交換器26を含んでいる。
【0152】
図2のシステムは、中間流体31が循環できる中間流路30を含んでいる。中間流路30は、中間流路の中間熱交換器を構成する熱交換器40を貫通している。熱交換器40は、入口ポート36及び出口ポート38を含むヒータークーラー流路46を含んでいる。入口ポート36は、ヒータークーラーデバイス10の供給ポート18と流体接続するために設けられている。出口ポート38は、ヒータークーラーデバイス10の戻りポート16と流体接続するために設けられている。
【0153】
ヒータークーラー流路46及び中間流路30は、中間流体31とヒータークーラー流体11との間の熱伝達を可能にし、一方、中間流体31からヒータークーラー流体11を流体的に隔離している。したがって、ヒータークーラー流体31は、あるいは熱交換器26のコイルに有害であり得る物質によって構成されてもよい。熱交換器40は、使い捨てシステムの一部であってもよく、熱交換器40に対するヒータークーラー流体31の有害な影響は熱交換器26においてよりも許容されている。
【0154】
中間流体31は、入口32及び出口34を介して熱交換器26を循環し、血液ライン22内の血液の温度を制御している。
【0155】
中間流路30は、中間流体31の流量を制御するためのポンプ44を備えている。ポンプ44は流量制御装置を構成している。ポンプ44は、コントローラ(図示せず)によって制御されてもよく、設定された流量を維持するための量料センサー装置を含む閉ループ制御システムの一部であってもよい。
【0156】
さらに、中間流路は、中間流体31の添加及び/又は除去を可能にするための充填ポート42を含んでいる。充填ポート42は、吸引/通気装置によって構成してもよい。
【0157】
図2において、充填ポート42及びポンプ44は、上肢の出口34の下流に示されている。いずれか又は両方が、下肢の入口32の上流に位置してもよい。
【0158】
入口ポート36及び出口ポート38の接続は、中間流路30の取り付け及び取り外しを容易にするために、迅速接続機構を備えていてもよい。例えば、迅速接続機構は、自己密閉膜を含んでもよい。入口ポート36は、供給ポート18に取り付けるように構成してもよく、出口ポート38は、戻りポート16に取り付けるように構成してもよい。
【0159】
図3は、熱交換器40が迅速接続機構を構成する2つの取り付け可能なプレートを含むヒータークーラー装置2の形態の代替の実施形態を示している。ヒータークーラーデバイス10には、第1熱交換プレート40aが設けられている。中間流路30は、第2熱交換プレート40bを含んでいる。第1及び第2の熱交換プレート40a及び40bは結合されることができ、
図3に示すように結合されて、熱交換器40を構成している。熱伝達は、プレート間に塗布されたペースト40cによって改善される。ペースト40cの使用はオプションである。第1の熱交換プレート40aと第2の熱交換プレート40bとの間の熱伝達を改善するために、他の機構を使用してもよい。
【0160】
図3の構成の第1及び第2の熱交換プレート40a及び40bからなる熱交換器40は、
図2と同様の流体隔離構成を提供している。すなわち、ヒータークーラー流路46は、第1の熱交換プレート40aを通って入口ポート36から出口ポート38に流れている。入口ポート36は、ヒータークーラーデバイス10の供給ポート18に結合され、出口ポート38は、戻りポート16に結合されている。結合は、第1の熱交換器プレート40aがヒータークーラーデバイス10と一体であるように永続的であってもよい。中間流路30は、第2熱交換プレート40bを貫通している。組み立てられると、中間流体31は、流体的に隔離された状態でヒータークーラー流体11と熱的に接触している。
【0161】
中間流路30は、(
図2の実施形態に示すように)熱交換器40とともに、又は(
図3の実施形態に示すように)第2の熱交換器プレート40bとともに、使い捨て熱交換器に含まれてもよい。このことによって、中間流路30の後処理滅菌の必要性が低減される。
【0162】
人工肺20の説明は、処理装置の例示である。ヒータークーラー流体11は、例えば心筋保護液ラインのような任意の他の体外ラインの熱交換器に提供されてもよいし、独立した熱交換器の熱交換器に提供されてもよい。
【0163】
ポンプ44の提供は例示的なものである。ヒータークーラー流体11の流量に対する中間流体31の流量を制御する他の手段を用いてもよい。ポンプ44は、中間流路30と一体の遠心ポンプによって構成してもよい。ポンプ44は、ヒータークーラーシステムの外部駆動装置によって駆動されるように、使い捨てシステムに一体化された遠心ポンプインペラー装置によって構成してもよい。一体化されたインペラー及び外部駆動装置は、磁気結合のために構成されてもよい。他のポンプの種類を使用することができ、その場合、中間流路30は、それをポンプの種類での使用に適したものにするチューブ又は特性を含んでもよい。例えば、ポンプ44をローラーポンプで構成してもよい。ローラーポンプは、ヒータークーラー制御システムの一部であってもよいが、使い捨てシステムの一部ではなくてもよい。ローラーポンプに適するために、中間流路30は、ローラーポンプとともに使用するのに十分な長さ及び可撓性を有するチューブ部分を含んでもよい。
【0164】
ヒータークーラー装置1及び2は、熱交換器26に供給するための単一の中間流路30を用いて示されている。ヒータークーラーデバイス10は、2つ以上の熱交換器に対してヒータークーラー流体を同時に供給するように構成してもよい。例えば、酸素供給ライン、心筋保護液ライン及び/又は患者温度制御マットのために、ヒータークーラー流体を同時に供給してもよい。この場合、複数の中間流路を設けて、中間流路とヒータークーラーデバイスとを同時に熱結合させてもよい。例えば、2つの中間流路が設けられてもよい。1つは酸素供給ライン熱交換器用であり、もう1つは心筋保護液ライン熱交換器用であってもよい。ヒータークーラーデバイスは、複数の中間流路から共通の戻りラインを備えて構成されてもよい。
【0165】
図4及び
図5はそれぞれ、使い捨て(又は「消耗品」)構成要素として使用することができる熱伝達装置301及び302を示している。
図4の熱伝達装置301は、
図2の熱伝達装置1で使用されたものに対応している。
図5の熱伝達装置302は、
図3の熱伝達装置2で使用されたものに対応している。
【0166】
参照を容易にするために、
図4及び
図5では、対応する構成要素の以前の図で使用されているのと同じ番号が使用されている。熱伝達装置301は、熱交換要素を構成する統合熱交換器40を通る第1の導管を構成するチューブ41を含んでいる。一端において、チューブ41は、熱交換器の入口の接続部33と、他端では、チューブ41は、熱交換器の出口の接続部35を含んでいる。熱交換器の接続部は、
図2に示す入口32及び出口34などの熱交換器の入口及び出口にそれぞれ取り付けるための接続部を構成している。設置されると、チューブ41は、熱交換器40及び灌流システム熱交換器を通る中間流路30を提供している。熱交換器40は、ヒータークーラーデバイスに接続するための入口ポート36及び出口ポート38を有する第2の導管を構成するヒータークーラー流路46をさらに含んでいる。
【0167】
熱伝達装置301は、チューブ41の長手に沿って、充填ポート42及び一体型ポンプ44を含んでいる。ポンプ44の代わりに、チューブ41は、外部駆動装置とともに使用するためのポンプ構成要素、又は外部ポンプとの使用に適した特性の部分を含んでもよい。例えば、チューブ41は、外部ローラーポンプとの使用のための十分な長さ及び可撓性のセクション、又は外部駆動装置との使用のための遠心ポンプインペラー装置を含んでもよい。
【0168】
上述のように、ヒータークーラー流体を中間流体から及び還流システム熱交換器から流体的に隔離している間に、ヒータークーラーデバイスに設置されると、温度制御されたヒータークーラー流体は流路46を介して流れ、中間流路30内の中間流体と熱交換している。
【0169】
図5に示す熱伝達装置302は、熱交換要素を構成する熱交換プレート40bを含んでいる。熱交換プレート40bは、
図3を参照して説明した方法で、ヒータークーラーデバイスに取り付けるように構成された第1の熱交換プレート40aと結合するように構成されている。2つのプレート40a及び40bはともに、2つの流体を流体的に隔離しながら、ヒータークーラー流体から中間流体への熱伝達機能を提供している。
【0170】
図6及び
図7は、
図4に示した熱伝達装置301に類似した熱伝達装置303の部分的に透明な等角図及び断面図をそれぞれ示している。
図4、
図6及び
図7の同じ要素には同じ参照番号が使用されている。熱伝達装置303は、ヒータークーラーデバイスから熱伝達装置303の中間熱交換器40に供給されるヒータークーラー流体の入口ポート36及び出口ポート38を含んでいる。
【0171】
熱伝達装置303は、熱交換器入口接続部33から熱交換器出口接続部35へ通じる中間流路30を含んでいる。熱伝達装置303は、遠心分離機インペラーのインペラー装置45を備え、ポンプ44を構成している。インペラー装置45は、電動モータ(外部駆動装置は
図6及び
図7には示されていない)のような外部駆動機構によって駆動される磁石47及びインペラー48を含んでいる。インペラー装置45は、外部駆動機構と連結されると、入口接続部33から出口接続部35に中間流体を圧送する。
【0172】
迅速接続機構により、入口ポート36及び出口ポート38をヒータークーラーデバイスから取り外すことができ、入口接続部33及び出口接続部35を灌流システム熱交換器から取り外すことができるので、熱伝達装置303は、熱交換装置から取り外し可能である。取り外された熱伝達装置303は、その滅菌の必要なく配置することができる。
【0173】
実施形態では、熱伝達装置303は再使用を意図されており、滅菌することができる。この場合、滅菌は、ヒータークーラーデバイス全体の滅菌を必要とせずに、例えばオフサイトで、ヒータークーラーデバイスの動作とは独立して行うことができる。
【0174】
図7に示すように、入口ポート36は、逆止弁を構成するボール封止バルブ361を含んでいる。同様に、出口ポート38は、逆止弁を構成するボール封止バルブ381を含んでいる。逆止弁は、熱伝達装置303を取り外した後、ヒータークーラー流体を収容することを補助する。このことは、特に熱伝達装置303がヒータークーラーデバイスから迅速に取り外されたときに、ヒータークーラー流体の漏出のリスクを低減している。同様に、逆止弁は、入口接続部33又は出口接続部35に設けられてもよく、非滅菌中間流体を収容することを補助している。
【0175】
図8は、ヒータークーラーデバイス10を含むヒータークーラー装置3の構成要素の一部を示している。ヒータークーラー装置3は、概念的には、上述のヒータークーラー装置1に対応するが、それぞれが、上述の熱伝達装置303の説明に対応する2つの熱伝達装置303a及び303bと結合されてもよい。ヒータークーラーデバイス10のヒータークーラー流体は、各熱伝達装置303a、303bの中間熱交換器に循環され、中間流体と熱交換が可能になり灌流システム熱交換器(
図8には示されていない)に圧送される。熱伝達装置303aは、酸素供給ラインの中間熱交換器を提供するために使用されてもよい。熱伝達装置303bは、心筋保護液ラインの中間熱交換器を提供するために使用されてもよい。各熱伝達装置303は、個別に取り外して交換することができる。ヒータークーラー流体が各熱伝達装置303の中間流路から流体的に隔離されるので、殺菌性を有する流体がヒータークーラー流体として使用されると、ヒータークーラーデバイス10の全体を殺菌する必要性は低減し、実質的に削減される。
【0176】
図9のダイアグラムは、ヒータークーラー装置を使用して処理装置の温度を制御するための制御方法50の方法ステップの例示的なシーケンスを示している。この方法は、処理装置を通過する体外流体の温度を制御するためのヒータークーラー装置のヒータークーラーデバイスを提供するステップ52を含んでいる。ステップ54では、中間流路を有する中間熱交換器が、ヒータークーラーデバイスと処理装置との間に設けられる。中間流路は、処理装置からのヒータークーラー伝達流体を流体的に隔離している。ステップ56では、ヒータークーラーデバイス内にヒータークーラー流体が供給される。ヒータークーラー流体は、消毒液であってもよい。さらに、中間流路には中間流体が供給されている。中間流体は、ヒータークーラー流体とは異なる流体であってもよい。例えば、中間流体は、処理装置の熱交換器におけるコイルの磨耗を低減するという特性のために選択された流体であってもよい。中間流体は、水であってもよい。
【0177】
ステップ58において、ヒータークーラー流体は、中間熱交換器を通って循環され、中間流体との熱交換を可能にする。熱交換機構は、使い捨て中間流路の一部としての使い捨て熱交換器を含んでもよい。熱交換機構は、使い捨て中間流路の一部としての使い捨て熱交換器構成要素を含んでもよい。ステップ60では、中間流体は処理装置の温度を制御するために使用される。
【0178】
オプションのステップ62では、1つ又は複数のヒータークーラー流体、中間流体、及び/又は処理流体の温度又は流量、又は温度と流量の両方が測定される。熱伝達、ひいては処理装置を離れる処理流体の温度をより良好に制御するために、温度及び/又は流量を使用することができる。オプションのステップ64では、ヒータークーラー流体、中間流体の流量、又はヒータークーラー流体及び中間流体の両方の流量が制御されて、処理装置における熱伝達をより良好に変調する。制御装置は、設定点温度又は熱伝達勾配を有する閉ループ制御機構を含んでもよい。
【0179】
図10は、灌流システム熱交換器における熱伝達を制御する方法70の方法ステップの例示的なシーケンスを示す図である。この方法は、灌流システム熱交換器を提供するステップ72を含んでいる。灌流システム熱交換器は、患者に投与する体外の患者の流体を調整するための体外流体処理装置の一部である。灌流システム熱交換器は、流体熱伝達媒体のための第1の流路と、熱伝達媒体との熱エネルギーの交換を介して温度制御される体外患者流体のための第2の流路とを含んでいる。
【0180】
ステップ74において、熱伝達媒体が、灌流システム熱交換器の第1の流路を通って供給される。熱伝達媒体は、抗菌流体を含んでいる。オプションのステップ76において、灌流システム熱交換器は、人工肺の一部として、及び/又は心筋保護液送達システムの一部として提供されてもよい。同様に(
図10には示されていない)、流体ライン内の体外流体の温度を制御するために、灌流システム熱交換器を「独立型」ユニットとして提供することができる。オプションのステップ78において、熱伝達媒体としてグリコールが提供される。ステップ80において、熱伝達媒体は、灌流システム熱交換器における熱伝達を制御するために、すなわち、熱伝達媒体を第1の流路に流し、温度制御された体外患者流体を第2の流路に流すことによって使用される。
【0181】
熱伝達流体(heat transfer fluid)及び熱伝達流体(thermal transfer fluid)の表現は、本明細書の目的のために同義であるとみなされる。